特許第6203377号(P6203377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203377高機能性ポリアミド重合体、それを含む紡糸ドープ組成物、およびその成形物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203377
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】高機能性ポリアミド重合体、それを含む紡糸ドープ組成物、およびその成形物
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20170914BHJP
   D01F 6/80 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C08G69/26
   D01F6/80 331
【請求項の数】33
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-510631(P2016-510631)
(86)(22)【出願日】2014年5月12日
(65)【公表番号】特表2016-518495(P2016-518495A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】KR2014004216
(87)【国際公開番号】WO2014185671
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2015年10月26日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0053614
(32)【優先日】2013年5月13日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0055478
(32)【優先日】2014年5月9日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515296998
【氏名又は名称】ウージュン ケム. カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ジー ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン フン
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−508938(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0041100(US,A1)
【文献】 特開平06−206856(JP,A)
【文献】 特公昭44−031350(JP,B1)
【文献】 米国特許第05728799(US,A)
【文献】 米国特許第05380818(US,A)
【文献】 特開昭50−034397(JP,A)
【文献】 米国特許第03907752(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0036085(US,A1)
【文献】 米国特許第03541054(US,A)
【文献】 特公昭46−016093(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 69/00 − 69/50
C08G 73/00 − 73/26
D01F 1/00 − 6/96
D01F 9/00 − 9/04
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記化学式1から選択される1種または2種以上の芳香族ジアミンと、
(b)下記化学式2から選択される1種または2種以上の芳香族ジアミンと、
(c)下記化学式3から選択される1種または2種以上の芳香族二価有機酸誘導体単量体と、を含み、化学式1および化学式2は、化学式1:化学式2=0.01:99.99〜50:50のモル%で重合されるポリアミド重合体。
[化学式1]
N−Ar(CONH−NH
[化学式2]
N−Ar(CN)−NH
[化学式3]
X−CO−Ar−CO−X
(上記化学式中、Ar、Ar、およびArは、互いに独立して、C〜C34の置換または非置換の芳香族基、並びに−Ar−Z−Ar−であり、前記ArおよびArは、C〜C34の置換または非置換の芳香族基であり、前記Zは、単一結合、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−CO−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC〜C10の置換または非置換の直鎖または分枝状のアルキレン基であり、Xは、ヒドロキシ、ハロゲン、またはC〜Cから選択されるアルコキシ基であり、前記aおよびbは、互いに独立して、1〜4から選択される整数である。)
【請求項2】
前記化学式1の−CONH置換体の少なくとも1つ以上は、化学式1の芳香族ジアミン単量体の一級アミン基のオルト位に置換されている、請求項1に記載のポリアミド重合体。
【請求項3】
前記ジアミン単量体は、化学式1および化学式2の単量体1モルに対して、前記CNまたは−CONH置換基の両方を有さないジアミン単量体0.01〜0.5モル比をさらに含む、請求項1に記載のポリアミド重合体。
【請求項4】
前記化学式1の−CONH置換体を有する芳香族ジアミン単量体が、下記構造式から選択される何れか1つ以上である、請求項2に記載のポリアミド重合体。
【化1】

(前記Aは、−H、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN、または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基であり、Bは、−CO−、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC1〜C10の直鎖または分枝状のアルキレン基である。)
【請求項5】
前記化学式2のニトリル基を有する芳香族ジアミン単量体が、下記構造の化合物から選択される何れか1つである、請求項1に記載のポリアミド重合体。
【化2】

(前記Aは、−H、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN、−CONH、または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基であり、Bは、−CO−、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC1〜C4の直鎖または分枝状のアルキレン基である。)
【請求項6】
前記化学式3の芳香族有機二価酸誘導体単量体は、テレフタル酸、C1〜C4のテレフタレートまたはテレフタロイルハライドから選択される、請求項1に記載のポリアミド重合体。
【請求項7】
前記重合体はキナゾロン基を含む、請求項1に記載のポリアミド重合体。
【化3】
【請求項8】
前記重合体は下記化学式5で表される重合体であって、lまたはmは、モル分率であって、l:m=0.01〜50モル%:99.99〜50モル%であり、重量平均分子量が1万〜1500万である、請求項1に記載のポリアミド重合体。
【化4】
【請求項9】
前記ポリアミドは、l+n:m=0.01〜50モル%:99.99〜50モル%であり、重量平均分子量が1万〜1500万である下記化学式6のキナゾロン基を含む、請求項1に記載のポリアミド重合体。
【化5】

(l、n、およびmはモル分率である。)
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載のポリアミド共重合体を含む、紡糸ドープ組成物。
【請求項11】
無機塩、3級アミン、またはこれらの混合物を含む、請求項10に記載の紡糸ドープ組成物。
【請求項12】
前記無機塩は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属水酸化物の少なくとも何れか1つである、請求項11に記載の紡糸ドープ組成物。
【請求項13】
前記無機塩がLiCOである、請求項12に記載の紡糸ドープ組成物。
【請求項14】
ポリアミド重合体5〜30wt%を含む、請求項10に記載の紡糸ドープ組成物。
【請求項15】
請求項10に記載の紡糸ドープ組成物を紡糸して製造される、ポリアミド繊維。
【請求項16】
(a)下記化学式1および化学式2を、化学式1:化学式2=0.01:99.99〜50:50のモル%で含むジアミン単量体溶液を製造する段階と、
(b)前記溶液に下記化学式3を含む有機二価酸誘導体単量体を投入して重合する段階と、を含んで製造される、ポリアミド重合体の製造方法。
[化学式1]
N−Ar(CONH−NH
[化学式2]
N−Ar(CN)−NH
[化学式3]
X−CO−Ar−CO−X
