(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリシロキサン系バインダマトリクスを含むシリコーン系汚損剥離コートであって、該ポリシロキサン系バインダマトリクスが該コートの少なくとも40乾燥重量%を構成し、ここに65重量%を超える該バインダマトリクスがポリシロキサン部分により表され、該コートが1種以上の双性イオン性化合物を含み、該コートがさらに1種以上の殺生物剤を含むコート。
ポリシロキサン系バインダ系、1種以上の双性イオン性化合物、および1種以上の殺生物剤を含む汚損剥離塗装組成物であって、該バインダ系の65重量%を超えるものがポリシロキサン部分によって表される汚損剥離塗装組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の主態様−汚損剥離コート
本発明は、とりわけ、汚損剥離コート、特に、ポリシロキサン系バインダマトリクスを含むシリコーン系汚損剥離コートであって、該マトリクスが前記コートの少なくとも40乾燥重量%を構成しているシリコーン系汚損剥離コートに関するものであり、ここで、前記バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当し、前記コートの前記バインダマトリクスに、その一部として双性イオン性部分が含まれている、および/または前記コートが1種類もしくはそれより多くの双性イオン性化合物を含むものである。本明細書の興味深い一実施形態において、該コートにはさらに、殺生物剤および酵素から選択される1種類またはそれより多くの有効成分、特に、1種類またはそれより多くの殺生物剤が、特に1〜15重量%の量で含まれている(さらに以下を参照)。
【0019】
「汚損剥離」(同じく「汚損制御」)という表現は、表面、特に、水性環境または水性液体に晒される(例えば、槽内、管内等の)表面の、全ての種類の生物汚損(すなわち、表面における生物の付着)に関することを理解されたい。しかしながら、本明細書に定めた塗装は、海洋生物汚損、すなわち、海洋環境、特に海水に表面が晒されることに関連して発生する生物汚損の回避または低減に特に関係すると考えられる。
【0020】
汚損剥離コートは、前記コートの少なくとも40乾燥重量%を構成しているポリシロキサン系バインダマトリクスを含むものであり、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当する。多くの場合、このコートは汚損剥離コート系の最外層を構成する。したがって、汚損剥離コートは、既に存在しているコート層上に、例えば防食コート層またはタイコート層上に調製してもよく、未処理の基材上に直接調製してもよいことを理解されたい。あるいはまた、該コートを基材上(例えば、タイコート上もしくはプライマー上、または単に未処理の基材上)に調製してもよく、続いてトップコートをオーバーコートしてもよい。
【0021】
ポリシロキサン系バインダマトリクス
ポリシロキサン系バインダマトリクスは、反応性ポリシロキサンバインダ成分、例えば、機能性オルガノポリシロキサン(ポリジアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、またはそれらの組み合わせ等)、架橋剤、ケイ酸塩(例えば、エチルシリケート)等により構成されることは理解される。したがって、こうした成分間の反応は、一般的な3次元共有結合性の相互結合網の形態であるバインダマトリクスをもたらすと考えられる。したがって、ポリシロキサン系バインダマトリクスは、架橋している。
【0022】
硬化した塗料コートは、様々な方法、例えば、縮合反応によるシロキサン結合の形成または、例えばアミン/エポキシ、カルビノール/イソシアネート等、その反応基の使用による重合/架橋により形成し得る。縮合反応が好ましい。
【0023】
ポリシロキサン系バインダマトリクスは、末端官能性および/またはペンダント官能性を有する、機能性オルガノポリシロキサンであるポリシロキサン系バインダから調製される。好ましいのは末端官能性である。官能性は、加水分解性基、例えばアルコキシ基、ケトキシム基にすること、あるいはシラノール基にすることができる。1分子当たり最小2個の反応基が好ましい。分子が反応基、例えばシラノール基を2個のみ含有する場合、所望の架橋密度を得るためには、付加的な反応物、架橋剤を用いることが必要となる場合がある。架橋剤は、例えばメチルトリメトキシシラン等のアルコキシシランにすることができるが、後述するように、広範囲の有用なシランを利用できる。シランは、そのまま使用すること、またはシランの加水分解縮合生成物として用いることができる。縮合硬化が非常に好ましいが、オルガノポリシロキサンの官能性は、縮合硬化に限定されない。望ましい場合、例えばアミン/エポキシ等、他の種類の硬化を単独で、または縮合反応と組み合わせて利用することができる。このような場合、オルガノポリシロキサンは、エポキシまたはアミンの末端基およびペンダント加水分解性基、例えばアルコキシ官能性を備えるものを有することができる。
【0024】
一部の実施形態において、ポリシロキサン系バインダ系を含む汚損剥離塗装組成物(すなわち、剥離コートを調製するための組成物)は、当業者に明白となるように、反応硬化性組成物または縮合硬化性組成物となり得る。その例には、シラノール反応性ポリジオルガノシロキサンと加水分解性基を有するシランとに基づく2成分縮合硬化性組成物、またはアルコキシ若しくは他の加水分解反応性を有するポリジオルガノシロキサンに基づく1成分縮合硬化性組成物が挙げられる。他の例は、エポキシ官能性ポリシロキサンバインダと、アミン官能性ポリシロキサン硬化剤とに基づく反応硬化性組成物である。バインダまたは硬化剤(または両方)がアルコキシ基等の縮合硬化性基を含む場合には、反応硬化性組成物と縮合硬化性組成物との組み合わせも可能となる。
【0025】
一実施形態において、バインダ相は、(i)バインダと(ii)架橋剤とを含み、バインダ(i)は、マトリクスの形成に関与するように加水分解性基または他の反応基を含むべきである。
【0026】
バインダ(i)は、一般に、塗装組成物の40〜90乾燥重量%を構成する。
架橋剤(ii)は、好ましくは、塗装組成物の0〜10乾燥重量%を構成し、例えば、以下に示す一般式(2)で表される有機ケイ素化合物、その部分加水分解縮合生成物、またはこれら2つの混合物である。
【0028】
ここで、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜6の非置換または置換1価炭化水素基または加水分解性基を表し、Xは、それぞれ独立して、加水分解性基を表し、aは、0〜2、例えば0〜1の整数を表す。
【0029】
高分子化学の技術において、「部分加水分解縮合生成物」という用語が、オリゴマまたはポリマを形成する縮合反応において、化合物をそれ自体と反応させたものを示すことは周知である。しかしながら、こうしたオリゴマまたはポリマは、架橋反応において用いられた反応性/加水分解性基を依然として保持する。
【0030】
式(2)に示した化合物は、バインダ(i)の架橋剤として機能する。組成物は、バインダ(i)および架橋剤(ii)を混合することにより、1成分硬化性RTV(室温加硫型)として配合することができる。バインダ(i)の末端Si基の反応性が易加水分解性基、例えばジメトキシまたはトリメトキシにより構成される場合、通常、膜を硬化させるために別個の架橋剤は必要ない。硬化メカニズムの基盤技術および架橋剤の例は、先行技術(US2004/006190)に記載されている。
【0031】
一実施形態において、Rは、ポリ(オキシアルキレン)等の親水性基である。この場合、Si原子とポリオキシアルキレン基との間にC
2−5アルキルスペーサを有することが好ましい。したがって、オルガノポリシロキサンは、オキシアルキレンドメインを有し得る。
【0032】
好適な架橋剤は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン、ビニルトリス(アセトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン、メチルトリス(アセトキシム)シラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジ−t−ブトキシ−ジアセトキシシラン、メチルトリス(エチルラクテート)シラン、ビニルトリス(エチルラクテート)シラン、およびこれらの加水分解縮合生成物から選択されるものである。
【0033】
更に好適な架橋剤は、テトラエトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン、メチルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン、メチルトリス(エチルラクテート)シラン、ビニルトリス(エチルラクテート)シラン、およびこれらの加水分解縮合生成物である。
【0034】
更に好適な架橋剤は、テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(エチルラクテート)シラン、ビニルトリス(エチルラクテート)シラン、およびこれらの加水分解縮合生成物である。具体的な実施形態において、前記架橋剤は、テトラエトキシシランまたはその加水分解縮合生成物である。他の具体的な実施形態において、前記架橋剤は、ビニルトリメトキシシランまたはその加水分解縮合生成物である。更に他の具体的な実施形態において、前記架橋剤は、メチルトリス(エチルラクテート)シランまたはその加水分解縮合生成物である。更に他の具体的な実施形態において、前記架橋剤は、ビニルトリス(エチルラクテート)シランまたはその加水分解縮合生成物である。他の一実施形態において、前記架橋剤は、加水分解縮合生成物である。他の実施形態において、前記架橋剤は、加水分解縮合生成物ではない。
【0035】
他の興味深い架橋剤は、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、およびこれらの加水分解縮合生成物から選択されるものである。
「ポリシロキサン」という用語が、ケイ素および酸素の原子が交互に存在し、炭素原子の無い骨格を有するポリマを示すことは周知である(The New Encyclopedia Britannica in 30 volumes micropaedia volume IX. 1975、ケイ素を参照してポリシロキサンを定義)。同様に、ポリオルガノシロキサンという用語は、ケイ素原子上に有機(すなわち、炭素系)置換基を有するポリシロキサン骨格を意味するものである。
【0036】
一部の興味深い実施形態において、ポリシロキサン系バインダは、ポリジメチルシロキサン系バインダを含む。
【0037】
他の興味深い実施形態において、バインダは、フルオロ変性体、例えば、シラノール末端ポリ(トリフルオロプロピルメチルシロキサン)等のフルオロアルキル変性ポリシロキサンバインダを含み得る。
【0038】
ポリシロキサン系バインダマトリクスは、一般に、塗装組成物または硬化したコートの少なくとも40乾燥重量%、少なくとも50乾燥重量%、好ましくは少なくとも60乾燥重量%、例えば、少なくとも70重量%、特に50〜90乾燥重量%、または50〜98乾燥重量%、例えば、50〜96乾燥重量%、特に、60〜95乾燥重量%、または50〜95乾燥重量%、または60〜94乾燥重量%、または70〜96乾燥重量%、または70〜94乾燥重量%、または75〜93乾燥重量%、または75〜92乾燥重量%を構成する。
【0039】
バインダは、他の構成要素、例えば、添加剤、顔料、フィラー等、ならびに任意の双性イオン化合物(群)(下記参照)、いずれかの親水性−修飾ポリシロキサン、任意の殺生物剤(群)、および任意の酵素(群)(下記参照)を汚損剥離コート内に組み込む、架橋マトリクスの形態となる。
【0040】
「ポリシロキサン系バインダマトリクス」という用語は、バインダマトリクスが、ポリシロキサン部を主成分とすること(すなわち、バインダマトリクスの65重量%超、好ましくは70重量%超、例えば75重量%超がポリシロキサン部により表されること)を意味するものである。好ましくは、ポリシロキサン部は、バインダマトリクス(すなわち、バインダ成分および任意の架橋剤)の65〜100重量%、例えば65〜99.9重量%、特に70〜100重量%、または70〜99重量%、または70〜98重量%、または75〜97重量%、または75〜99重量%、または80〜98重量%、または90〜97重量%を構成する。バインダマトリクスの残部は、例えば、存在する場合には、任意の双性イオン性基、任意の親水性オリゴマ/ポリマ部分および任意の(非ポリシロキサン型)架橋剤により構成し得る。
【0041】
ポリシロキサン部と他の任意の部分(例えば、任意の双性イオン性部分)との量を、それぞれ、特定の出発物質(または付加物)に対して計算する際に、これら2つを区別することは、通常、非常に簡単である。しかしながら、これら2つの間のリンカについての疑いを取り除くため、双性イオン性部分には、それを介して双性イオン性基がポリシロキサン部分に共有結合するケイ素原子の手前までの全ての原子が含まれることを理解されたい。対応して、2つの間のリンカについての疑いを取り除くため、ポリシロキサンの修飾には、それを介して双性イオン性基がポリシロキサン部分に共有結合するケイ素原子の手前までの全ての原子が含まれることを理解されたい。一例として、[ポリシロキサン−O]−Si(Me)
