(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定管は、一端側に前記送光手段と前記受光手段が設置され、他端側に前記送光手段から照射されたレーザ光を前記受光手段へ反射する反射手段が設置される請求項1から6のいずれか1項に記載の濃度測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の一実施形態に係る濃度分布測定装置1について、図面を参照して説明する。
濃度分布測定装置1は、機器10におけるガスに含まれる、予め測定対象として決められた特定物質(以下「測定物質」ともいう。)のガス濃度の分布を測定することができる。濃度分布測定装置1は、
図1に示すように、複数の濃度測定装置2と、制御装置3などを備える。濃度測定装置2は、それぞれ、機器10内に配置される3本のサンプリング管20と、機器10の外壁面に設置される1台の測定本体部21を有する。各濃度測定装置2と制御装置3は、集束ケーブル28によって結ばれる。集束ケーブル28は、電源ケーブル、信号ケーブル、光ケーブルがまとめられた束状のケーブル群である。信号ケーブルには、電動バルブ用、ポンプ用、熱電対用が含まれる。これにより、ケーブルの配線をまとめることができ、濃度分布測定装置1の設置においてケーブルの引き回しが複雑になることを防止できる。
【0032】
機器10は、
図1〜
図3に示すように、例えば角筒状の空間である。機器10の横断面が
図1及び
図2に示すように四角形の場合、
図2及び
図3に示すように、機器10は、互いに対向する第1壁部11と第2壁部12を有する。第1壁部11と第2壁部12は、板状部材であって、互いに平行に配置される。
【0033】
機器10の内部空間には測定対象を含むガスが流通している。機器10の一例としては、事業用ボイラ、産業用ボイラ、工業炉などの排ガス口に接続された排気ダクトなどのガス配管、ガスが充填された容器等が挙げられる。
【0034】
濃度分布測定装置1は、
図1に示すように、2台の機器10(すなわち、機器10Aと機器10B)の内部のガス濃度分布を測定できる。
図1及び
図2における機器10は、機器10の横断面を示しており、機器10内のガスは、
図1及び
図2の紙面を手前から奥へ貫通する方向に流れる。
図3における機器10は、機器10の縦断面を示しており、機器10内のガスは、
図3の紙面の上から下の方向に流れる。
【0035】
図2及び
図3を参照して、本実施形態に係る濃度測定領域Sについて説明する。濃度測定領域Sは、機器10のガス流れに対して垂直方向に切断して形成される機器10内の2次元面又は3次元空間である。機器10の内部空間には、濃度測定領域Sが仮想的に設定されている。濃度測定装置2は、濃度測定領域Sに存在する測定物質のガス濃度を測定する。
【0036】
次に、本実施形態に係る濃度分布測定装置1の濃度測定装置2について説明する。
機器10内の濃度測定領域Sが、
図2に示すように、第1壁部11又は第2壁部12の面内方向に対して平行方向に13列に分割され(A列〜M列)、第1壁部11から第2壁部12にわたって3行に分割される場合、濃度測定領域Sには、仮想的に39個の分割領域が形成される。
【0037】
各濃度測定装置2は、サンプリング管20を介して、各分割領域から機器10外部のレーザ計測セル23(
図5参照)へサンプリングガスを吸引して、レーザ計測セル23内にサンプリングガスを収容する。サンプリングガスが収容された各レーザ計測セル23に対してレーザ光を照射することによって、濃度測定装置2は、各分割領域の濃度を測定できる。
【0038】
濃度測定装置2は、分割領域の各列(A列、B列……)に1台ずつ設置される。濃度測定領域Sが、第1壁部11から第2壁部12にわたって3行に分割される場合、1台の濃度測定装置2に対してサンプリング管20が3本ずつ設置される。
図2に示す例では、1台の機器10に対して13台の濃度測定装置2(13個のレーザ計測セル23)が設置され、各濃度測定装置2は3本のサンプリング管20が設置される。よって、1台の機器10に対して合計39本のサンプリング管20が、ほぼ同一面内に平行に設置される。
【0039】
なお、濃度測定領域Sにおける分割領域の形成方法は、上述した13列×3行の39個に限定されない。列数や行数、分割領域の数は、他の数でもよい。濃度測定領域SがM列×N行でP個の分割領域が形成される場合、濃度測定装置2はM台(レーザ計測セル23はM個)設置され、各濃度測定装置2はN本のサンプリング管を有する。そして、機器10には、合計P本のサンプリング管20が設置される。
【0040】
濃度測定装置2は、
図3及び
図4に示すように、パッケージ化された装置である。
図3に示すように、機器10の第1壁部11に既設の開口部13が形成され、開口部13の外部側にフランジ9が設置されている場合、機器10に対して新たに開口部を形成することなく、濃度測定装置2を容易に機器10に設置できる。すなわち、機器10の改造が不要となり、工事費等を低減できる。なお、当然、機器10に対して新たに開口部及びフランジを形成して、濃度測定装置2を新設してもよい。
図2に示す例では、開口部13は、第1壁部11に13箇所形成されており、13台の濃度測定装置2が1台の機器10に設置される。
【0041】
濃度測定装置2は、3本のサンプリング管20と、測定本体部21などを備える。3本のサンプリング管20は、機器10の開口部13を介して、第1壁部11を貫通して機器10の内部に設置される。
【0042】
