(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203384
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】幾何学的モデルにおけるルールベースの拘束インタラクション
(51)【国際特許分類】
G06F 17/50 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
G06F17/50 604H
G06F17/50 620A
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-515360(P2016-515360)
(86)(22)【出願日】2014年5月14日
(65)【公表番号】特表2016-522500(P2016-522500A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】US2014037944
(87)【国際公開番号】WO2014189729
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年1月20日
(31)【優先権主張番号】587/KOL/2013
(32)【優先日】2013年5月22日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】504438288
【氏名又は名称】シーメンス プロダクト ライフサイクル マネージメント ソフトウェアー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Product Lifecycle Management Software Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ディック バールツェ
(72)【発明者】
【氏名】マノイ ラダクリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】アンドルー ロモノソフ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ロバート ジャンコヴィッチ
【審査官】
松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−152817(JP,A)
【文献】
特開平09−179994(JP,A)
【文献】
特開平04−311272(JP,A)
【文献】
特表2011−516999(JP,A)
【文献】
EGGLI, L. et al.,INFERRING 3D MODELS FROM FREEHAND SKETCHES AND CONSTRAINTS,COMPUTER AIDED DESIGN,ELSEVIER,1997年,Vol. 29, No. 2,pp. 101-112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造の幾何学的モデルを拘束するための方法であって、該方法はデータ処理システム(100)により実施され、
前記データ処理システム(100)により、複数の曲線(402)を含む、構造の幾何学的モデル(400)を受け取るステップ(205)と、
前記データ処理システムにより、前記複数の曲線の一部を含むリジッドグループ(404)と、前記リジッドグループの各曲線が相互の関係で動かすことのできないことを特定するリジッドな拘束とを生成するステップ(210)と、
複数の第1のオプションルールおよび複数の第2のオプションルールの中からの、ユーザ選択を提供するようにユーザに促すステップと、
前記データ処理システムにより、第1のオプションルール又は第2のオプションルールのユーザ選択を受け取るステップ(215)と、
前記データ処理システムにより、選択された前記第1のオプションルール又は前記第2のオプションルールに従い、前記リジッドグループを編集するステップ(225)と、
ここで、前記データ処理システムは、
前記リジッドグループの曲線と関連する外部拘束又は外部寸法が、前記リジッドグループの結果としてのコンフリクトを有しているか否かを決定し、
前記選択された第1のオプションルールに基づき、前記コンフリクトする外部拘束または外部寸法を排除し、
前記選択された第2のオプションルールに基づき、前記外部拘束または外部寸法が排除されないように、前記コンフリクトする外部拘束または外部寸法を保持させる、
ように構成されており、
ここで、前記外部拘束または外部寸法は、前記リジッドグループに含まれる少なくとも1つの曲線と前記リジッドグループに含まれない少なくとも1つの曲線との間の幾何学的関係を編集する際の制限を特定するものであり、
前記リジッドの編集に応答して、前記データ処理システム(100)により、前記リジッドグループの編集の結果排除された又は保持された外部拘束又は外部寸法を有する、前記編集されたリジッドグループの表示も含めた前記構造の幾何学的モデル(700)の視覚化された表示を、ディスプレイ(111)を介して、表示するステップ(235)と
を含むことを特徴とする、
幾何学的モデルを拘束するための方法。
【請求項2】
前記第1のオプションルールは、前記データ処理システムによって、
コンフリクトしている外部拘束又は外部寸法は適用されず、コンフリクトしていない外部拘束又は外部寸法は保持され、前記リジッドグループの幾何学を1つのセットとして参照するハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法は無視され、かつ、前記リジッドグループの内部曲線を参照するだけの内部拘束又は内部寸法は無視される、ように実行される
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2のオプションルールは、前記データ処理システムによって、
コンフリクトしている外部拘束及び外部寸法は保持され、かつ、前記リジッドグループの幾何学を1つのセットとして参照するハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法は無視され、かつ、前記リジッドグループの内部曲線を参照するだけの内部拘束又は内部寸法は無視される、ように実行される
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記リジッドグループが生成された時に、前記リジッドグループ(404)に含まれる曲線(402)がリジッドにセットされる、
