特許第6203394号(P6203394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203394ステロイド依存性疾患における3β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203394
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ステロイド依存性疾患における3β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20170914BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20170914BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
   G01N33/574 A
   !C12N15/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-527004(P2016-527004)
(86)(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公表番号】特表2016-533737(P2016-533737A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】US2014046477
(87)【国際公開番号】WO2015009603
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】61/846,344
(32)【優先日】2013年7月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595033056
【氏名又は名称】ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】The Cleveland ClinicFoundation
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シャリフィ,ニーマ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,カイ−シャン
【審査官】 西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0023136(US,A1)
【文献】 WILSON, E. M. et al.,"More evidence intratumoral DHT synthesis drives castration-resistant prostate cancer",Asian J. Androl.,2014年,Vol. 16,pp. 99-100,Published online: 16 Dec 2013
【文献】 CHANG, K.-H. et al.,"A gain-of-function mutation in DHT synthesis in castration-resistant prostate cancer",Cell,2013年 8月29日,Vol. 154,pp. 1074-1084, Supplemental Information
【文献】 PARK, J. Y. et al.,"Association between polymorphisms in HSD3B1 and UGT2B17 and prostate cancer risk",Urology,2007年,Vol. 70,pp. 374-379
【文献】 CHANG, B.-L. et al.,"Joint effect of HSD3B1 and HSD3B2 genes is associated with hereditary and sporadic prostate cancer susceptibility",Cancer Res.,2002年,Vol. 62,pp. 1784-1789
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−15/90
G01N 33/48−33/98
C12N 15/00−15/90
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺がんの治療を必要とする治療対象体の治療方法を決めることを補助する方法であって、
前記治療対象体から得た前立腺がんのサンプルで、HSD3B1(1245C)遺伝子(SNP ID:rs1047303)または3βHSD1(367Τ)タンパク質(SNP ID:rs1047303)が発現されているか否かを決定し、
前記HSD3B1(1245C)遺伝子または前記3βHSD1(367T)タンパク質が発現されている場合は、前記治療対象体に対し、ステロイドアブレーション以外の治療をガイドすることを含む、方法。
【請求項2】
前記前立腺がんは、去勢抵抗性前立腺がんである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、2013年7月15日にファイルされた米国仮特許出願第61/846,344号の優先権の利益を主張するものであり、かかる出願全体を本明細書に援用する。
【0002】
政府の資金援助
本発明は、米国陸軍医学研究司令部(NS)からの助成金PC080193、1R01CA168899(NS)および1R01CA172382-01(NS)ならびに、助成金PO1-CA85859(RV, PSN)、PC093509(PSN)およびP50CA097186(RV, PSN)による政府の支持を得てなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されて本明細書にその全体が援用される配列表を含む。2014年7月2日に作成された前記ASCIIコピーは、CCF-022549WOORD_SL.txtというファイル名であり、サイズは6,616バイトである。
【背景技術】
【0004】
がん性前立腺細胞の増殖には、アンドロゲンによるアンドロゲン受容体(AR)の刺激が必要であり、こうしたアンドロゲンのうち最も活性が高いのが、ジヒドロテストステロン(DHT)である。進行性前立腺がんは通常、性腺テストステロン遮断治療法(すなわち、医学的または外科的な去勢)で最初は退行するが、ほぼ必ず、最終的には去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)として進行する。CRPCの表現型は、アンドロゲン受容体(AR)における機能獲得によってドライブされ、その後は通常、腫瘍内のDHT濃度が約1nMとなる。これは、TMPRSS2−ETS融合がん遺伝子をはじめとするAR誘導遺伝子を発現させるには、十分である。Sharifi, N., Mol Endocrinol 27, 708-714 (2013)。CRPCを進行させる際の腫瘍内におけるアンドロゲン合成の要件は、17α−ヒドロキシラーゼ/17,20リアーゼ(CYP17A1)を阻害してアンドロゲンの合成を阻止する薬剤である酢酸アビラテロンならびに、ARのリガンド結合ドメインに対するDHTの結合を阻止する強力なARアンタゴニストであるエンザルタミドを用いる場合の延命効果によって、最もはっきりと示される。de Bono et al., N Engl J Med 364, 1995-2005 (2011); Scher et al., N Engl J Med. 367, 1187-97 (2012)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
副腎由来の前駆体からのDHTの腫瘍内合成は、テストステロンを回避する経路で行われる。Chang et al., Proc Natl Acad Sci USA 108, 13728-13733 (2011)。この合成には、3種類の酵素すなわち、3β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3βHSD;HSD3Bによってコードされる)、ステロイド−5α−レダクターゼ(SRD5A)、17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(17βHSD)アイソエンザイムが必要である(図1A参照)。それでもなお、CRPCにおけるDHT合成の増加は、今のところステロイド機構(steroidogenic machinery)の構成要素をコードする遺伝子のいずれの変異にも起因していない。3βHSDは、3β−ヒドロキシルを3−ケトに酸化し、ΔをΔに異性化する(図1A参照)。すなわちこれらは、一緒になって、DHTの合成に至るすべての可能な経路に必要な酵素によって、このステップを実質的に不可逆にする反応である。Evaul et al., Endocrinology 151, 3514-3520 (2010)。HSD3B1は、末梢で発現されるアイソエンザイム(3βHSD1)をコードし、1245位に、生殖細胞系の一塩基多型(SNP)を有する。この一塩基多型では、AがCに変化し、3βHSD1の367番目のアミノ酸でアスパラギン(N)がスレオニン(T)に置換される。
【0006】
過去10年間は、特定の患者に存在する、特定の疾患を発生させる酵素変異体(disease-driven enzyme mutation)に合わせた分子標的治療法の開発が脚光をあびてきた。こうした進歩は主に、これらのシグナル伝達酵素における機能獲得型変異を標的とするチロシンキナーゼ阻害剤の形でなされている。これには、非小細胞肺がんにおける変異EGF受容体を持つ腫瘍に合うEGF受容体阻害剤、BRAFの変異によってドライブされるメラノーマに対するRAF阻害剤の例が含まれる。Chapman et al. N Engl J Med 364, 2507-2516 (2011); Kobayashi et al., N Engl J Med 352, 786-792 (2005)。これとは対照的に、転移性CRPCに対するケアの標準には、酵素の変異に基づく薬剤ターゲティングの例が存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前立腺がん細胞の増殖は、アンドロゲン受容体(AR)のアンドロゲン刺激に依存する。最も活性の高いアンドロゲンであるジヒドロテストステロン(DHT)は、通常、精巣から分泌されるテストステロンから、前立腺において合成される。化学的または外科的去勢後、前立腺がんは通常、テストステロン不足により縮小する。しかしながら、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)を形成して、腫瘍が再発することが多い。本発明者らは、CRPCが、3β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(3βHSD1)の機能獲得につながる安定獲得型変異を発現することがあり、これが、副腎由来のステロイドであるデヒドロエピアンドロステロンからDHTへの変換における最初の律速段階を触媒することを、本明細書において示す。この変異(N367T)は、触媒機能に影響をおよぼすのではなく、酵素にユビキチン化および分解に対する耐性を持たせて、十分な蓄積につなげている。デヒドロエピアンドロステロンからDHTへの変換は通常、非常に限られているが、367Tの発現はこの変換を加速して、ARの活性化に必要なDHTを提供する。本発明者らは、3βHSD1がCRPCの治療用の有効なターゲットであるという仮説を立てている。
【0008】
以下の図面を参照することにより、本発明を一層容易に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、変異HSD3B1(1245C)によってコードされる3βHSD1(367T)タンパク質が、これがなければ律速となる、DHTに至る過程でのDHEAからADへのフラックスとAR応答性遺伝子の発現を増すことを示すグラフを提供する。(A)[H]−DHEA(100nM)からADへ、さらにはそれより下流での5αジオンおよびDHTへの代謝フラックスは、LNCaP細胞で強いが、LAPC4では制限されている。代謝経路とステロイドの構造を図示し、DHEAのADへの変換における3βHSD1による修飾部位を示す。ステロイドについては、表記の時点でHPLCによって定量した。(B)DHEAは、LNCaPではPSAおよびTMPRSS2の発現を濃度依存的に誘導するが、LAPC4ではそうならない。発現をqPCRによって評価し、RPLP0および溶媒対照に標準化した。(C)HSD3B1の1245位でAをCに変換する置換は、3βHSD1のアミノ酸367でNからTへの変化をコードするVCaPおよびLNCaPで発生する。(D)野生型3βHSD1(367N)および3βHSD1(367T)は、同等の動力学的特性を持つ。3βHSD1(367N)(丸)および3βHSD1(367T)(正方形)酵素でのDHEA代謝のミカエリス−メンテンプロット。3βHSD1(367N)および3βHSD1(367T)タンパク質に対するKは、それぞれ、32μΜおよび77μΜである。(E)3βHSD1(367T)の内因性発現が、タンパク質量の増加と関連している。A、B、Dにおけるエラーバーは、三重に実施した実験に対するSDを示す。
図2図2は、点変異に関連するDHEAからADへの代謝フラックスの増加が転写調節によるものではなく、フラックスと変異との関連が他のモデルでも発生することを示すグラフを提供する。A.HSD3B1転写物およびHSD3B2転写物の発現は、LNCaPとLAPC4で同等である。qPCRによるHSD3B1アイソエンザイムおよびHSD3B2アイソエンザイムの発現を、LNCaPに対するLAPC4で相対的に示し、RPLP0(上)およびGAPDH(下)に対して正規化する。エラーバーは、三重に実施した実験に対するSDを示す。B.[H]−DHEA(100nM)からADへの代謝フラックスは、VCaPでは3βHSD1(367T)によって強いが、DU145、RWPE−1、PzHPWでは3βHSD1(367N)で制限される。下流における5αジオンとDHTへのフラックスはVCaPで発生し、DU145、RWPE−1、PzHPWでは検出できない。ステロイドを、指定の時点でHPLCによって定量した。実験を3回行い、エラーバーはSDを示す。
