(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記胴部の筒状の周方向または前記胴部の筒状の軸方向の少なくとも一方に前記ガスの噴射方向を傾けて前記胴部の筒状の径方向に対して交差する方向に前記ガスを噴射させることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器胴部切断方法。
前記熱交換器は原子力発電設備の蒸気発生器であり、横置きにした前記蒸気発生器の胴部を切断することを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の熱交換器胴部切断方法。
【背景技術】
【0002】
例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に用いられる熱交換器としての蒸気発生器は、ほぼ密閉された胴部の内部に伝熱管や気水分離器や湿分分離器が設けられている。この蒸気発生器は、原子炉から加圧された高温の一次冷却水が伝熱管の内部を流れて原子炉に戻される。そして、伝熱管内部に一次冷却水が流れることで当該伝熱管が加熱されるため、胴部内に導入された二次冷却水を加熱し蒸気とする。
【0003】
この蒸気発生器は、交換時や原子炉の廃炉の際に取り外される。蒸気発生器は、上述したように、伝熱管の内部を原子炉からの一次冷却水が通過するため、伝熱管は放射線に曝されており放射能を含む。そのため、一般に、取り外された蒸気発生器は、放射性廃棄物として、原子力発電設備内の保管庫にそのままの形で保管されることになる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、蒸気発生器は、例えば、外径4.5m、長さ(高さ)21m、重量300tと大型のものであり、原子力発電設備内の保管庫にそのままの形で保管するには、大型の保管庫が必要となる。しかし、今後保管する蒸気発生器の数が増えることが想定されるため、一層大型の保管庫を用意する必要があるが、原子力発電設備内において、一層大型の保管庫の場所を確保することは困難な状況にある。
【0005】
このため、蒸気発生器を解体し、放射性廃棄物の容積を低減し、処分することが検討されている。この場合、蒸気発生器は、長さ方向が横置きとされた状態で、胴部が、気水分離器や湿分分離器が設けられている上部胴と、伝熱管が設けられている下部胴とに切断され、それぞれがさらに小さく切断されて解体される(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
蒸気発生器の解体において、レーザ切断または砥石切断により、伝熱管を支持する管支持板ごとに胴部および伝熱管をまとめて切断することが考えられるが、切断箇所が多く作業に時間を要したり、切断後に胴部内に分解されて残存した放射能を伴う伝熱管を取り外さなければならない作業が発生したりする問題がある。そのため、特許文献2に記載されているように、ガス切断により胴部を切断し、その後に伝熱管をレーザ切断により適宜切断する方法が望ましい。
【0008】
胴部を切断する際、その内部は放射能を伴う伝熱管が存在することから、胴部の内側で作業を行うことは避けなければならない。よって、胴部の外側から切断する。しかし、横置きされた胴部の下側をガス切断する場合、切断により発生したドロスが切断トーチに落下し、切断すべき部分へのガスの噴射を阻害する問題が生じることになる。
【0009】
なお、例えば、特許文献3は、使用済みの原子炉容器を切断する際に、切断時のドロスの排出を効果的に排出するため、切断トーチを斜め下向きにセットし、切断ガスによりドロスを吹き飛ばすことが示されているが、切断トーチに落下するドロスを切断ガスにより吹き飛ばすことは困難である。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、ガス切断により発生したドロスが切断トーチに落下する事態を防ぐことのできる熱交換器胴部切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明の熱交換器胴部切断方法は、熱交換器における筒状の胴部を横置きに固定した状態でガス切断する熱交換器胴部切断方法であって、少なくとも前記胴部の下側領域において、前記胴部の筒状の径方向に対して交差する方向にガスを噴射させて前記胴部の外側面に当てつつ、前記ガスを前記胴部の外側面に沿って移動させることを特徴とする。
