特許第6203437号(P6203437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203437改造型電動車両用制御ユニット及び改造型電動車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6203437
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】改造型電動車両用制御ユニット及び改造型電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 1/00 20060101AFI20170914BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20170914BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170914BHJP
   H02H 3/16 20060101ALI20170914BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20170914BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B60L1/00 L
   B60L11/18 A
   H02J7/00 P
   H02H3/16
   B60K1/00
   B60K1/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-4371(P2017-4371)
(22)【出願日】2017年1月13日
【審査請求日】2017年1月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510328283
【氏名又は名称】三共オートサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 哲
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 員暢
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/132652(WO,A1)
【文献】 特開2014−69686(JP,A)
【文献】 特開2011−234536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−1/16,11/00−11/18
B60K 1/00−1/04
H02H 3/16
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非電動式の車両を改造することで作製される改造型電動車両に搭載される制御ユニットであって、
前記改造型電動車両の動力源として該改造型電動車両に搭載される電動モータ用のインバータと、前記電動モータの電源として前記改造型電動車両に搭載される蓄電器ユニットとの間の電流路に介装されるコンタクタを制御するコンタクタ制御部と、
前記改造型電動車両に搭載される複数の電動補機の起動用の複数のスイッチ素子であり、前記蓄電器ユニットよりも低電圧の電源である補機用蓄電器と前記蓄電器ユニットの出力電圧を降圧してなる電圧を出力する電圧変換器とのうちの少なくとも一方からの給電に応じて、それぞれに対応する電動補機を起動し得る状態に動作する複数の補機起動用スイッチ素子と、
前記補機用蓄電器及び前記電圧変換器と前記複数の補機起動用スイッチ素子との間の電流路に介装されるスイッチ素子であって、そのオン状態で、前記補機用蓄電器及び前記電圧変換器のうちの少なくとも一方から前記複数の補機起動用スイッチ素子に給電し得るように、該複数の補機起動用スイッチ素子に接続された補機起動制御用スイッチ素子と、
前記改造型電動車両の始動時に、前記蓄電器ユニットから前記インバータへの給電を開始するように前記コンタクタ制御部により前記コンタクタが制御されたとき、前記インバータへの給電の開始タイミングから所定の遅延時間の経過後に、前記補機起動制御用スイッチ素子をオフ状態からオン状態に制御する補機起動制御部とを備えており、
前記改造型電動車両には、前記蓄電器ユニットと前記インバータとの間の電流路での漏電の発生の有無を検出する漏電検出器が搭載されており、
前記補機起動制御部が、前記補機起動制御用スイッチ素子をオフ状態からオン状態に制御するタイミングは、前記蓄電器ユニットから前記インバータへの給電により該インバータに備えられたコンデンサの充電完了後のタイミングであって、且つ、前記インバータへの給電開始後に、前記漏電が発生していないことが前記漏電検出器により確認された後のタイミングであることを特徴とする改造型電動車両用制御ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の改造型電動車両用制御ユニットが、乗員搭乗室と、その後の荷台との間の隙間に搭載されていることを特徴とする改造型電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のトラック等の非電動式の車両を改造することにより作製される電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関が動力源として搭載されている既存のトラック等、非電動式の車両を改造することで作製される改造型電動車両(所謂、コンバージョンEV)の開発が進められている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5482697号公報
【特許文献2】特開平9−149552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記改造型電動車両の普及を図る上では、トラック等の非電動式の車両を改造型電動車両に改造することを、できるだけ簡易な構成で安価に行い得ることが望まれる。
【0005】
ただし、改造型電動車両は、既存の車両を改造して作製されるものであるため、種々様々な課題も発生する。例えば、改造型電動車両は、改造前の車両の走行用の動力源としての内燃機関の代わりに、電動モータ(以降、走行用モータということがある)が搭載される。このため、改造前の車両において内燃機関の動力により駆動されていた種々の補機を動作させるために、通常、複数の電動補機(電動モータ等)が必要となると共に、これらの電動補機に電源電力を給電する必要がある。
【0006】
この場合、改造前の車両に搭載されていた低電圧のバッテリでは、上記複数の電動補機の全体の電源電力を負担することは困難となりやすい。このため、走行用モータの電源として改造型電動車両に搭載される高電圧の蓄電器ユニットから、上記複数の電動補機のそれぞれに電源電力を給電し得るようにすることが考えられる。
