(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記荷電制御剤は、クロムオキシカルボン酸錯体、亜鉛オキシカルボン酸錯体、アルミニウムオキシカルボン酸錯体、及びその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の支持材料。
吸熱剤を無水物形態の前記熱可塑性コポリマーにブレンドすることを更に含み、該吸熱剤は前記粉末形態となる前記ブレンドの一部を構成する、請求項10に記載の方法。
前記モノマーの重合は溶媒中にて行なわれ、前記カルボン酸基の一部を前記無水物基へと転化するのに酸形態の前記熱可塑性コポリマーを加熱することで、更に前記溶媒から前記熱可塑性コポリマーが単離される、請求項10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、3D部品を印刷するのに使用される部品材料に伴って、高解像度及び迅速な印刷速度にて支持構造を印刷するための電子写真方式の付加製造システムにおける使用に合わせて分子設計されている犠牲溶解性支持材料に関するものである。印刷動作中、電子写真(EP:electrophotography)エンジンは、電子写真プロセスを使用して部品材料及び支持材料の各層を現像するか又はその他の方法で画像化することができる。現像された層は、その後、層溶融転写アセンブリに転写され、層溶融転写アセンブリにおいて、現像された層は、(例えば熱及び/又は圧力を使用して)溶融転写されて、1つ又は複数の3D部品及び支持構造を層ごとに印刷する。
【0023】
現像されたトナー粒子が、印刷用紙を通して電位をかけることによって印刷用紙に静電転写され得る2D印刷と比較して、3D環境内の複数の印刷された層は、所与の数の層(例えば、約15層)が印刷された後の部品材料及び支持材料の静電転写を効果的に防止する。代わりに、各層は、上昇した転写温度まで加熱された後、先に印刷された層に対して(又は、ビルドプラットフォームに)押付けられて、溶融転写ステップにおいて層を共に溶融転写することができる。これは、3D部品及び支持構造の多数の層が、通常静電転写によって達成可能であるものを超えて、垂直に構築されることを可能にする。
【0024】
下記に述べられるように、本開示の支持材料は、電子写真方式の付加製造システムに使用するのに、またアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)部品材料等の好適な部品材料(例えば、熱可塑性部品材料)を補うために設計されている粉末ベースの可溶性支持材料である。支持材料は、Martinの米国特許出願公開第13/944,472号に開示されているABS部品材料とともに使用するのに特に適している。この出願の開示は、本開示に抵触しない限りにおいて引用することにより本明細書の一部をなす。
【0025】
支持材料は、部品材料用の犠牲材として機能し、オーバハング特徴が最終3D部品構造において要求される場合、かなりの角度の付いた傾斜が3D部品に存在する場合、小さな開口部又は制御細孔構造等の繊細な特徴を3D部品において保護すること、また幾つかの状況では3D部品の側面を覆うことが更に必須である場合に望まれる。3D部品を印刷してから、好ましくは3D部品の重要な又は繊細な幾何学的特徴を何ら損なうことなく、犠牲支持材料の支持構造を取り除き、完成した3D部品を露出することができる。これを達成するために、支持材料はアルカリ水溶液等の水溶液に可溶性であり、支持構造を3D部品から溶かし出すことが可能である。
【0026】
しかしながら、これらの要件は電子写真方式の付加製造システムにおける使用に適した支持材料を作製するのに重大な課題をもたらしている。例えば下記に述べられるように、支持材料の各層は部品材料の関連層と一緒に溶融転写するのが好ましい。またそのため、支持材料の熱特性(例えば、ガラス転移温度)及び溶融レオロジーが、その関連部品材料の熱特性及び溶融レオロジーと同様の又はより好ましくは実質的に同じであるのが好ましい。
【0027】
その上、支持材料は、部品材料及び支持材料が一緒になって層溶融転写アセンブリに転写されるように、関連部品材料と同様の又はより好ましくは実質的に同じ安定した摩擦電荷を受容及び維持することが可能であるのが好ましい。さらに、支持材料はコスト効率の高い加工法を用いて粉末形態にて作製することが可能であるのが好ましく、部品材料との良好な接着を呈するのが好ましく、また層溶融転写プロセスの間、熱的に安定しているのが好ましい。
【0028】
したがって、本開示の支持材料はこれらの競合因子のバランスを取るように開発されている。要するに、支持材料は組成的に、熱可塑性コポリマー、荷電制御剤、及び任意選択的に吸熱剤及び/又は1つ又は複数の更なる材料、例えば流動制御剤を含む。熱可塑性コポリマーは、芳香族基、(メタ)アクリレート系エステル基、カルボン酸基及び無水物基を含み、無水物基とカルボン酸基との比はコポリマーの無水物転化に有利なように最大となるか、又はそうでなければ増大しているのが好ましい。
【0029】
支持材料にとって好ましい熱可塑性コポリマーは、1つ又は複数のエチレン性不飽和芳香族モノマー(例えば、スチレン)、1つ又は複数のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(例えば、ブチルアクリレート)、及び1つ又は複数の(メタ)アクリル酸モノマー(例えば、メタクリル酸)から誘導されるターポリマーであり、1つ又は複数の(メタ)アクリル酸モノマー由来のカルボン酸基が、可能な限り完全に無水物基ヘと分子内転化されるのが好ましい。
【0030】
無水物転化が実質的に又は完全に最大でなければ、層溶融転写ステップ中に支持材料のカルボン酸基が更なる無水物転化を受けることで、起泡及び発泡が起こる場合があることが見出されている。その結果、起泡及び発泡が支持構造及び部品の品質低下を引き起こし得る。これは、通例、無水物転化率がかなり低い可溶性熱可塑性コポリマーの支持材料を組み込む押出し方式の付加製造法と類似している(in comparison to)。さらに支持材料は好ましくは、印刷動作中、部品材料層と良好に接着することで、部品材料層を効果的に支持する一方で、印刷後の除去ステップにおける犠牲除去用の水性溶液に可溶性でもある。
【0031】
図1〜
図4に、部品材料(例えばABS部品材料)から3D部品、及び本開示の支持材料から関連の支持構造を印刷するための例となる電子写真方式の付加製造システムであるシステム10を示している。
図1に示すように、システム10は、一対のEPエンジン12p及び12s、ベルト転写アセンブリ14、付勢機構16及び18、並びに、層溶融転写アセンブリ20を含む。システム10用の適したコンポーネント及び機能動作の例は、Hanson他の米国特許出願公開第2013/0077996号及び同第2013/0077997号並びにComb他の米国特許出願公開第2013/0186549号及び同第2013/0186558号に開示されているものを含む。
【0032】
EPエンジン12p及び12sは、部品材料及び支持材料の層をそれぞれ画像化するか又はその他の方法で現像するための画像化エンジンであり、部品材料及び支持材料はそれぞれ、好ましくは、EPエンジン12p及び12sの特定のアーキテクチャと共に使用するために設計される。以下で論じるように、画像化された層は、その後、付勢機構16及び18によってベルト転写アセンブリ14(又は他の転写媒体)に転写され、また、層溶融転写アセンブリ20まで搬送されて、3D部品及び関連する支持構造を層ごとに印刷することができる。
【0033】
図示する実施形態において、ベルト転写アセンブリ14は、転写ベルト22、ベルト駆動機構24、ベルト制動機構26、ループ制限センサ28、アイドラローラ30、及びベルトクリーナ32を含み、それらは、ベルト22が矢印34の回転方向に回転している間、ベルト22に対する張力を維持するように構成される。特に、ベルト駆動機構24はベルト22に係合しベルト22を駆動し、ベルト制動機構26は、ブレーキとして機能して、ループ制限センサ28によってモニタリングされる読取値に基づいて、張力応力からベルト22を保護するためのサービスループ設計を提供することができる。
【0034】
システム10はまた、コントローラ36を含み、コントローラ36は、1つ又は複数の制御回路、マイクロプロセッサベースエンジン制御システム、及び/又はデジタル制御式ラスタ画像化プロセッサシステムであり、また、ホストコンピュータ38から受信される印刷命令に基づいてシステム10のコンポーネントを同期して動作させるように構成される。ホストコンピュータ38は、印刷命令(及び他の動作情報)を提供するためコントローラ36と通信するように構成される1つ又は複数のコンピュータベースシステムである。例えば、ホストコンピュータ38は、3D部品及び支持構造のスライス層に関連する情報をコントローラ36に転送し、それにより、システム10が、3D部品及び支持構造を層ごとに印刷することを可能にすることができる。
【0035】
システム10のコンポーネントは、フレーム40等の1つ又は複数のフレーム構造によって保持することができる。さらに、システム10のコンポーネントは、好ましくは、動作中に周囲光がシステム10のコンポーネントに透過することを防止する閉囲可能ハウジング(図示せず)内に保持される。
【0036】
図2は、EPエンジン12p及び12sを示し、EPエンジン12s(すなわち、ベルト22の回転方向を基準に上流のEPエンジン)は支持材料の層を現像し、EPエンジン12p(すなわち、ベルト22の回転方向を基準に下流のEPエンジン)は部品材料の層を現像する。代替の実施形態において、EPエンジン12p及び12sの配置構成は、EPエンジン12pがベルト22の回転方向を基準にEPエンジン12sから上流になるように反転することができる。更なる代替の実施形態において、システム10は、更なる材料の層を印刷するための3つ以上のEPエンジンを含むことができる。
【0037】
図示する実施形態において、EPエンジン12p及び12sは、伝導性ドラム本体44及び光伝導性表面46を有する光伝導体ドラム42等の同じコンポーネントを含むことができる。伝導性ドラム本体44は、電気的に接地され、シャフト48の周りに回転するように構成される導電性ドラム(例えば、銅、アルミニウム、スズ等から作製される)である。シャフト48は、相応して、ドライブモータ50に接続され、ドライブモータ50は、シャフト48(及び光伝導体ドラム42)を矢印52の方向に一定速度で回転させるように構成される。
【0038】
光伝導性表面46は、伝導性ドラム本体44の円周表面の周りに延在する薄膜であり、また、好ましくは、例えばアモルファスシリコン、セレン、酸化亜鉛、有機材料及び同様なもの等の1つ又は複数の光伝導性材料から得られる。以下で論じるように、表面46は、3D部品又は支持構造のスライス層の帯電潜像(又はネガ画像)を受取り、本開示の支持又は部品材料の帯電粒子を、帯電するか又は放電した画像エリアに吸着し、それにより、3D部品又は支持構造の層を生成するように構成される。
【0039】
更に示すように、EPエンジン12p及び12sはまた、帯電インデューサ54、イメージャ56、現像ステーション58、清掃ステーション60、及び放電デバイス62を含み、それぞれは、コントローラ36と通信状態にあることができる。したがって、帯電インデューサ54、イメージャ56、現像ステーション58、清掃ステーション60、及び放電デバイス62は、ドライブモータ50及びシャフト48が光伝導体ドラム42を矢印52の方向に回転させる間に、表面46用の画像形成アセンブリを画定する。
【0040】
図示する例において、EPエンジン12sの表面46用の画像形成アセンブリが使用されて、支持材料(支持材料66sと呼ばれる)の層64sを形成し、支持材料66sの供給は、キャリア粒子と共に(EPエンジン12sの)現像ステーション58によって保持することができる。同様に、EPエンジン12pの表面46用の画像形成アセンブリが使用されて、部品材料(部品材料66pと呼ばれる)の層64pを形成し、部品材料66pの供給は、キャリア粒子と共に(EPエンジン12pの)現像ステーション58によって保持することができる。
【0041】
帯電インデューサ54は、表面46が帯電インデューサ54を通過して矢印52の方向に回転するとき、表面46上に均一な静電帯電を生成するように構成される。帯電インデューサ54用の適したデバイスは、コロトロン、スコロトロン、帯電ローラ、及び他の静電帯電デバイスを含む。
【0042】
イメージャ56は、表面46がイメージャ56を通過して矢印52の方向に回転するとき、表面46上の均一な静電帯電に向かって電磁放射を選択的に放出するように構成されるデジタル制御式のピクセルごとの光露光装置である。表面46に対する電磁放射の選択的な露光は、コントローラ36によって指示され、離散的なピクセルごとの場所の静電帯電を除去させ(すなわち、グラウンドに放電させ)、それにより、表面46上に潜像帯電パターンを形成する。
【0043】
イメージャ56用の適したデバイスは、走査型レーザ(例えば、ガスレーザ又は固体レーザ)光源、発光ダイオード(LED)アレイ露光デバイス、及び2D電子写真システムにおいて従来使用されている他の露光デバイスを含む。代替の実施形態において、帯電インデューサ54及びイメージャ56用の適したデバイスは、潜像帯電パターンを形成するため、帯電したイオン又は電子を表面46に選択的に直接堆積させるように構成されるイオン堆積システムを含む。したがって、本明細書で使用するとき、用語「電子写真(electrophotography)」はイオノグラフィを含む。
【0044】
各現像ステーション58は、キャリア粒子と共に、好ましくは粉末形態の部品材料66p又は支持材料66sの供給を保持する静電及び磁気現像ステーション又はカートリッジである。現像ステーション58は、2D電子写真システムにおいて使用される、単成分又は2成分現像システム及びトナーカートリッジと同様に機能することができる。例えば、各現像ステーション58は、部品材料66p又は支持材料66s及びキャリア粒子を保持するための格納部を含むことができる。撹拌されると、キャリア粒子は、以下で論じるように、部品材料66p又は支持材料66sの粉末を吸着する摩擦帯電を生成し、吸着した粉末を所望の符号及び大きさに帯電させる。
【0045】
各現像ステーション58はまた、帯電した部品材料66p又は支持材料66sを、コンベヤ、ファーブラシ、パドルホイール、ローラ、及び/又は磁気ブラシ等の表面46に転写するための1つ又は複数のデバイスを含むことができる。例えば、(帯電潜像を含む)表面46が矢印52の方向にイメージャ56から現像ステーション58まで回転するとき、帯電した部品材料66p又は支持材料66sは、(利用される電子写真モードに応じて)帯電エリア現像又は放電エリア現像を利用して、表面46上の潜像の適切に帯電した領域に吸着する。これは、光伝導体ドラム12が矢印52の方向に回転し続けるにつれて、連続した層64p又は64sを生成し、連続した層64p又は64sは、3D部品又は支持構造のデジタル表現の連続したスライス層に対応する。
【0046】