【0012】
この熱交換器胴部切断方法によれば、胴部を切断する際、胴部の下側領域では、重力によりドロスが鉛直方向に落下するが、胴部の筒状の径方向に対して交差する方向にガスを噴射するため、ドロスがガスの噴射部に落下する事態を防ぐことができる。この結果、切断すべき部分へのガスの噴射が阻害されることはなく、切断を確実に行うことができる。
【0013】
また、本発明の熱交換器胴部切断方法は、前記胴部の筒状の周方向または前記胴部の筒状の軸方向の少なくとも一方に前記ガスの噴射方向を傾けて前記胴部の筒状の径方向に対して交差する方向に前記ガスを噴射させることを特徴とする。
【0014】
この熱交換器胴部切断方法によれば、胴部の筒状の径方向に対して交差する方向にガスを噴射させる方法としては、胴部の筒状の周方向または胴部の筒状の軸方向の少なくとも一方にガスの噴射方向を傾ければよく、これによりドロスがガスの噴射部に落下する事態を防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の熱交換器胴部切断方法は、前記ガスの移動方向の下流側に向けて前記ガスを噴射させることを特徴とする。
【0016】
この熱交換器胴部切断方法によれば、ガスが移動した後方でドロスが落下することから、ドロスがガスの噴射部に落下する事態をより防ぐことができる。この結果、ガスに対するドロスの影響をより防ぐことができる。
【0017】
また、本発明の熱交換器胴部切断方法では、前記熱交換器は原子力発電設備の蒸気発生器であり、横置きにした前記蒸気発生器の胴部を切断することを特徴とする。
【0018】
原子力発電設備の蒸気発生器は、その内部に放射能を含む伝熱管を有することから、放射線を伴う可能性のある胴部の内側からのガス切断の作業は困難である。そして、胴部を外側からガス切断する場合、その下側領域にて落下するドロスがガスの噴射に影響を及ぼす。このような蒸気発生器の胴部のガス切断において、本発明の熱交換器胴部切断方法は好適であり、ドロスがガスの噴射部に落下する事態を防ぐ効果を顕著に得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ガス切断により発生したドロスが切断トーチに落下する事態を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0022】
図1は、蒸気発生器の概略側断面図である。熱交換器としての蒸気発生器1は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に用いられる。加圧水型原子炉は、原子炉冷却材および中性子減速材として軽水を使用している。加圧水型原子炉は、軽水を炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水としての一次冷却水を蒸気発生器1に送る。蒸気発生器1では、高温高圧の一次冷却水の熱を二次冷却水に伝え、二次冷却水に水蒸気を発生させる。そして、この水蒸気によりタービン発電機が回されて発電する。
【0023】
蒸気発生器1は、上下方向に長尺に延在され、かつ密閉された中空円筒形状をなす胴部2を有している。胴部2は、上半部に対して下半部が若干小径とされ、下半部をなす下部胴2a、上半部をなす上部胴2b、下部胴2aと上部胴2bとの間を繋ぐほぼ円錐台形状の円錐胴2c、および上部胴2bの上端に設けられた上部鏡2dで構成されている。
【0024】
蒸気発生器1は、下部胴2aの内部に、内壁面と所定間隔をもって配置された円筒形状を成す管群外筒3が設けられている。この管群外筒3は、その下端部が、下部胴2aの下端部に配置された管板4の近傍まで延設されている。管群外筒3内には、伝熱管群5Aが設けられている。伝熱管群5Aは、逆U字形状で上下方向に長尺とされた複数の伝熱管5からなる。各伝熱管5は、U字形状の円弧部を上方に向けて配置され、各端部が管板4の管穴4aに挿通固定されているとともに、中間部における長手方向の複数箇所が各管支持板6を介して管群外筒3に支持されている。管支持板6は、多数の伝熱管挿通穴6aが形成されており、この伝熱管挿通穴6aに各伝熱管5が挿通されることで各伝熱管5を支持する。
