特許第6203389号(P6203389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203389
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/48 20060101AFI20170914BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20170914BHJP
   F02M 59/28 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   F02M59/48
   F02M59/44 C
   F02M59/44 D
   F02M59/28 U
   F02M59/28 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-522365(P2016-522365)
(86)(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公表番号】特表2016-526632(P2016-526632A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2014061529
(87)【国際公開番号】WO2015000654
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】13174546.5
(32)【優先日】2013年7月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514160386
【氏名又は名称】デルファイ・インターナショナル・オペレーションズ・ルクセンブルク・エス・アー・エール・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(72)【発明者】
【氏名】タンスグ,オヌル・メヘメト
【審査官】 木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−097712(JP,A)
【文献】 特開2005−133681(JP,A)
【文献】 特開2003−206825(JP,A)
【文献】 特開2012−167663(JP,A)
【文献】 特開2013−050081(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02317120(EP,A1)
【文献】 国際公開第2012/079831(WO,A1)
【文献】 特開2006−170184(JP,A)
【文献】 特開平8−068370(JP,A)
【文献】 特開2010−127153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧燃料ポンプユニット(10)であって、
ポンプヘッド(12)と、
回転カムと協働するカム従動子(24)と、
長手軸(A)に沿って、燃料が圧送される前記ポンプヘッド(12)のポンプ孔(14)内に摺動可能に配置された第1の端部から、オイルによって潤滑された前記カム従動子(24)と協働する第2の端部(22)まで、延在するプランジャ(18)と、
前記ポンプヘッド(12)と前記カム従動子(24)との間で圧縮され、前記カム従動子(24)を前記カムに向かって付勢するバネ(30)とを備え、
前記高圧燃料ポンプユニット(10)は、さらに、燃料のオイルとの混合を防止するために、前記プランジャ(18)の周囲に配置され前記ポンプヘッド(12)に固定される環状の封止部材(34)を備え、前記封止部材(34)は二重リップ封止部材(34)であり、その2つのリップは前記プランジャ(18)と協働し、
前記ポンプユニット(10)の組立中に前記プランジャ(18)が誤ってポンプヘッド(12)から脱落することを防止するのに十分な、周囲からの内側向きの径方向の力で、前記封止部材(34)は前記プランジャ(18)を付勢しており、
前記ポンプ孔(14)は、円柱状凹部(46)内において前記ポンプヘッド(12)の外に開口し、前記封止部材(34)は前記円柱状凹部(46)内に配置されており、
前記高圧燃料ポンプユニット(10)は、さらに、釣鐘状部材(48)を備え、
該釣鐘状部材(48)は、前記円柱状凹部(46)を囲む位置において前記ポンプヘッド(12)に固定されており、
また、前記釣鐘状部材(48)は、前記プランジャ(18)が貫通する開口(52)を有する末端部まで軸方向に延在することを特徴とするポンプユニット(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプユニット(10)であって、
前記封止部材(34)は、前記ポンプヘッド(12)に取り付けられた封止部材保持スリーブ(36)内に配置されることを特徴とするポンプユニット(10)。
【請求項3】
請求項に記載のポンプユニット(10)であって、
前記プランジャ(18)には、前記釣鐘状部材(48)の内部に恒久的にある位置に環状の溝が設けられ、前記溝は環状保持クリップ(54)を収容しており、前記環状保持クリップ(54)の外径(D4)は、前記ポンプユニット(10)の組立中に前記プランジャ(18)が誤ってポンプ孔(14)から脱落することを防止するために前記開口(52)の直径(D3)よりも大きいことを特徴とするポンプユニット(10)。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプユニット(10)であって、
前記釣鐘状部材(48)は、その内部に、円柱状穴(50)を有し、その直径(D1)は封止部材(34)の外径(D2)よりも小さく、前記釣鐘状部材(48)を固定すると、その壁の内側部分がポンプへッド(12)に接触し、動作中に前記封止部材(34)が外れることを防ぐストッパが形成され、
