特許第6203417号(P6203417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203417
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】成膜装置、及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/52 20060101AFI20170914BHJP
   C23C 14/54 20060101ALI20170914BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20170914BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20170914BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C23C14/52
   C23C14/54 B
   C23C16/50
   C23C16/52
   H05H1/46 A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-549679(P2016-549679)
(86)(22)【出願日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】JP2014075092
(87)【国際公開番号】WO2016046886
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2017年3月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂田 栄二
(72)【発明者】
【氏名】菊池 俊之
(72)【発明者】
【氏名】柏木 悟
(72)【発明者】
【氏名】世良 泰雄
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−233293(JP,A)
【文献】 特開2010−170928(JP,A)
【文献】 特開2001−319922(JP,A)
【文献】 特開2002−146543(JP,A)
【文献】 特開平08−330095(JP,A)
【文献】 特開平07−142410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00 − 14/58
C23C 16/50
C23C 16/52
H05H 1/46
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを用い成膜位置において基材上に薄膜を形成する成膜室と、
前記プラズマの異常放電を検出する異常放電検出部と
記異常放電が検出されたときに薄膜が形成された基材面である異常時基材面を撮像する撮像装置である基材面撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像を記憶する記憶部と、
を備え、
前記基材は、搬送されながら薄膜形成されるものであり、
前記記憶部は、前記異常放電が検出されたときに、前記異常時基材面の当該基材における位置を示す異常位置情報を記憶し
記基材面撮像装置は、前記成膜位置とは別の第1の位置で、前記異常位置情報に基づき、前記異常時基材面を撮像することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記異常放電が検出されたときのプラズマである異常時プラズマを撮像する撮像装置であるプラズマ撮像装置を更に備え、
前記基材面撮像装置及び前記プラズマ撮像装置は、前記異常放電が検出される前から前記異常放電が検出された後に亘って連続的に撮像し、
前記記憶部は、前記プラズマ撮像装置で撮像された画像の場合は、前記連続的に撮像した画像のうち、前記異常放電が検出された時刻の前後の第1の時間における画像を残すとともに、前記第1の時間以外の時間における画像を削除し、前記基材面撮像装置で撮像された画像の場合は、前記連続的に撮像した画像のうち、前記異常時基材面の前後の第2の範囲の画像を残すとともに、前記第2の範囲以外の画像を削除することを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
プラズマを用い成膜位置において基材上に薄膜を形成する成膜室と、
前記プラズマの異常放電を検出する異常放電検出部と、
前記異常放電が検出されたときのプラズマである異常時プラズマ、又は、前記異常放電が検出されたときに薄膜が形成された基材面である異常時基材面を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像を記憶する記憶部と、
を備え、
前記基材は、搬送されながら薄膜形成されるものであり、
前記記憶部は、前記異常放電が検出されたときに、前記異常時基材面の当該基材における位置を示す異常位置情報を記憶し、
前記異常位置情報に基づき、前記成膜位置とは別の第2の位置で、前記異常放電を検出したことを示す異常検出情報を前記基材上に付加する異常検出情報付加装置を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項3に記載の成膜装置であって、
前記撮像装置は、前記異常時基材面を撮像する基材面撮像装置を含み、
前記基材面撮像装置は、前記基材上に付加された前記異常検出情報に基づき、前記成膜位置とは別の第1の位置で、前記異常時基材面を撮像することを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
請求項に記載の成膜装置であって