測定本体部21は、略直方体形状のケースを有しており、背面部がフランジ9に設置される。また、測定本体部21の背面部からサンプリング管20と排気管22が貫通して延設されている。測定本体部21の正面部には、開閉可能な蓋が設置されており、測定本体部21の内部に設置された各構成部材の操作やメンテナンスが可能である。測定本体部21の側面には、通気口、空気用配管口、電源ケーブル口、信号ケーブル口、光ケーブル口などの開口部が設けられる。
【0043】
測定本体部21内部には、
図5に示すように、サンプリング管系統と、レーザ計測セル23と、シールエア配管系統と、パージエア配管系統と、排気管系統が設置される。このように、配管類が一つのケース内に納められることによって、濃度測定装置2の設置において配管の引き回しが複雑になることを防止できる。また、サンプリング管系統と、レーザ計測セル23は、保温部27内部に設置される。
【0044】
サンプリング管系統は、3本のサンプリング管20A,20B,20C(以下、総称して「サンプリング管20」ともいう。)と、電動バルブ24A,24B,24C(以下、総称して「電動バルブ24」ともいう。)と、合流管25などを備える。
【0045】
サンプリング管20は、例えば金属製の筒状部材であり、一端部が機器10内部に設置され、他端部が測定本体部21の内部に位置して合流管25と接続される。本実施形態では、3本のサンプリング管20A,20B,20Cが1セットであり、サンプリング管20A、サンプリング管20B、サンプリング管20Cの順に長さが長くなっている。3本のサンプリング管20A,20B,20Cのうち、サンプリング管20Aの先端部が、第1壁部11から最も近い位置に配置され、サンプリング管20Cの先端部が、第1壁部11から最も離れた位置に配置される。
【0046】
サンプリング管20には、電動バルブ24が設けられる。本実施形態では、サンプリング管20A,20B,20Cそれぞれに、電動バルブ24A,24B,24Cが設置される。電動バルブ24は、開閉弁であって、サンプリング管20内にサンプリングガスを流通させたり、サンプリングガスの流通を停止させたりする。電動バルブ24は、信号ケーブル(図示せず。)と接続されて、電動バルブ制御部52(
図14参照)からの信号によって、開閉が制御される。なお、
図5に示す例では、1本のサンプリング管20に一つの電動バルブ24を設置する場合について説明したが、小型の電動多方バルブを利用する構成としてもよい。
【0047】
サンプリング管20の先端には、
図9及び
図10に示すように、開口部20aが形成されている。したがって、サンプリング管20の測定本体部21側からガスの吸引を行うことによって、サンプリング管20の開口部20aを介して、機器10内のガスがサンプリングガスとして測定本体部21の方向へ吸引される。吸引されたガスは、サンプリング管20及び合流管25を流通して、レーザ計測セル23へ導入される。
【0048】
サンプリング管20A,20B,20Cの管長がそれぞれ異なるため、断面積を同一とした場合、測定点によって吸引流量が相違してしまう。そこで、管長に関わらず、サンプリング管20A,20B,20C全ての圧力損失を同一とすることが望ましい。例えば、
図11〜
図13に示すように、サンプリング管20A,20B,20Cそれぞれの内径を異ならせる。管長の長いサンプリング管20は、管長の短いサンプリング管20よりも内径を大きくする。サンプリング管20の内径は、直管、ベンド管等の圧損評価式を使用し、各サンプリング管20のサンプリングガスの流量が等しくなるように決定される。これにより、サンプリング管20A,20B,20Cの圧力損失をほぼ同一とすることができ、測定点の流量相違による測定精度の低下を防止できる。
【0049】
なお、サンプリング管20A,20B,20Cの外径は、
図11及び
図13に示すように、それぞれ異なってもよいし、
図12に示すように、全て同一にしてもよい。また、サンプリング管20A,20B,20Cを束ねることによって、全体の強度を高めることができる。その結果、サンプリング管20が機器10内で受けるガス流れの流体力による振動を低減でき、各サンプリング管20における吸引流量を安定化させることができる。なお、
図13に示すように、補強用芯材29をサンプリング管20A,20B,20Cの軸線方向に沿って配置することで、更にサンプリング管20全体の強度を向上させて、振動を低減させてもよい。
【0050】
サンプリング管20の先端部分は、
図3及び
図10に示すように、機器10内のガス流れの下流側方向に屈折しており、機器10内のガスに含まれるダスト等がサンプリングガスに含まれることを防止する。また、サンプリング管20の先端部20aを囲むように、遮蔽器26がサンプリング管20の先端部分に設置される。遮蔽器26は、例えば中空の円錐形状であり、上部の直径が小さく、下部の直径が大きい。これにより、開口部20aの周囲からダストを離隔させることができ、サンプリングガスへのダストの混入を防止できる。
【0051】
合流管25は、一端が3本のサンプリング管20と接続され、他端がレーザ計測セル23と接続される。これにより、合流管25を介して、サンプリング管20からレーザ計測セル23へサンプリングガスが流通する。また、合流管25の途中では、パージエア配管45と合流する。これにより、合流管25を介して、パージエア配管45からレーザ計測セル23へパージエアが流通する。
【0052】
レーザ計測セル23は、筒形状の部材であり、
図6に示すように、レーザ計測セル23の一端には送光部6が設置され、他端には受光部7が設置される。送光部6から照射されるレーザ光の光路は、レーザ計測セル23の軸線方向に対して平行である。レーザ計測セル23におけるレーザ光の測定光路長は、2枚のシールエア噴出スリット板31間の内寸距離L0である。
【0053】
