【実施例】
【0059】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例により限定および制限されない。
【0060】
[実施例1]
(1)近赤外光照射によるミドリハコベの蒸散量の抑制
暗所(0Lx)・低温(10℃)条件において、照射光強度を100μmol/m
2/sとして、中心波長850nm、940nmおよび1015nmを持つLEDから発せられる近赤外光を、ミドリハコベにそれぞれ10分間照射し、蒸散量を求めた。蒸散量は、初期のミドリハコベの重量を計測し、前記の光照射の後、暗所・低温条件において貯蔵し、1日貯蔵後の重量変化により算出した。蒸散量は、無照射を1.00とした場合の相対値で表示した。また、比較例として、近赤外光に代えて、LEDから発せられる赤色光、緑色光、青色光を照射した以外は同様にして、蒸散量を求めた。本実施例では、前記波長850nmおよび1015nmではn=4の平均値、前記波長940nmではn=5の平均値としての蒸散量を求めた。また、無照射および全比較例では、n=5の平均値としての蒸散量を求めた。
【0061】
その結果を表1に示す。表1に示すように、近赤外光を照射した場合の蒸散量は、0.47〜0.61であり、無照射(ブランク)との比較で有意に蒸散量が抑制された。これに対し、赤色光、青色光では蒸散量が抑制されなかった。また、緑色光では蒸散量が0.93であり、近赤外光と比べて蒸散量抑制効果が小さかった。
【0062】
【表1】
【0063】
(2)近赤外光照射によるレタスの蒸散量の抑制
レタスを用い、試料数(n)を表2のように変更したこと以外は、ミドリハコベと同様にして、蒸散量を求めた。前記レタスとしては、以下の手順で自家栽培した幼苗を用いた。まず、育苗用ウレタンマットにレタス(品種:シスコ)の種子を播種した。そして、恒温条件(22℃〜23℃)・16時間日長(明期:1万Lx(植物育成用ランプ))に設定したグロースチャンバーにて、大塚水耕栽培溶液(EC:1.2)を用いた水耕栽培にて10日間の栽培を行った。そして、本葉2枚がでた時点で地上部を切断し、試験用レタスとした。
【0064】
その結果を表2に示す。表2に示すように、近赤外光を照射した場合の蒸散量は0.84〜0.85であり、無照射(ブランク)との比較で有意に蒸散量が抑制された。これに対し、赤色光、青色光では蒸散量が抑制されなかった。また、緑色光では蒸散量が0.96であり、近赤外光と比べて蒸散量抑制効果が小さかった。
【0065】
【表2】
【0066】
次に、LEDに代えて、波長範囲のより狭い単色光を用いて、レタスの蒸散量を求めた。すなわち、LEDに代えて、キセノンショートアークランプを光源とした高精度多目的標準灯具「OPTICAL MODULEX」(ウシオ電機製)と、透過半値幅10nmの干渉フィルター(FWHM:10nm)とを組み合わせて得られる単色光を用い、中心波長700nmから1000nmの近赤外光を、照射光強度を100μmol/m
2/s、15μmol/m
2/sとして5分間照射し、蒸散量を求めた。蒸散量の算出方法および表示方法は、前述のとおりである。また、試料数(n)は、表3および表4に示すとおりとした。その結果を表3および表4に示す。表3および表4に示すように、蒸散量の減少が認められた。このことから、蒸散量抑制効果は、近赤外光に起因するものであることを確認できた。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
(3)近赤外光の照射光強度と蒸散量との関係
暗所(0Lx)・低温(10℃)条件において、照射光強度を1μmol/m
2/s、2μmol/m
2/s、3μmol/m
2/s、4μmol/m
2/s、5μmol/m
2/s、8μmol/m
2/s、10μmol/m
2/s、100μmol/m
2/s、200μmol/m
2/sおよび300μmol/m
2/sとして、LEDから発せられる中心波長850nmおよび940nmの近赤外光を、前述のレタスにそれぞれ10分間照射し、蒸散量を求めた。蒸散量の算出方法および表示方法は、前述のとおりであり、試料数(n)は、表5に示すとおりとした。その結果を表5に示す。表5に示すように、850nmでは、4μmol/m
2/s、940nmでは、2μmol/m
2/sの照射光強度において、最も高い蒸散量抑制効果が得られた。