請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記幾何学的モデルが、前記データ処理システムに対するユーザによる入力を介して、操作された時に、前記データ処理システムは、前記リジッドグループ(404)を拘束する(220)、
請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記データ処理システムは、前記リジッドグループをアクティベートして(230)、ユーザが前記リジッドグループ内の前記各曲線のロケーション及びオリエンテーションを相互の関係で操作できるようにし、かつ、前記リジッドグループがアクティベートした時に、前記データ処理システムは、先ず、前記リジッドグループの各曲線のロケーション及びオリエンテーションを相互の関係で維持し、それによって、前記リジッドグループが生成された後に追加された拘束に基づく前記各曲線の自動的な移動を防止する、
請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記幾何学的モデル(400)は二次元のモデルである、
請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
プロセッサ(102)と、アクセス可能なメモリ(108)を含むデータ処理システムであって、該データ処理システム(100)は特に以下のように構成されている、即ち、
複数の曲線(402)を含む、構造の幾何学的モデル(400)を受け取り(205)、
前記複数の曲線の一部を含むリジッドグループ(404)と、前記リジッドグループの各曲線が相互の関係で動かすことのできないことを特定するリジッドな拘束とを生成し(210)、
複数の第1のオプションルールおよび複数の第2のオプションルールの中からの、ユーザ選択を提供するようにユーザに促し、
第1のオプションルール又は第2のオプションルールのユーザ選択を受け取り、
前記選択された第1のオプションルール又は第2のオプションルールに従い、前記リジッドグループ(704)を編集し(225)、
ここで、前記データ処理システムは、
前記リジッドグループの曲線と関連する外部拘束又は外部寸法が、前記リジッドグループの結果としてのコンフリクトを有しているか否かを決定し、
前記選択された第1のオプションルールに基づき、前記コンフリクトする外部拘束または外部寸法を排除し、
前記選択された第2のオプションルールに基づき、前記外部拘束または外部寸法が排除されないように、前記コンフリクトする外部拘束または外部寸法を保持させる、
ように構成されており、
ここで、前記外部拘束または外部寸法は、前記リジッドグループに含まれる少なくとも1つの曲線と前記リジッドグループに含まれない少なくとも1つの曲線との間の幾何学的関係を編集する際の制限を特定するものであり、
前記リジッドの編集に応答して、前記データ処理システムにより、前記リジッドグループの編集の結果排除された又は保持された外部拘束又は外部寸法を有する、前記編集されたリジッドグループの表示も含めた前記構造の幾何学的モデル(700)の視覚化された表示を、ディスプレイ(111)を介して、表示する(235)、
ように構成されている、
データ処理システム。
【請求項9】
前記第1のオプションルールは、前記データ処理システムによって、
コンフリクトしている外部拘束又は外部寸法は適用されず、コンフリクトしていない外部拘束又は外部寸法は保持され、前記リジッドグループの幾何学を1つのセットとして参照するハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法は無視され、かつ、前記リジッドグループの内部曲線を参照するだけの内部拘束又は内部寸法は無視される、ように実行される
請求項8記載のデータ処理システム。
【請求項10】
前記第2のオプションルールは、前記データ処理システムによって、
コンフリクトしている外部拘束及び外部寸法は保持され、かつ、前記リジッドグループの幾何学を1つのセットとして参照するハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法は無視され、かつ、前記リジッドグループの内部曲線を参照するだけの内部拘束又は内部寸法は無視される、ように実行される
請求項8又は9記載のデータ処理システム。
【請求項11】
前記リジッドグループが生成された時に、前記リジッドグループ(404)に含まれる曲線(402)は、リジッドタイプにセットされる、
請求項8から10のいずれか1項記載のデータ処理システム。
【請求項12】
前記幾何学的モデルが、前記データ処理システムに対するユーザによる入力を介して操作された時に、前記データ処理システムは、前記リジッドグループ(404)を拘束する(220)、
請求項8から11のいずれか1項記載のデータ処理システム。
【請求項13】
前記データ処理システムは、前記リジッドグループをアクティベートして(230)、ユーザが前記リジッドグループ内の前記各曲線のロケーション及びオリエンテーションを相互の関係で操作できるようにし、かつ、前記リジッドグループがアクティベートした時に、前記データ処理システムは、先ず、前記リジッドグループの各曲線のロケーション及びオリエンテーションを相互の関係で維持し、それによって、前記リジッドグループが生成された後に追加された拘束に基づく前記各曲線の自動的な移動を防止する、
請求項8から12のいずれか1項記載のデータ処理システム。
【請求項14】
前記幾何学的モデル(400)は二次元のモデルである、
請求項8から13のいずれか1項記載のデータ処理システム。
【請求項15】
実行可能な命令によってコーディングされた非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体(126)であって、前記命令が実行されると、1つ又は複数のデータ処理システム(100)は、
複数の曲線(402)を含む、構造の幾何学的モデル(400)を受け取り(205)、
前記複数の曲線の一部を含むリジッドグループ(404)と、前記リジッドグループの各曲線が相互の関係で動かすことのできないことを特定するリジッドな拘束とを生成し(210)、
複数の第1のオプションルールおよび複数の第2のオプションルールの中からの、ユーザ選択を提供するようにユーザに促し、
第1のオプションルール又は第2のオプションルールのユーザ選択を受け取り(215)、
前記選択された第1のオプションルール又は第2のオプションルールに従い、前記リジッドグループ(704)を編集し(225)、
ここで、前記データ処理システムは、
前記リジッドグループの曲線と関連する外部拘束又は外部寸法が、前記リジッドグループの結果としてのコンフリクトを有しているか否かを決定し、