(上記化学式中、Ar、Ar、およびArは、互いに独立して、C〜C34の置換または非置換の芳香族基、並びに−Ar−Z−Ar−であり、前記ArおよびArは、C〜C34の置換または非置換の芳香族基であり、前記Zは、単一結合、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−CO−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC〜C10の置換または非置換の直鎖または分枝状のアルキレン基であり、Xは、ヒドロキシ、ハロゲン、またはC〜Cから選択されるアルコキシ基であり、前記aおよびbは、互いに独立して、1〜4から選択される整数である。)
【請求項17】
前記溶液製造段階で、−50〜30℃に冷却する段階をさらに含む、請求項16に記載のポリアミド重合体の製造方法。
【請求項18】
(a)下記化学式1および化学式2を、化学式1:化学式2=0.01:99.99〜50:50のモル%で含むジアミン単量体の溶液を製造する段階と、
(b)前記溶液に、下記化学式3を含む有機二価酸誘導体単量体を投入して重合する段階と、
(c)前記重合段階後、重合体に、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属酸化物、またはアルカリ土類金属水酸化物から選択される何れか1つ以上の無機塩、3級アミン、またはこれらの混合物を投入して紡糸ドープを製造する段階と、を含んで製造される、紡糸ドープ組成物の製造方法。
[化学式1]
N−Ar(CONH−NH
[化学式2]
N−Ar(CN)−NH
[化学式3]
X−CO−Ar−CO−X
(上記化学式中、Ar、Ar、およびArは、互いに独立して、C〜C34の置換または非置換の芳香族基、並びに−Ar−Z−Ar−であり、前記ArおよびArは、C〜C34の置換または非置換の芳香族基であり、前記Zは、単一結合、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−CO−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC〜C10の置換または非置換の直鎖または分枝状のアルキレン基であり、Xは、ヒドロキシ、ハロゲン、またはC〜Cから選択されるアルコキシ基であり、前記aおよびbは、互いに独立して、1〜4から選択される整数である。)
【請求項19】
前記3級アミン、無機塩、またはこれらの混合物を重合段階で投入して重合する、請求項18に記載の紡糸ドープ組成物の製造方法。
【請求項20】
前記(a)段階の溶液の溶媒または(c)段階の紡糸ドープの製造時に添加される溶媒は、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA)、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N,N´,N´‐テトラメチルウレア(TMU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項18に記載の紡糸ドープ組成物の製造方法。
【請求項21】
前記重合段階で、化学式3の単量体を分割添加して重合する、請求項18に記載の紡糸ドープ組成物の製造方法。
【請求項22】
前記無機塩がLiCOを含む、請求項19に記載の紡糸ドープ組成物の製造方法。
【請求項23】
前記紡糸ドープは、ポリアミド重合体固形分の含量が5〜30wt%である、請求項18に記載の紡糸ドープ組成物の製造方法。
【請求項24】
前記化学式1の−CONH置換体を有する芳香族ジアミン単量体が、下記構造式から選択される何れか1つ以上である、請求項18に記載の紡糸ドープ組成物の製造方法。
【化6】

(前記Aは、−H、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN、または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基であり、Bは、−CO−、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC1〜C10の直鎖または分枝状のアルキレン基である。)
【請求項25】
前記化学式2のニトリル基を有する芳香族ジアミン単量体が、下記構造の化合物から選択される何れか1つである、請求項18に記載の紡糸ドープ組成物の製造方法。
【化7】

(前記Aは、−H、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN、−CONH、または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基であり、Bは、−CO−、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC1〜C4の直鎖または分枝状のアルキレン基である。)
【請求項26】
前記ニトリル基で置換されたジアミン単量体および前記1級アミノ基で置換された芳香族ジアミン単量体が、下記構造式の化合物である、請求項18に記載の紡糸ドープ組成物の製造方法。
【化8】
【請求項27】
前記化学式3の単量体が、テレプタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリド、またはこれらのCl、Br、I、NOまたは炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基の置換体からなる群から選択される何れか1つ以上である、請求項18に記載の紡糸ドープ組成物の製造方法。
【請求項28】
請求項18から27の何れか一項に記載の重合体がキナゾリノン構造を含む、紡糸ドープ組成物の製造方法。
【請求項29】
請求項1から9の何れか一項に記載のポリアミド重合体である、ポリアミド成形品。
【請求項30】
前記成形品が繊維である、請求項29に記載のポリアミド成形品。
【請求項31】
前記紡糸ドープ組成物は30以上の延伸比で紡糸される、請求項15に記載のポリアミド繊維。
【請求項32】
前記成形品は、引張強度15g/d以上、引張弾性率450g/d以上の特性を有する繊維である、請求項29に記載のポリアミド成形物。
【請求項33】
前記ポリアミド繊維はデニール1.5以下の繊維である、請求項31に記載のポリアミド繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高機能性ポリアミド重合体、それを含む紡糸ドープ組成物、およびそれから得られる成形物に関し、より詳細には、高強度、高弾性率の機能性繊維であるポリアミド重合体およびそれを含むドープ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維は、衣類だけでなく、宇宙、航空、船舶、建築資材、スポーツ用品などの様々な産業分野の核心素材として脚光を浴びており、それに伴い、ナイロン、ポリエステルなどの一般の衣類用繊維より強く、且つ高熱に耐える高性能の繊維に対する要求が増大している。
【0003】
このような高性能繊維としては、炭素繊維(carbon fiber)、アラミド繊維(Aramid fiber)などが挙げられる。炭素繊維とは、有機繊維や樹脂、ピッチなどの有機材料を紡糸して製造した前駆体繊維を、安定化および炭化、250℃以上での延伸黒鉛化することで得られる非黒鉛質炭素からなるフィラメントのことである。炭素繊維は、大きい弾性係数および強度、低い熱膨張係数、高い電気および熱伝導度を有するという利点があるが、製造工程上、微細孔が形成される可能性があるなど、長期信頼性に関する問題が未だに指摘されている。
【0004】
また、アラミド繊維は、1970年代にデュポン(DuPont)社により開発された繊維であり、従来の繊維の2倍以上の強度を有し、強度、弾性率の他にも、耐縮み性に優れた炭素繊維などに比べ破断伸度(Elongation at Break)が3〜4%と比較的高いため、屈曲疲労性や衝撃吸収特性に優れるという利点がある。しかし、紡糸溶剤として硫酸などの強酸が使用されるという点からも分かるように、酸には強くない。したがって、屋外の紫外線などに長期間露出される際には、ポリエステルなどの一般繊維に比べ耐久性があまり良くなく、染色性に劣るという問題がある。また、吸湿率が4〜6%と比較的高く、高温に長時間露出される場合、加水分解による力学低下をまねくため、長期間にわたる保存および使用には不利であるという特性を有する。
【0005】
また、韓国特許出願第1994−5840号および韓国特許登録第0171994号では、ニトリル基置換された単量体を含有するポリアミドが公知されているが、高い延伸比で紡糸されないという欠点があり、低い延伸比で紡糸する場合にも糸切れが頻繁に発生するだけでなく、さらなる機械的物性の改善が要求されて、実質的な商業的利用可能性を有することは困難であるという欠点があった。
【0006】
