(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記幾何学的形状特徴、画像特徴、前記血行力学的特性、前記生体力学的特徴、及び/または前記1つ以上の生理学的及び/または表現型パラメータに基づき1つ以上の患者特徴ベクトルを生成することをさらに含み、
前記1つ以上の患者特徴ベクトルは、前記複数の位置の各々及び/または前記判定されたプラークの脆弱性の存在と関連した前記複数の位置の各々と関連する、請求項4に記載の作動方法。
冠動脈プラークの脆弱性に関する治療の効果を判定する方法を実行するためのコンピュータ実行可能プログラミング・インストラクションを含むコンピュータ・システム上での使用のための非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記方法が、
患者の血管系の少なくとも一部の解剖学的構造の画像データを取得することと、
プロセッサを使用して、前記解剖学的構造の画像データに関する、画像特性解析、幾何学的形状解析、数値流体力学的解析、及び構造力学的解析を含む解析を実行することと、
前記解析に基づき前記患者の血管系に存在するプラークの位置を判定することと、
プラークの前記判定された位置における不安定プラークの1つ以上の特徴を判定することと、
前記プロセッサを使用して、前記解剖学的構造の画像データの、前記画像特性解析、幾何学的形状解析、数値流体力学的解析、及び構造力学的解析を含む前記解析の結果、ならびに不安定プラークの前記1つ以上の特徴に基づきプラークの前記判定された位置における破裂のリスクを定義する冠動脈プラークの脆弱性を予測することと、
プラークの前記判定された位置を治療するための提案された治療を受け取ることと、
前記提案された治療の実行または完了を、前記提案された治療に基づき不安定プラークの前記1つ以上の特徴を更新することにより、及び、前記提案された治療に基づき前記解剖学的構造の画像データに関する、前記画像特性解析、幾何学的形状解析、数値流体力学的解析、及び構造力学的解析を含む前記解析を修正することにより、シミュレートすることと、
プラークの前記判定された位置における前記予測された冠動脈プラークの脆弱性に関する前記提案された治療の効果をユーザに出力することであって、前記提案された治療の効果は、不安定プラークの前記更新された1つ以上の特徴、ならびに前記解剖学的構造の画像に関する、前記画像特性解析、幾何学的形状解析、数値流体力学的解析、及び構造力学的解析を含む前記修正された解析に基づき、判定される、ことと
を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明を実施するための形態】
【0020】
これより本発明の例示的な実施形態へ詳細を参照し、この実施例は、添付の図面で説明される。可能な限り、同じ参照番号は、同じまたは同様の部分を参照する図面全体を通して使用される。
【0021】
上記で説明されるように、新規の非侵襲的検査の生成は、血流特性を評価するために開発されている。これらの非侵襲的検査は、適切な生理学的な境界条件及びパラメータとともに数値流体力学(CFD)を使用してコンピュータで血流をシミュレートするために使用されることができる、血管の患者固有の幾何学的形状モデルを判定するために患者イメージング(CTのような)を使用する。これらの患者固有の境界条件への入力の実施例は、患者の血圧、血液粘度、及び供給された組織からの血液の予想需要(患者のイメージングから供給された組織のスケーリング則及び質量推定から導かれた)を含む。
【0022】
本開示は、有害心イベントの予後を提供するための、ならびに患者固有の幾何学的形状及び血流特性に基づき薬物療法を導くための新規のアプローチを対象にする。本開示が冠動脈疾患に関して記載されるが、同じシステムは、頸動脈のような、冠動脈を越えて他の血管系での破裂リスクの患者固有の予測を生成するために適用可能である。
【0023】
さらに具体的に言えば、本開示は、冠血管の患者固有の幾何学的形状モデルを導くために患者の心臓イメージングを使用することを対象にする。つぎに、患者の生理学的情報及び推定された境界条件に関する冠動脈血流量シミュレーションは、血行力学的特性を抽出するために、このモデル上で実行されることができる。この血行力学的特性は、プラーク破裂及び/または心筋梗塞を含む、心イベントを予測するために使用されることができる。本開示は、これらの心イベントを予測するために血流の物理ベースのシミュレーションを使用することができる。加えて、本開示は、この予測を達成するために機械学習またはルール・ベースの方法の使用を含む。さらに、機械学習及びルール・ベースの方法は、患者の人口統計学的属性、バイオマーカ、及び/または冠動脈幾何学的形状、ならびに患者固有の生物物理学的シミュレーション(たとえば、血行力学的特性)を含むさまざまなリスク因子を組み込むことができる。追加の診断テストの結果が利用可能である場合に、これらの結果は、たとえば、予測を行う際に、機械学習アルゴリズムをトレーニングするために使用されることが可能である。いくつかの予測は、記載された処理に基づき行われることができる。具体的には、本開示は、(i)不利なプラーク特性、(ii)心リスク(または心リスク関連特徴)、及び(iii)薬物療法計画を導くためにさまざまな医療プロトコルに応じるリスク因子の変化の予測及び/または報告のためのシステム及び方法を提供する。
【0024】
これより図面を参照すると、
図1は、患者固有の解剖学的構造の画像データから冠動脈プラークの脆弱性を予測する例示的なシステム及びネットワークのブロック図を描写する。具体的には、
図1は、複数の医師102及び第三者プロバイダ104を描写し、彼らのいずれかは、1つ以上のコンピュータ、サーバ、及び/またはハンドヘルド・モバイル端末を介する、インターネットのような、電子ネットワーク100へ接続されることができる。医師102及び/または第三者プロバイダ104は、1つ以上の患者の心臓及び/または血管系の画像を生成する、またはその他の方法で取得することができる。また医師102及び/または第三者プロバイダ104は、年齢、病歴、血圧、血液粘度等のような、患者固有の情報の任意の組み合わせを取得することができる。医師102及び/または第三者プロバイダ104は、電子ネットワーク100経由でサーバ・システム106へ心臓/血管画像及び/または患者固有の情報を送信することができる。サーバ・システム106は、医師102及び/または第三者プロバイダ104から受信した画像及びデータを格納するストレージ・デバイスを含むことができる。またサーバ・システム106は、ストレージ・デバイスに格納された画像及びデータを処理する処理装置を含むことができる。