前記選択された第1のオプションルールに基づき、前記コンフリクトする外部拘束または外部寸法を排除し、
前記選択された第2のオプションルールに基づき、前記外部拘束または外部寸法が排除されないように、前記コンフリクトする外部拘束または外部寸法を保持させる、
ように構成されており、
ここで、前記外部拘束または外部寸法は、前記リジッドグループに含まれる少なくとも1つの曲線と前記リジッドグループに含まれない少なくとも1つの曲線との間の幾何学的関係を編集する際の制限を特定するものであり、
前記リジッドの編集に応答して、前記データ処理システムにより、前記リジッドグループの編集の結果排除された又は保持された外部拘束又は外部寸法を有する、前記編集されたリジッドグループの表示も含めた前記構造の幾何学的モデル(700)の視覚化された表示を、ディスプレイ(111)を介して、表示する(235)、
コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項16】
前記第1のオプションルールは、前記データ処理システムによって、
コンフリクトしている外部拘束又は外部寸法は適用されず、コンフリクトしていない外部拘束又は外部寸法は保持され、前記リジッドグループの幾何学を1つのセットとして参照するハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法は無視され、かつ、前記リジッドグループの内部曲線を参照するだけの内部拘束又は内部寸法は無視される、ように実行される
請求項15記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項17】
前記第2のオプションルールは、前記データ処理システムによって、
コンフリクトしている外部拘束及び外部寸法は保持され、かつ、前記リジッドグループの幾何学を1つのセットとして参照するハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法は無視され、かつ、前記リジッドグループの内部曲線を参照するだけの内部拘束又は内部寸法は無視される、ように実行される
請求項15又は16記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項18】
前記リジッドグループが生成された時に、前記リジッドグループ(404)に含まれる曲線(402)は、リジッドタイプにセットされる、
請求項15から17のいずれか1項記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項19】
前記幾何学的モデルが、前記データ処理システムに対するユーザによる入力を介して、操作された時に、前記データ処理システムは、前記リジッドグループ(404)を拘束する(220)、
請求項15から18のいずれか1項記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項20】
前記データ処理システムは、前記リジッドグループをアクティベートして(230)、ユーザが前記リジッドグループ内の前記各曲線のロケーション及びオリエンテーションを相互の関係で操作できるようにし、かつ、前記リジッドグループがアクティベートした時に、前記データ処理システムは、先ず、前記リジッドグループの各曲線のロケーション及びオリエンテーションを相互の関係で維持し、それによって、前記リジッドグループが生成された後に追加された拘束に基づく前記各曲線の自動的な移動を防止する、
請求項15から19のいずれか1項記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に言えば、コンピュータ支援による設計、視覚化及び製造システム、製品ライフサイクルマネージメント(PLM)システム、ならびに製品及び他の項目のデータを管理する同等のシステム(これらをまとめて「製品データ管理」システム又はPDMシステムと称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
PDMシステムはPLM及び他のデータを管理する。この場合、改善されたシステムが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ここで開示する種々の実現形態には、幾何学的モデルを拘束するための方法及び対応するシステム並びにコンピュータ読み取り可能媒体が含まれる。方法には、複数の曲線を含む幾何学的モデルを受け取るステップが含まれている。さらにこの方法には、複数の曲線の一部又はすべてを含むリジッドスケッチグループを生成するステップと、第1のオプションルール又は第2のオプションルールのユーザ選択を受け取るステップが含まれている。さらにこの方法には、第1のオプションルール又は第2のオプションルールに従って、リジッドスケッチグループを編集するステップが含まれている。この方法には、データ処理システムによって幾何学的モデルを表示するステップが含まれており、このステップには、編集されたリジッドスケッチグループを表示するステップが含まれている。
【0004】
これまでの記載は、以下の詳細な説明を当業者がよりよく理解できるよう、本発明の特徴および技術的な利点をどちらかと言えば大雑把に略述したものである。各請求項の要旨を成す本発明のその他の特徴および利点については、以下で述べることにする。当業者であれば理解できるように、当業者は本明細書で開示する着想や特定の実施形態を、本発明と同じ目的を成し遂げるための変更または異なる構造設計のベースとして、ただちに利用することができる。さらに当業者であれば、最も広い形態で開示した本発明の着想および範囲を逸脱することなく、上述のような等価の構造を実現することもできる。
【0005】
以下の発明の詳細な説明に入る前に、本明細書全体を通して用いられるいくつかの用語や表現について、ここで定義しておくのがよいと思われる。「を含む」および「を有する」なる表現ならびにそれらの派生語は、制限のない包含を表す。「または」なる表現は、「および/または」の意味も含む。「と関連する」および「それと関連する」ならびにそれらの派生語は、「含む」、「の中に含まれる」、「と相関した」、「を含有する」、「の中に含有される」、「に接続する」または「と接続する」、「に結合する」または「と結合する」、「と伝達可能である」、「と共働する」、「をはさむ」、「に並置する」、「のすぐ近くにある」、「に結び付けられる」または「と結び付けられる」、「の所有物」等を意味する場合もある。さらに「コントローラ」なる用語は、ハードウェアで実装されていようと、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらのうち少なくとも2つの組み合わせで実装されていようと、少なくとも1つのオペレーションを制御する何らかのデバイス、システムまたはそれらの一部分を表す。いくつかの用語および表現に対する定義は、本明細書全体にわたって規定されるものであり、当業者であれば理解できるように、この種の定義は、大部分の事例ではないにしても数多くの事例において、ここで定義した用語および表現の以前の使用にも将来の使用にも適用される。いくつかの用語は、幅広い種類の形態を含むことができるけれども、添付の特許請求の範囲では、それらの用語が特定の形態に明確に制限されてもよい。