記異常放電検出部は、前記異常時プラズマの状態を示す異常値情報を生成し、
前記記憶部は、前記異常値情報と、前記異常時プラズマの画像とを、対応付けて記憶することを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項3に記載の成膜装置であって、
成膜処理前のテープ状の基材を前記成膜室に供給するとともに、成膜処理後のテープ状の基材を前記成膜室から回収する基材収容室が、前記成膜室に隣接して設けられ、
前記異常検出情報付加装置は、前記基材収容室内に設けられることを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項6に記載の成膜装置であって、
前記撮像装置は、前記異常時基材面を撮像する基材面撮像装置を含み、前記基材面撮像装置は、前記基材収容室内に設けられることを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の成膜装置であって、
前記撮像装置は、前記異常時プラズマを撮像するプラズマ撮像装置と、前記異常時基材面を撮像する基材面撮像装置の両方を含み、
前記記憶部は、同一の異常放電に対して撮像された前記異常時プラズマの画像と前記異常時基材面の画像とを、対応付けて記憶することを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて基材上に薄膜を形成する成膜装置や成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、基材の表面に薄膜を形成する方法として、蒸着技術を用いることがある。蒸着技術は、物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)と化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)に大別される。例えば、シリコン基板やガラス基板などの基材に対して薄膜を形成して半導体基板を製造する場合などは、基材に対してプラズマ処理を行うプラズマCVD法や、基材に対してスパッタリング処理を行うスパッタリング法が用いられる。
【0003】
プラズマCVD法においては、所望の原料ガスをプラズマ状態にするために、直流、高周波などの電源が用いられる。また、スパッタリング法においても、ターゲット物質を弾き出すためのイオンを生成するために、不活性ガスをプラズマ状態にする。そのため、直流、高周波などの電源が用いられる。プラズマを生成する場合、必ずしも理想のプラズマが生成されるとは限らず、電極の設置位置や状態、更には成膜室内でのチリやホコリの影響等により、プラズマの異常放電が発生することがある。
【0004】
このようなプラズマ異常放電により成膜処理に悪影響が出ないように、供給電源を制御(供給低減や停止)する処理を施すことで、プラズマ異常放電を緩和又は阻止する技術がある(先行技術文献1)。しかし、プラズマ異常放電が生じるような場合に、必ず緩和又は阻止する必要があるのか否かを知るためには、様々な実測や経験が必要である。現状は、プラズマ異常放電のレベルによっては緩和又は阻止が必ず必要とは言えず、また、プラズマ異常放電のレベルによって成膜にどのような影響が生じるのかを考慮することはできていない。
【0005】
半導体基板以外の基材、例えば、偏光フィルムや位相差フィルムなどの光学フィルムを含む機能性フィルムにおいても、基材上に薄膜を形成する処理を行うために、プラズマCVD法やスパッタリング法が用いられる場合がある。機能性フィルムの場合、機能性フィルムとしての性能も必要であるが、タッチパネルや液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などの表面に貼付して使用したりする場合は、視認性がより重要視され、黒点やシミなど視認性を阻害するような部位の発生を防止しなくてはならない。
【0006】
従来、機能性フィルムは、切断シートの形で成膜する場合もあるが、ロール上の原材料(樹脂フィルム)を逆側で巻き取り搬送しながら、巻き取り途中で、順次、成膜処理を施すような製造方法や成膜装置が採用されている場合もある。この場合、成膜工程では視認性の確認ができないため、成膜処理が完了した後、巻き取ったロール材を別の検査工程に移動し、黒点やシミなどの視認性不具合有無の検査を行っている。
【0007】
このような黒点やシミなどの視認性不具合の原因は様々である。例えば、原材料の段階で既に存在している場合や、成膜工程に流すために原材料を別ロールに巻き直す際に、傷やゴミやチリが付着する場合など、成膜工程以外の処理工程での扱いがその原因となる場合もある。また、成膜処理工程において、成膜室内のゴミやチリが付着する場合もあれば、電極の設置位置や状態の影響、更には成膜室内でのチリやホコリの影響でプラズマの異常放電が発生し、これにより、黒点やシミなどの視認性不具合が発生することもある。
【0008】
しかし、従来は、成膜処理時にどの様なプラズマの異常放電が発生しているのか、そしてその異常放電が成膜処理にどの様に影響しているのか、その因果関係を確認する手法はとられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−102196公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プラズマを用いて基材に薄膜を形成する際の不具合を減らすためには、不具合とその発生要因との因果関係を知る必要がある。特に、視認性不具合が、成膜工程における不具合発生要因の一つと考えられるプラズマの異常放電と、どの様な因果関係にあるのかを把握する必要がある。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、基材に発生する不具合の状態又はプラズマ異常放電の状態を、容易に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための、本願発明の成膜装置の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