【0025】
図2は、本開示の例示的な実施形態により、患者固有の解剖学的構造の画像データから冠動脈プラークの脆弱性を予測する例示的な方法200のブロック図である。方法200は、電子ネットワーク100経由で医師102及び/または第三者プロバイダ104から受信した、情報、画像、及びデータに基づき、サーバ・システム106により実行されることができる。
図2のこの方法は、プラークの脆弱性を予測し、これらの予測に基づき結果を出すために、冠動脈幾何学的形状のモデルを取得してこのモデルを使用して解析を実行することを含むことができる。
図2で説明されるように、一般に、方法200は、患者固有の情報(たとえば、CTスキャン画像、表現型情報等)を得て(ステップ202)、患者固有の幾何学的形状モデルを構築し(ステップ204)、このモデルの幾何学的形状特徴及び画像特徴に関する流体力学的及び構造力学的シミュレーションを実行し、血行力学的及び機械的特性を抽出する(ステップ206)ことを含むことができる。抽出された特性及び特徴に基づき、その後サーバ・システム106は、不利なプラーク特性(APC)を予測及び/または報告するステップ208を実行することができる(ステップ210)。さらに、ステップ210の1つの実施形態の詳細は、
図3で提供され、
図3で、患者と関連したAPCを決定するために、APCを計算するための測定基準は決定され、測定基準値は特定の患者のために求められる。
【0026】
別の実施形態において、ステップ208の実行は、心リスクまたは心リスク関連の特徴(たとえば、プラーク破裂または心筋梗塞の発生を予測する)をサーバ・システム106にさらに予測及び/または報告させることができる(ステップ212)。たとえば、
図4A及び4Bは、より詳細にステップ212の1つの実施形態を説明し、これらの特徴ベクトルは、患者固有の幾何学的形状モデル及びプラーク破裂の蓋然性の点で作成される、またはMIイベントが特徴重み付けを解析することで推定される。さらに別の実施形態において、サーバ・システム106は、リスクに応じて最適な治療プロトコルを予測及び/または報告することができる(ステップ214)。たとえば、
図5A及び
図5Bは、リスク因子予測に関する、さまざまな薬物療法プロトコル及び/またはライフスタイルの改善の影響を求める方法を説明することでステップ214の1つの実施形態を、さらに詳細に提供する。
【0027】
このようにして、1つの実施形態において、方法200は、APC、心リスク、及び/または治療の内の1つ以上を予測して報告するために冠動脈幾何学的形状の患者固有のモデルを使用することができる。方法200は、デジタル表現(たとえば、コンピュータ、ラップトップ、DSP、サーバ等のような計算デバイスのメモリまたはデジタル・ストレージ(ハード・ドライブ及び/またはネットワーク・ドライブを含む))を含む患者固有の幾何学的形状モデルを得る(ステップ202)ことを含むことができる。冠動脈の幾何学的形状は、できる限り各点に隣接するリストを備える、空間内の点のリストとして表現されることができ、この空間は、点(たとえば、ミリメートル)間の空間単位へマッピングされることが可能である。
【0028】
1つの実施形態において、ステップ202は、たとえば、1つ以上の内腔、プラーク、及び/または内腔壁を含む、患者の冠血管系をモデル化することで、冠動脈の幾何学的形状の患者固有のモデルを構築する(ステップ204)ことでのような、モデルを得ることを含むことができる。冠血管系の3D画像を考えると、多くの方法は、特定の患者に関連する心臓血管の幾何学的形状のモデルを抽出するために存在する。患者固有のモデルは、患者と関連したCTスキャンのような、画像に基づき構築される、またはレンダリングされることができる。1つの実施形態において、このモデルは、たとえば、ブラック・ブラッド磁気共鳴画像を使用して、心周期の拡張期の終わりに心臓CTを実行することで導かれることができる。この画像は、関心の領域に属するボクセルを識別するために手動または自動でセグメント化されることができる。幾何学的形状での不正確さは、自動的に抽出されることができ、必要に応じて観察者により補正されることができる。たとえば、観察者は、抽出された幾何学的形状をCT画像と比較することができ、必要に応じて補正を行うことができる。ボクセルを識別すると、幾何学的形状モデルを導くことが可能である(たとえば、マーチング・キューブを使用して)。ステップ204は、患者固有のモデルを構築するために必要なすべてのコンポーネントを含むことができる。
【0029】
モデルが利用可能になると、ステップ206は、冠動脈プラークの脆弱性に関する結果を導くためにモデルでさまざまな物理ベースのシミュレーションを実行することを含むことができる。このような結果は、たとえば、心リスク及び提案された治療に関して予測して報告することを含むことができる。1つの実施形態において、方法200は、患者の人口統計学的属性、バイオマーカ、冠動脈幾何学的形状、及び患者固有の生物物理学的シミュレーション(たとえば、血行力学的特性)の結果を含む、さまざまなリスク因子を組み込む機械学習またはルール・ベースの方法を使用することができる。また追加の診断テスト結果は、より良い予測のために機械学習アルゴリズムをトレーニングするために使用されることができる。その後ステップ208は、(1)不利なプラーク特性(APC)(ステップ210)、(2)心リスクまたは心リスク関連特徴(たとえば、プラーク破裂または心筋梗塞の発生を予測する)(ステップ212)、及び/または(3)このリスクに応じる最適な治療プロトコル(ステップ214)に関して、予測及び/または報告するためにステップ206からの結果を使用することができる。
【0030】
図3は、患者固有のモデルから不利なプラーク特性(APC)を報告する例示的な方法300のブロック図である。