【0070】
【表5】
【0071】
(4)近赤外光の照射時間と蒸散量との関係
前述した照射光強度と蒸散量との関係をもとに、前述のレタスに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件において、LEDから発せられる中心波長および照射光強度を、(i)850nm(100μmol/m
2/s)、(ii)940nm(300μmol/m
2/s)、(iii)940nm(100μmol/m
2/s)とし、1秒間、5秒間、10秒間、30秒間、1分間、5分間、10分間および60分間照射して、それぞれ蒸散量を求めた。蒸散量の算出方法および表示方法は、前述のとおりであり、試料数(n)は、表6〜8に示すとおりとした。その結果を、表6〜8に示す。表6は前記条件(i)での結果を示し、表7は前記条件(ii)での結果を示し、表8は前記条件(iii)での結果を示す。表6〜8に示すように、(i)の条件では5分間、(ii)の条件では1分間、(iii)の条件では30秒間の照射において、最も高い蒸散量抑制効果が得られた。
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
(5)明所での近赤外光照射
(5−1)近赤外光の照射光強度と蒸散量との関係
白色蛍光灯下での明所(1000Lx)・低温(10℃)条件において、照射光強度を10μmol/m
2/s、100μmol/m
2/s、200μmol/m
2/sおよび300μmol/m
2/sとして、LEDから発せられる中心波長850nmおよび940nmの近赤外光を前述のレタスにそれぞれ10分間照射し、蒸散量を求めた。蒸散量の算出方法および表示方法は、前述のとおりである。本実施例では、n=24の平均値としての蒸散量を求めた。その結果を
図3に示す。
図3に示すように、850nm、940nmともに10μmol/m
2/s以上の照射光強度で顕著な蒸散量の減少が認められた。このことから明所条件においても、近赤外光の照射により蒸散量が減少することが明らかになった。
【0076】
(5−2)近赤外光の照射時間と蒸散量との関係
前述した照射光強度と蒸散量との関係をもとに、白色蛍光灯下での明所(1000Lx)・低温(10℃)条件において、LEDから発せられる中心波長および照射光強度を(iv)850nm(100μmol/m
2/s)、(v)940nm(200μmol/m
2/s)、(vi)940nm(100μmol/m
2/s)として、照射時間を変えて前述のレタスに照射し、それぞれ蒸散量を求めた。蒸散量の算出方法および表示方法は、前述のとおりであり、試料数(n)は表9に示すとおりとした。その結果を表9に示す。表9に示すように、(iv)の条件では10分間、(v)の条件では1分間〜5分間、(vi)の条件では5分間の照射において、最も高い蒸散抑制効果が得られた。
【0077】
【表9】
【0078】
(5−3)各種光条件下での近赤外光照射と蒸散量との関係
さらに強い強度の明所条件下での近赤外光の効果を調べるため、白色蛍光灯下での明所(10000Lx)、白色LED下での明所(10000Lx)、自然光(太陽光)下での明所(40000Lx)条件において、照射光強度を100μmol/m
2/sとして、LEDから発せられる中心波長850nmの近赤外光を前述のレタスにそれぞれ5分間照射し、蒸散量を求めた。蒸散量の算出方法および表示方法は、前述のとおりである。本実施例では、n=4〜6の平均値としての蒸散量を求めた。その結果を表10に示す。表10に示すように、白色蛍光灯下、白色LED下および自然光(太陽光)下のいずれの明所条件においても、近赤外光の照射により蒸散量が減少することが明らかになった。
【0079】
【表10】
【0080】
(5−4)連続照射条件下での近赤外光照射と蒸散量との関係
明所条件下で近赤外光をさらに連続照射した場合の効果を調べるため、白色LED下での明所(10000Lx)条件において、照射光強度を60μmol/m
2/sとして、LEDから発せられる中心波長850nmの近赤外光を前述のレタスにそれぞれ24間照射し、蒸散量を求めた。蒸散量の算出方法および表示方法は、前述のとおりである。本実施例では、n=7の平均値としての蒸散量を求めた。その結果を表11に示す。表11に示すように、連続24時間明所条件下において近赤外光を照射しても、蒸散量が減少することが明らかになった。このことは、白色LEDからの光に近赤外光成分を加えることにより、鮮度保持効果を発揮できることを示すものである。