【0006】
本発明およびその利点について、いっそう完璧に理解できるようにする目的で、添付の図面を参照しながら本発明について以下で説明する。なお、図中、対象が同じであれば同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】1つの実施形態を実現可能なデータ処理システムを示すブロック図
【
図2】本発明の実施形態によるプロセスを示すフローチャート
【
図3】本発明の実施形態による幾何学的モデルを、複数の曲線を含む二次元スケッチの形式で例示した図
【
図4】本発明の実施形態による幾何学的モデルを、複数の曲線を含む二次元スケッチの形式で例示した図
【
図5】本発明の実施形態による幾何学的モデルを、複数の曲線を含む二次元スケッチの形式で例示した図
【
図6】本発明の実施形態による幾何学的モデルを、複数の曲線を含む二次元スケッチの形式で例示した図
【
図7】本発明の実施形態による幾何学的モデルを、複数の曲線を含む二次元スケッチの形式で例示した図
【
図8】本発明の実施形態による幾何学的モデルを、複数の曲線を含む二次元スケッチの形式で例示した図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の開示内容の基本原理を説明するために、以下で説明する
図1〜
図8及び種々の実施形態が用いられているが、これらは例示の目的で用いたにすぎず、いかなる点においても本発明の範囲の限定を意図したものではない。当業者であれば理解できるように、本発明の開示内容の基本原理を、適切に構成された任意の装置において実現することができる。本発明の数多くの革新的な着想について、具体例として挙げた非限定的な実施形態を参照しながら説明する。
【0009】
バリエーショナルモデリングにおいては、変化は一般に変量によって表現される。バリエーショナルシステムは、1つのオブジェクトモデル又は曲線のセットにおける複数の特徴のパラメータ及びそれらの特徴相互間の関係を、幾何拘束及び寸法に関して記述するものである。したがってこの種のシステムは、「ソルバー」プロセスを利用して、それらの拘束及び寸法を、設計意図を維持するために必要とされる多数の補助的な拘束及び寸法とともに処理し、モデル全体が同時に解決される。
【0010】
本発明の実施形態は、幾何学的モデルにおけるルールベースの拘束インタラクションを開示するものであり、詳しくは、本発明の実施形態によれば、ルールを利用することによって、リジッド拘束と他のスケッチ拘束との間のインタラクションが可能となる。以下で述べる実施形態では、二次元スケッチジオメトリについて説明しているけれども、本発明による技術を三次元のジオメトリにも適用することができ、詳しくは1つの共通の平面に配置された三次元のジオメトリにも適用可能である。
【0011】
典型的な二次元スケッチには、曲線と寸法と幾何拘束とが含まれる。1つの拘束タイプは、「リジッド」セットの拘束である。リジッド拘束によって保証されるのは、拘束に関与する複数の曲線がリジッド曲線セットとして合わさって固定されることである。これらの曲線は、形状が変化することもなく、また、相互間で相対的に動くこともない。
【0012】
リジッド拘束を、他の拘束(平行、一致等)及び寸法(参照、駆動、又は自動)を既に有する可能性のある曲線のセットにおいて、生成することができる。本発明による実施形態では、リジッド拘束と他のスケッチ拘束との間のインタラクションを制御するルールを利用した、二次元又は三次元の幾何学的モデルを管理するための技術について説明する。これらのルールによって、曲線の跳躍を回避することができ、できるかぎり意図した通りに保持することができる(可能であれば拘束及び寸法の削除を回避できる)。
【0013】
以下の説明では、いくつかの特有の用語を使用するが、それらの用語について参照できるよう、以下で説明しておく。
【0014】
「リジッドセット」とは、互いに相対的に移動不可能なグループにまとめられた複数の曲線を表す。このことを実現するために用いられる拘束は、「リジッドセット拘束」と呼ばれる。「リジッドスケッチグループ」は、リジッド拘束とそれらの拘束のジオメトリとから成る。
【0015】
「ハイブリッド」拘束及び「ハイブリッド」寸法とは、セットのポジション又はオリエンテーションを制御するために生成された後、ユーザがリジッドセットに配置してよい拘束のことを指す。ただし、この拘束は、セットの参照のジオメトリにすぎない。種々の実施形態において、この種のハイブリッドな拘束及び寸法は、固定、水平、鉛直、水平方向の寸法、鉛直方向の寸法、又は一定の角度でなければならない。これらの拘束は、セットからの参照ジオメトリにすぎないので、無視してもよい。なお、ここで説明する多くのオペレーションは、「拘束又は寸法」において実行され、そのようなプロセスを、任意の適切な拘束、任意の適切な寸法、又はそれら双方において実行することができ、本発明で開示するプロセスは、それらの類似したもの各々を扱うことができる。
【0016】
「内部」拘束及び「内部」寸法とは、それらがリジッドセットのジオメトリだけを参照する場合には、リジッドセットの外部に存在することはできない。具体例として、一定長、半径寸法、直径寸法、等長、等半径、一致、同心、曲線上点、接線、平行、垂直、共線、平行寸法、垂直方向寸法等が挙げられる。
【0017】
「外部」拘束及び「外部」寸法とは、それらがリジッドセット及びリジッドセット内にはないジオメトリを参照するので、無視することができない拘束のことを指す。
【0018】
「無視される」拘束及び寸法とは、バリエーショナルソルバーから取り除かれた拘束又は寸法のことを指し、それらの拘束又は寸法は、それらが再び用いられるときに、それらのグループがアクティベートされるか、又はグループ化解除されるまで、保存される。典型的には、すべての内部拘束及び内部寸法及び大多数のハイブリッド拘束及びハイブリッド寸法は、リジッドセット拘束が存在する場合には、無視されることになる。無視される拘束は、ユーザには不可視状態にある。