図3のこの方法は、電子ネットワーク100経由で医師102及び/または第三者プロバイダ104から受信した、情報、画像、及び/またはデータに基づき、サーバ・システム106により実行されることができる。1つの実施形態において、方法300は、患者の冠血管系の患者固有のモデルを使用して実行されることができる。たとえば、患者固有のモデルは、内腔、プラーク、及び/または内腔壁(すなわち、冠動脈の外弾性板(EEM))を含む、少なくとも患者の冠動脈ツリーのための幾何学的形状を含むことができる。このモデルは、内腔及び内腔壁に属するボクセルを識別するために手動または自動でセグメント化されることができる。壁のセグメンテーションは、石灰化及び非石灰化プラークを含むことができる。不利なプラーク特性を報告するためにモデルを解析する際に、方法300は、APCを計算するための測定基準を決定する、または定義する(ステップ302)ことを含むことができる。例示的な測定基準は、正のリモデリングの存在、低減衰のプラーク、微小プラーク内石灰化等を含む。さらにステップ302は、APCの計算のための追加の測定基準を決定する、またはAPCを計算するために使用するこの測定基準を優先させることを含むことができる。ステップ302で測定基準を優先させることは、たとえば、計算能力が制限される、または時間制約がすべての測定基準の計算を許容しない可能性がある場合に使用されることができる。ステップ302は、他のリスク因子を計算することを必要に応じて伴うことができる。
【0031】
ステップ302で決定された測定基準に基づき、次に方法300は、測定基準のための値を計算する(ステップ304)ことを含むことができる。たとえば、ステップ304は、測定基準のための患者固有の値と同様に、制御または閾値を求めるために計算を実行することを含むことができる。その後、患者の構築された内腔及び壁部の幾何学的形状のために、方法300は、患者の構築された内腔及び壁の幾何学的形状のためのAPCを計算する際に使用するために各測定基準用の値を自動的に計算することを含むことができる。
【0032】
例示的な測定基準、正のリモデリングの存在、低減衰のプラークの存在、及び/または微小石灰化の存在のために、ステップ304は、以下の説明により進行することができる。正のリモデリング測定基準の存在の実施例のために、ステップ304は、最初に、壁セグメンテーションの狭窄またはプラークの存在を検出することを含むことができる。セグメントは、狭窄の程度またはプラーク量に基づき疾患として識別されることができる。つぎに、ステップ304は、以下の式、
【化1】
に基づき、たとえば、病変及び参照CSAでEEMの断面積(CSA)を評価することで、正のリモデリング係数を計算することを含むことができる。
【0033】
1つの実施形態において、正のリモデリングの存在を示す正のリモデリング係数の閾値は、1.05である。換言すれば、計算された患者の正のリモデリング係数>1.05の場合に、ステップ304は、正のリモデリングが存在することを報告することを含むことができる。その後、ステップ304は、検出された正のリモデリング及び/または正のリモデリング係数の存在が実際にあることを報告することを含むことができる。正のリモデリング係数のこの測定基準は、APCの計算の要素に入れることができる。またAPCの計算は、たとえば、疾患セグメントで壁セグメンテーション中の非石灰化プラークを検出することで、低減衰のプラークの存在を判定することを含むことができる。たとえば、強度が30ハンスフィールド・ユニット(HU)である非石灰化プラーク領域が存在する場合に、ステップ304は、低減衰プラークの存在が真であること及び/または強度が30HUである非石灰化プラークの容積を報告することを含むことができる。
【0034】
さらにAPCの計算は、疾患セグメントで壁セグメンテーション中の石灰化プラークを検出することによるといった、微小プラーク内石灰化(たとえば、微小石灰化を探し出すために画像特性解析を使用して)の存在を判定することを含むことができる。ヘッセ・ベースの固有値解析は、ブロブ状の石灰化プラークを検出するために利用されることができる。病変内結節性石灰化プラークの直径が3mmである場合に、次に方法300は、微小石灰化の存在が真であることを報告する、及び/またはその直径を報告することを含むことができる。
【0035】
計算された測定基準に基づき、ステップ306は、APCを計算することができる。各測定基準は、単独でAPCを構成することができる、または測定基準は、集合APCを示す形で結合されることができる。ステップ306は、他のリスク因子を計算することを任意で伴うことができる。
【0036】
最後に、方法300は、デジタル表現(たとえば、コンピュータ、ラップトップ、DSP、サーバ等のような計算デバイスのメモリまたはデジタル・ストレージ(たとえば、ハード・ドライブ、ネットワーク・ドライブ))として画像を含む計算されたAPCスコア及び/または他のリスク因子の結果を保存し、たとえば、医師にそれらを利用可能にさせるステップ308を含むことができる。1つの実施形態において、ステップ308は、医師にAPC及び/または他のリスク因子を積極的に報告することを含むことができる。別の実施形態において、ステップ308は、計算されたAPCスコア及びリスク因子が閲覧及び/または検証のために利用可能であることを簡単にユーザに指示すること、または伝えることができる。
【0037】
図4Aは、患者固有のモデルに基づき心リスクまたはリスク関連特徴を予測するための例示的な方法400のブロック図である。
図4Aのこの方法は、電子ネットワーク100経由で医師102及び/または第三者プロバイダ104から受信した、情報、画像、及びデータに基づき、サーバ・システム106により実行されることができる。方法400は、1つ以上のモデル化された、内腔、プラーク、内腔壁、左右の心筋等を含む患者固有のモデルに関して実行されることができる。たとえば、このモデルは、患者の上行大動脈、冠動脈ツリー、心筋、弁、及び心腔を説明することができる。その後、セグメント化は、大動脈及び冠動脈の内腔に属するボクセルを識別するのを支援することができる。
【0038】
1つの実施形態において、方法400は、心リスクのモデルを評価する前に、患者の画像(複数を含む)からモデルを構築することを含むことができる。さらに、方法400は、患者の人口統計学的属性(たとえば、年齢、性別、体重、血圧等)及び/またはバイオマーカ(たとえば、血液マーカ、DNAシークエンシング等)を含む、情報を収集することを含むことができる。さらにこの患者の情報は、患者固有のモデルの構築を通知することができる。