図3図3は、3βHSD1(367T)をコードするHSD3B1(1245C)の体細胞選択が、アンドロゲン欠乏に対する抵抗性とともに生じることを示すグラフを提供する。(A)HSD3B1におけるAからCへの変換は、ホモ接合野生型が遺伝した患者からの3つのCRPC腫瘍で発生する。新鮮な凍結腫瘍(UTSW7)由来のcDNAクローンの配列から、HSD3B1(1245C)転写物が発現されているのは確実である。(B)ヘテロ接合が遺伝した患者からの3つのCRPC腫瘍は、野生型HSD3B1(1245A)アレルのLOHを呈する。隣接する有益な(ヘテロ接合)5’(rs6203)および3’(rs34814922およびrs113096733)SNPのシーケンシングから、LOHが確認される。(C)3βHSD1タンパク質は、HSD3B1(1245A)アレルのLOHを持つ腫瘍には豊富であるが、ヘテロ接合の発現またはホモ接合のHSD3B1(1245A)の発現が生じる腫瘍には認められない。また、試験したLOHを持つ両方の腫瘍は、ARおよびPSA(各腫瘍についてレーンごとにロードされた20μgのタンパク質)を発現する。(D)HSD3B1においてAからCに変換する体細胞変異は、精巣摘出後に酢酸アビラテロン(Abi)で処理した2つのLAPC4異種移植腫瘍で発生し、3βHSD1(367T)をコードするHSD3B1(1245C)転写物の発現は、これらの腫瘍からのcDNAクローンを配列決定することによって証明される。精巣摘出のみで処理した2つの代表的な対照腫瘍(CTRL#1およびCTRL#2)から得られるゲノム配列を、比較のために示す。CTRL#1およびCTRL#2からの37のcDNAクローンはすべて、3βHSD1(367N)をコードするHSD3B1(1245A)転写物を有する。
図4図4は、ヒトCRPC組織におけるHSD3B1 LOHを示すグラフを提供する。A.3βHSD1(367T)をコードするHSD3B1(1245C)アレルのLOHは、CRPCでは発生しない。図示されているのは、図3Bに示されていない生殖細胞系ヘテロ接合を持つ残りの例である。これら8例は、CRPC腫瘍から抽出したゲノムDNAの両方のアレルを維持する。B.LOHを持つUW腫瘍におけるHSD3B1 mRNAの発現は、3βHSD1のタンパク質の発現の増加を説明しない。発現をRPLP0に正規化し、エラーバーは、三重に実施した実験に対するSDを示す。
図5図5は、3βHSD1(367T)の遺伝子サイレンシングはDHEAからDHTへの変換、PSAおよびTMPRSS2の発現の誘導、CRPCの成長を妨げることを示すグラフを提供する。(A)は、HSD3B1(shHSD3Bl#1およびshHSD3Bl#2)に対する2つの独立したshRNAコンストラクトの安定したレンチウイルス発現は、LNCaP細胞における3βHSD1タンパク質の発現をサイレンシングする。3βHSD1タンパク質を定量化し、非サイレンシングレンチウイルスベクター(shCTRL)およびβ−アクチンを発現する細胞に標準化した。(B)3βHSD1(367T)のサイレンシングは、[H]−DHEA(100nM)からADへのフラックスのみならず、さらに下流での5α−ジオンおよびDHTへのフラックスもブロックする。[H]−DHEAを用いて細胞を三重に処理し、指定された時点で、HPLCを用いてステロイドを定量した。(C)AR調節遺伝子の阻害。表記の濃度のDHEAで24時間細胞を処理し、qPCRによって遺伝子発現を評価して、RPLP0ハウスキーピング遺伝子および溶媒で処理したshCTRL感染細胞に正規化した。(D)3βHSD1(367T)のサイレンシングは、in vitroでの増殖を阻害する。20nmのDHEAまたは溶媒の存在下にて細胞を増殖させ、各細胞株の増殖を指定日に溶媒に正規化する。(E)3βHSD1(367T)の枯渇が、LNCaP異種移植におけるCRPCの増殖をブロックする。異種移植腫瘍が100mmの閾値量に達した時に、マウスに外科的な精巣摘出とDHEAペレット移植を同時に行った。各コホートをマウス15匹で開始し、shCTRL、shHSD3Bl #1、shHSD3Bl #2群ではそれぞれ7匹、8匹、10匹のマウスで開始して、正常な性腺機能を有するマウスで腫瘍体積100mmを達成し、精巣摘出を行い、CRPC分析に含めた。精巣摘出から腫瘍体積が≧600mmになるまでの日数を示す。ログランク検定を用いて、shCTRLとshHSD3Bl#1およびshHSD3Bl#2、それぞれP=0.002および0.003の比較で。(F)3βHSD1(367T)タンパク質が、shHSD3Bl#1およびshHSD3Bl#2を発現しているLNCaPから増殖するCRPC腫瘍で回復する。表記のLNCaP CRPC腫瘍からのタンパク質で3βHSD1およびβ−アクチンのイムノブロットを行った。B、C、Dにおけるエラーバーは、三重に実施した実験に対するSDを示す。
図6図6は、3βHSD1(367T)および3βHSD1(367N)のタンパク質の半減期を示すグラフおよび画像を提供する。A.HA標識3βHSD1(367T)(T−HA)は、DU145前立腺がん細胞株における野生型3βHSD1(367N)(N−HA)タンパク質と比較して、半減期が長い。空のベクターのみ(ベクター)、野生型(N−HA)および変異(T−HA)タンパク質をコードするコンストラクトを用いて細胞を一過的にトランスフェクトし、CHXで処理し、指定の時点でタンパク質を回収し、ウェスタンブロットを実施し、シグナルを定量化して時刻0とβ−アクチンに対して正規化した。3βHSD1(367N)および3βHSD1(367T)タンパク質の計算された半減期は、それぞれ、2.7時間および>100時間である。B.LAPC4における安定な発現は、3βHSD1(367N)(N−HA)タンパク質よりHAタグ3βHSD1(367T)(T−HA)のほうが半減期の長いことを示している。発現は、ドキシサイクリン誘導性発現コンストラクトまたは溶媒(v)でのレンチウイルス感染後に誘導された。細胞をCHXで処理し、タンパク質を表記の時点で回収し、ウェスタンブロットを行い、シグナルを定量化して時刻0とβ−アクチンに対して正規化した。野生型および変異タンパク質の計算された半減期は、それぞれ、3.7時間および>100時間である。C.抗ユビキチン抗体を用いた免疫沈降によって証明されるように、MG132(8時間10uM)でのプロテオソーム阻害は、LNCaPにおけるポリユビキチン化3βHSD1(367T)タンパク質の増加につながらない。
図7図7は、ユビキチン化およびプロテオソームによる分解に対する耐性が、タンパク質の半減期の延長につながる3βHSD1(367T)とともに発生することを示すブロットの画像を提供する。(A)3βHSD1(367T)は、タンパク質翻訳の阻害後も持続する。野生型(N−HA)および(T−HA)タンパク質をコードするコンストラクトを用いてLAPC4細胞を一過的にトランスフェクトし、指定のインキュベーション時間、シクロヘキシミド(CHX)で処理した。抗HA抗体を用いたウェスタンブロットを行い、シグナルを定量化し、時刻0およびβ−アクチンに対して正規化した。(B)MG132による処理(10μΜ;8時間)は、LAPC4における3βHSD1(367N)タンパク質の喪失を反転させ、LNCaPにおける3βHSD1(367T)タンパク質の増加のない結果につながる。(C)MG132を用いたプロテオソーム阻害(10μΜ;8時間)は、抗ユビキチン抗体を用いた免疫沈降によって証明されるように、LAPC4におけるポリユビキチン化3βHSD1(367N)タンパク質の増加につながる。(D)プロテオソームによる分解に対する3βHSD1(367T)脆弱性の喪失は、ユビキチン化に対する感受性の低下によって説明される。His−ユビキチン(His−ubi)は、293の細胞において野生型(N−HA)または(T−HA)タンパク質とともに発現され、その後、Ni−アガロースビーズを用いたプルダウンおよび抗HA免疫ブロットを行った。
図8図8は、ER−関連分解(ERAD)経路およびAFMRが3βHSD1のユビキチン化および分解を調節することを示す質量分析結果とブロット画像を提供する。(A、B)3βHSD1(367N)でのK70およびK352ユビキチン化は、質量分析によって検出可能である。図8Aおよび8図Bは、出現順にそれぞれ、配列番号26〜27としてコアペプチド配列を開示している。(C)K70、352R変異3βHSD1(367N)は、ユビキチン化に対する耐性がある。N−HAのK70RおよびK352Rのシングルおよびダブルの変異形は、293の細胞におけるHis−ubiで発現され、続いて、Ni−アガロースビーズを用いたプルダウンと抗HA免疫ブロットを行った。(D)ERAD阻害剤であるイーアレスタチン(Eerl、10μΜ)での処理は、LAPC4における内因性3βHSD1タンパク質を増加させる。(E)AMFRは、野生型タンパク質(N−HA)と優先的かつ物理的に会合する。タンパク質を293の細胞で発現させ、抗HA抗体で免疫沈降した後、AMFRについてイムノブロットした。(F)ユビキチンE3リガーゼAMFRをサイレンシングすると、LAPC4細胞において検出される3βHSD1タンパク質が増加する。これとは対照的に、ユビキチンE3リガーゼSKP2を遺伝的にサイレンシングしても、3βHSD1に対する検出可能な効果はない。
図9図9は、3βHSD1(367T)がDHEAからDHTへの代謝フラックスを増加させ、CRPCを誘発することを示すグラフを提供する。(A)3βHSD1(367T)(T)の一過性の発現は、3βHSD1(367N)(N)と比較して、DHEAからADへの変換、さらには下流のステロイドへの変換の増加につながる。LAPC4細胞を表記のプラスミドでトランスフェクトし、CHXで処理し、[H]−DHEA(100nM)とともに培養した。ステロイドを抽出し、指定の時点でHPLCによって測定した(スチューデントのt検定を使用して、N形およびT形によるDHTの合成における差異のp値=0.023)。(B)qPCRによる、両方の転写物の等価な発現における一過性トランスフェクションの結果。(C)安定な発現が3βHSD1(367T)の活性の増加を示している。ルシフェラーゼ(L)、野生型(N)または(T)を発現するレンチウイルスコンストラクトを安定して発現させ(CHX処理なし)、上述したように[H]−DHEAからDHTへのフラックスを評価した(スチューデントのt検定を使用して、N形およびT形によるDHTの合成における差異のp値=0.015)。(D)qPCRによる両方の酵素転写物の発現は同等である。(E)3βHSD1(367T)が安定して発現した状態でのDHEAからDHTへのフラックスの増加は、LAPC4におけるPSAの増幅発現につながる。指定されたコンストラクトを安定的に発現している細胞を、48時間、表記のステロイドで処理した。DHT陽性対照によって誘導されるPSA発現は、3つの細胞集団で同等である。B、DおよびEについては、発現を、RPLP0およびベクター、ルシフェラーゼまたは溶媒対照に対して正規化する。エラーバーは、三重に実施した実験に対するSDを示す。(F)3βHSD1(367N)と比較して、CRPCの発達は、3βHSD1(367T)を安定して発現しているLAPC4異種移植片においてより急速に起こる。各脇腹に細胞を皮下注射してから腫瘍サイズが50mmになるまでの時間が、マウスの脇腹で発達した腫瘍ごとに示されている(各群においてn=40マウスの脇腹)。ログランク検定を用いた比較でP=0.017。(G)PSAの発現は、3βHSD1(367N)と比較すると、3βHSD1(367T)を発現しているCRPC腫瘍において高くなっている(スチューデントのt検定によるp値=0.015)。発現を、RPLP0に正規化する。バーは、個々の腫瘍値の上下の四分位数を表する。
図10図10は、標準的なアンドロゲン抑制治療法(ADT)で治療した患者において、HSD3B1変異の存在が、進行までの時間(TTP)に対しておよぼす影響を示すグラフを提供する。結果は、ADTでHSD3B1バリアントと進行までの時間との間に強い相関を示している。ホモ接合バリアントの男性は、ホモ接合野生型の男性に比べて進行までの時間が顕著に短い(31.8か月対78.9か月)のに対し、ヘテロ接合体は、臨床経過が中間である(進行までの時間=49.7か月)。どちらの場合も、参照群(ホモ接合野生型)と比較して、ログランクp値<0.05であり、遺伝子量効果の証拠が存在する(傾向のログランク検定、p=0.011)。
図11図11は、体細胞変異検出法(PCR1)および生殖系列SNP検出法(PCR2)の溶融曲線を示すグラフを提供する。溶融温度の差を用いて、HSD3B1(1245C)の存在を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、DHT合成を増大し、前立腺がんなどのステロイド依存性疾患でのアンドロゲン抑制治療法に対する耐性を引き出す、HSD3B1における機能獲得に関する。この機能獲得の検出を利用して、ステロイド依存性疾患の治療をガイドすることが可能である。
【0011】
[定義]
本明細書で使用する場合、「診断」という用語は、治療対象体が疾患を発症する尤度あるいは、治療対象体における疾患の存在または性質を決定することを包含し得る。また、診断という用語は、本明細書で使用する場合、疾患の重篤度および考えられるアウトカムあるいは、疾患のエピソードまたは回復の見込み(これは通常、予後と呼ばれる)を決定することを包含する。さらに、「診断」は、合理的な治療法における文脈での診断を包含し得る。この場合、診断が、治療法の最初の選択、治療法の変更(たとえば、用量または投与計画の調節)などを含めて、治療法を導く。
【0012】
本明細書で使用する場合、「予後」という用語は、疾患の考えられる過程およびアウトカムあるいは、疾患からの回復の尤度の予測をいう。予後は、通常は治療対象体が疾患を持つことがすでにわかっているという点で、診断とは区別されるが、予後および診断を同時に行ってもよい。前立腺がんの予後の場合、予後は前立腺がんの相対的な重篤度を類別し、これは、前立腺がんの適切な治療法の選択を導くのに利用できる。
【0013】
本明細書で使用する場合、「治療(treatment)」、「治療すること(treating)」などの用語は、所望の薬理学的効果または生理学的効果を得ることをいう。この効果は、疾患または疾患による副作用の部分的または完全な治癒という意味で、治療法的であってもよい。「治療」は、本明細書で使用する場合、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療を包含し、疾患または状態を阻害することすなわち、その進行を停止させることならびに、疾患の軽減すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含んでもよい。
【0014】
予防または予防法は、本明細書で使用する場合、疾患(たとえば、原発性疾患に関連しているか、これによって引き起こされる疾患を含む)にかかりやすいが、まだそれがあると診断されていない治療対象体において、疾患または疾患の症状が起こるのを予防することをいう。予防は、疾患または症状を、完全にまたは部分的に予防することを含んでもよい。
【0015】
治療法という用語は、本明細書で使用する場合、疾患を治療するために実施される行為を包含する。治療法を実施するために行われる具体的な行為は、手術、放射線治療法、ホルモン治療法、化学治療法の使用または1以上の治療剤(たとえば、抗がん剤)の使用を含んでもよい。
【0016】