前記釣鐘状部材(48)の開口(52)の直径(D3)は前記円柱状穴(50)の直径(D1)よりも小さく、組み付けられた際に、前記プランジャ(18)は、ポンプ孔(14)から出て、前記封止部材(34)および前記円柱状穴(50)を貫通し、開口(52)を通って外へ延在することを特徴とするポンプユニット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルによって潤滑されたカム従動子によって作動する高圧燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧燃料ポンプにおいて、プランジャは、ポンプヘッドの内部でピストンを形成する上端部から、カム従動子とピンブッシュローラとを備える下端部まで、延在する。カム従動子は、その回転がプランジャを作動させるカムに追従し、その結果、ピストンはポンプヘッドの内部で相互に移動する。カム従動子とポンプヘッドとの間で圧縮されるコイルバネは、ローラとカムとの間の恒久的な接触を維持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ピストンは燃料によって濡らされる一方、下端部およびカム従動子はエンジンオイルによって潤滑され、プランジャがポンプヘッド内で相互に摺動(または滑動)するのに伴って、いくらかの少量のオイルと燃料とが混合し、望ましくない混濁を生じる。
【0004】
EP2317120は、オイルと燃料との混合を避けるために二重リップ封止部材が備えられた組立体を開示した。
【0005】
別の問題は、組立工程に関わる。ポンプユニットがエンジンに固定される前は、プランジャはポンプ内に保持されていないため、組立ラインにおいて、プランジャがポンプヘッドから脱落することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の目的は、ポンプヘッドと、回転カムと協働するカム従動子と、長手軸に沿ってポンプヘッドからカム従動子まで延在するプランジャと、ポンプヘッドとカム従動子との間で圧縮され、カム従動子をカムに向かって付勢するバネとを備える高圧燃料ポンプユニットを提供することである。プランジャは、燃料が圧送されるポンプヘッドのポンプ孔内に摺動可能又は滑動可能に配置された第1の端部から、オイルによって潤滑されたカム従動子と協働する第2の端部まで延在する。ポンプユニットは、燃料のオイルとの混合を防止するためにプランジャの周囲に配置されポンプヘッドに固定される環状封止部材をさらに備える。
【0007】
封止部材は二重リップ封止部材であり、その2つのリップはプランジャと協働する。
【0008】
さらに、プランジャをポンプヘッド内に保持し、ポンプユニットの組立中にプランジャが誤ってポンプヘッドから脱落することを防止するのに十分な周囲からの内側向きの径方向の力によって、封止部材はプランジャに付勢することができる。
【0009】
封止部材は、ポンプヘッドに取り付けられた封止部材保持スリーブ内に配置される。
【0010】
ポンプ孔は、円柱状凹部内においてポンプヘッドの外に開口し、封止部材は前記円柱状凹部内に配置される。
【0011】
別の実施形態において、ポンプユニットは、前記円柱状凹部を囲む位置においてポンプヘッドに固定され、プランジャが貫通して延在する開口を有する末端部まで軸方向に延在する釣鐘状部材を備える。
【0012】
プランジャは、釣鐘状部材の内部に恒久的にある位置に環状の溝を備えることができる。この溝は環状保持クリップを収容し、環状保持クリップの外径は、ポンプユニットの組立中にプランジャが誤ってポンプ孔から脱落することを防止するように開口の直径よりも大きい。
【0013】
次に、本発明は、添付の図面を参照し、非限定的な例示として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従った、ポンプユニットの軸方向断面図である。
図2図1の一部の詳細図である。
図3】本発明に従った、ポンプユニットの別の実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
明確さおよび簡潔さを目的として、および本説明を理解し易くするために、図1に図示されるような上下方向(bottom−up orientation)が用いられる。上部(top)、底(bottom)、上側(upper)、下側(lower)、・・・などの用語、および下向きの(downward)、下向きに(downwardly)、上向きの(upward)、上向きに(upwardly)という方向は、本発明の範囲について、殊に、車両内でのポンプの設置の多くの可能性に関することについて、限定するいかなる意図もなく使用され得るものである。
【0016】
高圧燃料ポンプ10は、長手軸Aに沿って延在する。高圧燃料ポンプ10は、エンジン(図示されず)に直接固定されるポンプヘッド12を備える。あるいは、ポンプヘッド12は個別の筐体に固定されてもよい。ヘッド12には、軸方向の孔14が設けられている。軸方向の孔(ボア)14の上端部は、弁によって制御される入口から燃料を受け入れる加圧室である。加圧された燃料は、別の弁によって制御される出口を通って加圧室を出る。ポンプヘッド12には、軸方向下向きに延在する円柱状部材16がさらに設けられている。孔14は前記円柱状部材16の中央に延在する。
【0017】