プラズマを用い成膜位置において基材上に薄膜を形成する成膜室と、
前記プラズマの異常放電を検出する異常放電検出部と、
前記異常放電が検出されたときのプラズマである異常時プラズマ、又は、前記異常放電が検出されたときに薄膜が形成された基材面である異常時基材面を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像を記憶する記憶部と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【0013】
また、本願発明の成膜方法の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
プラズマを用いて基材上に薄膜を形成する薄膜形成ステップと、
前記プラズマの異常放電を検出する異常放電検出ステップと、
前記異常放電が検出されたときのプラズマである異常時プラズマ、又は、前記異常放電が検出されたときに薄膜が形成された基材面である異常時基材面を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップで撮像した画像を記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで記憶した画像を表示する表示ステップと、
を備えることを特徴とする成膜方法。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば、基材に発生する不具合の状態又はプラズマ異常放電の状態を、容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る成膜装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る成膜方法を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る基材モニタカメラが、異常時基材面を撮像するタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(1)成膜装置の構成
図1は、本発明の実施形態に係る成膜装置の構成図であり、成膜室11の縦断面図(図1のXZ断面図)を示す。図1に示すように、本実施形態の成膜装置10は、成膜室11と、基材収容室15と、制御部21と、記憶部22と、表示部23と、電源部24とを備える。本実施形態の例では、成膜室11において、テープ状の基材19に対し、スパッタリング法を用いた成膜処理が行われる。
【0017】
成膜室11内には、電極12と、処理用ローラ16cの一部と、プラズマモニタカメラ26とが設けられる。電極12は、直方体形状であり、ターゲットであるカソードを構成する。処理用ローラ16cは、図1におけるXZ断面が円形の円筒形状であり、アノードを構成する。成膜室11は、直方体形状である。なお、図1におけるY方向は、XZ面と垂直な方向(図1の紙面を表から裏へ貫く方向)である。
【0018】
成膜室11内を低圧にし、不活性ガス(例えばアルゴンガス)を成膜室11内に導入しながら、電極12と処理用ローラ16cとの間に、電源部24から電力を供給する。これにより、アルゴンガスがイオンと電子に分離し、成膜室11内にプラズマ14が発生する。このプラズマ14を用いて、基材19の表面上に薄膜を形成する成膜処理を行う。詳しくは、イオン化したアルゴンをターゲット(電極12)に衝突させ、弾き飛ばされたターゲット物質を、成膜位置Pにおいて基材19上に成膜させる。成膜位置Pは、処理用ローラ16cが成膜室11内に露出した位置であり、基材19が成膜処理される位置である。
【0019】
プラズマモニタカメラ26は、プラズマ14を撮像、特にプラズマ14が異常放電するときに、異常放電14aを撮像する撮像装置である。図1に示す異常放電14aは、プラズマ14とターゲット(電極12)との間で発生したアーキングである。この異常放電14aにより、パーティクルが大量に発生し、視認性不具合の原因となることがある。
【0020】
プラズマモニタカメラ26は、制御部21に信号接続され、制御部21からの指示に基づき、プラズマ14(異常放電14aを含む)を撮像し、撮像した画像(プラズマ画像)を制御部21へ送信する。例えば、プラズマモニタカメラ26は、プラズマ14を撮像する際の時間帯(タイミング)や撮像速度(1秒間あたりの撮像枚数)を、制御部21から指示されて、この指示に基づき、プラズマ14を撮像する。プラズマ14(異常放電14aを含む)の撮像方法については後述する。
【0021】
基材収容室15は、直方体形状であり、仕切り壁13を介して、成膜室11に隣接して設けられる。基材収容室15内には、成膜処理前の基材19を成膜室11内へ供給し、成膜処理後の基材19を成膜室11内から回収するローラ16と、基材モニタカメラ27と、マーキング装置28とが設けられる。本実施形態の例では、基材19は、テープ状のPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を材料とするフィルム(膜)である。この基材19上に、所定の材料が成膜されて、例えば、反射防止フィルムやITO(Indium Tin Oxide)フィルム等の、ある種の機能を有する公知の機能性フィルムが生成される。
【0022】