「治療法的に有効」および「薬理学的に有効」という表現は、一般に代替療法に関連した副作用を回避しながら、それぞれの作用剤での治療によって疾患の重篤度および発生頻度を改善する目標を達成する、作用剤量を与えることを意図している。治療の有効性は、抗がん剤の投与に応答した治療対象体における腫瘍負荷の低減または腫瘍増殖の減少を評価することによって測定できる。腫瘍負荷の減少は、質量の直接的な減少を表してもよく、あるいは、対照腫瘍が特定の体積に増殖するまでの平均時間を、治療対象となる腫瘍が同じ体積まで増殖するのに必要な時間から減算することにより算出される腫瘍増殖遅延の点で測定されてもよい。
【0017】
「遺伝子型」という用語は、治療対象体または患者由来のDNAに存在するアレルをいい、ここで、アレルは、1以上の特定の部位の核酸配列に存在する1以上の特定のヌクレオチドによって定義することが可能である。多くの場合、遺伝子型は、ヒト集団において変化することが知られている一塩基多型部位(single polymorphic site)に存在する1以上のヌクレオチドである。
【0018】
さらに、遺伝子型または多型バリアントは、「ハプロタイプ」に関連して表現されることもある。ハプロタイプとは、本明細書で使用する場合、集団内の治療対象体群においてゲノムDNAに発生する2以上の多型変異体をいう。たとえば、それぞれのSNP位置がシトシンの変化とアデニンの変化を含む2つのSNPが、遺伝子内に存在してもよい。集団に含まれる特定の治療対象体が、それぞれのSNP位置にシトシンのある遺伝子を持つアレルを1つ有する(ヘテロ接合)こともあれば、2つのアレルを有する(ホモ接合)こともある。遺伝子の各SNPに対応する2つのシトシンは、これらの治療対象体における一方または両方のアレルで一緒に動くため、治療対象体は、遺伝子の2つのSNPに関してシトシン/シトシンハプロタイプを有するものと特徴付けられる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「多型部位」とは、治療対象体の集団由来の多数の核酸サンプルに2以上の別のヌクレオチド配列が観察される核酸内の領域をいう。多型部位は、2以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であってもよく、挿入されたヌクレオチドまたはヌクレオチド配列、欠失されたヌクレオチドまたはヌクレオチド配列あるいは、マイクロサテライトなどであってもよい。多型部位は、長さが2以上のヌクレオチドであってもよく、長さが3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15以上、20以上、30以上、50以上、75以上、100以上、500以上あるいは約1000ヌクレオチドであってもよく、この場合、すべてまたはいくつかのヌクレオチド配列が、領域内で異なっている。多型部位は、長さが1ヌクレオチドであることも多く、本明細書ではこれを一塩基多型(SNP)という。
【0020】
ある範囲の値が提供される場合、文脈が明確に他のことを述べていないかぎり、その範囲の上限と下限との間で、下限の単位の10分の1まで、その間にあるそれぞれの値と、その表記の範囲内における他の表記の値または間にある値も、本発明に包含されることは理解できよう。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲に含まれていてもよいし、表記の範囲における任意の具体的に除外される限界を条件として、本発明に包含される。表記の範囲が限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限界の一方または両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0021】
他に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0022】
本明細書で使用する場合および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「および(and)」および「the」は、文脈から明らかにそうでない場合を除き、複数も含む。よって、たとえば、「サンプル」といえば、複数のこのようなサンプルを含み、「3βHSD1(367T)タンパク質」といえば、1以上のタンパク質分子を含むといった具合である。
【0023】
本発明の一態様は、治療対象体から生物学的サンプルを得る工程と、この生物学的サンプルで、HSD3B1(1245C)遺伝子または3βHSD1(367Τ)タンパク質が発現されているか否かを決定する工程と、HSD3B1(1245C)遺伝子または3βHSD1(367T)タンパク質が発現されている場合は、治療対象体がステロイドアブレーションに耐性があると診断する工程と、を含む、ステロイド依存性疾患を有する治療対象体を診断する方法を提供する。
【0024】
本発明の別の態様は、治療対象体から生物学的サンプルを得る工程と、この生物学的サンプルで、HSD3B1(1245C)遺伝子または3βHSD1(367Τ)タンパク質が発現されているか否かを決定する工程と、HSD3B1(1245C)遺伝子または3βHSD1(367T)タンパク質が発現されている場合は、治療対象体にステロイドアブレーション以外の治療またはステロイドアブレーションに加えた治療をほどこす工程と、を含む、ステロイド依存性疾患の治療を必要とする治療対象体においてステロイド依存性疾患を治療する方法を提供する。
【0025】
[ステロイド依存性疾患]
本発明は、ステロイド依存性疾患を診断し、治療し、その治療を導くための方法を提供する。ステロイド依存性疾患は、本明細書で使用する場合、持続するために、ステロイドホルモンの存在に依存する疾患をいう。特に、ステロイド依存性疾患は、HSD3Bによってコードされる3βヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3βHSD;が、疾患が依存するステロイドの量の調節に何らかの役割を果たす疾患をいう。ステロイド依存性疾患の例としては、喘息、高血圧症、炎症性腸疾患(たとえば、クローン病および潰瘍性大腸炎)、腎炎症候群、子宮内膜症、乳がん、前立腺がんがあげられる。本明細書で使用する場合、ステロイド依存性疾患は、通常はステロイド依存性疾患であると特徴付けられるが、ステロイド非依存性を有するまたは発達させる疾患も包含する。
【0026】
いくつかの実施形態では、ステロイド依存性疾患は、がんである。ステロイド依存性がんの例としては、膀胱がん、乳がん、子宮内膜がん、膵臓がん、前立腺がんがあげられる。ステロイド依存性であり得る別のタイプのがんの同定は、現在進行中である。いくつかの実施形態では、がんが依存するステロイドは、性ステロイドである。性腺ステロイドとしても知られる性ステロイドは、アンドロゲン受容体またはエストロゲン受容体と相互作用するステロイドホルモンである。性ステロイドは、アナボリックステロイド、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン、ジヒドロテストステロン、テストステロンなどのアンドロゲンと、エストラジオール、エストリオール、エストロンなどのエストロゲンと、プロゲストゲンプロゲステロンと、を含む。
【0027】
本明細書で使用する場合、「腫瘍」または「がん」という用語は、治療対象体の異常細胞の異常な急増殖を特徴とする状態をいう。異常細胞は、固形腫瘍を形成できる形質転換細胞である「新生物細胞」と呼ばれることが多い。「腫瘍」という用語は、悪性であろうと良性であろうと、前がん性細胞であろうとがん性細胞であろうと、過剰な細胞分裂または異常な細胞分裂に起因する細胞の異常な塊または集団(たとえば、2つ以上の細胞)をいう。悪性腫瘍は、制御されない細胞増殖に加えて、周囲の組織に侵入することができ、転移することができる、という点で良性の増殖または腫瘍から区別される。
【0028】
いくつかの実施形態では、がんは、前立腺がんである。前立腺がんは、本明細書で使用する場合、がんが男性生殖器系の前立腺に発症する疾患をいう。前立腺がんは、正常な精液分泌前立腺細胞が変異してがん細胞になるときに始まる、腺がん(adenocarcinoma)または腺がん(glandular)に分類される。前立腺がんの初期段階では、がん細胞の小塊は、がんがなければ正常な前立腺に閉じ込められたままであり、この状態は、非浸潤性がんまたは前立腺上皮内腫瘍(PIN)内がんすなわち、前立腺の前がんとして知られている。時間が経つにつれて、これらのがん細胞は増殖して周囲の前立腺組織(間質)に広がり始め、腫瘍を形成する。前立腺がんは、前立腺から生じるものであり、前立腺内に残る場合もあるが、前立腺腫瘍細胞は、血流やリンパ系を移動する機能を発達させることができるため、他の器官または組織に見出されることがある。前立腺がんは、最も一般的には、骨、リンパ節、直腸、膀胱に転移する。前立腺がんの治療または予防は、本明細書で使用する場合、他の器官または組織に見られる転移性前立腺がんの治療もいう。
【0029】
大半のステロイド依存性がんは、1〜3年後に不応性となり、治療法にもかかわらず増殖を再開する。したがって、いくつかの実施形態では、前立腺がんは、去勢抵抗性前立腺がんであり、これはホルモン不応性前立腺がんまたはアンドロゲン非依存性前立腺がんとしても知られている。去勢抵抗性前立腺がんを有する治療対象体は、化学的または外科的手段による利用可能なアンドロゲン/テストステロン/DHTの減少である去勢処置には、もはや応答しない。しかしながら、これらのがんは依然として、アンドロゲン受容体活性化のためのホルモンへの依存を示している。
【0030】
前立腺がんまたは他のステロイド依存性疾患の存在は、当業者に知られたさまざまな技術を用いて確認できる。前立腺がんの存在を確認するための好ましい方法は、生検を得ることである。前立腺がんの生検では、前立腺からの組織サンプルは一般に、特別な中空コアニードルを挿入して抜き取るバイオプシーガンを使用して直腸を介して得られる。その後、がん細胞が存在するかどうかを決定し、見つかったがんの顕微鏡的な特徴またはグリーソンスコアを評価するために、組織サンプルは顕微鏡下で検査される。ヒトの治療対象体が前立腺がんを有するかどうかを決定するための追加の手順としては、デジタル直腸検査、膀胱鏡検査、経直腸的超音波、超音波、磁気共鳴イメージングがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
[生体試料]
本明細書に記載される多数の方法は、治療対象体から生物学的サンプルを得る工程を含む。「生物学的サンプル」は、本明細書で使用する場合、HSD3B1(1245C)遺伝子または3βHSD1(367T)タンパク質の検出用の分析に適した治療対象体からのあらゆる生物学的サンプルを含むことを意味する。好適な生物学的サンプルとしては、血液関連サンプル(たとえば、全血、血清、血漿、他の血液由来サンプル)、尿、精液、脳脊髄液などの体液、気管支肺胞洗浄液などがあげられるが、これらに限定されるものではない。生物学的サンプルの他の例は、組織サンプルである。いくつかの実施形態では、生物学的サンプルは、がん細胞またはがん細胞を含む組織である。HSD3B1(1245C)遺伝子または3βHSD1(367Τ)タンパク質を、定量的または定性的のいずれかで評価することができ、検出は、in vitroまたはex vivoのいずれかで決定できる。
【0032】
本方法は、治療対象体から生物学的サンプルを提供することまたは得ることを含み、これは、針刺、針生検、スワブ、などを含む公知の任意の手段によって得られる。例示的な方法では、生物学的サンプルは、たとえば静脈穿刺によって得られる血液サンプルである。
【0033】
生物学的サンプルは、新鮮なものであってもよいし、保存されたものであってもよい。生物学的サンプルは、適切な組織保存条件下で保存またはバンク保存されたものであってもよいし、そのようにされていてもよい。生物学的サンプルは、本発明のアッセイ用に明示的に得られた組織サンプルであってもよいし、本発明のアッセイ用にサブサンプル可能な、他の目的で得られた組織サンプルであってもよい。サンプルの劣化を防止するために保管されている場合、好ましくは、生物学的サンプルは、回収直後に冷蔵されるか凍結される。
【0034】
サンプルは、適当な緩衝液中での希釈によって必要に応じて前処理されていてもよいし、ヘパリン化されてもよく、必要であれば、超遠心分離、高速液体クロマトグラフィ(FPLC)またはHPLCによる分画あるいは、硫酸デキストランまたは他の方法でのタンパク質の沈殿を含むがこれらに限定されない任意の数の方法で、濃縮あるいは分画されていてもよい。リン酸塩、トリスなど、生理学的pHでの多数の標準的な水性緩衝液のうちのいずれかを使用してもよい。
【0035】
[治療対象体]
「個体」、「治療対象体」、「患者」という用語は、治療対象体が現在、何らかの形態の治療を受けているか、こうした治療を有するか否かとは関係なく、本明細書では同義に用いられる。本明細書で使用する場合、「治療対象体」という用語は一般に、任意の脊椎動物をいい、哺乳動物を含むがこれに限定されるものではない。サルおよびヒトを含む霊長類、ウマ科の動物(ウマなど)、イヌ科の動物(イヌなど)、ネコ、さまざまな家畜(たとえば、ブタ(swine)、ブタ(pig)、ヤギ、ヒツジなどの有蹄動物)のみならず、ペット(たとえば、ネコ、ハムスター、マウス、モルモット)を含む哺乳動物の例。ヒトの治療または診断は特に重要である。
【0036】
[D3B1(1245C)遺伝子または3βHSD(367T)タンパク質を検出するための方法]
3β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(3βHSD1)での機能獲得につながる安定獲得型変異は、遺伝子(HSD3B1(1245C))のバリアント形態またはタンパク質(3βHSD1(367T))のバリアント形態のいずれかを検出することによって、治療対象体において同定可能である。機能獲得変異の存在を決定するための方法は、遺伝子またはタンパク質が検出されているかどうかによって異なる。遺伝子またはタンパク質は、キットなどの分析デバイスまたは携帯式または固定のいずれであってもよい従来の実験装置によって検出または測定可能である。いくつかの実施形態では、バリアント遺伝子またはタンパク質のレベルは、検出対象となる遺伝子またはタンパク質の量を定量するための分析を行うときに、1以上のサンプルの対応する内部標準のレベルと比較されてもよい。
【0037】
HSD3B1(1245C)遺伝子または3βHSD1(367T)タンパク質は一般に、治療対象体から得られた生物学的サンプルで検出される。しかしながら、いくつかの実施形態では、変異を検出するための非侵襲的イメージングモダリティが使用される。たとえば、PETイメージングを用いた18F−DHEAの投与を用いて、変異酵素を有する腫瘍を検出できる。これらの腫瘍は、DHEAから下流のアンドロゲン代謝産物に大きなフラックスを持つと予想されるためである。