【0039】
適切な患者固有のモデルを得ると、方法400は、このモデルからさまざまな特徴を抽出する(ステップ402)ことを含むことができる。
図4Aに示されるように、ステップ402は、幾何学的形状特徴、画像特徴、血行力学的特徴、及び/または生体力学的特徴(血管壁及びプラークの)を抽出することを含むことができる。画像特徴は、冠動脈及びプラーク特性を計算することにより、及び解剖学的構造の特性を計算することにより抽出されることができる。計算された冠動脈及びプラーク特性は、APC、プラーク・バーデン(厚さ、面積、容積等)、SYNTAXスコア、ナプキン・リング、壊死性コア、内腔狭窄、最小内腔径(MLD)、最小内腔領域(MLA)、径狭窄率、及び/または面積狭窄率を含むことができる。計算された解剖学的構造の特性は、心外膜下脂肪容積及び/または心筋の形状を含むことができる。
【0040】
血行力学的特性は、たとえば、さまざまな生理学的条件(たとえば、休息、運動、充血等)のための数値流体力学的解析を実行することで、及び/または病変と関連した血行力学的特性(たとえば、最大/平均/周期壁せん断応力、牽引力、乱流運動エネルギー等)を計算することで、抽出されることができる。血管壁(複数を含む)及びプラークの生体力学的特徴の抽出は、幾何学的形状及び画像特徴(たとえば、血管壁の密度及び線形または非線形の弾性モデルを使用する弾性特性、プラークの密度及び線形または非線形の弾性モデルを使用する弾性特性、及び/またはプラークの極限強さ)に基づき血管壁及びプラークの生体力学的特性を定義することを含むことができる。抽出された特徴を使用して、方法400は、定常流及び/または拍動流(たとえば、休息、運動、充血等のための)下でさまざまな生理学的条件への計算固体力学的解析を実行することを含むことができる。また方法400は、病変(たとえば、最大/平均/周期応力、極限応力、乱流運動エネルギー等)中の組織の応力及びひずみ特性を計算すること、及び/または平均及び交番応力に基づきプラーク破裂リスクを識別するためにグッドマン線図を生成することを含むことができる。そうすることで、ステップ404は、患者の生理学的または表現型パラメータの推定値と同様に、その点に幾何学的形状、生物物理学的な血行力学、及び壁とプラークの生体力学的特性の数値的記述を含む、患者固有の幾何学的形状モデル中のすべての点へ特徴ベクトルを生成することを含むことができる。代替的にまたはそれに加えて、ステップ404は、プラークの脆弱性を識別することができる患者固有の幾何学的形状モデル中のすべての位置を判定することを含むことができ、その中で特徴ベクトルは、このような位置にのみ生成される。
【0041】
つぎに、ステップ406は、患者固有の幾何学的形状モデル中の病変で、プラーク破裂の可能性または心筋梗塞のイベントの可能性の推定値を含む、心リスクの推定値を生成することを含むことができる。1つの実施形態において、この推定値は、
図4Bでさらに詳細に説明される、機械学習技術を使用して生成される。たとえば、予測システムは、冠動脈病変の1つ以上の位置へ脆弱性スコアを生成するのを支援するために機械学習技術を使用することができる。この計算された脆弱性スコアは、生成モードでの機械学習技術のアプリケーションであってもよく、この機械学習技術が標的患者へ予測を行う能力を開発するために複数の患者固有のモデルを処理するトレーニング・モードから分離することができる。
【0042】
最後に、方法400は、たとえば、心リスクの形式で、推定値を医師に報告するステップ408を含むことができる。プラーク破裂のリスク、MIイベントの可能性等を含み説明される心リスクは、心リスクの単に例示的なインスタンスである。方法400は、心リスクの任意の計測を予測して報告するように適用されることができる。
【0043】
図4Bは、心リスクを予測する予測システムを生成してトレーニングするための例示的な方法420のブロック図である。1つの実施形態において、方法420を介してトレーニングされたこの予測システムは、方法400の心リスクの推定値を許容することができる。
図4Bのこの方法は、電子ネットワーク100経由で医師102及び/または第三者プロバイダ104から受信した情報、画像、及びデータに基づき、サーバ・システム106により実行されることができる。
【0044】
図4Bに示されるように、方法420は、患者の画像(たとえば、CTA)に基づき冠動脈の幾何学的形状の患者固有のモデルを得ることを含むことができる。より具体的であるが、方法420は、解析を受ける患者固有のモデルとの比較のためにモデルを生成する、または決定するために、1つ以上のモデルを収集することを伴うことができる。1つの実施形態において、このモデルは、解析を受ける患者固有のモデルと関連した患者以外の患者を意味する、個体と関連したモデルから導かれることができる。個体の収集からのモデルを集約することは、MI発生及び/またはプラークの脆弱性と関連したインジケータまたはパターンを提供することができる。方法420は、プラークの脆弱性の兆候のその理解を継続的に更新して改訂する機械学習アルゴリズムのプロセスを描写することができる。換言すれば、方法420は、時間をかけて(十分に大きいMI患者データがトレーニングのために使用されるのであれば)急性心筋梗塞(MI)及び/またはプラークの脆弱性の兆候、またはOCT、IVUS、及び近赤外分光法(代わりのプラークの脆弱性モデルがトレーニングのために使用されるのであれば)から計測された脆弱性の特徴を識別するために、収集された特徴を使用して、予測システムをトレーニングするプロセスであってもよい。その後、トレーニングされた予測システム(たとえば、機械学習システム)は、たとえば、患者の画像(たとえば、CTA)を得て、画像/血行力学的/生体力学的特性を抽出してリスク因子を計算し、予測されたリスク因子をユーザ(たとえば、医師)に送信することで、方法400を使用することによりプラーク破裂または心筋梗塞のリスクを予測するために患者を検査するために使用されることができる。たとえば、この予測システムが冠動脈病変の1つ以上の位置の脆弱性を予測するようにトレーニングされる場合に、この予測システムは、標的患者と関連した患者固有のモデルに対する予測システム内のモデルを比較することができる。この比較は、予測システムが特定の標的患者への脆弱性の可能性を推定することを可能にすることができる。
