特許第6203426号(P6203426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許6203426プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法
<>
  • 特許6203426-プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法 図000002
  • 特許6203426-プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法 図000003
  • 特許6203426-プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法 図000004
  • 特許6203426-プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法 図000005
  • 特許6203426-プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203426
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   H02M3/28 H
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-559239(P2016-559239)
(86)(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公表番号】特表2017-509306(P2017-509306A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】EP2015051789
(87)【国際公開番号】WO2015144338
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年9月26日
(31)【優先権主張番号】102014205652.7
(32)【優先日】2014年3月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】タステキン,ダーフィット
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第8503199(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0327688(US,A1)
【文献】 特開2013−110826(JP,A)
【文献】 特開2014−79108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュプル型コンバータ(10)の昇圧コンバータモードを変調する方法において、
プッシュプル型コンバータ(10)が、
低電圧側に印加された直流電圧(5)を低電圧側の交流電圧に変換するように設計されており、低電圧側の第1切換装置(25a)と、低電圧側の第2切換装置(26a)と、チョーク(4)とを備える低電圧側回路(29);
低電圧側のコイルおよび高電圧側のコイルを備え、低電圧側の交流電圧を低電圧側のコイルで受信し、高電圧側の交流電圧を高電圧側のコイルで生成するように設計されたトランスフォーマ(2);および
高電圧側の交流電圧を高電圧側の直流電圧(1)に変換するためにフルブリッジ整流器として設計された高電圧側回路(20)であって、第1ハーフブリッジを形成する第1整流要素(21)および第2整流要素(22)と、第2ハーフブリッジを形成する第3整流要素(23)および第4整流要素(34)を備える高電圧側回路(20)
を備え;
少なくとも第1整流要素(21)または第4整流要素(24)が切換装置として形成されており、少なくとも第2整流要素(22)または第3整流要素(23)が切換装置として形成されており;
前記方法が、
変調サイクルの第1時間区分([0,t1])において第1整流要素(21)または第4整流要素(24)を介して高電圧側のコイルを短絡させるのと同時に、トランスフォーマ(2)において第1電圧を生成し、トランスフォーマ(2)およびチョーク(4)にエネルギーを供給するために低電圧側の第1切換装置(25a)を閉じるステップ;
変調サイクルの第2時間区分([t1,t2])において高電圧側の直流電圧(1)を生成するために、高電圧側のコイルを短絡させるために使用された整流要素(21,24)を開くステップ;
変調サイクルの第3時間区分([t2,t3])において第2ハーフブリッジの第2整流要素(22)または第3整流要素(23)を介して高電圧側のコイルを短絡させるのと同時に、トランスフォーマ(2)において第1電圧とは反対の極性を備える第2電圧を生成するために、低電圧側の第1切換装置(25a)を開き、低電圧側の第2切換装置(26a)を閉じるステップ;および
変調サイクルの第4時間区分([t3,t4])において高電圧側の直流電圧(1)を生成するために、高電圧側のコイルを短絡させるために使用された整流要素(22,23)を開くステップを含む、プッシュプル型コンバータ(10)の昇圧コンバータモードを変調する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記低電圧側回路(29)を、前記低電圧側の第1切換装置(25a)、前記低電圧側の第2切換装置(26a)、および前記チョーク(4)からなるセンタータップ式回路として形成する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