ローラ16は、供給用ローラ16aと、補助ローラ16bと、処理用ローラ16cと、補助ローラ16dと、回収用ローラ16eとを含むように構成される。これらのローラ16は、図1におけるXZ断面が円形の円筒形状である。供給用ローラ16aは、成膜処理前のテープ状の基材19を巻いており、図中の矢印の方向に回転し、処理用ローラ16cへ基材19を供給する。処理用ローラ16cは、前述したように、その一部を成膜室11内に露出しており、図中の矢印の方向に回転し、露出した位置(成膜位置P)にある基材19を成膜処理させる。回収用ローラ16eは、図中の矢印の方向に回転し、処理用ローラ16cで成膜処理された基材19を巻き取り回収する。補助ローラ16b,16dは、処理用ローラ16cと逆方向に回転し、基材19を処理用ローラ16cに密着させる。
【0023】
回収用ローラ16eは、回転駆動装置(不図示)と接続され、回転駆動装置により、回転される。回転駆動装置は、制御部21に信号接続され、制御部21からの指示に基づき、回収用ローラ16eを回転させるとともに回転速度を所定値に保つ。
【0024】
基材モニタカメラ27は、プラズマ14が異常放電したときに成膜位置Pにあった基材19を、成膜処理後において、成膜位置Pとは別の位置で撮像する撮像装置である。基材モニタカメラ27は、制御部21に信号接続され、制御部21からの指示に基づき、基材19を撮像し、撮像した画像(基材面画像)を制御部21へ送信する。例えば、基材モニタカメラ27は、基材19を撮像する際の時間帯(タイミング)や撮像速度(1秒間あたりの撮像枚数)を、制御部21から指示されて、この指示に基づき、基材19を撮像する。プラズマ14が異常放電したときの基材19の撮像方法については後述する。
【0025】
マーキング装置28は、プラズマ14が異常放電したときに成膜位置Pにあった基材19の位置を、成膜処理後において、成膜位置Pとは別の位置でマーキングする。つまり、マーキング装置28は、プラズマ14が異常放電したときに成膜位置Pにあった基材19の部分(例えば基材19の表面又は裏面の端部)に対して、異常検出したことを示す異常検出情報を付加する異常検出情報付加装置である。マーキング装置28は、制御部21に信号接続され、制御部21からの指示に基づき、基材19をマーキングする。プラズマ14が異常放電したときのマーキング方法については後述する。
【0026】
マーキング装置28は、例えば、レーザ光28aを用いて基材19に穿孔を形成する公知のレーザ加工装置で構成される。もちろん、マーキング装置28を、レーザ加工装置以外のマーキング手段で構成してもよい。
【0027】
また、基材収容室15には、基材収容室15内に不活性ガス(例えばアルゴンガス)を導入するガス導入口17と、基材収容室15内のガスを排出する排気口18とが設けられる。ガス導入口17から導入されたアルゴンガスは、仕切り壁13と処理用ローラ16cとの間の隙間から、成膜室11内へ供給され、成膜処理に使用される。成膜処理に使用された後、アルゴンガスは、仕切り壁13と処理用ローラ16cとの間の隙間から、基材収容室15内に戻り、排気口18から排出される。
【0028】
ガス導入口17は、ガス供給管(不図示)を介して、ガス供給源(不図示)に接続される。ガス供給管には、流量を所定値に制御する流量制御装置(MFC:マスフローコントローラ)が設けられる。流量制御装置は、制御部21に信号接続され、制御部21からの指示に基づき、ガス供給管を流れるガスの流量、つまり基材収容室15に導入されるガスの流量を、所定値に制御する。
【0029】
排気口18は、排気管(不図示)を介して、真空ポンプで構成される排気装置(不図示)に接続される。排気管には、基材収容室15内の圧力を所定値に制御する圧力制御装置(APC:自動圧力調整弁)が設けられる。圧力制御装置は、制御部21に信号接続され、制御部21からの指示に基づき、基材収容室15内の圧力、つまり成膜室11内の圧力を、所定値に制御する。
【0030】
なお、ガス導入口17と排気口18を、基材収容室15に設けるのではなく、成膜室11に設けるように構成してもよい。また、ガス導入口17と排気口18のいずれか一方を、基材収容室15に設け、他方を、成膜室11に設けるように構成してもよい。
【0031】
制御部21は、記憶部22、表示部23、電源部24、プラズマモニタカメラ26、基材モニタカメラ27、マーキング装置28等と信号接続され、成膜装置10が行う各種処理を制御する。また、制御部21は、プラズマモニタカメラ26や基材モニタカメラ27から、プラズマ画像情報や基材面画像情報を受信し、記憶部22へ記憶させる。
【0032】
具体的には、制御部21は、例えば、基材収容室15に導入するアルゴンガスの流量が所定値となるよう、また、成膜室11内の圧力が所定値となるよう制御する。また、制御部21は、成膜室11内にプラズマ14を発生させるよう、つまり、電極12と処理用ローラ16c間に印加する電圧が所定値となるよう、電源部24を制御する。そして、制御部21は、回収用ローラ16eを所定の一定速度で回転させ、基材19の表面上に薄膜を形成する成膜処理を行うよう制御する。
【0033】
また、制御部21は、プラズマ14の異常放電14aを検出する異常放電検出部21aを備える。異常放電検出部21aは、直流スパッタリング法の場合は、例えば、電源部24から出力される電力信号の大きさ(例えば電圧値)を示す電源部状態信号を、電源部24から受信し、上記電力信号の大きさに基づき、異常放電14aを検出する。高周波スパッタリング法の場合は、異常放電検出部21aは、例えば、電源部24から出力される高周波電力信号に含まれる反射波の大きさを示す電源部状態信号を、電源部24から受信し、上記反射波の大きさに基づき、異常放電14aを検出する。
【0034】