2−CH
2CH
2CH
2−[双性イオン性部分]という種類の構造において、[ポリシロキサン−O]−Si(Me)
2部分は、シリコーン部分に含まれ、CH
2CH
2CH
2−[双性イオン性部分]は、双性イオン性部分に含まれる。
【0042】
触媒
汚損剥離コートを形成する塗装組成物は、更に、架橋を促進するために縮合触媒を含み得る。適切な触媒の例には、有機カルボン酸の有機金属塩および金属塩、例えばジラウリン酸ジブチル錫、二酢酸ジブチル錫、ジオクタン酸ジブチル錫、2−エチルヘキサン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫、二酢酸ジオクチル錫、ジオクタン酸ジオクチル錫、2−エチルヘキサン酸ジオクチル錫、ジネオデカン酸ジオクチル錫、ナフテン酸錫、酪酸錫、オレイン酸錫、カプリル酸錫、2−エチルヘキサン酸ビスマス、オクタン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルオクタン酸鉛、2−エチルヘキサン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、およびナフテン酸チタンと、チタン酸エステルおよびジルコン酸エステル、例としてチタン酸テトラブチル、チタン酸テトラキス(2−エチルヘキシル)、チタン酸トリエタノールアミン、チタン酸テトラ(イソプロペノキシ)、チタンテトラブタノレート、チタンテトラプロパノレート、チタンテトライソプロパノレート、ジルコニウムテトラプロパノレート、ジルコニウムテトラブタノレートと、キレート化チタン酸塩、例としてジイソプロピルビス(アセチルアセトニル)チタネートとが含まれる。他の触媒には、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、および1,4−エチレンピペラジン等の三級アミンが含まれる。他の例には、グアニジン系触媒が含まれる。縮合触媒の他の例は、WO 2008/132196およびUS 2004/006190に記載されている。
【0043】
触媒は、単独で用いても、2つ以上の触媒を組み合わせて用いてもよい。一実施形態において、前記触媒(群)は、錫およびチタン酸化物(群)(チタン酸塩(群))から成る群から選択される。具体的な一実施形態において、前記触媒は、錫系である。一実施形態においては、錫が欠如した触媒が含まれる。他の実施形態において、前記触媒は、1つ以上のチタン酸化物(群)(チタン酸塩(群))を含む。使用すべき触媒の量は、触媒および架橋剤(群)の反応性と、所望の乾燥時間とに応じて決まる。好適な実施形態において、触媒濃度は、バインダ(i)と架橋剤(ii)とを合わせた総重量の0.01〜10%、例えば0.01〜3.0%、または5.0〜10%、または0.1〜4.0%、または1.0〜6.0%である。
一部の実施形態において、触媒は含まれない。
【0044】
溶媒、添加剤、顔料、およびフィラー
汚損剥離コートを形成するために用いられる塗装組成物は、更に、溶媒および添加剤を含み得る。
溶媒の例には、ホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、およびナフサ溶媒等の脂肪族、脂環式、および芳香族炭化水素と、酢酸メトキシプロピル、酢酸n−ブチル、および酢酸2−エトキシエチル等のエステルと、オクタメチルトリシロキサンと、それらの混合物とが含まれる。あるいは、溶媒系は、水を含んでもよく、あるいは水性(溶媒系において水が50%超)にしてもよい。
【0045】
一実施形態において、溶媒は、ホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、およびナフサ溶媒等の脂肪族、脂環式、および芳香族炭化水素と、酢酸メトキシプロピル、酢酸n−ブチル、および酢酸2−エトキシエチル等のエステルと、オクタメチルトリシロキサンと、それらの混合物とから選択され、好ましくは、沸点が110℃以上の溶媒である。
【0046】
溶媒は、含まれる場合、一般に塗装組成物の5〜50体積%を構成する。
添加剤の例は、次の通りである。
(i)非反応性流体、例としてオルガノポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、石油、およびそれらの組み合わせ、
(ii)界面活性剤、例としてアルキルフェノールエチレンオキシド縮合物(アルキルフェノールエトキシレート)等のプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの誘導体、リノール酸のエトキシル化モノエタノールアミド等の不飽和脂肪酸のエトキシル化モノエタノールアミド、ドデシル硫酸ナトリウム、および大豆レシチン、
(iii)湿潤剤および分散剤、例としてM. Ash and I. Ash,“Handbook of Paint and Coating Raw Materials, Vol. 1”, 1996, Gower Publ. Ltd., Great Britain, pp 821-823 and 849-851に記載のもの、
(iv)増粘剤および沈降防止剤(例えば、チキソトロープ剤)、例としてコロイドシリカ、水和ケイ酸アルミニウム(ベントナイト)、アルミニウムトリステアレート、アルミニウムモノステアレート、キサンタンガム、クリソタイル、焼成シリカ、水素添加ヒマシ油、有機変性粘土、ポリアミドワックス、およびポリエチレンワックス、
(v)染料、例として1,4−ビス(ブチルアミノ)アントラキノンおよび他のアントラキノン誘導体、トルイジン染料等、
(vi)抗酸化剤、例としてビス(tert−ブチル)ハイドロキノン、2,6−ビス(tert−ブチル)フェノール、レゾルシン、4−tert−ブチルカテコール、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等。
【0047】
任意の添加剤は、一般に、塗装組成物または硬化したコートの0〜30乾燥重量%、例えば0〜15乾燥重量%を構成する。
【0048】
好ましくは、塗装組成物は、1つ以上の増粘剤および/または沈降防止剤(例えば、チキソトロープ剤)を、好ましくは、塗装組成物または硬化したコートの0.2〜10乾燥重量%、例として0.5〜5乾燥重量%、例えば0.6〜4乾燥重量%の量で含む。
【0049】
さらに、汚損剥離コートを形成するのに用いる塗装組成物は、顔料およびフィラーを含み得る。
【0050】
顔料およびフィラーは、本発明に関連して、接着性との関係が僅かであり、共に塗装組成物に添加し得る成分と見做されるものである。「顔料」は、通常、最終的な塗料塗装を不透明および非透光性にすることを特徴とし、「フィラー」は、通常、塗料を非透光性にしないため、塗装の下の任意の材料を隠すことに有意に寄与しないこと特徴とする。
【0051】
顔料の例は、様々な等級の二酸化チタン、赤色酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、黄色酸化鉄、赤色モリブデート、黄色モリブデート、硫化亜鉛、酸化アンチモン、ナトリウムアルミニウムスルホシリケート、キナクリドン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、黒色酸化鉄、インダンスロンブルー、コバルトアルミニウムオキシド、カルバゾールジオキサジン、酸化クロム、イソインドリンオレンジ、ビス−アセト酢酸−o−トリジオール、ベンズイミダゾロン、キナフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリノン、キノフタロンイエローである。
【0052】
フィラーの例は、カルサイト等の炭酸カルシウム、ドロマイト、タルク、マイカ、長石、硫酸バリウム、カオリン、霞石、シリカ、パーライト、酸化マグネシウム、および石英粉末等である。フィラー(および顔料)は、ナノチューブまたは繊維の形態で添加してもよく、したがって、塗装組成物は、上述したフィラーの例とは別に、繊維、例えば、出典を明記することにより本願明細書の一部としたWO 00/77102に全般的および具体的に記載されるもの含み得る。
【0053】
任意の顔料および/またはフィラーは、一般に、塗装組成物または硬化したコートの0〜60乾燥重量%、例えば0〜50乾燥重量%、好ましくは5〜45乾燥重量%、例えば5〜40乾燥重量%、または5〜35乾燥重量%、または0.5〜25乾燥重量%、または1〜20乾燥重量%を構成する。任意の顔料および/またはフィラーの濃度を考慮すると、こうした構成要素は、一般に、実体積として塗装組成物の0.2〜20%、例として0.5〜15%を構成する。
【0054】
塗装組成物の(例えば、スプレ、ブラシ、またはローラ塗布手法による)容易な塗布を促進する目的で、塗装組成物は、一般に、25〜25,000mPa・s、例えば150〜15,000mPa・sの範囲、特に200〜4,000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0055】
親水性変性
一部の実施形態において、汚損剥離コートはさらに、バインダマトリクスの一部として親水性のオリゴマー/ポリマー部分を含むものであり得る、または汚損剥離コートは1種類もしくはそれより多くの親水性変性ポリシロキサン油を含むものであり得る、または該コートは、バインダマトリクスの一部として親水性のオリゴマー/ポリマー部分を含むと同時に1種類もしくはそれより多くの親水性変性ポリシロキサン油も含むものであり得る。バインダマトリクス中にオリゴマー/ポリマー部分を、およびコート中に親水性変性ポリシロキサン油を含めること(例えば、型、相対量などに関して)は、WO2013/000479 A1の第5頁,20行目〜第18頁,23行目、第22頁,3行目〜第27頁,11行目および第37頁,6行目〜第38頁,30行目ならびにWO2011/076856 A1の第4頁,10行目〜第10頁,29行目に詳細に開示されている。
【0056】
別の変形例では、汚損剥離コートは、親水性変性ポリシロキサン油、すなわち、ポリシロキサン系バインダマトリクスとの共有結合を形成しない構成成分を含むものであり得る。親水性変性ポリシロキサン油は、同じ分子内に親水性基と親油性基の両方が含まれているため、界面活性剤および乳化剤として広く使用されている。上記に論考したポリシロキサン成分とは対照的に、親水性変性ポリシロキサン油は、バインダ(もしくはバインダ成分)または架橋剤(存在させる場合)と反応し得る基を含まないように選択され、したがって、親水性変性ポリシロキサン油は、特に、バインダ成分に対して非反応性であることが意図されるものである。特に、親水性変性ポリシロキサン油は、ポリシロキサン系バインダ系の構成成分との反応が回避されるように、ケイ素反応性基、例えばSi−OH基、加水分解性基、例えばSi−OR(例えば、アルコキシ、オキシム、アセトキシなどの)基などが全くないものである。
【0057】
非反応性の親水性変性ポリシロキサン油は、典型的には非イオン性のオリゴマー基もしくはポリマー基の付加によって変性させたものであり、該基は、極性のものであり得る、および/または水素結合して極性溶媒(特に水)または他の極性オリゴマー基もしくはポリマー基との相互作用を向上させるものであり得る。このような基の例としては、アミド(例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド])、ポリ(N,N−ジメタクリルアミド)、酸(例えば、ポリ(アクリル酸))、アルコール(例えば、ポリ(グリセロール)、ポリHEMA、多糖類、ポリ(ビニルアルコール))、ケトン(ポリケトン)、アルデヒド(例えば、ポリ(アルデヒドグルロネート(guluronate))、アミン(例えば、ポリビニルアミン)、エステル(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ(酢酸ビニル))、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)などのポリオキシアルキレン)、イミド(例えば、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン))など(前述のもののコポリマーを含む)が挙げられる。好ましくは、この親水性は、ポリオキシアルキレン基での修飾によって得られる。
【0058】
好ましい一実施形態において、該基は、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)などのポリオキシアルキレン)、イミド(例えば、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン))から選択される。
【0059】
前と同じように、ポリシロキサン油を変性させる親水性のオリゴマー/ポリマー部分は非ケイ素起源のものであることを理解されたい。好ましくは、上記の「オリゴマー」および「ポリマー」は、少なくとも3つの反復単位、例えば少なくとも5つの反復単位を含むものである。多くの興味深い実施形態では、該オリゴマーまたはポリマーは3〜1,000の反復単位、例えば、3〜200または5〜150または5〜100の反復単位を含むものである。別の興味深い実施形態では、該オリゴマーまたはポリマーは3〜30の反復単位、例えば3〜20の反復単位、例えば3〜15またはさらには4〜12の反復単位を含むものである。また別の興味深い実施形態では、該オリゴマーまたはポリマーは6〜20の反復単位、例えば8〜15の反復単位を含むものである。
