(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6203467
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/06 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
A61B1/06 612
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-538444(P2017-538444)
(86)(22)【出願日】2016年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2016083283
【審査請求日】2017年7月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-243140(P2015-243140)
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】町田 亮
【審査官】
門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−509098(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/064470(WO,A1)
【文献】
特開2001−208986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/317
G02B 23/24 −23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長帯域の異なる複数の面光源と、
該面光源から発せられる光を合波する合波部と、
基準となる内視鏡が接続されたときに、該内視鏡から射出される照明光が所定のカラーバランスとなるように各前記面光源からの発光量を調節するとともに、任意の内視鏡が接続されたときに、接続された内視鏡から射出される照明光のカラーバランスと、基準となる内視鏡から射出される照明光のカラーバランスとの比に基づいて各前記面光源からの発光量を調節する調節部とを備える光源装置。
【請求項2】
基準となる内視鏡から射出される照明光のカラーバランスと、接続された内視鏡から射出される照明光のカラーバランスとの比に基づく補正値を記憶する記憶部を備え、
前記調節部が、前記記憶部に記憶されている補正値に基づいて、各前記面光源からの発光量を調節する請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記調節部が、基準となる内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の面積と、接続された内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の面積との比に基づいて各前記面光源からの発光量を調節する請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
基準となる内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の面積と、接続された内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の面積との比に基づく補正値を記憶する記憶部を備え、
前記調節部が、前記記憶部に記憶されている補正値に基づいて、各前記面光源からの発光量を調節する請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
接続される内視鏡の種別を検出する検出部と、
該検出部により検出された内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の基準となるライトガイドの入射端に対する面積比を算出する算出部とを備え、
前記調節部は、前記算出部により算出された面積比が1より大きい場合に、基準となるライトガイドの入射端の面積より小さい発光面積を有する前記面光源からの光量を増大させる請求項3または請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
接続される内視鏡の種別を検出する検出部と、
該検出部により検出された内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の基準となるライトガイドの入射端に対する面積比を算出する算出部とを備え、
前記調節部は、前記算出部により算出された面積比が1より小さい場合に、基準となるライトガイドの入射端の面積より大きい発光面積を有する前記面光源からの光量を増大させる請求項3または請求項4に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のLED光源から出力される異なる波長の光を合波して光伝送ロッドに導入し、光伝送ロッドを透過した合波後の光を射出する光源装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。光源装置から射出された光が内視鏡の光ファイバケーブルに入射され照明光として利用される。
【0003】
特許文献1の光源装置では、光伝送ロッドから出力される合波後の光の一部を取り出してカラーセンサにより検出し、カラーバランス回路により各LED光源からの光のカラーバランスを調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012−509098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光源装置では、光伝送ロッドから出力される合波後の光の一部を、光伝送ロッドの射出端の一部に固定された光ファイバによって取り出してカラーバランスを調節するので、射出される照明光のカラーバランスは一定に保たれる。
しかしながら、光源装置には種々の内視鏡が接続されるので、接続された内視鏡の種類によって光ファイバケーブルの太さが変化した場合に、内視鏡の先端から射出される照明光のカラーバランスが変動してしまうという不都合がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、異なる内視鏡が接続されても内視鏡の先端から射出される照明光のカラーバランスを一定に調整することができる光源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、波長帯域の異なる複数の面光源と、該面光源から発せられる光を合波する合波部と、基準となる内視鏡が接続されたときに、該内視鏡から射出される照明光が所定のカラーバランスとなるように各前記面光源からの発光量を調節するとともに、任意の内視鏡が接続されたときに、接続された内視鏡から射出される照明光のカラーバランスと、基準となる内視鏡から射出される照明光のカラーバランスとの比に基づいて