【0025】
蒸気発生器1は、管板4の下に水室鏡7が設けられ、この水室鏡7の内部が隔壁8により入口側水室7Aと出口側水室7Bとに区画されている。入口側水室7Aは、各伝熱管5の一端部が連通され、出口側水室7Bは、各伝熱管5の他端部が連通されている。また、入口側水室7Aは、胴部2の外部に通じる入口ノズル7Aaが形成され、出口側水室7Bは、胴部2の外部に通じる出口ノズル7Baが形成されている。そして、入口ノズル7Aaは、加圧水型原子炉から一次冷却水が送られる冷却水配管(図示せず)が連結され、出口ノズル7Baは、熱交換された後の一次冷却水を加圧水型原子炉に送る冷却水配管(図示せず)が連結される。
【0026】
蒸気発生器1は、上部胴2bの内部に、給水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器9、および分離された蒸気の湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする湿分分離器10が設けられている。また、上部胴2bの下部であって、気水分離器9と伝熱管群5Aとの間には、外部から下部胴2a内に二次冷却水の給水を行う給水管11が挿入されている。また、蒸気発生器1は、下部胴2aの内部に、給水管11から下部胴2a内に給水された二次冷却水を、下部胴2aと管群外筒3との間を流下させて管板4にて折り返させ、伝熱管群5Aに沿って上昇させる給水路12が形成されている。さらに、蒸気発生器1は、上部鏡2dに、蒸気排出口13が形成されている。なお、蒸気排出口13は、タービンに蒸気を送る冷却水配管(図示せず)が連結され、給水管11は、タービンで使用された蒸気が復水器(図示せず)で冷却された二次冷却水を供給するための冷却水配管(図示せず)が連結される。
【0027】
この蒸気発生器1では、加圧水型原子炉で加熱された一次冷却水は、入口側水室7Aに送られ、多数の伝熱管5内を通って循環して出口側水室7Bに至る。一方、復水器で冷却された二次冷却水は、給水管11に送られ、胴部2内の給水路12を通って伝熱管群5Aに沿って上昇する。このとき、胴部2内で、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われる。そして、冷やされた一次冷却水は出口側水室7Bから加圧水型原子炉に戻される。一方、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行った二次冷却水は、胴部2内を上昇し、気水分離器9で蒸気と熱水とに分離される。そして、分離された蒸気は、湿分分離器10で湿分が除去されてから蒸気排出口13からタービンに送られる。
【0028】
このような蒸気発生器1は、上述したように、伝熱管5の内部を原子炉からの一次冷却水が通過するため、伝熱管5は放射線に曝されており放射能を含む。そのため、一般に、原子炉から取り外された蒸気発生器1は、放射性廃棄物として、原子力発電設備内の保管庫にそのままの形で一定期間保管される。その後、蒸気発生器1は、解体され、放射性廃棄物の容積が低減された形態で処分される。
【0029】
図2および
図3は、蒸気発生器の解体手順を示す工程図である。
図2に示すように、蒸気発生器1は、処理設備100の床上に、支持架台101によって横置きとされた状態で解体される。蒸気発生器1を横置きにする場合、水室鏡7において、隔壁8により区画された入口側水室7Aと出口側水室7Bとが水平方向に配置されるようにする。このため、伝熱管5は、U字形状の円弧部がほぼ水平で各端部が水平方向に配置された状態となる。なお、本実施形態では、横置きとされた蒸気発生器1において、上述の左右方向を幅方向といい符号Wで示し、使用時の上下方向に相当する長手方向を軸方向といい符号Lで示し、上下方向を符号Hで示す。そして、このように処理設備100の床上に横置きとされた蒸気発生器1は、解体に際し、その全体をグリーンハウス102によって覆われる。グリーンハウス102は、天井に開閉可能な開口部が設けられ、当該開口部から天井クレーンの荷役フック104が挿入される。
【0030】
蒸気発生器1の解体において、まず、
図2に示すように、蒸気発生器1が横置きとされた状態で、入口側水室7A内、出口側水室7B内、および伝熱管5内を、例えば、ブラスト除染によって除染する。続いて、