そこで、繊維の疲労特性を向上させたり、強度を高めたりした品目などの多様化、優れた染色性や捲縮特性を有し、環境にやさしい繊維およびその製造方法に関する研究が行われつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記のような従来の問題点を解決すべく鋭意研究した結果、1級アミド(−CONH)置換体を有する芳香族ジアミン単量体、およびニトリル置換体を有する芳香族ジアミン単量体を含むジアミン系単量体と、芳香族有機二価酸誘導体を含む有機二価酸誘導体単量体とを重合すると、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
したがって、本発明は、従来より高い延伸比で紡糸が可能であるとともに、マイルドな条件で紡糸が可能な、紡糸ドープ組成物およびそれを提供できる新規なポリアミド重合体を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上述の新規なポリアミド重合体の液晶ドープ、特に、芳香族液晶ドープおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、上述の新規なポリアミド重合体で製造した紡糸ドープ組成物から、高い延伸比、例えば15以上、好ましくは20倍、より好ましくは30倍以上の延伸比で紡糸可能な、優れた紡糸性、高強度および高弾性率を有する芳香族アミド繊維およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、染色性に優れた新規なポリアミド繊維を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、硫酸処理、硫酸の中和過程などの複雑な工程がなくても、環境に非常にやさしいアミド繊維、特に芳香族ポリアミド繊維などの成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するために、本発明によるポリアミド重合体は、(a)下記化学式1から選択される1種または2種以上の芳香族ジアミン単量体と、(b)下記化学式2から選択される1種または2種以上の芳香族ジアミン単量体と、(c)下記化学式3から選択される1種または2種以上の芳香族二価有機酸誘導体単量体と、を含む重合単量体を重合することで製造される重合体であって、また、本発明は、それを含む紡糸ドープ組成物およびそれから製造される成形物を提供する。
【0014】
[化学式1]
N−Ar(CONH−NH
【0015】
[化学式2]
N−Ar(CN)−NH
【0016】
[化学式3]
X−CO−Ar−CO−X
(上記化学式中、Ar、Ar、およびArは、互いに独立して、C〜C34の置換または非置換の芳香族基または−Ar−Z−Ar−であり、前記ArおよびArは、C〜C34の置換または非置換の芳香族基であり、前記Zは、単一結合、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−CO−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC〜C10の置換または非置換の直鎖または分枝状のアルキレン基であり、Xは、ヒドロキシ、ハロゲン、またはC〜Cから選択されるアルコキシ基であり、前記aおよびbは、互いに独立して、1〜4から選択される整数である。)
【0017】
好ましくは、本発明において、前記化学式1の単量体は、少なくとも1つ以上の−CONH置換体が芳香族ジアミン単量体の一級アミン基のオルト(ortho)位に置換されるようにすることが好ましく、より好ましくは、前記−CONH置換体の全てが芳香族ジアミン単量体のアミン基のオルト位に位置するようにすることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記化学式1の−CONH置換体を有する芳香族ジアミン単量体は、化学式1および化学式2を含む総ジアミン単量体の0.001〜50モル%、好ましくは0.01〜20モル%で使用することが望ましい。本発明の芳香族ジアミンは、−CONHで置換された芳香族ジアミンと、ニトリル基で置換された芳香族ジアミンとの混合物のみを使用してもよいが、前記化学式1および化学式2の芳香族ジアミン以外の他のジアミン単量体を追加する場合、重合体の物性を調節することができて、これもまた本発明の範疇に属する。
【0019】
本発明において、前記化学式1および化学式2以外のジアミン単量体を追加する場合、化学式1および化学式2で表される芳香族ジアミン単量体1モルに対して、0.001〜0.5モル比、好ましくは0.3モル比までの範囲で使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明において、化学式1および化学式2を含む総ジアミン単量体と、化学式3を含む有機ジカルボン酸誘導体単量体との比率は、1:0.9〜1.1モル比で使用することが経済的であるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明において、前記−CONHで置換された前記化学式1の芳香族ジアミン単量体の含量が総ジアミン単量体の含量の50モル%を超える場合には、重合段階で粘度が上昇し過ぎて、熱伝逹が不良であるため容易な反応制御が困難となり、また、前記重合体を用いて紡糸ドープを製造したときに、異方性でなく等方性のドープ組成物となり得るため、紡糸が困難となる恐れがある。
【0022】
本発明の重合体として、例えば、前記化学式1の−CONH置換体が置換された芳香族ジアミン系単量体0.001〜50モル%および化学式2のニトロ基で置換された芳香族ジアミン系単量体99.99〜50モル%のジアミン単量体を、化学式3の芳香族有機二価酸系単量体と当量比で重合したものが挙げられる。
【0023】
上記で、化学式1と化学式2の芳香族ジアミン単量体と、前記化学式1と化学式2以外の芳香族ジアミン単量体および/または脂肪族ジアミン単量体と、の混合単量体を用いて重合する場合、製造された重合体を用いて成形品を製造するときに成形品の機械的強度や弾性率などの機械的特性を調節することができ、また、紡糸ドープを製造するときにも粘度を調節することができるため好ましい。
【0024】
また、本発明において、ジアミン単量体は、アミド基やニトリル基が同時に一つの芳香族ジアミン単量体に置換されたものを採択してもよく、単量体がニトリル基やアミド基を有する限り、本発明から排除されない。
【0025】
本発明のアミド官能基を有する芳香族ジアミンの具体的な例としては下記のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
まず、化学式1の1級アミド基を置換体として有する芳香族ジアミン単量体の例としては下記のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
【化1】

(前記Aは、−H、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN、または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基であり、Bは、−CO−、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC1〜C10の直鎖または分枝状のアルキレン基である。)
【0028】
また、本発明の前記化学式2のニトリル基を置換体として有する芳香族ジアミン単量体の例としては、下記構造式の化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0029】
【化2】

(前記Aは、−H、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN、−CONH、または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基であり、Bは、−CO−、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC1〜C10の直鎖または分枝状のアルキレン基である。)
【0030】
本発明において、化学式3の芳香族有機二価酸誘導体単量体としては、前記化学式3から選択される1種または2種以上のものであれば制限されない。
【0031】
また、本発明は、前記化学式3の芳香族有機二価酸誘導体単量体の他に、物性の調節のために、前記化学式3以外のジカルボン酸系単量体をさらに使用することも含む。もちろん、化学式3の芳香族ジカルボン酸系単量体から選択される1種または2種以上を採択することが物性の側面で最も有利であるが、流動性や作業性などを考慮すると、前記化学式3の芳香族ジカルボン酸系単量体以外のジカルボン酸系化合物(例えば、ニトリル基で置換されていないものや脂肪族ジカルボン酸系化合物など)を総ジカルボン酸系単量体の50モル%まで、より好ましくは0.01〜30モル%まで追加してもよい。
【0032】
本発明の化学式3に属する芳香族ジカルボン酸系化合物としては、例えば、テレフタル酸、C1〜C4のテレフタレートまたはテレフタロイルハライド、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ハライド、イソフタル酸、イソフタル酸ハライド、ジフェニルジカルボン酸およびそのハライドやエステル系単量体などが挙げられ、また、これら単量体が、置換体としてCl、Br、I、NO、または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシ基などから選択される1つ以上の置換体を有することも可能であって、これに限定されるものではない。