【0081】
【表11】
【0082】
(6)気孔開閉への効果
前述のレタスに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件において、LEDから発せられる中心波長850nmの近赤外光を、照射光強度10μmol/m
2/sおよび100μmol/m
2/sとして、10分間照射した。照射後、10℃・暗所に静置し、30分後にレタスの葉をホモゲナイザーで部分的に破砕し、光学顕微鏡を用いて気孔開度を測定した。本実施例では、各5個体のレタスを用い、それぞれホモゲナイザーで破砕した5断片を対象に、それぞれ5つの気孔を観察し(各試験区で合計125の気孔を観察)、その平均値を求めた。その結果を表12に示す。表12に示すように、近赤外光を照射した場合には、いずれの光強度においても無照射に比べて気孔が閉じる傾向にあることが明らかになり、このことが蒸散量を低下させる理由のひとつであると推察された。
【0083】
【表12】
【0084】
[実施例2]
各種葉茎類、果菜類、果実類、菌茸類に、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、暗所・低温条件下で1日間〜2週間貯蔵し、蒸散量を求めた。蒸散量の表示方法は、前述のとおりであり、試料数(n)は表13に示すとおりとした。その結果を表13に示す。表13に示すように、リーフレタス、ホウレンソウ、キャベツ、青ネギ、アスパラガス、ブロッコリー、コマツナ、オオバ、キュウリ、ミニトマト、ミディトマト、トマト、ピーマン、ナス、イチゴ、サクランボ、モモ、シイタケ、ブナシメジにおいても、蒸散量抑制効果が見られた。
【0085】
【表13】
【0086】
さらに、各種花卉類について、蒸散量抑制効果を調べた。各種花卉類(切り花)に、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、キク、アジサイ、カーネーション、ランタナでは、水にいけた状態で室温にて3日から2週間、明るい室内に放置し、その間の重量変化を測定した。また、バラは、照射後に新聞紙に包み、4℃の暗所に2日間放置し、重量変化を測定した。試料数(n)は表14に示すとおりとした。その結果を表14に示す。表14に示すとおり、いずれの花卉類(切り花)でも重量減少(蒸散量)が抑制された。
【0087】
【表14】
【0088】
[実施例3]
(1)近赤外光照射による結球レタスの軟化抑制
暗所(0Lx)・低温(10℃)条件において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)および940nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を結球レタスに10分間照射した。その後、暗所・低温条件において20日間貯蔵し、果実硬度計(株式会社藤原製作所製、KM−5、商品名円錐ブランジャー)での硬度測定によって、葉の硬度値を測定した。葉の硬度値は、無照射を1.00とした相対値で表示した。無照射および本実施例において、n=5の平均値としての葉の硬度を求めた。その結果を表15および
図4に示す。表15および
図4に示すように、850nm、940nmの双方において、1回照射、毎日照射の双方で、無照射の場合よりも葉の硬度値が高く、軟化が抑制できた。また、毎日照射するよりも、1回照射の方が、高い軟化抑制効果が得られた。
【0089】
【表15】
【0090】
(2)近赤外光照射によるイチゴの軟化抑制
暗所(0Lx)・低温(10℃)条件において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光をイチゴに5分間照射した。その後、暗所・低温条件下で1週間貯蔵し、前記果実硬度計を用いてイチゴの果実硬度を測定した。無照射および本実施例において、n=11の平均値としての果実硬度を求めた。その結果を表16および
図5に示す。
図5において、aとbとの間で、Tukey検定により5%水準の有意差を示した。表16および
図5に示すように、光照射をした方が、無照射の場合と比較して高い果実硬度を保つことができ、軟化が抑制できた。
【0091】
【表16】
