【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するために、本発明によるポリアミド重合体は、(a)下記化学式1から選択される1種または2種以上の芳香族ジアミン単量体と、(b)下記化学式2から選択される1種または2種以上の芳香族ジアミン単量体と、(c)下記化学式3から選択される1種または2種以上の芳香族二価有機酸誘導体単量体と、を含む重合単量体を重合することで製造される重合体であって、また、本発明は、それを含む紡糸ドープ組成物およびそれから製造される成形物を提供する。
【0014】
[化学式1]
H
2N−Ar
1(CONH
2)
a−NH
2
【0015】
[化学式2]
H
2N−Ar
2(CN)
b−NH
2
【0016】
[化学式3]
X−CO−Ar
3−CO−X
(上記化学式中、Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、互いに独立して、C
6〜C
34の置換または非置換の芳香族基または−Ar
4−Z−Ar
5−であり、前記Ar
4およびAr
5は、C
6〜C
34の置換または非置換の芳香族基であり、前記Zは、単一結合、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO−、またはC
1〜C
10の置換または非置換の直鎖または分枝状のアルキレン基であり、Xは、ヒドロキシ、ハロゲン、またはC
1〜C
4から選択されるアルコキシ基であり、前記aおよびbは、互いに独立して、1〜4から選択される整数である。)
【0017】
好ましくは、本発明において、前記化学式1の単量体は、少なくとも1つ以上の−CONH
2置換体が芳香族ジアミン単量体の一級アミン基のオルト(ortho)位に置換されるようにすることが好ましく、より好ましくは、前記−CONH
2置換体の全てが芳香族ジアミン単量体のアミン基のオルト位に位置するようにすることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記化学式1の−CONH
2置換体を有する芳香族ジアミン単量体は、化学式1および化学式2を含む総ジアミン単量体の0.001〜50モル%、好ましくは0.01〜20モル%で使用することが望ましい。本発明の芳香族ジアミンは、−CONH
2で置換された芳香族ジアミンと、ニトリル基で置換された芳香族ジアミンとの混合物のみを使用してもよいが、前記化学式1および化学式2の芳香族ジアミン以外の他のジアミン単量体を追加する場合、重合体の物性を調節することができて、これもまた本発明の範疇に属する。
【0019】
本発明において、前記化学式1および化学式2以外のジアミン単量体を追加する場合、化学式1および化学式2で表される芳香族ジアミン単量体1モルに対して、0.001〜0.5モル比、好ましくは0.3モル比までの範囲で使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明において、化学式1および化学式2を含む総ジアミン単量体と、化学式3を含む有機ジカルボン酸誘導体単量体との比率は、1:0.9〜1.1モル比で使用することが経済的であるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明において、前記−CONH
2で置換された前記化学式1の芳香族ジアミン単量体の含量が総ジアミン単量体の含量の50モル%を超える場合には、重合段階で粘度が上昇し過ぎて、熱伝逹が不良であるため容易な反応制御が困難となり、また、前記重合体を用いて紡糸ドープを製造したときに、異方性でなく等方性のドープ組成物となり得るため、紡糸が困難となる恐れがある。
【0022】
本発明の重合体として、例えば、前記化学式1の−CONH
2置換体が置換された芳香族ジアミン系単量体0.001〜50モル%および化学式2のニトロ基で置換された芳香族ジアミン系単量体99.99〜50モル%のジアミン単量体を、化学式3の芳香族有機二価酸系単量体と当量比で重合したものが挙げられる。
【0023】
上記で、化学式1と化学式2の芳香族ジアミン単量体と、前記化学式1と化学式2以外の芳香族ジアミン単量体および/または脂肪族ジアミン単量体と、の混合単量体を用いて重合する場合、製造された重合体を用いて成形品を製造するときに成形品の機械的強度や弾性率などの機械的特性を調節することができ、また、紡糸ドープを製造するときにも粘度を調節することができるため好ましい。
【0024】
また、本発明において、ジアミン単量体は、アミド基やニトリル基が同時に一つの芳香族ジアミン単量体に置換されたものを採択してもよく、単量体がニトリル基やアミド基を有する限り、本発明から排除されない。
【0025】
本発明のアミド官能基を有する芳香族ジアミンの具体的な例としては下記のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