さらに低電圧側の第3切換装置(25b)および低電圧側の第4切換装置(26b)を含み、前記低電圧側の第1切換装置(25a)、前記低電圧側の第2切換装置(26a)、低電圧側の第3切換装置(25b)、低電圧側の第4切換装置(26b)、およびチョーク(4)からなるフルブリッジ回路として前記低電圧側回路(29)を形成し、
前記低電圧側の第1切換装置(25a)の開閉には、それぞれ前記低電圧側の第4切換装置(26b)の同時的な開閉が伴い、前記低電圧側の第2切換装置(26a)の開閉にはそれぞれ前記低電圧側の第3切換装置(25b)の同時的な開閉が伴う方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法において、
低電圧側および高電圧側の切換装置(21,22,23,24,25a,25b,26a,26b)が、MOSFET(31)、IGBT(31)、JFET(31)、および/またはBJT(31)を含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
低電圧側および/または高電圧側の切換装置(21,22,23,24,25a,25b,26a,26b)を同期整流器として形成する方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法において、
低電圧側および/または高電圧側の切換装置(21,22,23,24,25a,25b,26a,26b)に、それぞれ逆平行のダイオード(41)を設ける方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法において、
高電圧側の整流要素(21,22,23,24)を切換装置として形成し、連続する変調サイクルの第1時間区分([0,t1]において第1整流要素(21)および第4整流要素(24)を使用し、第3時間区分[t2,t3]において第2整流要素(22)および第3整流要素(23)を使用し、それぞれ交互に高電圧側のコイルを短絡させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法に関する。特に、本発明は双方向のプッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
双方向のプッシュプル型コンバータに基づいて本発明および本発明の基礎をなす課題を説明するが、本発明は、昇圧コンバータモードが設けられている他の任意のプッシュプル型コンバータにおいても使用可能である。
【0003】
一般に双方向の直流電圧コンバータは、電気エネルギーが2方向に伝送されることが望ましい場所に使用される。したがって、双方向の直流電圧コンバータは、ハイブリッド電気自動車においてエネルギーを高電圧網から低電圧網へ、およびその逆方向に伝送する役割を果たす。例えば、降圧コンバータモードにおいて直流電圧コンバータを用いて12Vの電池を充電することができ、これに対して、必要に応じて補助エネルギー蓄積システムを充電もしくは作動するために短期的に数百Vの出力が必要とされる場合に(例えば始動プロセスにおいて)昇圧コンバータモードを使用することができる。使用分野に応じて、直流電圧コンバータにおいて高電圧側と低電圧側との間のガルバニック分離が要求され、直流電圧コンバータをプッシュプル型コンバータとして実施することが有利になることもある。
【0004】
刊行物、「Nene H., "Digital Control of a Bi-Directional DC-DC Converter for Automotive Applications", Applied Power Electronics Conference and Exposition (APEC), Long Beach (CA), USA, 17-21 March, 2013 (doi: 10.1109/APEC.2013.6520476)」は、高電圧側でフルブリッジ回路が実施されており、低電圧側でセンタータップが実施されている双方向のプッシュプル型コンバータについて記載している。さらに、高電圧側には、トランスフォーマを通る電流を測定するために形成された電流センサ装置が設けられている。降圧コンバータモードでは、プッシュプル型コンバータを制御するための変調方式として、いわゆる「位相シフト法」が使用される。昇圧コンバータモードでは、高電圧側では一時的に電流が流れない方法が用いられる。
【0005】
制御式の昇圧コンバータモードでは、従来では低電圧側回路において付加的な電流センサ装置が必要とされる。したがって、低電圧側回路のコスト高な構成が不可欠となる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法において、
低電圧側に印加された直流電圧を低電圧側の交流電圧に変換するように設計されており、低電圧側の第1切換装置と、低電圧側の第2切換装置と、チョークとを備える低電圧側回路;
低電圧側のコイルおよび高電圧側のコイルを備え、低電圧側の交流電圧を低電圧側のコイルで受信し、高電圧側の交流電圧を高電圧側のコイルで生成するように設計されたトランスフォーマ;および