また、レーザ計測セル23は、一端にサンプリング管系統の合流管25が接続され、他端に排気管22が接続される。本実施形態では、3本のサンプリング管20に対して、1個のレーザ計測セル23が設置される。サンプリングガスを導入する合流管25が、レーザ計測セル23の一端側に設けられ、サンプリングガスを排出する排気管22が、レーザ計測セル23の他端側に設けられることにより、レーザ計測セル23の軸線長さ方向にわたって、吸入されたガスを充満させることができる。
【0054】
また、レーザ計測セル23の両端部には、シールエア配管系統の分岐管42が1本ずつ接続される。これにより、シールエアが送光部6と受光部7に対して供給され、送光部6や受光部7の光学部品のガラス部分へのガスやダストの付着を防止できる。
【0055】
なお、機器10の外部に位置しレーザ計測セル23に接続するまでのサンプリング管20及び合流管25の配管長さは、可能な限り短いことが望ましい。これにより、サンプリング管系統の保温不良を防止し、管内ガスの入れ替わり(応答性)を向上化させることができる。
【0056】
レーザ計測セル23内部には、シールエア噴出スリット板31と、複数の整流用多孔板33が軸線方向に設置される。本実施形態では、シールエア噴出スリット板31と、複数の整流用多孔板33は、送光部6側と受光部7側の両方に設置されるが、いずれか一方のみに設置されてもよい。
【0057】
シールエア噴出スリット板31は、円板状の部材であり、
図7に示すように、中央部分に貫通孔31Aが形成されている。貫通孔31Aは、シールエアが流通することができ、かつ、送光部6から受光部7へ照射されたレーザ光が通過する。
【0058】
シールエア噴出スリット板31が、シールエア配管系統の分岐管42よりもレーザ計測セル23の内部側に設置されることによって、送光部6とシールエア噴出スリット板31との間、又は受光部7とシールエア噴出スリット板31との間にシールエアチャンバー30が形成される。そして、貫通孔31Aからのシールエア量を調整することによって、シールエアチャンバー30の圧力がレーザ計測セル23の中央部分よりも高く設定される。その結果、送光部6又は受光部7からレーザ計測セル23の内部方向へシールエアが流れることから、送光部6又は受光部7へのダスト等の付着を確実に防止できる。
【0059】
なお、貫通孔31Aにおけるシールエア量はサンプリングガス中の測定対象のガス濃度に影響しない程度とし、シールエア配管系統におけるシールエア量やレーザ計測セル23内部の圧力を勘案して、貫通孔31Aの直径が決定される。
【0060】
上記のシールエアチャンバー30にシールエアが流通することによって、シールエアチャンバー30は、送光部6と受光部7の光学部品への熱遮蔽機能を有する。サンプリングガスは、機器10内部のガス種によっては、高温(例えば200℃以上)である。一方、シールエアは、通常、大気温(約50℃以下)であるため、シールエアチャンバー30は、サンプリングガスが導入されて高温化したレーザ計測セル23の中央部分から受ける熱を遮蔽できる。更に、レーザ計測セル23の円筒部分の肉厚を薄くすることによって、円筒部分から熱を逃がすことができ、送光部6と受光部7の光学部品への熱伝導を低減できる。
【0061】
なお、サンプリングガスが高温であり、シールエアが低温であるとき、レーザ計測セル23内部では、ガスの温度成層化が生じる可能性がある。そこで、サンプリング管系統の合流管25と排気管22の接続位置をレーザ計測セル23の底部とし、サンプリングガスをレーザ計測セル23の底部から導入し、底部から抜き出す。また、シールエア配管系統の分岐管42の接続位置をレーザ計測セル23の上部とし、シールエアをレーザ計測セル23の上部から導入する。これによって、レーザ計測セル23内部におけるガスの温度成層化を回避できる。
【0062】
整流用多孔板33は、円板状の部材であり、
図8に示すように、中央部分に貫通孔33Aが形成され、その他の部分に複数の貫通孔33Bが形成されている。貫通孔33Aは、シールエアやサンプリングガスが流通することができ、かつ、送光部6から受光部7へ照射されたレーザ光が通過する。複数の貫通孔33Bは、円板上にほぼ均等に配置され、シールエアやサンプリングガスが流通する。送光部6側の整流用多孔板33が、サンプリング管系統の合流管25よりよりもレーザ計測セル23の中央側に設置され、受光部7側の整流用多孔板33が、排気管系統の排気管33よりよりもレーザ計測セル23の中央側に設置される。そして、複数枚の整流用多孔板33が並べて配置されることによって、レーザ計測セル23内部のサンプリングガスがプラグフローとなり、ガス流動を安定化させることができる。
【0063】
シールエア配管系統は、
図5に示すように、シールエア配管38と、フィルタ39と、電動バルブ40と、ポンプ41と、分岐管42と、手動調整弁43などを備える。
シールエア配管38は、一端部が測定本体部21の外部に位置し、他端部が分岐管42と接続される。これにより、測定本体部21の外部からレーザ計測セル23へシールエアが供給される。フィルタ39は、シールエア配管38内部を流通するシールエアに含まれる不純物を除去する。電動バルブ40は、シールエア配管38内にシールエアを流通させたり、シールエアの流通を停止させたりする。電動バルブ40は、信号ケーブル(図示せず。)と接続されて、電動バルブ制御部52からの信号によって、開閉が制御される。
【0064】
ポンプ41は、シールエア配管38に設置され、測定本体部21の外部からレーザ計測セル23へシールエアを供給する。ポンプ41は、信号ケーブル(図示せず。)と接続されて、ポンプ制御部53(
図14参照)からの信号によって、ON及びOFFが制御される。
【0065】