【0038】
いくつかの実施形態では、3βHSD1(367Τ)タンパク質の存在が決定される。生物学的サンプルにおける3βHSD1(367Τ)タンパク質の存在および/または量は、3βHSD1(367T)タンパク質バリアントと免疫反応性であるポリクローナルまたはモノクローナル抗体を用いて決定できる。抗体の使用は、個体から採取したサンプルを1以上の抗体と接触させ、サンプル中のタンパク質またはペプチドと抗体との複合体の形成をアッセイすることを含む。検出を容易にするために、抗体は、カラム、プラスチック皿、マトリックスまたは膜、好ましくは、ニトロセルロースなどの基質に付着させることができる。サンプルは、抗体と結合する前に、沈殿、分画、分離または精製してもよいし、未処理であってもよい。サンプル中の抗体と3βHSD1(367Τ)タンパク質との相互作用は、放射分析、比色分析または蛍光分析による手段、サイズ分離または沈殿によって検出される。好ましくは、抗体−タンパク質またはペプチド複合体の検出は、たとえば酵素、フルオロフォアまたは発色団などの検出可能なタグに結合された二次抗体を添加することによる。複合体の形成は、サンプル中における3βHSD1(367Τ)タンパク質の存在を示す。
【0039】
標準的な手順を用いて3βHSD1(367T)に免疫特異的な抗体を作製および標識した後、イムノアッセイに用いてサンプル中の3βHSD1(367T)の存在を検出してもよい。好適なイムノアッセイとしては、たとえば、免疫沈降法、微粒子イムノアッセイ、免疫比濁法、ラジオイムノアッセイ(RIA)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ、直接、間接または競合ELISAアッセイ、酵素結合イムノスポットアッセイ(ELISPOT)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、化学発光イムノアッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、免疫組織化学、ウェスタンブロットならびに、標的分析物に結合する抗体、抗体フラグメント、受容体、リガンドまたは他の作用剤などを用いるタンパク質チップアッセイがあげられる。3βHSD1(367Τ)に対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、確立された手順に従って製造されている。一般に、ポリクローナル抗体の調製用に、タンパク質またはそのペプチド断片が宿主動物を免疫化するための最初のステップとして使用される。イムノアッセイの概要については、Methods in Cell Biology v. 37: Antibodies in Cell Biology, Asai, ed. Academic Press, Inc. New York (1993)およびBasic and Clinical Immunology 7th Ed., Stites & Terr, eds. (1991)に記載されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、3βHSD1(367Τ)タンパク質は、イムノアッセイ以外の方法を用いて検出される。たとえば、3βHSD1(367Τ)タンパク質を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF)を用いて検出することができる。また、3βHSD1(367T)タンパク質は、3βHSD1タンパク質を精製し、ペプチドシーケンシング法を用いてその配列を決定することにより検出することもできる。タンパク質精製技術は、当業者によく知られている。これらの技術は、あるレベルで、細胞環境を粗分画してポリペプチドおよび非ポリペプチド画分にすることを含む。他のタンパク質からポリペプチドを分離し、クロマトグラフィおよび電気泳動技術を用いて目的のポリペプチドをさらに精製および/または定量し、部分的または完全な精製(または均質になるまでの精製)を達成してもよい。純粋なペプチドの調製に特に適した分析方法は、免疫組織化学、イオン交換クロマトグラフィ、排除クロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動である。ペプチドを精製する特に効率的な方法は、高速タンパク質液体クロマトグラフィまたはHPLCですらある。その後、精製されたタンパク質の配列を得ることができる。タンパク質シーケンシングのさまざまな方法が当業者に知られている。たとえば、配列は質量分析法またはエドマン分解反応を用いて同定できる。
【0041】
また、3βHSD1(367Τ)タンパク質を、そのタンパク質の野生型と比較し、特性の違いに基づいて検出することもできる。本発明者らは、3βHSD1(367Τ)タンパク質が3βHSD1(367N)タンパク質よりもユビキチン化および分解に対して耐性が高いことを実証した。したがって、3βHSD1(367Τ)タンパク質の存在は、ユビキチン化および/または分解アッセイを用いて検出することができる。同様に、本発明者らは、タンパク質分解に関与する自己分泌型運動因子受容体(AMFR)は、3βHSD1(367N)タンパク質よりも3βHSD1(367T)タンパク質に対してより低い親和性を示すことを示している。したがって、3βHSD1(367Τ)タンパク質の存在はまた、AMFRに対する3βHSD1の親和性を評価することによって決定できる。また、いくつかの腫瘍は、DHTの合成と治療抵抗性の増大につながる、AMFR発現の体性喪失(somatic loss)あるいは、腫瘍をタンパク質安定化の代償機構として機能させうる野生型酵素(3βHSD1(367Ν))安定化の他の手段を持つ場合がある。
【0042】
いくつかの実施形態では、血清ステロイドプロファイルを観察することによって、3βHSD1(367Τ)の存在を間接的に検出可能である。血清ステロイドプロファイルの評価は、HSD3B1遺伝子型と相関することがある。たとえば、変異酵素は、酵素産物対前駆体(すなわち、アンドロステンジオン/DHEAおよびプロゲステロン/プレグネノロン)の割合の増加と関連することがある。
【0043】
いくつかの実施形態では、HSD3B1(1245C)のアレルの存在が決定される。HSD3B1(1245C)アレルの存在および/またはレベルは、たとえば、定量的RT−PCR、ノーザンブロット、リアルタイムPCR、PCR、アレル特異的PCR、パイロシーケンシング、SNPチップ技術または制限断片長多型(RFLP)など、ポリヌクレオチド発現レベルを検出および/または決定する、すでに知られているまたは今後開発されるアッセイまたは方法のうち任意のものを用いて決定できる。さらに別の実施形態では、HSD3B1(1245C)遺伝子がヘテロ接合性であるかないか、ホモ接合性であるかないかを決定することもできる。
【0044】
塩基配列を決定するための方法の多くは、PCRを利用する。本明細書で使用する場合、「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)という用語は、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,965,188号に記載の方法をいい、これらの特許は、すべて本明細書に援用され、クローニングまたは精製をすることなく、ゲノムDNAの混合物中の標的配列のセグメントの濃度を増加させるための方法に関する。本明細書で使用する場合、「PCR産物」および「増幅産物」という用語は、変性、アニーリング、伸長が完了するPCRステップの2以上のサイクル後に得られる化合物の混合物をいう。これらの用語は、1つ以上の標的配列の1つ以上のセグメントの増幅があった場合を包含する。したがって、いくつかの実施形態では、HSD3B1(1245C)アレルの存在および/またはレベルを検出することは、多型ヌクレオチドに隣接する配列にハイブリダイズするプライマーを伸長することを含む。いくつかの実施形態では、HSD3B1(1245C)アレルの存在および/またはレベルを決定することは、多型ヌクレオチドを含む領域にプローブをハイブリダイズすることを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、相補的配列とのハイブリダイゼーションを使用して、配列同士が完全に一致するか不完全に一致する配列の異なる特性に基づいて、HSD3B1(1245C)アレルの存在を検出してもよい。たとえば、本明細書にて説明するように、蛍光融解が、増幅されるアレルに特異的なプローブ/標的二重鎖の2つの異なる融解温度を明らかにする非対称PCRアッセイを使用できる。このアッセイは、生殖細胞または体細胞でHSD3B1(1245C)アレルを検出するのに使用可能である。
【0046】
遺伝子(HSD3B1(1245C))のバリアント形態またはタンパク質(3βHSD1(367T))のバリアント形態の存在および/またはレベルが決定されたら、これらを様々な方法で表示できる。たとえば、レベルは数値または比例バー(すなわち、棒グラフ)または当業者に知られた任意の他の表示方法として、ディスプレイ上にグラフィカルに表示可能である。グラフィック表示は、評価対象となる生物学的サンプル中のバリアント遺伝子またはタンパク質の量の視覚的表現を提供できる。
【0047】
[治療法]
本発明は、ステロイドアブレーション以外の治療あるいはステロイドアブレーションに加えた治療を必要とする治療対象体を特定する方法を提供する。ステロイドアブレーションは一般に、ステロイド依存性疾患の治療に有用であるが、3βHSD1(367T)タンパク質の発現は、ユビキチン化および分解に対するタンパク質の耐性による、5α−アンドロスタンジオン(5α−ジオン)経路を介してデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)からDHTへの代謝フラックスを増加させることで、そうでなければステロイド形成における律速となるステップを触媒することにより、ステロイド枯渇への耐性につながる。いくつかの実施形態では、ステロイドアブレーションが継続されるが追加の治療法も提供されるのに対し、他の実施形態では、ステロイドアブレーションが中止され、代わりの治療法が追加で提供される。
【0048】
ステロイドアブレーションを実施するための多くの方法が当業者に知られている。いくつかの実施形態では、ステロイドアブレーションは、化学的に行うことができる。ステロイドアブレーションのために使用できる化学的な治療の例としては、GnRH−アゴニスト(たとえば、ロイプロリドまたはゴセレリンなど)またはGnRH−アンタゴニスト(デガレリクス)、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、エンザルタミドおよび酢酸シプロテロンなどのアンドロゲン受容体アンタゴニスト、アビラテロンおよびケトコナゾールなどのアンドロゲン合成阻害剤、5−α−還元酵素阻害剤(フィナステリド、デュタステリド)を用いた医学的去勢または外科的去勢(精巣摘出)の適用を含む。上記の治療は、互いに併用されてもよいし、非ホルモン療法に加えて適用されてもよい。たとえば、医学的または外科的去勢は、放射線治療法または根治的前立腺切除術と組み合わされてもよい。また、去勢は、ドセタキセル化学治療法を含むがこれに限定されるものではない化学治療法と、組み合わされてもよい。
【0049】
前立腺がんの治療対象体は、去勢抵抗性前立腺がんを有することがすでに特徴付けられていてもよい。去勢抵抗性前立腺がんを有することを特徴とする治療対象体は、ステロイドアブレーションに代わるものとして、ドセタキセル、カバジタキセル、ラジウム−223、シプロイセル−T、アビラテロン又はエンザルタミドなどの化合物を用いて治療できる。
【0050】
HSD3B1(1245C)遺伝子または3βHSD1(367Τ)タンパク質が発現されている場合は、ステロイドアブレーション以外の治療を治療対象体に提供することができる。たとえば、治療対象体は、ステロイドアブレーションの代わりに、サルベージ凍結療法、放射線治療法(たとえば、外部ビーム放射線治療法および近接照射治療法)、根治的前立腺切除術、陽子線治療法または高強度の集束超音波のうちの1以上を用いて治療できる。根治的前立腺切除術は、前立腺とその周囲の組織の一部を除去するための手術であり、開腹または腹腔鏡手術によって行うことができる。これらの治療は前立腺がんを破壊または除去するため、前立腺がんの中に別の代謝経路が生じる議論の余地を与えることになる。
【0051】
他の実施形態では、HSD3B1(1245C)遺伝子または3βHSD1(367T)タンパク質が検出された治療対象体に、ステロイドアブレーションに加えての治療が提供される。たとえば、治療対象体は、アビラテロンまたはエンザルタミドによる治療と一緒に医学的または外科的去勢を使用するなど、より集中的なホルモン治療法で治療することができる。
【0052】
本発明の他の実施形態は、ステロイド依存性疾患(たとえば、前立腺がん)を治療するために、3βHSD1(367Τ)タンパク質がユビキチン化および分解に対するタンパク質の耐性に対しておよぼす影響に関する知識を、より直接的に利用する。たとえば、3βHSD1(367Τ)に特異的な抗体は、体細胞変異を有する細胞に対する特異的免疫治療法のために使用できる。siRNAまたはアンチセンスRNAの使用などの遺伝的方法も、3βHSD1(367Τ)の発現を抑制するのに使用できる。別のアプローチは、ユビキチン化活性化剤を、そうでなければユビキチン化に対して安定した3βHSD1(367N)タンパク質とともに使用して、腫瘍における3βHSD1(367Τ)または3βHSD1(367N)の耐性を克服することであろう。たとえば、ユビキチンE3リガーゼAMFRのエピジェネティックなサイレンシングを有する腫瘍は、3βHSD1タンパク質の喪失と腫瘍退縮を引き起こす、AMFR再発現を誘導するDNAメチル化阻害剤またはHDAC阻害剤で処理されてもよい。最後に、3βHSD1(367Τ)タンパク質の酵素活性を阻害する化合物の機能について試験するアッセイを使用して、HSD3B1(1245C)遺伝子または3βHSD1(367T)タンパク質が検出されているステロイド依存性疾患を有する治療対象体の治療に有効な新規な作用剤を同定することができる。
【0053】
候補の作用剤を、動物モデルで試験してもよい。一般に、動物モデルは、がんの研究のためのものである。動物モデル(たとえば、マウス)におけるさまざまながんの研究は、ヒトのがんの研究のために一般に受け入れられているやり方である。たとえば、ヒト腫瘍細胞を注射したヌードマウスモデルは一般に、前立腺がんを含む多岐にわたるがんの研究に有用な一般的なモデルとして受け入れられている(たとえば、Polin et al., Investig. New Drugs, 15:99-108 (1997)を参照のこと)。結果は一般に、候補の作用剤で処理した対照動物間および処理しなかった対照同腹子間で比較されている。トランスジェニック動物モデルも利用可能であり、ヒトの疾患に対するモデルとして一般に受け入れられている(たとえば、Greenberg et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:3439-3443 (1995)を参照のこと)。候補の作用剤をこれらの動物モデルで使用して、たとえば、がん転移、がん細胞運動性、がん細胞の浸潤性またはそれらの組み合わせを含む、がんに関連する症状の1つ以上を候補の作用剤が減少させるか否かを決定することができる。