【0033】
前記化学式3の芳香族ジカルボン酸系単量体以外の他のジカルボン酸単量体の具体例としては、アジピン酸、セバシン酸(sebacic acid)などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサン‐1,4‐ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、そのハライドまたはそのエステル系単量体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明において、化学式1の芳香族ジアミンのアミン基の置換体である1級アミド基が芳香族ジアミンのアミン基のオルト位に置換された単量体を含むことが好ましい理由は、その原因が明確ではないが、ニトリル基で置換された芳香族ジアミン単量体とともに重合されることで、紡糸ドープの可紡性(spinnability)が著しく向上して高い延伸比が達成でき、特に、機械的物性を著しく向上させることができる効果があるためである。このようなことの原因の一つは、重合体のバックボーン(back−bone)にある、重合により形成されたアミド連結環が芳香族ジアミンに置換されたアミド基と互いに反応して、下記化学式4のようなキナゾリノン(quinazolinone)環を形成することに起因すると考えられる。この場合、機械的強度が著しく上昇するとともに、重合単位中に存在するニトリル基置換体と相互作用して可紡性(spinnability)が著しく向上されると考えられる。
【0035】
【化3】
【0036】
以下、本発明の重合体の一例として、下記の芳香族ジアミン単量体とテレフタロイルクロリドを重合して生成される化学式5の重合体を用いて詳細に説明する。
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】

(lまたはmは、反応した単量体のモル分率であって、l:m=0.001〜50モル%:99.99〜50モル%であり、重量平均分子量が1万〜1500万である重合体である。)
【0039】
前記重量平均分子量は、リチウムクロリド(LiCl)の濃度が0.05MであるN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶離液(Eluent)として使用し、試料を0.1g/Lに希釈して注入した後、1ml/minの速度で1つのガードカラム(PLgel Olexis Guard 50*7.5mm、Agilent)および2つのメインカラム(PLgel Olexis 300*7.5mm、Agilent)を連続して通過してから、RI(Refractive Index)装置で検出(Detection)し、ポリスチレン(polystyrene)を標準物質として測定した。
【0040】
また、前記構造式を含む本発明では、便宜上、重合体単位を1つの構造式で表現したが、実際に重合体は下記単位がランダムに重合されているものであるということは、当業者にとって自明である。
【0041】
また、本発明において、前記化学式5の重合体を用いて紡糸ドープを製造する場合、化学構造式は次のような化学式6の構造を含むことが分かる。これは、重合体の単量体である芳香族ジアミンのオルト位に置換された1級アミド基置換体が、重合により重合体バックボーンのアミド基と反応してキナゾリノン(quinazolinone)環を形成するためである。
【0042】
【化6】

(l、n、およびmは、重合した単量体のモル分率であって、l+n:m=0.001〜50モル%:99.99〜50モル%であり、上記の分子量測定方法で測定した重量平均分子量が1万〜1500万である。)
【0043】
また、本発明は、上記の多様な重合体を含む紡糸ドープを提供する。
【0044】
本発明による紡糸ドープにおいて、化学式1および化学式2の芳香族ジアミンと化学式3の芳香族ジカルボン酸系単量体の重合体は、液晶特性を示し、円滑に紡糸されるという利点を有するが、紡糸特性や液晶特性または加工性などを調節するために、前記化学式以外の単量体をさらに含んでもよい。
【0045】
本発明の重合段階で使用する溶媒としては、単量体または重合体を溶解することができるものであれば特に制限されないが、例えば、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N,N´,N´‐テトラメチルウレア(TMU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの混合物が挙げられるが、これに制限されない。
【0046】
本発明では、前記重合段階、または重合後に紡糸ドープを製造する段階で、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属水酸化物を投入する場合、重合体の粘度が低くなって重合を追加的に行うことができるだけでなく、紡糸ドープを製造する固形分の範疇内で流動性が増大して、円滑に紡糸(spinning)できるため好ましい。また、上記の塩を投入する場合、芳香族有機二価酸系単量体としてテレフタロイルクロリドなどの塩化物を使用する際の副反応生成物である塩酸を中和させるという点で好ましい。
【0047】
前記無機塩の具体例としては、LiCl、LiCOなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
また、本発明では、前記無機塩の他に、3級アミンを投入したり混合投与したりしても、前記無機塩を投入する場合とほぼ類似した流動性の増加効果を有するが、前記無機塩は、少量で使用するだけで流動性を十分向上させることができるため好ましい。
【0049】
本発明では、紡糸ドープの製造時に有機溶媒をさらに添加することができ、混合溶媒としては、例えば、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N、N´、N´‐テトラメチルウレア(TMU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの混合物が使用できるが、これに限定されるものではない。
【0050】
本発明において、前記紡糸ドープ組成物中の固形分の含量は、紡糸や作業が可能であれば特に制限されないが、好ましくは固形分を5〜30wt%で含むことが有利である。紡糸方法としては、通常の繊維の紡糸方法および装置が使用でき、これは当業者にとって公知のものであるため、それ以上の説明は省略する。
【0051】
以下、本発明の重合方法について例をあげて説明する。
【0052】
本発明の重合方法の一例として、先ず、下記化学式1および化学式2の芳香族ジアミン単量体を含むジアミン単量体を溶媒に溶解して溶液を製造した後、次に、または溶液製造と同時に冷却する。前記冷却は、下記化学式3の芳香族有機二価酸誘導体単量体を含む有機二価酸誘導体単量体を投入するときに、発熱による反応を制御する必要があるためである。本発明の前記冷却段階における冷却温度は、通常、−50℃〜30℃、好ましくは−20℃〜10℃程度に冷却することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0053】
[化学式1]
N−Ar(CONH−NH
【0054】
[化学式2]
N−Ar(CN)−NH
【0055】
[化学式3]
X−CO−Ar−CO−X
(上記化学式中、Ar、Ar、およびArは、互いに独立して、C〜C34の置換または非置換の芳香族基または−Ar−Z−Ar−であり、前記ArおよびArは、C〜C34の置換または非置換の芳香族基であり、前記Zは、単一結合、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−CO−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC〜C10の置換または非置換の直鎖または分枝状のアルキレン基であり、Xは、ヒドロキシ、ハロゲン、またはC〜Cから選択されるアルコキシ基であり、前記aおよびbは、互いに独立して、1〜4から選択される整数である。)
【0056】
次に、前記化学式3から選択される1種以上の芳香族有機二価酸単量体溶液を一括または分割投入して重合する。この際、芳香族有機二価酸系単量体は、そのまま投入しても、溶媒に溶解してから投入してもよい。前記分割投入時、各分割段階での投入量は特に制限されないが、例えば、2回分割投入する場合には、2回の投入量が10〜90重量%程度であるが、これに制限されない。
【0057】
また、本発明において、前記重合段階で、共重合体を製造するために前記化学式1、2および3以外の多様なジアミンおよび/または二価酸単量体を混合する場合、昇温して反応する場合もあるため、反応温度は限定されない。
【0058】