【0007】
しかるに、この場合、次のような不都合を生じることが本願発明者等の検討により判明した。すなわち、改造型電動車両に搭載される蓄電器ユニットから走行用モータへの給電は、通常、インバータを介して行われる。この場合、改造型電動車両の始動時には、走行用モータの運転開始前に、インバータに備えられているコンデンサの充電(プリチャージ)を行う必要がある。
【0008】
そして、改造型電動車両の始動時に、走行用の電動モータの駆動用のインバータへの給電と、電動補機もしくはその駆動回路への給電とを一斉に開始すると、インバータのコンデンサの充電が十分に進行せず、ひいては、走行用モータの運転を速やかに開始することができなくなる虞がある。
【0009】
また、走行用モータの電源としての蓄電器ユニットは、高圧電源であることから、改造型電動車両には、通常、蓄電器ユニットから前記インバータに至る電流路での漏電の発生を検出する漏電検出器が搭載され、該漏電検出器により漏電の発生が検出される状態では、蓄電器ユニットから走行用モータ等への電力の出力を遮断することが行われる。
【0010】
この場合、改造型電動車両の始動時に、走行用の電動モータ及び電動補機の起動を一斉に開始すると、上記漏電検出器が漏電の発生を誤検知し、ひいては、車両を正常に始動することができなくなる場合がある。
【0011】
このような不都合を解消するためには、例えば前記特許文献2に見られる如き技術を、改造型電動車両に適用し、電動補機もしくはその駆動回路への給電を走行用モータの駆動用のインバータへの給電よりも遅延させて行うことが考えられる。
【0012】
しかるに、特許文献2に見られる技術では、複数の電動補機のために複数の遅延回路を必要とする。このため、特許文献2に見られる如き技術を、改造型電動車両に適用した場合には、改造型電動車両に搭載する電子回路ユニットの構成が大型化もしくは複雑化しやすいと共に、高価なものとなりやすい。
【0013】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、改造型電動車両の始動時に、該改造型電動車両に搭載されている走行用の電動モータと電動補機とに適切に電力を供給し得るようにすることを、簡易且つ安価な構成で実現できる制御ユニットを提供することを目的とする。
【0014】
また、当該制御ユニットを備える改造型電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の改造型電動車両用制御ユニットは、上記の目的を達成するために、非電動式の車両を改造することで作製される改造型電動車両に搭載される制御ユニットであって、
前記改造型電動車両の動力源として該改造型電動車両に搭載される電動モータ用のインバータと、前記電動モータの電源として前記改造型電動車両に搭載される蓄電器ユニットとの間の電流路に介装されるコンタクタを制御するコンタクタ制御部と、
前記改造型電動車両に搭載される複数の電動補機の起動用の複数のスイッチ素子であり、前記蓄電器ユニットよりも低電圧の電源である補機用蓄電器と前記蓄電器ユニットの出力電圧を降圧してなる電圧を出力する電圧変換器とのうちの少なくとも一方からの給電に応じて、それぞれに対応する電動補機を起動し得る状態に動作する複数の補機起動用スイッチ素子と、
前記補機用蓄電器及び前記電圧変換器と前記複数の補機起動用スイッチ素子との間の電流路に介装されるスイッチ素子であって、そのオン状態で、前記補機用蓄電器及び前記電圧変換器のうちの少なくとも一方から前記複数の補機起動用スイッチ素子に給電し得るように、該複数の補機起動用スイッチ素子に接続された補機起動制御用スイッチ素子と、
前記改造型電動車両の始動時に、前記蓄電器ユニットから前記インバータへの給電を開始するように前記コンタクタ制御部により前記コンタクタが制御されたとき、前記インバータへの給電の開始タイミングから所定の遅延時間の経過後に、前記補機起動制御用スイッチ素子をオフ状態からオン状態に制御する補機起動制御部とを備えており、
前記改造型電動車両には、前記蓄電器ユニットと前記インバータとの間の電流路での漏電の発生の有無を検出する漏電検出器が搭載されており、
前記補機起動制御部が、前記補機起動制御用スイッチ素子をオフ状態からオン状態に制御するタイミングは、前記蓄電器ユニットから前記インバータへの給電により該インバータに備えられたコンデンサの充電完了後のタイミングであって、且つ、前記インバータへの給電開始後に、前記漏電が発生していないことが前記漏電検出器により確認された後のタイミングであることを特徴とする(第1発明)。
【0016】
なお、本発明において、「電動補機を起動し得る状態」というのは、電動補機の作動に必要な電力を、該電動補機に供給し得る状態を意味する。
【0017】
上記第1発明によれば、前記蓄電器ユニットから前記インバータへの給電を開始するように前記コンタクタ制御部により前記コンタクタが制御されたとき、前記インバータへの給電の開始タイミングから所定の遅延時間の経過後に、前記補機起動制御用スイッチ素子をオフ状態からオン状態に制御される。
【0018】
このため、前記複数の補機起動用スイッチ素子は、前記インバータへの給電の開始タイミングから所定の遅延時間の経過後に、前記補機用蓄電器と前記電圧変換器とのうちの少なくとも一方から給電され、それぞれに対応する電動補機を起動し得る状態に動作することとなる。従って、前記複数の電動補機は、上記遅延時間の経過後に、作動用の電力が供給され得る状態になる。
【0019】
このため、前記インバータへの給電開始後、該インバータに備えられているコンデンサの充電(プリチャージ)が進行した後に、前記複数の電動補機への給電を開始することが可能となる。その結果、前記インバータのコンデンサの充電(プリチャージ)を円滑に進行させた上で、前記複数の電動補機の作動を開始することが可能となる。従って、改造型電動車両を正常に始動させることができる。
【0020】
また、第1発明によれば、前記補機起動制御用スイッチ素子をオン状態に制御することを前記遅延時間の経過後に行うことで、前記複数の電動補機への給電を行い得るタイミングを一括して遅延させることができる。このため、当該遅延のための回路構成を簡略なものとすることができる。
【0021】
さらに、前記補機起動制御用スイッチ素子、コンタクタ制御部、及び、補機起動制御部の構成は、前記複数の電動補機の個数によらずに使用し得る。このため、種々様々な種類の改造型電動車両に対して、前記補機起動制御用スイッチ素子、コンタクタ制御部、及び、補機起動制御部の構成を共用化できる。ひいては、制御ユニットの作製コストを低減することが可能となる。
【0022】
よって、第1発明によれば、改造型電動車両の始動時に、該改造型電動車両に搭載されている走行用の電動モータと電動補機とに適切に電力を供給し得るようにすることを、簡易且つ安価な構成で実現できる。
【0023】