【0092】
[実施例4]
(1)近赤外光照射による結球レタスの腐敗抑制
結球レタスを用い、4段階評価(1:健全、2:褐変している、3:一部に腐敗あり、4:腐敗している)による鮮度評価を行った。暗所(0Lx)・低温(10℃)条件において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)および940nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を、結球レタスに10分間照射した。その後、暗所・低温条件において20日間貯蔵し、前記4段階評価に従い、目視による鮮度評価を行った。その結果を
図6および
図7に示す。
図6は、1回のみ照射した場合の結果を示し、
図7は、20日間毎日照射した場合の結果を示す。図示のように、850nm、940nmの双方において、1回照射、毎日照射の双方で、無照射の場合よりも一部腐敗および腐敗の割合が低く、腐敗抑制効果が得られた。また、毎日照射するよりも、1回照射の方が、一部腐敗および腐敗の割合が低く、高い腐敗抑制効果が得られた。
【0093】
(2)近赤外光照射によるイチゴの腐敗抑制
暗所(0Lx)・低温(10℃)条件において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を、イチゴに5分間照射した。この際、イチゴを二段に重ねてパック詰めした状態で、前記近赤外光を照射した。その後、暗所・低温条件下で1週間貯蔵し、前記4段階評価に従い、目視による鮮度評価を行った。その結果を
図8に示す。図示のように、光照射をした方が、無照射の場合と比較して、腐敗を抑制することができた。
【0094】
[実施例5]
近赤外光照射による結球レタスの褐変抑制
暗所(0Lx)・低温(10℃)条件において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)および940nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を、結球レタスに10分間照射した。その後、暗所・低温条件において20日間貯蔵し、色彩色差計(株式会社ミノルタ製、CR−200)を用いて褐変度合いを測定した。褐変度合いは、L
*a
*b
*表色系におけるa
*値およびb
*値の比であるa/bの値が大きいほど葉が赤く褐変している。その結果を表17に示す。表17に示すように、無照射の場合と比較して褐変が抑制された。
【0095】
【表17】
【0096】
[実施例6]
本発明の実用性を評価するために、植物工場で生産されるリーフレタスへの適用試験を行った。収穫直後のリーフレタスに、近赤外光照射装置(LED:315個、消費電力:65W)を用いて、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件、明所(1000Lx)・常温(22℃)条件それぞれにおいて、中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を、10分間照射した。その後、暗所・低温条件において5日間貯蔵し、蒸散量を求めた。蒸散量の表示方法は、前述のとおりである。その結果を
図9に示す。図示のように、暗所・低温条件での照射、明所・常温条件での照射の双方において、無照射の場合と比較して蒸散量が抑制された。特に、暗所・低温条件での近赤外光照射の蒸散量抑制効果は顕著であった。
【0097】
次に、暗所での照射と明所での照射を対比するため、暗所下、明所下双方において、850nm(100μmol/m
2/s)5分間照射、940nm(300μmol/m
2/s)1分間照射、940nm(100μmol/m
2/s)10分間照射を行った。本例において、前記各波長は中心波長を意味する。その後、暗所・低温条件において3日間貯蔵し、蒸散量を測定した。蒸散量の表示方法は、前述のとおりである。その結果を表18に示す。表18に示すように、明所(1000Lx)下で照射するより、暗所下で照射した方が、高い蒸散量抑制効果が得られた。一方、照射光強度を高めた940nm(300μmol/m
2/s)では、暗所下で照射した場合と、明所下で照射した場合とで、同程度の蒸散量抑制効果が得られた。また、850nm(100μmol/m
2/s)5分間の照射では、25℃での照射においても、蒸散量抑制効果が得られた。