【0060】
好ましい一部の実施形態では、該親水性の基(すなわち、オリゴマー基もしくはポリマー基)は、100〜50,000g/molの範囲、例えば100〜30,000g/molの範囲、特に、200〜20,000g/molの範囲または200〜10,000g/molの範囲の数平均分子量(M
n)を有するものである。
【0061】
他の興味深い実施形態では、該親水性の基は、200〜5,000g/mol、例えば、200〜2,500g/molまたはさらには300〜1,000g/molの範囲の数平均分子量(M
n)を有するものである。
【0062】
特許請求の範囲とともに本説明において、「親水性変性ポリシロキサン油」との関連における用語「親水性変性」は、ポリシロキサンを変性させるオリゴマー基もしくはポリマー基それ自体(すなわち、独立した分子として)が、25℃の脱塩水において少なくとも1%(w/w)の溶解度を有するものであることを意味していることを意図する。
【0063】
特に重要であるものは、親水性部分の相対重量が親水性変性ポリシロキサン油の総重量の1%またはそれより多く(例えば1〜90%)、例えば、該総重量の5%またはそれより多く(例えば5〜80%)、特に10%またはそれより多く(例えば10〜70%)である親水性変性ポリシロキサン油である。
【0064】
一実施形態において、親水性部分の相対重量は親水性変性ポリシロキサン油の総重量の25〜60%、例えば30〜50%の範囲である。
【0065】
好ましい一実施形態では、親水性変性ポリシロキサン油(存在させる場合)は、100〜100,000g/molの範囲、例えば250〜75,000g/molの範囲、特に500〜50,000g/molの範囲の数平均分子量(M
n)を有するものである。
【0066】
好ましい別の実施形態では、親水性変性ポリシロキサン油(存在させる場合)は、500〜20,000g/mol、例えば、1,000〜10,000g/molまたは1,000〜7,500g/molまたはさらには1,500〜5,000g/molの範囲の数平均分子量(M
n)を有するものである。
【0067】
また、親水性変性ポリシロキサン油(存在させる場合)は、10〜20,000mPa・sの範囲、例えば20〜10,000mPa・sの範囲、特に40〜5,000mPa・sの範囲の粘度を有するものである場合が好ましい。
【0068】
親水性変性ポリシロキサン油は、1種類もしくはそれより多くの酵素の到達可能性を制御するため、および/または殺生物剤(あれば)の浸出を制御するため、ならびに湿潤塗料中に該酵素を分布させるために使用され得る。
【0069】
現時点で好ましい一実施形態では、親水性変性ポリシロキサン油はポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンである。このような実施形態および変形例において、ポリ(オキシアルキレン)は好ましくは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンならびにポリ(オキシエチレン−コ−オキシプロピレン)(これは場合によってはポリ(エチレングリコール)と称される)、ポリ(プロピレングリコール)およびポリ(エチレングリコール−コ−プロピレングリコール)から選択される。
【0070】
この型の市販の親水性変性ポリシロキサン油はDC5103(Dow Corning)、DC Q2−5097(Dow Corning)、DC193(Dow Corning)、DC Q4−3669(Dow Corning)、DC Q4−3667(Dow Corning)およびDC2−8692である。
【0071】
存在させる場合、該1種類またはそれより多くの親水性変性ポリシロキサン油は典型的には、塗装組成物中(および硬化したコート中)に、0.01〜20乾燥重量%、例えば0.05〜10乾燥重量%の量で含まれる。一部の特定の実施形態では、該1種類またはそれより多くの親水性変性ポリシロキサン油は、塗装組成物/硬化したコートの0.05〜7乾燥重量%、例えば0.1〜5乾燥重量%、特に0.5〜3乾燥重量%を構成する。他の一部の特定の実施形態では、該1種類またはそれより多くの親水性変性ポリシロキサン油は、塗装組成物または硬化したコートの1〜10乾燥重量%、例えば2〜9乾燥重量%、特に、2〜7乾燥重量%または3〜7乾燥重量%または3〜5乾燥重量%または4〜8乾燥重量%を構成する。
【0072】
双性イオン性官能部
双性イオン性官能部を汚損剥離コートに含めることが有益であることがわかった。この組み込みは、共有結合部分(すなわち、双性イオン性部分)として、または非共有結合的に組み込まれた化合物(すなわち、双性イオン性化合物)としてのいずれかであり得る。したがって、前記コートの前記バインダマトリクスに、その一部として双性イオン性部分が含まれている、または前記コートは1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物を含むものである、または両方のいずれかである。コート内への双性イオン性官能部のこれらの2つの組み込み様式を以下にさらに説明する。
【0073】
本明細書で用いる場合、用語「双性イオン性」は、該部分内の異なる位置に正電荷と負電荷を有し、該部分が全体として中性(正味電荷は0(ゼロ))である双極子官能基を意味していることを意図する。
【0074】
正電荷と負電荷は互いに充分に近接して存在していると理解されたい。したがって、正電荷と負電荷は、20未満の共有性原子結合、例えば15未満の共有結合、特に10未満の共有結合によって離れた原子によって担持されていることが好ましい。
【0075】
好適な双性イオン性官能部の例は、例えば、下記の型のもの:
例えば、式
【化2】
のホスホリルコリン、
例えば、式
【化3】
のベタイン(カルボキシベタインなど)、および
例えば、式
【化4】
のスルホベタイン
ならびにその誘導体である。
【0076】
上記の式において、R<1>、R<2>、R<3>およびR<4>は同じであっても(same of)異なっていてもよく、典型的にはC
1〜20−アルキル、C
3〜20−アルケニルおよびアリールから選択され、任意選択で、-OH、-NH
2、-N(CH
3)
2、-SH、-SCH
3などから選択される1つまたはそれより多くの置換基で置換されている。
【0077】
用語「C
1〜20−アルキル」は、本明細書で用いる場合、1〜20個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素鎖、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリーペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシルなどをいう。一部の実施形態では、アルキルは1〜4個の炭素原子を含むもの、例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチル、特にメチルである。
【0078】
用語「C
3〜20−アルケニル」は、本明細書で用いる場合、1つまたはそれより多くの二重結合を含む直鎖もしくは分枝鎖の炭化水素鎖または環状炭化水素、例えば、ジエン、トリエンおよびポリエン、例えば、1−もしくは2−プロペニル;1−、2−もしくは3−ブテニル、または1,3−ブト−ジエニル;1−、2−、3−、4−もしくは5−ヘキセニル、または1,3−ヘキス−ジエニル、または1,3,5−ヘキス−トリエニル;1−、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−オクテニル、または1,3−オクタジエニル、または1,3,5−オクタトリエニル、または1,3,5,7−オクタテトラエニルなどをいう。
【0079】
用語「アリール」は、本明細書で用いる場合、水素原子を除去することによって芳香族炭化水素から誘導される炭素環式の芳香族環系を包含している。さらに、アリールには、二環式、三環式および多環式の環系が包含される。好ましいアリール部分の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニルなどが挙げられる。
【0080】
また、対象の双性イオン性官能部は、潜在的双性イオン性に相当するもの、例えば、加水分解されるとカルボン酸基が露出して該部分が双性イオン性となる第4級アンモニウム化合物のエステルなどであってもよいことを理解されたい。かかる潜在的双性イオン性の例はカルボキシベタインエステルであり、これは、水に曝露されると加水分解され得る。本発明の別の(nother)実施形態では、対象の双性イオン性官能部は潜在的双性イオン性に相当するものではない。
【0081】
一実施形態では、双性イオン性官能部(1つまたは複数)は、ポリシロキサン系バインダマトリクスの一部分とならない独立した化合物として組み込まれる。したがって、以下に論考する双性イオン性部分とは対照的に、双性イオン性化合物は、バインダ(もしくはバインダ成分)または架橋剤(存在させる場合)と反応し得る基を含まないように選択され、したがって、双性イオン性化合物は、特にバインダ成分に対して非反応性であることが意図される。特定の一実施形態では、前記非反応性の双性イオン性化合物は反応性シランがないものである。
【0082】
上記のように、好適な双性イオン性化合物は、例えば、ホスホリルコリン型、スルホベタイン型およびカルボキシベタイン型のものならびにその誘導体である。上記のように、これらの好適な双性イオン性化合物は、使用時に加水分解して双性イオン性になる潜在的双性イオン性官能部を有する化合物から誘導され得る。特定の実施形態では、前記双性イオン性化合物はホスホリルコリン型のものである。他の実施形態では、前記双性イオン性化合物はスルホベタイン型のものである。またさらなる実施形態では、前記双性イオン性化合物はカルボキシベタイン型のものである。
【0083】
双性イオン性化合物はコートに独立した分子(化合物)として添加され得、各化合物は1つまたはそれより多くの双性イオン性官能部を含むものであり得る。
【0084】
当業者には、双性イオン性がマトリクス中に粒子(本明細書においてはナノ粒子)として含まれるのではないことは明白であろう。
【0085】
一部の変形例では、双性イオン性化合物は、双性イオン性官能部が1つだけ含まれたものである。その例は、3−1(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホネート、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(カプリリルスルホベタイン)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、ジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホネートなどである。
【0086】
一部の実施形態では、双性イオン性化合物部分は疎水性部分を含んでいることが好ましい。かかる化合物の例は双性イオン性デタージェント、例えば、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(カプリリルスルホベタイン)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)である。
【0087】
双性イオン性官能部を1つだけ有する双性イオン性化合物は、好ましくは最大1,000g/mol、例えば最大750g/molの分子量を有する比較的小さい化合物であることが好ましい。
【0088】
他の例は、双性イオン性官能部(1つまたは複数)に加えて非反応性ポリシロキサン部分を含む双性イオン性化合物である。典型的には、該ポリシロキサン部分は、100〜50,000g/molの範囲、例えば100〜30,000g/molの範囲、特に200〜20,000g/molの範囲または200〜10,000g/molの範囲の数平均分子量(M
n)を有している。
【0089】
他の変形例では、双性イオン性化合物は、2つまたはそれより多くの双性イオン性官能部を有するもの、例えば、ダイマー、トリマー、オリゴマーおよびさらにはポリマーである。オリゴマーおよびポリマーについて、該ポリマーが双性イオン性官能部担持モノマーに加えて疎水性モノマーも含むものであることが望ましい場合があり得る。2つまたはそれより多くの双性イオン性官能部が含まれた双性イオン性化合物の例はポリ(2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−(トリメチルアンモニウムエチル)ホスフェート,分子内塩)−コ−(N−ドデシルメタクリレート)(1:2)(例えば、バーテラス社のPC1059)およびポリ(2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−(トリメチルアンモニウムエチル)ホスフェート,分子内塩)−コ−(アリルメタクリレート)(4:1)(例えば、バーテラス社のPC1071)である。
【0090】