さらに、本発明では、前記改造型電動車両に、前記蓄電器ユニットと前記インバータとの間の電流路での漏電の発生の有無を検出する漏電検出器が搭載されており、前記補機起動制御部が、前記補機起動制御用スイッチ素子をオフ状態からオン状態に制御するタイミングは、前記蓄電器ユニットから前記インバータへの給電により該インバータに備えられたコンデンサの充電完了後のタイミングであって、且つ、前記インバータへの給電開始後に、前記漏電が発生していないことが前記漏電検出器により確認された後のタイミングである
【0024】
これによれば、前記インバータのコンデンサの充電(プリチャージ)が完了する前に、電動補機への給電が開始されることがないので、該コンデンサの充電を速やかに完了した上で、電動補機への給電を開始することができる。
【0025】
なお、前記コンデンサの「充電完了」という状態は、前記蓄電器ユニットから前記コンデンサへの充電電流がゼロもしくは十分に微小なものとなる状態まで該コンデンサが充電された状態を意味する
【0027】
えて、電動補機への給電が開始される前に、前記漏電検出器による前記漏電の発生の有無の検出を行うことができるため、前記漏電が実際には発生していないのに、該漏電の発生が前記漏電検出器により誤検知されるのを防止することができる。ひいては、改造型電動車両の正常な始動を円滑に行うことができる。
【0028】
また、本発明の改造型電動車両は、上記第1発明の改造型電動車両用制御ユニットが、乗員搭乗室と、その後の荷台との間の隙間に搭載されていることを特徴とする(第発明)。
【0029】
これによれば、改造前の車両の空きスペースとしての上記隙間を有効に活用して前記制御ユニットを配置することができる。また、前記制御ユニットに他の物体が衝突するのを防止することができ、該制御ユニットを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1A及び図1Bはそれぞれ、本発明の実施形態における改造型電動車両を側面視及び平面視で示す図。
図2】第1実施形態における制御ユニットの回路構成を示す図。
図3】第2実施形態における制御ユニットの回路構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1A図1B及び図2を参照して説明する。図1A及び図1Bを参照して、本実施形態で説明する改造型電動車両A1は、例えば、エンジン(内燃機関)が動力源として搭載されていた既存の非電動式の車両としてのトラックを改造して作製される車両である。
【0032】
なお、図1A及び図1Bでは、改造型電動車両A1を概略的に記載しており、ミラー等の図示を省略している。また、図示例の改造型電動車両A1は、乗員搭乗室1aの後側の荷台1bが収容庫になっている車両であるが、該荷台1bは、例えば、上方に開口する箱状の荷台であってもよい。また、荷台1bに作業機が搭載されていてもよい。
【0033】
この改造型電動車両A1(以降、単に車両A1という)は、改造前の車両に搭載されていたエンジン(内燃機関)及びトランスミッション等が取り外されている。そして、車両A1には、走行用の動力源としての電動モータ2(以降、走行用モータ2という)、走行用モータ2の出力を減速する減速機3、走行用モータ2の電源としての蓄電器ユニット4、パワーステアリングユニット5、エアコンユニット6、エアーブレーキ用のエアコンプレッサユニット7、インバータユニット8、電圧変換器9、及び制御ユニット10が搭載されている。
【0034】
電動モータ2及び減速機3は、車両A1に新たに搭載されたものである。本実施形態では、減速機3は、走行用モータ2に装着されている。これらの走行用モータ2及び減速機3は、例えば、車両A1の荷台1bの下側の前部寄りの箇所に配置されている。そして、減速機3の出力側が、図示を省略するドライブシャフトの入力端に連結されている。これにより、走行用モータ2の動力を、減速機3及びドライブシャフトを介して駆動輪としての後輪1cに伝達することが可能となっている。
【0035】
補足すると、走行用モータ2及び減速機3の配置場所、あるいは、走行用モータ2と駆動輪との間の動力伝達機構の構成は上記と異なっていてもよい。
【0036】
蓄電器ユニット4は、車両A1に新たに搭載されたものである。この蓄電器ユニット4は、本実施形態では、複数の蓄電器、例えば4つの蓄電器4a,4a,4a,4aにより構成されている。各蓄電器4aは、例えば2次電池としてのリチウムイオン電池により構成される。この場合、各蓄電器4aは、複数のセル(要素電池)の集合体として構成される。
【0037】
そして、各蓄電器4aは、例えば、車両A1の荷台1bの下側に搭載されている。この場合、各蓄電器4aが重量物であることから、車両A1の重量バランスをとるために、車両A1の左側寄りの箇所と、右側寄りの箇所とにそれぞれ、2個の蓄電器4a,4aが前後に並列して配置されている。
【0038】
補足すると、蓄電器ユニット4を構成する蓄電器4aの個数、あるいは、各蓄電器4aの配置場所、あるいは、各蓄電器4aを構成する2次電池の種類は上記と異なっていてもよい。また、蓄電器ユニット4は、例えばキャパシタにより構成される蓄電器を含み得る。さらに、車両A1は、蓄電器ユニット4に加えて、燃料電池、あるいは、エンジン発電機(エンジンにより駆動される発電機)を走行用モータの電源電力の発生源として含み得る。
【0039】
パワーステアリングユニット5、エアコンユニット6、及びエアコンプレッサユニット7は、改造前の車両に搭載されたものの一部を改造したものである。詳細な図示は省略するが、本実施形態では、パワーステアリングユニット5に含まれる既存の油圧ポンプを駆動する電動モータ(以降、PS用モータという)と、エアコンユニット6に含まれる既存のコンプレッサを駆動する電動モータ(以降、AC用モータという)と、エアコンプレッサユニット7に含まれる既存のエアコンプレッサを駆動する電動モータ(エアコンプレッサ用モータという)とが、それぞれ、パワーステアリングユニット5、エアコンユニット6、及びエアコンプレッサユニット7に新たに組み込まれている。
【0040】
そして、パワーステアリングユニット5及びエアコンユニット6は、例えば、車両A1の乗員搭乗室1aの下側の箇所に配置されている。また、エアコンプレッサユニット7は、例えば、車両A1の荷台1bの下側に配置されている。
【0041】
インバータユニット8は、車両A1に新たに搭載されたものである。このインバータユニット8は、本実施形態では、車両A1に新たに搭載された複数の電動モータ(前記走行用モータ2、PS用モータ、AC用モータ、エアコンプレッサ用モータ)のそれぞれの駆動用の複数のインバータ11,12,13,14(図2に示す)を含む。
【0042】