このように、本実施形態では、異常放電14aの検出とは、異常放電と密接に関係する信号の大きさ(上記電力信号の大きさや上記反射波の大きさ等)が、所定値以上で検出されることをいう。
【0035】
制御部21は、異常放電検出部21aで異常放電14aを検出すると、異常放電14aを検出したときに薄膜が形成された基材面(異常時基材面)の、基材19全体における位置を示す異常位置情報22aを、記憶部22に記憶させる。異常位置情報22aは、例えば、テープ状の基材19の先頭位置からの距離や、供給用ローラ16aの回転開始から異常時基材面が成膜位置Pに搬送されるまでの搬送時間(つまり、基材19の搬送を開始した後、異常放電14aを検出するまでの時間)により、表すことができる。基材19の搬送速度は一定なので、搬送時間は距離を示す。
【0036】
また、制御部21は、異常放電検出部21aで、異常放電14aが検出されたときのプラズマ14である異常時プラズマの状態を示す異常値情報22bを生成し、異常値情報22bと、プラズマモニタカメラ26によって撮像された異常時プラズマの画像情報である異常プラズマ画像情報22cとを対応付けて、記憶部22に記憶させる。異常値情報22bは、例えば、異常放電検出部21aで検出した電源部状態信号の大きさであり、例えば、電圧値等の電力信号の大きさや、反射波の大きさである。
【0037】
また、制御部21は、プラズマモニタカメラ26に対し、異常時プラズマを撮像する際の、タイミングや撮像速度を指示する。また、制御部21は、基材モニタカメラ27に対し、異常放電14aを検出したときに薄膜が形成された基材19の面である異常時基材面を撮像する際の、タイミングや撮像速度を指示する。
【0038】
また、制御部21は、異常放電検出部21aで異常放電14aを検出した後に、上述の異常位置情報22aに基づき、成膜位置Pとは別の位置で、基材モニタカメラ27に異常時基材面を撮像させる。そして、制御部21は、異常位置情報22aと異常時基材面の画像である異常基材面画像情報22dとを対応付けて、記憶部22に記憶させる。さらに、制御部21は、同一の異常放電14aに対して、異常位置情報22aと、異常プラズマ画像情報22cと、異常基材面画像情報22dとを対応付けて、記憶部22に記憶させる。
【0039】
また、制御部21は、マーキング装置28に対し、異常放電14aを検出したときに基材19をマーキングする際の、タイミングやマーキング位置を指示する。マーキング位置は、上述の異常位置情報22aに基づき決定されるが、異常位置情報22aが示す位置と同じ位置であってもよい。
【0040】
こうして、制御部21は、異常放電14aを検出すると、該異常放電14aを検出したときに薄膜が形成された基材面の位置を示す異常位置情報22aと、該異常放電14aを検出したときのプラズマ14の状態を示す異常値情報22bと、該異常放電14aを検出したときのプラズマ14(異常時プラズマ)の画像である異常プラズマ画像情報22cと、該異常放電14aを検出したときに薄膜が形成された基材19の基材面(異常時基材面)の画像である異常基材面画像情報22dとを対応付けて、記憶部22に記憶させる。
【0041】
例えば、制御部21は、第1の異常放電14aを検出すると、第1の異常放電14aを検出したときに薄膜が形成された基材面の位置を示す第1の異常位置情報22aと、第1の異常放電14aを検出したときのプラズマ14の状態を示す第1の異常値情報22bと、第1の異常放電14aを検出したときのプラズマ14(異常時プラズマ)の画像である第1の異常プラズマ画像情報22cと、第1の異常放電14aを検出したときに薄膜が形成された基材19の基材面(異常時基材面)の画像である第1の異常基材面画像情報22dとを対応付けて、記憶部22に記憶させる。
【0042】
同様に、制御部21は、第2の異常放電14aを検出すると、上記第1の異常位置情報22aと第1の異常値情報22bと第1の異常プラズマ画像情報22cと第1の異常基材面画像情報22dとを保存したまま、さらに、第2の異常位置情報22aと、第2の異常値情報22bと、第2の異常プラズマ画像情報22cと、第2の異常基材面画像情報22dとを対応付けて、記憶部22に記憶させる。
【0043】
そして、制御部21は、対応付けて記憶部22に記憶させた、異常位置情報22aと異常値情報22bと異常プラズマ画像情報22cと異常基材面画像情報22dから、任意の情報を組み合わせて、表示部23に表示させる。例えば、第1の異常値情報22bと第1の異常プラズマ画像情報22cとの組み合わせを表示させる。あるいは、第1の異常プラズマ画像情報22cと第1の異常基材面画像情報22dとの組み合わせを表示させる。
【0044】
制御部21は、ハードウエア構成としては、CPU(Central Processing Unit)と制御部21の動作プログラム等を格納するメモリとを備えており、CPUは、この動作プログラムに従って動作する。
【0045】
記憶部22は、制御部21の指示に基づき、上述した異常位置情報22aと、異常値情報22bと、異常プラズマ画像情報22cと、異常基材面画像情報22dを記憶する。
【0046】
表示部23は、制御部21の指示に基づき、記憶部22に記憶された、異常位置情報22aと、異常値情報22bと、異常プラズマ画像情報22cと、異常基材面画像情報22dを表示する。
【0047】
電源部24は、制御部21の指示に基づき、電力供給線25a,25bにより、電極12と処理用ローラ16c間に、電力を供給する。例えば、直流スパッタリング法の場合は、電極12と処理用ローラ16c間に、直流電圧を印加する。高周波スパッタリング法の場合は、電極12と処理用ローラ16c間に、高周波電圧を印加する。また、電源部24は、上述した電源部状態信号を、異常放電検出部21aへ出力する。
【0048】