双性イオン性化合物がダイマー、トリマー、オリゴマーまたはポリマー、すなわち、1分子あたり1つより多くの双性イオン性官能部を含んでいる場合、双性イオン性当量(すなわち、(ダイマー/トリマー/オリゴマー/ポリマーの重量平均分子量)/(ダイマー/トリマー/オリゴマー/ポリマー1つあたりの平均双性イオン性官能部数)として計算されるもの)は最大5,000g/mol、例えば最大2,000g/mol、例えば最大1,000g/molであることが好ましい。
【0091】
オリゴマー/ポリマー型の双性イオン性化合物に関して、かかる化合物は典型的には、コートを調製するために使用される塗装組成物の配合の前に調製される。しかしながら、個々の反応性モノマー(そのうちの一部または全部が、双性イオン性官能部を担持している反応性モノマーであり得る)を、塗装組成物を配合する際に使用され得ることも想定され、この場合、オリゴマー/ポリマーの実際の形成は配合後に、例えばコートがもたらされる塗装組成物の乾燥/硬化中に行なわれる。
【0092】
存在させる場合、1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物は典型的には、塗装組成物中(および硬化したコート中)に、0.01〜20乾燥重量%、例えば0.05〜15乾燥重量%の量で含まれる。一部の特定の実施形態では、該1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物は、塗装組成物/硬化したコートの0.05〜10乾燥重量%、例えば0.1〜7乾燥重量%、特に0.5〜5乾燥重量%を構成する。他の一部の特定の実施形態では、該1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物は、塗装組成物または硬化したコートの1〜10乾燥重量%、例えば2〜9乾燥重量%、特に2〜7乾燥重量%または3〜7乾燥重量%または3〜5乾燥重量%または4〜8乾燥重量%を構成する。
【0093】
また、遊離の双性イオン性化合物(例えば、ダイマー、トリマー、オリゴマーまたはポリマー)として添加することに対して付加的または択一的に、双性イオン性官能部を、該双性イオン性部分がバインダマトリクスに共有結合されているという意味でバインダ系の一部として含めてもよい。例えば、双性イオン性官能部はポリシロキサン系バインダマトリクスに、コートの硬化中にマトリクスに架橋させることによって導入され得る。これは、1つまたはそれより多くの双性イオン性官能部が含まれた反応性化合物であって、双性イオン性官能部に加えて硬化中にポリシロキサンバインダ構成成分と反応し得る反応性基(1つまたは複数)も含む反応性化合物を使用することにより行なわれ得る。この反応性基は、例えば、ポリ(2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−(トリメチルアンモニウムエチル)ホスフェート,分子内塩)−コ−ヒドロキシプロピルメタクリレート)−コ−(3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(76.3:18.3:5.3)(例えば、バーテラス社のPC2118)およびポリ(2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−(トリメチルアンモニウムエチル)ホスフェート,分子内塩)−コ−(N−ドデシルメタクリレート)−コ−(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−コ−(3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)(23:47:25:5)(例えば、バーテラス社のPC1036)などの場合のような官能性シランであり得る。また、該反応性基は、例えば、3−[ジメチル−(2−ヒドロキシエチル)アンモニオ]−1−プロパンスルホネート(例えば、アフィメトリクス社のNDSB−211)などの場合のような、イソシアネート官能部とともに硬化し得るヒドロキシ基であってもよい。あるいはまた、双性イオン性部分を、バインダ構成成分を液状塗装組成物中に混合する前の工程でポリシロキサンバインダ構成成分に結合させてもよい。例えば、これは、例えばポリ(2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−(トリメチルアンモニウムエチル)ホスフェート,分子内塩)−コ−(アリルメタクリレート)(4:1)(例えば、バーテラス社のPC1071)などの場合のようなビニル官能性反応性化合物を使用することにより行なわれ得る。
【0094】
バインダマトリクスにその一部として双性イオン性部分が含まれた変形例では、いずれの双性イオン性部分も好ましくは、バインダマトリクスの5〜35重量%、例えば6〜30重量%、例えば7〜25重量%を構成する。「双性イオン性部分」の含有量を計算する場合、「双性イオン性部分」は、双性イオン性部分がポリシロキサン部に共有結合しているケイ素原子までのすべての原子(ケイ素原子は含まれない)を含む部分であることを理解されたい(また、「ポリシロキサン部」の計算に関する上記も参照のこと)。
【0095】
双性イオン性部分は、バインダマトリクスの一部である場合、典型的には、ポリシロキサン系バインダマトリクスの主鎖に対して懸垂基または末端基として存在することを理解されたい。
【0096】
殺生物剤
コートが、1種類の殺生物剤、1種類の酵素、1種類の殺生物剤および1種類の酵素の組み合わせ、2種類の殺生物剤の組み合わせ、2種類の酵素の組み合わせ、1種類以上の殺生物剤、1種類以上の酵素、1種類以上の殺生物剤および1種類以上の酵素の組み合わせ等を含み得ることを理解されたい。
【0097】
ある種の重要な実施形態において、汚損剥離コートは、1またはそれを超える殺生物剤をさらに含み得る。他の実施形態において、汚損剥離コートは殺生物剤を欠いている。いまださらなる実施形態において、汚損剥離コートは1またはそれを超える殺生物剤と1またはそれを超える酵素の組合せを含む。
【0098】
本発明に関連して、「殺生物剤」という用語は、化学的または生物学的手段により、任意の有害生物を駆除する、阻止する、無害にする、その作用を防止する、または他の抑制効果を発揮する活性物質を意味するものとなる。しかしながら、殺生物剤(群)は、存在する場合、1つ以上の酵素(下記参照)と組み合わせて使用可能であることを理解されたい。
【0099】
殺生物剤の例示的な例は、メタロ−ジチオカルバメート、例えばビス(ジメチルジチオカルバマト)亜鉛、エチレン−ビス(ジチオカルバマト)亜鉛、エチレン−ビス(ジチオカルバマト)マンガン、ジメチルジチオカルバメート亜鉛、およびこれらの錯体と、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナート−O,S)−銅、アクリル酸銅、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナート−O,S)−亜鉛、フェニル−(ビスピリジル)−ビスマスジクロリドと、金属殺生物剤、例えば酸化銅(I)、亜酸化銅、金属銅、銅金属合金、例えば銅青銅等の銅−ニッケル合金と、金属塩、例えばチオシアン酸銅、塩基性炭酸銅、水酸化銅、メタホウ酸バリウム、塩化銅、塩化銀、硝酸銀、および硫化銅と、複素環式窒素化合物、例えば3a,4,7,7a−テトラヒドロ−2−((トリクロロメチル)−チオ)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン、ピリジン−トリフェニルボラン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジン、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミン−s−トリアジン、およびキノリン誘導体と、複素環式硫黄化合物、例えば2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−オクチル−3(2H)−イソチアゾリン(Sea−Nine(登録商標)−211N)、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、および2−(チオシアナトメチルチオ)−ベンゾチアゾールと、尿素誘導体、例えばN−(1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)−N,N’ビス(ヒドロキシメチル)ウレア、およびN−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N−ジメチルウレア、N,N−ジメチルクロロフェニルウレアと、カルボン酸、スルホン酸、およびスルフェン酸のアミドまたはイミド、例えば2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、1,1−ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)スルホニル)−1−フルオロ−N−(4−メチルフェニル)−メタンスルフェンアミド、2,2−ジブロモ−3−ニトリロ−プロピオンアミド、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、およびN−メチロールホルムアミドと、カルボン酸の塩またはエステル、例えば2−((3−ヨード−2−プロピニル)オキシ)−エタノールフェニルカルバメート、およびN,N−ジデシル−N−メチル−ポリ(オキシエチル)アンモニウムプロピオネートと、アミン、例えばデヒドロアビエチルアミンおよびココジメチルアミンと、置換メタン、例えばジ(2−ヒドロキシ−エトキシ)メタン、5,5’−ジクロロ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、およびメチレン−ビスチオシアネートと、置換ベンゼン、例えば2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ベンゼンジカルボニトリル、1,1−ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)−スルホニル)−1−フルオロ−N−フェニルメタンスルフェンアミド、および1−((ジヨードメチル)スルホニル)−4−メチル−ベンゼンと、テトラアルキルホスホニウムハロゲニド、例えばトリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウムクロリドと、グアニジン誘導体、例えばn−ドデシルグアニジンヒドロクロリドと、ジスルフィド、例えばビス−(ジメチルチオカルバモイル)−ジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドと、イミダゾール含有化合物、例えばメデトミジンと、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロールと、ビス(N−シクロヘキシル−ジアゼニウムジオキシ)銅、チアベンダゾール、N−トリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、カプサイシン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、1,4−ジチアアントラキノン−2,3−ジカルボニトリル(ジチアノン)と、フラノン、例えば3−ブチル−5−(ジブロモメチリデン)−2(5H)−フラノンと、大環状ラクトン、例えばアベルメクチンと、それらの混合物とから選択されるものである。
【0100】
現時点では、殺生物剤(存在する場合)は、錫を含まないことが好ましい。
現在好適な殺生物剤は、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(クロロタロニル)、チオシアン酸銅(スルホシアン酸第一銅)、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド(ジクロフルアニド)、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(ジウロン)、N
2−tert−ブチル−N
4−シクロプロピル−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン(シブトリン)、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、(2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール、トラロピリル)、N
2−tert−ブチル−N