【0045】
心リスクを評価するように予測システムをトレーニングする段階において、トレーニングは、十分に多数のMIイベントの患者が存在する場合に、病変と関連したMIイベントの存在から導くことができる。MIイベント数が限られている場合に、代わりのプラークの脆弱性モデルは実際のMIイベントの代わりに使用されることが可能である。代わりのプラークの脆弱性モデルは、光干渉断層撮影(OCT)、近赤外分光法(NIRS)及びバーチャル・ヒストロジ血管内超音波(VH−IVUS)のような侵襲的なイメージングにより特徴付けられた不安定特徴から利用されることが可能である。これより方法400の実施形態は、方法420のような、予測システムのための例示的なトレーニング・モードを参照して詳細に説明される。1つの実施形態において、方法420は、プラークの脆弱性についての情報があるさまざまな患者固有の幾何学的形状のモデル中のすべての位置を測定する(ステップ422)ことで開始することができる。
例示的なトレーニング・モード
【0046】
1つ以上の個体について、各時点へ次の項目のデジタル表現(たとえば、コンピュータ、ラップトップ、DSP、サーバ等のような計算デバイスのメモリまたはデジタル・ストレージ[たとえば、ハード・ドライブ、ネットワーク・ドライブ])を取得する。
【0047】
取得:患者の上行大動脈、冠動脈ツリー、心筋、弁、及び心腔の幾何学的形状の患者固有のモデル。
【0048】
取得:血圧、ヘマトクリット値、患者の年齢、患者の性別、心筋質量、冠動脈疾患の一般的なリスク因子、及び/または1つ以上のバイオマーカを含む、患者の生理学的または表現型パラメータの少なくとも推定値を含む患者情報。この心筋質量は、心筋質量を推定するために、画像での心筋をセグメント化し、画像での容積を計算し、1.05g/mLの推定密度を使用することで導かれることができる。
【0049】
冠動脈疾患の一般的なリスク因子は、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質レベル(たとえば、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(LDL−C)値)、食習慣、家族の病歴、身体活動、性行為、体重(腹部肥満)、コレステロール、及び/またはストレス状態(たとえば、うつ病、不安、または苦悩)を含むことができる。
【0050】
バイオマーカは、補体反応性タンパク質(CRP)、フィブリノゲン、WBC(白血球)数、マトリックス・メタロプロテアーゼ(たとえば、MMP−9、MMP−3遺伝子多型)、IL−6、IL−18、及び
【化2】
可溶性CD40リガンド(sCD40L)の循環、及び/または血管石灰化マーカ(たとえば、オステオポンチン)を含むことができる。
【0051】
取得:プラーク・バーデン(厚さ、面積、容積)、SYNTAXスコア、ナプキン・リング、及び/または壊死性コアを含む、CTからの画像特徴。
【0052】
取得:数値流体力学的解析から生物物理学的血行力学的特性の1つ以上の推定値。血流をシミュレートする数値流体力学は、良く研究されている。本実施形態で、この推定値は、つぎのものを含む。
シミュレーション条件(たとえば、休息、運動、(心拍出量の度合いを変化させることで軽度/中等度/強度)、充血等)。
血行動態量: □=として、定義され、 が表面力ベクトルの面内成分として定義された壁せん断応力ベクトルである、最大、周期性壁せん断応力及び平均壁せん断応力。
乱流運動エネルギー(TKE)。この乱流運動エネルギーの量は、乱流中の渦と関連した乱流強度の計測であり、計測された二乗平均平方根の速度変動により特徴付けられる。TKEは、運動エネルギーにより正規化されることが可能である。
【0053】
取得:計算固体力学的解析からの血管壁及びプラークの生体力学的特性の1つ以上の推定値。この実施形態の推定値は、シミュレーション条件(拍動または定常流)(休息、運動(心拍出量の度合いを変化させることで軽度/中程度/強度)、及び/または文献データから導かれた血管壁及びプラークの生体力学的材料特性及び/または画像特性(たとえば、線形弾性、非線形弾性、粘弾性構成モデル、密度、圧縮性または非圧縮性材料の挙動、及び/または材料の極限強さ、ならびに生体力学的応力及びひずみ(たとえば、最大、または平均周期性の壁及びプラーク応力、最大または平均周期性の壁及びプラークひずみ、及び/または代替の応力及びひずみ)の充血を含むことができる。
【0054】
取得:脆弱性の予測の対象となる責任病変でのプラーク位置(複数を含む)。このプラーク位置は、CT、及び血管内超音波または光干渉断層撮影を含む他の画像診断法の使用により測定されることが可能である。
【0055】
このようにして、ステップ422は、プラークの脆弱性についての情報があるさまざまな患者固有の幾何学的形状モデルでのすべての位置を測定することを含むことができる。つぎに、ステップ424は、患者の生理学的または表現型パラメータの数値的記述、ならびに局所の幾何学的形状及び生物物理学的血行力学的特性の記述を含む各位置へ特徴ベクトルを生成することを含むことができる。具体的に、この特徴ベクトルは、次のものを含むことができる。
収縮期及び拡張期血圧
心拍数
血液性状:血漿、赤血球(erythrocytes)、ヘマトクリット値、白血球(leukocytes)及び血小板(thrombocytes)、粘度、降伏応力を含む
患者の年齢、性別、身長、体重
ライフスタイル特性:現在の投薬/薬品の有無
CADの一般的なリスク因子:たとえば、喫煙状態、糖尿病、高血圧、脂質レベル(たとえば、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(LDL−C)値)、食習慣、家族の病歴、身体活動、性行為、体重(腹部肥満)、コレステロール、及び/またはストレス状態(たとえば、うつ病、不安または苦悩)
バイオマーカ:たとえば、反応性タンパク質(CRP)、フィブリノゲン、WBC(白血球)、マトリックス・メタロプロテアーゼ(たとえば、MMP−9、MMP−3遺伝子多型)、IL−6、IL−18、及び