(2)成膜方法
次に、本実施形態の成膜方法を、図2図3を用いて説明する。図2は、本発明の実施形態に係る成膜方法を示す図であり、以降において、成膜方法の各工程について説明する。この成膜方法は、上述した成膜装置10を用いて、例えば、機能性フィルム製造工程の一工程として実施される。なお、以下の説明において、成膜装置10を構成する各部の動作は、制御部21により制御される。
【0049】
図3は、本発明の実施形態に係る基材モニタカメラが、異常時基材面を撮像するタイミングを示す図である。図3(a)は、成膜位置における基材19の位置A,B,Cを示す。基材19中の矢印は、基材19の搬送方向である。図3(b)は、基材19が、成膜位置からtd時間搬送され、基材撮像位置に到達したときの上記位置A,B,Cを示す。例えば、基材19が、成膜位置の位置Aにあるときの時刻をt11とすると、基材撮像位置の位置Aにあるときの時刻は(t11+td)となる。同様に、成膜位置の位置Bの時刻をt12とすると、基材撮像位置の位置Bの時刻は(t12+td)となり、成膜位置の位置Cの時刻をt13とすると、基材撮像位置の位置Cの時刻は(t13+td)となる。
【0050】
(ガス導入工程(ステップS1))
まず、図2に示すように、ガス導入口17から基材収容室15へアルゴンガスを導入しつつ、排気口18から排気する。このとき、アルゴンガスの導入量が所定の流量となり、基材収容室15内の圧力(つまり成膜室11内の圧力)が所定の圧力(大気圧よりも低い圧力)となるように制御する。
【0051】
(プラズマ生成工程(ステップS2))
成膜室11内の圧力が所定の圧力となった後、電源部24から電極12と処理用ローラ16c間に電圧を印加し、成膜室11内にプラズマ14を生成する。
【0052】
(搬送・成膜工程(ステップS3))
プラズマ14を生成した後、回収用ローラ16eを駆動して、基材19の搬送を開始する。基材19は、供給用ローラ16aから処理用ローラ16cを経由して、回収用ローラ16eへ搬送され巻き取られる。こうして、成膜室11内の成膜位置Pにおいて、搬送中の基材19の表面上に、連続して薄膜が形成される。
【0053】
(撮像・画像情報記憶工程(ステップS4))
このとき、搬送・成膜工程S3と併行して、基材19の搬送中において、プラズマ14と基材19の表面である基材面とが、それぞれ連続して撮像される。そして、それぞれの画像情報が、連続して制御部21へ送信され、制御部21により連続して記憶部22に記憶される。このとき、プラズマ14の画像情報であるプラズマ画像情報は、そのプラズマ14を撮像したときに成膜位置Pに存在した基材19の基材面の画像情報である基材面画像情報、及びそのプラズマ14を撮像したときに成膜位置Pに存在した基材19の位置情報と対応付けられて、記憶部22に記憶される。
【0054】
例えば、基材19が成膜位置Pから基材モニタカメラ27の撮像位置まで搬送されるのにtd時間を要するとすると、時刻t0において撮像したプラズマ画像情報と、時刻(t0+td)において撮像した基材面画像情報とが、基材19の位置情報(テープ状の基材19の先頭位置からの距離や搬送時間)と対応付けられて、記憶部22に記憶される。
【0055】
記憶されたプラズマ画像情報と基材面画像情報と基材19の位置情報は、プラズマ14の異常放電14aが検出されなかった場合は、所定時間後に、記憶部22から削除される。情報の削除とは、当該情報を、制御部21が記憶部22から読み出しできない状態にすることであり、その情報が、記憶部22内に物理的に残っている場合も含む。
【0056】
(異常放電検出工程(ステップS5))
搬送・成膜工程S3と併行して、異常放電検出工程S5において、プラズマ14の異常放電14aが検出されたか否かが判定される。
【0057】
(異常処理工程(ステップS6))
異常放電検出工程S5において異常放電14aが検出されると、搬送・成膜工程S3と併行して、異常処理工程S6が実施される。
異常処理工程S6においては、マーキング装置28が、異常放電14aを検出したときに成膜位置Pに存在した基材19の位置を、基材19にマーキングする。
【0058】
例えば、マーキング装置28は、基材19の端部(図1のY方向における端部)の表面又は裏面に、基材19の位置をレーザ光28aで穿孔する。このマーキングは、異常放電14aを検出する毎に行われるので、どの異常放電14aを示すのかが分かり易いものが好ましい。例えば、異常放電14aを検出した順を示すマーキング(例えば、番号をマーキング)することが好ましい。このようにすると、そのマーキングがどの異常放電14aを示すのかを容易に知ることができる。
【0059】
また、異常処理工程S6においては、異常放電14aを検出したときに成膜位置Pで薄膜が形成された基材19の位置を示す異常位置情報22aと、異常放電14aを検出したときのプラズマ14の状態を示す異常値情報22bと、異常放電14aを検出したときのプラズマ14の画像である異常プラズマ画像情報22cと、異常放電14aを検出したときに成膜位置Pで薄膜が形成された基材19の画像である異常基材面画像情報22dとを対応付けて、記憶部22に記憶し、表示部23に表示する。
【0060】
また、異常処理工程S6においては、異常放電14aを検出したときの時刻である異常放電検出時刻の前後の所定範囲の時間におけるプラズマ画像情報を、異常プラズマ画像情報22cとして、記憶部22から削除せずに残し、上記所定範囲以外の時間におけるプラズマ画像情報を削除する。例えば、異常放電検出時刻の前後の所定範囲の時間におけるプラズマ画像情報を、異常プラズマ画像情報22cとして、記憶部22の保存用エリアに移す。
【0061】