本発明では、前記重合中に、および/または重合後に、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属酸化物、またはアルカリ土類金属水酸化物から選択される何れか1つ以上の無機塩や3級アミンから選択される何れか1つ以上を投入して重合してもよく、それから紡糸ドープを製造してもよい。
【0059】
本発明において、前記無機塩や3級アミンの投入量は特に制限されないが、流動性のために、ジアミン単量体1モルに対して0.9〜1.3モル比で使用することが好ましい。より好ましくは、1.0〜1.1モル比で投入することが、原料の無駄使いがなくて好ましい。
【0060】
本発明において、紡糸ドープ中の固形分(重合体の含量)の含量は制限されないが、例えば、5〜30wt%である。前記紡糸ドープは、重合した後、無機塩を投入することで流動性を増大させて紡糸ドープを製造してもよく、別に溶媒をさらに投入して紡糸ドープを製造してもよい。
【0061】
紡糸ドープを製造する際には、重合後、重合体を粉砕し、無機塩を投入して攪拌することで紡糸ドープを製造することが代表的な一例である。
【0062】
また、本発明は、前記重合体で説明したように、紡糸ドープの重合体はキナゾリノン単位を含む紡糸ドープ組成物も含む。
【0063】
以下、本発明の重合体および紡糸ドープを製造する方法をさらに具体的に説明する。
【0064】
すなわち、本発明の製造方法の一例は、1)重合溶媒に、化学式1の1級アミド基で置換された芳香族ジアミンおよび化学式2のニトロ基で置換された芳香族ジアミンの単量体を含む芳香族ジアミン単量体を溶解する段階と、
2)前記溶液を−50〜30℃に冷却して強く攪拌しながら、化学式3の芳香族有機二価酸誘導体単量体を一括または分割投入して重合体を製造する段階と、を含む。
【0065】
本発明は、前記重合段階で、3)アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属酸化物、またはアルカリ土類金属水酸化物の少なくとも何れか1つであることを特徴とする無機塩や3級アミンから選択される1種以上を投入して、重合体とともに0〜100℃で攪拌する段階をさらに含んで重合体を製造する方法を含むことができる。
【0066】
本発明の製造方法において、前記有機溶媒としては、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA)、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N,N´,N´‐テトラメチルウレア(TMU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの混合物を使用することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0067】
上述のポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物の製造方法のうち2)の重合段階で、前記芳香族有機二価酸誘導体単量体を分割添加することは、不均一な重合により発生する、紡糸に適しない超高分子量の生成を防止できるため好ましい。分割添加するときに、例えば、1次に総投入量の45〜55%を先添加し、残りの量を後添加する方法で重合する方法などがあるが、これに限定されるものではない
【0068】
上述のポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物の製造方法のうち3)の工程は、2)の工程中に、芳香族ジアミンと芳香族有機二価酸誘導体単量体(例えば、芳香族二酸ハロゲン化物(diacid halide))を含む単量体の重縮合反応により発生するハライド化水素副産物を中和し、流動性を増大させるための過程である。前記無機塩は、その種類が制限されるものではないが、特にLiCOの単独または混合物である際に、製造されるポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物の紡糸性が特に高い効果を示した。
【0069】
また、1級アミド基がアミン基のオルト位に置換された芳香族ジアミン単量体が重合体に製造された後、前記LiCOとともに攪拌される過程で置換された1級アミド構造が重合体のバックボーンに存在するバックボーンアミド基と一部反応してキナゾリノン構造に変換されるという構造的変換も観察され、この際、機械的強度や延伸性がさらに増大する効果が観察された。
【0070】
本発明は、前記紡糸ドープ(組成物)を用いて紡糸して製造されるポリアミド繊維、パルプ、またはキャストや他の加工方法により得られるフィルムまたはその他の成形体を全て含む。
【0071】
代表的な一例として、本発明は、流動性が増大し、引張強度が15g/d以上、好ましくは20g/d以上と著しく高く、且つ引張弾性率が450g/d以上、好ましくは480g/dの高強度、高弾性の特性を有する繊維を含むことができる。また、本発明は、デニール(Denier)1.5以下、好ましくは1.2以下の非常に細いサイズに繊維を製造することができ、糸切れが発生しにくいポリアミド繊維を提供することができる。
【0072】
本発明の紡糸ドープを用いて繊維を製造するための紡糸方法として、湿式紡糸(Wet Spinning)、乾式紡糸(Dry Spinning)、または乾湿式紡糸(Dry−jet Wet Spinning)工程により紡糸工程を行うことができ、その中でも乾湿式紡糸が好ましいがこれに制限されるものではない。
【0073】
本発明において、ポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物において重合体が液晶特性を示す場合、ドープの固形分の含量が5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%の範囲であるときに、ドープの光学的特性が異方性を示して好ましい。
【0074】
本発明において、光学的異方性を示すポリアミド紡糸ドープの代表的な例としては、下記化学式7または下記化学式8の少なくとも何れか1つの繰り返し単位を含む重合体が挙げられる。
【0075】
【化7】
【0076】
【化8】
【0077】
前記化学式7または化学式8中、RまたはRは、下記化学式9〜13から選択される1つであることができる。
【0078】
【化9】
【0079】
【化10】
【0080】
【化11】
【0081】
【化12】
【0082】
前記化学式中、DまたはDは、−H、−CN、−CONHから選択される何れか1つであり、Bは、−CO−、−C(O)NH−、−NH−C(O)−、−COO−、−SO−、−SO−、またはC1〜C4の直鎖または分枝状のアルキレン基であり、Rの場合には、DまたはDの少なくとも1つが−CONHであり、Rの場合には、DまたはDの少なくとも1つが−CNである。
【0083】
前記構造式で、アミド基またはニトリル基がオルト位に置換されることがより好ましく、また、パラ位でバックボーンに結合されて線状(linear)構造の重合体として存在することが、機械的物性や熱的安定性および紡糸特性の点でより好ましい。
【0084】
本発明は、上述の光学的異方性を有するポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物を紡糸、凝固して得られるポリアミドの繊維、パルプ、またはフィルムからなる群の成形物を提供する。
【0085】
前記成形物の例として、ポリアミド重合体の紡糸ドープ組成物は、紡糸工程時に10以上、好ましくは15以上の高延伸比で紡糸されることができる特徴を有する。
【0086】
また、本発明は、上述の紡糸ドープを用いて製造された繊維の引張強度が15g/d以上、好ましくは20g/d以上であり、引張弾性率が450g/d以上、好ましくは480g/d以上である、高強度、高弾性の特性および/またはデニール1.5以下、好ましくは1.2以下の微小な特性を有する成形物を提供する。
【発明の効果】
【0087】
本発明による新規なポリアミド重合体は、CN官能基およびCONH官能基を含む構造であって、それを含む紡糸ドープ組成物を用いて製造された繊維は、従来の繊維に比べ著しく優れた強度および弾性力を有する。
【0088】
上記の構造により、紫外線などに長期間露出時にも強く、長期間使用時にも加水分解のような力学低下がなく、優れた耐久性を有する。
【0089】
また、本発明の紡糸ドープを用いて紡糸するときに、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上の延伸比を実現することができるという利点があり、このような延伸比特性によって、高光沢の繊維が生産可能である。
【0090】
また、本発明の重合体は、染料(dye)を用いた染色が可能であり、多様な色の繊維を生産することができるという利点があり、高強度、高機能性の多様な分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】本発明の実施例1による紡糸ドープを紡糸して製造した繊維フィラメントの写真である。