連続した層64p又は64sは、以下で論じるように、その後、矢印52の方向に表面46と共に転写領域まで回転して、転写領域において、層64p又は64sは、光伝導体ドラム42からベルト22に連続的に転写される。光伝導体ドラム42とベルト22との間の直接的係合として図示されているが、幾つかの好ましい実施形態において、EPエンジン12p及び12sはまた、以下で更に論じるように、中間転写ドラム及び/又は中間転写ベルトを含むことができる。
【0047】
所与の層64p又は64sが光伝導体ドラム42からベルト22(又は中間転写ドラム若しくはベルト)に転写された後、ドライブモータ50及びシャフト48は、矢印52の方向に光伝導体ドラム42を回転させ続け、それにより、層64p又は64sを先に保持した表面46の領域は清掃ステーション60を通過する。清掃ステーション60は、部品材料66p又は支持材料66sの残留する未転写のいずれの部分をも除去するように構成されるステーションである。清掃ステーション60用の適したデバイスは、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、静電クリーナ、真空ベースクリーナ、及びその組合せを含む。
【0048】
清掃ステーション60を通過した後、表面46は、矢印52の方向に回転し続け、それにより、次のサイクルを開始する前に、表面46の清掃済みの領域が放電デバイス62を通過して、表面46上のどんな残留静電帯電をも除去する。放電デバイス62用の適したデバイスは、光学システム、高電圧交流コロトロン及び/又はスコロトロン、高電圧交流が印加された伝導性コアを有する1つ又は複数の回転誘電体ローラ、及びその組合せを含む。
【0049】
転写ベルト22は、現像された連続した層64p又は64sを光伝導体ドラム42(又は中間転写ドラム若しくは中間転写ベルト)から層溶融転写アセンブリ16に転写するための転写媒体である。ベルト22用の適した転写ベルトの例は、Comb他の米国特許出願公開第2013/0186549号及び同第2013/0186558号に開示されているものを含む。ベルト22は、前表面22a及び後表面22bを含み、前表面22aは光伝導体ドラム42の表面46に面し、後表面22bは付勢機構16及び18と接触状態にある。
【0050】
付勢機構16及び18は、ベルト22を通して電位を誘起して、層64p及び64sをEPエンジン12p及び12sからベルト22に静電吸着するように構成される。層64p及び64sはそれぞれ、プロセスのこの地点で、厚さが単一層の増分だけであるため、静電吸着は、層64p及び64sをEPエンジン12p及び12sからベルト22に転写するのに適する。
【0051】
コントローラ36は、好ましくは、ベルト22及び/又は任意の中間転写ドラム又は中間転写ベルトのライン速度と同期する同じ回転速度でEPエンジン12p及び12sの光伝導体ドラム36を回転させる。これは、システム10が、別個の現像液画像から互いに連携して層64p及び66sを現像し転写することを可能にする。特に、図示するように、各部品層64pは、各支持層64sと適切に位置合わせされた状態でベルト22に転写されて、好ましくは、組合された部品材料及び支持材料層64を生成することができる。以下で論じるように、これは、層64p及び64sが共に溶融転写されることを可能にし、部品材料及び支持材料が、同様であるか又は実質的に同じである熱特性及び溶融レオロジーを有することを要求する。認識されるように、層溶融転写アセンブリ20に転写された一部の層は、特定の支持構造及び3D部品の幾何形状及び層スライス化に応じて、支持材料66sを含むだけである場合があるか、又は、部品材料66pを含むだけである場合がある。
【0052】
代替のまたあまり好ましくない実施形態において、部品層64p及び支持層64sは、任意選択で、交互の層64p及び64s等によって、別個にベルト22に沿って現像され転写される場合がある。これらの連続した交互の層64p及び64sは、その後、層溶融転写アセンブリ20に転写することができ、別個に溶融転写されて、3D部品及び支持構造を印刷することができる。
【0053】
幾つかの好ましい実施形態において、EPエンジン12p及び12sの一方又は両方はまた、光伝導体ドラム42とベルト22との間に1つ又は複数の中間転写ドラム及び/又は中間転写ベルトを含むことができる。例えば、
図3に示すように、EPエンジン12pはまた、モータ50aの回転力の下で、矢印52aで示す矢印52と反対の回転方向に回転する中間ドラム42aを含むことができる。中間ドラム42aは、光伝導体ドラム42に係合して、現像された層64pを光伝導体ドラム42から受取り、その後、受取った現像済みの層64pを搬送し、層64pをベルト22に転写する。
【0054】
EPエンジン12sは、光伝導体ドラム42からベルト22まで現像済みの層64sを搬送するための同じ配置構成の中間ドラム42aを含むことができる。EPエンジン12p及び12sのためのこうした中間転写ドラム又は中間転写ベルトの使用は、所望される場合、光伝導体ドラム42をベルト22から断熱するのに有益である可能性がある。
【0055】
図4は、層溶融転写アセンブリ20のための例示的な実施形態を示す。図示するように、層溶融転写アセンブリ20は、ビルドプラットフォーム68、ニップローラ70、加熱器72及び74、溶融後加熱器76、及びエアジェット78(又は他の冷却ユニット)を含む。ビルドプラットフォーム68は、3D部品80及び支持構造82と呼ばれる3D部品及び支持構造を層ごとに印刷するための、加熱され組合された層64(又は別個の層64p及び64s)を受取るように構成されるシステム10のプラットフォームアセンブリ又はプラテンである。幾つかの実施形態において、ビルドプラットフォーム68は、印刷済みの層64を受取るための取外し可能な膜基材(図示せず)を含むことができ、取外し可能な膜基材は、任意の適した技法(例えば、真空引き、再剥離性接着剤、機械的締結具等)を使用してビルドプラットフォームに抑え留めることができる。
【0056】
ビルドプラットフォーム68は、ガントリ84によって支持され、ガントリ84は、主要な運動がx軸(破線86で示す)に沿って前後する運動である往復式長方形パターンを生成するために、z軸及びx軸に沿ってビルドプラットフォーム68を移動させるように構成されるガントリ機構である。ガントリ84は、コントローラ36からのコマンドに基づいてモータ88によって動作することができ、モータ88は、電気モータ、油圧システム、空気システム等とすることができる。
【0057】
図示する実施形態において、ビルドプラットフォーム68は、加熱要素90(例えば、電気加熱器)によって加熱可能である。加熱要素90は、Comb他の米国特許出願公開第2013/0186549号及び同第2013/0186558号において論じられるように、ビルドプラットフォーム68を、3D部品80及び/又は支持構造82の所望の平均部品温度等、室温(25℃)より高い上昇した温度に加熱しその温度に維持するように構成される。これは、ビルドプラットフォーム68が、3D部品80及び/又は支持構造82をこの平均部品温度に維持するのを補助することを可能にする。
【0058】
ニップローラ70は、例示的な加熱可能要素又は加熱可能層溶融転写要素であり、ベルト22の移動によって固定軸の周りに回転するように構成される。特に、ニップローラ70は、矢印92の方向に後表面22bに接して回転することができ、一方、ベルト22は矢印34の方向に回転する。図示する実施形態において、ニップローラ70は加熱要素94(例えば、電気加熱器)によって加熱可能である。加熱要素94は、ニップローラ70を、層64用の所望の転写温度等、室温(25℃)より高い上昇した温度に加熱しその温度に維持するように構成される。
【0059】
加熱器72は、好ましくはニップローラ70に達する前に、少なくとも部品材料及び支持材料の溶融温度等、部品材料及び支持材料の意図される転写温度に近い温度まで層64を加熱するように構成される1つ又は複数の加熱デバイス(例えば、赤外線加熱器及び/又は加熱されたエアジェット)である。各層64は、望ましくは、意図される転写温度まで層64を加熱するのに十分な滞留時間の間、加熱器72のそばを(又はその中を)通過する。加熱器74は、加熱器72と同じように機能することができ、3D部品80及び支持構造82の上面を、加熱された層64と同じ転写温度等の上昇した温度(又は、他の適した上昇した温度)まで加熱する。
【0060】
先に述べたように、支持構造82を印刷するために使用される支持材料66sは、好ましくは、3D部品80を印刷するために使用される部品材料66pの熱特性及び溶融レオロジーと同様であるか又は実質的に同じである熱特性(例えば、ガラス転移温度)及び溶融レオロジーを有する。これは、層64p及び64sの部品材料及び支持材料が、加熱器74によって実質的に同じ転写温度まで共に加熱されることを可能にし、また同様に、3D部品80及び支持構造82の上面の部品材料及び支持材料が、加熱器74によって実質的に同じ転写温度まで共に加熱されることを可能にする。そのため、部品層64p及び支持層64sは、組合された層64として、単一溶融転写ステップで3D部品80及び支持構造82の上面に共に溶融転写することができる。組合された層64を溶融転写するためのこの単一溶融転写ステップは、部品材料及び支持材料の熱特性及び溶融レオロジーを整合させることなしで実行可能であるとは思われない。
【0061】
溶融後加熱器76は、ニップローラ70から下流でかつエアジェット78から上流に位置し、溶融後ステップ又は熱硬化ステップにおいて、溶融転写済みの層を上昇した温度まで加熱するように構成される。やはり、部品材料及び支持材料の同様の熱特性及び溶融レオロジーは、溶融後加熱器76が、単一溶融後ステップにおいて、3D部品80及び支持構造82の上面を共に後加熱することを可能にする。
【0062】
3D部品80及び支持構造82を印刷する前に、ビルドプラットフォーム68及びニップローラ70は、それらの所望の温度まで加熱することができる。例えば、ビルドプラットフォーム68は、(部品材料及び支持材料の溶融レオロジーが近いため)3D部品80及び支持構造82の平均部品温度まで加熱することができる。比較すると、ニップローラ70は、(同様に、部品材料及び支持材料の熱特性及び溶融レオロジーが類似するため)層64の所望の転写温度まで加熱することができる。
【0063】
印刷動作中、ベルト22は、加熱器72を通過して層64を搬送し、加熱器72は、層64及びベルト22の関連する領域を転写温度まで加熱することができる。部品材料及び支持材料のための適した転写温度は、部品材料及び支持材料のガラス転移温度を超える温度であって、好ましくは同様であるか又は実質的に同じであり、また、層64の部品材料及び支持材料が軟化するが溶融しない温度(例えば、ABS部品材料の場合、約140℃〜約180℃の範囲の温度)を含む。
【0064】
図4に更に示すように、動作中、ガントリ84は、ビルドプラットフォーム68(3D部品80及び支持構造82を有する)を往復式長方形パターン86で移動させることができる。特に、ガントリ84は、ビルドプラットフォーム68を、加熱器74の下で、加熱器74に沿って、又は加熱器74の中をx軸に沿って移動させることができる。加熱器74は、部品材料及び支持材料の転写温度等の上昇した温度まで3D部品80及び支持構造82の上面を加熱する。Comb他の米国特許出願公開第2013/0186549号及び同第2013/0186558号において論じられるように、加熱器72及び74は、層64並びに3D部品80及び支持構造82の上面をほぼ同じ温度まで加熱して、一貫性のある溶融転写界面温度を提供することができる。代替的に、加熱器72及び74は、層64並びに3D部品80及び支持構造82の上面を異なる温度まで加熱して、所望の溶融転写界面温度を達成することができる。
【0065】
ベルト22の継続した回転及びビルドプラットフォーム68の移動は、x軸に沿って適切に位置合わせされた状態で、加熱された層64を3D部品80及び支持構造82の加熱された上面に整列させる。ガントリ84は、矢印34の方向にベルト22の回転速度と同期する速度(すなわち、同じ方向及び速度)でx軸に沿ってビルドプラットフォーム68を移動させ続けることができる。これは、ベルト22の後表面22bをニップローラ70の周りに回転させて、3D部品80及び支持構造82の上面に接してベルト22及び加熱された層64を挟む。これは、加熱された層64をニップローラ70の場所で3D部品80及び支持構造82の加熱された上面に押付け、そのことが、加熱された層64を3D部品80及び支持構造82の上部層に少なくとも部分的に溶融転写させる。
【0066】
溶融転写済みの層64がニップローラ70のニップを通過するとき、ベルト22は、ニップローラ70に巻付き、ビルドプラットフォーム68から離れ係脱する。これは、溶融転写済みの層64をベルト22から剥離させるのを補助し、溶融転写済みの層64が3D部品80及び支持構造82に付着したままになることを可能にする。溶融転写界面温度を部品材料及び支持材料のガラス転移温度より高いがそれらの溶融温度より低い転写温度に維持することは、加熱された層64が、3D部品80及び支持構造82に付着するのに十分に熱く、一方、同様に、ベルト22から容易に剥離するのに十分に冷たくなることを可能にする。さらに、先に論じたように、部品材料及び支持材料の同様の熱特性及び溶融レオロジーは、加熱された層64が、同じステップで溶融転写されることを可能にする。
【0067】
剥離後、ガントリ84は、ビルドプラットフォーム68をx軸に沿って溶融後加熱器76まで移動させ続ける。溶融後加熱器76において、3D部品80及び支持構造82の一番上の層(溶融転写済みの層64を含む)は、その後、溶融後ステップ又は熱硬化ステップにおいて少なくとも部品材料及び支持材料の溶融温度まで加熱することができる。これは、溶融転写済みの層64の部品材料及び支持材料を極めて溶融可能な状態に溶融させ、それにより、溶融転写済みの層64のポリマー分子が迅速に相互拡散して、3D部品80及び支持構造82との高いレベルの界面の絡み合いを達成する。
【0068】
さらに、ガントリ84がビルドプラットフォーム68をx軸に沿って溶融後加熱器76を通過してエアジェット78まで移動させ続けるため、エアジェット78は、3D部品80及び支持構造82の上部層に向けて冷却用空気を吹付ける。これは、Comb他の米国特許出願公開第2013/0186549号及び同第2013/0186558号において論じられるように、溶融転写済みの層64を平均部品温度まで積極的に冷却する。
【0069】
3D部品80及び支持構造82を平均部品温度に保つのを補助するため、幾つかの好ましい実施形態において、加熱器74及び/又は溶融後加熱器76は、3D部品80及び支持構造82の一番上の層だけを加熱するように動作することができる。例えば、加熱器72、74、及び76が赤外線放射を放出するように構成される実施形態において、3D部品80及び支持構造82は、一番上の層内への赤外線波長の侵入に抵抗するように構成される吸熱剤及び/又は他の着色剤を含むことができる。代替的に、加熱器72、74、及び76は、3D部品80及び支持構造82の上面にわたって加熱空気を吹付けるように構成することができる。いずれの場合も、3D部品80及び支持構造82内への熱侵入を制限することは、一番上の層が十分に溶融転写されることを可能にし、一方、同様に、3D部品80及び支持構造82を平均部品温度に保つために必要とされる冷却量を減少させる。