分岐管42は、シールエア配管38から分岐して、他端が、レーザ計測セル23の送光部6側と受光部7側にそれぞれ接続される。各分岐管42には、手動調整弁43が設置される。手動調整弁43は、シールエア配管38に設置され、レーザ計測セル23の送光部6側と受光部7側に供給されるシールエアの流量を調整する。
【0066】
パージエア配管系統は、
図5に示すように、パージエア配管45と、フィルタ46と、ポンプ47と、電動バルブ48などを備える。
パージエア配管45は、一端部が測定本体部21の外部に位置し、他端部が合流管25と接続される。これにより、測定本体部21の外部から、パージエア配管45及び合流管25を介して、レーザ計測セル23へパージエアが供給される。フィルタ46は、パージエア配管45内部を流通するパージエアに含まれる不純物を除去する。
【0067】
ポンプ47は、パージエア配管45に設置され、測定本体部21の外部からレーザ計測セル23へパージエアを供給する。ポンプ47は、信号ケーブル(図示せず。)と接続されて、ポンプ制御部53からの信号によって、ON及びOFFが制御される。
【0068】
電動バルブ48は、パージエア配管45内にパージエアを流通させたり、パージエアの流通を停止させたりする。電動バルブ48は、信号ケーブル(図示せず。)と接続されて、電動バルブ制御部52からの信号によって、開閉が制御される。
【0069】
なお、機器10や濃度測定装置2が設置されるプラント等に高圧空気供給設備があれば、パージエア配管系統を高圧空気供給設備に接続し、高圧空気をパージエアとして利用してもよい。この場合、上述のパージエア配管系統におけるポンプ47を省略することができる。
【0070】
排気管系統は、
図5に示すように、排気管22と、ポンプ50と、電動バルブ51などを備える。
排気管22は、例えば金属製の筒状部材であり、一端部が測定本体部21の内部に位置してレーザ計測セル23と接続され、他端部が機器10内部に設置される。これにより、測定の終了したサンプリングガスや、レーザ計測セル23内部に導入されたシールエアやパージエアが、排気管22を介して、レーザ計測セル23から機器10内部へ排出される。排気管22の先端部分は、
図3に示すように、機器10内のガス流れの下流側方向に屈折しており、ガスの逆流を防止できる。
【0071】
ポンプ50は、排気管22に設置され、レーザ計測セル23から機器10内部へサンプリングガスを排出する。ポンプ50は、信号ケーブル(図示せず。)と接続されて、ポンプ制御部53からの信号によって、ON及びOFFが制御される。
【0072】
電動バルブ51は、排気管22内にサンプリングガスを流通させたり、サンプリングガスの流通を停止させたりする。電動バルブ51は、信号ケーブル(図示せず。)と接続されて、電動バルブ制御部52からの信号によって、開閉が制御される。
【0073】
レーザ光によるガス濃度測定中において、サンプリング管系統を介して機器10内部から吸引されたガスは、レーザ計測セル23を通過して、ポンプ50によって排気管22を介して機器10内へ戻される。したがって、サンプリングガスが流通するサンプリング管系統、レーザ計測セル23及び排気管系統は、大気圧から隔絶されるため、サンプリングガスが流れる系統内において、ガス流動が安定化し、測定精度を向上させることができる。また、ガス流動の安定化は、測定時間の短縮化に寄与する。
【0074】
保温部27は、測定本体部21内部に設置され、サンプリング管系統と、レーザ計測セル23を内部に収容し、一定温度に維持する。保温部27内部では、例えばリボンヒータがサンプリング管系統の配管やレーザ計測セル23の円筒部分に巻き付けることで、温度調整が行われる。温度調整は、ヒーター制御部54(
図14参照)によって行われる。
【0075】
次に、
図14を参照して、濃度分布測定装置1の制御装置3について説明する。
制御装置3は、上述したとおり、集束ケーブル28を介して複数台の測定本体部21と接続されている。
送光側光セレクタ18は、各測定本体部21におけるレーザ計測セル23の送光部6に対して、共通のレーザ光源17からレーザ光を供給する。送光側光セレクタ18は、送光部6の設置数以上のチャネルを有しており、各チャネルと各送光部6とが光ファイバ8を介して接続されている。同様に、レーザ光源17と送光側光セレクタ18とは、光ファイバ8を介して接続されている。レーザ光源17は、レーザ制御部16によって制御される。レーザ光源17としては、測定対象の吸光度の特性に応じた適切な波長を出力する光源が採用される。
【0076】
このような送光系においては、測定制御部15によってレーザ制御部16に起動・停止の信号が出力されることにより、レーザ制御部16によるレーザ光源17の起動・停止が制御される。更に、測定制御部15によって送光側光セレクタ18のチャネルが走査されることにより、レーザ光源17から射出されたレーザ光が選択されたチャネルの送光部6に供給され、レーザ計測セル23に向けて照射される。また、レーザ光源17から照射されるレーザ光の照射強度が、例えば、光検出部36によって検出され、後述する濃度測定部35に通知される。
【0077】
各測定本体部21におけるレーザ計測セル23の各受光部7は、受光側光セレクタ37を介して光検出部36と接続されている。受光側光セレクタ37は、受光部7の設置数以上のチャネルを有しており、各チャネルと各受光部7とが光ファイバ8を介して接続されている。このとき、各受光部7と受光側光セレクタ37との接続チャネルは、その受光部7に対応する送光部6と送光側光セレクタ18との接続チャネルと同じチャネルにされることが好ましい。換言すると、一対の送光部6と受光部7とは同じチャネルにそれぞれ接続されることが好ましい。