【0019】
「保持された」拘束及び寸法とは、無視されない拘束又は寸法のことを指し、それらはリジッドセットによってスケッチを駆動するために用いられる。典型的には外部拘束/外部寸法及びいくつかのハイブリッド拘束/ハイブリッド寸法が保持される。
【0020】
「アクティブな」リジッドスケッチグループ即ちリジッドスケッチグループがアクティブになるのは、リジッドセットの拘束がソルバーによって無視され、かつ、リジッドスケッチグループ内の拘束が無視されなくなる場合である。
【0021】
リジッドスケッチグループを非アクティブにする「非アクティブ」リジッドスケッチグループは、リジッドセットの拘束をアクティベートする。リジッドスケッチグループ内の拘束は無視されることになる。
【0022】
図1には、1つの実施形態を実現可能なデータ処理システムのブロック図が示されている。これはたとえば、特に以下で述べるようなプロセスを実行するためのソフトウェアまたは他の手段によって構築されたPDMシステムとして実現可能であり、特に、以下で説明するように、相互接続され通信を行う複数のシステムのうちの1つとして実現可能である。図示されているデータ処理システムには、レベル2キャッシュ/ブリッジ104と接続されたプロセッサ102が含まれており、このキャッシュ/ブリッジ104自体はローカルシステムバス106と接続されている。たとえばローカルシステムバス106を、PCI(peripheral component interconnect)アーキテクチャのバスとすることができる。図示の実施例ではローカルシステムバスにさらに、メインメモリ108とグラフィックアダプタ110も接続されている。グラフィックアダプタ110を、ディスプレイ111と接続することができる。
【0023】
ローカルエリアネットワーク(LAN)/ワイドエリアネットワーク/ワイヤレス(たとえばWiFi)アダプタ112などといった他の周辺機器を、ローカルシステムバス106と接続することもできる。拡張バスインタフェース114によって、ローカルシステムバス106が入出力(I/O)バス116と接続されている。I/Oバス116は、キーボード/マウスアダプタ118、ディスクコントローラ120、および/またはI/Oアダプタ122と接続されている。ディスクコントローラ120を記憶装置126と接続することができ、この記憶装置126は、機械で利用可能または機械で読み取り可能な任意の記憶媒体とすることができ、このような記憶媒体には、以下に限定されるわけではないが、リードオンリーメモリ(ROM)など不揮発性の変更不可能な媒体、または消去可能であり電気的にプログラミング可能なリードオンリーメモリ(EEPROM)、磁気テープ媒体、ユーザが記録可能なタイプの媒体たとえばフロッピーディスク、ハードディスクドライブ、およびコンパクトディスク型リードオンリーメモリ(CD−ROM)、またはディジタル多用途ディスク(DVD)、さらに他の公知の光学的、電気的または磁気的な記憶媒体が含まれる。
【0024】
図示されているこの実施例では、I/Oバス116にオーディオアダプタ124も接続されており、サウンド再生のためにこのアダプタにスピーカ(図示せず)を接続することができる。キーボード/マウスアダプタ118によって、マウス、トラックボール、トラックポインタ、タッチスクリーンなどポインティングデバイス(図示せず)のための接続を行うことができる。
【0025】
当業者であれば理解できるように、
図1に描かれているハードウェアを個々の実現形態に合わせて変更できる。たとえば、図示されているハードウェアに加えて、またはその代替として、光ディスクドライブなどのような他の周辺機器を使用してもよい。図示されている実施例は、例示目的で示されているにすぎず、本発明に関して構造上の制限を意図したものではない。
【0026】
本発明の1つの実施形態によるデータ処理システムには、グラフィックユーザインタフェースを用いるオペレーティングシステムが含まれている。このオペレーティングシステムによれば、同時に複数のディスプレイウィンドウをグラフィックユーザインタフェースとして表示させることができ、各ディスプレイウィンドウによって、それぞれ異なるアプリケーションに対するインタフェースが提供され、または同じアプリケーションの異なるインスタンスに対するインタフェースが提供される。ユーザはポインティングデバイスを利用して、グラフィックユーザインタフェースのカーソルを操作することができる。その際、カーソルのポジションを変更することができ、および/または、望ましいレスポンスを生じさせるために、マウスボタンのクリックなどのイベントを発生させることができる。
【0027】
適切に変更を加えれば、様々な市販のオペレーティングシステムのうちの1つを採用することができ、たとえば, Washington州RedmondのMicrosoft社の製品であるMicrosoft Windows(登録商標)の1つのバージョンを採用することができる。オペレーティングシステムは、本発明に従って変更または作成される。
【0028】
LAN/WAN/ワイヤレスアダプタ112を(データ処理システム100の一部ではない)ネットワーク130に接続することができ、このネットワークを、当業者に周知のように、公用または専用のデータ処理システムネットワークあるいはそれらの組み合わせとすることができ、これにはインターネットが含まれる。データ処理システム100は、ネットワーク130を介してサーバシステム140と通信することができ、このサーバシステムもデータ処理システム100の一部ではないが、たとえば別個の異なるデータ処理システム100として実装してもよい。
【0029】
本発明による実施形態によれば、PDMシステムにおける各ジオメトリ間の拘束を管理するシステム及び方法が提供される。詳しくは、本発明による技術によって、リジッド拘束と他の拘束との間のインタラクションを管理するルールを適用することができる。
【0030】
図2には、本発明によるプロセスのフローチャートが示されている。このプロセスは例えば、以下では総称として「システム」と呼ばれる1つ又は複数のPLMシステム又はPDMシステムによって実行可能である。以下ではこのプロセスおよび関連するアクションについて、直線及び他の曲線といった二次元スケッチのジオメトリに関して説明するが、三次元を含む他のジオメトリにも同様に適用することができる。
図2に示されているプロセスには、複数のプロセスとサブプロセスが含まれており、これらは毎回それぞれ実施しなくてもよい。
【0031】