【0098】
【表18】
【0099】
[実施例7]
コマツナに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、暗所・23℃条件下で4日間貯蔵し、外観を目視により観察した。本実施例において、試料数は、10個とした。また、比較のために、無照射のコマツナについても前記と同様の条件で貯蔵し、外観を目視により観察した。
図10(a)(b)は、その結果を示す写真である。
図10(a)(b)において、左側の写真Xが無照射のコマツナであり、右側の写真Yが本実施例に係る近赤外光を照射したコマツナである。
図10(a)に示すように、無照射の場合、Aで示す部分に萎れが見られたのに対し、近赤外光を照射したコマツナでは、無照射の場合と比較して葉先の萎れが少なく、葉先の乾燥を抑制できた。また、
図10(a)に示すように、無照射の場合、Bで示す部分において葉の色が黄色く変化しており、葉が退色している部分が多く見られたのに対し、近赤外光を照射したコマツナでは、葉の色が黄色く変化している箇所がほとんどなく、葉の退色を抑制することができた。また、
図10(b)に示すように、無照射の場合、Cで示す部分に茎細りが見られたのに対し、近赤外光を照射したコマツナでは、無照射の場合と比較して茎細りを抑制することができた。
【0100】
[実施例8]
オオバに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、暗所・4℃条件下で1日間貯蔵し、外観を目視により観察した。本実施例において、試料数は10個とした。また、比較のために、無照射のオオバについても前記と同様の条件で貯蔵し、外観を目視により観察した。
図11は、その結果を示す写真である。
図11において、左側の写真Xが無照射のオオバであり、右側の写真Yが本実施例に係る近赤外光を照射したオオバである。また、
図11において、Aで示す部分は、黒点が見られた部分であり、Bで示す部分は、萎れが見られた部分である。まず、無照射では、葉の黒点の数が1枚あたり平均3.9個であったのに対し、近赤外光を照射したオオバでは、1.7個であり、黒点の発生を抑制することができた。また、
図11に示すように、近赤外光を照射したオオバの方が、無照射の場合と比較して、葉先の萎れが少なく、葉先の乾燥を抑制することができた。さらに、無照射の場合、葉が全体的に褐変したのに対し、近赤外光を照射したオオバでは、葉が褐変している箇所がほとんどなく、葉の褐変を抑制することができた。
【0101】
[実施例9]
ホウレンソウに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、暗所・10℃条件下で7日間貯蔵し、外観を目視により観察した。本実施例において、試料数は、15個とした。また、比較のために、無照射のホウレンソウについても前記と同様の条件で貯蔵し、外観を目視により観察した。その結果を、
図12および
図13に示す。
図12は、外観を撮影した写真であり、
図13は、
図12の写真を模式化した図である。
図12および
図13において、左側の
図Xが無照射のホウレンソウであり、右側の
図Yが本実施例に係る近赤外光を照射したホウレンソウである。
図12および
図13に示すように、ホウレンソウの茎の下部を持った場合、近赤外光を照射したホウレンソウでは、株のほとんどの茎がまっすぐ立っていたのに対し、無照射の場合は、ほとんどの茎が垂れた。このように、近赤外光を照射することにより、茎のしおれを抑制することができた。また、近赤外光を照射したホウレンソウの方が、無照射の場合と比較して、葉先の萎れが少なく、葉先の乾燥を抑制することができた。さらに、近赤外光を照射したホウレンソウの方が、無照射の場合と比較して、茎細りを防ぐことができた。
【0102】
[実施例10]
アスパラガスに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、暗所・10℃条件下で5日間貯蔵し、外観を目視により観察した。本実施例において、試料数は、22個とした。また、比較のために、無照射のアスパラガスについても前記と同様の条件で貯蔵し、外観を目視により観察した。
図14は、その結果を示す写真である。
図14において、左側の写真Xが無照射のアスパラガスであり、右側の写真Yが本実施例に係る近赤外光を照射したアスパラガスである。