インバータ11は、走行用モータ2の駆動用のインバータ(以降、走行用インバータ11という)、インバータ12は、PS用モータの駆動用のインバータ(以降、PS用インバータ12という)、インバータ13は、AC用モータの駆動用のインバータ(以降、AC用インバータ13という)、インバータ14は、エアコンプレッサ用モータの駆動用のインバータ(以降、エアコンプレッサ用インバータ14という)である。
【0043】
そして、インバータユニット8は、例えば、図1A及び図1Bに示す如く、車両A1の乗員搭乗室1aの下側に配置されている。また、各インバータ11〜14は、それぞれに対応する電動モータとの間で電力伝送を行い得るように、対応する電動モータに、電力配線を介して電気的に接続されている。さらに、各インバータ11〜14は、蓄電器ユニット4から電源電力を供給され得るように、該蓄電器ユニット4に後述するコンタクタ21を介して電気的に接続されている(図2を参照)。
【0044】
電圧変換器9は、車両A1に新たに搭載されたものである。この電圧変換器9は、高圧電源である蓄電器ユニット4の出力電圧(例えば300〜400V)を、車両A1の補機用の低電圧(例えば24V)に降圧するDC/DCコンバータである。この場合、車両A1の補機には、前記PS用モータ、AC用モータ及びエアコンプレッサ用モータは含まれない。
【0045】
そして、電圧変換器9は、例えば、車両A1の乗員搭乗室1aの下側に配置されている。なお、電圧変換器9から出力される降圧後の電力は、車両A1に搭載されている既存の補機用蓄電器であるバッテリ15(図2に示す。以降、補機用バッテリ15という)の充電用電力として使用される。また、電圧変換器9から出力される降圧後の電力、あるいは、補機用バッテリ15の電力は、後述するリレースイッチ21a〜21c,22〜26のそれぞれの作動用の電力として使用される。
【0046】
制御ユニット10は、車両A1に新たに搭載されたものである。この制御ユニット10は、その筐体内に、マイクロコントローラ、プロセッサ、メモリ、スイッチ素子、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットであり、走行用モータ2の運転制御等を含む車両A1の統括的な運転制御を行う機能を有する。この機能は、実装されるプログラム又はハードウェア構成により実現される機能である。
【0047】
そして、制御ユニット10は、例えば、車両A1の乗員搭乗室1aと、荷台1bの間の隙間に配置されている。
【0048】
補足すると、インバータユニット8、電圧変換器9、及び制御ユニット10の配置場所は、上記と異なっていてもよい。また、インバータ11〜14は、複数の場所に分散して配置されていてもよい。また、制御ユニット10は、複数の電子回路ユニットにより構成されていてもよい。
【0049】
次に、図2を参照して、蓄電器ユニット4及び制御ユニット10に係る回路構成をより具体的に説明する。図2に示すように、蓄電器ユニット4には、各蓄電器4aの正極及び負極のうちの一方、例えば正極に接続されたスイッチ素子4bと、各蓄電器4aの電力の漏電を検出する漏電検出器4cとが、各蓄電器4a毎に備えられている。各スイッチ素子4bは、例えばリレースイッチ、半導体スイッチ素子により構成される。
【0050】
そして、4つの蓄電器4a,4a,4a,4aのそれぞれの負極が相互に導通されていると共に、それぞれの正極がスイッチ素子4bを介して相互に接続されている。このため、全てのスイッチ素子4bをオン状態(導通状態)に動作させることで、4つの蓄電器4a,4a,4a,4aが相互に並列接続される。そして、この状態で、各蓄電器4aから電力を外部に出力することが可能となっている。
【0051】
漏電検出器4cは、各蓄電器4aの正極にスイッチ素子4bを介して接続されている。そして、各蓄電器4aに対応する漏電検出器4cは、該蓄電器4aに接続されたスイッチ素子4bのオン状態で該蓄電器4aの電力の漏電を検出することが可能である。
【0052】
補足すると、蓄電器ユニット4には、各蓄電器4aの状態(残容量、温度、出力電圧、通電電流、漏電の有無等)を監視したり、各蓄電器4aを構成する複数のセルのそれぞれの電圧のばらつきを抑制する等の機能を有する電子回路ユニットである蓄電器モニタユニット(図示省略)が各蓄電器4a毎に備えられている。
【0053】
そして、各蓄電器4aに対応するスイッチ素子4bのオンオフ制御は、各蓄電器4aに対応する蓄電器モニタユニットにより行われる。また、各蓄電器4aに対応する蓄電器モニタユニットは、制御ユニット10の後述する制御部30と通信可能である。この通信により、蓄電器モニタユニットは、各蓄電器4a毎のスイッチ素子4bのオンオフの指令を制御部30から受信したり、漏電検出器4cの検出データ等を制御部30に送信することが可能である。
【0054】
制御ユニット10は、蓄電器ユニット4と走行用インバータ11との間の電流路に介装されるコンタクタ21と、スイッチ素子としての複数のリレースイッチ22〜26と、マイクロコントローラ等により構成され、コンタクタ21及びリレースイッチ22〜26を制御する機能を有する制御部30とを備える。
【0055】
制御部30には、車両A1の運転スイッチ32の操作信号が入力されるようになっている。該運転スイッチ32は、改造前の車両に備えられていた既存のイグニッションスイッチであり、「OFF」位置、「ACC」位置、「IG」位置、及び「STA」位置の4種類の操作位置に操作可能である。そして、本実施形態では、「OFF」位置は、車両A1の運転停止状態での操作位置、「ACC」位置は、制御部30や前記各蓄電器モニタユニット等が起動される操作位置、「IG」位置は、蓄電器ユニット4が起動される操作位置(蓄電器ユニット4の各スイッチ素子4bがオン状態に制御される操作位置)、「STA」位置は、前記各インバータ11〜14への電力供給が可能となる操作位置(換言すれば、走行用モータ2及び電動補機(PS用モータ、AC用モータ、エアコンプレッサ用モータ)の駆動が可能となる操作位置)である。
【0056】
なお、本実施形態では、制御部30は、コンタクタ21及びリレースイッチ22〜26を制御する機能によって、本発明におけるコンタクタ制御部としての機能と、補機起動制御部としての機能とを併せ持つ。また、制御部30は、前記各蓄電器モニタユニットとの通信によって、各蓄電器4a毎の漏電検出器4cの検出データ等、各蓄電器4aに関する情報を適宜取得可能である。
【0057】
コンタクタ21は、3つのリレースイッチ21a,21b,21cと、リレースイッチ21bの接点スイッチに直列に接続された抵抗素子21dとを備え、リレースイッチ21bの接点スイッチと抵抗素子21dとの直列回路に、リレースイッチ21aの接点スイッチが並列に接続されている。
【0058】
そして、リレースイッチ21aの接点スイッチと、リレースイッチ21bの接点スイッチ及び抵抗素子21dの直列回路との並列回路が、蓄電器ユニット4の正極と走行用インバータ11との間の電流路に介装されている。また、リレースイッチ21cの接点スイッチは、蓄電器ユニット4の負極と走行用インバータ11との間の電流路に介装されている。