例えば、時刻t2において異常放電14aを検出したときは、異常放電検出時刻t2の前の所定範囲の時間(a:t1〜t2)と、異常放電検出時刻t2の後の所定範囲の時間(b:t2〜t3)におけるプラズマ画像情報を、記憶部22から削除せずに残し、t1〜t3以外の時間におけるプラズマ画像情報を削除する。aとbは、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0062】
また、図3に示すように、異常処理工程S6においては、異常放電14aを検出したときに薄膜が形成された基材19の基材面における位置Bの画像情報、つまり、異常時基材面Bの画像情報の、前後の所定範囲(A〜C)における基材面画像情報を、異常基材面画像情報22dとして、記憶部22から削除せずに残し、上記所定範囲(A〜C)以外における基材面画像情報を削除する。例えば、異常時基材面の前後の所定範囲における基材面画像情報を、異常基材面画像情報22dとして、記憶部22の保存用エリアに移す。
【0063】
例えば、時刻t12において異常放電14aを検出したときは、異常放電検出時刻t12の前の所定範囲の時間(c:t11〜t12)に薄膜が形成された基材面(A〜B)の画像情報と、異常放電検出時刻t12の後の所定範囲の時間(d:t12〜t13)に薄膜が形成された基材面(B〜C)の画像情報、つまり、t11〜t13の時間に薄膜が形成された基材面(A〜C)の画像情報を、記憶部22から削除せずに残し、t11〜t13以外の時間に薄膜が形成された基材面の画像情報を削除する。cとdは、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0064】
なお、基材モニタカメラ27は、異常放電検出時刻t12において、異常時基材面(異常放電14aを検出したときに成膜位置Pで薄膜が形成された基材面)を撮像することができず、異常放電検出時刻t12よりもtd時間遅いタイミングで、異常時基材面を撮像することになる。tdは、基材19が成膜位置Pから基材モニタカメラ27の位置まで搬送されるときの時間である。したがって、図3に示すように、時刻t12において異常放電14aを検出したときは、(t11+td)〜(t13+td)時間に基材モニタカメラ27で撮像された基材面画像情報を、記憶部22から削除せずに残し、(t11+td)〜(t13+td)以外の時間に基材モニタカメラ27で撮像された基材面画像情報を、削除することになる。
【0065】
例えば、時刻t2において第1の異常放電14aを検出すると、(t1〜t3)時間における第1のプラズマ画像を残し、(t1〜t3)以外の時間におけるプラズマ画像を削除する。また、時刻t2における異常時基材面の前後の所定範囲の基材面の画像である第1の基材面画像を残し、前記所定範囲以外の基材面画像を削除する。ただし、t1<t2<t3である。
【0066】
次に、時刻t12において第2の異常放電14aを検出すると、(t11〜t13)時間における第2のプラズマ画像と、上記第1のプラズマ画像とを残し、他のプラズマ画像を削除する。また、時刻t12における異常時基材面の前後の所定範囲の基材面の画像である第2の基材面画像と、上記第1の基材面画像とを残し、他の基材面画像を削除する。ただし、t11<t12<t13である。
【0067】
こうして、テープ状の基材19の成膜処理を、所定時間又は所定長行った後、搬送・成膜工程S3を終了する。
【0068】
本実施形態によれば、少なくとも次の効果を奏する。
(a)異常放電を検出したときの異常時プラズマ、又は、前記異常放電を検出したときに薄膜が形成された異常時基材面を撮像し記憶するよう構成したので、異常時プラズマ又は異常時基材面を、後で確認することができる。
(b)異常放電が検出される前から異常放電が検出された後に亘って連続的に撮像を行って記憶し、撮像された画像がプラズマの場合は、異常放電が検出された時刻の前後の第1の時間におけるプラズマ画像を残すとともに、第1の時間以外の時間におけるプラズマ画像を削除し、撮像された画像が基材面の場合は、連続的に撮像した基材面画像のうち、異常時基材面の前後の第2の範囲の基材面画像を残すとともに、第2の範囲以外の基材面画像を削除するよう構成したので、異常放電の前後におけるプラズマ又は基材面を、後で確認することができる。
(c)搬送されながら薄膜形成される基材を用い、異常放電が検出されたときに、異常時基材面の当該基材における位置を示す異常位置情報を記憶し、成膜位置とは別の第1の位置で、異常位置情報に基づき、異常時基材面を撮像するよう構成したので、プラズマに晒されることなく、異常時基材面を確実に撮像することができる。また、成膜室内に異常時基材面の撮像装置を設置できない場合においても、異常時基材面を撮像することができる。
(d)搬送されながら薄膜形成される基材を用い、異常放電が検出されたときに、異常時基材面の当該基材における位置を示す異常位置情報を記憶し、異常位置情報に基づき、成膜位置とは別の第2の位置で、異常検出情報付加装置(マーキング装置)が、異常放電を検出したことを示す異常検出情報を基材上に付加するよう構成したので、異常検出情報付加装置がプラズマに晒されることがなく、また、異常時基材面の位置を容易に確認できる。
(e)基材上に付加された異常検出情報に基づき、成膜位置とは別の第1の位置で、異常時基材面を撮像するよう構成したので、異常時基材面を確実かつ容易に撮像することができる。
(f)異常時プラズマの状態を示す異常値情報と、異常時プラズマの画像とを、対応付けて記憶するよう構成したので、異常値と異常時プラズマの状態との間の関係を知ることができる。
(g)成膜処理前のテープ状の基材を成膜室に供給するとともに、成膜処理後のテープ状の基材を成膜室から回収する基材収容室を、成膜室に隣接して設け、異常検出情報付加装置を基材収容室内に設けるよう構成したので、異常検出情報付加装置に成膜されることを抑制することができる。また、成膜室内に異常検出情報付加装置を設置できない場合においても、異常検出情報を基材上に付加することができる。