各前記面光源からの発光量を調節する調節部とを備える光源装置を提供する。
【0008】
本態様によれば、複数の面光源から発せられた波長帯域の異なる光が合波部によって合波される。各面光源から発せられる光は、基準となる内視鏡が接続されたときに所定のカラーバランスとなるように、調節部により光量が調節されて射出される。基準となる内視鏡とは異なる任意の内視鏡が接続されたときには、調節部により、接続された内視鏡から射出される照明光のカラーバランスと、基準となる内視鏡から射出される照明光のカラーバランスとの比に基づいて各面光源からの発光量が補正される。これにより、異なる内視鏡が接続されても内視鏡の先端から射出される照明光のカラーバランスを一定に調整することができる。
【0009】
上記態様においては、基準となる内視鏡から射出される照明光のカラーバランスと、接続された内視鏡から射出される照明光のカラーバランスとの比に基づく補正値を記憶する記憶部を備え、前記調節部が、前記記憶部に記憶されている補正値に基づいて、
各前記面光源からの発光量を調節してもよい。
このようにすることで、接続された内視鏡に対応する補正値が記憶部から読み出されてカラーバランスが補正されるので、異なる内視鏡が接続されても、内視鏡の先端から射出される照明光を、簡易かつ迅速に、所定のカラーバランスの照明光とすることができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記調節部が、基準となる内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の面積と、接続された内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の面積との比に基づいて
各前記面光源からの発光量を調節してもよい。
このようにすることで、接続された内視鏡と基準となる内視鏡とのライトガイドの入射端の面積比が変動しても、面積比に応じて所定のカラーバランスとなるように補正された照明光を射出することができる。
【0011】
また、上記態様においては、基準となる内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の面積と、接続された内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の面積との比に基づく補正値を記憶する記憶部を備え、前記調節部が、前記記憶部に記憶されている補正値に基づいて、
各前記面光源からの発光量を調節してもよい。
このようにすることで、接続された内視鏡に対応する補正値が記憶部から読み出されてカラーバランスが補正されるので、異なる内視鏡が接続されても、内視鏡の先端から射出される照明光を、簡易かつ迅速に、所定のカラーバランスの照明光とすることができる。
【0012】
上記態様においては、接続される内視鏡の種別を検出する検出部と、該検出部により検出された内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の、基準となるライトガイドの入射端に対する面積比を算出する算出部とを備え、前記調節部は、前記算出部により算出された面積比が1より大きい場合に、基準となるライトガイドの入射端の面積より小さい発光面積を有する前記面光源からの光量を増大させてもよい。
【0013】
このようにすることで、接続された内視鏡の種別が検出部により検出され、検出された内視鏡のライトガイドの入射端と基準となるライトガイドの入射端との面積比が算出部により算出される。接続される内視鏡のライトガイドの面積が、基準となる内視鏡のライトガイドの入射端の面積より大きくなると、基準となるライトガイドの入射端の面積より大きい発光面積を有する面光源からの光がライトガイドに入射するようになる。したがって、基準となるライトガイドの入射端の面積より小さい発光面積を有する面光源からの光量を増大させることにより、所定のカラーバランスを達成することができる。
【0014】
上記態様においては、接続される内視鏡の種別を検出する検出部と、該検出部により検出された内視鏡に備えられたライトガイドの入射端の、基準となるライトガイドの入射端に対する面積比を算出する算出部とを備え、前記調節部は、前記算出部により算出された面積比が1より小さい場合に、基準となるライトガイドの入射端の面積より大きい発光面積を有する前記面光源からの光量を増大させてもよい。
【0015】
このようにすることで、接続された内視鏡の種別が検出部により検出され、検出された内視鏡のライトガイドの入射端と基準となるライトガイドの入射端との面積比が算出部により算出される。接続される内視鏡のライトガイドの面積が、基準となる内視鏡のライトガイドの入射端の面積より小さくなると、基準となるライトガイドの入射端の面積より大きい発光面積を有する面光源からの光のライトガイドへの入射が少なくなる。したがって、基準となるライトガイドの入射端の面積より大きい発光面積を有する面光源からの光量を増大させることにより、所定のカラーバランスを達成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、異なる内視鏡が接続されても内視鏡の先端から射出される照明光のカラーバランスを一定に調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光源装置を示すブロック図である。
【
図2】
図1の光源装置に備えられる面光源および光源光学系を示す模式図である。
【
図3】
図1の光源装置の各面光源の発光面の大きさを示す平面図である。
【
図4】
図1の光源装置の各面光源の相対強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る光源装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る光源装置1は、
図1に示されるように、波長帯域の異なる光を射出する複数のLED(面光源)2,3,4,5と、複数のLED2,3,4,5からの光を合波する光源光学系(合波部)6と、各LED2,3,4,5から発せられる光のカラーバランスを調節する調節部7とを備えている。
【0019】
LED2,3,4,5は、
図2に示されるように、紫色のLED2、青色のLED3、緑色のLED4および赤色のLED5である。
光源光学系6は、