【0059】
ここで、抵抗素子21dが接点スイッチに直列に接続されたリレースイッチ21bは、走行用インバータ11の電力入力部に備えられているコンデンサ11aのプリチャージを行うためのリレースイッチである。すなわち、蓄電器ユニット4から走行用インバータ11への給電開始時に、リレースイッチ21aの接点スイッチをオン状態に制御する前に(オフ状態に維持したままで)、リレースイッチ21b,21cのそれぞれの接点スイッチをオン状態に制御することで、抵抗素子21dの抵抗値と、コンデンサ11aの容量値とに応じた時定数で、コンデンサ11aを徐々に充電することが可能である。
【0060】
リレースイッチ21a,21b,21cのそれぞれのコイルは、その一端が補機用バッテリ15に接続され、他端が前記制御部30に接続されている。この場合、制御部30は、リレースイッチ21a,21b,21cのそれぞれのコイルの通電を制御し得るように構成されている。この通電制御によって、リレースイッチ21a,21b,21cのそれぞれの接点スイッチのオンオフを制御することが可能である。
【0061】
なお、本実施形態では、走行用インバータ11の正極には、前記蓄電器ユニット4の漏電検出器4cと同様の漏電検出器11bが接続されている。この漏電検出器11bは、走行用インバータ11に蓄電器ユニット4から給電される電力の漏電を検出する。
【0062】
また、前記電圧変換器9の入力側が、蓄電器ユニット4とコンタクタ21との間の電流路に接続されている。これにより、コンタクタ21の動作状態によらずに、蓄電器ユニット4から出力される高電圧の電力が電圧変換器9に入力されるようになっている。そして、で電圧変換器9の出力側は、該電圧変換器9で降圧した電力を補機用バッテリ15に充電し得るように該補機用バッテリ15に接続されている。
【0063】
リレースイッチ22〜26のうち、リレースイッチ23は、PS用モータの起動用のリレースイッチであり、その接点スイッチがPS用インバータ12に接続されている。
【0064】
この場合、PS起動用リレースイッチ23の接点スイッチのオン状態では、蓄電器ユニット4からコンタクタ21を介してPS用インバータ12に電力を供給し得る状態(換言すれば、PS用モータを駆動し得る状態)になり、該接点スイッチのオフ状態では、PS用インバータ12への電力の供給が遮断される状態(換言すれば、PS用モータを駆動できない状態)になる。以降、リレースイッチ23を、PS起動用リレースイッチ23ということがある
【0065】
また、リレースイッチ24は、AC用モータの起動用のリレースイッチであり、その接点スイッチがAC用インバータ13に接続されている。
【0066】
この場合、リレースイッチ24の接点スイッチのオン状態では、蓄電器ユニット4からコンタクタ21を介してAC用インバータ13に電力を供給し得る状態(換言すれば、AC用モータを駆動し得る状態)になり、該接点スイッチのオフ状態では、AC用インバータ13への電力の供給が遮断される状態(換言すれば、AC用モータを駆動できない状態)になる。以降、リレースイッチ24をAC起動用第1リレースイッチ24ということがある。
【0067】
また、リレースイッチ25は、AC起動用第1リレースイッチ24のオンオフ制御用のリレースイッチであり、その接点スイッチが、上記AC起動用第1リレースイッチ24のコイルを介してAC用マグネットスイッチ13aに接続されている。該AC用マグネットスイッチ13aは、補機用バッテリ15又は電圧変換器9から電力が供給されると共に、エアコンユニット6のコンプレッサの作動時にオン状態となり、該コンプレッサの停止時にオフ状態となるスイッチである。
【0068】
そして、リレースイッチ25の接点スイッチとAC用マグネットスイッチ13aとの両方がオン状態になっている場合(すなわち、リレースイッチ25の接点スイッチがオン状態となっている状況でのエアコンユニット6のコンプレッサの作動時)に、補機用バッテリ15又は電圧変換器9からAC用マグネットスイッチ13aを介してAC起動用第1リレースイッチ24のコイルに通電され、ひいては、AC起動用第1リレースイッチ24の接点スイッチがオン状態になる。
【0069】
また、リレースイッチ25の接点スイッチとAC用マグネットスイッチ13aとのうちのいずれか一方がオフ状態になっている場合には、AC起動用第1リレースイッチ24のコイルの通電が遮断され、ひいては、AC起動用第1リレースイッチ24の接点スイッチがオフ状態になる。以降、リレースイッチ25をAC起動用第2リレースイッチ25ということがある。
【0070】
また、リレースイッチ26は、エアコンプレッサ用モータの起動用のリレースイッチであり、その接点スイッチがエアコンプレッサ用インバータ14に圧力スイッチ14aを介して接続されている。圧力スイッチ14aは、エアコンプレッサによりエアが充填されるエアタンク(図示省略)の圧力が第1所定値以上の高圧になるとオフ状態になり、該圧力が第2所定値(<第1所定値)以下に低下するとオン状態になるスイッチである。
【0071】
この場合、リレースイッチ26の接点スイッチ及び圧力スイッチ14aの両方がオン状態である場合には、蓄電器ユニット4からコンタクタ21を介してエアコンプレッサ用インバータ14に電力を供給し得る状態(換言すれば、エアコンプレッサ用モータを駆動し得る状態)になる。また、リレースイッチ26の接点スイッチ及び圧力スイッチ14aのいずれか一方がオフ状態である場合には、エアコンプレッサ用インバータ14への電力の供給が遮断される状態(換言すれば、エアコンプレッサ用モータを駆動できない状態)になる。以降、リレースイッチ26をエアコンプレッサ起動用リレースイッチ26ということがある。
【0072】
補足すると、上記リレースイッチ23,25,26は、本発明における補機起動用スイッチ素子に相当する。
【0073】
また、リレースイッチ22は、上記PS起動用リレースイッチ23、AC起動用第2リレースイッチ25及びエアコンプレッサ起動用リレースイッチ26のそれぞれの接点スイッチのオンオフ制御用のリレースイッチである。このリレースイッチ22の接点スイッチの一端が補機用バッテリ15の正極(又は電圧変換器9の出力側の正極)に接続され、該接点スイッチの他端に、PS起動用リレースイッチ23、AC起動用第2リレースイッチ25及びエアコンプレッサ起動用リレースイッチ26のそれぞれのコイルが並列に接続されている。
【0074】
従って、リレースイッチ22の接点スイッチのオン状態では、補機用バッテリ15又は電圧変換器9から、PS起動用リレースイッチ23、AC起動用第2リレースイッチ25及びエアコンプレッサ起動用リレースイッチ26のそれぞれのコイルに一斉に通電され、ひいては、PS起動用リレースイッチ23、AC起動用第2リレースイッチ25及びエアコンプレッサ起動用リレースイッチ26のそれぞれの接点スイッチが一斉にオン状態になる。