4−シクロプロピル−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン(シブトリン)、(RS)−4−[1−(2,3−ジメチルフェニル)エチル]−3H−イミダゾール(メデトミジン)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT、Sea−Nine(登録商標) 211N)、ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)スルホニル)−フルオロ−N−(p−トリル)メタンスルフェンアミド(トリルフルアニド)、2−(チオシアノメチルチオ)−1,3−ベンゾチアゾール((2−ベンゾチアゾリルチオ)メチルチオシアネート、TCMTB)、トリフェニルボランピリジン(TPBP)、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナート−O,S)−(T−4)亜鉛(亜鉛ピリジンチオン、亜鉛ピリチオン)、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナート−O,S)−T−4)銅(銅ピリジンチオン、銅ピリチオン)、亜鉛エチレン−1,2−ビス−ジチオカルバメート(亜鉛−エチレン−N,N’−ジチオカルバメート、ジネブ)、酸化銅(I)、金属銅、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(ジウロン)、およびジヨードメチル−p−トリルスルホン、アミカル48から成る群から選択される。好ましくは少なくとも1種類の殺生物剤が上記リストから選択される。
【0101】
特に好適な実施形態において、殺生物剤は、粘液および藻類等の軟質汚損に対して効果的な殺生物剤から選択されるのが好ましい。こうした殺生物剤の例は、N
2−tert−ブチル−N
4−シクロプロピル−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン(シブトリン)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT、Sea−Nine(登録商標) 211N)、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナート−O,S)−(T−4)亜鉛(亜鉛ピリジンチオン、亜鉛ピリチオン)、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナート−O,S)−T−4)銅(銅ピリジンチオン、銅ピリチオン、銅オマジン)、および亜鉛エチレン−1,2−ビス−ジチオカルバメート(亜鉛−エチレン−N−N’−ジチオカルバメート、ジネブ)、酸化銅(I)、金属銅、チオシアン酸銅(スルホシアン酸第一銅)、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナート−O,S)−T−4)銅(銅ピリジンチオン、銅ピリチオン、銅オマジン)である。
【0102】
ある種の実施形態において、少なくとも1種の殺生物剤は有機殺生物剤である。さらに特に好適な実施形態において、1種以上の殺生物剤は、有機殺生物剤であり、例えば亜鉛ピリチオンまたは銅ピリチオン等のピリチオン錯体である。最も好適な実施形態において、殺生物剤は、銅ピリチオンである。有機殺生物剤は、全体または一部が有機体由来のものである。他の好適な実施形態において、殺生物剤の1つは、亜鉛系である。その具体的な実施形態において、前記殺生物剤は、亜鉛エチレン−1,2−ビス−ジチオカルバメート(亜鉛−エチレン−N−N’−ジチオカルバメート、ジネブ)である。
【0103】
米国特許第7,377,968号において詳述されるように、例えば、高い水溶性またはマトリクス組成物との不混和性の高さのため、殺生物剤が急速に膜から枯渇するような場合は、殺生物剤の用量を制御して膜内での実効寿命を延ばす手段として、1つ以上の殺生物剤(群)をカプセル化した形態で添加することが有利となり得る。カプセル化した殺生物剤は、遊離状態の殺生物剤が防汚塗装としての使用にとって有害となる形でポリシロキサンマトリクスの特性(例えば、機械的完全性、乾燥時間等)を変化させる場合にも添加することができる。
【0104】
一実施形態において、殺生物剤は、カプセル化した4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Sea−Nine CR2)である。
【0105】
殺生物剤は、25℃の水中で0〜20mg/L、例えば0.00001〜20mg/Lの溶解度を有することが好ましい。
【0106】
存在する場合、殺生物剤は、一般に、塗装組成物または硬化したコートの0.1〜30乾燥重量%、例えば、0.5〜25乾燥重量%、特に、1〜20乾燥重量%または1〜15乾燥重量%、例として3〜15乾燥重量%を構成する。
【0107】
殺生物剤は、一般に、塗装組成物の実体積で0.1〜25%、例えば、実体積で0.5〜20%または実体積で1〜12%、特に、実体積で1〜15%を構成する。
【0108】
他の実施形態において、殺生物剤は、塗装組成物の実体積で1〜10%、例として塗装組成物の実体積で2〜9%、または3〜8%、または4〜7%を構成する。
【0109】
酵素
他の変形例において、コートに含まれる有効成分は、1つ以上の酵素を含む。
他の実施形態において、汚損剥離コートを欠いている。いまださらなる実施形態において、汚損剥離コートには、1つ以上の殺生物剤と1つ以上の酵素の組合せが含まれる。
【0110】
シロキサン系汚損剥離コートは、それ自体が生物汚損有機体の付着の阻害に非常に優れているが、酵素は、特に問題となる生物汚損種に対する選択標的機構により、あるいは広範囲の防汚機構による保護機構の全体的な向上により、汚損剥離系の全体的な防汚能力に寄与することができる。
【0111】
生物汚損する生物の付着を防止可能な全ての酵素が本発明に関連すると考えられる。しかしながら、特に関係するものは、加水分解酵素である。加水分解酵素は、ECクラス3から選択されるものである。特に関係するものは、以下のECクラスから選択されるものである。
【0112】
EC3.1:エステル結合(エステラーゼ:ヌクレアーゼ、ホスホジエステラーゼ、リパーゼ、ホスファターゼ)
EC3.2:糖類(DNAグリコシラーゼ、グリコシドヒドロラーゼ)
EC3.3:エーテル結合
EC3.4:ペプチド結合(プロテアーゼ/ペプチダーゼ)
EC3.5:炭素−窒素結合、ペプチド結合以外
EC3.6:酸無水物(ヘリカーゼおよびGTPアーゼを含む酸無水物加水分解酵素)
EC3.7:炭素−炭素結合
EC3.8:ハロゲン結合
EC3.9:リン−窒素結合
EC3.10:硫黄−窒素結合
EC3.11:炭素−リン結合
EC3.12:硫黄−硫黄結合
EC3.13:炭素−硫黄結合
EC4.2:デヒドラターゼ等、炭素−酸素結合を切断するリアーゼを含む
【0113】
一実施形態において、1つ以上の酵素は、加水分解酵素を含む。
【0114】
一実施形態において、1つ以上の酵素は、ECクラスとして、EC3.1、EC3.2、EC3.4、およびEC4.2から選択される。
【0115】
他の実施形態において、1つ以上の酵素は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテイナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、およびグリコシダーゼから選択される。
【0116】
有用と考えられる市販の酵素の例には、Savinase(登録商標)(Novozymes A/S)、Endolase(登録商標)(Novozymes A/S)、Alcalase(登録商標)(Novozymes A/S)、Esperase(登録商標)(Novozymes)、パパイン(Sigma aldrich)、スブチリシンカールスバーグ(Sigma aldrich)、ペクチナーゼ(Sigma aldrich)、およびポリガラクツロナーゼ(Sigma aldrich)がある。
【0117】
他の実施形態において、1つ以上の酵素は、有毒であるかに関係無く、特定の生物に効果を及ぼすように選択された酵素を含む。したがって、この実施態様において、酵素の効果は、付着を低減することに加え、対象となる生物汚損種の生存能力および死亡率にも影響し得る。
【0118】
一部の興味深い実施形態において、1つ以上の酵素は、他の塗料成分と混合される前に予め配合される。例えば、酵素は、フィラー粒子上または粒子内、バインダ成分上に固定してよく、親水性のモノマ、オリゴマ、またはポリマが存在する場合には、こうした成分に配合してよく、または親水性変性ポリシロキサン油に配合してよい(上記も参照)。
【0119】
興味深い一実施形態において、1つ以上の酵素(または1つ以上の酵素の1つ若しくは幾つか)は、例えば、表面処理または固定化により配合される。
【0120】
一変形例において、1つ以上の酵素は、カプセル化材料の網状組織が海水による加水分解で分解される際に、湿潤塗料における安定性、硬化したコートとの適合性、および酵素の徐放性を得るために、WO 2009/062975に記載されたものに類似する方法で、エアロゲル、キセロゲル、またはクリオゲル型のマトリクスに封入してもよい。
【0121】
同様に、酵素は、海水からではなく、キシレンから酵素を遮蔽するために、US7,377,968に記載された材料に類似するポリマ材料でカプセル化してもよい。
【0122】
酵素を前処理する他の方法は、ポリアニオン性またはポリカチオン性材料とのイオン相互作用によるものである。酵素のpIに応じて、適切な電荷を有するポリマは、イオン架橋結合を発生させる酵素と強く結び付くことにより、酵素を安定させる。
【0123】
粘土またはニトロセルロース等の適切な材料への吸着は、酵素含有汚損剥離コートの調製、塗布、および硬化中に、酵素の安定性を高める他の方法となる。
【0124】
二官能性架橋剤を用いて、酵素間の共有結合を確立して、酵素の安定性を潜在的に改善することもできる。これは、架橋および共重合の両方と呼ぶことができる。架橋酵素凝集体(CLEA(登録商標))は、より一般的な酵素の一部について市販されている。
【0125】
したがって、一実施形態において、1つ以上の酵素は、二官能性架橋剤と反応して酵素凝集体を形成する。
【0126】
ホモおよびヘテロ二官能性架橋剤は、バインダ成分等の他の活性材料に酵素を固定するために使用することができる。ヘテロ二官能性架橋剤は、分子の各末端において選択的であるという利点を有する。これにより、対象となる分子間でのみ架橋が生じる状態が確保される。しかしながら、ホモ二官能性の架橋剤も、別個の材料に酵素を固定するために頻繁に用いられる。酵素の固定は、膜の前駆体に酵素を結合させること、あるいは硬化膜を活性化させ、酵素を活性部位に結合させることにより、膜硬化の前後に実施し得る。
【0127】
また、酵素の表面の変性により、油または疎水性溶媒等の溶媒との相溶性を改善し得る。ポリ(エチレングリコール)および脂肪酸は、酵素が保持される予定の環境との適合性を高めるために一般的に利用される。
【0128】
したがって、他の一実施形態において、酵素は、好ましくはポリ(エチレングリコール)により表面変性される。
【0129】
存在する場合、ポリシロキサン系汚損除去塗装系における生物汚損有機体の付着を防止するために利用される1つ以上の酵素は、塗装組成物または硬化したコートの総乾燥重量と比較した純粋な酵素の量として計算して、好ましくは、コートの総重量の最大10重量%、例えば0.0005〜8重量%、例えば0.001〜6重量%、または0.002〜4重量%、または0.003〜2重量%、または0.005〜1重量%、または0.01〜0.1重量%を構成するべきである。
【0131】
一実施形態において、汚損剥離コートは、
65重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%と、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1つ以上の添加剤と、
0〜25乾燥重量%、例えば0.1〜15乾燥重量%の1つ以上の顔料およびフィラーと、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜15乾燥重量%の1つ以上の双性イオン性化合物を含む。
【0132】
他の実施形態において、汚損剥離コートは、
65重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%を含み、ここに該バインダマトリクスは、その一部分として双性イオン性基を、特にバインダマトリクスの5〜35重量%、例えば6〜30重量%または7〜25重量%と、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1つ以上の添加剤、および
0〜25乾燥重量%、例えば0.1〜15乾燥重量%の1つ以上の顔料およびフィラーを含む。
【0133】
他の実施形態において、汚損剥離コートは、
65重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%を含み、ここに該バインダマトリクスは、その一部分として双性イオン性基を、特にバインダマトリクスの5〜35重量%、例えば6〜30重量%または7〜25重量%と、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1つ以上の添加剤と、
0〜20乾燥重量%、例えば0.1〜15乾燥重量%の1つ以上の顔料およびフィラーと、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜15乾燥重量%の1つ以上の双性イオン性化合物を含む。
【0134】