【化3】
、可溶性CD40リガンド(sCD40L)の循環、血管石灰化マーカ(たとえば、オステオポンチン)。
大動脈及び弁中のカルシウム量
大動脈瘤の存在
心臓弁膜症の存在
末梢疾患の存在
心外膜脂肪量
心機能(駆出率)
大動脈幾何学的形状特性:上行及び下行大動脈沿いの断面積プロファイル及び/または大動脈の表面積及び容積
SYNTAXスコア
【0056】
冠動脈病変の特性:たとえば、最小内腔面積、最小内腔径、たとえば、フーリエの平滑化またはカーネル回帰を使用することで事実上基準面積プロファイルを決定することで、及び/または血管中心線沿いに事実上基準面積プロファイルを使用して病変の狭窄率を計算することでのような病変での狭窄の程度(径/面積狭窄率)、主要口から病変の開始または中心への距離(中心線のパラメトリック弧長)を計算することでのような狭窄病変の位置、断面積が回復する狭窄病変からの近位及び遠位の位置を計算することでのような狭窄病変の長さ、及び/または断面内腔境界の異常(または円形度)。
【0057】
病変での冠動脈内腔強度の特性:たとえば、中心線沿いの強度変化(線形フィットの強度変化の傾き)に基づく
【0058】
たとえば、病変での冠動脈の中心線(トポロジ)の特性に基づき、たとえば、幾何学的形状(ガウス、最大値、最小値、平均値)の3−D表面曲率に基づく病変での冠動脈の幾何学的形状の表面特性:
冠動脈中心線の曲率(曲げ)において、
【化4】
を計算し、ρは、開始点への累積弧長によりパラメータ化された中心線の座標であり、中心線の点沿いの外接円の半径の逆数を計算する
冠動脈中心線の蛇行(非平面)において、
【化5】
を計算し、ρは、中心線の座標である
【0059】
冠動脈変形(多相CCTA(たとえば、拡張期及び収縮期)を伴う可能性がある)の特性:心周期にわたる冠動脈の伸展性、心周期にわたる分岐角度変化、及び/または心周期にわたる曲率変化である
【0060】
既存のプラークの特性:中心線沿いのプラークの位置(最も近い上流の分岐点への距離、及び/またはプラークが分岐に位置する場合に冠動脈枝の分岐角度)、不利なプラーク特性(正のリモデリングの存在、低減衰プラークの存在、及び/または微小石灰化の存在)、プラーク・バーデン(厚さ、面積、及び/または容積)、ナプキン・リングの存在、プラーク強度、プラークの種類(石灰化、非石灰化)、プラーク位置から口(LMまたはRCA)への距離、及び/またはプラーク位置から最も近い下流/上流の分岐への距離である。
【0061】
数値流体力学または侵襲性計測から導かれた冠動脈血行力学的特性:血液の過渡特性を得るために、拍動流シミュレーションは、下流の血管系のための集中定数の冠血管モデル、心周期中の心臓及び動脈系間の相互作用から得られる心筋内の圧力変動を説明するために集中定数の心臓モデル及び閉ループ・モデルを結合することを有する流入境界条件を使用することで実行されることができる。
【0062】
計測されたFFR
圧力勾配
FFRct
最大、周期性及び平均壁せん断応力
乱流運動エネルギー
局所流量
計算固体力学から導かれた壁及びプラーク生体力学的特性:プラークの平均、最大及び代替の応力及びひずみ、及び/または極限応力及び強度である
【0063】
特徴ベクトル生成がステップ424で完了すると、ステップ426は、特徴ベクトルを同じ位置でプラークの脆弱性の利用可能なモデルと関連付けることを含むことができる。このようなモデルは、代わりの脆弱特徴モデルを含むことができる。以下の代わりの脆弱特徴、
菲薄化線維性被膜(TCFA)<65μ、
大規模な壊死性コア
a.プラーク面積の25%、
b.>120度の円周、
c.2〜22mm長、
石灰化の斑点模様、
マクロファージ、
は、心臓画像がOCT、NIRS、またはVH−IVUSのような侵襲的イメージングにより取得されるときに利用可能である。
【0064】
ステップ426の部分として、特徴ベクトル及びモデル間で生成された関連付けは、プラークの脆弱性または特定の点でMIイベントの可能性もしくは存在を示すことができるさまざまな因子の傾向、類似度、及び/またはグループ化の認識を可能にすることができる。1つの実施形態において、ステップ426は、心リスクで用いるさまざまな因子間の関連付けが予測として戻されることが可能であるように、特徴重み付けとして関連付けを定量化することを含むことができる。換言すれば、予測システムは、重み付けで特徴ベクトルを割り当てるまたは結合することができる。予測システムのトレーニング態様の部分は、予測での精度向上のために、特徴重み付けを継続的に調整することを含むことができる。このようにして、ステップ426は、モデル上の点でプラークの脆弱性またはMIイベントの存在を予測するために、関連付け及び/または特徴重み付けを学習する機械学習アルゴリズム(たとえば、線形SVM)をトレーニングすることを含むことができる。
【0065】
つぎにステップ428について、機械学習アルゴリズム・ベースの予測システムの結果(たとえば、特徴重み付け)は、デジタル表現(たとえば、コンピュータ、ラップトップ、DSP、サーバ等のような計算デバイスのメモリまたはデジタル・ストレージ(たとえば、ハード・ドライブ、ネットワーク・ドライブ))として継続的に保存されることができる。ステップ428は、さらに患者固有のモデルが収集され特徴ベクトルが構築される場合に特徴重み付けを継続的に更新することを含むことができる。したがってステップ428は、予測システムが取得された患者固有のモデルから特徴入力を継続的に組み込むことを可能にする。
予測システムの例示的な応用
【0066】
標的患者について、例示的な方法は、デジタル表現(たとえば、患者の上行大動脈、冠動脈ツリー、心筋、弁、及び心腔のための幾何学的形状の患者固有のモデルのメモリまたはデジタル・ストレージ(たとえば、ハード・ドライブ、ネットワーク・ドライブ)を取得することを含むことができる。この幾何学的形状は、空間が点間(たとえば、ミリメートル)の空間単位へマッピングされることが可能である空間中の点のリスト(できる限り各点に隣接するリストを備える)として表現されることができる。このモデルは、心周期の拡張末期段階で患者の心臓CTイメージングを実行することで導かれることができる。つぎにこの画像は、大動脈及び冠動脈の内腔に属するボクセルを識別するために手動または自動でセグメント化されることができる。このボクセルを識別すると、幾何学的形状のモデルを導くことが可能である(たとえば、マーチング・キューブを使用して)。幾何学的形状の患者固有のモデルを生成するこのプロセスは、トレーニング・モードと同じであってもよい。患者の生理学的及び表現型パラメータのリストをトレーニング・モード中に得ることができる。