図2に示されるように、各LED2,3,4,5からの光を略平行光にするコリメートレンズ8と、3つのダイクロイックフィルタ9,10,11と、集光レンズ12とを備えている。
【0020】
図2に示される例では、紫色のLED2と青色のLED3から射出され、それぞれのコリメートレンズ8によって略平行光にされた光が、第1のダイクロイックフィルタ9によって合波されるようになっている。また、第1のダイクロイックフィルタ9によって合波された光と、緑色のLED4から射出されコリメートレンズ8によって略平行光にされた光が第2のダイクロイックフィルタ10によって合波されるようになっている。
【0021】
さらに、第2のダイクロイックフィルタ10によって合波された光と赤色のLED5から射出されコリメートレンズ8によって略平行光にされた光が第3のダイクロイックフィルタ11によって合波されるようになっている。
本実施形態においては、
図3に示されるように、各LED2,3,4,5は四角形の発光面を有し、該発光面の発光面積は、赤色のLED5>緑色のLED4>青色のLED3>紫色のLED2の順の大きさを有している。
【0022】
また、各LED2,3,4,5は、発光面の中心軸を中心とした所定の有効照射角度を有し、該有効照射角度内の照明光がコリメートレンズ8によって略平行光に変換されるようになっている。そして、各LED2,3,4,5には、
図2に示されるように、有効照射角度の外側に射出される光のカラーバランスを検出するセンサ13が備えられている。
【0023】
調節部7は、4つのLED2,3,4,5の発光量制御を行うLEDドライバ14と、各LED2,3,4,5の発光量をLEDドライバ14に指令するカラーバランス制御部(調節部)15とを備えている。
また、本実施形態に係る光源装置1は、接続される内視鏡18に備えられたIDチップに記憶されている識別情報を読み取るIDリーダ(検出部)16と、識別情報と補正値とを対応づけて記憶するメモリ(記憶部)17とを備えている。
IDリーダ16は、IDチップから読み取った識別情報から内視鏡18の種別を検出するようになっている。
【0024】
補正値は、例えば、基準となるライトガイド19を搭載した内視鏡18が接続された場合に、所定のカラーバランスが達成されるような各LED2,3,4,5の発光量を基準として、異なる種別の内視鏡が接続されたときに各LED2,3,4,5の発光量を変化させるための数値である。
本実施形態においては、補正値は以下のように設定されている。
【0025】
すなわち、
図4に示されるように、基準となるライトガイド19の口径がD2である場合に、口径がD2のライトガイド19を備えた内視鏡18が接続された場合には、補正値は1であり、基準となるライトガイド19に対して設定されたカラーバランスが達成される基準発光量で各LED2,3,4,5が発光させられるようにカラーバランス制御部15がLEDドライバ14を制御するようになっている。
【0026】
一方、接続された内視鏡18のライトガイド19の口径がD1(<D2)である場合には、基準となるライトガイド19の場合と比較して口径D2より大きな緑色のLED4と赤色のLED5からの光量が低下するので、これらのLED4,5からの発光量を増大させるような補正値が設定されている。
【0027】
さらに、接続された内視鏡18のライトガイド19の口径がD3(>D2)である場合には、口径D2よりも大きな緑色のLED4と赤色のLED5からの光量が増大するので、照明光として黄色っぽいカラーバランスとなる。したがって、基準のライトガイド19の口径D2より小さい発光面積の紫色のLED2および青色のLED3の発光量を増大させるような補正値が設定されている。
【0028】
このように構成された本実施形態に係る光源装置1によれば、接続される内視鏡18をIDリーダ16によって読み取った識別情報によって識別して、内視鏡18に応じた補正値によって各LED2,3,4,5からの発光量を補正するので、異なる内視鏡が接続されても内視鏡の先端から射出される照明光のカラーバランスを一定に調整することができるという利点がある。
【0029】
また、本実施形態においては、LED2,3,4,5から発せられた光の内、有効照射角度範囲外に射出された光をセンサ13によって検出しているので、照明に使用される光が損なわれることがなく、発生した光を効率よく照明に使用することができるという利点もある。
【0030】
本実施形態においては、4つのLED2,3,4,5を用いた場合について説明したが、これに代えて、2つ、3つあるいは5つ以上のLEDを用いた場合に適用してもよい。
【0031】
また、中間の大きさを有する口径D2を基準となるライトガイド19の口径として説明したが、これに代えて、基準となるライトガイド19の口径を最も小さい口径D1とし、接続する内視鏡18のライトガイド19の口径が大きくなるに従って、紫色のLED2、青色のLED3あるいは緑色のLED4の発光量を増大させる補正値を採用してもよい。
【0032】
本実施形態においては、メモリ17に補正値を記憶しておくこととしたが、内視鏡18のライトガイド19の入射端と基準となるライトガイド19の入射端との面積比を算出する算出部(図示略)を備え、算出部によってライトガイド19の面積比をその都度算出し、算出された面積比に基づいて補正値を算出することにしてもよい。
【0033】
本実施形態においては、ライトガイド19の面積比に応じて各LED2,3,4,5の発光量を補正することとしたが、これに代えて、基準の内視鏡18を接続した際の内視鏡18の先端からの発光量と、各内視鏡18を接続した際の内視鏡18の先端からの発光量との比率に基づく補正値をメモリ17に記憶しておき、接続される内視鏡18の種別から補正値を読み出して補正することにしてもよい。
このようにすることで、ライトガイド19の口径のみならず、挿入部の長さ等が変動することによるカラーバランスの変動も補正することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 光源装置
2,3,4,5 LED(面光源)
6 光源光学系(合波部)
7 調整部
16 IDリーダ(検出部)
17 メモリ(記憶部)
18 内視鏡
19 ライトガイド
【要約】
本発明の光源装置(1)は、波長帯域の異なる複数の面光源(2,3,4,5)と、面光源(2,3,4,5)から発せられる光を合波する合波部(6)と、基準となる内視鏡(18)が接続されたときに、内視鏡(18)から射出される照明光が所定のカラーバランスとなるように各面光源(2,3,4,5)から発せられる光の光量を調節するとともに、任意の内視鏡(18)が接続されたときに、接続された内視鏡(18)から射出される照明光のカラーバランスと、基準となる内視鏡(18)から射出される照明光のカラーバランスとの比に基づいてカラーバランスを補正する調節部(7)とを備える。