3つの上記した実施形態において、コートは、好ましくは殺生物剤および酵素から選択される、特に殺生物剤の1つ以上の有効成分を含み、例えば殺生物剤がコートの0.1〜30乾燥重量%、例えば0.5〜25乾燥重量%、特に1〜20乾燥重量%または1〜15乾燥重量%、例えば3〜15乾燥重量%を構成するように含まれる。
いまだ他の実施形態において、汚損剥離コートは、
65重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%と、
0.0001〜5乾燥重量%、例えば0.001〜2乾燥重量%の1つ以上の酵素と、
0.1〜15乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1つ以上の添加剤と、
0〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1つ以上の顔料およびフィラーと、
0.5〜20乾燥重量%、例えば1〜15乾燥重量%の1つ以上の双性イオン性化合物と、を含む。
【0135】
いまだ実施形態において、汚損剥離コートは、
65重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%と、
ここに該バインダマトリクスはその一部分として双性イオン性基を含み、
0.0001〜5乾燥重量%、例えば0.001〜2乾燥重量%の1つ以上の酵素と、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1つ以上の添加剤と、
0〜25乾燥重量%、例えば0.1〜15乾燥重量%の1つ以上の顔料およびフィラーと、を含む。
【0136】
塗装組成物の調製
汚損剥離コートは、対応する塗装組成物から調製される。
かかる塗装組成物は、塗料作製の分野で一般的に使用されている任意の適当な手法によって調製され得る。したがって、種々の構成成分は、ミキサー、高速分散機、ボールミル、パールミル、グラインダー、3本ロールミルなどを用いて一緒に混合され得る。塗装組成物は典型的には、使用直前に合わせて充分に混合するべき2成分系または3成分系として調製され、輸送される。本発明による塗料を、バッグフィルター、パトロン(patron)フィルター、ワイヤーギャップ(wire gap)フィルター、ウェッジワイヤーフィルター、メタルエッジフィルター、EGLM turnocleanフィルター(例えば、Cuno)、DELTAストレイン(strain)フィルター(例えば、Cuno)およびJenag Strainerフィルター(例えば、Jenag)を用いて、または振動濾過によって濾過してもよい。好適な調製方法の一例を実施例に記載する。
【0137】
本発明の方法に使用される塗装組成物は典型的には、2種類またはそれより多くの成分を混合すること、例えば、1種類またはそれより多くの反応性ポリシロキサンバインダを含む1種類の予備混合物と、1種類またはそれより多くの架橋剤を含む1種類の予備混合物の2種類の予備混合物を混合することにより調製される。塗装組成物に言及している場合、これは、塗布する準備ができた混合済みの塗装組成物であることを理解されたい。さらに、塗装組成物の乾燥重量に対する%として記載された量はすべて、塗布する準備ができた混合済みの塗料組成物の乾燥重量、すなわち、溶媒(あれば)を除いた重量に対する%であると理解されたい。
【0138】
本発明の第1の択一的な態様−コート系
また、本発明は、少なくとも第1の硬化したコートと第2の硬化したコートを備えた汚損剥離コート系であって、
a)前記第1のコートはポリシロキサン系バインダマトリクスを含むものであり、該マトリクスが前記第1のコートの少なくとも40乾燥重量%を構成しており、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当し、前記第1のコートにはさらに、殺生物剤および酵素から選択される1種類またはそれより多くの有効成分が含まれており;
b)前記第2のコートはポリシロキサン系バインダマトリクスを含むものであり、該マトリクスが前記第2のコートの少なくとも40乾燥重量%を構成しており、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当し、前記第2のコートの前記バインダマトリクスに、その一部として双性イオン性部分が含まれている、および/または前記第2のコートにさらに、1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物が含まれている、
汚損剥離コート系に関する。
【0139】
第1の硬化したコートならびに第2の硬化したコートは基材上に、第2のコートが第1のコートの上面に調製されるような様式で調製されることを理解されたい。また、第1のコートを、既に存在しているコート層上に、例えば、防食コート層またはタイコート層または経年防汚もしくは汚損剥離コートなどの上に調製してもよく、未処理の基材上に直接調製してもよいことを理解されたい(さらに以下の「塗装組成物の塗布」のセクションを参照のこと)。さらに、第2のコートは好ましくは最外層であるが、原則的には第2のコートにさらなるコート層(例えば、トップコート)をオーバーコートしてもよい。
【0140】
したがって、汚損剥離コート系は少なくとも第1の硬化したコートおよび第2の硬化したコートを備えている。最初に、第1のコートならびに第2のコートに存在させるポリシロキサン系バインダマトリクス(該マトリクスは必ずしも同一でないことを除く)を、上記のセクション「ポリシロキサン系バインダマトリクス」、「触媒」、「溶媒、添加剤、顔料およびフィラー」、「親水性変性」、「双性イオン性官能部」(該当箇所)、「殺生物剤」(該当箇所)、「酵素」(該当箇所)、ならびに「・・・具体的な実施形態」に説明している。続いて、第1のコートの具体的な特長を以下のセクション「・・・第1のコート」に説明し、一方、第2のコートの具体的な特長を、さらに以下のセクション「・・・第2のコート」にさらに説明する。
【0141】
第1のコートと第2のコートは同じ型のもの(すなわち、ポリシロキサン系)であるが第1のコートと第2のコートは同一でないことを理解されたい。特に、第1のコートと第2のコートは、i)有効成分(1種類または複数種)(すなわち、殺生物剤(1種類もしくは複数種)および/または酵素(1種類もしくは複数種))の含有量および/または型、ii)双性イオン性部分(バインダマトリクス)の含有量および/または型、ならびにiii)双性イオン性化合物(1種類または複数種)の含有量および/または型のうちの少なくとも1つに関して異なっていることが好ましい。
【0142】
第1のコートおよび第2のコートをどのようにして調製するかのさらなる実施形態を、さらに以下のセクション「コート系の適用」および「海洋構造物」に概要を示す。
【0143】
コート系の第1のコート
コート系の第1のコートは、(i)第1のコートにはその内部に殺生物剤および酵素から選択される1種類または(ore)それより多くの有効成分(該セクションの詳述内容によるもの)が含まれていること以外、ならびに(ii)第1のコートには必須構成成分として双性イオン性官能部が含まれていないこと以外、本質的に、セクション「本発明の主態様−汚損剥離コート」でシリコーン系汚損剥離コートについて上記のとおりである。その他の点では、第1のコートは、必要な変更を加えた上記のものである。
【0144】
一実施形態では、第1のコートは:
40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%のポリシロキサン系バインダマトリクス(ここで、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当する)、
0.1〜25乾燥重量%、例えば1〜15乾燥重量%の1種類またはそれより多くの殺生物剤、
0.1〜15乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1種類またはそれより多くの添加剤、ならびに
0〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1種類またはそれより多くの顔料およびフィラー
を備えている。
【0145】
上記のものの変形例の1つでは、第1のコートには、特に上記にさらに明記した型および量の双性イオン性部分(バインダマトリクスに)または双性イオン性化合物が含まれている。
【0146】
コート系の第2のコート
コート系の第2のコートは本質的に、セクション「本発明の主態様−汚損剥離コートでシリコーン系汚損剥離コートについて上記のとおりである。
【0147】
1つの実施形態において、第2のコートは、
65重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%と、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1つ以上の添加剤と、
0〜25乾燥重量%、例えば0.1〜15乾燥重量%の1つ以上の顔料およびフィラーと、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜15乾燥重量%の1つ以上の双性イオン性化合物と、を含む。
【0148】
別の実施形態では、第2のコートは:
40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%のポリシロキサン系バインダマトリクス(ここで、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当し、前記バインダマトリクスに、その一部として双性イオン性部分が、特に、該バインダマトリクスの重量に対して5〜35%、例えば6〜30%または7〜25%の量で含まれている)、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1種類またはそれより多くの添加剤、ならびに
0〜25乾燥重量%、例えば0.1〜15乾燥重量%の1種類またはそれより多くの顔料およびフィラー
を備えている。
【0149】
また別の実施形態では、第2のコートは:
40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%のポリシロキサン系バインダマトリクス(ここで、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当し、前記バインダマトリクスに、その一部として双性イオン性部分が、特に、該バインダマトリクスの重量に対して5〜35%、例えば6〜30%または7〜25%の量で含まれている)、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1種類またはそれより多くの添加剤、
0〜20乾燥重量%、例えば0.1〜15乾燥重量%の1種類またはそれより多くの顔料およびフィラー、ならびに
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜15乾燥重量%の1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物
を備えている。
【0150】
上記のもののいくつかの変形例では、第2のコートにはさらに、殺生物剤および酵素から選択される1種類またはそれより多くの有効成分、例えば1種類またはそれより多くの殺生物剤、特に、上記のセクション「殺生物剤」および「酵素」のそれぞれにさらに明記している型および量のものが含まれている。
【0151】
本発明の第1の択一的な態様の具体的な実施形態
本発明のこの態様の一般的な態様の他に、本発明はまた、以下の具体的な実施形態に関する。
【0152】
有効成分(すなわち、殺生物剤(1種類もしくは複数種)および/または酵素(1種類もしくは複数種))を第1のコートに、ならびに双性イオン性化合物をその次のコート(1種類もしくは複数種)に含めると、第2のコートに双性イオン性化合物が含まれていない系と比べて前記汚損剥離系の生物汚損物に対する抵抗性が改善されると考えられる。なんら特定の理論に拘束されないが、最外コート層内の双性イオン性化合物が殺生物剤(1種類もしくは複数種)/酵素(1種類もしくは複数種)を最外層からの拡散中に動員していると考えられる。
【0153】
したがって、一実施形態において、本発明により、少なくとも第1の硬化したコートと第2の硬化したコートを備えた汚損剥離コート系であって、
a)前記第1のコートはポリシロキサン系バインダマトリクスを含むものであり、該マトリクスが前記第1のコートの少なくとも40乾燥重量%を構成しており、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当し、前記第1のコートにはさらに、殺生物剤および酵素から選択される1種類またはそれより多くの有効成分が含まれており;
b)前記第2のコートはポリシロキサン系バインダマトリクスを含むものであり、該マトリクスが前記第2のコートの少なくとも40乾燥重量%を構成しており、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当し、前記第2のコートにさらに、1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物が含まれている、
汚損剥離コート系を提供する。
【0154】
この実施形態の変形例の1つでは、第2の硬化したコートは:
40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%のポリシロキサン系バインダマトリクス(ここで、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当する)、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1種類またはそれより多くの添加剤、
0〜25乾燥重量%、例えば、0.1〜15乾燥重量%の1種類またはそれより多くの顔料およびフィラー、ならびに
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜15乾燥重量%の1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物
を備えている。
【0155】
この実施形態において、第2の硬化したコートは1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物を、該第2の硬化したコートの0.5〜20乾燥重量%、例えば1〜15乾燥重量%または2〜10乾燥重量%または2〜7乾燥重量%の量で含むものであることが好ましい。
【0156】
有効成分(すなわち、殺生物剤(1種類もしくは複数種)および/または酵素(1種類もしくは複数種))を第1のコートに、ならびに双性イオン性部分を有するバインダをその次のコート(1種類または複数種)に含めると、第2のコートに双性イオン性部分がバインダの一部として含まれていない系と比べて前記汚損剥離系の生物汚損物に対する抵抗性が改善されると考えられる。なんら特定の理論に拘束されないが、最外コート層内の双性イオン性部分が殺生物剤(1種類もしくは複数種)/酵素(1種類もしくは複数種)を最外層からの拡散中に動員していると考えられる。
【0157】
したがって、別の実施形態において、本発明により、少なくとも第1の硬化したコートと第2の硬化したコートを備えた汚損剥離コート系であって、
a)前記第1のコートはポリシロキサン系バインダマトリクスを含むものであり、該マトリクスが前記第1のコートの少なくとも40乾燥重量%を構成しており、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当し、前記第1のコートにはさらに、殺生物剤および酵素から選択される1種類またはそれより多くの有効成分が含まれており;
b)前記第2のコートはポリシロキサン系バインダマトリクスを含むものであり、該マトリクスが前記第2のコートの少なくとも40乾燥重量%を構成しており、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当し、前記第2のコートの前記バインダマトリクスに、その一部として双性イオン性部分が含まれている、
汚損剥離コート系を提供する。
【0158】
この実施形態の変形例の1つでは、硬化した第2のコートは:
40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%のポリシロキサン系バインダマトリクス(ここで、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当し、前記バインダマトリクスに、その一部として双性イオン性部分が、特に、該バインダマトリクスの重量に対して5〜35%、例えば6〜30%または7〜25%の量で含まれている)、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1種類またはそれより多くの添加剤、ならびに
0〜25乾燥重量%、例えば、0.1〜15乾燥重量%の1種類またはそれより多くの顔料およびフィラー
を備えている。
【0159】
上記の実施形態ではどちらも、硬化した塗第1の膜は:
40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%のポリシロキサン系バインダマトリクス(ここで、該バインダマトリクスの65重量%より多くがポリシロキサン部に相当する)、
0.1〜25乾燥重量%、例えば1〜15乾燥重量%の1種類またはそれより多くの殺生物剤、
0.1〜15乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1種類またはそれより多くの添加剤、ならびに
0〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1種類またはそれより多くの顔料およびフィラー
を備えているものであることが好ましい。
【0160】
前記実施形態のいくつかの変形において、硬化した第2のコートは、
5〜35重量%、例えば6〜30重量%または7〜25重量%のバインダマトリクスが双性イオン性基で表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、40〜98乾燥重量%、例えば60〜95乾燥重量%と、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜10乾燥重量%の1つ以上の添加剤と、
0〜25乾燥重量%、例えば0.1〜15乾燥重量%の1つ以上の顔料およびフィラーと、
0.1〜20乾燥重量%、例えば1〜15乾燥重量%の1つ以上の双性イオン性化合物と、を含む。
【0161】
前記のいくつかの変形において、第2のコートは、さらに、殺生物剤および酵素、特に各々「殺生物剤」および「酵素」の章でさらに規定した種類および量のもの、から選択される1つ以上の有効成分を含む。
【0162】
塗装組成物の塗布
本発明の塗装組成物は、一般に、基材の表面の少なくとも一部に塗布される。
「塗布」という用語は、塗料産業における通常の意味で用いられる。したがって、「塗布」は、例えば、ブラシ、ローラ、吹き付け、浸し塗り等、任意の従来の手段を用いて実施される。塗装組成物を「塗布」する商業的に最も興味深い方法は、吹き付けである。したがって、塗装組成物は、好ましくは吹き付け可能である。吹き付けは、当業者に既知である従来の吹き付け装置を用いて達成される。塗装は、一般に、50〜600μm、例として50〜500μm、例えば75〜400μm、または20〜150μm、または30〜100μmの乾燥膜厚で塗布される。
【0163】
更に、塗装組成物は、ASTM D 4400−99による垂れ抵抗性に関して(すなわち、垂れることなく垂直な表面に適切な膜厚で塗布される能力に関して)、少なくとも70μmまで、例えば少なくとも200μmまで、例えば少なくとも300μmまで、好ましくは少なくとも400μmまで、および特に少なくとも600μmまでの湿潤膜厚に対する垂れ抵抗性を示すことが好ましい。
【0164】
「基材の表面の少なくとも一部」という用語は、塗装組成物を表面の任意の一部に塗布し得ることを示す。多くの用途において、塗装組成物は、少なくとも、表面(例えば、船の胴体)が海水等の水に接触し得る基材(例えば、船舶)の一部に塗布される。
【0165】
「基材」という用語は、塗装組成物が塗布される固体材料を意味するものである。基材は、一般に、スチール、鉄、アルミニウム等の金属またはガラス繊維強化ポリエステルを含む。最も興味深い実施形態において、基材は、金属基材、特に、スチール基材である。他の実施形態において、基材は、ガラス繊維強化ポリエステル基材である。一部の実施形態において、基材は、海洋構造物の最外表面の少なくとも一部である。
【0166】
「表面」という用語は、通常の意味で用いられ、物体の外側境界を示す。こうした表面の特定の例には、海洋構造物、例えば船舶(限定では無いが、全ての種類のボート、ヨット、モーターボート、発動機艇、遠洋航行船、タグボート、タンカ、コンテナ船および他の貨物船、潜水艦、および艦艇を含む)、パイプ、沿岸および沖合の機械、建築物、および全ての種類の物体、例えば桟橋、杭、橋梁下部構造、水力設備および構造物、水中油井構造物、網および他の養殖設備、並びにブイ等の表面が挙げられる。
【0167】
基材の表面は、「未処理の」表面(例えば、スチール表面)であってよい。しかしながら、基材は、一般に、防食塗装および/またはタイコートで被覆され、基材の表面はこのような塗装により構成される。存在する場合、(防食および/またはタイ)塗装は、一般に、100〜600μm、例として150〜450μm、例えば200〜400μmの合計乾燥膜厚で塗布される。あるいは、基材は、コート、例えば、摩耗した汚損除去コートまたは類似するものを有してもよい。
【0168】
重要な一実施形態において、基材は、防食塗装、例として防食エポキシ系塗装、例えば硬化したエポキシ系塗装、またはショッププライマ、例えば、ジンクリッチショッププライマにより被覆された金属基材(例えば、スチール基材)である。他の関連する実施態様において、基材は、エポキシプライマ塗装で被覆されたガラス繊維強化ポリエステル基材である。
【0169】
本発明の主態様のコートは典型的には最外コート(別名トップコート)として適用される、すなわち、該コートは環境に、例えば水中環境に晒される。しかしながら択一的に、コート中の浸出性成分の浸出速度の改善された(an improve)制御を得るため、本発明の主態様のコートを積層系として適用してもよいことを理解されたく、該積層系の場合、本発明の主態様に記載のコートは1種類またはそれより多くの他の塗装組成物の1つまたはそれより多くの層(1種類もしくは複数種)で被覆されている。
【0170】
そのため、本発明はまた、基材の表面上に汚損剥離コート系を構築する方法であって:
a)プライマー組成物の1つまたはそれより多くの層を前記基材の表面上に適用し、それによりプライマー処理基材を形成する工程、
b)タイコート組成物の1つまたはそれより多くの層を前記プライマー処理基材の表面上に適用し、前記層(1種類もしくは複数種)を硬化させ、それにより硬化タイコートを形成する工程、および
c)組成物の1つまたはそれより多くの層を前記硬化タイコートの表面上に適用し、前記層(1種類もしくは複数種)を硬化させ、それにより本明細書において上記に定義した硬化汚損剥離コート(主態様)を形成する工程
の一連の工程を含む方法に関する。
【0171】
上記の方法のいくつかの変形例では、硬化汚損剥離コートをさらにトップコートで、例えば、PDMS系トップコートで被覆してもよい。
【0172】
そのため、本発明はまた、基材の表面上に汚損剥離コート系を構築する方法であって:
a)ポリシロキサン系塗装組成物の1つまたはそれより多くの層を前記基材の表面上に、例えば、場合に応じて未処理の基材上または1つもしくはそれより多くのコートを既に担持している基材上のいずれかに適用し、前記層(1種類もしくは複数種)を硬化させ、それにより、第1の択一的態様について本明細書において上記に定義した第1の硬化したコートを形成する工程、および
b)ポリシロキサン系塗装組成物の1つまたはそれより多くの層を前記第1の硬化したコートの表面に適用し、前記層(1種類もしくは複数種)を硬化させ、それにより、第1の択一的態様について本明細書において上記に定義した第2の硬化したコートを形成する工程
の一連の工程を含む方法(第1の択一的態様によるもの)に関する。
【0173】
また、本発明は、基材の表面上に汚損剥離コート系を構築する方法であって:
a)プライマー組成物の1つまたはそれより多くの層を前記基材の表面上に適用し、前記層(1種類もしくは複数種)を硬化させ、それによりプライマー処理基材を形成する工程、
b)任意選択で、タイコート組成物の1つまたはそれより多くの層を前記プライマー処理基材の表面上に適用し、前記層(1種類もしくは複数種)を硬化させ、それにより硬化タイコートを形成する工程;
c)ポリシロキサン系塗装組成物の1つまたはそれより多くの層を場合に応じて前記プライマー処理基材の表面上または前記タイコートの表面上に適用し、前記層(1種類もしくは複数種)を硬化させ、それにより、第1の択一的態様について本明細書において上記に定義した第1の硬化したコートを形成する工程、および
d)ポリシロキサン系塗装組成物の1つまたはそれより多くの層を前記第1の硬化したコートの表面に適用し、前記層(1種類もしくは複数種)を硬化させ、それにより、第1の択一的態様について本明細書において上記に定義した第2の硬化したコートを形成する工程
の一連の工程を含む方法(第1の択一的態様によるもの)に関する。
【0174】
さらに、本発明は、古い防汚塗装組成物に汚損剥離系を確立する方法に関し、次の連続するステップを含む。
【0175】
a)シーラー/リンク−コート組成物の1つ以上の層を、基材の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、シールした基材を形成し、
b)所望により、タイコート組成物の1つ以上の層を前記シールした基材の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、硬化したタイコートを形成し、
c)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を、場合に応じて前記下塗り済み基材の表面または前記タイコートの表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様について定めたような硬化した第1のコートを形成し、ついで