まず、化学式1の1級アミド基を置換体として有する芳香族ジアミン単量体の例としては下記のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
【化1】
(前記Aは、−H、−Cl、−Br、−I、−NO
2、−CN、または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基であり、Bは、−CO−、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−COO−、−SO
2−、−SO−、またはC1〜C10の直鎖または分枝状のアルキレン基である。)
【0028】
また、本発明の前記化学式2のニトリル基を置換体として有する芳香族ジアミン単量体の例としては、下記構造式の化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0029】
【化2】
(前記Aは、−H、−Cl、−Br、−I、−NO
2、−CN、−CONH
2、または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基であり、Bは、−CO−、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−COO−、−SO
2−、−SO−、またはC1〜C10の直鎖または分枝状のアルキレン基である。)
【0030】
本発明において、化学式3の芳香族有機二価酸誘導体単量体としては、前記化学式3から選択される1種または2種以上のものであれば制限されない。
【0031】
また、本発明は、前記化学式3の芳香族有機二価酸誘導体単量体の他に、物性の調節のために、前記化学式3以外のジカルボン酸系単量体をさらに使用することも含む。もちろん、化学式3の芳香族ジカルボン酸系単量体から選択される1種または2種以上を採択することが物性の側面で最も有利であるが、流動性や作業性などを考慮すると、前記化学式3の芳香族ジカルボン酸系単量体以外のジカルボン酸系化合物(例えば、ニトリル基で置換されていないものや脂肪族ジカルボン酸系化合物など)を総ジカルボン酸系単量体の50モル%まで、より好ましくは0.01〜30モル%まで追加してもよい。
【0032】
本発明の化学式3に属する芳香族ジカルボン酸系化合物としては、例えば、テレフタル酸、C1〜C4のテレフタレートまたはテレフタロイルハライド、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ハライド、イソフタル酸、イソフタル酸ハライド、ジフェニルジカルボン酸およびそのハライドやエステル系単量体などが挙げられ、また、これら単量体が、置換体としてCl、Br、I、NO
2、または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基などから選択される1つ以上の置換体を有することも可能であって、これに限定されるものではない。
【0033】
前記化学式3の芳香族ジカルボン酸系単量体以外の他のジカルボン酸単量体の具体例としては、アジピン酸、セバシン酸(sebacic acid)などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサン‐1,4‐ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、そのハライドまたはそのエステル系単量体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明において、化学式1の芳香族ジアミンのアミン基の置換体である1級アミド基が芳香族ジアミンのアミン基のオルト位に置換された単量体を含むことが好ましい理由は、その原因が明確ではないが、ニトリル基で置換された芳香族ジアミン単量体とともに重合されることで、紡糸ドープの可紡性(spinnability)が著しく向上して高い延伸比が達成でき、特に、機械的物性を著しく向上させることができる効果があるためである。このようなことの原因の一つは、重合体のバックボーン(back−bone)にある、重合により形成されたアミド連結環が芳香族ジアミンに置換されたアミド基と互いに反応して、下記化学式4のようなキナゾリノン(quinazolinone)環を形成することに起因すると考えられる。この場合、機械的強度が著しく上昇するとともに、重合単位中に存在するニトリル基置換体と相互作用して可紡性(spinnability)が著しく向上されると考えられる。
【0035】
【化3】
【0036】
以下、本発明の重合体の一例として、下記の芳香族ジアミン単量体とテレフタロイルクロリドを重合して生成される化学式5の重合体を用いて詳細に説明する。
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】
(lまたはmは、反応した単量体のモル分率であって、l:m=0.001〜50モル%:99.99〜50モル%であり、重量平均分子量が1万〜1500万である重合体である。)
【0039】