【0067】
患者固有の幾何学的形状モデルのすべての点について、例示的な方法は、その点での幾何学的形状及び生物物理学的血行力学的及び壁とプラークの生体力学的特性の数値的記述、ならびに患者の生理学的または表現型パラメータの推定値を含むその点への特徴ベクトルを生成することを含むことができる。これらの特徴は、トレーニング・モードで使用された量と同じであってもよい。
【0068】
この例示的な方法は、患者固有の幾何学的形状モデル中の病変でのプラーク破裂またはMIイベントの可能性の推定値を生成するためにトレーニング・モード(たとえば、特徴重み付け)で生成された機械学習アルゴリズムの保存された結果を使用することを含むことができる。これらの推定値は、トレーニング・モードで使用された同じ機械学習技術を使用して生成されることができる。この例示的な方法は、デジタル表現(たとえば、コンピュータ、ラップトップ、DSP、サーバ等のような計算デバイスのメモリまたはデジタル・ストレージ(たとえば、ハード・ドライブ、ネットワーク・ドライブ))へ病変へのプラークの脆弱性(破裂)またはMIイベントの予測された可能性を保存すること、ならびに健康管理プロバイダへ患者固有のリスク因子を通信することを含むことができる。
【0069】
図5Aは、薬物療法計画及びライフスタイル管理のための例示的な方法500のブロック図である。
図5Aのこの方法は、電子ネットワーク100経由で医師102及び/または第三者プロバイダ104から受信した情報、画像、及びデータに基づき、サーバ・システム106により実行されることができる。1つの実施形態において、
図5Aは、方法400及び420から開発された心リスクの理解を広げることができる。たとえば、方法500は、心リスクを下げることに関するさまざまな薬物療法または治療及び/またはライフスタイルの改善の影響を測定することができる。さらに具体的に、方法500は、心リスク予測で使用された特徴に関する薬物療法またはライフスタイルの改善の効果を測定することを伴うことができる。
図5Aで示されるように、最初に方法500は、心リスク予測を予測するために方法400で使用された特徴を検索する(ステップ502)ことを含むことができる。ステップ504のために、さまざまな薬物療法、プロトコル、及び/またはライフスタイルの改善を測定することができる。たとえば、薬物療法は、虚血管理のための抗虚血性疾患薬、抗血小板薬、及び/またはイベント予防等のための高脂血症薬を含むことができる。抗虚血性疾患薬は、硝酸塩、β遮断薬(たとえば、メトプロロール、ビソプロロール、アテノロール等)、イバブラジン等を含むことができる。例示的な抗血小板薬は、低用量アスピリンを含むことができ、一方高脂血症薬は、スタチン治療を含むことができる。ライフスタイルの改善は、禁煙、ダイエット・コントロール、身体活動及び/または性行為、体重管理、動脈高血圧管理、及びストレス管理を含むことができる。
【0070】
ステップ506は、計算されたプラークの脆弱性予測で使用された特徴に関する、所与の薬物療法、プロトコル、またはライフスタイルの改善の効果を測定することを含むことができる。たとえば、ライフスタイルの改善及びリスク因子のコントロールに対する効果は、以下のようであってもよい。
【0071】
禁煙:収縮期血圧を3.5+/−1.1mmHg、及び拡張期血圧を1.9+/−0.7mmHg下げることが可能であり、心拍数を7.3+/−1.0拍/分[18]低下させることが可能である。
ダイエット・コントロール:N−3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)の消費量(たとえば、多脂魚から)は、トリグリセリドを減らすことが可能であり、減少したトリグリセリド値は、血液粘度を2%下げることが可能である。
身体活動:定期的な身体活動は、血圧を3mmHg低下させることが可能であり、定期的な身体活動は、プラーク退縮を引き起こすことが可能である。
性行為:収縮期BPでの運動負荷の75%と関連し、定期的な性行為は、血圧を2mmHg低下させることが可能である。
体重管理:肥満の人の減量は、BPを10%下げることが可能であり、血液粘度を2%下げることが可能である。
動脈高血圧管理:10〜12mmHgの収縮期及び5〜6mmHgの拡張期の血圧の低下は、16%の冠動脈疾患を減少させることが可能である。
ストレス管理:うつ病、不安または苦悩の軽減は、10%のHR及び血圧低下をもたらす症状を軽減することが可能である。
【0072】
虚血管理のための抗虚血性疾患薬の効果は、
硝酸塩:ニトログリセリン舌下(GTN)カプセルのために心外膜冠動脈の直径で5%増加、及び硝酸イソソルビド(ISDN)のために心外膜冠動脈の直径で13%増加、
β遮断薬(たとえば、メトプロロール、ビソプロロール、アテノロール):10%の心拍数の減少、10%の血圧の低下、
イバブラジン:8.1+/−11.6拍/分の心拍数の減少、
を含むことができる。
【0073】
イベント予防のための抗血小板薬と関連した効果は、低用量アスピリンであってもよく、20mmHgの血圧を下げることができる。
【0074】
イベント予防のための高脂血症薬の影響は、スタチン治療が低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(LDL−C)値を下げるので、血液粘度を2%下げることを含むことができる。
【0075】
ステップ506は、標的患者(それぞれの患者固有のモデルに基づき)のための特徴(たとえば、特徴ベクトルから、またはこれに関する)に関する効果を判定することを含むことができる。このようにして方法500は、計算されたプラークの脆弱性予測で使用された特徴に関する所与の薬物療法プロトコルまたはライフスタイルの改善の効果を測定する(ステップ506)ことができる。さらに方法500は、リスク因子予測に関する1つ以上の治療プロトコルの効果に基づき医師へ最適な治療プロトコルを提供する(ステップ508)ことを含むことができる。1つの実施形態において、ステップ508は、医師がプロトコル、及びこのプロトコルに基づく特徴に関する効果の予測を比較することができるように、さまざまな治療プロトコルの効果のレンダリングを生成することを任意で含むことができる。ステップ508のさらなる実施形態は、医師が2つ以上の治療形態を有することができる治療レジメンを提供することができるように、複数の治療プロトコル及び/またはライフスタイルの改善の併用効果を解析することを含むことができる。