【0070】
ガントリ84は、その後、ビルドプラットフォーム68を下方に動かし、ビルドプラットフォーム68を、往復式長方形パターン86をたどりながらx軸に沿って開始位置に戻すことができる。ビルドプラットフォーム68は、望ましくは、次の層64と適切に位置合わせするため開始位置に達する。幾つかの実施形態において、ガントリ84はまた、次の層64と適切に位置合わせするためビルドプラットフォーム68及び3D部品80/支持構造82を上方に動かすことができる。その後、同じプロセスを、3D部品80及び支持構造82の残りの各層64について繰返すことができる。
【0071】
幾つかの好ましい実施形態において、結果として得られる3D部品80は、
図4に示すような支持構造82内に横に(すなわち、ビルドプラテンに対して水平に)入れられる。これは、往復式ビルドプラテン68及びニップローラ70を使用しながら、3D部品80について良好な寸法完全性及び表面品質を提供すると思われる。
【0072】
印刷動作が終了した後、結果として得られる3D部品80及び支持構造82は、システム10から取り出され、1つ又は複数の印刷後動作を受けることができる。例えば、本開示の支持材料から得られる支持構造82は、水溶液(例えば、アルカリ水溶液)を使用すること等によって3D部品80から犠牲的に取除くことができる。この好ましい可溶性技法の下で、支持構造82は、溶液内で少なくとも部分的に溶解し、支持構造82をハンズフリー方法で3D部品80から分離することができる。
【0073】
比較すると、ABS部品材料等の部品材料は、アルカリ水溶液に化学耐性がある。これは、アルカリ水溶液の使用が、3D部品80の形状又は品質を劣化させることなく、犠牲支持構造82を取除くために使用されることを可能にする。こうした方法で支持構造82を取除くための適したシステム及び技法の例は、Swanson他の米国特許第8,459,280号、Hopkins他の米国特許第8,246,888号、及びDunn他の米国特許出願公開第2011/0186081号に開示されるものを含み、それらのそれぞれは、本開示と競合しない程度に引用することにより本明細書の一部となる。
【0074】
さらに、支持構造82が取除かれた後、3D部品80は、表面処理プロセス等の1つ又は複数の更なる印刷後プロセスを受ける場合がある。適した表面処理プロセスの例は、Priedeman他の米国特許第8,123,999号及びZinnielの米国特許出願公開第2008/0169585号に開示されるプロセスを含む。
【0075】
上記で簡潔に述べられているように、本開示の支持材料は、熱可塑性コポリマー、荷電制御剤、並びに任意に吸熱剤(例えば、赤外線吸収剤)及び/又は1つ又は複数の更なる材料、例えば流動制御剤を含む。また、支持材料は、電子写真方式の付加製造システム(例えば、システム10)において使用するのに競合する因子のバランスを取るとともに、3D部品から除去するために水溶液(例えば、アルカリ水溶液)に可溶性となるように開発されている。
【0076】
支持材料の熱可塑性コポリマーは、好ましくは1つ又は複数のエチレン性不飽和芳香族モノマー(例えば、スチレン)、1つ又は複数のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び1つ又は複数の(メタ)アクリル酸モノマーを含むモノマーから重合され、1つ又は複数の(メタ)アクリル酸モノマー由来のカルボン酸基が、可能な限り完全に無水物基ヘと転化されるのが好ましい。
【0077】
エチレン性不飽和芳香族モノマーの例は、以下の構造を有する:
【化1】
(ここで、幾つかの実施形態において、式1の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基又はエーテル基等の1つ又は複数のオプションの低原子量基で独立して置換されていてもよい)。さらに、幾つかの実施形態において、エチレン性不飽和基及び芳香族基は、炭素数1〜8の炭化水素又はエーテル結合等のオプションの鎖結合によって分離されていてもよい。
【0078】
幾つかの更なる実施形態では、芳香族基の1つ又は複数の水素原子が独立して、1つ又は複数の任意の低原子量基、例えば炭素数1〜3のアルキル基又はエーテル基で置換されていてもよい。芳香族モノマーはエチレン性不飽和ビニル基が芳香族基から直接伸びている上記式1に示される構造(すなわち、スチレン)を含むのがより好ましい。芳香族モノマーは得られるコポリマーのガラス転移温度を上昇させ、硬いポリマーをもたらす。
【0079】
例となるアルキル(メタ)アクリレートモノマーは下記構造:
【化2】
(式中、R
1は炭素数1〜8(より好ましくは炭素数2〜5)の炭化水素鎖であり、R
2は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基若しくはエーテル基(より好ましくは水素原子)である)を有する。さらに、幾つかの実施形態では、エチレン性不飽和基とカルボニル基とが、炭素数1〜8の炭化水素又はエーテル結合等の任意の鎖結合によって分離されていてもよい。
【0080】
アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、エチレン性不飽和ビニル基がカルボニル基から直接伸びている上記式2に示される構造を含むのがより好ましく、R
1が炭素数2〜5の炭化水素であり、R
2が水素原子である上記式2に示される構造(例えばブチルアクリレート等のアルキルアクリレート)を含むのが最も好ましい。アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、得られるコポリマーのガラス転移温度を低くする一方、軟らかいポリマー及び弾性をもたらす性質がある。
【0081】
例となる(メタ)アクリル酸モノマーは、下記構造:
【化3】
(式中、R
3は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基若しくはエーテル基(より好ましくはメチル基等のアルキル基)である)を有する。さらに、幾つかの実施形態では、エチレン性不飽和基とカルボン酸基とが、炭素数1〜8の炭化水素又はエーテル結合等の任意選択的な鎖結合によって分離されていてもよい。その最も単純な形態では、「カルボン酸基」という用語は−C(O)OHカルボキシル基を指す。
【0082】
(メタ)アクリル酸モノマーは、エチレン性不飽和ビニル基がカルボン酸基から直接伸びている上記式3に示される構造を含むのがより好ましく、R
3がメチル基である上記式3に示される構造(すなわちメタクリル酸)を含むのが最も好ましい。また、(メタ)アクリル酸モノマーは得られるコポリマーのガラス転移温度を上昇させるとともに、得られるコポリマーに水溶性を与える。
【0083】
熱可塑性コポリマーの重合は、ジベンゾイルペルオキシド等の任意の好適な重合開始剤を用いたモノマーのフリーラジカル重合反応によって行うことができる。重合は、完全に非晶質なランダムコポリマーが確実に形成されるように溶液中にて行うのが好ましい。例えば重合反応は、モノマー成分を好適なキャリア溶媒(例えば、エタノール)と一緒に反応槽に投入することにより行うことができる。反応槽を不活性ガス(例えば、窒素)にてパージして、反応温度(例えば、約80℃〜約85℃)まで加熱するのが好ましい。次いで、重合開始剤を反応槽に、好ましくは別個の分割用量(sub-doses)にて導入して、発熱重合反応により過剰な溶媒の沸騰が起こるまで反応温度が上昇するのを防ぐことができる。
【0084】
例えば、重合開始剤を3回の別個のステップにて添加して、各添加間で好適な期間(例えば、2時間)重合反応を進行させてもよい。この実施形態では、重合開始剤の1回目の添加は添加する重合開始剤の総重量の約50重量%〜約70重量%の範囲であるのが好ましい。それに応じて、重合開始剤の2回目の添加は添加する重合開始剤の総重量の約20重量%〜約30重量%の範囲であるのが好ましく、重合開始剤の3回目の添加は添加する重合開始剤の総重量の約5重量%〜約25重量%の範囲であるのが好ましい。
【0085】
添加する重合開始剤の総量、及び別個の添加における相対量を調整することで、得られる熱可塑性コポリマーの分子量を制御することができることが見出されている。したがって、支持材料がABS部品材料を補うことを目的とする好ましい実施形態では、添加する重合開始剤の総重量に対して、重合開始剤の1回目の添加は約63重量%〜約67重量%の範囲であり、重合開始剤の2回目の添加は約23重量%〜約27重量%の範囲であり、重合開始剤の3回目の添加は約9重量%〜約13重量%の範囲である。重合開始剤に関するこの好ましい実施形態は、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸のモノマーと組み合わせるのが更に好ましい。
【0086】
重合が完了した後、得られる粘性コポリマー溶液を溶媒(例えば、エタノール)で希釈し、室温まで冷却させ得る。次に、コポリマー溶液を激しく撹拌しながら非溶媒(例えば、シクロヘキサン)へと析出させ、溶媒を得られる熱可塑性コポリマーから分離し得る。次いで、熱可塑性コポリマーを高温(例えば、100℃)にて好適な期間、真空乾燥させた後、回収し得る。
【0087】
この重合反応により、モノマーのモル比が望ましく、好ましくは分子量が制御されたモノマー単位を有する熱可塑性コポリマーが生成される。熱可塑性コポリマーを生成するのに用いられるエチレン性不飽和芳香族モノマーは、熱可塑性コポリマーを生成するのに用いられるモノマーの全重量に対して約25重量%〜約50重量%、より好ましくは約30重量%〜約40重量%、更に好ましくは約32重量%〜約36重量%を構成し得る。
【0088】
熱可塑性コポリマーを生成するのに用いられるアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、熱可塑性コポリマーを生成するのに用いられるモノマーの全重量に対して約15重量%〜約35重量%、より好ましくは約20重量%〜約30重量%、更に好ましくは約22重量%〜約28重量%を構成し得る。熱可塑性コポリマーを生成するのに用いられる(メタ)アクリル酸モノマーは、熱可塑性コポリマーを生成するのに用いられるモノマーの全重量に対して約30重量%〜約50重量%、より好ましくは約35重量%〜約45重量%、更に好ましくは約38重量%〜約43重量%を構成し得る。
【0089】
幾つかの実施形態において、熱可塑性コポリマーを重合するために使用されるモノマーは、1つ又は複数の更なるモノマー化合物を含むことができ、そのモノマー化合物は、好ましくは、熱可塑性コポリマーの強度、化学特性、又は熱特性から大幅に落とさせない。例えば、熱可塑性コポリマーは、コポリマー骨格用の鎖伸長単位(例えば、エチレン単位)として機能するモノマーを含むことができる。
【0090】
したがって、更なるモノマーは合わせて、熱可塑性コポリマーを生成するのに用いられるモノマーの全重量に対して0重量%〜約10重量%を構成し得る。或る実施形態では、更なるモノマーは、熱可塑性コポリマーを生成するのに用いられるモノマーの全重量に対して約0.1重量%〜約5重量%を構成し得る。そのため、熱可塑性コポリマーを重合するのに用いられるモノマーの残りは、上で述べられたエチレン性不飽和芳香族モノマー、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び(メタ)アクリル酸モノマーからなる。
【0091】
他の好ましい実施形態では、熱可塑性コポリマーを重合するのに用いられるモノマーは、エチレン性不飽和芳香族モノマー、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び(メタ)アクリル酸モノマーから本質的に又は完全になる。より好ましい実施形態では、可溶性コポリマーを重合するのに用いられるモノマーはスチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸から本質的に又は完全になる。
【0092】
上で述べられたモノマーからフリーラジカル重合反応により合成される重合された熱可塑性コポリマーが、モノマーからコポリマーへの非常に高い転化率にて得られるコポリマーの高い収率をもたらす。さらに、(メタ)アクリル酸モノマー由来のカルボン酸基は通例、影響を受けずに、ペンダント基としてコポリマー骨格から伸びる。そのため、この段階での熱可塑性コポリマーは「酸形態」と称することができる。
【0093】
しかしながら、この酸形態の熱可塑性コポリマーは熱的に安定ではない。約180℃を超えて加熱することで、ペンダントカルボン酸基は分子内にて無水物基へと容易に転化され、この無水物転化が起こる程度は熱可塑性コポリマーに沿ったモノマー単位配置、及び加熱する温度に依存する。
【0094】
理解されるように、電子写真方式の付加製造システムにおける層溶融転写中に支持材料がこの温度を超えて急速加熱することがある。そのため、支持材料における熱可塑性コポリマーが、無水物基へと転化する可能性がある相当数のカルボン酸基を保持する場合、層溶融転写ステップでは、支持構造(例えば、支持構造82)の層を印刷するのと同時に、不要な無水物転化が開始される場合がある。残念なことに、無水物転化は水蒸気形態の水分子の同時発生も引き起こす。これにより、溶融転写ステップ中に加熱した支持材料の起泡及び発泡が起こり、サポート層の歪曲及び連続した3D印刷プロセス全体の不良が引き起こされる可能性がある。
【0095】
そのため、この問題を避けるために、酸形態の熱可塑性コポリマーを加熱して、カルボン酸基の無水物基への転化を最大(又は実質的に最大)にすることにより、「無水物形態」の熱可塑性コポリマーを提供するのが好ましい。熱可塑性コポリマーを加熱するのに適した温度は、約160℃〜約230℃、より好ましくは約180℃〜約230℃の範囲である。加熱期間は温度に応じて変わることがあり、例えば約230℃の温度では30分超である。
【0096】
熱可塑性コポリマーは通例、加熱時に100%のカルボン酸基を無水物基に転化させることはできず、またこのことは層溶融転写ステップ中に起泡及び発泡を防ぐのに必要なものでもない。正しくは、コポリマー鎖の骨格に沿って互いに隣接するモノマー単位におけるカルボン酸基のみを無水物環構造へと分子内転化することが可能である。これに対して、コポリマー鎖の骨格に沿ってカルボン酸基を含有する別のモノマー単位とは隣接していない(すなわち、エチレン性不飽和芳香族モノマー単位及び/又はアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位間に位置している)モノマー単位におけるカルボン酸基は、隣接する芳香族基及び/又は(メタ)アクリレート系エステル基による立体障害を受け、通例分子内にて無水物構造を形成することはできない。
【0097】
例えば、エチレン性不飽和芳香族モノマー、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び(メタ)アクリル酸モノマーを重合させ、下記構造を有する「酸形態」の熱可塑性コポリマーを生成することができる:
【化4】
【0098】