受光側セレクタ37と光検出部36とは光ファイバ8を介して接続されている。
【0078】
このような受光系においては、測定制御部15が、送光側光セレクタ18のチャネル走査と同期して、受光側光セレクタ37のチャネルを走査することにより、送光部6から照射されたレーザ光が対応する受光部7によって受光され、受光された光の情報が受光側光セレクタ37を介して光検出部36に出力される。光検出部36は、入力された光の情報を電気信号に変換して濃度測定部35に出力する。
【0079】
濃度測定部35では、上述のように光検出部36から各受光部7によって受光された光の情報が電気信号として入力されるとともに、測定制御部15から受光側光セレクタ37の受光タイミング信号が入力される。これにより、光検出部16からの電気信号と各受光部7とが対応付けられる。
【0080】
上記のように、送光側光セレクタ18を設けることで、レーザ光源17を共有化でき、また、受光側光セレクタ37を設けることで、光検出部36を共有化できる。これにより、装置の更なる小型化及び低コスト化を図ることが可能となる。
なお、送光側光セレクタ18に代えて、各送光部6に対応してそれぞれレーザ光源17を設けてもよく、同様に、受光側光セレクタ37に代えて、各受光部37に対応して光検出部36をそれぞれ設けることとしてもよい。
【0081】
電動バルブ制御部52は、測定制御部15と接続され、電動バルブ24,40,48,51の開閉を制御する。電動バルブ制御部52は、濃度測定装置2の動作に応じて、各電動バルブ24,40,48,51へ開閉に関する制御信号を送信する。
ポンプ制御部53は、測定制御部15と接続され、ポンプ41,47,50のON及びOFFを制御する。ポンプ制御部53は、濃度測定装置2の動作に応じて、各ポンプ41,47,50へON及びOFFに関する制御信号を送信する。
ヒーター制御部54は、測定制御部15と接続され、ヒーターの温度を制御する。ヒーター制御部54は、検出されたヒーターの温度に基づいて、ヒーターへ温度に関する制御信号を送信する。
【0082】
測定制御部15、濃度測定部35、電動バルブ制御部42、ポンプ制御部53及びヒーター制御部54は、例えば、コンピュータであり、CPU、CPUが実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)、通信ネットワークに接続するための通信インターフェース、及び外部記憶装置が装着されるアクセス部を備えている。これら各部は、バスを介して接続されている。更に、測定制御部15及び濃度測定部35は、キーボードやマウス等からなる入力部およびデータを表示する液晶表示装置等からなる表示部などと接続されていてもよい。
【0083】
上記CPUが実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROMに限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。また、測定制御部15と濃度測定部35とを個別のハードウェアによって実現してもよいし、これらを一体化し、一つのコンピュータによって実現する構成としてもよい。
【0084】
ターミナルボックス55は、電源ケーブル、信号ケーブル、光ケーブルがまとめられている。信号ケーブルには、電動バルブ用、ポンプ用、熱電対用が含まれる。そして、これらの電源ケーブル、信号ケーブル、光ケーブルがまとめられた集束ケーブルがターミナルボックス55から各濃度測定装置2(A-1〜A-13、B-1〜B-13)に配線される。
【0085】
上述のとおり、濃度測定装置2を構成する電動バルブ24,40,48,51、ポンプ41,47,50、ヒーター及び送光側光セレクタ18、受光側光セレクタ37、レーザ制御部16等が、測定制御部15によって制御される。電動バルブ24,40,48,51、ポンプ41,47,50、ヒーター及び送光側光セレクタ18、受光側光セレクタ37、レーザ制御部16等は、各種ケーブルで結ばれており、有線での遠隔操作が可能である。そして、測定制御部15において、ガス濃度の測定順番を適正化することによって、測定時間の短縮化を図ることができる。
【0086】
次に、本実施形態に係る濃度分布測定装置の動作について説明する。
まず、測定を開始するに当たり、保温部27において、ヒーター(図示せず。)をONとし、機器10の外部に配置されているサンプリング管20とレーザ計測セル23を所定温度に維持する。保温部27の温度は、例えば排気管22、レーザ計測セル23、合流管25に設置した熱電対を用いて測定される。これにより、ヒーターの温度が調整されて、測定本体部21の保温部27におけるサンプリング管20とレーザ計測セル23の温度が維持される。なお、熱電対のケーブルは、集束ケーブル28に含まれて、測定本体部21の側面板を貫通して外部に配線されている。
測定開始の温度調整時において、電動バルブ24,40,48,51は、閉状態であり、ガスの流通や、パージエア、シールエアの流通は行われていない。
【0087】
次に、レーザ計測セル23を準備状態にするため、まず、排気管系統の電動バルブ51を開状態にする。その後、シールエア配管系統の電動バルブ40を開状態にし、直ぐに、ポンプ41を作動させ、排気管系統のポンプ50を作動させる。これにより、レーザ計測セル23内部にシールエアが導入されて、排気管22を介してレーザ計測セル23からシールエアが排出される。
【0088】
そして、上述の保温動作とレーザ計測セル23の準備動作を全ての濃度測定装置2(
図1のA-1〜A-13、B-1〜B-13)について実行し、測定スタンバイとする。これにより、濃度測定領域S全てにわたって、ほぼ同時期に測定対象の濃度を測定できるようになる。