【0054】
[キット]
また、本開示は、治療対象体におけるステロイド依存性疾患の治療を導くためのキットも提供する。このキットは、3βHSD1(367Τ)またはHSD3B1(1245C)を検出可能な1つ以上のプライマーまたはプローブと、このプライマーまたはプローブを保持するためのパッケージとを含む。キットは通常、1種類以上の別々の組成物として、あるいは任意に、試薬同士が相溶な混合物としての試薬を保持する1つ以上の容器を有するパッケージを含む。キットはさらに、3βHSD1(367T)またはHSD3B1(1245C)の検出を行うために必要な酵素(たとえば、ポリメラーゼ)、緩衝液、標識剤、ヌクレオチド、対照、任意の他の材料を含んでもよい。キットはまた、たとえば、パンチ生検または針生検を得るためのパンチツールとして、治療対象体からサンプルを得るためのツールを含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、キットは、HSD3B1(1245C)を検出できるプライマーを含む。たとえば、キットは、AからCへの変換などHSD3B1の領域を増幅する適切なサイズのオリゴヌクレオチドプライマーを含んでもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、AからCへの変換を含み、かつ、約10ヌクレオチドから約100ヌクレオチドを含むHSD3B1からの領域を使用できる。特定の好適なプライマーは、本明細書において実施例に記載されている。プライマーは、検出を容易にするために標識されていてもよい。
【0056】
別の態様では、アレイおよび/またはマイクロアレイ、HSD3B1アレルのヌクレオチド1200あたりからヌクレオチド1300あたりの領域を増幅するオリゴヌクレオチドプライマーと、使用説明書とを含む、治療を導くためのキットが提供される。あるいはまたはそれに加えて、HSD3B1のヌクレオチド1210あたりからヌクレオチド1280あたり、HSD3B1のヌクレオチド1220あたりからヌクレオチド1270あたり、HSD3B1のヌクレオチド1230あたりからヌクレオチド1260あたり、HSD3B1のヌクレオチド1235あたりからヌクレオチド1250あたり、あるいは、PCRまたは当業者に知られた他の配列決定技術を用いて増幅してHSD3B1(1245C)の存在を検出するのに必要であるまたは適切であると当業者が決定する他の部分を増幅するプライマーが提供されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、キットは、3βHSD1(367Τ)を検出できるプローブを含む。好ましいタイプのプローブは、3βHSD1(367Τ)に特異的に結合できる抗体である。本開示で使用できる抗体の例として、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、組換え抗体、一本鎖Fv(「scFv」)、親和性成熟抗体、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、F(ab)フラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合Fv(「sdFv」)、抗イディオタイプ(「抗Id」)抗体および上記のいずれかの機能的に活性なエピトープ結合フラグメントがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本明細書で使用する場合、「特異的に結合する」という表現は、抗体と別の化学種との相互作用をいい、ここで、この相互作用は、当該化学種上の特定の構造(たとえば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存する。たとえば、抗体は、タンパク質全般ではなく、特定のタンパク質構造を認識して結合する。
【0059】
また、キットは、サンドイッチイムノアッセイフォーマットで捕捉抗体および/または検出抗体として機能する抗体が結合する固相を含んでもよい。固相は、磁気粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、水晶の結晶、フィルム、濾紙、ディスクまたはチップなどの材料であってもよい。キットはまた、検出抗体として機能する抗体などの抗体であり得るか、またはそれに結合される検出可能な標識を含んでもよい。検出可能な標識は、たとえば、酵素、オリゴヌクレオチド、ナノ粒子ケミルミノフォア(chemiluminophore)、フルオロフォア、蛍光消光剤、化学発光消光剤またはビオチンであってもよい直接的な標識であり得る。試験キットは、任意に、標識を検出するのに必要な追加の試薬を含んでもよい。
【0060】
また、キットは、治療対象体におけるステロイド依存性疾患の治療を導く方法を実施するのにキットを使用するための説明書を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ステロイド依存性疾患は、前立腺がんなどのステロイド依存性がんである。キットに含まれる説明書は包装材料に貼付されてもよいし、パッケージインサートとして含まれてもよい。説明書は一般に、書面または印刷物であるが、そのようなものに限定されるものではない。そのような説明書を記憶し、エンドユーザーにそれらを伝達できる任意の媒体が本開示によって企図される。このような媒体としては、電子記憶媒体(たとえば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(たとえば、CD ROM)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で使用する場合、「説明書」という用語は、説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
【0061】
本発明およびそれに関連するコストや操作上の利点の特定の実施形態を一層明確に説明するために、実施例が含まれている。しかしながら、本発明の範囲内で多岐にわたる他の実施形態があり、これらは、本明細書で提供される特定の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
[実施例1:遺伝的機構は去勢抵抗性前立腺がんにおけるDHTの合成を増強する]
本発明者らは、触媒活性の増加ではなく、ユビキチン化および分解に対するタンパク質の耐性によって5α−アンドロスタンジオン(5α−ジオン)経路を介したデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)からDHTへの代謝フラックスを増加する、3βHSD1(3βHSD1(367T))の367T形態をCRPCが発現する場合があることを、本明細書にて示す。生殖細胞系のヘテロ接合が継承された患者における野生型コピーのヘテロ接合性の喪失(LOH)によるヒトCRPC腫瘍の体細胞変異ならびに、アビラテロン酢酸で処理したマウス異種移植モデルにおいて発生する同じ体細胞突然変異の発生および発現から、3βHSD1(367T)が選択されていることは明らかである。
【0063】
[結果]
3βHSD1(367T)を有する細胞は、DHTへのフラックスが増加している。3βHSD1によるDHEAからΔアンドロステンジオン(AD)への変換は、副腎前駆体からDHTへの代謝のための末梢組織における近位のステップである。Lorence et al., Endocrinology 126, 2493-2498 (1990); Simard et al., Endocr Rev 26, 525-582 (2005)。CRPCを有する患者由来の2つの細胞株は、3βHSD1および3βHSD2(図2A)の両方をコードする転写物の同じような発現にもかかわらず、DHEAからAD(図1A)に広く異種のフラックスを有する。同じ条件下で、LNCaP細胞は、48時間後に[H]−DHEAの90%より多くを3βHSD酵素活性によってADに代謝するのに対し、LAPC4細胞は、[H]−DHEAのわずか約10%しか代謝しない。LNCaPではなくLAPC4では、優勢経路(DHEA→AD→5α−ジオン→DHT)でのDHTに至る過程でのDHEAからADへの見かけの律速変換は、下流での代謝産物の蓄積に限りがあること、AR調節PSAおよびTMPRSS2におけるDHEA濃度依存的増加がない(図1B)ことから、さらに明らかである。両方のHSD3Bアイソエンザイムのエクソンのシーケンシングによって、LAPC4ではなくLNCaPで3βHSD1のアミノ酸位置367のアスパラギン(N)がスレオニン(T)に入れ替える、AからCに変換するHSD3B1の1245位における単一の非同義置換(図1C)が明らかになる。HSD3B1配列とステロイド代謝との間の関連をさらに試験するために、他のヒト前立腺細胞株を調査した。他の前立腺がんおよび不死化前立腺細胞株における野生型(1245A)およびバリアント(1245C)HSD3B1配列の存在も、DHEAからADへの「遅い」および「速い」フラックスと一致する(図2B)。しかしながら、組換え3βHSD1(367N)および3βHSD1(367T)タンパク質の動力学的特性は、それぞれのタンパク質を発現している細胞間のステロイド代謝の違いを説明していない(図1D)。3βHSD1(367T)をコードするアレルが、これらの細胞におけるタンパク質のより多くの量に関連しているか否かを決定するために、ウェスタンブロットを行った。3βHSD1(367T)をコードするどちらのモデルも、野生型配列を持つモデルに比べて3βHSD1タンパク質が増加した(図1E)。
【0064】
アンドロゲン抑制は、HSD3B1(1245C)を選択する。
HSD3B1(1245C);3βHSD1(367T)アレルは、生殖系列SNPバリアントで生じる(rs1047303;アレル頻度22%)(Shimodaira et al., Eur J Endocrinol 163, 671-680 (2010))だけでなく、前立腺がんにおける体細胞変異としても発生する可能性がある。生殖細胞系ホモ接合HSD3B1(1245C)の遺伝は防げないが、LNCaPおよびVCaPの両方に証拠のあるHSD3B1(1245C)アレルが単独で存在する理由を説明できる可能性が最も高いシナリオは、ホモ接合のHSD3B1(1245C)遺伝が想定される頻度が低いとすれば、生殖細胞系のヘテロ接合遺伝に野生型アレルのヘテロ接合性の喪失(LOH)が続くか、生殖細胞系ホモ接合野生型遺伝に1245A→Cの体細胞変異が続くかのいずれかである。ヒト腫瘍におけるHSD3B1(1245C)選択で考えられるこれらの機序の存在を同定するために、マッチしている生殖細胞系と腫瘍DNAをCRPCのある男性からシーケンシングした。ゲノムDNAは、University of Texas Southwestern Medical Center(UTSW)およびで治療を受けた患者由来のCRPCおよび正常組織ならびに、University of Washington(UW)rapid autopsy programから単離した。CRPCのある40名の男性のうち、25個体、11個体、4個体の生殖細胞系はそれぞれ、ホモ接合野生型HSD3B1(1245A)、ヘテロ接合およびホモ接合バリアントHSD3B1(1245C)である。ホモ接合HSD3B1(1245A)が遺伝した25のうち3例(12%)のCRPC腫瘍は、HSD3B1(1245C)アレルを獲得していた(図3A)。HSD3B1(1245C)転写物の発現は、利用できる新鮮な凍結腫瘍1つで確認された。25名の患者で生じている3つの同一のde novo変異の観察は、二項法を使用して1,000,000塩基対あたり4つの変異率を仮定すると、偶然だけでなく統計的有意性の高い(p=1.47×10−13)選択によるものである可能性が高い。Greenman et al., Nature 446, 153-158 (2007)。ヘテロ接合が遺伝した11のCRPC腫瘍のうち、3つ(27%)はHSD3B1(1245A)アレルのLOHを有し、優先的に検出可能なHSD3B1(1245C)アレルにつながる(図3B)。これら3つの腫瘍では、隣接するヘテロ接合SNPのLOHから、第1染色体のこの領域の損失がさらに確認される。これとは対照的に、ヘテロ接合が遺伝した11例はいずれも、HSD3B1(1245C)アレルのLOHを呈さなかった(図4A)。
【0065】
HSD3B1(1245A)アレルのLOHを持つ2つの腫瘍(UW9およびUW25)には、さらに研究するための組織が残っていた。HSD3B1(1245C)アレルを持つだけのLNCaPおよびVCaPで得られた知見と一致して、これらの腫瘍は両方とも検出可能な3βHSD1タンパク質を豊富に有する(図3C)。これとは対照的に、ヘテロ接合の発現およびホモ接合のHSD3B1(1245A)の発現で試験した両方の腫瘍は、検出可能な3βHSD1をほとんど、あるいは全く持たなかった。qPCRによるmRNAの定量を行うと、LOHを有する腫瘍に特異的に起こる3βHSD1タンパク質の存在量の増加が転写物の過剰発現に起因しないことがわかる(図4B)。LOHを持つ両方の腫瘍は、ARおよびPSAをロバストに発現し、ARシグナル伝達を誘発する3βHSD1タンパク質機能によって維持されるDHTへのフラックスを示唆している(図3C)。
【0066】
アビラテロンは、CYP17A1を阻害し、3βHSDを弱く阻害して、腫瘍内アンドロゲン濃度をさらに低下させ、CRPCの生存期間を長くする。したがって、3βHSD1(367T)をコードするHSD3B1(1245C)アレルへの変換によって、前駆体の利用可能性が低いにもかかわらず、アンドロゲン合成を維持することが可能になり得る。アビラテロン処理がHSD3B1(1245C)アレルを選択するか否かを判断するために、アビラテロンまたは溶媒で処理した精巣摘出マウス(n=1処理あたりマウス8匹)で増殖させたLAPC4異種移植腫瘍からのゲノムDNAを単離し、配列決定した。Li et al., Clinical Cancer Research 18, 3571-3579 (2012)。アビラテロン処理群において8つのうち2つの腫瘍(Abi#1およびAbi#2)で1245Cアレルが検出可能であり、溶媒群では腫瘍は検出されない(図3D)。アビラテロン群における体細胞的に獲得した変異の発現を確認するために、cDNAクローンを生成し、配列決定した。3βHSD1(367T)をコードする変異HSD3B1(1245C)転写物は、Abi#1から配列決定した21のcDNAクローンのうち12例(57%)で確認され、Abi#2からは26のクローンのうち7例(27%)で確認されている。対照的に、変異転写物は、2つの溶媒処理LAPC4異種移植腫瘍から得られた37のcDNAクローンのいずれにも存在しない。