カルボン酸基を無水物基へと転化する上で述べられた加熱ステップを受けると、式4に示されたコポリマーが反応して、水の同時発生とともに、下記構造を有する「無水物形態」の熱可塑性コポリマーが生成される:
【化5】
【0099】
このことはエチレン性不飽和芳香族モノマーがスチレンであり、アルキル(メタ)アクリレートモノマーがブチルアクリレートであり、(メタ)アクリル酸モノマーがメタクリル酸である実施例により更に説明することができる。この実施例では、式4の熱可塑性コポリマー及び式5の熱可塑性コポリマーはそれぞれ、下記構造を有する:
【化6】
【化7】
【0100】
式5及び式7のそれぞれの熱可塑性コポリマーに示されるように、互いに隣接するモノマー単位におけるカルボン酸基のみが転化を受け、6員の無水物環構造を生成する。これに対して、(メタ)アクリレート系エステル基と芳香族基との間に位置する、式5及び式7のそれぞれにおける隔離されたカルボン酸基は未反応のままである。
【0101】
無水物転化の程度は、用いられる特定のモノマー比、より特には総モノマー濃度に対する(メタ)アクリル酸モノマー(複数の場合もあり)の濃度に応じて変わり得る。上記で述べられた実施形態については、無水物基へと転化するカルボン酸基の最大量は通例、無水物転化前のコポリマーにおけるカルボン酸基の初期数に対して約60%〜約65%の範囲である。これに対して、押出し方式の付加製造法についての支持材料に用いられる可溶性の熱可塑性コポリマーは通例、最大無水物転化が大幅に低く、例えば約40%〜約45%である。
【0102】
「最大無水物転化」という用語は、分子内無水物基を生成することができる、熱可塑性コポリマーにおける全てのカルボン酸基を実際に無水物基へと転化する際の転化を指す。そのため幾つかの実施形態では、本開示の支持材料用の熱可塑性コポリマーは、最大無水物転化の90%を超える、より好ましくは95%を超える、更に好ましくは99%を超える、最も好ましくは100%の無水物転化を有する。例えば、最大無水物転化がカルボン酸基の初期数に対して65%である場合の最大無水物転化の95%の転化は、カルボン酸基の初期数の約62%が無水物基へと転化されることを意味する。
【0103】
無水物転化は通例、無水物転化前の酸形態の熱可塑性コポリマーと比較して、熱可塑性コポリマーのガラス転移温度の大幅な減少を伴う。例えば、上記で述べられたモノマーについて、酸形態の熱可塑性コポリマーのガラス転移温度は、約140℃〜約150℃、より典型的には約143℃〜約148℃の範囲であり得る。これに対して、無水物転化後の無水物形態の同じ熱可塑性コポリマーのガラス転移温度は、約100℃〜約115℃、より典型的には約105℃〜約110℃の範囲であり得る。
【0104】
このことは、下記の分子量試験によって求められるコポリマーの分子量の減少にも見ることができる。例えば、上記で述べられたモノマーについて、酸形態の熱可塑性コポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約60,000〜約120,000、より好ましくは約65,000〜約90,000、更に好ましくは約70,000〜約75,000の範囲であり得る。数平均分子量(Mn)に関しては、上記で述べられたモノマーについて、酸形態の熱可塑性コポリマーの数平均分子量は、約28,000〜約60,000、より好ましくは約30,000〜約40,000、更に好ましくは約31,000〜約36,000の範囲であり得る。好適なMw/Mn比は約2.00〜約2.20の範囲である。
【0105】
これに対して、無水物転化後の無水物形態の同じ熱可塑性コポリマーの重量平均分子量(Mw)は約3,000〜4,000未満であり得る。これは無水物転化前の酸形態の同じ熱可塑性コポリマーと比較して熱可塑性コポリマーの熱特性及び溶融粘度の大幅な低減に対応するものである。上記で述べられているように、支持構造82を印刷するのに用いられる支持材料は、3D部品80を印刷するのに用いられる部品材料と同様の又は実質的に同じ熱特性(例えば、ガラス転移温度)及び溶融レオロジーを有するのが好ましい。これにより、加熱器74を用いて部品の層64p及び支持材料の層64sを実質的に同じ転移温度まで同時に加熱することが可能となり、更に加熱器74を用いて3D部品80及び支持構造82の上面にある部品及び支持材料を実質的に同じ温度まで共に加熱することが可能となる。このようにして、部品層64p及びサポート層64sを単一の溶融転写ステップにて複合層64として3D部品80及び支持構造82の上面にともに溶融転写することができる。
【0106】
このため、所望の部品材料(例えば、ABS部品材料)との適合性のために本開示の支持材料を設計する際、無水物転化に起因する熱可塑性コポリマーのこの熱特性及び溶融レオロジーの低下は、熱可塑性コポリマーを生成する重合プロセス中に確認される。特に更に下記で述べられているように、熱可塑性コポリマーは、分子量変化を伴い重合して、上記で述べられたABS部品材料等の所望の部品材料と同様の又は実質的に同じ所望のガラス転移温度及び溶融レオロジープロファイルを達成することができることが見出されている。
【0107】
支持材料の熱可塑性コポリマー(及び支持材料自体)のガラス転移温度は、部品材料のガラス転移温度の約10℃以内、より好ましくは約5℃以内であるのが好ましく、ここでガラス転移温度は下記のガラス転移温度試験に従って求められる。さらに、熱可塑性コポリマー(及び支持材料自体)の180℃、190℃及び200℃での動粘度はそれぞれ、部品材料についての各動粘度の約10キロパスカル秒以内、より好ましくは約5キロパスカル秒以内、更に好ましくは約2キロパスカル秒以内であるのが好ましく、ここで動粘度は下記の溶融レオロジー試験に従って求められる。
【0108】
例えば、Martinの米国特許出願公開第13/944,472号に開示されているABS部品材料等のABS部品材料を補うのに使用される場合、熱可塑性コポリマー(及び支持材料自体)の好ましいガラス転移温度は、約100℃〜約115℃、より好ましくは約105℃〜約110℃の範囲である。幾つかの実施形態では、支持材料コポリマーのガラス転移温度は約106℃〜約108℃の範囲とすることができる。熱可塑性コポリマー(及び支持材料自体)に適した動粘度は、180℃で約17キロパスカル秒〜約24キロパスカル秒の範囲、190℃で約6キロパスカル秒〜約10キロパスカル秒の範囲、200℃で約3.5キロパスカル秒〜約4.5キロパスカル秒の範囲である。
【0109】
製造プロセスの商業的可能性を高めるために、熱可塑性コポリマーを重合溶媒(例えば、エタノール)から単離するのが好ましい。例えば、重合プロセスが完了した後、コポリマー溶液を、溶媒を微量の残留モノマーとともに蒸発して、完全に除去させるために、部分真空下において約200℃〜約230℃に加熱することができる。これにより更に、コポリマー粉末を作製するのに要求される更なる必要な粒度低減法のために押出しペレット化することができるコポリマー溶融物がもたらされる。
【0110】
さらに、溶媒を再利用して、本開示の支持材料を作製するのにかかる材料コストを削減するのが好ましい。例えば、重合プロセスが完了した後、溶媒(例えば、エタノール)を続く重合プロセスに使用するために蒸留及び回収することができる。
【0111】
さらに、幾つかの好ましい実施形態では、溶媒の単離と上記で述べられた無水物転化とを同じステップにて行うことができる。例えばコポリマー溶液を、温度を上げながら複数の段階にて加熱することができる。初期段階(複数の場合もあり)(例えば、約200℃〜約220℃)を溶媒の蒸発及び除去に用い、後の段階(複数の場合もあり)(例えば、約230℃)を無水物転化に用いることができる。このプロセスは、例えばENTEX Rust & Mitschke GmBH(ドイツ、ボーフム)から「ENTEX」Planetary Roller Extruderデバイスという商標で市販されているポリマー単離デバイスを用いた、続くペレット化、造粒、微粒子化、及び/又は分級のためのストランド形態の熱可塑性コポリマーの押出しと組み合わせることもできる。
【0112】
先に述べたように、支持材料は、支持構造(例えば、支持構造82)を印刷するためEP方式の付加製造システム(例えば、システム10)において使用するために設計される。したがって、支持材料はまた、EPエンジン12sによって層を現像するのを補助するための、現像された層をEPエンジン12sから層溶融転写アセンブリ20に転写するのを補助するための、また、層溶融転写アセンブリ20によって現像された層を溶融転写するのを補助するための1つ又は複数の材料を含むことができる。
【0113】
例えば、システム10による電子写真プロセスにおいて、支持材料は、好ましくは、現像ステーション58におけるキャリア粒子による摩擦接触帯電メカニズムを通して摩擦帯電される。支持材料のこの帯電は、その摩擦帯電量/質量(Q/M)比によって言及することができ、Q/M比は、正電荷又は負電荷である場合があり、また、所望の大きさを有する。Q/M比は、支持材料の粉末密度に反比例し、粉末密度は、単位面積当たりの質量(M/A)値によって言及される可能性がある。所与の印加される現像電界について、支持材料のQ/M比の値が所与の値から増加するにつれて、支持材料のM/A値が減少する、またその逆も同様である。そのため、部品材料のそれぞれの現像済みの層の粉末密度は、支持材料のQ/M比の関数である。
【0114】
有効でかつ信頼性のある、現像ドラム44上への支持材料の現像及び(例えば、ベルト22による)層溶融転写アセンブリ20への転写を実現するため、また、良好な材料密度で支持構造82を印刷するため、支持材料は、好ましくは、EPエンジン12s及びベルト22の特定のアーキテクチャについて適したQ/M比を有することが見出された。さらに、部品材料と支持材料とがともに(例えば、複合層64として)ベルト22によって層溶融転写アセンブリ20へと転写されるのが好ましいことから、部品材料及び支持材料は同様の又は実質的に同じQ/M比を有するのが好ましい。
【0115】
したがって、支持材料は、部品材料のQ/M比と同じ符号(すなわち、負又は正)のQ/M比を有するのが好ましく、また好ましくは部品材料のQ/M比の約10マイクロクーロン/グラム(μC/g)以内、より好ましくは約5μC/g以内、更に好ましくは約3μC/g以内であり、ここでQ/M比は下記の摩擦帯電試験に従って求められる。支持材料についての好ましいQ/M比の例は、約−5マイクロクーロン/グラム(μC/g)〜約−50μC/g、より好ましくは約−10μC/g〜約−40μC/g、また更により好ましくは約−15μC/g〜約−35μC/g、また更により好ましくは約−25μC/g〜約−30μC/gの範囲にある。
【0116】
この先に述べた実施形態において、Q/M比は、負の摩擦帯電に基づく。しかし、代替の実施形態において、システム10は、支持材料のQ/M比が、先に論じた大きさを有する正の摩擦帯電を有するように動作することができる。いずれの実施形態においても、Q/M比のこれらの大きさは、キャリア表面に支持材料を拘束する静電力が過剰になり過ぎることを防止し、任意のレベルの「誤った符号(wrong sign)」の粉末が最小にされる。これは、EPエンジン12sにおける支持材料の現像の非効率性を減少させ、所望のM/A値を持って各層64sの現像及び転写を容易にする。
【0117】
さらに、支持構造82の一貫した材料密度が所望される場合、所望のQ/M比(及び対応するM/A値)は、好ましくは、システム10による全体的な印刷動作中、安定レベルに維持される。しかし、システム10による長時間にわたる印刷動作にわたって、EPエンジン12sの現像ステーション58に、更なる量の支持材料を補充する必要がある場合がある。これは、補充のために現像ステーション58に更なる量の支持材料を導入するとき、支持材料が、キャリア粒子と混合されるまで最初に非帯電状態にあるため、問題を呈する可能性がある。したがって、支持材料はまた、好ましくは、迅速な速度で所望のQ/M比に帯電して、システム10による連続印刷動作を維持する。
【0118】
したがって、印刷動作の始動中にまた印刷動作の継続期間全体にわたってQ/M比を制御し維持することは、支持材料のM/A値についての結果として得られる速度及び一貫性を制御することになる。延長した印刷動作にわたって所望のQ/M比、したがって所望のM/A値を再現性よくかつ安定して達成するため、支持材料は、好ましくは、1つ又は複数の荷電制御剤を含み、荷電制御剤は、支持材料の製造プロセス中に熱可塑性コポリマーに添加することができる。例えば、荷電制御剤を熱可塑性コポリマーと溶融ブレンドした後に、ブレンドした材料を造粒、微粒子化、及び/又は分級に供することができる。
【0119】
支持材料のQ/M比が負電荷を有する実施形態において、支持材料において使用するための適した荷電制御剤は、酸金属錯体(例えば、クロム、亜鉛、及びアルミニウムのオキシカルボン酸錯体)、アゾ金属錯体(例えば、クロムアゾ錯体及び鉄アゾ錯体)、その混合物、及び同様なものを含む。
【0120】
代替的に、支持材料のQ/M比が正電荷を有する実施形態において、支持材料において使用するための適した荷電制御剤は、アジン系化合物、及び第4級アンモニウム塩、その混合物、及び同様なものを含む。これらの薬剤は、適切なキャリア粒子に接して摩擦接触帯電されるときに熱可塑性コポリマーを正に帯電するのに有効である。
【0121】
荷電制御剤は、好ましくは、支持材料の全重量に対して、支持材料の約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約2重量%、また更により好ましくは約0.75重量%〜約1.5重量%を構成する。先に論じたように、これらの荷電制御剤は、好ましくは、キャリアに対して支持材料の熱可塑性コポリマーの帯電速度を増加させ、システム10による印刷動作の延長した連続期間にわたってQ/M比を安定化させる。
【0122】
多くの状況において、システム10は、印刷動作の継続期間にわたって実質的に一貫性のある材料密度で層64sを印刷する。制御されかつ一貫性のあるQ/M比を有する支持材料を有することは、これが達成されることを可能にする。しかし、一部の状況において、同じ印刷動作において、種々の層64s間で材料密度を調整することが望ましい場合がある。例えば、システム10は、支持構造82の1つ又は複数の部分について、所望である場合、材料密度が減少した状態で、グレースケール方法でランするように動作することができる。
【0123】
荷電制御剤を組込むことに加えて、EPエンジン12sの効率的な動作のため、また、支持材料の補充中に高速でかつ効率的な摩擦帯電を保証するため、支持材料の混合物は、好ましくは、良好な粉末流動特性を示す。これは、支持材料がオーガ、重力、又は他の同様のメカニズムによって現像ステーション58の現像サンプ(例えば、ホッパ)内に給送され、そこで、支持材料がキャリア粒子との混合及び摩擦接触帯電を受けるため好ましい。
【0124】
理解されるように、補充給送中の支持材料の閉塞又は流動制限は、キャリア粒子への支持材料の供給を妨げる可能性がある。同様に、支持材料の複数の部分が現像ステーション58内の隠れたキャビティ内で詰まるべきでない。これらの状況のそれぞれは、支持材料とキャリア粒子との比を変える可能性があり、その比は、先に論じたように、帯電した支持材料について所望のQ/M比を提供するため一定レベルに維持されることが好ましい。