図2に示されているプロセスによって、種々のオプションを利用するルールを適用することができ、各オプションはそれぞれ対応するルールを有している。第1のオプションルールによって表されるのは、システムは、寸法及び拘束を可能であるならば保持して、新たなコンフリクトを回避する、ということである。第1のオプションルールをデフォルトルールとすることができる。第1のオプションルールが利用される場合、コンフリクトを生じさせる外部拘束又は外部寸法は、削除されるか、又は参照とされるにすぎない(適用されない)。コンフリクトを生じさせない外部拘束又は外部寸法は保持される。ハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法は無視される。内部拘束又は内部寸法は無視される。
【0032】
第2のオプションルールは、システムは寸法及び拘束を保持する、ということを表すものである。第2のルールオプションが利用される場合、保持されている外部拘束を選択することができる。このケースでは、外部拘束又は外部寸法がコンフリクトを生じさせるとしても、それらが保持される。ハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法は無視される。内部拘束又は内部寸法は無視される。
【0033】
すべての内部自動寸法及びハイブリッド自動寸法は、無視されたセットの一部分である。これが行われない場合、ソルバーはそれらを削除することになる。拘束及び寸法の過去のセットを保存しておくことができるので、起動/削除に応じてリストアすることができる。一般に、この種のエレメントを別個に管理する必要がない。なぜならばそれらは、コンフリクト発生時に自動的に削除されるか、又はそれらの値が自動的に調節されるからである。
【0034】
システムは、複数の曲線を含むジオメトリックモデルを受け取ることができる(ステップ205)。本明細書で用いられる、「受け取る」なる表現には、記憶装置からのロードを含めることができるし、あるいは他のデバイス又はプロセスからの受け取りも含めることができる。
【0035】
システムは、複数の曲線から1つのリジッドスケッチグループを生成することができる(ステップ210)。このプロセスの一部として、システムはジオメトリックモデルをユーザに表示することができ、曲線のユーザ選択を受け取ることができる。リジッドスケッチグループには、複数の曲線の一部又はすべてを含めることができる。システムは、選択された曲線のタイプを「リジッド」にセットすることができる。システムは、上述の定義及びオプションの1つ又は複数を適用することができる。
【0036】
システムは、オプションルールのユーザ選択を受け取る(ステップ215)。この選択を、第1のオプションルール又は第2のオプションルールの選択、とすることができる。このステップに、選択されたオプションをジオメトリックモデルに適用することも含めることができる。
【0037】
図3には、ジオメトリックモデル300が、複数の曲線を含む二次元スケッチの形式で例示されている。この実施例の場合、直線310及び320が、「フローティング」直線としてモデル300に加えられている。それらの直線は個々に拘束を有しており、即ち直線310は、直線312への参照を伴う拘束p0を有しており、直線320は、直線322への参照を伴う拘束p1を有している。
【0038】
上述の第1のオプションルールの場合、p0及びp1は双方とも新たなセットとコンフリクトしているので、それらは参照寸法となる。直線310と直線320との間における等長拘束(これは330のところに示した「=」の記号で表されている)は内部拘束であり、2つの鉛直方向の拘束(これは340のところに示されている太いバーで表されている)は、ハイブリッド拘束であるので、それらはすべて無視されることになる。2つの自動寸法(直線310及び320の先端に示されている長さ40)拘束はコンフリクトしており、両方とも削除される。結局は、このセットは3つの自由度を有することになり、適切な自動寸法が生成される。システムは、コンフリクトしているセットのいずれをそのままにしておいてよいのか、算定を試みる必要がない。システムは、コンフリクトしているすべての拘束又は寸法を一掃することができ、又は除去することができる。
【0039】
上述の第2のオプションルールの場合、p0及びp1が保持され、新たなセットとコンフリクトする。等長拘束は内部拘束であり、2つの鉛直方向の拘束はハイブリッド拘束であるので、それらすべての拘束は無視されることになる。2つの自動寸法(長さ40)はコンフリクトしており、両方とも削除される。コンフリクトに起因して、自由度計算及び自動寸法調整を生じさせることができない。システムは、参照を生成するために、3つの駆動寸法のうち1つの駆動寸法のユーザ選択を受け取ることができ、これが実行された場合、このセットは2つの自由度を有することになり、適切な自動寸法が生成される。第2のオプションルールが使われるのは、ユーザの意図がp2を除去することであった場合であり、図らずもコンフリクトが発生して寸法の代わりに拘束が生じたときである。
【0040】
システムは、既存のリジッドスケッチグループを拘束することができる(ステップ220)。このプロセスの一部として、リジッドグループが生成された後、システムは例えばユーザから、リジッドグループメンバーにおける1つ又は複数の寸法又は拘束を受け取ることができる。拘束が無視される拘束とマッチしている場合、システムは新たな拘束を生成し、無視される拘束を削除することができる。このようなケースの場合、重複する無視される拘束を、ユーザに通知することなく「黙って」、新たな拘束により置き換えることができる。
【0041】
上述の第1及び第2のオプションルールの場合、どのようなハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法であっても無視することができる。典型的には、このセットのうち1つ又は2つの拘束だけが、保持される拘束又は寸法として望ましい。システムは、保持が望まれる任意のハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法に関する置換拘束又は置換寸法のユーザ選択を受け取ることができ、システムはそれを保持されたものとしてマークすることになる。いくつかのケースにおいては、元のハイブリッド寸法が、簡単には置換に変換できない表現を有する可能性もある。それらのケースではユーザは、置換寸法における元の表現を参照することができる。
【0042】
生成された拘束がただちに無視されるようになることはない。生成された拘束は、リジッドセットとコンフリクトしていたとしても、表示されることになる。グループがアクティブではない間にリジッドセットジオメトリに加えられるすべての拘束と寸法は、以下で説明する編集プロセスにおいて、最初は「保持される」ものみなされる。