【0075】
また、リレースイッチ22の接点スイッチのオフ状態では、PS起動用リレースイッチ23、AC起動用第2リレースイッチ25及びエアコンプレッサ起動用リレースイッチ26のそれぞれのコイルへの通電が一斉に遮断され、ひいては、通電されPS起動用リレースイッチ23、AC起動用第2リレースイッチ25及びエアコンプレッサ起動用リレースイッチ26のそれぞれの接点スイッチが一斉にオフ状態になる。
【0076】
そして、リレースイッチ22のコイルは、その一端が補機用バッテリ15(又は電圧変換器9の出力側)に接続され、他端が前記制御部30に接続されている。この場合、制御部30は、リレースイッチ22のコイルの通電を制御し得るように構成されている。この通電制御によって、リレースイッチ22の接点スイッチのオンオフを制御することが可能である。
【0077】
補足すると、リレースイッチ22は、本発明における補機起動制御用スイッチ素子に相当する。以降、リレースイッチ22を補機起動制御用リレースイッチ22ということがある。
【0078】
次に、車両A1の始動時における作動を説明する。車両A1の運転者により、前記運転スイッチ32が「OFF」位置から「ACC」位置に操作されると、制御部30及び各蓄電器モニタユニットが起動される。
【0079】
そして、運転スイッチ32がさらに「IG」位置に操作されると、制御部30は、各蓄電器モニタユニットとの通信によって、各蓄電器4aの漏電が発生していないこと(各蓄電器4a毎の漏電検出器4cにより漏電の発生が検知されていないこと)を確認した後、各蓄電器モニタユニットに、蓄電器ユニット4の起動を指令する。このとき、各蓄電器モニタユニットは、各スイッチ素子4bをオフ状態からオン状態に制御する。これにより、蓄電器ユニット4は、各蓄電器4aからコンタクタ21側に電力を出力し得る状態になる。
【0080】
また、この状態では、蓄電器ユニット4の出力電圧が電圧変換器9に入力される。このため、電圧変換器9は、蓄電器ユニット4の出力電圧を降圧してなる電圧(≒補機用バッテリ15の電圧)を出力し得る状態になる。
【0081】
運転スイッチ32がさらに「STA」位置に操作されると、制御部30は、コンタクタ21の負極側のリレースイッチ21c及びプリチャージ用のリレースイッチ21bのそれぞれのコイルに通電させることで、該リレースイッチ21c,21bのそれぞれの接点スイッチをオフ状態からオン状態に制御する。
【0082】
これにより、走行用インバータ11に蓄電器ユニット4から電力が供給されると共に、該走行用インバータ11のコンデンサ11aが、コンタクタ21の抵抗素子21dを介して充電される。この場合、コンデンサ11aの充電は抵抗素子21dを介して行われるので、蓄電器ユニット4から走行用インバータ11に瞬時的に過大な電流(所謂、突入電流)が流れるのが防止される。
【0083】
上記のように蓄電器ユニット4から走行用インバータ11への電力供給が開始されてから、上記コンデンサ11aの充電が完了(もしくはほぼ完了)するタイミングになると、制御部30は次に、コンタクタ21の正極側のリレースイッチ21aのコイルに通電させることで、該リレースイッチ21aの接点スイッチをオフ状態からオン状態に制御する。さらに、制御部30は、プリチャージ用のリレースイッチ21bのコイルへの通電を遮断することで、リレースイッチ21bの接点スイッチをオン状態からオフ状態に制御する。
【0084】
なお、コンデンサ11aの充電が完了(もしくはほぼ完了)するタイミングとしては、例えば、該コンデンサ11aの充電電圧の検出値が所定値以上となるタイミング、あるいは、該コンデンサ11aの充電電流の検出値(又は前記抵抗素子21dの電圧の検出値)が所定値以下に低下するタイミング、あるいは、走行用インバータ11への電力供給が開始されてから、あらかじめ設定された所定時間(コンデンサ11aの充電に要する所要時間としてあらかじめ設定された時間)が経過したタイミング等を採用し得る。
【0085】
制御部30は、上記の如くリレースイッチ21aの接点スイッチをオフ状態からオン状態に制御した後、蓄電器ユニット4と走行用インバータ11との間の電流路での漏電の発生の有無を前記漏電検出器11bを介して検出する。そして、制御部30は、当該漏電の発生が検出されない場合(当該漏電が発生していないことが漏電検出器11bにより確認された場合)には、リレースイッチ21aの接点スイッチをオン状態に制御してから、あらかじめ定められた所定時間(例えば3秒)が経過したタイミングで、補機起動制御用リレースイッチ22のコイルに通電させることで、該リレースイッチ22の接点スイッチをオフ状態からオン状態に制御する。
【0086】
ここで、上記所定時間は、その時間内で、前記漏電検出器11bによる漏電の発生の有無の検出を完了し得るようにあらかじめ設定された時間である。
【0087】
従って、走行用インバータ11のコンデンサ11aの充電が完了(もしくはほぼ完了)しており、且つ、蓄電器ユニット4と走行用インバータ11との間の電流路での漏電が発生していないことが漏電検出器11bにより確認された後のタイミングで、補機起動制御用リレースイッチ22の接点スイッチがオン状態に制御される。
【0088】
なお、上記所定時間内で、漏電検出器11bにより漏電の発生が検出された場合には、制御部30は、補機起動制御用リレースイッチ22の接点スイッチをオン状態に制御することなく、コンタクタ21のリレースイッチ21a,21cの接点スイッチをオフ状態に制御する。
【0089】
補足すると、本実施形態では、走行用インバータ11への給電の開始後、コンデンサ11aの充電が完了するタイミングまでの時間と、上記所定時間との総和の時間が、本発明における所定の遅延時間に相当する。
【0090】
なお、本実施形態では、前記補機起動制御用リレースイッチ22は、そのコイルへの通電に応じて即座に接点スイッチがオン状態にリレースイッチであるが、補機起動制御用リレースイッチ22として、例えば、遅延タイマ機能付きのリレースイッチ(コイルへの通電後、所定時間、遅延したタイミングで接点スイッチがオン状態になるリレースイッチ)を使用することもできる。
【0091】
この場合、例えば、遅延タイマ機能付きの補機起動制御用リレースイッチのコイルと、コンタクタ21のリレースイッチ21aのコイルとを並列に接続し、遅延タイマ機能付きの補機起動制御用リレースイッチのコイルと、リレースイッチ21aのコイルとに同時に通電するようにしてもよい。このようにした場合には、リレースイッチ21aの接点スイッチがオン状態になった後、補機起動制御用リレースイッチの遅延時間の経過時に、補機起動制御用リレースイッチの接点スイッチがオン状態になる。
【0092】
