特許第6203499号(P6203499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203499
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】地図作成システム及び地図作成方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20170914BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20170914BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G09B29/00 Z
   G09B29/10 Z
   G08G1/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-6513(P2013-6513)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-137500(P2014-137500A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(72)【発明者】
【氏名】宅原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】日浦 亮太
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 義弘
【審査官】 上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−167343(JP,A)
【文献】 特開2004−226341(JP,A)
【文献】 特開2008−014666(JP,A)
【文献】 特開2001−289653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00−29/14
G01C 21/00−21/36
G08G 1/00−99/00
G06F 19/00
G06Q 10/00−10/10,30/00−30/08,50/00−50/20,50/26−99/00
G07B 11/00−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置情報に基づいて、走行車両が課金される又は課金されない第1の道路の所定領域を走行する前記車両の軌跡データを作成する軌跡データ作成部と、
作成された複数の前記軌跡データのうち、走行車両が前記第1の道路よりも高額に課金される第2の道路側に位置する代表点を抽出する代表点抽出部と、
複数の前記所定領域についてそれぞれ抽出された複数の前記代表点に基づいて、地図データ上に前記第1の道路のデータを作成する道路データ作成部と、
を備える地図作成システム。
【請求項2】
前記所定領域における複数の前記軌跡データの度数分布に基づいて、前記代表点を抽出する請求項1に記載の地図作成システム。
【請求項3】
前記第2の道路は、前記第1の道路に対して平行である、又は前記第1の道路に対して交差している請求項1又は2に記載の地図作成システム。
【請求項4】
軌跡データ作成部が、車両の位置情報に基づいて、走行車両が課金される又は課金されない第1の道路の所定領域を走行する前記車両の軌跡データを作成するステップと、
代表点抽出部が、作成された複数の前記軌跡データのうち、走行車両が前記第1の道路よりも高額に課金される第2の道路側に位置する代表点を抽出するステップと、
道路データ作成部が、複数の前記所定領域についてそれぞれ抽出された複数の前記代表点に基づいて、地図データ上に前記第1の道路のデータを作成するステップと、
を備える地図作成方法。
【請求項5】
車両の位置情報に基づいて、走行車両が課金される第1の道路の所定領域を走行する前記車両の軌跡データを作成する軌跡データ作成部と、
作成された複数の前記軌跡データのうち、走行車両が課金されない又は前記第1の道路よりも低額に課金される第2の道路側に位置する代表点を抽出する代表点抽出部と、
複数の前記所定領域についてそれぞれ抽出された複数の前記代表点に基づいて、地図データ上に前記第1の道路のデータを作成する道路データ作成部と、
を備える地図作成システム。
【請求項6】
軌跡データ作成部が、車両の位置情報に基づいて、走行車両が課金される第1の道路の所定領域を走行する前記車両の軌跡データを作成するステップと、
代表点抽出部が、作成された複数の前記軌跡データのうち、走行車両が課金されない又は前記第1の道路よりも低額に課金される第2の道路側に位置する代表点を抽出するステップと、
道路データ作成部が、複数の前記所定領域についてそれぞれ抽出された複数の前記代表点に基づいて、地図データ上に前記第1の道路のデータを作成するステップと、
を備える地図作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マップマッチング処理に用いられる地図を作成する地図作成システム及び地図作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車載器が車両の現在位置を取得し、予め記憶している地図データ上の道路情報に基づいて、車両が現在走行している道路を推定する技術が知られている。車載器は、例えばカーナビゲーション装置であり、GPS、ジャイロ及び車速センサーなどを用いて車両の現在位置を取得する。地図データは、記憶媒体に記録されている情報が使用される。
【0003】
地図データは、地図がディスプレイに表示されたときのユーザの見易さが優先されている。そのため、実際は高さ方向に重なっている2本以上の道路や、互いに隣接している2本以上の道路が、互いに隙間が設けられて、地図データとして記憶されている。これにより、ユーザは、地図を識別しやすくなるが、車載器が推定した現在位置と地図データ上の道路情報とが一致しない場合がある。したがって、車両が現在走行している道路を推定する際、マップマッチングが行われる。マップマッチングは、車両の現在位置を地図データの道路情報に合わせる技術である。