孔14内には、プランジャ18が摺動可能(または滑動可能)に配置されている。プランジャ18の上端部はピストンとなっている。孔14とプランジャ18との間の径方向の隙間Cは、典型的には、数ミクロンのものであり、一端部においてプランジャ18が孔14内で摺動(滑動)することを可能にし、他端部において径方向の隙間Cからの燃料の漏れを最小限にしつつプランジャ18が燃料を加圧することを可能にする。プランジャ18は下向きに下端部22まで延在し、下端部22は、カム従動子24に当接する。カム従動子24は、カップ状部材26と、回転カム上で回転(転動)するピンブッシュローラ28とを備えている。コイルバネ30はプランジャ18の周囲に配置され、ポンプヘッド12とカム従動子24との間で圧縮される。より詳細には、図1から分かるように、バネ30の上部は、円柱状部材16の周囲に係合し、最後のらせんはヘッド12の平坦な表面に当接する。バネ30の下部は、カップ状部材26の内部に配置されたバネ座32に受けられる。
【0018】
図1において図示され、図2において詳細に示される第1の実施形態において、ポンプユニット10は、封止部材保持スリーブ36内に配置された封止部材34をさらに備える。封止部材保持スリーブ36は、圧着、螺合、接着または任意のその他の手段によって、覆うように円柱状部材16の下端部に係合し固定される円柱状壁38と、中央開口42を備える円盤状の底壁40とを有する。所定の位置において、プランジャ18は、開口42を通って円柱状部材16の外に延在する。封止部材34は、円柱状壁38、底壁40、およびプランジャ18の間に画定される内部の管状の空間内に配置される。
【0019】
当技術分野において知られているように、ユニットポンプ10がいったん所定位置に配置されると、プランジャ18は、回転カム上で回転(転動)するカム従動子24の変位によって作動されて、上下に往復運動する。ピストンは燃料によって濡らされる一方、カム従動子はエンジンオイルによって潤滑される。封止部材34の第1の機能は、プランジャ16の周囲に障壁を作ることによって、これら2つの液体の間の完全な分離を確実にすることである。これを確実に行うために、封止部材34は、2つの平行な領域においてプランジャ18の周囲に接触する二重リップ封止部材34である。
【0020】
封止部材34の第2の機能は、組立工程、殊にポンプユニットをエンジンに直接組み付ける際の組立工程に関連する。ポンプユニット10は、プランジャ18を孔14内へ挿入することによって組み付けられる。最終的にエンジンに固定されると、ポンプユニット10の一体性(結合性)は維持される。ポンプヘッド12はエンジンに固定され、反対側では、カム従動子24が回転カムに当接し、その間ではバネ30が圧縮されて遊びをなくしている。このようなエンジンへの組み付けの前には、プランジャ18が、誤ってポンプヘッド12から脱落することがある。封止部材34の第2の機能は、プランジャ18を所定位置に保持し、このような事故を避けることである。したがって、封止部材34は、さらに、周囲からの内側向きの径方向の力をプランジャ18に与えるように設計される。この力は、プランジャ18が孔14内に係止された後、プランジャ18を所定の位置に保持するのに十分な力である。
【0021】
組立工程において、封止部材保持スリーブ36はポンプヘッド12に固定され、次いで、封止部材34が封止部材保持スリーブ36の内部に配置される。その後、プランジャ18は、封止部材34を貫通して孔14の内部に挿入される。あるいは、もしも固定工程が許すなら、封止部材保持スリーブ36がポンプヘッド12に固定される前に、封止部材34が封止部材保持スリーブ36内に配置されてもよい。
【0022】
次に、図3を参照して第2の実施形態が説明される。円柱状部材は、第1の実施形態のものよりもかなり短い。この短い円柱状部材44には、内部軸方向凹部46が設けられている。そこには、孔14が開口するとともに、封止部材34が配置されている。外部では、短い円柱状部材44には、図3に示されるようなネジ山、または圧着形状、接着面、径方向に向けられたネジを受ける径方向ネジ穴などの、取り付け手段が設けられている。ポンプヘッド12は、ヘッド12を備える手段と相互補完的な取り付け手段を介して取り付けられ釣鐘状(ベル形状)の部材48をさらに備える。内部では、釣鐘状部材48は、円柱状穴50を有し、その直径D1は封止部材34の外径D2よりも小さく、したがって、釣鐘状部材48を固定すると、その壁の内側部分がポンプへッド12に接触し、動作中に封止部材34が外れることを防ぐストッパを形成する。図3に見られるように、釣鐘状部材48には、軸方向に開口52が設けられており、その直径D3は円柱状穴50の直径D1よりも小さく、組み付けられた際に、プランジャ18は、孔14から出て、封止部材34および円柱状穴50を貫通し、開口52を通って外へ延在する。
【0023】
この第2の代替例においても、封止部材34は、封止とプランジャの保持との2つの機能を確保する。
【0024】
保持機能をより強固なものにするために、プランジャ18は更なる保持手段、すなわち開口52の直径D3よりも大きな外径D4を有する保持クリップ54を有してもよい。クリップ54は、プランジャ18内の、プランジャ18が完全に孔14内に挿入されたときに封止部材34に近接する位置に設けられた溝の中に配置される。また、プランジャ18が下向きに移動したときに、クリップ54が封止部材34の近傍から開口52の近傍まで移動して円柱状穴50の内部に止まるように、釣鐘状部材48は十分な長さを有する必要がある。組立工程において、万一、封止部材34がプランジャ18を十分に保持しなかった場合には、プランジャ18が摺動(滑動)するのはクリップ54が釣鐘状部材48の底壁に当接するまでであり、プランジャ18の完全な分離および望ましくない脱落は防止される。また、釣鐘状部材48の外面56は、カムに向かう頂点を有してわずかに円錐形状になり、バネ30の係合および位置決めを容易にする。
図1
図2
図3