図3に示すように、上部胴2bを内部部材(気水分離器9や湿分分離器10)とともに円錐胴2cから切り離す。その後は、円錐胴2c、下部胴2a、管群外筒3、伝熱管群5A、管板4、および水室鏡7をそれぞれ切り離す。
【0031】
なお、胴部2の上部胴2b、上部胴2bの内部部材(気水分離器9や湿分分離器10)円錐胴2c、下部胴2a、管群外筒3、および管支持板6などは、一次冷却水に接触せず放射線に曝されていないが、クリアランス装置で検査した後、荷役フック104を用いてグリーンハウス102の外部に搬出し、別途用意された解体場所において解体され、保管容器(図示せず)に収容する。また、伝熱管群5A、管板4、および水室鏡7は、一次冷却水に接触して放射線に曝されているため、グリーンハウス102内において、放射線の漏洩を防止された保管容器(図示せず)に入る大きさに解体して収容する。
【0032】
以下、胴部の切断方法について説明する。
図4〜
図6は、蒸気発生器の胴部の切断方法を示す説明図である。本実施形態における胴部の切断方法は、上述した解体手順において、上部胴2bを内部部材とともに円錐胴2cから切り離す切断作業、円錐胴2cを下部胴2aから切り離す切断作業、下部胴2aを切り離す切断作業、水室鏡7を管板4から切り離す切断作業で適用される。このうち、上部胴2bを内部部材とともに円錐胴2cから切り離す切断作業、および円錐胴2cを下部胴2aから切り離す切断作業は、胴部2の周方向S(
図4参照)に沿って行う切断である(
図4および
図5参照)。また、下部胴2aを切り離す切断作業は、胴部2の周方向Sに沿って行う切断や(
図4および
図5参照)、胴部2の軸方向Lに沿って行う切断がある(
図6参照)。これらの切断は、胴部2の内部に放射能を伴う伝熱管5が存在することから、胴部2の外側から行う。
【0033】
胴部2の切断に際しては、
図4〜
図6に示すガス切断装置50が用いられる。ガス切断装置50は、胴部2の外側面21に設置された軌道51に沿って移動する走行装置52を有し、この走行装置52に対してガス切断を行う切断トーチ53が設けられている。すなわち、胴部2の周方向Sに沿って切断を行う場合は、
図4および
図5に示すように、軌道51を胴部2の周方向Sに沿って配置する。胴部2の軸方向Lに沿って切断を行う場合は、
図6に示すように、軌道51を胴部2の軸方向Lに沿って配置する。なお、軌道51は、レールやバンドなどを胴部2に簡易的に設置されるもので、走行装置52の走行を案内するものであればよい。走行装置52は、軌道51に支持される車輪52aを有するもので、当該車輪52aの転動により軌道51に沿って
図4〜
図6に示す矢印A方向に移動する。切断トーチ53は、ガス(火炎)Gを噴射するもので、当該ガスGを胴部2の外側面21に向けて噴射する。また、切断トーチ53は、ガスGを噴射するノズル部53aが胴部2の外側面21から所定の間隔をおいて配置されることで、当該ノズル部53aから噴射されるガスGにより胴部2の鋼材を適宜溶融させる。すなわち、ガス切断装置50は、切断トーチ53のノズル部53aから噴射されたガスGで胴部2の厚みを貫通させ、切断トーチ53が設けられた走行装置52が軌道51に沿って移動することで、当該移動方向Aに沿って胴部2が切断される。
【0034】
本実施形態では、
図4〜
図6に示すように、ガス切断装置50の切断トーチ53が、少なくとも胴部2の下側領域αにおいて、胴部2の筒状の径方向Pに対して交差する方向にガスGを噴射するように構成されている。すなわち、
図4では、ガスGを噴射する切断トーチ53の先端のノズル部53aを、胴部2の筒状の周方向Sに傾けることで胴部2の筒状の径方向Pに対して交差する方向に向けて配置している。また、
図5および
図6では、ガスGを噴射する切断トーチ53の先端のノズル部53aを、胴部2の筒状の軸方向Lに傾けることで胴部2の筒状の径方向Pに対して交差する方向に向けて配置している。または、図には明示しないが、ガスGを噴射する切断トーチ53の先端のノズル部53aを、胴部2の筒状の周方向Sおよび胴部2の筒状の軸方向Lに傾けることで胴部2の筒状の径方向Pに対して交差する方向に向けて配置してもよい。なお、
図4に示すように、ガスGを噴射する切断トーチ53の先端のノズル部53aを、胴部2の筒状の周方向Sにのみ傾ける場合、切断トーチ53の基端部から遠ざかる方向にノズル部53aの先端を向ける。なお、胴部2の下側領域αとは、