高電圧側の交流電圧を高電圧側の直流電圧に変換するためにフルブリッジ整流器として設計された高電圧側の回路であって、第1ハーフブリッジを形成する第1整流要素および第2整流要素ならびに第2ハーフブリッジを形成する第3整流要素および第4整流要素を備える高電圧側の回路
を備え;
少なくとも第1整流要素または第4整流要素が切換装置として形成されており、少なくとも第2整流要素または第3整流要素が切換装置として形成されており;
方法が、
変調サイクルの第1時間区分において第1整流要素または第4整流要素を介して高電圧側のコイルを短絡させるのと同時に、トランスフォーマにおいて第1電圧を生成し、トランスフォーマおよびチョークにエネルギーを供給するために低電圧側の第1切換装置を閉じるステップ;
変調サイクルの第2時間区分において高電圧側の直流電圧を生成するために、高電圧側のコイルを短絡させるために使用された整流要素を開くステップ;
変調サイクルの第3時間区分において第2ハーフブリッジの第2整流要素または第3整流要素を介して高電圧側のコイルを短絡させるのと同時に、トランスフォーマにおいて第1電圧とは反対の極性を備える第2電圧を生成するために低電圧側の第1切換装置を開き、低電圧側の第2切換装置を閉じるステップ;および
変調サイクルの第4時間区分において高電圧側の直流電圧を生成するために高電圧側のコイルを短絡させるために使用された整流要素を開くステップを含む。
【発明の利点】
【0007】
本発明の着想は、プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法において、低電圧側の電流センサ装置を不可欠とすることなしに、制御された作動を可能にする方法を形成することである。この場合、電流測定は高電圧側に設けられた電流センサ装置によって行われる。この方法は、昇圧コンバータモードにおいて、高電圧側の切換装置における出力もしくは電流を付加的に制御するために役立つ。電圧は、トランスフォーマの高電圧側のコイルおよび低電圧側のコイルの両方を通って常に流れ、個々の電流センサ装置によって常に測定もしくは制御することができる。本発明による解決方法の大きい利点は、付加的な電流センサ装置を低電圧側に手間をかけて組み込む必要なしに、昇圧コンバータモードにおいて従来のプッシュプル型コンバータを制御して作動することができることである。
【0008】
好ましい実施形態によれば、低電圧側回路は、低電圧側の第1切換装置、低電圧側の第2切換装置、およびチョークからなるセンタータップ式回路として形成されていてもよい。低電圧側回路のこの実施形態は、昇圧コンバータモードにおいてプッシュプル型コンバータを制御するために使用可能な切換装置を簡単に実現している。
【0009】
代替的な好ましい実施形態によれば、低電圧側回路は、さらに低電圧側の第3切換装置および低電圧側の第4切換装置を含む。さらに、低電圧側回路は、低電圧側の第1切換装置、低電圧側の第2切換装置、低電圧側の第3切換装置、低電圧側の第4切換装置、およびチョークからなるフルブリッジ回路として形成されていてもよい。さらに低電圧側の第1切換装置の開閉には、それぞれ低電圧側の第4切換装置の同時的な開閉が伴い、低電圧側の第2切換装置の開閉にはそれぞれ低電圧側の第3切換装置の同時的な開閉が伴う。低電圧側回路のこの実施形態は、昇圧コンバータモードでプッシュプル型コンバータを制御するために利用できる切換装置を代替的に実現している。
【0010】
好ましくは、低電圧側および高電圧側の切換装置は、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、JFET(接合型電界効果トランジスタ)、および/またはBJT(バイポーラ接合トランジスタ)、あるいは他の適宜な半導体スイッチを含んでいてもよい。したがって、切換装置は、有利には能動的に切換可能であり、個々の半導体基板に大量に組み込み可能な小型の半導体構成要素を含む。
【0011】
さらに、低電圧側および/または高電圧側の切換装置は、好ましくは同期整流器として形成されていてもよい。同期整流器は、整流のための簡易は可能性であり、例えば、付加的なダイオードは不可欠ではない。
【0012】
好ましい実施形態によれば、低電圧側および高電圧側の切換装置には、それぞれダイオードが逆平行に接続されていてもよい。この実施形態では、ダイオードを整流のために利用することができ、切換装置は同期整流器として形成されていなくてもよい。
【0013】
好ましい実施形態によれば、高電圧側の整流要素は切換装置として形成されていてもよい。さらに、連続する変調サイクルの第1時間区分においては第1整流要素および第4整流要素を、第3時間区分においては第2整流要素および第3整流要素を、高電圧側のコイルを短絡させるためにそれぞれ交互に利用してもよい。
【0014】
次に図面に関連した実施形態に基づいて本発明の他の特徴および利点を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】例示的な双方向プッシュプル型コンバータを示す概略図である。
図2a】双方向プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する例示的な方法における制御信号の経時変化を示す線図である。
図2b】本発明の一実施形態による双方向プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法における制御信号の経時変化を示す線図である。