【0089】
次に、レーザ光源17において、レーザ光を発振させる。測定スタンバイの状態で、まず、1回目のサンプリング動作として、全ての濃度測定装置2(A-1〜A-13、B-1〜B-13)の電動バルブ24Aを全て同時に開状態とする。これにより、サンプリング管20Aを介して、機器10内部の所定の測定点からガスがレーザ計測セル23内部に導入される。
【0090】
そして、送光側光セレクタ18と受光側光セレクタ37を操作して、26本のレーザ計測セル23内部のガスに対して、1本ずつレーザ光を照射し、ガスを透過したレーザ光を検出することで、測定対象の濃度を測定する。これにより、26個のガス濃度データを取得できる。1本のレーザ計測セル23において測定にかかる時間は、10秒程度である。したがって、26本のレーザ計測セル23内部へ同時にサンプリングしたガスについて、26個のガス濃度データを取得するのにかかる時間は、10秒/本×26本で、260秒である。
【0091】
26個のガス濃度データの取得が確認できた後、全ての濃度測定装置2の電動バルブ24Aを全て同時に閉状態にする。次に、全ての濃度測定装置2のパージエア配管系統の電動バルブ48を全て同時に開状態にして、全てのポンプ47を作動させる。これにより、サンプリングガスが充填されていたレーザ計測セル23内部を清浄化することができる。レーザ計測セル23内部の清浄化にかかる時間は、約15分である。
【0092】
レーザ計測セル23の清浄度合いは、送光側光セレクタ18と受光側光セレクタ37を操作して、26本のレーザ計測セル23に対して、1本ずつレーザ光を照射し、レーザ光を検出することで確認できる。レーザ計測セル23内部にサンプリングガスが残留していないことを確認した後、パージ動作を完了する。すなわち、パージエア配管系統のポンプ47を停止し、全ての電動バルブ48を閉状態とする。これにより、パージエアの流通が停止する。そして、次のサンプリング動作へ移行する。
【0093】
2回目のサンプリング動作では、全ての濃度測定装置2(A-1〜A-13、B-1〜B-13)の電動バルブ24Bを全て同時に開状態とする。これにより、サンプリング管20Bを介して、機器10内部の所定の測定点からガスがレーザ計測セル23内部に導入される。
【0094】
そして、送光側光セレクタ18と受光側光セレクタ37を操作して、26本のレーザ計測セル23内部のガスに基づいて、26個のガス濃度データを取得する。そして、上述と同様にレーザ計測セル23を清浄化する。レーザ計測セル23内部にサンプリングガスが残留していないことを確認、パージ動作を完了した後、次のサンプリング動作へ移行する。
【0095】
3回目のサンプリング動作では、全ての濃度測定装置2(A-1〜A-13、B-1〜B-13)の電動バルブ24Cを全て同時に開状態とする。これにより、サンプリング管20Cを介して、機器10内部の所定の測定点からガスがレーザ計測セル23内部に導入される。
【0096】
そして、送光側光セレクタ18と受光側光セレクタ37を操作して、26本のレーザ計測セル23内部のガスに基づいて、26個のガス濃度データを取得する。そして、上述と同様にレーザ計測セル23を清浄化する。レーザ計測セル23内部にサンプリングガスが残留していないことを確認、パージ動作を完了する。
【0097】
以上で、
図1に示す機器10Aと機器10Bのガス濃度分布が測定される。
図1に示す実施例では、機器10Aと機器10Bそれぞれで39点の測定値(合計78点の測定値)が得られる。なお、必要に応じて、上述の動作を繰り返し、再度ガス濃度を測定してもよい。これにより、測定結果の精度を向上させることができる。
【0098】
ガス濃度の測定を終了する場合、濃度測定装置2(A-1〜A-13、B-1〜B-13)の全てのシールエア配管系統のポンプ41と、全ての排気管系統のポンプ50を停止して、全ての電動バルブ51,50を閉状態とする。また、全ての保温部27内のヒーターの電源をOFFとして、濃度分布測定装置1を停止する。
【0099】
次に、本実施形態の濃度測定装置2の変形例について説明する。
上記実施形態では、レーザ計測セル23の一端側に送光部6を設置し、他端側に受光部7を設置するとしたが、本発明はこの例に限定されない。例えば、
図15及び
図16に示すように、レーザ計測セル23の一端側に送光部6と受光部7を設置し、他端側に反射鏡34を設置してもよい。反射鏡34は、送光部6から照射されたレーザ光を反射して、反射したレーザ光を受光部7へ照射する。これにより、レーザ計測セル23内部におけるレーザ光の光路長を長くすることができ、測定対象のガス濃度が薄い場合でも、測定可能となる。
【0100】
このとき、シールエア噴出スリット板31は、
図17に示すように、二つの貫通孔31Aが形成される。これにより、往復計2本のレーザ光が通過可能となる。
【0101】
また、上記実施形態では、中央に貫通孔31Aが形成されたシールエア噴出スリット板31がレーザ計測セル23の両端に1枚ずつ設置される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、
図18に示すように、シールエア噴出スリット板31よりもレーザ計測セル23の中央側に、別のシールエア噴出スリット板32が設けられてもよい。
【0102】
シールエア噴出スリット板32は、円板状の円板部32Aと、円板部32Aを支持する複数本の支持部32Bを備える。円板部32Aは、
図19に示すように、中央部分に貫通孔32Cが形成されている。貫通孔32Cは、送光部6から受光部7へ照射されたレーザ光が通過する。円板部32Aとレーザ計測セル23の内壁との間には、隙間32Dが形成されている。そして、隙間32Dに、シールエアが流通する。支持部32Bは、円板部32Aとレーザ計測セル23との間に設置される。