d)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を前記硬化した第1のコートの表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様についてそれぞれ定めたような硬化した第2のコートを形成すること。
【0176】
本発明は、更に、古い汚損剥離コート系の表面に汚損剥離コート系を構築する方法に関し、次の連続するステップを含む。
【0177】
a)所望により、タイコート組成物の1つ以上の層を前記古い汚損剥離コート系の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、硬化したタイコートを形成し、
b)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を、場合に応じて前記下塗り済み基材の表面または前記タイコートの表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様について定めた硬化した第1のコートを形成し、ついで
c)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を、前記硬化した第1のコートの表面にに塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様について定めたような硬化した第2のコートを形成すること。
【0178】
海洋構造物
本発明は、更に、外表面の少なくとも一部に、これまでに本明細書で定めたような最外汚損剥離コート系を含む海洋構造物を提供する。特に、最外塗装を有する外表面の少なくとも一部は、前記構造物の水中部分となる。
【0179】
塗装組成物、基材表面上で塗装を構築する方法、および塗装の特性は、上述した内容に従う。
【0180】
一実施形態において、海洋構造物の汚損抑制塗装系は、防食層、タイコート、および本明細書に記載の汚損剥離系から成るものにし得る。
【0181】
他の実施形態において、汚損剥離組成物は、使用済みの汚損剥離系の最上部、例えば、使用済みのポリシロキサン系汚損剥離コートの最上部に塗布される。
【0182】
上述した海洋構造物の特定の一実施形態において、防食層の合計乾燥膜厚は、100〜600μm、例として150〜450μm、例えば200〜400μmであり、タイコートの合計乾燥膜厚は、50〜500μm、例として50〜400μm、例えば75〜350μm、または75〜300μm、または75〜250μmであり、汚損剥離コートの合計乾燥膜厚は、20〜500μm、例として20〜400μm、例えば50〜300μmである。
【0183】
海洋構造物の他の実施形態は、前記構造物の最外表面の少なくとも一部が、
1〜4層、例えば2〜4層の塗布により構築される、合計乾燥膜厚が150〜400μmであるエポキシ系塗装の防食層と、
1〜2層の塗布により構築される、合計乾燥膜厚が20〜400μmであるタイコートと、
1〜2層の塗布により構築される、合計乾燥膜厚が20〜400μmである(主要な態様の)汚損剥離コートと、を含む汚損剥離コート系により被覆されたものとなる。
【0184】
海洋構造物の他の実施態様は、前記構造物の最外表面の少なくとも一部が、
1〜4層、例えば2〜4層の塗布によって構築された、合計乾燥膜厚が150〜400μmのエポキシ系塗装の防食層;
1〜2層の塗布によって構築される、全乾燥膜厚が20〜400μmのタイコート;
1〜2層の塗布によって構築される、全乾燥膜厚が20〜400μmの汚損剥離コートの第1のコート(第1の他の態様の);
1〜2層の塗布によって構築される、全乾燥膜厚が20〜400μmの汚損剥離コートの第2のコート(第1の他の態様の)
を含む汚損剥離コート系で被覆されている。
【0185】
上記海洋構造物のさらなる一実施形態において、汚損剥離コートは、タイコートを用いることなく防食層に直接的に塗布する。
【0186】
塗装組成物
本発明のさらなる一態様は、ポリシロキサン系バインダ系(前記バインダ系には1種類またはそれより多くのポリシロキサン成分が含まれており、該成分には、その一部として双性イオン性部分が含まれている)、ならびに殺生物剤および酵素から選択される1種類またはそれより多くの有効成分を含む汚損剥離塗装組成物であって、該バインダ系の65重量%より多くがポリシロキサン部に相当する汚損剥離塗装組成物に関する。特に、双性イオン性部分は、ホスホリルコリン型、スルホベタイン型およびカルボキシベタイン型の双性イオン性官能部から選択される。
【0187】
本発明のなおさらなる一態様は、ポリシロキサン系バインダ系、1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物、ならびに殺生物剤および酵素から選択される1種類またはそれより多くの有効成分を含む汚損剥離塗装組成物であって、該バインダ系の65重量%より多くがポリシロキサン部に相当する汚損剥離塗装組成物に関する。特に、該1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物は、ホスホリルコリン型、スルホベタイン型またはカルボキシベタイン型の双性イオン性官能部を含むものである。
【0188】
一般に、本発明は、定義した主態様のコートならびに第1の択一的態様(上記参照)の第1のコートおよび第2のコートに対応する汚損剥離塗装組成物に関する。このような塗装組成物は、実際的には、「乾燥重量」に関して対応するコートと同じ組成を有するものである。
【0189】
使用
本発明のさらなる一態様は、ポリシロキサン系塗装組成物の防汚特性を改善するための、1種類またはそれより多くの双性イオン性官能部が含まれた構成成分と殺生物剤および酵素から選択される1種類またはそれより多くの有効成分の組合せの使用に関する。
【0190】
本発明のさらなる一態様は、ポリシロキサン系塗装組成物の防汚特性を改善するための、一部として双性イオン性部分が含まれた1種類またはそれより多くのポリシロキサン成分と殺生物剤および酵素から選択される1種類またはそれより多くの有効成分の組合せの使用に関する。
【0191】
本発明のなおさらなる一態様は、ポリシロキサン系塗装組成物の防汚特性を改善するための、1種類またはそれより多くのポリシロキサン成分と、1種類またはそれより多くの双性イオン性化合物と、殺生物剤および酵素から選択される1種類またはそれより多くの有効成分との組合せの使用に関する。
【0192】
一般的な注意事項
本明細書および特許請求の範囲では、ポリシロキサン等に言及するが、本明細書に定めた塗装組成物は、個別の成分を1種類、2種類、またはそれ以上含み得ることを理解されたい。こうした実施形態において、それぞれの成分の総量は、個別の成分について上述した量に対応するべきである。
【0193】
化合物(群)、ポリシロキサン(群)、剤(群)等の表現における「(群)」は、個別の成分が1種類、2種類、またはそれ以上存在し得ることを示す。
【0194】
一方、「1つ(one)」という表現が用いられる場合、それぞれの成分は、1種類(1つ)のみ存在する。
【0195】
表現「乾燥重量%」は、場合に応じてコートまたは塗装組成物の乾燥重量に対するそれぞれの成分のパーセンテージを意味していると理解されたい。ほぼ実際的には(したがって、特に記載のない限り)、硬化したコートに言及している場合の「乾燥重量%」は、塗装組成物の「乾燥重量%」と同一である。
【実施例】
【0196】
実施例
粘度
特許請求の範囲とともに本出願書類との関連において、粘度は25℃においてISO 2555:1989にしたがって測定したものである。
【0197】
モデル塗料の調製方法
(i)部分:バインダ、溶媒、顔料、殺生物剤(必要な場合)、および添加剤を、インペラディスクを備えたDiaf溶解機において混合する(例えば、直径70mmインペラディスクにより1L缶において2000rpmで15分間)。
【0198】
(ii)部分:エチルシリケート、溶媒、触媒、および2,4−ペンタンジオンを、インペラディスクを備えたDiaf溶解機において混合する(例えば、直径70mmインペラディスクにより1L缶において500rpmで2分間)。
【0199】
塗布前に、(i)部分および(ii)部分を、実施例に記載した組成物によるいずれかの双性イオン性化合物および/またはバインダ構成物(双性イオン性基を生じるいずれかの構造物を含む)と共に混合し、その後、混合物を攪拌して均質にする。
【0200】
試験方法
ラフト試験
パネルの調製
塗装の付着を促進するために片側をサンドブラストしたアクリルパネル(150×200mm)を、エアスプレにより塗布した市販のエポキシ(HEMPEL Light Primer 45551)100μm(DFT)により被覆する。室温で6〜24時間乾燥させた後、タイコートをドクタブレードにより隙間300μmで塗布する。16〜30時間乾燥させた後、第1の層をドクタブレードにより、実施例において指定した隙間で塗布する。16〜30時間乾燥させた後、最上部の塗装塗料組成物をドクタブレードにより隙間400μmで塗布する。パネルは、少なくとも72時間乾燥後、ラフト上で浸漬する。
【0201】
試験
パネルは、スペインとシンガポールという2つの異なる場所で試験する。
スペインの試験場:スペイン北西部のビラノバに位置する。この試験場において、パネルは、平均温度17〜18℃で、塩分濃度が37〜38パーミルの範囲の海水に浸漬する。
【0202】
シンガポールの試験場:この試験場において、パネルは、温度が29〜31℃の範囲で、塩分濃度が29〜31パーミルの範囲の海水に浸漬する。
パネルは、4〜12週間に亘り調査し、各汚損のタイプ:動物、藻類およびヘドロについて以下の基準に従って評価する。
【0203】
【表1】
【0204】
以下のモデル塗料を、防汚性能の試験用に準備することができる。
モデル塗料表の全項目は、特に明記しない限り重量単位とする。最終的なポリシロキサンマトリクスの計算においては、全ての加水分解性基が加水分解および反応して、ポリシロキサンバインダとの縮合反応によりマトリクスになるものとする。したがって、エチルシリケートは、その重量の41%が最終的なポリシロキサンマトリクスの計算に寄与し、ビニルトリメトキシシランは、これに応じて、その重量の54%が寄与する。バインダマトリクスのポリシロキサン含有量を計算する際に、成分は、出発原料として計算に含まれるが、しかしながら、エチルシリケートおよびビニルトリメトキシシランについて上述したように補正される。
【0205】
材料
RF−5000、信越化学工業(日本)、シラノール末端ポリジメチルシロキサン
キシレン、地元供給業者
Aerosil R972、Evonik industries
Silikat TES 40 WN、Wacker−Chemie(ドイツ)、エチルシリケート
ネオスタンU−12、日東化成(日本)、ラウリン酸ジブチル錫
アセチルアセトン、Wacker−CHemie(ドイツ)、2、4−ペンタンジオン
Bayferrox 130M、Lancess−(ドイツ)、酸化鉄
Copper オマジン、Arch Chemicals Inc.(アイルランド)、銅ピリチオン
ヒュームドシリカ
ポリアミドワックス
PC2118、ホスホリルコリン共重合体(メトキシシラン反応性を有する)、Vertellus
PC1036、ホスホリルコリン共重合体(メトキシシラン反応性を有する)、Vertellus
PC1059、ホスホリルコリン共重合体(非反応性)、Vertellus
亜鉛オマジン、Arch Chemicals Inc.(アイルランド)、亜鉛ピリチオン
DMODAPS;3−(N,N−ジメチルオクタデシルアンモニオ)プロパンスルホネート、Sigma−Aldrich
Empigen,Empigen(登録商標)BB 洗剤、Sigma Aldrich (Cas nr 66455−29−6)
Savinase 16L (type EX)、Novozymes
Endolase 5000L、Novozymes
PC3019、ホスホリルコリン-PDMSブロック共重合体、Vertellus
PC3054、ホスホリルコリン-PDMSブロック共重合体、Vertellus
【0206】
【表2】
【0207】
【表3】
【0208】
【表4】
【0209】
【表5】
【0210】
PC成分はエタノール中に混合物として添加したことは注意されたい。この混合物の乾物含量を以下の表に示す。表中、ZF
*とは双性イオン性官能基を導入するために用いた(反応性)化合物をいう。
【0211】
【表6】
1反応性双性イオン性基
2双性イオン性化合物
【0212】
実施例は、殺生物剤を含有するシロキサン系汚損剥離コートに双性イオン性基を導入すると、双性イオン性基を含まない殺生物剤を含む参照例と比較して、コートの汚損防止性能がさらに向上することを示している。このことは、反応性の双性イオン性基ならびに非−反応性の双性イオン性化合物の場合である。
【0213】
【表7】
1反応性双性イオン性基
2双性イオン性化合物
実施例は、双性イオン性基およびバインダ系に結合した双性イオン性基の付加が、シロキサン系汚損剥離コートの汚損防止性能を向上することを示している。
【0214】
【表8】
【0215】
【表9】
【0216】
【表10】
【0217】
【表11】
【0218】
【表12】
【0219】
【表13】
【0220】
【表14】
【0221】
【表15】