【0043】
システムは、リジッドスケッチグループを編集することができる(ステップ225)。このステップは、選択されたオプションルールに従って実施可能である。このプロセスに、幾何モデルのリジッドセットに対してなされる編集のユーザ入力を受け取るステップ、を含めることができる。編集プロセスが実施される、というユーザ指示をシステムが受け取ると、保持されている拘束又は寸法が、後で利用するためにキャッシュされる。これには外部拘束又は外部寸法、ハイブリッド拘束又はハイブリッド寸法、及びリジッドグループ形成後に生成された場合には、同等の(コンフリクトする)内部拘束又は内部寸法、を含めることができる。
【0044】
システムは、保持されている拘束/寸法を新たなカテゴリに動かすというような、選択された曲線セットに対するユーザ編集を受け取ることができる。例えば、付加的な曲線をリジッドセットに加えた場合、参照される双方のオブジェクトはそのグループに属することになるので、外部が内部になる可能性がある。
【0045】
リジッドグループを編集する場合、システムは、保持されている拘束/寸法を組み込む、というここで挙げた変更とともに、上述の定義を利用して拘束を管理することができる。
【0046】
第1のオプションルールが選択されており、かつ、コンフリクトする何らかの外部拘束/寸法が保持キャッシュ内にある場合、それらは保持されたものとして残存する。それらが事前に存在しているコンフリクトであるならば、この編集後も存在する。コンフリクトする外部拘束/寸法を消去可能であり、又は参照のみにすることができる(適用されない)。何らかのハイブリッド拘束/寸法が保持キャッシュ内にある場合、それらは保持されたものとして残存する。他のすべてのハイブリッド拘束/寸法を無視することができる。すべての内部拘束/寸法は、それらが保持キャッシュ内にあってもなくても、無視される。
【0047】
第2のオプションルールが選択されており、かつ、何らかのハイブリッド拘束/寸法が保持キャッシュ内にある場合、それらは保持されたものとして残存する。すべての内部拘束/寸法は、それらが保持キャッシュ内にあってもなくても、無視される。すべての外部拘束/寸法は、保持キャッシュ内にあってもなくても、かつ、それらがリジッド拘束とコンフリクトしていてもしていなくても、保持される。
【0048】
システムは、オプション状態のユーザ変更を受け取ることができる。例えばユーザは、上述の第1のオプションルールから上述の第2のオプションルールへ切り替えることができ、編集を受け取った時点でオプション状態に基づき編集プロセスが実行される。
【0049】
システムは、リジッドスケッチグループをアクティベートすることができる(230)。アクティベートに際して、グループがディアクティベートされる場合には、又はグループをアクティベートするためにユーザダイアローグが利用されようがされまいが、現在保持されている拘束が使用のために記憶される。システムはアクティベートに応答して、リジッドセット内の曲線のロケーション及びオリエンテーションを維持する。即ち、リジッドセットのいかなる曲線も、グループがアクティベートされるときには、「ジャンプ」(並進又は回転)してはならない。
【0050】
無視されるすべての拘束は、それらが引き続き適用されるか否かチェックするために評価される。水平方向及び鉛直方向の拘束が回転した線上にある場合、それらの拘束は、適用可能であるならば、平行及び垂直方向の拘束に変換される。水平方向の寸法及び鉛直方向の寸法は、必要であれば及び可能であれば、式の値を用いて平行の寸法に変換され、そうでなければ参照寸法となる。その他のすべての無視される拘束は、それらのジオメトリによってジャンプが引き起こされることになるか否かについてチェックされる。その理由は、ユーザはリジッドセットの後でそれらの拘束を加えた可能性があり、それらは決して解かれなかったからである。ジャンプを引き起こすことになるあらゆる拘束は削除される。変換又は削除されると、拘束はその状態を維持する。
【0051】
以前の拘束スキーマに復帰させるために、システムはUNDO操作を実行することができる。例を挙げると、ユーザはリジッドセットを生成する。ついでユーザは、両立しない値を有する内部拘束を加えるか、又は、2つの非平行な線の間に平行な拘束を加える。アクティベートに応答してシステムは、制約が有効か否かをチェックし、それらが有効であれば、個々の制約を保持する。この場合、UNDO操作によってアクティベーションを逆方向に戻すことができ、削除された拘束/寸法を元に戻すことができる。
【0052】
無視されたハイブリッド拘束についても、それらが保持されている拘束とコンフリクトしていないかチェックされる。コンフリクトが発生しているならば、保持されている拘束の方が採用され、無視されるハイブリッド拘束は削除されるか、又は必要に応じて参照とされる。
【0053】
コンフリクトしている拘束状況がリジッドセット内に事前に存在しており、それらが保持されている拘束を伴わず、かつ上述のように一掃が行われた後も存在し続けていたならば、グループがアクティベートされた後、存在し続けることになり、ユーザはそれらを選り分けることができる。この状況は、極めてまれに発生する。
【0054】
グループがアクティベートされる前に、リジッドセットの外部に(及びリジッドセットを含めて)コンフリクトしている拘束状況があった場合、それらは保持されている拘束を伴うことになり、ユーザがそれを確定するまで存在し続ける可能性がある。
【0055】
グループがアクティベートされている間、ユーザはいかなる曲線、拘束又は寸法であっても、ユーザが望むように任意に生成、編集、削除することができる。
【0056】
システムは、任意のリジッドスケッチグループ、拘束、寸法、又は上述のその他のデータを含む幾何学的モデルを、記憶又は表示することができる(ステップ235)。記憶された又は表示された幾何学的モデルには、上述の任意の編集又は他の変更を反映させることができる。
【0057】
システムは、ユーザ入力を受け取り、リジッドスケッチグループをアクティブスケッチグループにすることができる。ユーザは、グループの内部データに対するアクセス権を取得し、そのグループに任意の曲線が追加されることになる。これと同時に、グループ外部のオブジェクトともに、又はそれらのオブジェクトの間に、新たな拘束及び寸法を生成することができる。
【0058】
グループがアクティブにされると、システムは、リジッドセット拘束が無視した任意の無視された拘束を表示する。システムは、表示された任意の拘束シンボルを「隠蔽」する。