前記重量平均分子量は、リチウムクロリド(LiCl)の濃度が0.05MであるN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶離液(Eluent)として使用し、試料を0.1g/Lに希釈して注入した後、1ml/minの速度で1つのガードカラム(PLgel Olexis Guard 50*7.5mm、Agilent)および2つのメインカラム(PLgel Olexis 300*7.5mm、Agilent)を連続して通過してから、RI(Refractive Index)装置で検出(Detection)し、ポリスチレン(polystyrene)を標準物質として測定した。
【0040】
また、前記構造式を含む本発明では、便宜上、重合体単位を1つの構造式で表現したが、実際に重合体は下記単位がランダムに重合されているものであるということは、当業者にとって自明である。
【0041】
また、本発明において、前記化学式5の重合体を用いて紡糸ドープを製造する場合、化学構造式は次のような化学式6の構造を含むことが分かる。これは、重合体の単量体である芳香族ジアミンのオルト位に置換された1級アミド基置換体が、重合により重合体バックボーンのアミド基と反応してキナゾリノン(quinazolinone)環を形成するためである。
【0042】
【化6】
(l、n、およびmは、重合した単量体のモル分率であって、l+n:m=0.001〜50モル%:99.99〜50モル%であり、上記の分子量測定方法で測定した重量平均分子量が1万〜1500万である。)
【0043】
また、本発明は、上記の多様な重合体を含む紡糸ドープを提供する。
【0044】
本発明による紡糸ドープにおいて、化学式1および化学式2の芳香族ジアミンと化学式3の芳香族ジカルボン酸系単量体の重合体は、液晶特性を示し、円滑に紡糸されるという利点を有するが、紡糸特性や液晶特性または加工性などを調節するために、前記化学式以外の単量体をさらに含んでもよい。
【0045】
本発明の重合段階で使用する溶媒としては、単量体または重合体を溶解することができるものであれば特に制限されないが、例えば、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N,N´,N´‐テトラメチルウレア(TMU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの混合物が挙げられるが、これに制限されない。
【0046】
本発明では、前記重合段階、または重合後に紡糸ドープを製造する段階で、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属水酸化物を投入する場合、重合体の粘度が低くなって重合を追加的に行うことができるだけでなく、紡糸ドープを製造する固形分の範疇内で流動性が増大して、円滑に紡糸(spinning)できるため好ましい。また、上記の塩を投入する場合、芳香族有機二価酸系単量体としてテレフタロイルクロリドなどの塩化物を使用する際の副反応生成物である塩酸を中和させるという点で好ましい。
【0047】
前記無機塩の具体例としては、LiCl、Li
2CO
3などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
また、本発明では、前記無機塩の他に、3級アミンを投入したり混合投与したりしても、前記無機塩を投入する場合とほぼ類似した流動性の増加効果を有するが、前記無機塩は、少量で使用するだけで流動性を十分向上させることができるため好ましい。
【0049】
本発明では、紡糸ドープの製造時に有機溶媒をさらに添加することができ、混合溶媒としては、例えば、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N、N´、N´‐テトラメチルウレア(TMU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの混合物が使用できるが、これに限定されるものではない。
【0050】
本発明において、前記紡糸ドープ組成物中の固形分の含量は、紡糸や作業が可能であれば特に制限されないが、好ましくは固形分を5〜30wt%で含むことが有利である。紡糸方法としては、通常の繊維の紡糸方法および装置が使用でき、これは当業者にとって公知のものであるため、それ以上の説明は省略する。
【0051】
以下、本発明の重合方法について例をあげて説明する。
【0052】
本発明の重合方法の一例として、先ず、下記化学式1および化学式2の芳香族ジアミン単量体を含むジアミン単量体を溶媒に溶解して溶液を製造した後、次に、または溶液製造と同時に冷却する。前記冷却は、下記化学式3の芳香族有機二価酸誘導体単量体を含む有機二価酸誘導体単量体を投入するときに、発熱による反応を制御する必要があるためである。本発明の前記冷却段階における冷却温度は、通常、−50℃〜30℃、好ましくは−20℃〜10℃程度に冷却することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0053】