図3】他の例示的な双方向プッシュプル型コンバータを示す概略図である。
図4】本発明の別の実施形態による双方向プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法における制御信号の経時変化を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面において、同じ符号は同じもしくは機能的に同じ部材を示す。
【0017】
図1は、例示的な双方向プッシュプル型コンバータの概略図を示す。
【0018】
図1においては符号10によりプッシュプル型コンバータが示されている。この場合、高電圧側回路20には、切換装置21,22,23,24からなるフルブリッジ回路が実現されている。低電圧側回路29は切換装置25a,26aおよびチョーク4からなるセンタータップ式回路として構成されている。さらに、高電圧側回路20と低電圧側回路29とはトランスフォーマ2を介してガルバニック絶縁されて互いに接続されている。高電圧側回路20の内部には、トランスフォーマ2によって電流を測定するために形成された電流センサ装置3が設けられている。切換装置21,22,23,24,25a,26bは、それぞれトランジスタ31およびダイオード41を含む。高電圧側回路20では直流電圧1が印加可能もしくは測定可能であり、低電圧側では対応して直流電圧5が印加可能もしくは測定可能である。
【0019】
降圧コンバータモードにおいて、高電圧側回路20は、位相シフト方法に基づいて切換装置21,22,23,24のトランジスタ31を適宜に周期的に切り換えることにより、トランスフォーマ2を介して高電圧側に印加された直流電圧1を低電圧側回路29に伝達し、低電圧側回路29はこれに基づいて低電圧側の直流電圧5を準備する。この実施形態では、低電圧側回路29のダイオードはセンタータップ型整流器としての役割を果たす。
【0020】
昇圧コンバータモードにおいて、高電圧側では一時的に電流が流れない方法を使用することもできる。この場合、低電圧側回路29の切換装置25a,26aのトランジスタ31のみが接続され(プッシュプル型コンバータ10の並列給電)、高電圧側回路20では、切換装置21,22,23,24のダイオード41がブリッジ整流器として使用される。図1に示したプッシュプル型コンバータ10における制御式の昇圧コンバータモードのためには、プッシュプル型コンバータ10を適宜に制御することができるように、常に電流を評価することができる方法もしくは切換装置が必要である。解決のためのアプローチは、低電圧側回路29に電流センサ装置3を組み込むことである。このためには、手間をかけて定電低圧側回路を構成することが不可欠となる。
【0021】
図2aは、双方向プッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調するための例示的な方法の制御信号の経時変化線図を示す。
【0022】
図2aに示された変調方法は、図1に示したプッシュプル型コンバータ10を昇圧コンバータモードで制御するために用いられる。この場合、低電圧側回路29の切換装置25a,26aのトランジスタ31がプッシュプル型コンバータ10の並列給電を行うために接続される。高電圧側回路20では、切換装置21,22,23,24のダイオード41がブリッジ整流器として使用される。高電圧側の切換装置21,22,23,24のトランジスタ31はこの方法では接続されない。図2aには、切換装置25a,26aの切換状態が時間の関数として示されている。両方の切換装置25a,26aは、180°だけ互いに位相シフトされた状態でスイッチオンおよびオフされる。いずれか一方の切換装置25a,26aが開かれている位相では、エネルギーは高電圧側の直流電圧源に供給され、そこで電流を誘導し、同時に低電圧側に印加された直流電圧5は高電圧側の直流電圧1に変換される。変調サイクルの第1時間区分[0,t1]においては、2つの切換装置25a,26aが電流を形成するために同時に閉じられており、エネルギーはチョーク4およびトランスフォーマ2に供給される。この時間区分においては、高電圧側の電流はゼロに等しい。変調サイクル第2時間区分[t1,t2]においては、切換装置25aは開かれており、切換装置26aは閉じられたままである。第3時間区分[t2,t3]においては、再び両方の切換装置25a,26aが閉じられている。第4時間区分[t3,t4]においては、切換装置25aは閉じられたままであり、切換装置26aは開かれている。したがって、高電圧側では電流が一時的に流れない。
【0023】
図2bは、本発明の一実施形態による双方向プッシュプル型コンバータ10の昇圧コンバータモードを変調するための方法における制御信号の経時変化線図を示す。
【0024】
図2bに示した変調方式も、図1に示したプッシュプル型コンバータ10を昇圧コンバータモードで制御するために用いられる。しかしながら、図2aの変調方式とは異なり、この変調方式では高電圧側で常に電流が流れる。図2aと同様に、この場合にも低電圧側回路29の切換装置25a,26aのトランジスタ31はプッシュプル型コンバータ10の並列給電を行うために接続される。
【0025】