図2】本発明の実施例1により製造した、染色された繊維フィラメントの写真である。
図3】比較例1および実施例3での紡糸ドープ組成物の赤外線分光器の吸収スペクトル図面である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下、本発明の利点および特徴、そしてそれらを果たす方法を、実施例および比較例により具体的に説明する。本発明は、添付図面とともに詳細に後述される実施例および比較例を参照すると明確になるであろう。
【0093】
本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、相異なる多様な形態に具現されることができ、本実施例は、本発明の開示が完全になるようにするとともに、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に伝達するために提供されるものであって、本発明は請求項の範疇により定義される。明細書全体において、同一参照符号は同一構成要素を示す。本明細書で用いられた用語は、実施例および比較例を説明するためのものであり、本発明を制限するためのものではない。
【0094】
以下、本発明の実施例により、本発明のポリアミド重合体および紡糸ドープ組成物の製造方法について説明する。
【0095】
下記実施例および比較例において、繊度値は、1本に対してASTM D 1577 Option C試験方法で10回以上測定した値の平均値であり、引張強度、伸度、および引張弾性率の値は、1本に対してKS K 0327試験方法で10回以上測定した値の平均値である。また、重量平均分子量はGPC(Agilent Infinity 1260 series)を測定した。測定条件は、リチウムクロリド(LiCl)の濃度が0.05MであるN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶離液(Eluent)として使用し、試料を0.1g/Lに希釈して注入した後、1ml/minの速度で1つのガードカラム(PLgel Olexis Guard 50*7.5mm、Agilent)および2つのメインカラム(PLgel Olexis 300*7.5mm、Agilent)を連続して通過してから、RI(Refractive Index)装置で検出(Detection)した。また、標準物質としてポリスチレンを使用した。
【0096】
[実施例1]
(重合体および紡糸ドープの製造)
窒素雰囲気下で、攪拌機付きの250mLの四口丸底フラスコに、10.054g(75.5mmol)の2,5‐ジアミノベンゾニトリル(2,5‐diaminobenzonitrile、DAN)、0.01143g(0.0756mmol)の2,5‐ジアミノベンズアミド(2,5‐diaminobenzamide、DAA)、および100mLのDMAcを入れた後、室温で完全に溶解させた。この溶液を、氷浴(ice bath)を用いて0℃に冷却した。この溶液にテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)7.672g(37.8mmol)を添加して1分間攪拌した後、TPC7.672g(37.8mmol)を追加添加した。この際、粘度が速く増加して10〜20秒内にゲル状の固形物が生成された。
【0097】
このゲル状の固形物をミキサーで粉砕した後、炭酸リチウム(lithium carbonate、LiCO)5.585g(75.6mmol)を添加し、反応中に生成されたHClを中和させて1時間内に、流動性を有し、且つ銀白色の光沢を有する紡糸ドープ組成物を得た。
【0098】
上記得られたゲル状の固形物を用いてGPC(Agilent Infinity 1260 series)を測定した。測定条件は、リチウムクロリド(LiCl)の濃度が0.05MであるN,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶離液として使用し、試料を0.1g/Lに希釈して注入した後、1ml/minの速度で1つのガードカラム(PLgel Olexis Guard 50*7.5mm、Agilent)および2つのメインカラム(PLgel Olexis 300*7.5mm、Agilent)を連続して通過してから、RI(Refractive Index)装置で検出した。測定結果(ポリスチレン基準)、重量平均分子量4,360,000g/mol、分子量分布6.22のポリアミド重合体が得られ、POM(Polarized Optical Microscope)で確認した結果、シュリーレン組織(Schlieren texture)を有するネマチック液晶相であることが分かった。また、前記炭酸リチウムを投入する前のゲル状を用いて同様に分子量を測定した結果、重量平均分子量が257万であり、ポリアミドの生成を赤外線分光装置(IR)および1H‐NMRを用いて確認した。リチウム塩の投入による分子量の増加は、粘度が低くなって追加重合が起こることが分かった。
【0099】
(延伸比10で巻き取る場合におけるポリアミドの繊維の製造および物性)
実施例1で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比10の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.7デニール、引張強度は18.0g/d、伸度は4.6%、引張弾性率(3%)は451g/dであった。
【0100】
(延伸比30で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例1で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比30の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.1デニール、引張強度は26.3g/d、伸度は3.7%、引張弾性率(3%)は576g/dであった。
【0101】
図1は本発明の実施例1による芳香族アミド重合体を含む紡糸ドープ組成物を紡糸して、延伸比30で製造した繊維フィラメントの写真である。これを参照すれば、高い延伸比で延伸可能であり、高光沢のフィラメントが得られることが確認できる。図2は本発明の実施例1によるポリアミド重合体を含む紡糸ドープ組成物に多様な染料を添加して延伸比30で紡糸した、染色された繊維フィラメントの写真である。完成されたドープの重合体wt%に対して1.6wt%の染料を前記ドープに添加して攪拌した後、紡糸工程を経ることで、多様な色のフィラメント糸が得られた。この際、染料としては、多様な色の酸性染料、塩基性染料、反応性染料などが使用できる。本発明によれば、染料を用いて容易に染色することができ、多様な色の繊維が生産できることが分かった。
【0102】
[実施例2]
(重合体および紡糸ドープの製造)
窒素雰囲気下で、攪拌機付きの250mLの四口丸底フラスコに、10.034g(75.4mmol)の2,5‐ジアミノベンゾニトリル、0.03428g(0.227mmol)の2,5‐ジアミノベンズアミド、および100mLのDMAcを入れた後、室温で完全に溶解させた。この溶液を氷浴を用いて0℃に冷却した。
【0103】
この溶液に、テレフタロイルクロリド7.673g(37.8mmol)を1次添加して1分間攪拌した後、TPC7.673g(37.8mmol)を追加添加した。この際、粘度が速く増加して10〜20秒内にゲル状の固形物が生成された。
【0104】
このゲル状の固形物をミキサーで粉砕した後、炭酸リチウム5.585g(75.6mmol)を添加し、反応中に生成されたHClを中和させて1時間内に、流動性を有し、且つ銀白色の光沢を有する紡糸ドープ組成物を得た。
【0105】
上記得られたゲル状の固形物を実施例1と同様に分析した結果、重量平均分子量3,220,000g/mol、分子量分布5.69のポリアミド重合体が得られたことが確認され、POMで確認した結果、シュリーレン組織を有するネマチック液晶相であることが分かった。
【0106】
(延伸比10で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例2で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比10の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.8デニール、引張強度は19.0g/d、伸度は5.1%、引張弾性率(3%)は410g/dであった。
【0107】
(延伸比30で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例2で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比30の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.0デニール、引張強度は27.7g/d、伸度は3.9%、引張弾性率(3%)は649g/dであった。