【0103】
シールエア噴出スリット板31に追加してシールエア噴出スリット板32が設けられることによって、シールエアを貫通孔31Aからではなく、隙間32Dから噴出させることができるため、シールエアを拡散して噴出できる。なお、レーザ計測セル23におけるレーザ光の測定光路長は、2枚のシールエア噴出スリット板32間の内寸距離L0である。
【0104】
更に、上記実施形態では、サンプリング管系統の合流管25と排気管22の接続位置をレーザ計測セル23の底部としたが、本発明はこの例に限定されない。例えば、
図20〜
図22に示すように、合流管25又は排気管22とレーザ計測セル23との接続部分における開口方向をレーザ計測セル23の横断面の円周上の接線方向とする。
【0105】
これにより、レーザ計測セル23内部のサンプリングガスは、レーザ計測セル23の内壁面に沿って流れる。したがって、サンプリングガスにダストが含まれるような場合、ガスに比べて比重の高いダストをレーザ計測セル23の内壁面側へ強制的に流すことが可能になる。その結果、レーザ光の光路上に存在するダスト量を低減でき、測定精度を向上させることができる。
【0106】
次に、従来の濃度測定装置を用いた場合と本実施形態に係る濃度分布測定装置1を用いた場合における測定にかかる時間の比較について説明する。
機器10が2台で、各機器10の分割領域が39個である場合、合計78点を測定する必要がある。
【0107】
従来の濃度測定装置は、2台の機器10A,10Bに対して、レーザ計測セルを1台又は2台設置し、サンプリング管を分割領域の分割数分、すなわち78本設置する。各サンプリング管には電動バルブが1個ずつ設置される。従来の濃度測定装置では、1点のサンプリング、測定及び清浄化に15分かかっていた。したがって、78点を測定する場合、レーザ計測セルを1台設置するとき、15分/点×78点で、1170分(19.5時間)かかり、レーザ計測セルを2台設置するとき、15分/点×39点で、585分(9.75時間)かかる。
【0108】
一方、本実施形態では、2台の機器10に対して、レーザ計測セル23を26台設置し、サンプリング管20を分割領域の分割数分、すなわち78本設置する。各レーザ計測セル23へのレーザ光は、26チャンネルを有する送光側光セレクタ18によって切り替わる。レーザ計測セル23が26台設置されているため、26点の測定点のサンプリングガスを同時に吸引できる。この場合、1回のサンプリング及び測定、すなわち、26点同時に行うサンプリングガスの吸引と、レーザ光を切り替えることによる26点の濃度測定は、各点10秒程度あればよい。そのため、78点のサンプリング及び測定は、サンプリング管20を切り替えて、3回行うことで、合計78点のサンプリングと測定が完了する。そして、サンプリング管20の清浄化に要する時間が15分であるとしても、サンプリング及び測定を3回行うためのサンプリング管20の清浄化は2回でよい。したがって、10秒/点×26点×3回+15分×2回で、43分(0.72時間)あれば、78点の測定が完了する。
【0109】
以上より、従来の濃度測定装置を用いた場合、19.5時間又は9.75時間かかっていたところ、本実施形態に係る濃度分布測定装置1を用いた場合、0.72時間で測定を完了できる。よって、本実施形態によれば、測定時間を大幅に短縮することができる。
【0110】
[適用例]
次に、上述した本発明の一実施形態に係る濃度分布測定装置1を脱硝装置に適用する場合の一実施形態について説明する。
図23は、本実施形態に係る脱硝装置の概略構成を示した図である。
図23において、脱硝装置70は、たとえば石炭を燃料とするボイラ装置85に設置され、石炭を燃焼させて生成された燃焼排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元剤のアンモニアと反応させた後、脱硝触媒を用いて主として水と窒素とに分解して除去する装置である。この脱硝装置70は、ボイラ本体86に接続されて燃焼排ガスを煙突87に導く煙道88に設置されており、煙道88の出口には、燃焼排ガス中の排熱を回収する熱交換器の空気予熱器89が設置されている。
【0111】
脱硝装置70は、煙道89の直管部に設置されてアンモニアを注入するアンモニア注入装置71と、注入したアンモニアを燃焼排ガスと混合させる混合器(不図示)と、窒素酸化物とアンモニアとを反応させた後に水と窒素とに分解する脱硝触媒72と、アンモニア注入量等の制御を行う開度設定部73と、脱硝後のNOx濃度を監視(測定)する窒素酸化物濃度計(NOx計)74及び脱硝後のガス流路に仮想的に設けられた濃度測定領域における脱硝後のアンモニア濃度分布を測定する濃度分布測定装置1を備えている。
【0112】
アンモニア注入装置71は、たとえば
図24に示すように、アンモニア供給源に接続された流路配管のアンモニア主系統76に総流量制御弁77を備えている。このアンモニア主系統76は、総流量制御弁77の下流において、ヘッダ78から分岐させた複数本(図示の例では5本)のアンモニア供給系統80を備えている。
【0113】
アンモニア供給系統80は、各々が流量制御元弁79及び複数個(図示の例では5個)の注入ノズル75を備えており、排ガスを流す流路である煙道88の内部に注入ノズル75が格子状の配置となるように設置されている。注入ノズル75は、流路配管のアンモニア主系統76、ヘッダ78及びアンモニア供給系統80を通ってアンモニア供給源から供給されたアンモニアを煙道88の内部に液滴またはガスの状態で流出させ、燃焼排ガス中に還元剤のアンモニアを注入するものである。なお、液滴の状態で注入されたアンモニアは、高温の燃焼排ガスから吸熱して気化する。