図4に示すように、横置きとされた胴部2の下半部において、鉛直に対して周方向Sの両側に15[°](計30[°])の範囲とする。
【0035】
そして、このガスGを移動方向Aに沿って移動させる(切断トーチ53が設けられた走行装置52を軌道51に沿って移動させる)ことで、胴部2が周方向Sや軸方向Lに沿って切断される。この際、胴部2の下側領域αでは、重力によりドロスが鉛直方向に落下するが、胴部2の筒状の径方向Pに対して交差する方向にガスGを噴射することから、ドロスが切断トーチ53のノズル部53aに落下することがなく、切断すべき部分へのガスGの噴射は阻害されない。
【0036】
なお、ドロスが切断トーチ53のノズル部53aに落下する事態を防ぐため、ガスGの噴射方向(切断トーチ53の先端のノズル部53aが向く方向)を径方向Pに対して交差する方向に傾ける角度θは、15[°]以上75[°]以下の範囲が好ましく、30[°]以上45[°]以下の範囲がより好ましい。
【0037】
このように、本実施形態の熱交換器胴部切断方法は、熱交換器(蒸気発生器1)における筒状の胴部2を横置きに固定した状態でガス切断する熱交換器胴部切断方法であって、少なくとも胴部2の下側領域αにおいて、胴部2の筒状の径方向Pに対して交差する方向にガスGを噴射させて胴部2の外側面に当てつつ、ガスGを胴部2の外側面に沿って移動させる。
【0038】
この熱交換器胴部切断方法によれば、胴部2を切断する際、胴部2の下側領域αでは、重力によりドロスが鉛直方向に落下するが、胴部2の筒状の径方向Pに対して交差する方向にガスGを噴射するため、ドロスがガスGの噴射部(切断トーチ53のノズル部53a)に落下する事態を防ぐことが可能になる。この結果、切断すべき部分へのガスGの噴射が阻害されることはなく、切断を確実に行うことが可能になる。
【0039】
なお、胴部2の下側領域α以外は、胴部2の筒状の径方向Pに沿ってガスGを噴射してもドロスが切断トーチ53のノズル部53aに落下することはないため、下側領域α以外は、胴部2の筒状の径方向Pに沿ってガスGを噴射させてもよい。この場合、切断トーチ53のノズル部53aの向きを変えられるように構成しておき、ノズル部53aの向きを適宜調整する。
【0040】
また、本実施形態の熱交換器胴部切断方法は、胴部2の筒状の周方向Sまたは胴部2の筒状の軸方向Lの少なくとも一方にガスGの噴射方向を傾けて胴部2の筒状の径方向Pに対して交差する方向にガスGを噴射させる。
【0041】
この熱交換器胴部切断方法によれば、胴部2の筒状の径方向Pに対して交差する方向にガスGを噴射させる方法としては、胴部2の筒状の周方向Sまたは胴部2の筒状の軸方向Lの少なくとも一方にガスGの噴射方向を傾ければよく、これによりドロスがガスGの噴射部(切断トーチ53のノズル部53a)に落下する事態を防ぐことが可能になる。
【0042】
また、本実施形態の熱交換器胴部切断方法は、ガスGの移動方向の下流側に向けてガスGを噴射させることが好ましい。
【0043】
すなわち、
図4におけるガスGの移動方向(切断トーチ53が設けられた走行装置52の移動方向A)を時計回り方向とし、
図6におけるガスGの移動方向(切断トーチ53が設けられた走行装置52の移動方向A)を左方向とする。この熱交換器胴部切断方法によれば、ガスGが移動した後方でドロスが落下することから、ドロスがガスGの噴射部(切断トーチ53のノズル部53a)に落下する事態をより防ぐことが可能になる。この結果、ガスGに対するドロスの影響をより防ぐことが可能になる。
【0044】
また、本実施形態の熱交換器胴部切断方法では、熱交換器は原子力発電設備の蒸気発生器1であり、横置きにした蒸気発生器1の胴部2を切断する。
【0045】
原子力発電設備の蒸気発生器1は、その内部に放射能を含む伝熱管5を有することから、放射線を伴う可能性のある胴部2の内側からのガス切断の作業は困難である。そして、胴部2を外側からガス切断する場合、その下側領域αにて落下するドロスがガスGの噴射に影響を及ぼす。このような蒸気発生器1の胴部2のガス切断において、本実施形態の熱交換器胴部切断方法は好適であり、ドロスがガスGの噴射部(切断トーチ53のノズル部53a)に落下する事態を防ぐ効果を顕著に得ることが可能になる。