図14に示すように、無照射では、Aで示す部分に皺が見られ、芯部分の皺が目立ったのに対し、近赤外光を照射したアスパラガスでは、芯部分に目立つ皺が入っておらず、芯部分の皺を抑制することができた。また、無照射では、Bで示す部分に茶色く変色した腐りが見られ、茎下部の切り口の部分に腐りが生じているものが複数見られたのに対し、近赤外光を照射したアスパラガスでは、切り口の部分が腐ったものはなく、切り口の腐りを軽減することができた。
【0103】
[実施例11]
青ネギに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、暗所・10℃条件下で5日間貯蔵し、外観を目視により観察した。本実施例について、試料数は、3束とした。また、比較のために、無照射の青ネギについても前記と同様の条件で貯蔵し、外観を目視により観察した。
図15は、その結果を示す写真である。
図15において、左側の写真Xが無照射の青ネギであり、右側の写真Yが本実施例に係る近赤外光を照射した青ネギである。
図15に示すように、無照射では、Aで示す芯部分に腐りが見られたのに対し、近赤外光を照射した青ネギでは、芯部分の腐りはなく、芯部分の腐りが抑制された。
【0104】
[実施例12]
キャベツに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、暗所・10℃条件下で1日間貯蔵し、外観を目視により観察した。本実施例において、試料数は、2個とした。また、比較のために、無照射のキャベツについても前記と同様の条件で貯蔵し、外観を目視により観察した。
図16は、その結果を示す写真である。
図16において、上の2つの写真Xが無照射のキャベツであり、下の2つの写真Yが本実施例に係る近赤外光を照射したキャベツである。
図16に示すように、無照射の場合、Aで示す部分において外葉が萎れて縮んだのに対し、近赤外光を照射したキャベツでは、葉の萎れがなく、萎れを抑制できた。
【0105】
[実施例13]
ピーマンに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、明所・23℃条件下で5日間貯蔵し、外観を目視により観察した。本実施例において、試料数は、7個とした。また、比較のために、無照射のピーマンについても前記と同様の条件で貯蔵し、外観を目視により観察した。
図17は、その結果を示す写真である。
図17において、左側の写真Xが無照射のピーマンであり、右側の写真Yが本実施例に係る近赤外光を照射したピーマンである。
図17に示すように、無照射では、ピーマンの表面が萎れ、つや感が失われたのに対し、近赤外光を照射したピーマンでは、表面に張りがあってつや感が失われておらず、つや感を維持することができた。
【0106】
[実施例14]
ナスに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、明所・10℃条件下で7日間貯蔵し、外観を目視により観察した。本実施例において、試料数は、10個とした。また、比較のために、無照射のナスについても前記と同様の条件で貯蔵し、外観を目視により観察した。
図18は、その結果を示す写真である。
図18において、左側の写真Xが無照射のナスであり、右側の写真Yが本実施例に係る近赤外光を照射したナスである。
図18に示すように、無照射では、ナスの表面が萎れ、つや感が失われたのに対し、近赤外光を照射したナスの方では、表面に張りがあってつや感が失われておらず、つや感を維持することができた。
【0107】
[実施例15]
へたの向きを上にしたトマト(以下、「上向き保存」ともいう。)、および、へたの向きを下にしたトマト(以下、「下向き保存」ともいう。)それぞれに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、暗所・10℃条件下で3日間貯蔵して、蒸散量を求めた。本実施例において、試料数は、上向き保存および下向き保存それぞれ5個とした。なお、
図19(a)に示す状態が上向き保存であり、
図19(b)に示す状態が下向き保存である。蒸散量の表示方法は、前述のとおりである。その結果を、表19に示す。表19に示すように、無照射を1.00とした場合の蒸散量の相対値は、上向き保存の場合は、0.67であり、下向き保存の場合は、0.87であり、いずれの場合にも蒸散量抑制効果が見られた。