[化学式1]
H
2N−Ar
1(CONH
2)
a−NH
2
【0054】
[化学式2]
H
2N−Ar
2(CN)
b−NH
2
【0055】
[化学式3]
X−CO−Ar
3−CO−X
(上記化学式中、Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、互いに独立して、C
6〜C
34の置換または非置換の芳香族基または−Ar
4−Z−Ar
5−であり、前記Ar
4およびAr
5は、C
6〜C
34の置換または非置換の芳香族基であり、前記Zは、単一結合、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−SO−、またはC
1〜C
10の置換または非置換の直鎖または分枝状のアルキレン基であり、Xは、ヒドロキシ、ハロゲン、またはC
1〜C
4から選択されるアルコキシ基であり、前記aおよびbは、互いに独立して、1〜4から選択される整数である。)
【0056】
次に、前記化学式3から選択される1種以上の芳香族有機二価酸単量体溶液を一括または分割投入して重合する。この際、芳香族有機二価酸系単量体は、そのまま投入しても、溶媒に溶解してから投入してもよい。前記分割投入時、各分割段階での投入量は特に制限されないが、例えば、2回分割投入する場合には、2回の投入量が10〜90重量%程度であるが、これに制限されない。
【0057】
また、本発明において、前記重合段階で、共重合体を製造するために前記化学式1、2および3以外の多様なジアミンおよび/または二価酸単量体を混合する場合、昇温して反応する場合もあるため、反応温度は限定されない。
【0058】
本発明では、前記重合中に、および/または重合後に、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属酸化物、またはアルカリ土類金属水酸化物から選択される何れか1つ以上の無機塩や3級アミンから選択される何れか1つ以上を投入して重合してもよく、それから紡糸ドープを製造してもよい。
【0059】
本発明において、前記無機塩や3級アミンの投入量は特に制限されないが、流動性のために、ジアミン単量体1モルに対して0.9〜1.3モル比で使用することが好ましい。より好ましくは、1.0〜1.1モル比で投入することが、原料の無駄使いがなくて好ましい。
【0060】
本発明において、紡糸ドープ中の固形分(重合体の含量)の含量は制限されないが、例えば、5〜30wt%である。前記紡糸ドープは、重合した後、無機塩を投入することで流動性を増大させて紡糸ドープを製造してもよく、別に溶媒をさらに投入して紡糸ドープを製造してもよい。
【0061】
紡糸ドープを製造する際には、重合後、重合体を粉砕し、無機塩を投入して攪拌することで紡糸ドープを製造することが代表的な一例である。
【0062】
また、本発明は、前記重合体で説明したように、紡糸ドープの重合体はキナゾリノン単位を含む紡糸ドープ組成物も含む。
【0063】
以下、本発明の重合体および紡糸ドープを製造する方法をさらに具体的に説明する。
【0064】
すなわち、本発明の製造方法の一例は、1)重合溶媒に、化学式1の1級アミド基で置換された芳香族ジアミンおよび化学式2のニトロ基で置換された芳香族ジアミンの単量体を含む芳香族ジアミン単量体を溶解する段階と、
2)前記溶液を−50〜30℃に冷却して強く攪拌しながら、化学式3の芳香族有機二価酸誘導体単量体を一括または分割投入して重合体を製造する段階と、を含む。
【0065】
本発明は、前記重合段階で、3)アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属酸化物、またはアルカリ土類金属水酸化物の少なくとも何れか1つであることを特徴とする無機塩や3級アミンから選択される1種以上を投入して、重合体とともに0〜100℃で攪拌する段階をさらに含んで重合体を製造する方法を含むことができる。
【0066】
本発明の製造方法において、前記有機溶媒としては、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA)、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N,N´,N´‐テトラメチルウレア(TMU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの混合物を使用することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0067】
上述のポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物の製造方法のうち2)の重合段階で、前記芳香族有機二価酸誘導体単量体を分割添加することは、不均一な重合により発生する、紡糸に適しない超高分子量の生成を防止できるため好ましい。分割添加するときに、例えば、1次に総投入量の45〜55%を先添加し、残りの量を後添加する方法で重合する方法などがあるが、これに限定されるものではない