【0125】
例えば、支持材料は、支持材料及びキャリア粒子の組合せた重量に対して約1重量%〜約30重量%、より好ましくは約5重量%〜約20重量%、また更により好ましくは約5重量%〜約10重量%を構成することができる。キャリア粒子は、相応して組合せた重量の残りを構成する。
【0126】
支持材料の粉末流動特性は、無機酸化物等の1つ又は複数の流動制御剤の使用によって改善されるか又はその他の方法で変更される可能性がある。適した無機酸化物の例は、ヒュームドシリカ、ヒュームドチタニア、ヒュームドアルミナ、その混合物、及び同様なもの等の疎水性ヒュームド無機酸化物を含み、ヒュームド酸化物は、シラン及び/又はシロキサン処理プロセスによって疎水性にすることができる。支持材料において使用するための市販の無機酸化物の例は、Evonik Industries AG(独国、エッセン所在)からの商標「AEROSIL」の下の材料を含む。
【0127】
流動制御剤(例えば、無機酸化物)は、好ましくは、支持材料の全重量に対して、支持材料の約0.1重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約5重量%、また更により好ましくは約0.3重量%〜約1.5重量%を構成する。流動制御剤を製造プロセスにおける任意の好適なポイントにて熱可塑性コポリマー及び荷電制御剤に導入して、支持材料を作製することができる。例えば、ブレンドした熱可塑性コポリマーを1つ又は複数の外部の流動制御剤と高速及び高剪断のサイクロン式混合機にて、好ましくは25℃で更に乾式ブレンドすることができる。これにより、粒度又は粒度分布を大きく変えることなく、流動制御剤(複数の場合もあり)が、ブレンドした熱可塑性コポリマーの個々の粒子に均一に分配、被覆、及び部分的に組み込まれる。
【0128】
先に論じたように、1つ又は複数の荷電制御剤は、EPエンジン12sにおいて支持材料層を現像し、現像した層(例えば、層64)を(例えば、ベルト22によって)層溶融転写アセンブリ20に転写させるために、支持材料コポリマーを所望のQ/M比に帯電させるのに適する。しかし、3D環境における複数の印刷済みの層は、所与の数の層が印刷された後に支持材料の静電転写を効果的に防止する。代わりに、層溶融転写アセンブリ20は、熱及び圧力を利用して、溶融転写ステップにおいて現像した層を共に溶融転写する。
【0129】
特に、加熱器72及び/又は74は、ニップローラ70に達する前に、層64並びに3D部品80及び支持構造82の上面を、少なくとも部品及び支持材料の溶融温度等の部品及び支持材料の意図される転写温度に近い温度に加熱することができる。同様に、溶融後加熱器76は、ニップローラ70の下流でかつエアジェット78の上流に位置し、溶融後ステップ又は熱硬化ステップにおいて、溶融転写済みの層を上昇した温度に加熱するように構成される。
【0130】
したがって、支持材料はまた、1つ又は複数の吸熱剤を含むことができ、1つ又は複数の吸熱剤は、加熱器72、加熱器74、及び/又は溶融後加熱器76に曝されると、支持材料が加熱される速度を増加させるように構成される。例えば、加熱器72、74、及び76が赤外線加熱器である実施形態において、支持材料で使用される吸熱剤(複数の場合もあり)は、1つ又は複数の赤外線(近赤外線を含む)波長吸収材料であるとすることができる。赤外光の吸収は、支持材料内で熱を生成させるエネルギーの無放射減衰を粒子内で起こさせる。
【0131】
支持材料において使用するための適した赤外線吸収材料は、支持材料の所望の色に応じて変動する場合がある。適した赤外線吸収材料の例は、カーボンブラック(支持材料用の黒色顔料としても機能することができる)、並びに、約650ナノメートル(nm)〜約900nmの範囲にある波長における吸収を示すもの、約700nm〜約1,050nmの範囲にある波長における吸収を示すもの、及び約800nm〜約1,200nmの範囲にある波長における吸収を示すもの等の種々のクラスの赤外線吸収顔料及び染料を含む。これらの顔料及び染料クラスの例は、アントラキノン染料、ポリシアニン染料、金属ジチオレン染料及び顔料、トリスアミニウム染料、テトラキスアミニウム染料、その混合物、並びに同様なものを含む。
【0132】
赤外線吸収材料はまた、好ましくは、熱可塑性コポリマーのゼロせん断粘度対温度プロファイル等の支持材料の熱可塑性コポリマーの溶融レオロジーを大幅に強化しないか又はそうでなければ変更しない。例えば、これは、熱可塑性コポリマーに比べて低い濃度で、非強化タイプのカーボンブラック又は「低構造(low structure)」タイプのカーボンブラックを使用して達成される可能性がある。したがって、支持材料についての適した動粘度は、180℃、190℃、及び200℃の熱可塑性コポリマーについて先に論じた動粘度を含む。
【0133】
したがって、吸熱剤を組込む実施形態において、吸熱剤(例えば、赤外線吸収剤)は、好ましくは、支持材料の全重量に対して、支持材料の約0.5重量%〜約10重量%、より好ましくは約1重量%〜約5重量%、幾つかのより好ましい実施形態において、約2重量%〜約3重量%を構成する。吸熱剤を製造プロセスにおける任意の好適なポイントにて熱可塑性コポリマーに、例えば荷電制御剤とともに導入して、支持材料を作製することができる。例えば、荷電制御剤及び吸熱剤を熱可塑性コポリマーと溶融ブレンドした後、ブレンドした材料を造粒、微粒子化、及び/又は分級に供することができる。
【0134】
支持材料は、1つ又は複数の更なる添加剤、例えば着色剤(例えば、吸熱剤に加えて又はその代わりに顔料及び染料)、ポリマー安定剤(例えば、抗酸化剤、光安定剤、紫外線吸収剤及びオゾン劣化防止剤)、生分解性添加剤、及びそれらの組合せを含んでいてもよい。更なる添加剤を組み込んだ実施形態では、更なる添加剤は合わせて、支持材料の全重量に対して支持材料の約0.1重量%〜約20重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約10重量%、更に好ましくは約0.5重量%〜約5重量%を構成し得る。また、これらの材料は、製造プロセスにおける任意の好適なポイント、例えば荷電制御剤及び/又は吸熱剤との溶融ブレンド中にて熱可塑性コポリマーに導入して、支持材料を作製することができる。
【0135】
電子写真方式の付加製造システム(例えば、システム10)における使用のために、支持材料は、好ましくは部品材料と同様の又は実質的に同じ制御された平均粒度及び狭い粒度分布を有する。支持材料のD50粒度は、好ましくは部品材料のD50粒度の約15マイクロメートル以内、より好ましくは約10マイクロメートル以内、更に好ましくは約5マイクロメートル以内であり、ここで粒度及び粒度分布は、下記の粒度及び粒度分布規格に従って求められる。例えば、支持材料の好ましいD50粒度は、所望される場合、約100マイクロメートルまで、より好ましくは約10マイクロメートル〜約30マイクロメートル、より好ましくは約10マイクロメートル〜約20マイクロメートル、また更により好ましくは約10マイクロメートル〜約15マイクロメートルの粒度を含む。
【0136】
さらに、支持材料のパラメータD90/D50粒度分布及びD50/D10粒度分布によって指定される粒度分布はそれぞれ、好ましくは約1.00〜約1.40、より好ましくは約1.10〜約1.35、また更により好ましくは約1.15〜約1.25の範囲にある。さらに、支持材料の粒度分布は、好ましくは、幾何標準偏差σ
gが好ましくは以下の式1:
【数1】
に従う基準を満たすように設定される。換言すれば、D90/D50粒度分布及びD50/D10粒度分布は、好ましくは、互いの約10%以内、またより好ましくは互いの約5%以内等、同じ値か又は同じ値に近い。
【0137】
支持材料は、熱可塑性コポリマーを重合又はそれ以外の方法にて準備し、熱可塑性コポリマーを荷電制御剤と、また任意に吸熱剤及び/又は任意の更なる添加剤と溶融ブレンドした後、得られた材料を造粒、微粒子化及び/又は分級して、上記で述べられた粒度及び粒度分布を有する粉末を得ることにより製造することができる。所望に応じて、幾つかの更なる材料、例えば流動制御剤を得られた粉末に高剪断下にてブレンドすることができる。これにより、粒度又は粒度分布を大きく変えることなく、流動制御剤(複数の場合もあり)が、支持材料の個々の粒子に均一に分配、被覆、及び部分的に組み込まれる。
【0138】
調合された支持材料、特に熱可塑性コポリマーはかなり脆いことも見出されている。このため、支持材料は電子写真方式の付加製造システム用の粉末形態では有用となるが、Stratasys, Inc.(ミネソタ州エデンプレーリー)によって「FUSED DEPOSITION MODELING」及び「FDM」という商標で開発された押出し方式の付加製造法等のフィラメント方式の付加製造法には余り望ましいものではない。脆性の調合された支持材料は、何ら補正用添加剤を用いずにフィラメント形態にて与えられる場合、消耗容器から押出し方式システムの液化装置へと転写する際に容易に破損又は破壊すると考えられる。
【0139】
調合された支持材料は、その後、システム10内でEPエンジン12sと共に使用するためカートリッジ又は他の適したコンテナ内に充填することができる。例えば、調合された支持材料は、現像ステーション58のホッパに交換可能に接続することができるカートリッジ内に供給することができる。この実施形態において、調合された支持材料は、現像ステーション58内で保持することができるキャリア粒子と混合するため現像ステーション58内に充填することができる。現像ステーション58はまた、ハウジング、送出機構、通信回路、及び同様なもの等の標準トナー現像カートリッジコンポーネントを含むことができる。
【0140】
現像ステーション58内のキャリア粒子は、ポリマーコーティングを有するストロンチウムフェライトコアを有するキャリア粒子等の、支持材料を帯電させるための任意の適した磁化可能キャリア粒子とすることができる。コアは、通常、支持材料の粒子よりサイズが大きく、例えば、平均して直径が約20マイクロメートル〜約25マイクロメートルである。ポリマーコーティングは、支持材料について所望されるQ/M比に応じて変動する場合がある。適したポリマーコーティングの例は、負の帯電用のポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)又は正の帯電用のポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)を含む。現像ステーション又はカートリッジ58における支持材料とキャリア粒子との適した重量比は先に論じた比を含む。
【0141】
代替的に、現像ステーション58自体は、支持材料の供給を保持する交換可能カートリッジデバイスとすることができる。更なる代替の実施形態において、EPエンジン12s自体は、支持材料の供給を保持する交換可能デバイスとすることができる。
【0142】
支持材料をシステム10に装填した後、システム10にて支持材料を用いて印刷動作を行い、3D部品(例えば、3D部品80)とともに支持構造(例えば、支持構造82)を印刷することができる。例えば、支持構造82の層64sはEPエンジン12sを用いて支持材料66sから現像して、現像した部品材料66pの層64pと一緒にベルト22によって層溶融転写アセンブリ20へと転写することができる。部品材料及び支持材料が同様の又は実質的に同じQ/M比を有していることから、ベルト22は同じ大きさ及び符号のバイアスにて層64p及び層66pの両方を静電吸着させることができる。
【0143】
層溶融転写アセンブリに達すると、(層64p及び64sの)組合された層64は、付加製造技法を使用して層ごとに3D部品80及び支持構造82を印刷するため加熱され溶融転写される。上記で述べられたように、部品材料及び支持材料が同様の又は実質的に同じ熱特性及び溶融レオロジーを有することから、部品材料及び支持材料を別々の異なる熱溶融転写ステップを必要とすることなく単一ステップにて溶融転写することができる。さらに、支持材料の作製の際の事前の無水物転化ステップは、支持材料が層溶融転写ステップ中に不要な更なる無水物転化反応を受けるのを防ぐものであり、無水物転化反応を防がなければ、部品の品質は損なわれてしまう。
【0144】
さらに、支持材料は部品材料、特にABS部品材料との良好な接着を呈する。これにより、支持構造82は3D部品80の層をビルドプラテン68に固定させることが可能であり、これが冷却時の3D部品80にかかり得る歪曲及び湾曲応力を低減させ、更に3D部品80に良好なオーバハング支持をもたらす。
【0145】
組成的に、得られた支持構造(例えば、支持構造82)は、熱可塑性コポリマー、荷電制御剤、並びに任意選択的に任意の吸熱剤、流動制御剤、及び/又は任意の更なる添加剤を含む。さらに、層溶融転写アセンブリ20による層溶融転写ステップは、商標「FUSED DEPOSITION MODELING」及び「FDM」の下で、Stratasys, Inc.(ミネソタ州エデンプレーリー所在)によって開発された押出し方式の技法等の他の溶融方式の付加製造技法によって支持材料から達成可能な部品密度より大きい部品密度を提供することができる。
【0146】
さらに、支持構造中の熱可塑性コポリマーは、システム10に与えられる(すなわち、印刷前の)支持材料と実質的に同じカルボン酸基と無水物基との比を有する。上記で述べられたように、これは支持材料の製造の際に行なわれた無水物転化ステップによるものであり、この無水物転化ステップは、熱可塑性コポリマーのカルボン酸基を無水物基へと可能な限り最大限転化するのが好ましかった。さらに、支持構造は、上記で述べられたようにハンズフリー支持材除去プロセスをもたらすためにアルカリ水溶液等の水溶液に可溶性である。
【0147】
上記で述べられたように、本開示の支持材料はMartinの米国特許出願公開第13/944,472号に開示されているABS部品材料とともに使用するのに特に適している。例えば、ABS部品材料は、ABSコポリマー、荷電制御剤、吸熱剤、及び任意で1つ又は複数の更なる添加剤、例えば流動制御剤を含み得る。ABSコポリマーは、アクリロニトリル単位(アクリロニトリルから誘導される)、ブタジエン単位(ブタジエンから誘導される)、及び芳香族単位(エチレン性不飽和芳香族モノマー、好ましくはスチレンから誘導される)を含むのが好ましい。
【0148】
ABS部品材料から印刷された3D部品(例えば、3D部品80)と本開示の支持材料から印刷された支持構造(例えば、支持構造82)とを合わせて(支持構造の除去前に)、3D部品及び支持構造が互いに接着している「物体」として提供することができる。3D部品から支持構造を除去するまで、支持構造は、3D部品のオーバハング特徴、3D部品に存在するかなりの角度の付いた傾斜、小さな開口部又は制御細孔構造等の繊細な特徴を3D部品において保護すること、また幾つかの状況では3D部品の側面を覆うことが更に必須な領域を支持することができる。
【0149】
特性分析及び特徴化手法
本明細書で述べる部品材料及び支持材料の種々の特性及び特徴は、以下で述べる種々の試験手法によって評価することができる:
【0150】
1.