【0059】
この場合、グループは、アクティブスケッチグループとして振る舞う。その際、曲線を生成及び編集することができる。このようにした場合、曲線はグループの一部分である通常のスケッチ曲線のように振る舞うので、それらの変更をメンバーに加えることができる。
【0060】
ユーザが別のグループをアクティブにするか、又はこのスケッチグループをディアクティベートすると、この状況は元に戻されることになる。リジッドセット拘束が再び適用されて、生成に応答して、拘束処理ルールステップが実施される。
【0061】
リジッドセットグループがネストされており、低い方のレベルのグループがアクティブにされた場合、このことは、所有するグループにおける拘束もディアクティベートされる、ということを意味する。この時点でシステムは、低い方のレベルのリジッドスケッチグループの内容に対するユーザ変更を受け取り、これはいっそう高い方のレベルのグループのメンバーの曲線の編集についても同様に行われる。この動作は、複数のレベルにわたって段階的に行われる。リジッドスケッチグループAはBの内部にあり、さらにBはCの内部にある。グループAがアクティブになると、それによってBにおける拘束と寸法がアクティブになり(そのリジッドセットは非アクティブになり)、それによってC内部の拘束と寸法がアクティブになる(そのリジッドセットは非アクティブになる)。親グループは、その下にアクティブなリジッドスケッチグループが存在する限り、非リジッドにされる。
【0062】
アクティブなグループが再び非アクティブになると、親グループはそれらの本来のリジッド状態に戻る。
【0063】
図4には、幾何学的モデル400の具体例が、人物像の胴部の形状で描かれている。この人物像は、モデルにおける個々の曲線402(及び他の部分)が互いに拘束されていることを表しており、したがってシステムは、これらの曲線セットをリジッドにすることができる。
図4に描かれているモデルにおける曲線は、上述のようにリジッドスケッチグループ404として設計されている。
【0064】
図5には、胴部モデル400に対応する幾何学的モデル500の具体例が描かれており、これには付加的なリジッドスケッチグループが含まれている。腕各々、脚各々、及び頭はすべて、リジッドスケッチグループのまま維持されており、したがって胴部のリジッドスケッチグループの旋回点を中心とした回転のために拘束されている。脚、腕及び頭が旋回点を中心に回転するとき、それらはリジッドのまま維持される。このスケッチには、7つの拘束しか含まれていない。胴部は固定されており、脚と腕と頭はそれらの旋回点を中心にリジッドなオブジェクトとして回転可能である。
【0065】
図6には、モデル500に対応する幾何学的モデル600の具体例が描かれており、これは、リジッドスケッチグループがアクティブなときに、ユーザに表示可能なものである。この具体例ではユーザは、胴のリジッドスケッチグループをアクティブグループとして選択した。システムはこれに応答して、胴のリジッドスケッチグループをアクティベートし、内部拘束を表示して、ユーザが変更を行えるようにする。
【0066】
図7には、モデル600に対応する幾何学的モデル700の具体例が描かれており、これは、ユーザが変更を加えて胴を長くした後のモデルである。この具体例ではユーザは、胴のリジッドスケッチグループ704をアクティブグループとして選択し、胴の高さ/長さの寸法を変更した。胴のリジッドスケッチグループの残りの部分は、そのままリジッドに保持される。腕、脚及び頭を表す他のリジッドスケッチグループは、リジッドかつ旋回点に拘束されたまま保持される。
【0067】
図8には、モデル700に対応する幾何学的モデル800の具体例が描かれており、これによって表されているのは、腕、脚、頭のリジッドスケッチグループは、胴部リジッドスケッチグループ上の旋回点を中心に回転可能なことである。そのように回転が行われたとき、リジッドスケッチグループ各々は、そのままリジッドに保持される。
【0068】
当業者に自明のとおり、操作シーケンスにより特に指示または要求がなされないかぎり、上述のプロセスにおけるいくつかのステップを省略してもよいし、同時に実施しても逐次実施してもよく、あるいは異なる順序で実施してもよい。
【0069】
さらに当業者に理解できるとおり、簡単かつ明瞭にするため、本願の開示内容による使用に適したデータ処理システムの構造および操作をすべて示したわけではなく、或いは説明したわけではない。そうではなく、データ処理システムのうち、本願の開示内容に特有のところだけを、または本願の開示内容の理解に必要なところだけを描いて説明したにすぎない。データ処理システム100の構造および操作のその他の部分は、この分野で周知の現在行われている様々な実装形態および実施手法のいずれかに適合させることができる。
【0070】
ここで特に述べておきたいのは、本願の開示内容には、完全に機能的なシステムに関連した説明が含まれているけれども、当業者に自明であるとおり、本願の開示内容におけるメカニズムの少なくとも一部分は、機械で利用可能な媒体、コンピュータで利用可能な媒体、またはコンピュータで読み取り可能な媒体に記憶された命令として、任意の種類の形態で配布可能なものであること、さらに本願の開示内容は、特定のタイプの命令、信号担体または記憶媒体が利用されようとも、そのような配布物を実際に実行するために等しく適用されることである。機械で利用可能/読み取り可能な媒体、またはコンピュータで利用可能/読み取り可能な媒体の例として、以下のものが含まれる:リードオンリーメモリ(ROM)など不揮発性の変更不可能な媒体、または消去可能であり電気的にプログラミング可能なリードオンリーメモリ(EEPROM)、ならびにユーザが記録可能なタイプの媒体たとえばフロッピーディスク、ハードディスクドライブ、およびコンパクトディスク型リードオンリーメモリ(CD−ROM)、またはディジタル多用途ディスク(DVD)。
【0071】
これまで本発明の実施例について詳しく説明してきたが、当業者であれば理解できるように、最も広い形態で開示した本発明の着想および範囲を超えることなく、様々な変更、置き換え、変形ならびに本明細書で開示した改善を行うことができる。
【0072】
本願の記載内容のいずれも、何らかの特定の部材、ステップまたは機能が特許請求の範囲に含まれなければならない必須の要素である、という趣旨で読まれるべきではない。本発明の範囲は、特許付与された請求項によってのみ定められるものである。しかも、厳密な語「〜のための手段」の次に分詞が続かないのであれば、これらの請求項のいずれも、米国特許法第112条第6項が適用されることを意図したものではない。