【0108】
[比較例1]
(重合体および紡糸ドープの製造)
窒素雰囲気下で、攪拌機付きの250mLの四口丸底フラスコに、10.064g(75.6mmol)の2,5‐ジアミノベンゾニトリルおよび100mLのDMAcを入れた後、室温で完全に溶解させた。この溶液を氷浴を用いて0℃に冷却した。この溶液に、テレフタロイルクロリド7.673g(37.8mmol)を1次添加して1分間攪拌した後、TPC7.673g(37.8mmol)を2次添加した。この際、粘度が速く増加して10〜20秒内にゲル状の固形物が生成された。このゲル状の固形物をミキサーで粉砕した後、炭酸リチウム5.585g(75.6mmol)を添加し、反応中に生成されたHClを中和させて1時間内に、銀白色の光沢を有するポリ(2,5‐ジアミノベンゾニトリル‐テレフタルアミド)[poly(2,5‐diaminobenzonitrile‐terephthalamide)]紡糸ドープ組成物を得た。
【0109】
上記得られたゲル状の固形物を実施例1と同様に分析した結果、重量平均分子量4,100,000g/mol、分子量分布6.48のポリアミド重合体が得られたことが確認され、POMで確認した結果、シュリーレン組織を有するネマチック液晶相であることが分かった。
【0110】
(延伸比10で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
比較例1で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比10以上の速度でローラーに巻き取ることを試した。しかし、比較例1で製造された紡糸ドープ組成物は、実施例に比べ、有効な長さのポリアミド繊維が得られるような紡糸性を有さず、著しく劣っており、繊維の表面が均一ではないなどの欠点があった。また、有効な長さのポリアミド繊維が得られるとしても、延伸比10以上の紡糸は不可能であった。すなわち、延伸比12、15、および30の何れの場合にも、有効な長さに延伸されないという欠点があった。また、糸切れが発生した繊維を一部使用して、実施例1と同様に同一染料を用いて染色評価を行ったところ、円滑に染色されず、また紙に染色剤が染み出ることが観察された。
【0111】
[実施例3]
窒素雰囲気下で、攪拌機付きの250mLの四口丸底フラスコに、9.500g(71.3mmol)の2,5‐ジアミノベンゾニトリル、0.568g(3.76mmol)の2,5‐ジアミノベンズアミド、および100mLのDMAcを入れた後、室温で完全に溶解させた。この溶液を氷浴を用いて0℃に冷却した。この溶液に、テレフタロイルクロリド7.624g(37.6mmol)を添加して1分間攪拌した後、TPC7.624g(37.6mmol)を追加添加した。
【0112】
この際、粘度が速く増加して10〜20秒内にゲル状の固形物が生成された。このゲル状の固形物をミキサーで粉砕した後、炭酸リチウム5.549g(75.1mmol)を添加し、反応中に生成されたHClを中和させて1時間内に、銀白色の光沢を有する紡糸ドープ組成物を得た。
【0113】
前記実施例3および比較例1の紡糸ドープ組成物を蒸留水に浸漬させた後、メタノールおよびアセトンで順に水洗および乾燥した後のドープ組成物を赤外線分光器(図3)で測定したところ、実施例3で、ラクタム(Lactam)ピークのN−C=Nストレッチング領域である1365cm−1でのピークが増加することが確認され、このことから、キナゾリノン構造が形成され、ポリ(2,5‐ジアミノベンゾニトリル‐テレフタルアミド‐コ‐2,5‐ジアミノベンズアミド‐テレフタルアミド‐コ‐4‐キナゾリノンアミド)構造(化学式6)が生成されたことが確認された。一方、前記リチウム塩を添加していないゲル状の固形物を分析した結果、上記のようなキナゾリノン構造が確認されなかった。このことから、リチウム塩を追加して紡糸ドープを製造する際に上記のような環が形成されると考えられる。上記得られたゲル状の固形物を実施例1と同様に分析した結果、重量平均分子量3,120,000g/mol、分子量分布5.22のポリアミド重合体が得られたことが分かった。
【0114】
(延伸比10で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例3で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比10の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は2.3デニール、引張強度は14.3g/d、伸度は6.1%、引張弾性率(3%)は394g/dであった。
【0115】
(延伸比30で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例3で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比30の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.5デニール、引張強度は24.5g/d、伸度は4.2%、引張弾性率(3%)は535g/dであった。
【0116】
[実施例4]
(重合体および紡糸ドープの製造)
窒素雰囲気下で、攪拌機付きの250mLの四口丸底フラスコに、10.034g(75.4mmol)の2,5‐ジアミノベンゾニトリル、0.03428g(0.227mmol)の2,5‐ジアミノベンズアミド、および100mLのNMPを入れた後、室温で完全に溶解させた。この溶液を氷浴を用いて0℃に冷却した。
【0117】
この溶液に、テレフタロイルクロリド7.673g(37.8mmol)を1次添加して1分間攪拌した後、TPC7.673g(37.8mmol)を追加添加した。この際、粘度が速く増加して10〜20秒内にゲル状の固形物が生成された。
【0118】
このゲル状の固形物をミキサーで粉砕した後、炭酸リチウム5.585g(75.6mmol)を添加し、反応中に生成されたHClを中和させて1時間内に、流動性を有し、且つ銀白色の光沢を有する紡糸ドープ組成物を得た。
【0119】
上記得られたゲル状の固形物を実施例1と同様に分析した結果、重量平均分子量4,150,000g/mol、分子量分布5.95のポリアミド重合体が得られたことが確認され、POMで確認した結果、シュリーレン組織を有するネマチック液晶相であることが分かった。
【0120】
(延伸比10で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例4で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比10の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.7デニール、引張強度は18.6g/d、伸度は4.8%、引張弾性率(3%)は457g/dであった。
【0121】
(延伸比30で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例4で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比30の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.1デニール、引張強度は27.5g/d、伸度は3.7%、引張弾性率(3%)は631g/dであった。
【0122】
[実施例5]
(重合体および紡糸ドープの製造)
窒素雰囲気下で、攪拌機付きの250mLの四口丸底フラスコに、9.000g(67.6mmol)の2,5‐ジアミノベンゾニトリル、0.788g(7.29mmol)の1,4‐ジアミノベンゼン(1、4‐diaminobenzene、DAB)、0.03406g(0.225mmol)の2,5‐ジアミノベンズアミド、および100mLのDMAcを入れた後、室温で完全に溶解させた。この溶液を氷浴を用いて0℃に冷却した。
【0123】
この溶液に、テレフタロイルクロリド7.624g(37.6mmol)を1次添加して1分間攪拌した後、TPC7.624g(37.6mmol)を追加添加した。この際、粘度が速く増加して10〜20秒内にゲル状の固形物が生成された。
【0124】
このゲル状の固形物をミキサーで粉砕した後、炭酸リチウム5.549g(75.1mmol)を添加し、反応中に生成されたHClを中和させて1時間内に、流動性を有し、且つ銀白色の光沢を有する紡糸ドープ組成物を得た。
【0125】
上記得られたゲル状の固形物を実施例1と同様に分析した結果、重量平均分子量5,080,000g/mol、分子量分布6.28のポリアミド重合体が得られたことが確認され、POMで確認した結果、シュリーレン組織を有するネマチック液晶相であることが分かった。
【0126】
(延伸比10で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例5で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比10の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は2.0デニール、引張強度は17.4g/d、伸度は5.2%、引張弾性率(3%)は402g/dであった。