ガラス転移温度
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimetry)ASTM D3418−12e1を使用する古典的なASTM法を使用して決定され、摂氏で報告される。試験は、支持材料コポリマーの10ミリグラム試料を用いて、Seiko Instruments, Inc.(日本、東京所在)からの商標「SEIKO EXSTAR 6000」の下で商業的に入手可能なDSC分析器によって実施される。データは、同様にSeiko Instruments, Inc.(日本、東京所在)からの商標「DSC Measurement V 5.7」及び「DSC Analysis V5.5」の下で商業的に入手可能なソフトウェアを使用して分析される。試験についての温度プロファイルは、(i)25℃から160℃への加熱速度10ケルビン/分(第1の加熱期間)、(ii)160℃から20℃への冷却速度10ケルビン/分、及び(iii)20℃から260℃への加熱速度10ケルビン/分(第2の加熱期間)を含む。ガラス転移温度は、第2の加熱期間(iii)の熱流特性だけを使用して決定される。
【0151】
2.
粒度及び粒度分布
粒度及び粒度分布は、Beckman Coulter, Inc.(カルフォルニア州ブレア所在)からの商標「COULTER MULTISIZER II ANALYZER」の下で商業的に入手可能な粒度分析器を使用して測定される。粒度は、D50粒度、D10粒度、及びD90粒度パラメータに基づいて体積基準で測定される。例えば、粒子の試料についての10.0マイクロメートルのD50粒度は、試料内の粒子の50%が10.0マイクロメートルより大きく、試料内の粒子の50%が10.0マイクロメートルより小さいことを意味する。同様に、粒子の試料についての9.0マイクロメートルのD10粒度は、試料内の粒子の10%が9.0マイクロメートルより小さいことを意味する。さらに、粒子の試料についての12.0マイクロメートルのD90粒度は、試料内の粒子の90%が12.0マイクロメートルより小さいことを意味する。
【0152】
粒度分布は、D90/D50分布及びD50/D10分布に基づいて決定される。例えば、10.0マイクロメートルのD50粒度、9.0マイクロメートルのD10粒度、及び12.0マイクロメートルのD90粒度は、1.2のD90/D50分布及び1.1のD50/D10分布を提供する。
【0153】
先に述べたように、幾何標準偏差σ
gは、好ましくは、先に示した式1に従う基準を満たし、D90/D50分布及びD50/D10分布は、好ましくは、同じ値か又は同じ値に近い。D90/D50分布及びD50/D10分布の接近度は、分布の比によって決定される。例えば、1.2のD90/D50分布及び1.1のD50/D10分布は、1.2/1.1=1.09の比、又は約9%の差を提供する。
【0154】
3.
摩擦帯電
システム10等の電子写真方式の付加製造システムにおいて使用するための粉末ベース材料の摩擦帯電特性又は静電帯電特性は、以下の技法によって決定することができる。7重量部の粉末ベース材料の試験試料は、93重量部のキャリア粒子と共に清浄な乾燥ガラスボトル内で撹拌される。キャリア粒子は、負の帯電用のポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)又は正の帯電用のポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)の1.25重量%のポリマーコーティングでコーティングされたストロンチウムフェライトの磁化された22マイクロメートルのコアを含む。
【0155】
粉末ベース材料とキャリア粒子との混合物は、45分間、ジャーローラ上で25℃にて撹拌されて、キャリア粒子と粉末ベース材料との完全な混合を保証し、Q/M比の均衡を保証する。この混合は、部品又は支持材料がキャリア粒子に添加されるときに電子写真エンジンの現像ステーションで起こる混合プロセスをシミュレートする。
【0156】
混合物の試料は、その後、TEC−3摩擦帯電分析器(Torrey Pines Research(ニューヨーク州フェアポート所在)から入手可能)によって定量的に分析される。この分析器は、電界を使用して、キャリア粒子表面から静電粉末を剥離させ、回転する高強度平板多極磁石を使用して、(磁化可能であるか又は永久的に磁化された)キャリアビードを下部電極に拘束する。
【0157】
混合物(試料粉末及びキャリア粒子)の0.7グラム試料が、清浄なステンレス鋼ディスク上に配置され、清浄なステンレス鋼ディスクは、印加電界の影響下でギャップにわたる静電プレートアウト実験の下部電極として役立つ。この下部電極は、回転する多極磁石の上に取付けられ位置決めされ、清浄な上部プレートディスク電極は、下部プレートの上でかつ下部プレートに平行に確実に取付けられて、電極の周縁に絶縁ポリテトラフルオロエチレン(商標「TEFLON」の下でPTFE)を使用して、上部電極プレートと下部電極プレートとの間に5ミリメートルの制御されたギャップを提供する。
【0158】
粉末が負に帯電することが予想される場合、+1,500ボルトの直流電圧が電極に印加され、また、磁気撹拌機が起動されて、1500rpmで回転し、それにより、測定中、試験下のキャリアと粉末とを、拘束した状態に穏やかに保つが、同様に、下部電極上でわずかに撹拌された状態に保つ。代替的に、粉末が正に帯電することが予想される場合、−1,500ボルトの負のバイアス電圧が印加される。いずれの場合も、印加される電界によって、粉末は、粉末/キャリア混合物の状態でキャリアから剥離し、規定された期間にわたって上部電極に転写する。
【0159】
試験下の剥離された粉末は、上部電極に堆積し、上部プレート上の誘起された蓄積電荷が電位計を使用して測定される。上部電極に転写された粉末の量は、重さが測られ、元々のキャリア粉末混合物内の理論的パーセンテージと比較される。キャリアは、キャリアを拘束する磁力により下部プレート上に留まる。
【0160】
上部プレート上の総電荷及び転写された静電粉末の既知の重量が使用されて、試験粉末のQ/M比を計算し、同様に、キャリアビードと最初に混合された理論的な量に応じて、全ての静電粉末がキャリアから転写されたことをチェックする。上部プレートへの完全な粉末転写についてかかる時間及び粉末転写プロセスのパーセント効率もまた測定される。
【0161】
4.
粉末流動性
先に論じたように、本開示の部品材料及び支持材料は、好ましくは、良好な粉末流動特性を示す。これは、現像ステーションにおいてキャリア粒子への部品又は支持材料の供給を通常妨げる、補充給送中の部品又は支持材料の閉塞又は流動制限を減少させるか又は防止する。試料材料の粉末流動性は、二次元電子写真プロセスにおいて利用される市販のトナーと比較して、粉末の流動性を視覚的に観測することによって定性的に測定され、「良好な流動(good flow)」又は「極めて良好な流動(very good flow)」として等級付けられる。
【0162】
5.
溶融レオロジー
好ましくは、部品材料及び支持材料の溶融レオロジーは、それらのそれぞれのコポリマーの溶融レオロジーと実質的に同じであり、他の添加剤によって悪影響を受けないことが好ましい。さらに、先に論じたように、電子写真方式の付加製造システム(例えば、システム10)と共に使用するための部品材料及び支持材料は、好ましくは、同様の溶融レオロジーを有する。
【0163】
本開示の支持材料及び部品材料並びにそれらのそれぞれのコポリマーの溶融レオロジーは、或る温度範囲にわたるメルトフローインデックスに基づいて測定される。メルトフローインデックスは、Shimadzu Corporation(日本、東京所在)からの商標「SHIMADZU CFT−500D」流動試験機細管レオメータの下で商業的に入手可能なレオメータを使用して測定される。各試験中に、2グラム試料が、レオメータの標準的な動作に従ってレオメータにロードされ、試料の温度が、50℃まで増加されて、試料のわずかな圧密化をもたらす。
【0164】
温度は、その後、5℃/分の速度で50℃から増加し、試料が、最初に軟化し、次に流動することを可能にする。レオメータは、レオメータのピストンがシリンダを通して駆動されるときに小さなダイオリフィスを通して流れる溶融物の流動抵抗を使用して試料粘度を測定する。レオメータは、シリンダの試料溶融物が尽きるまで、軟化点、流動が始まる温度、及び、温度が増加する結果として流動が増加する速度を記録する。レオメータはまた、ランプの各温度点においてパスカル秒で見かけ粘度を計算する。このデータから、例えば、
図6〜
図8に示すような、見かけ粘度対温度プロファイルを決定することができる。
【0165】
6.
コポリマー組成物
支持材料の熱可塑性コポリマーの分子組成、並びに各酸及び無水物の含量を、プロトン核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて求める。コポリマー試料の調製は、溶解を補助するために粉末、ペレット又は大きな塊の形態の熱可塑性コポリマーを微粉砕して、微細な粒子にする超音波処理を用いて、約40ミリグラムの熱可塑性コポリマーを0.7ミリリットルのジメチルスルホキシド(dmso)−d
6溶媒に溶解することを含む。
【0166】
スペクトルデータは、クライオプローブを備えた、Bruker Corporation(マサチューセッツ州ビレリカ)から「BRUKER AV700」Spectrometerという商標で市販されているプロトンNMR分光計にて記録する。プロトンNMRスペクトルを700.23メガヘルツにて記録し、試料温度はBrukerのデジタル式可変温度ユニットを用いて25℃に保つ。
【0167】
分析は、任意の相当量の他の芳香族種又は残留モノマーを除去するために、初めに試料をクリーニングして行う。クリーニングは、熱可塑性コポリマー試料をヘプタン又はヘキサンで洗浄又は再懸濁させ、その後、濾過し、真空下において75℃にて乾燥することを含む。これにより、スペクトルにおける重要なシグナルの正確な積分が促される。
【0168】
次いで2回の予備スキャンを、プロトンNMR分光計を用いてクリーニングした試料に対して行い、定常状態に達した後、30度パルスでの32回の積算(32 co-added 30-degree pulse transients)を行うことで、良好なシグナル対ノイズ比を得ることができる。各パルス取得時間は2.94秒であり、パルス間に2.0秒の遅延があり、総繰り返し時間は4.94秒となる。データはゼロフィリング及び0.2ヘルツのラインブロードニングの足切り関数を用いて処理する。スペクトル幅は、−2.0パーツパーミリオン(ppm)から14.0ppmに及ぶ16.0ppmである。スペクトルは重水素化溶媒中の残留プロトンを基準とし、残留プロトンはdmso−d
6溶媒について2.50ppmで五重線として現れる。積分値はモル基準で互いに相対的なものである。
【0169】
図5に、エタノール溶液重合にてスチレン、n−ブチルアクリレート及びメタクリル酸から重合された熱可塑性コポリマーについてのプロトンNMRスペクトル例を示しており、ここで約12ppmでのピークはメタクリル酸由来のカルボン酸基の単一プロトンによるものであり、約7ppmでのピークはスチレンモノマー由来の芳香族環の5つのプロトンによるものであり、通例スペクトルにおいて十分に分離される約3.5ppm〜4.0ppmでのピークはn−ブチルアクリレート由来のエステル基における酸素原子に隣接するメチレン基の2つのプロトンによるものである。
【0170】
芳香族環のピークを参照として5.0のプロトンに積分するように意図的に設定することが有用である。これら3つの領域の積分により、3つのモノマーのモル比を算出することが可能となり、スチレンモノマー(又は他の芳香族モノマー)の全てがポリマーに組み込まれていると推測される。そのため、開始理論モノマー組成のモル比に対して無水物転化前のコポリマー組成を算出することが可能である。同様に、このスペクトル、及び任意の無水物転化材料のスペクトルとの比較から、約12ppmでのピークの積分値が約7.0ppmでの芳香族環のピークと比べて減少しているが、ここでも7ppmでの芳香族環のピークに対するシグナルを5.0のプロトンに積分するように意図的に設定する。これにより、カルボン酸基から無水物基への転化率を算出することができる。コポリマーが無水物転化ステップ中に約260℃を超えて加熱されなければ、コポリマーの分解又はモノマーの喪失は通常観察されない。
【0171】
7.