【0108】
【表19】
【0109】
また、無照射のトマトおよび本実施例に係る近赤外光を照射した上向き保存のトマトについて、前記と同様にして8日間貯蔵した後、外観を目視により観察した。その結果を、
図20および
図21に示す。
図20は、外観を撮影した写真であり、
図21は、
図20の写真を模式化した図である。
図20および
図21において、左側の
図Xが無照射のトマトであり、右側の
図Yが本実施例に係る近赤外光を照射したトマトである。
図20および
図21に示すように、無照射ではヘた部分が萎れたのに対し、近赤外光を照射したトマトでは、へた部分が萎れておらず、へたの萎れを抑制することができた。
【0110】
[実施例16]
モモに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、暗所・10℃条件下で8日間貯蔵し、外観を目視により観察した。本実施例において、試料数は5個とした。また、比較のために、無照射のモモについても前記と同様の条件で貯蔵し、外観を目視により観察した。
図22(a)(b)は、その結果を示す写真である。
図22(a)(b)において、左側の写真Xが無照射のモモであり、右側の写真Yが本実施例に係る近赤外光を照射したモモである。まず、
図22(a)に示すように、皮付きの状態で観察した結果、無照射では、皮の表面においてAで示す部分に大きな傷みが見られたのに対し、近赤外光を照射したモモの方では、目立つ傷みは見られなかった。次に、
図22(b)に示すように、皮をむいて観察したところ、無照射では、Aで示す部分が傷んで茶色く変色しており、傷んだ部分が広く見られたのに対し、近赤外光を照射したモモの方では、傷みはほとんど見られなかった。このように、近赤外光の照射により、傷みを軽減できた。
【0111】
また、前記の8日間貯蔵した後の無照射のモモおよび本実施例に係る近赤外光を照射したモモについて、細かく切断し、暗所・10℃条件下で1時間放置した後、外観を目視により観察した。
図22(c)(d)は、その結果を示す写真である。
図22(c)に示す写真Xは、無照射のモモ、
図22(d)に示す写真Yは、本実施例に係る近赤外光を照射したモモであり、両図において、左側の写真が切断直後の状態、右側の写真が切断後1時間放置した後の状態である。
図22(c)(d)において、Bで示す部分は、褐変が見られた部分である。
図22(c)(d)に示すように、無照射では、各断片が全体的に褐変したのに対し、近赤外光を照射したモモは、僅かに褐変したものの褐変の進行度合いが少なかった。このように、近赤外光の照射により、褐変を抑制することができた。
【0112】
[実施例17]
キクに、暗所(0Lx)・低温(10℃)条件下において、LEDから発せられる中心波長850nm(100μmol/m
2/s)の近赤外光を5分間照射した。その後、明所・23℃条件下で、茎の切断面を水につけた状態で2週間貯蔵し、蒸散量を求めた。本実施例において、試料数は2以上とし、同様の試験を4回行った。蒸散量の表示方法は、前述のとおりである。その結果を、表20に示す。表20に示すように、無照射を1.00とした場合の蒸散量の相対値は、試験4回の平均が0.94であり、蒸散量抑制効果が見られた。
【0113】
【表20】
【0114】
また、無照射のキクおよび本実施例に係る近赤外光を照射したキクについて、前記のように2週間貯蔵した後の葉および花の萎れを評価した。萎れは、葉および花それぞれについて、0点から3点の4段階で評価し(0点:萎れなし、1点:萎れ少、2点:萎れ多、3点:枯れ)、葉の萎れと花の萎れとの合計点で評価した。その結果を、表21に示す。表21に示すように、無照射の場合、葉および花の萎れは平均3.8点であったのに対し、近赤外光を照射したキクでは0.7点であり、萎れを抑制することができた。また、
図23に、本評価に用いたキクの外観を撮影した写真を示し、
図24に、
図23の写真を模式化した図を示す。
図23および
図24において、左側の
図Xが無照射のキクであり、右側の
図Yが本実施例に係る近赤外光を照射したキクである。
図23および
図24に示すように、無照射では、葉および花ともに萎れが見られたのに対し、近赤外光を照射したキクでは、萎れが少なく、開花後の状態を維持することができた。
【0115】
【表21】