【0127】
(延伸比30で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例5で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比30の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.3デニール、引張強度は25.3g/d、伸度は4.1%、引張弾性率(3%)は562g/dであった。
【0128】
[実施例6]
(重合体および紡糸ドープの製造)
窒素雰囲気下で、攪拌機付きの250mLの四口丸底フラスコに、13.000g(51.5mmol)の4,4´‐ジアミノ‐6´‐シアノベンズアニリド(4,4´‐diamino‐6´‐benzanilide、DACaB)、0.0419g(0.155mmol)の4,4´‐ジアミノ‐6´‐カルバモイルベンズアニリド(4,4´‐diamino‐6´‐carbamoylbenzanilide、DACyB)、および100mLのDMAcを入れた後、室温で完全に溶解させた。この溶液を氷浴を用いて0℃に冷却した。
【0129】
この溶液に、テレフタロイルクロリド5.247g(25.8mmol)を1次添加して1分間攪拌した後、TPC5.247g(25.8mmol)を追加添加した。この際、粘度が速く増加して10〜20秒内にゲル状の固形物が生成された。
【0130】
このゲル状の固形物をミキサーで粉砕した後、炭酸リチウム3.819g(51.7mmol)を添加し、反応中に生成されたHClを中和させて1時間内に、流動性を有し、且つ銀白色の光沢を有する紡糸ドープ組成物を得た。
【0131】
上記得られたゲル状の固形物を実施例1と同様に分析した結果、重量平均分子量4,680,000g/mol、分子量分布5.42のポリアミド重合体が得られたことが確認され、POMで確認した結果、シュリーレン組織を有するネマチック液晶相であることが分かった。
【0132】
(延伸比10で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例6で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比10の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.8デニール、引張強度は18.2g/d、伸度は4.2%、引張弾性率(3%)は465g/dであった。
【0133】
(延伸比30で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例6で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比30の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.2デニール、引張強度は26.3g/d、伸度は3.6%、引張弾性率(3%)は624g/dであった。
【0134】
[実施例7]
(重合体および紡糸ドープの製造)
窒素雰囲気下で、攪拌機付きの250mLの四口丸底フラスコに、炭酸リチウム5.585g(75.6mmol)およびDMAc100mLを入れた後、70℃で3時間攪拌した。室温に冷却した後、10.034g(75.4mmol)の2,5‐ジアミノベンゾニトリル(2,5‐diaminobenzonitrile)および0.03428g(0.227mmol)の2,5‐ジアミノベンズアミド(2,5‐diaminobenzamide)を投入した。この溶液を氷浴を用いて0℃に冷却した。
【0135】
この溶液に、テレフタロイルクロリド7.673g(37.8mmol)を1次添加して1分間攪拌した後、TPC7.673g(37.8mmol)を追加添加した。この際、10〜60秒内に中和により気泡が発生しながら粘度が速く増加し、1時間攪拌することで、流動性を有し、且つ銀白色の光沢を有する紡糸ドープ組成物を得た。
【0136】
上記得られた組成物を実施例1と同様に分析した結果、重量平均分子量3,950,000g/mol、分子量分布6.34のポリアミド重合体が得られたことが確認され、POMで確認した結果、シュリーレン組織を有するネマチック液晶相であることが分かった。
【0137】
(延伸比10で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例7で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比10の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は2.0デニール、引張強度は17.6g/d、伸度は4.8%、引張弾性率(3%)は397g/dであった。
【0138】
(延伸比30で巻き取る場合におけるポリアミド繊維の製造および物性)
実施例7で製造された紡糸ドープ組成物を55℃で数時間熟成させながら脱泡した後、100、250、400メッシュのステンレススチール網で濾過した。次に、紡糸口金を介して0.1〜3cmの空気層に押出噴射すると同時に、約0〜10℃に維持されている蒸留水槽で凝固し、延伸比30の速度でローラーに巻き取った。蒸留水で十分に水洗した後、150℃で乾燥することでポリアミド繊維を生産した。繊維の繊度は1.3デニール、引張強度は25.5g/d、伸度は3.3%、引張弾性率(3%)は608g/dであった。
【0139】
[比較例2]
(重合体および紡糸ドープの製造)
窒素雰囲気下で、攪拌機付きの250mLの四口丸底フラスコに、11.400g(75.4mmol)の2,5‐ジアミノベンズアミドおよび100mLのDMAcを入れた後、室温で完全に溶解させた。この溶液を氷浴を用いて0℃に冷却した。この溶液に、テレフタロイルクロリド7.655g(37.7mmol)を1次添加して1分間攪拌した後、TPC7.655g(37.7mmol)を2次添加した。この際、粘度が速く増加して10〜20秒内にゲル状の固形物が生成された。このゲル状の固形物をミキサーで粉砕した後、炭酸リチウム5.572g(75.4mmol)を添加した。反応中に生成されたHClを中和させて1時間内に、銀白色の光沢を有するポリ(2,5‐ジアミノベンズアミド‐テレフタルアミド)[poly(2,5‐diaminobenzamide‐terephthalamide)]紡糸ドープ組成物を得た。
【0140】
上記得られたゲル状の固形物を実施例1と同様に分析した結果、重量平均分子量5,670,000g/mol、分子量分布6.75のポリアミド重合体が得られたことが確認され、POMで確認した結果、等方性であることが分かった。そのため、紡糸が円滑ではなく、糸切れが発生することが確認され、実際的に紡糸が不可能であった。
【0141】
上記の結果から、−CONH官能基で置換された単量体が共重合されない比較例1に比べ、−CONH官能基で置換された単量体が共重合された実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、および実施例7のポリアミド重合体は、重合体内に存在するアミドおよびキナゾリノン作用基によって優れた紡糸性を有するとともに、延伸比10以上、好ましくは15以上、より好ましくは30以上、50の延伸比で紡糸が可能であるという驚くべきの優れた延伸性を有することが分かった。また、延伸された繊維の引張強度も25g/d以上と非常に優れており、より好ましくは30g/dを超えるものも製造可能であるだけでなく、引張弾性率においては、30倍以上延伸するときに何れも500g/d以上の非常に著しく向上された物性を示すことが分かった。延伸比とは、紡糸ドープ組成物の紡糸時、紡糸口金を通過する押出物の延伸のない初期速度に対する、延伸時に凝固槽を通過するフィラメントの速度の比率を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明による新規なポリアミド重合体は、CN官能基およびCONH官能基を含む構造であって、それを含む紡糸ドープ組成物を用いて製造された繊維は、従来の繊維に比べ著しく優れた強度および弾性力を有する。
【0143】
上記の構造により、紫外線などに長期間露出時にも強く、長期間使用時にも加水分解のような力学低下がなく、優れた耐久性を有する。
【0144】
また、本発明の紡糸ドープを用いて紡糸するときに、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上の延伸比を実現することができるという利点があり、このような延伸比特性によって、高光沢の繊維が生産可能である。
【0145】
また、本発明の重合体は、染料(dye)を用いた染色が可能であり、多様な色の繊維を生産することができるという利点があり、高強度、高機能性の多様な分野に適用可能である。
図1
図2
図3