【0067】
3βHSD1(367T)をブロックすると、DHT合成、AR−応答およびCRPCが阻害される。
DHEAからDHTへのフラックスの調節およびAR刺激における3βHSD1(367T)の発現の役割を決定するために、2つの独立したレンチウイルスのshRNAを使用して内因性発現をLNCaPでサイレンシングした(図5A)。両shRNAのある3βHSD1の発現をブロックすると、DHEAからADへのフラックスが阻害され、下流の5α−ジオンおよびDHTへの検出可能な変換は、ほとんどあるいは全く生じない(図5B)。変異3βHSD1の発現をサイレンシングし、DHTへのフラックスをブロックすると、AR調節PSAおよびTMPRSS2の発現が妨げられ(図5C)、in vitroでの細胞増殖の阻害につながる(図5D)。in vivoでは、内因的に発現される変異3βHSD1の欠乏が、外科的に精巣摘出したマウスでCRPCの増殖を大幅に妨げる(図5E)。最初はレンチウイルスのshRNAノックダウンコンストラクトを発現している細胞株から最終的に発達するCRPC腫瘍は、おそらくはshRNAコンストラクトを失った細胞の選択から、3βHSD1タンパク質を取り戻す(図5F)。
【0068】
3βHSD1(367T)は、ユビキチン化および分解に対する耐性がある。3βHSD1(367T)の内因性発現は、3βHSD1(367N)の発現と比較して、タンパク質の存在量の増加を生じさせるように思われる(図1E)。背後にある機序がタンパク質分解の変化によるものであるか否かを決定するために、野生型(HSD3B1(N)−HA)および(HSD3B1(T)−HA)コンストラクトを作製して一過的に発現させ、シクロヘキシミド(CHX)処理での翻訳の阻害後にタンパク質レベルを比較した。367N→T変異は、タンパク質の半減期を2.1時間から27時間に実質的に増加させる(図7A)。前立腺がん細胞株を変えた同様の実験(図6A)およびレンチウイルスコンストラクトの安定な発現を用いた同様の実験(図6B)で、3βHSD1(367T)半減期が長くなっていることが確認される。野生型タンパク質の分解増大がプロテアソーム阻害で可逆的であるか否かを決定するために、細胞をMG132で処理した。薬理学的プロテアソーム阻害は、LAPC4における内因性の野生型3βHSD1(367N)を増すが、LNCaPにおける3βHSD1(367T)は増さず(図7B)、ポリユビキチン化内因性3βHSD1(367N)は、LAPC4においてMG132処理で蓄積する(図7C)。対照的に、ポリユビキチン化内因性3βHSD1(367T)は、MG132処理でLNCaPにおいて増加しない(図6C)。NiアガロースプルダウンによるHAタグ化野生型と変異タンパク質とのユビキチン化の直接的な比較は、3βHSD1(367T)がポリユビキチン化に耐性である(図7D)ことを実証しており、プロテアソームによる分解に対する脆弱性の低下とタンパク質の半減期が長くなることを説明している。
【0069】
AMFRは3βHSD1(367N)と結合し、ユビキチン化に必要である。質量分析を用いて、3βHSD1(367N)上の1以上のユビキチン化リジン残基を決定した。ユビキチン化は、3βHSD1(367N)のK70(図8A)およびK352(図8B)の両方で検出可能である。K352RおよびK70R単一変異および二重変異がユビキチン化に対しておよぼす影響を、Ni−アガロースプルダウンによって評価した(図8C)。K352はK70よりもユビキチン化の重要な部位であるように思われ、両方の部位の変異は、片方の変異だけの場合よりもユビキチン化を減少させる。AMFR(自己分泌型運動因子受容体、gp78としても知られる)は、小胞体関連タンパク質分解(ERAD)経路を介して機能する膜結合型ユビキチンリガーゼである。Song et al., Mol Cell 19, 829-840 (2005)。イーアレスタチンI(Eerl)は、ERAD経路を介してタンパク質分解を阻害する小分子である。Wang et al., J Biol Chem 283, 7445-7454 (2008)。内因性3βHSD1(367N)タンパク質は、Eerl処理したLAPC4細胞で増加することから、3βHSD1(367N)の分解にはERAD経路が必要であることが示唆される(図8D)。高分解能質量分析と併用した細胞培養中のアミノ酸による安定同位体標識(SILAC)を使用して、優先的に3βHSD1(367N)と関連するバイアスのない方法で、候補ユビキチンリガーゼを同定した。Ong et al., Mol Cell Proteomics 1, 376-386 (2002)。この実験では、3βHSD1(367T)−HAおよび3βHSD1(367N)−HAを発現する細胞を、それぞれ軽培地と重培地で増殖させた。1:1の比で混合された3βHSD1(367N)−HAと3βHSD1(367T)−HA免疫沈降混合物中、正規化されたタンパク質比1.67(≦17%で変動するペプチド比から誘導)でAMFRが検出され、3βHSD1(367N)タンパク質との優先的な物理的会合を示していた。3βHSD1(367N)−HAおよび3βHSD1(367T)−HAの免疫沈降に続いてAMFRイムノブロットを行い、AMFRと3βHSD1(367N)タンパク質との優先的な物理的会合を確認する(図8E)。この相互作用の機能的結果を評価するために、siRNAを用いてAMFRをサイレンシングした(図8F)。AMFRノックダウンは、3βHSD1のタンパク質の量を増加させ、ERAD経路を介したAMFRが3βHSD1分解に必要であることを実証している。これとは対照的に、siRNAによる代わりのユビキチンリガーゼSKP2をサイレンシングすると、3βHSD1に対する検出可能な効果は認められない。
【0070】
3βHSD1(367T)は、DHTの合成を増加させる。3βHSD1に起因するタンパク質のユビキチン化および分解(367T)に対する耐性が、前駆体ステロイドからDHTへの合成を増すか否かを決定するために、本発明者らは、LAPC4細胞に、3βHSD1(367N)、3βHSD1(367T)、またはベクターのみをコードするコンストラクトを発現させ、[H]−DHEAから下流のステロイドへの代謝フラックスを評価した。3βHSD1(367T)をコードするコンストラクトで一過的にトランスフェクトしたLAPC4細胞は、DHEAからAD→5αジオン→DHTへのフラックスの増加を呈する(図9A)。qPCRにより、両方の転写物の等価な発現が確認された(図9B)。3βHSD1(367T)の安定したレンチウイルス発現からも、同様に、野生型(図9D)に匹敵する転写の発現とDHEAからAD→5αジオン→DHTへのフラックスの増加が確認される(図9C)。最後に、本発明者らは、DHEAからDHTへのフラックスを加速する3βHSD1(367T)表現型がアンドロゲン調節遺伝子発現の応答を増幅し(図9E)、ヒト副腎生理学を模倣するためにDHEAを補った精巣摘出マウスでCRPC異種移植腫瘍が発達する時間を早める(図9F)ことを決定した。3βHSD1(367T)腫瘍は、PSA転写物を3βHSD1(367N)腫瘍よりも高いレベルで発現し、3βHSD1(367T)腫瘍で生じる、より高い持続DHT濃度の存在を示唆している(図9G)。まとめると、これらの知見は、アンドロゲン欠乏状態で3βHSD1(367T)をコードするアレルの遺伝子選択に有利な機序を裏付けている。
【0071】
最後に、図10は、標準的なアンドロゲン抑制治療法(ADT)で治療した患者における進行までの時間(TTP)に対してHSD3B1変異の存在がおよぼす影響を示す。クリーブランドクリニックで前立腺切除術後にPSAを上昇させるためにADTを受けた男性119名のコホートにおいて標的生殖細胞系の遺伝子型決定を実行する(サンガー配列決定で検証した)高解像度融解アッセイ。生殖細胞系DNAは、アーカイブされた良性の前立腺切除組織から得られた。このアッセイを使用した予備的な結果は、ADTでの進行までの時間とHSD3B1バリアントとの間の強い相関関係を明らかにしている。ホモ接合バリアントの男性は、ホモ接合野生型の男性に比べて進行までの時間が著しく短い(31.8か月対78.9か月)のに対し、ヘテロ接合体は、中間の臨床経過を有する(進行までの時間=49.7か月)。両方の症例において、対照群(ホモ接合性野生型)と比較したログランクp値<0.05であり、遺伝子用量効果の証拠が存在する(トレンドのログランク検定は、p=0.011)。
考察
【0072】
最前線の性腺のT欠乏(または去勢)治療法に対する抵抗性の主要な機序は、獲得される代謝能力であり、これは、CRPC腫瘍がAR刺激および腫瘍の進行に十分なDHT濃度を維持するのを可能にする。本研究は、DHTへのフラックスを増加させるステロイド産生機構における機能獲得型変異を初めて同定するものである。注目すべきは、主要な副腎経路を利用するか、おそらくはコレステロールからのde novoでのステロイド産生を利用するかを問わず、3βHSD酵素活性による3−ケトへの3β−ヒドロキシル酸化およびΔ5→4異性化は、Tおよび/またはDHTの合成に至るすべての経路に必要とされることである。副腎DHEAおよびDHEA−硫酸塩は一般に、ヒト血清中に高濃度で存在する。腫瘍内3βHSD1(367N)の発現の文脈では、性腺T枯渇に対する臨床応答は、おそらくいくらかは腫瘍内DHTへの副腎前駆体の寄与が限られていることによっても発生する。したがって、3βHSD1(367T)でタンパク質の存在量が増えて生じる3βHSD活性の増大は、DHT合成のためのそうでなければ律速的な近位のステップのはけ口を開く一助となり、CRPCの発症につながるのであろう。特に、ヘテロ接合遺伝の設定で、3βHSD1タンパク質の発現は、野生型配列を保持する腫瘍と比較して、野生型HSD3B1(1245A)アレルを失った腫瘍で顕著に高くなっている(図2C)。野生型3βHSD1(367N)タンパク質の発現および共局在が、二量体化またはオリゴマー化によって変異3βHSD1(367T)のユビキチン化およびその後の分解を復元するがゆえに、この所見が生じる可能性がある。それにもかかわらず、3βHSD1(367T)の発現を操作すると、内因性3βHSD1(367N)が発現されるにもかかわらず、DHTへのフラックスの増加とCRPC開発を引き起こす(図9)。そのため、3βHSD1(367N)だけの発現から混合発現、3βHSD1(367T)が優勢な発現への移行は、おそらくDHT合成のキャパシティの増加に対する段階的な選択を示している。
【0073】
HSD3B1(1245C)アレルの集団頻度は約22%であるが、これは民族(UCSC)ごとに大きく異なるように見える。他の研究は、HSD3B1(1245C)アレルがアルドステロンレベルを上昇させ、本態性高血圧症のリスクを高める可能性があることを示唆している。これはおそらく、アルドステロン合成に必要な3βHSD酵素活性が高まることに起因する。アルドステロンは一般に、3βHSD2を必要とすると考えられているにもかかわらず、である。興味深いことに、この表現型は、ホモ接合HSD3B1(1245C)があるほうが厳しいように見える。ホモ接合HSD3B1(1245C)でアルドステロンが非常に高くなるという観察結果は、CRPCで酵素活性が高くなり、3βHSD1(367T)だけの発現が段階的に選択されることと一致している。限局性前立腺がんのリスクに対しては、HSD3B1(1245C)による一貫性のある影響は存在しない。Cunningham et al., Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 16, 969-978 (2007)。
【0074】
実験手順
【0075】
H]標識DHEA(100nM、300,000〜600,000cpm;PerkinElmer)を含有する1mLの無血清培地での処理により細胞を播種後、ステロイド代謝実験を12時間行った。最大48時間まで培地のアリコートを収集し、65℃で4時間、βグルクロニダーゼ(1000単位;Sigma-Aldrich)で処理した。脱抱合ステロイドを抽出し、窒素気流下で蒸発させ、50%メタノールに溶解し、モデル717プラスオートインジェクター(Waters Corp.)を取り付けたBreeze 1525システムに注入し、Luna 150×3mm、3.0μΜ C18逆相カラム(Phenomenex)でステロイド代謝物を分離した。カラム溶出液をLiquiscintシンチレーションカクテル(National Diagnostics)と混合し、β−RAMモデル3インライン放射能検出器(IN/US Systems)で分析した。トランスフェクションの24時間後および25μΜシクロヘキシミド(CHX)での処理の12時間後に、pCMV5−HSD3B1(367Nおよび367T)コンストラクトを用いて一過性酵素の発現でのステロイド代謝実験を行った。pLVX-Tight-Puroベクターでのレンチウイルス感染後、安定した酵素発現でのステロイド代謝実験を行った。UT SouthwesternおよびUniversity of Washington rapid autopsy programでのIRB承認プロトコールを用いて、ヒト組織を得た。レンチウイルスコンストラクトをmiR30スタイルshRNA配列から作製し、pGIPZベクターにクローニングし、コンストラクトを発現する感染細胞を2μg/mlのピューロマイシンを用いて選択した。ABI−7500リアルタイムPCR装置(Applied Biosystems)においてROXキット(Bio-Rad)でiTaq SYBR Green Supermixを用いてqPCRにより遺伝子を発現させた。PCMX−HSD3Bl−HA(367Nおよび367T)プラスミドでの一過性トランスフェクション後に、タンパク質の半減期を測定し、24時間、100nMのDHEAを含有する無血清培地にて25μΜCHXを続けた。2ng/mLのドキシサイクリンでのタンパク質発現の誘導およびCHXでの処理後、pLVX-Tight-PuroにおけるHAタグHSD3B1(367Nおよび367T)を安定して発現する細胞を用いてタンパク質の半減期を決定した。
【0076】