分子量
支持材料コポリマーの分子量は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)溶媒ポンプ、全自動サンプリング装置、分離カラム及び屈折率(RI)検出器を備えるGPC機器によるゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法を用いて求める。
【0172】
コポリマー試料を、10ミリグラム〜15ミリグラムの熱可塑性コポリマーを0.1重量%のベンゾフェノンを溶かした3ミリリットルのテトラヒドロフラン(THF)溶媒に溶解することにより調製する。次いで、コポリマー溶液を0.45ミクロンのフィルターを通して濾過し、0.1体積%のトリフルオロ酢酸が添加されているHPLC用THF溶媒とともにGPC分光計の分離カラムに流す。トリフルオロ酢酸は、熱可塑性コポリマーのカルボン酸基とカラム充填剤との相互作用及び結合を抑えるものであり、トリフルオロ酢酸がなければ溶離時間の矛盾が生じることがある。
【0173】
3つの分離カラムとして、(i)5マイクロメートルのスチレン−ジビニルベンゼン(SDV)コポリマーネットワークが充填された50ミリメートル(mm)×13mmのカラム、(ii)102オングストロームのSDVコポリマーネットワークが充填された300mm×13mmのカラム、及び(iii)104オングストロームのSDVコポリマーネットワークが充填された300mm×13mmのカラムが挙げられる。GPCデータはベンゾフェノンを内部標準として用いた溶離時間の補正により、既知のポリスチレン標準に対して評価する。データはPolymer Standards Service-USA, Inc.(マサチューセッツ州アマースト)から「WIN GPC V 6.10」という商標で市販されているソフトウェアを用いて分析する。
【0174】
8.
酸価
熱可塑性コポリマーの酸価又は総酸含量(酸及び無水物基の合計量)は下記のように滴定により求める:300ミリグラムのコポリマーの試料を30ミリリットルの分析用エタノール及び10.0ミリリットルの0.1N(規定度)の水酸化ナトリウム(NaOH)の溶液に溶解する。試験は、「H 62」という商標で市販されているpH感応電極を備えた、「TITROLINE ALPHA PLUS」という商標で市販されている滴定システム(どちらもSchott AG(ドイツ、マインツ)製)を使用して、0.1Nの塩酸(HCl)による電位差測定滴定法を用いて行う。
【0175】
各試験試料は全自動動的滴定法により分析し、二重試験する。データはこれもSchott AG(ドイツ、マインツ)から「TITRISOFT」バージョン2.5ソフトウェアという商標で市販されているソフトウェアを用いて評価する。これは過剰な水酸化ナトリウムを使用する全ての元々の酸性官能基をナトリウム塩へと転化した後の「逆滴定」であることに留意する。始めは透明なコポリマー溶液がHCl溶液を添加すると僅かに濁り、このことは約6〜8未満のpHにて観察可能である。しかしながら、シグナルの評価(HClの添加量によるpH変化の導関数(derivative))はこの沈殿効果の影響は受けない。
【実施例】
【0176】
本開示は、以下の実施例においてより詳細に述べられ、以下の実施例は、本開示の範囲内の多数の修正及び変形が当業者に明らかになるため、単に例証するものとして意図される。
【0177】
1.
実施例1
実施例1〜実施例6の熱可塑性コポリマーをそれぞれ同じ技法を用いて調製したが、重合開始剤の量を変え、特にコポリマーの分子量を変更した。各熱可塑性コポリマーについて、このプロセスは、17.0グラムのスチレン(モノマーの34重量%)、12.5グラムのn−ブチルアクリレート(モノマーの25重量%)、及び20.5グラムのメタクリル酸(モノマーの41重量%)を35.0グラムのエタノールと一緒に、窒素ガスライン用の注入管、還流冷却器及び機械撹拌機を備えた250ミリリットル容の3つ口フラスコに投入することを含むものであった。モノマーはそれぞれ、Fischer Scientific, Inc.(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から「ACROS ORGANICS」という商標で市販されているものであった。
【0178】
液体全体に窒素ガスをバブリングすることにより、得られたモノマー溶液に30分間、窒素をパージした後、窒素の緩やかな流れを重合手順の間、維持した。続いてフラスコを、82℃に保った予熱油浴に入れ、10分後、重合開始剤の反応混合物への1回目の添加を行った。重合開始剤は、Akzo Nobel N.V.(オランダ、アムステルダム)から「PERKADOX L−W40」という商標で市販されている40%のジベンゾイルペルオキシドの水懸濁液とした。
【0179】
次いで得られた重合反応物を82℃で2時間撹拌した。この期間後に粘性生成物が形成された。その後、重合開始剤の反応混合物への2回目の添加を行った。続いて反応混合物を82℃にて更に2時間撹拌した後、重合開始剤の3回目の添加を行った。それから重合を82℃にて更に4時間続けた。
【0180】
表1に1回目、2回目及び3回目それぞれの際にモノマーに添加されたジベンゾイルペルオキシド重合開始剤の量を挙げる。ここでは、重合反応中に任意の過剰な発熱が起こるのを避けるか、又は軽減するために、またそれぞれの場合で重合が完了するまで進行するように、3回の別個のステップにて重合開始剤の添加を行った。
【0181】
【表1】
【0182】
重合が完了した後、得られる粘性ポリマー溶液を35グラムのエタノールで希釈し、室温まで冷却させた。次に、コポリマーのエタノール溶液を激しく撹拌しながら1.5リットルのシクロヘキサンへと析出させた。底部に分離した粘着性の物質が得られた。次いで、過剰なシクロヘキサンを傾瀉し、機械撹拌機を用いて、得られた熱可塑性コポリマーを2回にわたり500ミリリットルのシクロヘキサンとともに2時間撹拌した。
【0183】
その後、溶媒を分離し、粘着性の熱可塑性コポリマーを真空下において100℃にて一晩乾燥させた。続いてガラス状の熱可塑性コポリマーを回収し、粉末形態へと造粒させた。得られた粉末を一定重量が得られるまで真空下において100℃にて乾燥した。上記のコポリマー組成試験を用いた熱可塑性コポリマーの組成分析から、実施例1〜実施例6の各熱可塑性コポリマーが酸形態であり(すなわち、無水物基がない)、モノマー単位濃度が下記表2に示されるようなものであったことが分かった。
【0184】
【表2】
【0185】
また、分子量は上記の分子量試験に従って測定した。表3に酸形態の実施例1〜実施例6の熱可塑性コポリマーについて得られた重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びそれらの比(Mw/Mn)を挙げる。
【0186】
【表3】
【0187】
酸形態の実施例1〜実施例6の各熱可塑性コポリマーの収率及びガラス転移温度も測定した。ここでは、収率はそれぞれ、重合反応に用いられるモノマーの総重量に対する熱可塑性コポリマーの重量に基づくものであった。ガラス転移温度は、上記のガラス転移温度試験に従って測定した。表4に酸形態の実施例1〜実施例6の各熱可塑性コポリマーの収率及びガラス転移温度を挙げる。
【0188】
【表4】
【0189】
次いで、各熱可塑性コポリマーを無水物転化ステップに供した。このステップは、空気循環式オーブンにおいて熱可塑性コポリマーを230℃まで30分間加熱することを含むものであった。無水物転化の程度は、上記のコポリマー組成試験を用いて分析した。各熱可塑性コポリマーについて、30分加熱した後では更なる無水物転化は起こらなかったことが見出された。
【0190】
さらに、実施例1〜実施例6の熱可塑性コポリマーについての酸価(酸基と無水物基との合計)を上記の酸価試験に従って求めた。その上、無水物形態の実施例1〜実施例6の熱可塑性コポリマーのガラス転移温度を上記のガラス転移温度試験に従って測定した。表5に実施例1〜実施例6のコポリマーについての無水物転化率、酸価及びガラス転移温度(無水物形態)を挙げる。
【0191】
【表5】
【0192】
表5に示される無水物転化率は熱可塑性コポリマーが達成することが可能な「最大無水物転化」に対応するものであった。さらに、表4に示されるガラス転移温度(すなわち、酸形態)と表5に示されるガラス転移温度(すなわち、無水物形態)との比較から、無水物転化プロセスが得られた熱可塑性コポリマーのガラス転移温度をどのように下げるのかが説明される。上記で述べられたように、これは熱可塑性コポリマーの分子量及び溶融レオロジーの変化に対応するものであると考えられる。
【0193】
また、実施例1〜実施例6の熱可塑性コポリマーを上記の溶融レオロジー試験に従って試験し、分子量及び無水物転化がコポリマーの溶融レオロジーにどのように影響するかを求めた。
図6は試験について得られる温度に対する動粘度のプロット図である。ここでは、酸形態の(すなわち、無水物転化前の)実施例1の熱可塑性コポリマーの試料も比較目的のために試験した。さらに、Martinの米国特許出願公開第13/944,472号の実施例4に記載されているような1重量%の荷電制御剤と2.5%のカーボンブラック吸熱剤とを含むABS部品材料も試験した。
【0194】
図6に示されるように、無水物転化ステップにより実施例1の熱可塑性コポリマーの動粘度が低減した。しかしながら、無水物形態の実施例1の熱可塑性コポリマーの溶融レオロジーは、試験したABS部品材料とは依然異なるものであった。これに対して、無水物形態の実施例4及び実施例6の熱可塑性コポリマーは、溶融レオロジーについてABS部品材料との最も良好な適合を示した。そのため、これにより標的分子量、及び電子写真方式の付加製造システム(例えば、システム10)におけるABS部品材料による印刷に最も相補的な(complimentary)支持材料コポリマーであるコポリマー組成物が規定される。熱安定性の無水物形態の実施例4及び実施例6の熱可塑性コポリマーのガラス転移温度もABS部品材料と良好に適合していた(すなわち、約106℃〜108℃の範囲)。
【0195】
2.
実施例7及び実施例8
上記で述べられた実施例1〜実施例6の熱可塑性コポリマーは、材料試験及び電子写真方式の付加製造システムによる印刷目的のために小型のバッチにて作製した。これに対して、実施例7及び実施例8の熱可塑性コポリマーはそれぞれ、本開示の支持材料を高いコスト効率にて製造することができることを実証するために大型にて作製した。このプロセスは、ENTEX Rust & Mitschke GmBH(ドイツ、ボーフム)から「ENTEX」Planetary Roller Extruder(PRE)デバイスという商標で市販されているポリマー単離デバイスを用いて行った。PREデバイスは、重合完了の際のコポリマー溶液からのエタノールの除去に効果的であることが見出された。加えて、PREデバイスは、この溶媒除去ステップと同時に最大無水物転化を行うことが可能であることが見出された。
【0196】
実施例7及び実施例8の熱可塑性コポリマーを作製するプロセスは初めに、事前調整を行い、重合槽(PREデバイスとは別である)を充填することを含むものであった。これには、重合槽に30分間窒素をパージした後、重合槽に穏やかな窒素流下にて122.4キログラムのスチレン(モノマーの34重量%)、90.0キログラムのn−ブチルアクリレート(モノマーの25重量%)及び147.6キログラムのメタクリル酸(モノマーの41重量%)、並びに240.0キログラムのエタノール(1重量%のメチルエチルケトン(MEK)を含有していた)を投入することが伴っていた。モノマーはそれぞれ、Fischer Scientific, Inc.(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から「ACROS ORGANICS」という商標で市販されているものであった。次いで撹拌を60毎分回転数(rpm)〜80rpmの速度にて重合槽において開始した。
【0197】
その後、撹拌を行った重合槽をモノマー溶液の僅かな沸騰が観察されるまで加熱したが(1.5時間〜2時間の期間後、約85℃〜86℃の内部温度)、内部温度が90℃に達した場合は、緊急停止手順を実施した(反応生成物は廃棄する)。
【0198】
続いてモノマー溶液を85℃〜86℃にて30分間撹拌した後、82℃まで冷却した。続いて1回目の添加として、3.52キログラムの重合開始剤(Akzo Nobel N.V.(オランダ、アムステルダム)から「PERKADOX L−W40」という商標で市販されている40%のジベンゾイルペルオキシドの水懸濁液)を0.25リットルのリンス水と一緒に重合槽に投入した。次いでモノマー溶液を86℃に加熱し、重合反応が開始するまで撹拌することで、冷却器にて溶媒の穏やかな還流が起こった(約20分〜40分後)。溶媒の還流が観察されたら(重合反応の開始に対応するものである)、重合槽の内部温度を80℃に設定して、撹拌を2時間続けた。発熱効果は僅かに顕著なものであったが、2時間の期間にわたって減退した。
【0199】
次いで2回目の添加として、1.09キログラムの重合開始剤を0.25リットルのリンス水と一緒に重合槽に投入した。その後、重合槽を更に2時間撹拌した。この期間の間、僅かな発熱効果が観察された。
【0200】
次いで3回目の添加として、1.09キログラムの重合開始剤を0.25リットルのリンス水と一緒に重合槽に投入した。その後、重合槽を更に2時間撹拌したが、その間、発熱効果はほとんど観察されなかった。
【0201】
重合反応が完了した後、得られた熱可塑性コポリマーを粘性コポリマー溶液中に準備した。次いで60キログラム供給量のエタノールを重合槽に投入し、コポリマー溶液を希釈した。内部温度を70℃まで下げた後、重合槽を更に1.5時間撹拌した。この期間後、撹拌を続け、重合槽への窒素の流れを止め、コポリマー溶液を除去するために重合槽を窒素にて約2.5バール〜3.0バールまで加圧した。
【0202】
上記のコポリマー組成試験を用いた熱可塑性コポリマーの組成分析から、実施例7及び実施例8の各熱可塑性コポリマーが酸形態であり(すなわち、無水物基がない)、モノマー単位濃度が下記表6に示されるようなものであったことが分かった。
【0203】
【表6】
【0204】
酸形態の実施例7及び実施例8の各熱可塑性コポリマーの収率及びガラス転移温度も測定した。ここでは、収率はそれぞれ、重合反応に用いられるモノマーの総重量に対する熱可塑性コポリマーの重量に基づくものであった。ガラス転移温度は、上記のガラス転移温度試験に従って測定した。表7に酸形態の実施例7及び実施例8の各コポリマーの収率及びガラス転移温度を挙げる。
【0205】
【表7】
【0206】
次いでコポリマー溶液を、ギヤポンプ及び加熱チューブを用いて約50リットル/時間のポンプ速度にて重合槽からPREデバイスへと送った。コポリマー溶液を送る前に、PREデバイスを、285rpmの中心主軸速度、セグメント1及びセグメント2についての190℃の設定温度、セグメント3及びセグメント4について230℃の設定温度、セグメント5及びセグメント6について220℃の設定温度、並びにダイノズルプレートについて240℃の設定温度にて作動するように設定した。
【0207】
PREデバイスヘ送られたコポリマー溶液を初めに、ノズル上の茶色がかった泡状物質として押し出した。このコポリマー画分を廃棄した。ほぼ白色のコポリマー泡状体がノズルに観察されたらすぐに(泡の混入に起因する)、セグメント3及びセグメント4を200ミリバール〜300ミリバールの真空へと徐々に調整した。これにより、押出物が実質的に泡を含まないほぼ無色のストランドへと変わった。ほぼ無色透明なストランドが観察されてから15分の期間後、押出物ストランドをステンレス鋼製の冷却ベルト上に置き、ペレタイザへと転写した。そこでペレタイザにより、受け取ったストランド(stand)をペレットへと切断し、そのペレットを防湿のために袋に入れて封をした。
【0208】
上述のように、PREは重合が完了した際にコポリマー溶液からエタノールを除去するのに効果的であったことが見出された。コポリマー溶液をPREデバイスに送り、ストランド(stand)を押し出したら、エタノールを還流冷却器にて留去し、更なる使用のために貯蔵タンクに戻した。そのため、エタノールは、支持材料コポリマーの更なるバッチを作製するための続く重合反応における使用に再利用可能であった。
【0209】
また上述のように、PREデバイスでは、エタノール除去ステップと同時に無水物転化ステップを行うことが可能であったことが見出された。このことは、上記のコポリマー組成試験を用いた熱可塑性コポリマーの組成分析により確認され、その試験により各熱可塑性コポリマーについて最大無水物転化が達成されたことが確認された。
【0210】
実施例7及び実施例8の熱可塑性コポリマーについての酸価(酸基と無水物基との合計)も上記の酸価試験に従って求め、無水物形態の実施例7及び実施例8の熱可塑性コポリマーのガラス転移温度も上記のガラス転移温度試験に従って測定した。表8に実施例7及び実施例8のコポリマーについての無水物転化率、酸価及びガラス転移温度を挙げる。
【0211】
【表8】
【0212】
したがって、これらの結果から、要求される無水物転化を伴う熱可塑性コポリマーの重合及び単離を、再現性のある結果を伴い製造規模にて行い、コスト効率の高いプロセスを達成することができることが確認された。
【0213】
実施例6〜実施例8の熱可塑性コポリマーを上記の溶融レオロジー試験に従い更に試験し、分子量及び無水物転化がコポリマーの溶融レオロジーにどのように影響するかを求めた。
図7はこの試験について得られた温度に対する動粘度のプロット図であり、上記で述べられたABS部品材料も試験した。
【0214】
図7に示されるように、実施例7及び実施例8の熱可塑性コポリマー(それぞれ無水物形態)は熱特性及び溶融レオロジーについてABS部品材料との良好な適合を示した。そのため、より大規模な製造がABS部品材料用の支持材料として使用するための熱可塑性コポリマーの作製に適していた。これはコスト効率の高いプロセスに加えて、PREデバイスを用いることで達成可能である。
【0215】
3.