さらに、遅延タイマ機能付きの補機起動制御用リレースイッチの遅延時間を、走行用インバータ11のコンデンサ11aの充電に要する時間と前記漏電検出器11bによる漏電の発生の有無の検出に要する時間とを合わせた時間以上に設定し得る場合には、遅延タイマ機能付きの補機起動制御用リレースイッチのコイルと、コンタクタ21のプリチャージ用のリレースイッチ21bのコイルとを並列に接続し、遅延タイマ機能付きの補機起動制御用リレースイッチのコイルと、リレースイッチ21bのコイルとに同時に通電するようにしてもよい。このようにした場合には、リレースイッチ21bの接点スイッチがオン状態になった後、補機起動制御用リレースイッチの遅延時間の経過時に、補機起動制御用リレースイッチの接点スイッチがオン状態になる。
【0093】
上記の如くコンタクタ21のリレースイッチ21aの接点スイッチをオン状態にすることで、蓄電器ユニット4から走行用インバータ11に抵抗素子21dを経由せずに電力を供給し得る状態になる。この状態では、車両A1のアクセルペダルの操作に応じて、走行用モータ2に走行用インバータ11を介して給電され、該走行用モータ2の力行運転(ひいては、車両A1の走行)が行われる。
【0094】
また、補機起動制御用リレースイッチ22の接点スイッチをオン状態にすることで、補機用バッテリ15又は電圧変換器9から、補機起動制御用リレースイッチ22の接点スイッチを経由して、PS起動用リレースイッチ23、AC起動用第2リレースイッチ25及びエアコンプレッサ起動用リレースイッチ26のそれぞれのコイルに、一斉に通電される。ひいては、PS起動用リレースイッチ23、AC起動用第2リレースイッチ25及びエアコンプレッサ起動用リレースイッチ26のそれぞれの接点スイッチが一斉にオン状態になる。
【0095】
このため、蓄電器ユニット4からコンタクタ21を介してPS用インバータ12に電力が供給された状態となる。ひいては、車両A1のステアリング操作に応じてPS用モータを駆動することが可能となる。
【0096】
また、AC用マグネットスイッチ13aのオン状態では、蓄電器ユニット4からコンタクタ21を介してAC用インバータ13に電力が供給される状態になる。ひいては、AC用モータによるエアコンユニット6のコンプレッサの運転(ひいては、エアコンユニット6の空調運転)が行うことが可能となる。
【0097】
また、圧力スイッチ14aのオン状態では、蓄電器ユニット4からコンタクタ21を介してエアコンプレッサ用インバータ14に電力が供給される状態になる。ひいては、エアコンプレッサ用モータによるエアコンプレッサユニット7のコンプレッサの運転が行うことが可能となる。
【0098】
従って、電動補機としてのPS用モータ、AC用モータ、あるいは、エアコンプレッサ用モータの給電は、走行用インバータ11のコンデンサ11aの充電が完了もしくはほぼ完了し、且つ、蓄電器ユニット4と走行用インバータ11との間の電流路での漏電が発生していないことが漏電検出器11bにより確認された後の状態で開始されることとなる。
【0099】
このため、走行用インバータ11のコンデンサ11aの充電(プリチャージ)が不十分な状態、あるいは、漏電検出器11bによる漏電の発生の有無の検出が完了していない状態で、蓄電器ユニット4から電動補機(PS用モータ、AC用モータ、あるいは、エアコンプレッサ用モータ)に電力が供給されることはない。
【0100】
従って、蓄電器ユニット4から走行用インバータ11への給電の開始後、走行用インバータ11のコンデンサ11aの充電を速やかに完了することができると共に、前記漏電検出器11bにより漏電が誤検知されるのが防止される。ひいては、車両A1を円滑に始動することができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、補機起動制御用リレースイッチ22の接点スイッチをオン状態に制御するタイミングを上記の如く遅延させることで、PS用モータ、AC用モータ、及びエアコンプレッサ用モータに給電を行い得るタイミングを一括して遅延させることができる。このため、当該遅延のための回路構成を簡略なものとすることができる。
【0102】
さらに、補機起動制御用リレースイッチ22及び制御部30は、複数の電動補機が、PS用モータ、AC用モータ、及びエアコンプレッサ用モータ以外の電動補機を含む場合にも使用し得る。このため、本実施形態で説明した車両A1に限らず、種々様々な種類の改造型電動車両に対して、補機起動制御用リレースイッチ22及び制御部30を使用できる。ひいては、制御ユニット10の作製コストを低減することができる。
【0103】
この場合、例えば、制御ユニット10うちの、リレースイッチ23〜26を除く回路要素をモジュール化しておき、電動補機用のリレースイッチ23〜26を相互に接続してなる回路を、図1に二点鎖線で示すようにコネクタ40を介して補機起動制御用リレースイッチ22に接続することも可能である。
【0104】
このようにした場合には、補機起動制御用リレースイッチ22に接続する電動補機用のリレースイッチの回路を変更することで、種々様々な種類の改造型電動車両用の制御ユニット10を容易に作製することができる。
【0105】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図3を参照して説明する。なお、本実施形態は、前記第1実施形態と、一部の構成だけが相違するものである。このため、本実施形態の説明では、第1実施形態と同一の事項については説明を省略する。
【0106】
本実施形態は、AC用モータとエアコンプレッサ用モータとを同じ電動モータ(図示省略)で共用する実施形態である。この場合、当該共用の電動モータ(以降、エアコンプレッサ/AC共用モータという)から、エアコンユニット6のコンプレッサへの動力伝達と、エアコンプレッサユニット7のエアコンプレッサへの動力伝達とは、それぞれ各別の動力伝達機構(図示省略)を介して行われる。
【0107】
また、エアコンプレッサ/AC共用モータによるエアコンプレッサの駆動と、エアコンユニット6のコンプレッサの駆動とは同時には行われず、エアコンユニット6のコンプレッサの駆動は、エアコンプレッサの駆動の要求が無い状態で行われる。また、エアコンユニット6のコンプレッサの駆動中に、エアコンプレッサの駆動の要求が発生したときには、エアコンユニット6のコンプレッサの駆動は中断され、その状態で、エアコンプレッサが駆動される。
【0108】
そして、本実施形態では、図3に示すように、前記AC用インバータ13及びエアコンプレッサ用インバータ14の代わりに、当該共用の電動モータ(以降、エアコンプレッサ/AC共用モータという)を駆動するためのエアコンプレッサ/AC共用インバータ16が組み込まれている。
【0109】
これに伴い、本実施形態では、制御ユニット10の備えられる補機用のリレースイッチに係る構成が第1実施形態と相違する。具体的には、本実施形態では、制御ユニット10は、エアコンプレッサ起動用リレースイッチ26の代わりに、2つの接点スイッチ27a,27bを有するリレースイッチ27を備える。このリレースイッチ27は、そのコイルへの通電により一方の接点スイッチ27aがオン状態からオフ状態に切替わると共に、他方の接点スイッチ27bがオフ状態からオン状態に切替わるように構成されたリレースイッチである。