【0068】
上述のポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物の製造方法のうち3)の工程は、2)の工程中に、芳香族ジアミンと芳香族有機二価酸誘導体単量体(例えば、芳香族二酸ハロゲン化物(diacid halide))を含む単量体の重縮合反応により発生するハライド化水素副産物を中和し、流動性を増大させるための過程である。前記無機塩は、その種類が制限されるものではないが、特にLi
2CO
3の単独または混合物である際に、製造されるポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物の紡糸性が特に高い効果を示した。
【0069】
また、1級アミド基がアミン基のオルト位に置換された芳香族ジアミン単量体が重合体に製造された後、前記Li
2CO
3とともに攪拌される過程で置換された1級アミド構造が重合体のバックボーンに存在するバックボーンアミド基と一部反応してキナゾリノン構造に変換されるという構造的変換も観察され、この際、機械的強度や延伸性がさらに増大する効果が観察された。
【0070】
本発明は、前記紡糸ドープ(組成物)を用いて紡糸して製造されるポリアミド繊維、パルプ、またはキャストや他の加工方法により得られるフィルムまたはその他の成形体を全て含む。
【0071】
代表的な一例として、本発明は、流動性が増大し、引張強度が15g/d以上、好ましくは20g/d以上と著しく高く、且つ引張弾性率が450g/d以上、好ましくは480g/dの高強度、高弾性の特性を有する繊維を含むことができる。また、本発明は、デニール(Denier)1.5以下、好ましくは1.2以下の非常に細いサイズに繊維を製造することができ、糸切れが発生しにくいポリアミド繊維を提供することができる。
【0072】
本発明の紡糸ドープを用いて繊維を製造するための紡糸方法として、湿式紡糸(Wet Spinning)、乾式紡糸(Dry Spinning)、または乾湿式紡糸(Dry−jet Wet Spinning)工程により紡糸工程を行うことができ、その中でも乾湿式紡糸が好ましいがこれに制限されるものではない。
【0073】
本発明において、ポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物において重合体が液晶特性を示す場合、ドープの固形分の含量が5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%の範囲であるときに、ドープの光学的特性が異方性を示して好ましい。
【0074】
本発明において、光学的異方性を示すポリアミド紡糸ドープの代表的な例としては、下記化学式7または下記化学式8の少なくとも何れか1つの繰り返し単位を含む重合体が挙げられる。
【0075】
【化7】
【0076】
【化8】
【0077】
前記化学式7または化学式8中、R
1またはR
2は、下記化学式9〜13から選択される1つであることができる。
【0078】
【化9】
【0079】
【化10】
【0080】
【化11】
【0081】
【化12】
【0082】
前記化学式中、D
1またはD
2は、−H、−CN、−CONH
2から選択される何れか1つであり、Bは、−CO−、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−COO−、−SO
2−、−SO−、またはC1〜C4の直鎖または分枝状のアルキレン基であり、R
1の場合には、D
1またはD
2の少なくとも1つが−CONH
2であり、R
2の場合には、D
1またはD
2の少なくとも1つが−CNである。
【0083】
前記構造式で、アミド基またはニトリル基がオルト位に置換されることがより好ましく、また、パラ位でバックボーンに結合されて線状(linear)構造の重合体として存在することが、機械的物性や熱的安定性および紡糸特性の点でより好ましい。
【0084】
本発明は、上述の光学的異方性を有するポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物を紡糸、凝固して得られるポリアミドの繊維、パルプ、またはフィルムからなる群の成形物を提供する。
【0085】
前記成形物の例として、ポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物は、紡糸工程時に10以上、好ましくは15以上の高延伸比で紡糸されることができる特徴を有する。
【0086】
また、本発明は、上述の紡糸ドープを用いて製造された繊維の引張強度が15g/d以上、好ましくは20g/d以上であり、引張弾性率が450g/d以上、好ましくは480g/d以上である、高強度、高弾性の特性および/またはデニール1.5以下、好ましくは1.2以下の微小な特性を有する成形物を提供する。