細胞株。LNCaPおよびDU145はATCC(Manassas, VA)から購入し、10%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640培地で培養した。VCaPはATCCから購入し、10%ウシ胎児血清を含むDMEM中で維持した。LAPC4は、Charles Sawyers博士(Memorial Sloan Kettering Cancer, New York, NY)から惜しみなく提供され、10%ウシ胎児血清を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)中で維持した。RWPE−1は、ATCCから得て、ケラチノサイト無血清培地(K−SFM)(Invitrogen, Carlsbad, CA)にて培養した。PzHPV7は、JT Hsieh博士(UT Southwestern)から惜しみなく提供され、PrEGM(Lonza, Allendale, NJ)で維持した。VCaP以外のすべての細胞を、5%CO加湿インキュベーターでインキュベートした。VCaP細胞を、10%CO加湿インキュベーターで増殖させた。
【0077】
ステロイド代謝。細胞(1ウェルあたり300,000〜400,000個)を、ポリ−L−オルニチンでコーティングした12ウェルのプレートに播種した。播種の12時間後、培地を、PerkinElmer(Waltham, MA)から購入した[H]標識DHEA(100nM、300,000〜600,000cpm)を含む1mLの無血清培地と交換した。細胞を37℃でインキュベートし、培地のアリコート(0.25〜0.3mL)を最大48時間まで採取した。ステロイドからβ−D−グルクロン酸基を加水分解するために、1000単位のβ−グルクロニダーゼ(H. pomatia; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を各アリコートに添加し、65℃で4時間インキュベートした。脱抱合ステロイドを1:1の酢酸エチル:イソオクタン1mLで抽出し、窒素気流下で試薬を蒸発させた。乾燥サンプルを50%メタノールに溶解し、モデル717プラスオートインジェクター(Waters Corp., Milford, MA)を取り付けたBreeze 1525システムに注入した。Luna 150×3mm、3.0μΜ C18逆相カラム(Phenomenex, Torrance, CA)で、メタノール/水勾配を用いて25℃にてステロイド代謝物を分離した。カラム溶出液をLiquiscintシンチレーションカクテル(National Diagnostics, Atlanta, GA)と混合し、β−RAMモデル3インライン放射能検出器(LabLogic, Brandon, FL)で分析した。すべての代謝試験は三重で行い、独立した実験で繰り返した。
【0078】
一過性の酵素発現を伴うLAPC4のステロイド代謝分析のために、pCMV5−HSD3B1は、J.Ian Masonの善意で提供を受け、配列決定し、3βHSD1(367T)のエンコーディングとして確認された。Lorence et al., Endocrinology 126, 2493-2498 (1990)。Quick Change Site directed Mutagenesisキット(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を使用して、プライマーセット(フォワード:5’−GGACCGGCACAAGGAGAACCTGAAGTCCAAGACTCAG−3’(配列番号1)およびリバース:5’−CTGAGTCTTGGACTTCAGGTTCTCCTTGTGCCGGTCC−3’(配列番号2))を用いて、野生型3βHSD1(367N)をコードするプラスミドを誘導した。プラスミドDNA(20ng)を、PLUS試薬(Life Technology, Grand Island, NY)と一緒にリポフェクタミンを用いて、1ウェルあたり300,000個の細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を25μΜ CHXで12時間処理した後、上述したようにステロイドを分析した。
【0079】
安定した発現を伴うステロイド代謝研究用に、HSD3B1、野生型(367N)または変異(367T)を、プライマーセット(フォワード:5’−TCCGCGGCCGCGGAGTGATTCCTGCTA−3’(配列番号3)およびリバース:5’−AAGACGCGTGAGCTCTAGTAGTCAAAA−3’(配列番号4))を用いてPCR増幅し、NotIおよびMluI制限部位によってpLVX-Tight-Puroベクター(Clontech, Mountain View, CA)にサブクローニングした。pLVX-Tight-Puroベクター、pMD2.G、psPAX2ベクター各10μgの同時トランスフェクションによって、293T細胞にレンチウイルス粒子をパッケージ化した。レンチウイルス感染および2週間の2μg/mlのピューロマイシン選択後、1ウェルあたり300,000個の細胞を代謝フラックスの分析に使用した。
【0080】
ヒト組織。IRB承認番号39053で、University of Washington rapid autopsy programから、CRPCと正常組織(UW1−UW26)のマッチングを得た。UT Southwesternでは、IRB承認済みのプロトコールSTU−032011−187およびSTU−062010−212を用いて、腫瘍と正常組織(UTSW1−UTSW14)のマッチングを得た。すべての配列決定研究を独立して繰り返した。
【0081】
DNAの単離とHSD3B1配列分析。DNeasy Blood and Tissue Kit(QIAGEN, Germantown, MD)を用いて、細胞株および臨床サンプル(転移性CRPC腫瘍およびマッチした末梢血または正常組織)からゲノムDNAを調製した。プロモーター領域のPCR産物、すべてのエクソン、エクソン−イントロン接合部、3’−UTRを配列決定し、HSD3B1における変異を同定した。プライマーおよびアニーリング温度は、過去に説明されていた。Chang et al., Cancer Res. 62, 1784-1789 (2002)。HSD3B1の3’フランキング領域を配列決定するために、プライマーセット(フォワード:5’−ATGTGGAGGGAGGTGTGAGT−3’(配列番号5)およびリバース:5’−ACGGAGATGGGTCTCTTCCA−3’(配列番号6))を、アニーリング温度62℃で使用した。ジェノタイピングPCR反応(50μl)は、30〜100ngのゲノムDNA、0.2mM dNTPを含む1×PCR緩衝液、各0.2μΜのプライマー、0.5μlのPhusion High-Fidelity DNA Polymerase(New England BioLabs Inc, Ipswich, MA)で構成されていた。DNAシーケンシングおよび多型解析は、McDermott Center, UT Southwesternにて実施した。
【0082】
HSD3B1転写物の分析用に、全RNAを回収し、iScript cDNA合成キット(Bio-Rad)によってmRNAをcDNAに逆転写した。クローニングプライマーセット(フォワード:5’−ACTGAATTCCAGGCCAATTTACACCTATCG−3’(配列番号7);リバース:5’−ACTCTCGAGTCAAACTATGTGAAGGAATGGA−3’(配列番号8))を使用して、HSD3B1エキソン4の3’領域をPCR増幅し、pCMXベクターにサブクローニングした。インサートを有するコロニーを配列決定のために採取した。
【0083】
遺伝子は、レンチウイルスベクターまたはRNA干渉によりノックダウン。レンチウイルスベクターの構築、ウイルスパッケージングおよび感染は、過去に説明されているようにして行った。Chang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 108, 13728-13733 (2011)。簡単に説明すると、HSD3B1に対する3つのmiR30スタイルshRNA配列(#1:5’−TGCTGTTGACAGTGAGCGACCTCATACAGAAAGTGACAAGTAGTGAAGCCACAGATGTACTTGTCACTTTCTGTATGAGGCTGCCTACTGCCTCGGA−3’(配列番号9);#2:5’−TGCTGTTGACAGTGAGCGAAGAGGAAAGACCATGTGGTTTTAGTGAAGCCACAGATGTAAAACCACATGGTCTTTCCTCTGTGCCTACTGCCTCGGA−3’(配列番号10))をPCR増幅し、pGIPZベクター(Open Biosystems, Huntsville, AL)にクローニングし、シーケンシングによって確認した。ウイルスパッケージングは、pGIPZ、pMD2.G、psPAX2ベクター各10μgを同時トランスフェクトすることで、293T細胞にて行った。形質導入効率を高めるために、レンチウイルス粒子を含有する30mLの上清を回収し、0.45μmのニトロセルロース膜で濾過し、室温にて途切れることなく2時間20分間、19,000rpmでの超遠心分離によって濃縮した。ウイルス粒子を含有するペレットを、10%FBSを含む3mlのRPMI 1640で再懸濁し、1mLを用いて、ポリブレン(6μ/ml)加LNCaP細胞に感染させた。24時間後、感染細胞を2週間、2μg/mlのピューロマイシンを用いて選択した後、ノックダウン効率を評価した。
【0084】
RNA干渉には、25nMのsiGENOME Human siRNA(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)を、Lipofectamine RNAiMax(Life Technology, Grand Island, NY)によってLAPC4(ポリ−L−オルニチンをコーティングした6ウェルのプレートで1ウェルあたり1×10個の細胞)にトランスフェクトした。細胞溶解物を、トランスフェクションの48時間後に回収し、ウサギ抗AMFRおよびウサギ抗SKP2を用いるウェスタンブロットによりノックダウン効率を決定した。
【0085】
マウス異種移植研究。過去に詳細に説明されているようにして、マウス異種移植研究および酢酸アビラテロン処理を行った。Li et al., Clin Cancer Res 18, 3571-3579 (2012)。簡単に説明すると、6〜8週齢のオスのNOD/SCIDマウスをUT Southwestern Animal Resources Centerから入手し、外科的な精巣摘出とDHEAペレット(5mgの90日間徐放)移植をし、2日後に7×10のLAPC4細胞を皮下注射した。体積が300mmに達する腫瘍を、4週間にわたり、週5日間、毎日1回、腹腔内アビラテロン酢酸または溶媒で処理(1処理あたりn=8匹)した。マウスの屠殺時に、新鮮な状態で腫瘍を凍結した。変異3βHSD1ノックダウンの研究のために、shHSD3Bl#1、#2およびshCTRLを安定して発現しているLNCaP細胞(7×10個)を、正常性腺機能を有するNOD/SCIDマウスに、マトリゲルと一緒に皮下注射した(1群あたりn=15)。体積が100mmに達した腫瘍を有するマウスには、外科的去勢とDHEAのペレット移植を行った。去勢から腫瘍体積が≧600mmになるまでの時間を評価した。野生型と変異3βHSD1との比較のために、pLVX-Tight-Puro−HSD3Bl(367N)またはpLVX-Tight-Puro−HSD3Bl(367T)を安定して発現しているLAPC4細胞(7×10個)を、外科的に精巣摘出してDHEA(5mg、90日間徐放)ペレットを移植したNOD/SCIDマウスに皮下注入した。腫瘍直径をデジタルノギスで週に2〜3回測定した。
【0086】
細胞増殖研究。ポリ−L−オルニチンをコーティングした12ウェルのプレートに、LNCaP細胞を100,000個/ウェルで三重に播種し、20nMのDHEAまたは溶媒対照の存在下にて最大7日間増殖させた。ヘキストで核酸を染色することによって、相対的な細胞数を決定した。Kan et al., Cancer Res 67, 9862-9868 (2007)。簡単に説明すると、細胞をPBSで洗浄し、250μLのMilli−Q水と一緒に冷凍した。核酸を染色するために、プレートを完全に解凍し、500μLのヘキスト染色緩衝液(1mM EDTA、2M NaClおよび10mM Tris中ヘキスト10μg/mL、pH=7.5)を各ウェルに加えた。プレートを室温にて2時間、暗所で穏やかに振盪した後、360nmでの励起とプレートリーダーを用いての460nmでの発光測定によって、各ウェルの蛍光を決定した。DNAの量を、標準曲線との比較によって推定した。
【0087】
遺伝子発現。各遺伝子転写物を正確に定量するために、過去に説明されているようにして、qPCRを行った。Chang et al., 2011。簡単に説明すると、ROXキットを含むiTaq SYBR Green Supermix(Bio-Rad, Hercules, CA)を、ABI−7500リアルタイムPCR装置Applied Biosystems, Foster City, CA)にて、熱サイクル反応用に増幅した。RNeasyキット(QIAGEN)によって回収した全RNA(1μg)を、iScript cDNA合成キット(Bio-Rad)を用いるRTに使用した。以下のプライマーセットを用いて、qPCR分析を三重に行った。HSD3B1(フォワード:5’−CCATGTGGTTTGCTGTTACCAA−3’(配列番号11);リバース:5’−TCAAAACGACCCTCAAGTTAAAAGA−3’(配列番号12))、PSA(フォワード:5’−GCATGGGATGGGGATGAAGTAAG−3’(配列番号13);リバース:5’−CATCAAATCTGAGGGTTGTCTGGA−3’(配列番号14))、TMPRSS2(フォワード:5’−CCATTTGCAGGATCTGTCTG-3’(配列番号15);リバース:5’−GGATGTGTCTTGGGGAGCAA−3’(配列番号16))、ハウスキーピング遺伝子large robosomal protein P0(RPLP0)(フォワード:5’−CGAGGGCACCTGGAAAAC−3’(配列番号17);リバース:5’−CACATTCCCCCGGATATGA−3’(配列番号18))およびGAPDH(フォワード:5’−AGAAGGCTGGGGCTCATTTG−3’(配列番号19);リバース:5’−AGGGGCCATCCACAGTCTTC−3’(配列番号20))。それぞれのmRNA転写物は、RPLP0またはGAPDHおよび非サイレンシング対照細胞(ノックダウン)または溶媒処理した細胞(ステロイド処理細胞)にサンプル値を正規化することによって定量した。すべての遺伝子発現研究を、独立した実験で繰り返した。
【0088】