(h)基材面撮像装置を基材収容室内に設けるよう構成したので、基材面撮像装置に成膜されることを抑制することができる。また、成膜室内に基材面撮像装置を設置できない場合においても、異常時基材面を撮像することができる。
(i)異常時プラズマを撮像するプラズマ撮像装置と、異常時基材面を撮像する基材面撮像装置を設け、同一の異常放電に対して撮像された異常時プラズマの画像と異常時基材面の画像とを、対応付けて記憶するよう構成したので、異常時プラズマの状態と異常時基材面の状態との間の関係を知ることができる。
(j)異常時プラズマの画像と異常時基材面の画像とを、対応付けて表示するよう構成したので、異常時プラズマの状態と異常時基材面の状態との間の関係を、目視により確認することができる。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0070】
上記実施形態では、異常放電検出部21aが、電源部24から出力される電力信号の大きさや反射波の大きさに基づき、異常放電14aを検出するよう構成した。しかし、異常放電14aを起こしたプラズマをプラズマモニタカメラ26で撮像し、撮像した異常放電14aの画像をプラズマモニタカメラ26から受信することにより、異常放電検出部21aが、異常放電14aの発生を検出するよう構成することもできる。異常放電検出部21aは、例えば、正常なプラズマと異常放電時のプラズマとを比較することにより、異常放電14aの発生を検出できる。
【0071】
あるいは、成膜室11内に、異常放電14aによる発光を検知する光センサを設け、該光センサからの異常放電検知信号を、異常放電検出部21aで受信し、異常放電14aを検出するよう構成してもよい。あるいは、成膜室11内に、異常放電14aによる電磁波を検知する電磁波センサを設け、該電磁波センサからの異常放電検知信号を、異常放電検出部21aで受信し、異常放電14aを検出するよう構成してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、スパッタリング法を用いて薄膜を形成するよう成膜装置を構成したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、プラズマCVD法を用いて薄膜を形成するよう成膜装置を構成することもできる。プラズマCVD法を用いる場合は、成膜室11に透過窓を設けるとともに、プラズマモニタカメラ26を成膜室11の外側に配置し、プラズマモニタカメラ26が透過窓を介してプラズマを撮像するよう構成するのが好ましい。なお、上記実施形態において、成膜室11に透過窓を設けるとともに、プラズマモニタカメラ26を成膜室11の外側に配置し、プラズマモニタカメラ26が透過窓を介してプラズマを撮像するよう構成してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、減圧下において成膜したが、成膜する膜種によっては、減圧下だけでなく大気圧下においても、本発明を適用可能である。大気圧下で成膜する場合は、マーキング装置28として、液体のインクを吐出するインクジェット装置を使用してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、異常放電が検出される前から異常放電が検出された後に亘って連続的に撮像を行って記憶し、異常放電が検出された時刻の前後の所定範囲におけるプラズマや基材面の画像を残すとともに、前記所定範囲以外の画像を削除するよう構成した。しかし、異常放電が検出された時刻の前又は後のいずれか一方の所定範囲におけるプラズマや基材面の画像を残すとともに、前記所定範囲以外の画像を削除するよう構成してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、マーキング装置28であるレーザ加工装置を基材収容室15内に配置したが、基材収容室15に透過窓を設けるとともに、レーザ加工装置を基材収容室15の外側に配置し、レーザ加工装置が透過窓を介してレーザ光を照射するよう構成してもよい。また、成膜室11に透過窓を設けるとともに、レーザ加工装置を成膜室11の外側に配置し、レーザ加工装置が透過窓を介してレーザ光を照射するよう構成してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、テープ状の樹脂フィルムを基材として用いたが、ウエハ等のシリコン基板やガラス基板等を、基材として用いることも可能である。
【0077】
また、本発明は、本発明に係る処理を実行する装置や方法としてだけでなく、このような方法を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
【符号の説明】
【0078】
10…成膜装置、11…成膜室、12…電極(カソード)、13…仕切り壁、14…プラズマ、14a…異常放電、15…基材収容室、16…ローラ、16a…供給用ローラ、16b…補助ローラ、16c…処理用ローラ(アノード)、16d…補助ローラ、16e…回収用ローラ、17…ガス導入口、18…排気口、19…基材、21…制御部、21a…異常放電検出部、22…記憶部、22a…異常位置記憶部、22b…異常値記憶部、22c…異常プラズマ画像記憶部、22d…異常基材面画像記憶部、23…表示部(モニタ)、24…電源部、25a…電力供給線、25b…電力供給線、26…プラズマモニタカメラ(撮像装置)、27…基材モニタカメラ(撮像装置)、28…マーキング装置(異常検出情報付加装置)、28a…レーザ光。
図1
図2
図3