実施例9〜実施例12
また、実施例7の熱可塑性コポリマーを電子写真方式の付加製造システムにおける層溶融転写ステップ中の粉末の融着を向上するものとしてカーボンブラック吸熱剤とブレンドした。したがって、実施例9〜実施例12の支持材料は、実施例7の熱可塑性コポリマーと、2.5重量%のCabot Corporation(マサチューセッツ州ボストン)から「REGAL 330」という商標で市販されたカーボンブラックとを含むものであった。カーボンブラックを、二軸押出しにより、幾つかの異なる温度、すなわち実施例9で160℃、実施例10で180℃、実施例11で200℃、及び実施例12で230℃にて熱可塑性コポリマーへと溶融ブレンドした。カーボンブラックの熱可塑性コポリマーへの押出溶融ブレンドの結果として、熱可塑性コポリマーの分子量の低減は起こらなかったことも見出された。
【0216】
実施例7〜実施例12の支持材料を、上記の溶融レオロジー試験に従い測定し、分子量及び無水物転化が支持材料の溶融レオロジーにどのように影響するかを求めた。
図8はこの試験について得られた温度に対する動粘度のプロット図であり、上記で述べられたABS部品材料も試験した。
【0217】
図8に示されるように、カーボンブラック(2.5重量%)の組込みには支持材料の溶融レオロジーには何ら重大な有害効果はなく、実施例8〜実施例12の支持材料は熱特性及び溶融レオロジーについてABS部品材料との良好な適合を示し続けていた。そのため、電子写真方式の付加製造システムにおける使用に適していることが分かっている濃度でのカーボンブラックの組入れにより、得られた支持材料が支持材料の熱可塑性コポリマーの溶融レオロジー及びABS部品材料の溶融レオロジーと実質的に同じ溶融レオロジーを有することが可能となる。
【0218】
4.
実施例13〜実施例15
また、実施例7の熱可塑性コポリマーを造粒及び微粒子化に供し、電子写真方式の付加製造システムにおける使用に望ましい粒度及び粒度分布を達成した。これは、Cumberland, Inc.(ウィスコンシン州ニューベルリン)から市販されている造粒機を用いて実施例7の熱可塑性コポリマーを約300マイクロメートルサイズへと造粒することを含むものであった。実施例13については、熱可塑性コポリマーを予め造粒したものをそのまま(すなわちブレンドせずに)使用した。
【0219】
実施例14について、熱可塑性コポリマーを予め造粒したものを40リットル容の「HENSCHEL」ブレンダ(Zeppelin Reimelt GmbH(ドイツ、カッセル)から市販されている)内にて2.5重量%のカーボンブラックとブレンドした。ここで、カーボンブラックはCabot Corporation(マサチューセッツ州ボストン)から「REGAL 330」という商標で市販されているものであった。次いで、このブレンドを溶融配合のために二軸押出機に送った。定常状態の条件下における溶融配合中に達成される平均温度は、164℃の帯域1、164℃の帯域2、166℃の帯域3、182℃の帯域4、及び177℃のダイ温度であった。次いで、押出物を約250マイクロメートルまで造粒し、大きな粒子を取り除くために微細なスクリーニングに供した。
【0220】
実施例15について、熱可塑性コポリマーを予め造粒したものを実施例14と同じようにブレンド、押出し、造粒及びスクリーニングした。ここでブレンドは熱可塑性コポリマーと、2.5重量%のカーボンブラックと、1.0重量%の荷電制御剤(ジ−t−ブチルサリチレートの亜鉛錯体)とを含むものであった。表9に実施例13〜実施例15についての物質の濃度を挙げる。
【0221】
【表9】
【0222】
次いで、各支持材料を、それぞれHosokawa Micron Ltd.(イングランド、チェシャー)から市販されているAlpine 「TURBOPLEX」 ATP Air Classifierと並べて構成されたAlpine Jet Mill(モデル番号100 AFG)にてエアジェット粉砕及び分級によって微粒子化に供した。空気分級機は、周速又は分級ホイールの速度、及び分級ホイールを流れる空気の半径方向速度に応じた粉末の分級を促す多輪設計であった。粉末度は分級機のホイールの速度を変えることにより制御可能であった。分級機の底にある不良な物質は廃棄し、大きすぎる粒子はエアジェットミルに戻した。微細な粒子はエアーバッグへと取り除いた。
【0223】
各支持材料は、1時間当たり0.5キログラムの定常状態の造粒速度にて40時間実行した。粒度分布における特定の許容値を達成するために、得られた粉末を分級機に2回通した。分級機のホイールの最適速度は、表10に示される粒度指定値(specifications)(体積基準で報告されている)を実現するために10,000rpmとすることが確立された。
【0224】
【表10】
【0225】
表10に示されるように、実施例13〜実施例15の物質はそれぞれ、指定値及び実験誤差内の粒度及び粒度分布を示した。加えて、
図9にて説明されるように、粒度及び粒度分布はABS部品材料とほぼ同一のものであった。温度に対する動粘度のプロファイルも実施例13〜実施例15の各物質について測定し、それぞれ実施例11のコポリマー(2.5重量%のカーボンブラックを含有し、200℃にて溶融加工された)について上記の溶融レオロジー曲線と実験誤差内で同一であることが見出された。
【0226】
7.
実施例16
次いで、熱可塑性コポリマー、カーボンブラック吸熱剤、及び荷電制御剤を含有する、実施例15の分級された支持材料粉末を流動制御剤にて表面処理した。これは、400グラムの実施例15の分級された粉末を、2グラムのEvonik Industries AG(ドイツ、エッセン)から「AEROSIL R972」という商標で市販されているジメチルジクロロシランで処理したフュームドシリカと一緒に、ステンレス鋼のミニ「HENSCHEL」ブレンダ(Zeppelin Reimelt GmbH(ドイツ、カッセル)から市販されている)に投入することを含むものであった。その後、混合物を数回の30秒オン/30秒オフの高剪断高速ブレンドサイクルにてブレンドした。得られた実施例16の支持材料は、元の実施例15の粉末と比較して顕著に良好な粉末流動特性を示した。さらに、粒度及び粒度分布は、実施例15の粉末と同一のものであった。
【0227】
8.
実施例13〜実施例16についての摩擦帯電試験
実施例13〜実施例16の支持材料を上記の摩擦帯電試験に従って摩擦帯電分析に供した。各試料を、負電荷をもたらすPMMA被膜を備えるキャリア粒子を用いて試験した。表11に実施例13〜実施例16の支持材料についての摩擦帯電試験の結果を挙げる。
【0228】
【表11】
【0229】
表11に示されるように、支持材料のQ/M比は使用されるキャリア粒子の種類に依存したものであった。さらに、最速のトランジット時間及び最大の粉末トランジット効率は内部添加剤として荷電制御剤とカーボンブラックとの組合せ、及び粉末流動表面添加剤として流動制御剤を用いることで達成された(すなわち、実施例16)。
【0230】
9.
実施例16についての印刷動作
実施例16の支持材料は、システム10に対応する(加熱器74を備えていない)電子写真方式の付加製造システムを用いてABS部品材料から印刷された3D部品とともに支持構造を印刷するのにも使用した。ABS部品材料は、Martinの米国特許出願公開第13/944,472号の実施例5に記載されているように、ABSコポリマーと、1重量%の荷電制御剤と、2.5重量%のカーボンブラック吸熱剤と、0.5重量%の流動制御剤とを含むものであった。
【0231】
所与の印刷動作中に、3D部品のデジタルモデルは、複数の層にスライスされ、支持層は、その後、3D部品のオーバハング領域を支持するために生成された。スライスされた層についての印刷情報は、その後、電子写真方式の付加製造システムに送信され、電子写真方式の付加製造システムは、その後、3D部品を印刷するために動作した。
【0232】
印刷動作中に、ABS部品材料及び支持材料はそれぞれ、システムのEPエンジンによって複数の連続する層において帯電され現像され、現像ドラムはそれぞれ、−500ボルトに帯電された。荷電制御剤及び流動制御剤は、良好な材料密度で層を現像するのに十分であった。現像された層は、その後、+450ボルトに帯電した中間ドラムに転写され、その後、バイアス用ローラが+2,000ボルトに帯電された状態で、システムの転写ベルトに転写された。部品材料及び支持材料層は共に、その後、システムの層溶融転写アセンブリに転写し、部品材料及び支持材料のQ/M比もまた、ベルトに対する現像された層の静電吸着を維持するのに十分であった。
【0233】
予備加熱器(加熱器72に対応する)において、各層は、赤外線放射によって、約180℃〜約200℃の範囲にある温度まで加熱された。加熱された層は、その後、ニップローラと往復式ビルドプラテン(3D部品の先に印刷された層を有する)との間で押圧され、ニップローラは、200℃の温度及び約40ポンド/平方インチ(psi)の平均ニップ圧に維持された。各層は、ベルトから成功裡に転写され、3D部品/支持構造の上面に付着したままになった。ニップローラを通過した後、3D部品/支持構造の上面は、その後、層を更に溶融転写するため後加熱器(後加熱器76に対応する)によって加熱され、その後、エアジェットによって冷却された。このプロセスは、その後、3D部品/支持構造の各層について繰返された。
【0234】
印刷動作が終了した後、3D部品/支持構造は、システムから取除かれ、視覚検査すると良好な部品解像度を示した。3D部品/支持構造は、その後、Stratasys, Inc.(ミネソタ州エデンプレーリー所在)からの商標「WAVEWASH」の下で商業的に入手可能な支持除去システム内に配置された。支持除去システムは、標準的な動作継続期間の間、撹拌下でアルカリ水溶液に、組合された3D部品/支持構造を曝した。終了すると、支持構造(実施例16の支持構造からの)は、ABS部品材料の3D部品から溶け出された。
【0235】
したがって、電子写真方式の付加製造システムは、実施例16のABS部品材料及び支持構造から3D部品及び支持構造を成功裡に印刷した。これは、一部には、部品材料及び支持材料の、ほぼ同一の溶融粘度対温度プロファイル、ほぼ同一のガラス転移温度、及びほぼ同一の摩擦帯電特性によると思われる。さらに、層は、良好な付着力を持って、高速な印刷速度で現像され溶融転写され、3D部品及び支持構造が、短い印刷継続期間及び薄い層で印刷されることを可能にした。
【0236】
本開示は好ましい実施形態を参照して述べられたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において変更を行うことができることを当業者は認識するであろう。