酵素反応速度。野生型および367Tタンパク質について、酵母ベクターV10−3βHSD1を用いて、S cerevisciae株W303Bにて組換えヒト3βHSD1を発現させ、記載のあるようにしてミクロソームを調製した。Li et al., 2012。50mMのリン酸カリウム(pH7.4)0.25ml中に[H]−DHEA(0.5〜40μΜ、100,000CPM)およびミクロソームタンパク質25μgを含有するインキュベーションを、37℃で1分間プレインキュベートした後、NAD(0.1mM)との反応を開始した。37℃で20分後、ジクロロメタン1mlでステロイドを抽出し、濃縮し、メタノール−水勾配を0.4ml/分で使用して、Kinetex 2.1×100mm、2.6μm C18逆相カラム(Phenomenex, Torrance, CA)を備えたAgilent 1260 HPLCで分離した。β−RAM4(LabLogic)のインラインシンチレーションカウンターおよびBio-SafeIIカクテル(Research Products International)を用いて、カラム溶出液を分析した。三重測定の平均を、v対[S]としてプロットし、Originバージョン7.5を用いてミカエリス・メンテン式にデータをフィットすることで、反応速度定数KおよびVmaxを得た。
【0089】
LAPC4における3βΗSD1の安定した発現のために、pLVX-Tight-Puroベクター系(Clontech, Mountain View, CA)によって、HSD3B1に融合した野生型3βHSD1(367N)または3βHSD1(367T)HAタグを発現している細胞を構築した。10%Tet System Approved FBS(Clontech)を含有するEVIDMでポリ−L−オルニチンをコーティングした6ウェルのプレートの各ウェルに、100万個の細胞を播種した。2ng/mLのドキシサイクリンによって、24時間、3βΗSDの発現を誘導した。CHX処理および溶解物の収集は上述したようにして実施した。タンパク質は、SDS−PAGEおよびウェスタンブロットによって分析した。フィルムをスキャンし、ImageJによって定量した。過去に説明されているようにして、タンパク質の半減期を計算した。Bloom et al., Cell 115, 71-82 (2003)。簡単に説明すると、3βHSD1シグナルを、β−アクチンおよび時刻0に正規化した。対数トレンドラインから誘導した式によって、t1/2を算出した。すべての実験を独立して繰り返した。
【0090】
ウェスタンブロット分析および免疫沈降。ウェスタンブロット分析のために、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を含むRIPA緩衝液(Sigma- Aldrich)を用いて、全細胞タンパク質抽出物を回収した。BCAタンパク質アッセイ試薬(Thermo Scientific, Rockford, IL)によってタンパク質濃度を決定し、タンパク質20μgを8.5%SDS−PAGEによって分離した。タンパク質をPVDF膜に転写し、マウス抗3βHSD1抗体(Sigma)、ウサギ抗HA抗体(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)、マウス抗アクチン抗体(Sigma)によって検出した。3βHSD1安定性におけるERAD経路の役割を決定するために、細胞溶解物を回収する6時間前に、細胞をイーアレスタチン(Sigma)で処理した。
【0091】
内因性ユビキチン修飾3βHSD1を精製するために、10μΜのMG132で6時間(EMD Millipore, Billerica, MA)処理した1000万個のLAPC4細胞からの全細胞溶解物を、プロテアーゼ阻害剤カクテルおよび20mM N−エチルマレイミド(Sigma)を加えたIP溶解緩衝液(20mM HEPES、pH7.9、1mM EDTA、1mM EGTA、150mM NaCl、10mMリン酸グリセロール、10mMピロリン酸ナトリウム、1mMジチオスレイトール、1mM NaF、1mM NaVO、0.1%Nonidet P-40)を用いて回収した。予備清澄化ライセートを、マウス抗ユビキチン抗体(Santa Cruz)と共に4℃で3時間インキュベートした後、プルダウンのためにさらに1時間、Protein AG UltraLink Resin(Thermo Scientific)40μlを添加した。溶解緩衝液で十分に洗浄した後、精製されたタンパク質を25μl 2×SDSサンプル緩衝液で溶出させ、ウェスタンブロットで分析した。
【0092】
3βHSD1およびAMFRの共免疫沈降のために、ポリエチレンイミン(Polysciences, Warrington, PA)によって、4つのディッシュの293T細胞(60%コンフルエンス)を、野生型3βHSD1(367N)または3βHSD1(367T)PCMX−HSD3Bl−HA 5μgで36時間トランスフェクションした。免疫沈降アッセイを上述したようにして行った。すべての免疫沈降研究を独立した実験で繰り返した。
【0093】
in vivoユビキチン化アッセイ。6xHis−ユビキチン(配列番号21として開示される「6xHis」)結合タンパク質を精製するために、過去に説明されているようにして、若干の修正を加えて実験を行った。Rodriguez et al., EMBO J 18, 6455-6461 (1999);Xirodimas et al., Cell 118, 83-97 (2004)。簡単に説明すると、野生型3βHSD1(367N)または3βHSD1(367T)PCMX−HSD3Bl−HAと一緒にpcDNA3−6xHisユビキチン(配列番号21として開示されている「6xHis」)を用いて、HEK293T細胞を36時間トランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を氷冷PBS中で掻き取って回収した。細胞懸濁液の20%をペレット化し、RIPA溶解緩衝液で溶解した。異種発現タンパク質をウェスタンブロットによって分析した。残りの細胞をペレット化し、4mLの溶解緩衝液(6Mグアニジン−HCl、0.1M NaHPO/NaHPO、0.01Mトリス/HCl、pH8.0、5mMイミダゾール、10mM β−メルカプトエタノール)で溶解した。Ni−NTA−アガロース(QIAGEN Inc, Valencia, CA)40μlを加えることによって6xHis−ユビキチン(配列番号21として開示されている「6xHis」)によって共有結合したタンパク質をプルダウンし、室温にて2時間インキュベートし、以下の緩衝液で連続的に洗浄した。(1)6Mグアニジン−HCl、0.1M NaHPO/NaHPO、0.01Mトリス/HCl、pH8.0、5mMイミダゾールプラス10mM β−メルカプトエタノール;(2)8M尿素、0.1M NaHPO/NaHPO、0.01Mトリス/HCl、pH8.0、10mMイミダゾール、10mM β−メルカプトエタノールプラス0.1%トリトンX−100;(3)8M尿素、0.1M NaHPO/NaHPO、0.01Mトリス/HCl、pH6.3、10mM β−メルカプトエタノール(緩衝液A)、20mMイミダゾールプラス0.2%トリトンX−100、2回;(4)10mMイミダゾールプラス0.1%トリトンX−100を含む緩衝液A;(5)10mMイミダゾールプラス0.05%トリトンX−100を含む緩衝液A。最後の洗浄後、200mMイミダゾールを含有する25μl 2X SDSサンプル緩衝液でタンパク質を溶出した後、溶出液10μLをSDS−PAGEおよびウェスタンブロットで分析した。ユビキチン共役部位を決定するために、プライマーセット(K70Rフォワード:5’−GAT GAG CCA TTC CTG AGG AGA GCC TGC CAG GAC-3’(配列番号22);K70Rリバース:5’−GTC CTG GCA GGC TCT CCT CAG GAA TGG CTC ATC−3’(配列番号23);K352Rフォワード:5’−GAG GAA GCC AAG CAG AGA ACG GTG GAG TGG GTT−3’(配列番号24);K352Rリバース:5’−AAC CCA CTC CAC CGT TCT CTG CTT GGC TTC CTC−3’(配列番号25))を用いて、Quick Change Site directed Mutagenesisキット(Agilent Technologies)を使用して、リジン残基をアルギニンで置換した。ユビキチン化の研究は、独立した実験で繰り返した。
【0094】
質量分析
【0095】
材料。1M炭酸水素トリエチルアンモニウム(TEAB)溶液、dl−ジチオスレイトール(DTT)、ヨードアセトアミド、プロテオミクスシークエンシンググレードのトリプシンは、Sigmaから購入した。LC/MSグレードのアセトニトリルおよびLC/MSグレードのトリフルオロ酢酸(TFA)は、Fisher Scientificから購入した。
【0096】
ゲル内消化。タンパク質サンプルをSDS−PAGEで分離し、標準的な手順に従ってSimplyBlue SafeStain(Invitrogen)で染色した。簡単に説明すると、ゲルを超純水で5分間3回洗浄し、20mLのSimplyBlue SafeStainで室温にて1時間、染色した。100mLの超純水で1時間、2回洗浄した後、各ゲルのレーンを、各々がほぼ同じ量のタンパク質を含むであろうようにして3つに切断した。その後、切断した各ゲルバンドをさらに細かく1mm四方の立方体にした。ゲル内消化を、以下のプロトコールに従って実施した。50mMの炭酸水素トリエチルアンモニウム(TEAB)/アセトニトリル(1:1、v/v)中、37℃で30分間のインキュベーションによって、クーマシーブルー染色を除去した。ゲル片を室温にてアセトニトリルで脱水した後、DTTおよびヨードアセトアミドを用いて還元/アルキル化した。次に、ゲル片をアセトニトリルで脱水し、トリプシン溶液(50mMの酢酸中400ng/μg)で再水和した。トリプシン消化を37℃で一晩行った。50%アセトニトリルおよび3.3%TFAの最終濃度になるように抽出緩衝液を用いて37℃で30分のインキュベーション後にペプチドを抽出した。特に明記しない限り、すべてのステップは、サーモシェーカー(Eppendorf, NJ)で実施した。抽出物を真空遠心分離機にて乾燥させた。LC−MS/MS分析の前に、Oasis HLB μElutionプレート(Waters, MA)を用いて、塩を除去した。
【0097】
LC−MS/MS分析。2μmの樹脂を充填した内径75μm×50cmのThermo Scientific Easy-Sprayカラムを備えたUltimate 3000ナノHPLCシステム(Dionex)にて、一次元液体クロマトグラフィを行った。ペプチドの分離は、0.1%ギ酸中1%から25%アセトニトリルの200分間の直線勾配により350nl/分で行った。Easy-Sprayソース(Thermo Electron)を用いてカラム温度を上昇させ、60℃に維持した。(m/z 200で)解像度70Kで取得したフルMSスキャンおよび解像度17.5Kで取得したMS/MSスキャンを用いて、データ依存性のトップ20の方法を使用して、QExactive装置(Thermo Electron)にて質量分光分析を行った。3m/zの分離ウィンドウおよびMS/MS取得のための100m/zの固定された第1の質量で、アンダーフィル比を0.1%に設定した。割り当てられていない単一荷電種を除外するために、電荷除外を適用し、15秒の時間でダイナミック除外を使用した。GlyGly(K)を可変修飾として指定したことを除いてデフォルトのパラメータでMaxQuant(バージョン1.3.0.5)を使用して、SILAC MSデータを分析した。Cox, J., and Mann, M., Nat Biotechnol 26, 1367-1372 (2008)。
実施例2:生殖細胞/体細胞変異検出アッセイ
【0098】
体細胞変異の検出(PCR1):
【0099】
野生型アレルの増幅をブロックして変異アレルが優先的に増幅されるようにする、野生型アレルに特異的な非標識3’ロックド核酸(LNA)を用いる非対称PCRアッセイによって、野生型個体における(N367T)体細胞変異を検出する。DNA飽和色素のエンドポイント蛍光融解は、両方のアレルを等しく増幅する第2の非遮断PCRから生じるプローブ/野生型標的二重鎖の融解温度と比較できるプローブ/変異標的二重鎖に特異的である溶融動態につながる。アッセイは、全アレル集団中の変異アレルの0.75%に対して感受性である。
【0100】
各サンプルについて、以下の表1に示すようにして2種類のPCR混合物を調製する。
【0101】
【表1】
【0102】
PCR1については、表2に示すように、以下の「プレPCR」サイクルを行う。
【0103】
【表2】
【0104】
PCR1(プレ−PCRサイクル後)およびPCR2はどちらも、表3に示すサイクルで行う。
【0105】
【表3】
【0106】
生殖細胞SNP検出(PCR2):
【0107】
DNA飽和色素の存在下、非対称PCRにおける野生型特異的非標識ロックド核酸(LNA)ハイブリダイゼーションプローブを用いて、(N367T)生殖系SNP検出アッセイを設計した。LC-Green Lightscanner(登録商標) Master Mix(Biofire Defense, Salt Lake City, UT)を使用して、プライマー比1:10で、219bp−アンプリコンを増幅する。PCR終了後、エンドポイント蛍光融解は、増幅されたアレルに特異的なプローブ/標的二重鎖の2つの異なる融解温度を明らかにする(野生型で73.6℃、変異で71.5℃)。ヘテロ接合の遺伝子型は、2つの融解ピークを示す。3BHSD2および4つの3BHSD1偽遺伝子は、プライマーの特異性およびPCRのストリンジェンシーの高さがゆえに、このジェノタイピングアッセイに干渉しない。参照方法として配列決定と比較した場合、このアッセイは100%の一致を示した。新鮮な凍結組織およびFFPE組織から抽出した40ngのDNAについてアッセイを検証した。
【0108】
アッセイの実施結果を図11に示す。PCR1に使用したのと同じプロトコールを用いて行われる、生殖細胞系変異アッセイ(PCR2)の背後にある目的は、同時PCR2で体細胞変異の遺伝子型を決定し、検出することである。既知の野生型サンプルだけを試験する場合には、これは不要である。また、PCR2アッセイはまた、ヘテロ接合変異と体細胞変異(いずれもPCR1における変異となる)とを区別し、ヘテロ接合性の喪失を検出することを可能にする。
【0109】
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願および刊行物ならびに電子的に利用可能な資料の完全な開示内容が、本明細書に援用される。前述の詳細な説明および実施例は、理解を明確にするためだけに与えられている。そこから不必要な制限が理解されるべきではない。当業者に明らかな変形が特許請求の範囲に規定される本発明の範囲に含まれるため、本発明は、図示および記載された詳細な内容に厳密に限定されるものではない。

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図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]