さらに、この場合にも切換装置21,22,23,24のダイオード41は高電圧側回路20でブリッジ整流器として使用される。付加的に、図2bに示した方法では、高電圧側の切換装置21,22,23,24のそれぞれいずれか1つのトランジスタ31が接続されている。変調サイクルの第1時間区分[0,t1]においては、切換装置25aは閉じられており、切換装置26aは開かれている。これにより、トランスフォーマ2における第1電圧が準備され、エネルギーがトランスフォーマ2およびチョーク4に供給される。同時にこの第1時間区分[0,t1]では、対角線上に配置された切換装置21,24の第1の高電圧側ペアの2つのトランジスタ31のいずれかが接続される。これにより、トランスフォーマ2の高電圧側のコイルは短絡され、高電圧側回路20では直流電圧1は生成されない。それにもかかわらず、高電圧側回路20の電流は誘導され、特に電流センサ装置3を通って流れ、電流センサ装置3で測定される。変調サイクルの第2時間区分[t1,t2]においては、切換装置25aは開かれたままであり、切換装置26aは閉じられたままであり、第1時間区分[0,t1]では閉じられていた高電圧側回路20の切換装置21,24は再び開かれる。トランスフォーマ2の高電圧側のコイルはもはや短絡されておらず、エネルギーは高電圧側の直流電圧源に供給され、高電圧側の電流が誘導され、同時に低電圧側に印加された直流電圧5が高電圧側の直流電圧1に変換される。第3時間区分[t2,t3]においては、切換装置25aが開かれ、切換装置26aが閉じられる。同時に、対角線上に配置された切換装置の第2の降圧側ペアにおける2つの切換装置22,23のいずれかが閉じられる。第1時間区分[t0,t1]の場合と同様に、トランスフォーマ2の高電圧側のコイルが短絡され、高電圧側の直流電圧が生じることなしに、電流が高電圧側のコイルおよび電流センサ装置3を通って流れる。第4時間区分[t3,t4]においては、これまで閉じられていた高電圧側の切換装置22,23が再び開かれ、低電圧側の切換装置25a,26aは状態を保持する。
【0026】
この場合、高電圧側の切換装置のいずれがそれぞれ第1時間区分[0,t1]もしくは第3時間区分[t2,t3]において閉じられるかは任意である。例えば、第1時間区分において切換装置21または切換装置24を閉じてもよい。方法の一実施形態では、連続する変調サイクルにおいて両方の切換装置21,24が交互に接続される。このことは、スイッチ毎の損失を減じることができ、スイッチの寿命を高めることができるという利点を有する。
【0027】
プッシュプル型コンバータ10における本発明による方法の使用が図1に例示的に示されている。さらに図2bに示した方法の実施形態も例示的なものである。この方法は、特にプッシュプル型コンバータ10の他の実施形態においても使用することもできる。例えば、プッシュプル型コンバータ10の一実施形態では、ダイオード41は使用されず、トランジスタ31が同期整流器として制御される。図1のトランジスタの技術的な構成は詳細に特定されていない。原則的には、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、JFET(接合型電界効果トランジスタ)、および/またはBJT(バイポーラトランジスタ)として構成することが想定されているが、もちろん半導体スイッチのために適した他の技術を使用することもできる。
【0028】
図3は、他の例示的な双方向プッシュプル型コンバータの概略図を示す。
【0029】
原則的には、図3に示したプッシュプル型コンバータ10の作動方式は、図1に示したものと同様である。しかしながら、図1のプッシュプル型コンバータ10とは異なり、図3に示したプッシュプル型コンバータでは低電圧側回路29もフルブリッジ回路として実現されている。この低電圧側回路29は切換装置25a,26a,25b,26bおよびチョーク4からなる。全ての切換装置は、それぞれトランジスタ31およびダイオード41からなる。高電圧側回路20では直流電圧1が印加可能もしくは測定可能であり、低電圧側では、対応して直流電圧5が印加可能もしくは測定可能である。降圧コンバータモードでは低電圧側回路のダイオード41が、昇圧コンバータモードでは高電圧側回路のダイオード41が、それぞれブリッジ整流器として用いられる。昇圧コンバータモードでは、降圧コンバータモードの場合と同様に、プッシュプル型コンバータがそれぞれフルブリッジ制御によって作動される。しかしながら、昇圧コンバータモードでは、高電圧側回路20のトランジスタ31もトランスフォーマ2の高電圧側コイルを短絡させるために使用される。
【0030】
図4は、本発明の別の実施形態による双方向のプッシュプル型コンバータの昇圧コンバータモードを変調する方法における制御信号の経時変化線図を示す。
【0031】
図4には、図3に示したプッシュプル型コンバータを昇圧コンバータとして利用できる方法が例示的に示されている。原則的には、方法は図2bに示した方法と極めて類似しているが、低電圧側回路29がフルブリッジに対応して制御されることが相違している。したがって、変調サイクルの時間区分において、対角線上に配置された低電圧側回路29の切換装置は閉じられるか、もしくは開かれる。例えば、変調サイクルの第1時間区分[0,t1]においては、切換装置26aおよび25bは閉じられており、切換装置25a,26bは開かれたままである。図2bに示した方法の場合と同様に、第1時間区分[0,t1]では切換装置21または24は閉じられ、第2時間区分では再び開かれる。本発明のこの実施例においても、高電圧側では常に電流が電流センサ装置3を通って流れ、低電圧側の付加的な電流センサ装置が不可欠ではなくなる。
図1
図2a
図2b
図3
図4