【0110】
そして、リレースイッチ27の一方の接点スイッチ27aは、前記第1実施形態で説明したAC用マグネットスイッチ13aとリレースイッチ25とにコイルが接続されている前記リレースイッチ24の接点スイッチを介してエアコンプレッサ/AC共用インバータ16に接続されている。また、リレースイッチ27の他方の接点スイッチ27bは、エアコンプレッサ/AC共用インバータ16に直接的に接続されている。
【0111】
従って、リレースイッチ27の接点スイッチ27a及びリレースイッチ25の接点スイッの両方がオン状態となっている場合、あるいは、リレースイッチ27の接点スイッチ27bがオン状態になっている場合に、蓄電器ユニット4からコンタクタ21を介してエアコンプレッサ/AC共用インバータ16に電力を供給し得る状態(換言すれば、エアコンプレッサ/AC共用モータを駆動し得る状態)になる。
【0112】
また、リレースイッチ27の接点スイッチ27a,27b及びリレースイッチ25の接点スイッチのいずれかの接点スイッチがオフ状態になっている場合には、エアコンプレッサ/AC共用インバータ16への電力の供給が遮断される状態(換言すれば、エアコンプレッサ/AC共用モータを駆動できない状態)になる。
【0113】
そして、リレースイッチ27のコイルは、前記補機起動制御用リレースイッチ22の接点スイッチに、エアコンプレッサユニット7の圧力スイッチ14aを介して接続されている。従って、リレースイッチ27のコイルには、圧力スイッチ14aのオン状態で(すなわち、エアコンプレッサの駆動時に)、補機用バッテリ15又は電圧変換器9から前記補機起動制御用リレースイッチ22の接点スイッチを介して通電することが可能となっている。
【0114】
このため、本実施形態では、補機起動制御用リレースイッチ22の接点スイッチのオン状態で、AC用マグネットスイッチ13aがオン状態になった場合(すなわち、エアコンユニット6のコンプレッサの駆動時)、あるいは、圧力スイッチ14aがオン状態になった場合(すなわち、エアコンプレッサの駆動時)に、蓄電器ユニット4からコンタクタ21を介してエアコンプレッサ/AC共用インバータ16への電力の供給が行われることとなる。
【0115】
なお、リレースイッチ27のコイルは、補機起動制御用リレースイッチ22と、圧力スイッチ14aとの間に介装されていてもよい。
【0116】
本実施形態は、以上説明した事項以外の構成は、第1実施形態と同じである。かかる本実施形態では、車両A1の運転スイッチ32が「STA」位置に操作された場合に、前記第1実施形態と同様に、蓄電器ユニット4から走行用インバータ11への給電の開始後、所定の遅延時間の経過後(コンデンサ11aの充電が完了もしくはほぼ完了し、且つ、蓄電器ユニット4と走行用インバータ11との間の電流路での漏電が発生していないことが漏電検出器11bにより確認された後)に、補機起動制御用リレースイッチ22の接点スイッチがオフ状態からオン状態に制御される。ひいては、蓄電器ユニット4からコンタクタ21を介してエアコンプレッサ/AC共用インバータ16及びPS用インバータ12への電力の供給を行い得る状態になる。
【0117】
従って、第1実施形態と同様に、蓄電器ユニット4から走行用インバータ11への給電の開始後、走行用インバータ11のコンデンサ11aの充電を速やかに完了することができると共に、前記漏電検出器11bにより漏電が誤検知されるのが防止される。ひいては、車両A1を円滑に始動することができる。
【0118】
また、補機起動制御用リレースイッチ22の接点スイッチの制御によって、車両A1の始動時に、PS用モータ及びエアコンプレッサ/AC共用モータに給電を行い得るタイミングを、第1実施形態と同様に一括して遅延させることができるため、当該遅延のための回路構成を簡略なものとすることができる。
【0119】
さらに、補機起動制御用リレースイッチ22及び制御部30を、種々様々な種類の改造型電動車両に対して使用できるため、制御ユニット10の作製コストを低減することができる。
【0120】
また、第1実施形態の場合と同様に、電動補機の起動用のリレースイッチ23,24,25,27を相互に接続してなる回路を、図3に二点鎖線で示すようにコネクタ40を介して補機起動制御用リレースイッチ22に接続することも可能である。
【0121】
なお、第1実施形態の場合と同様に、補機起動制御用リレースイッチとして、遅延タイマー機能付きのリレースイッチを使用してもよい。
【0122】
[変形態様]
次に、以上説明した各実施形態の変形態様をいくつか説明する。前記各実施形態では、制御部30が、コンタクタ制御部としての機能と、補機起動制御部としての機能を併せもつものを示したが、コンタクタ制御部と、補機起動制御部とが各別のデバイスにより構成されていてもよい。
【0123】
また、前記各実施形態では、前記リレースイッチ22〜27のそれぞれの代わりに、例えば半導体スイッチ素子を使用してもよい。
【0124】
また、前記各実施形態では、電動補機としてPS用モータ、AC用モータ、及びエアコンプレッサ用モータを備える車両A1、あるいは、PS用モータ及びエアコンプレッサ/AC共用モータを備える車両A1を示したが、これらの電動補機のうちの一部の電動補機を備えない改造型電動車両、あるいは、これらの電動補機以外ので電動補機を備える改造型電動車両についても本発明を適用できる。
【0125】
また、前記各実施形態では、蓄電器ユニット4から電動補機への給電を、電圧変換器(DC/DCコンバータ)を介して行うことも可能である。
【符号の説明】
【0126】
A1…改造型電動車両、1a…乗員搭乗室、1b…荷台、2…走行用の電動モータ、4…蓄電器ユニット、11…インバータ、11a…コンデンサ、11b…漏電検出器、9…電圧変換器、10…制御ユニット、15…補機用蓄電器、21…コンタクタ、22…リレースイッチ(補機起動制御用スイッチ素子)、23,25,26…リレースイッチ(補機起動用スイッチ素子)。
【要約】
【課題】改造型電動車両の始動時に、走行用の電動モータと電動補機とに適切に電力を供給し得るようにすることを、簡易且つ安価な構成で実現できる制御ユニットを提供する。
【解決手段】改造型電動車両A1に搭載される制御ユニット10は、コンタクタ21と、スイッチ素子22とを制御する制御部30と、複数の電動補機の起動用のスイッチ素子23,25,26とを有する。制御部30は、コンタクタ21の制御により蓄電器ユニット4から走行用の電動モータ2用のインバータ11への給電を開始してから遅延時間の経過後に、スイッチ素子22をオン状態に制御する。これに応じてスイッチ素子23,25,26が、電動補機を起動し得る状態(オン状態)に動作する。
【選択図】図2
図1
図2
図3