【0114】
こうして煙道88の内部に注入されたアンモニアのガスは、混合器を通過することにより燃焼排ガスと撹拌混合される。この結果、アンモニアは窒素酸化物と反応して脱硝触媒72を通過するので、水と窒素とに分解されることで窒素酸化物が燃焼排ガス中から除去される。
【0115】
開度設定部73には、濃度分布測定装置1で測定したアンモニア濃度分布、及びNOx計74で測定した窒素酸化物濃度の測定値が入力される。このようなアンモニア濃度及び窒素酸化物濃度の入力を受けた開度設定部73は、窒素酸化物濃度に基づいて総流量制御弁77の開度の設定(開度制御)を行うとともに、複数個所のアンモニア濃度に基づいて各流量制御元弁79の開度の設定(開度制御)を行う。すなわち、開度設定部73は、窒素酸化物濃度に基づく総流量制御弁77や、濃度分布測定装置1で得られたアンモニア濃度分布に基づく流量制御元弁79の開度制御信号を出力する。
【0116】
この場合、開度設定部73による流量制御元弁79の開度制御は、予め定めたアンモニア濃度と流量制御元弁79毎の開度との相関関係を定めた制御マップに基づいて行われる。すなわち、脱硝装置70は、ボイラ装置85毎に諸条件(煙道8の流路系統や流路断面積、燃料の種類等)が異なるため、事前に相関関係のデータを実験等により入手して制作した制御マップを開度設定部73に記憶しておく。なお、この制御マップでは、煙道88内のアンモニア濃度を同一流路断面内で測定した複数位置のアンモニア濃度に対して、複数系統のアンモニア供給系統80毎に異なる流量制御元弁79の開度を個別に設定するものである。
【0117】
NOx計74は、煙道88において脱硝触媒72の下流側で脱硝後の窒素酸化物濃度を測定する。すなわち、NOx計74は、脱硝装置70による脱硝効果を監視するセンサであり、所望の脱硝が行われるように、開度設定部73からアンモニア供給量を増減するように総流量制御弁77の開度信号を出力する。
【0118】
濃度分布測定装置1は、上述したように、脱硝触媒72の下流側における煙道88の流路断面内に仮想的に設定した濃度測定領域のアンモニア濃度分布を作成し、このアンモニア濃度分布を開度設定部73に出力する。
【0119】
このような脱硝装置70によれば、濃度分布測定装置1によって、煙道88における脱硝触媒72の下流側におけるアンモニア濃度分布が検出されるとともに、NOx計74によって窒素酸化物濃度が検出され、この検出結果がそれぞれ開度設定部73に出力される。開度設定部73では、窒素酸化物濃度に基づいて総流量制御弁77の開度制御が行われ、かつ、濃度分布測定装置1によって得られたアンモニア濃度分布に基づいて流量制御元弁79の開度制御が行われる。これにより、脱硝装置70の運転を継続しながら、時定数の短いアンモニア濃度の測定値に応じ、複数のアンモニア供給系統80毎に分配されるアンモニア注入量を自動的に調整することができる。
【0120】
このとき、流量制御元弁79の開度制御は、予め定めたアンモニア濃度と流量制御元弁79毎の開度とのマップに基づいて行われるので、窒素酸化物濃度により総供給量が規定されたアンモニアは、流量制御元弁79の開度に応じてアンモニア供給系統80に対するアンモニア分配量が調整される。
アンモニア濃度の検出値が高いことは、すなわち、リークアンモニア(未反応アンモニア)が増大したことは、脱硝触媒72の触媒性能が劣化したことを意味するので、濃度分布測定装置1によって測定されたアンモニア濃度分布から、煙道88の流路断面位置に対応した脱硝触媒72の劣化状況を把握できる。
【0121】
このように、アンモニア濃度分布が脱硝触媒72の性能劣化と関連しているので、アンモニア濃度分布に基づいてアンモニア注入装置71によるアンモニア注入量の分布制御を実施すれば、リークアンモニアの分布をコントロールすることができる。また、リークアンモニアは、空気予熱器89を閉塞させる原因でもあるから、アンモニア濃度検出に基づいてアンモニア注入装置71によるアンモニア注入量の分布制御を実施すれば、空気予熱器89の閉塞防止も可能になる。
【0122】
本実施形態に係る脱硝装置によれば、脱硝装置の運転を継続しながら、時定数の短い還元剤濃度の測定値に応じて、複数の還元剤供給系統毎に分配される還元剤注入量を自動的に調整することが可能になる。これにより、還元剤注入の分配最適化による脱硝触媒の寿命延長や脱硝触媒更新の効率化を達成することができる。この結果、脱硝装置においては、脱硝触媒の更新に伴うコストの低減やアンモニア消費量の最適化を実現できる。
【0123】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
例えば、上述した実施形態では、複数のサンプリング管20の開口部20aがほぼ同一面内に設置される場合について説明したが、複数のサンプリング管20の配置面は、厳密に同一面である必要はなく、測定結果に影響を及ぼさない範囲で異なる面に配置されてもよい。
【0124】
また、上述した実施形態では、サンプリング管20が互いに平行な第1壁部11と第2壁部12との間に、一の壁部に対して直交方向に固定されるとしたが、本発明はこの例に限定されない。例えば、一の壁部に対して斜め方向にサンプリング管20が固定されてもよい。
【0125】
また、上述した実施形態では、シールエア配管系統にポンプ41が設置され、パージエア配管系統にポンプ47が設置される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、ポンプ41又はポンプ47を設置せず、排気管系統のポンプ50がシールエア又はパージエアをレーザ計測セル23に吸引するとしてもよい。