【0076】
図5Bは、例示的な方法520のブロック図であり、機械学習アルゴリズムが特徴に関するさまざまな医療及び/またはライフスタイルの改善の効果を測定することができる。
図5Bのこの方法は、電子ネットワーク100経由で医師102及び/または第三者プロバイダ104から受信した、情報、画像、及びデータに基づき、サーバ・システム106により実行されることができる。本質的に、方法520は、より詳細に方法500のステップ506の1つの実施形態を説明する。1つの実施形態において、薬物療法を導く方法500は、
図4Bの方法で確立された心リスク予測因子に基づく機械学習を使用することができ、薬物療法及びライフスタイルの改善を介する患者固有の心臓イメージング・モデルを評価することで機械ベースの学習の追加層を加えることができる。したがって、方法520は、たとえば、更新された特徴及びトレーニングされた機械学習アルゴリズムを使用してプラーク破裂リスクの可能性を予測することを支援することができる。
【0077】
たとえば、方法520は、患者の生理学的及び表現型パラメータのリスト(たとえば、心イベント予測因子のためにトレーニング・モード中に得られた)を含む、心リスク予測システムをトレーニングする方法420で使用された患者固有のモデルの幾何学的形状を反映する患者固有のモデルを使用することを含むことができる。換言すれば、方法520で使用された患者固有のモデルは、各患者へそれぞれの、上行大動脈、冠動脈ツリー、心筋、弁、及び心腔の幾何学的形状を含むことができる。
【0078】
各患者固有の幾何学的形状モデルのすべての点のために、方法520は、その点での幾何学的形状及び生物物理学的血行力学的及び生体力学的特性の数値的記述、ならびに患者の生理学的または表現型パラメータの推定値を含む、各点へ特徴ベクトルを含むことができる。これらの特徴は、心リスク予測システムのためのトレーニング・モードで使用された量と同じであってもよい。
【0079】
ステップ522は、患者固有のモデルへ薬物療法またはライフスタイルの改善の適用をシミュレートするために特徴セットをコンピュータ上で調整することを含むことができる。その後ステップ524のために、方法520は、この調整により心リスクの可能性を推定することができる。1つの実施形態において、ステップ524は、この可能性の推定値を生成するためにトレーニング・モード(たとえば、特徴重み付け)で生成された機械学習アルゴリズムの保存された結果に依存することができる。これらの推定値は、心イベント予測因子のためのトレーニング・モードで使用された同じ機械学習アルゴリズムを使用して生成されることができる。たとえば、β遮断薬(たとえば、メトプロロール、ビソプロロール、アテノロール)が薬物療法のために選択される場合に、このアルゴリズムは次の、10%の血圧及び10%の心拍数を下げる、及び/または冠動脈血流シミュレーションのための境界条件を更新して、新規の血行力学的ならびに壁及びプラークの生体力学的特徴を抽出する特徴を更新することができる。
【0080】
これらの推定値に基づき、ステップ526は、さまざまな適用されたプロトコル及び改善のための推定値の比較を含むことができる。1つの実施形態において、ステップ526は、特徴及び/または特徴ベクトルのさまざまな組み合わせを与えられた治療の効果へ具体的に適用された第二機械学習アルゴリズムを含むことができる。たとえば、この第二機械学習アルゴリズムは、心リスクのための第一機械学習アルゴリズムの拡張であってもよい。別の例において、この第二機械学習アルゴリズムは、別個の独立エンティティであってもよい。このような場合において、機械学習アルゴリズムを構築するモデルは、独立及び/または重複していてもよい。
【0081】
ステップ528は、ステップ526からの比較に基づき最適な治療及び/またはライフスタイルの改善を決定することを含むことができる。最適な治療は、特徴に関する最適な治療及び/またはライフスタイルの改善の効果に単純に基づくことができる。さらなる実施形態において、最適な治療は、患者固有の因子を考慮に入れることができる。たとえば、ステップ528は、患者の地理的位置を測定すること、及びこの位置を考慮して最適な治療を決定することを含むことができる。たとえば、このような推奨が内陸の患者へはあまり適切ではない可能性があるが、海辺に住む患者は、水泳を含む最適なライフスタイルの改善をできることがある。さらに最適な治療は、他の患者の治療を考慮することができる。たとえば、ランニングまたはウォーキングは、患者の因子に関するこの改善の効果に基づき患者に最も適しているライフスタイルの改善であってもよい。しかしながら、最近膝の怪我をした患者にとって、このような改善を採用することは実用的ではない可能性がある。このようにしてステップ528は、患者の特定条件に関して、最適な治療を作成することができる。さらにステップ528は、所与の薬物療法のためのデジタル表現(たとえば、コンピュータ、ラップトップ、DSP、サーバ等のような計算デバイスのメモリまたはデジタル・ストレージ(たとえば、ハード・ドライブ、ネットワーク・ドライブ))へ病変のためのプラークの脆弱性(破裂)の予測された可能性を保存することを含むことができる。方法500のステップ508に関して、ステップ508は、リスク因子予測に関する1つ以上の治療プロトコルの効果を医師へ出力すること、及びステップ528で決定された予測されたプラークの脆弱性に基づき最適な治療プロトコルを提案することを含むことができる。
【0082】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示された本発明の明細書及び実施を考慮すれば当業者に明らかであろう。本明細書及び実施例が例示としてのみみなされるべきであり、本発明の真の範囲及び趣旨が以下の特許請求の範囲で示されていることを意図する。