【0004】
例えば、特許文献1には、地図データの道路のうち線幅を持たず道路幅の中心に設定されているリンクについて、平行する道路幅や位置関係に応じて、ずらす方向とずらす距離を計算して、リンクの設定とマップマッチング閾値の設定をする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−14666号公報(段落[0009],[0010],[0025]など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、実際の道路には、車両が走行することによって課金が発生する有料道路と、課金が発生しない無料道路がある。そこで、地図データ上の道路情報に有料道路又は無料道路の属性を持たせることによって、車載器において推定された現在走行している道路が有料道路であれば、車両に対して課金を行う道路課金システムが提案されている。
【0007】
道路課金システムでは、課金の有無や課金額について、誤りがないことが高度に要求される。しかし、地図データは、上述したとおり、実際の道路と異なる位置に道路情報が記憶されており、正確ではない。そのため、例えば有料道路と無料道路が平行している場合や分岐している場合などにおいて、車両が無料道路を走行しているにもかかわらず有料道路を走行していると判断されると、誤って課金されてしまうという問題が生じる。反対に、車両が有料道路を走行しているにもかかわらず無料道路を走行していると判断されると、課金漏れが発生してしまうという問題も生じうる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、車両が走行している道路を推定するための地図データ上の道路データを正確に作成することが可能な地図作成システム及び地図作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の地図作成システム及び地図作成方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る地図作成システムは、車両の位置情報に基づいて、走行車両が課金される又は課金されない第1の道路の所定領域を走行する前記車両の軌跡データを作成する軌跡データ作成部と、作成された複数の前記軌跡データのうち、走行車両が前記第1の道路よりも高額に課金される第2の道路側に位置する代表点を抽出する代表点抽出部と、複数の前記所定領域についてそれぞれ抽出された複数の前記代表点に基づいて、地図データ上に前記第1の道路のデータを作成する道路データ作成部とを備える。
【0010】
この構成によれば、地図データ上に作成される第1の道路のデータは、第1の道路を走行する車両の軌跡に基づいて作成される。このとき、第1の道路の複数の所定領域ごとに、第1の道路と異なる第2の道路側に位置する代表点を抽出し、抽出された複数の代表点を結んだり近似線を作成することで、第1の道路のデータが作成される。そして、作成された第1の道路のデータを用いて、ある車両が走行している道路を推定する(マップマッチングする)際、その車両が第1の道路を走行している場合、第1の道路のデータに対して第2の道路側に位置すると判断される場合に比べて、第1の道路のデータ上、又は、第1の道路のデータに対して第2の道路側と反対側に位置すると判断されることが多くなる。したがって、第1の道路を走行している車両が、第1の道路ではなく第2の道路に位置すると判断される誤認識を低減できる。
ここで、軌跡データとは、車両の1又は複数の位置情報からなる。
また、この構成によれば、所定領域ごとに抽出される代表点の位置は、第1の道路を走行することによって車両が課金されるか否かに応じて決定される。例えば、抽出する代表点の位置を第2の道路側とすることによって、ある車両が第1の道路を走行している場合、第1の道路に位置していると判断される確率が上がる。このとき、第1の道路が有料道路であって、第1の道路を走行する車両が課金される場合、課金漏れを低減できる。一方、第1の道路が無料道路であって第1の道路を走行する車両が課金されず、第2の道路を走行する車両が課金される場合、誤課金を低減できる。
また、抽出する代表点の位置を第2の道路に最も近い側よりも第2の道路から離れるようにすることによって、ある車両が第1の道路を走行している場合、第1の道路に位置していると判断される確率が下がる。このとき、第1の道路を走行する車両が課金される場合、課金漏れの確率が上昇する。一方、第1の道路を走行する車両が課金されず、第2の道路を走行する車両が課金される場合、誤課金の確率が上昇する。
【0011】
上記発明において、前記所定領域における複数の前記軌跡データの度数分布に基づいて、前記代表点を抽出してもよい。
【0012】
この構成によれば、所定領域ごとに抽出される代表点の位置は、所定領域における複数の軌跡データの頻度に応じて決定される。例えば、抽出する代表点の位置を第2の道路側とするとき、ある車両が第1の道路を走行している場合、第1の道路に位置していると判断される確率を上げて、かつ、第1の道路に位置していないと判断される確率を下げることができる。一方、抽出する代表点の位置を第2の道路に最も近い側よりも第2の道路から離れるようにすることによって、第1の道路に位置していると判断される確率を下げて、かつ、第1の道路に位置していないと判断される確率を上げることができる。
【0016】
上記発明において、前記第2の道路は、前記第1の道路に対して平行である、又は前記第1の道路に対して交差している。
【0017】
また、本発明に係る地図作成方法は、軌跡データ作成部が、車両の位置情報に基づいて、走行車両が課金される又は課金されない第1の道路の所定領域を走行する前記車両の軌跡データを作成するステップと、代表点抽出部が、作成された複数の前記軌跡データのうち、走行車両が前記第1の道路よりも高額に課金される第2の道路側に位置する代表点を抽出するステップと、道路データ作成部が、複数の前記所定領域についてそれぞれ抽出された複数の前記代表点に基づいて、地図データ上に前記第1の道路のデータを作成するステップとを備える。
本発明に係る地図作成システムは、車両の位置情報に基づいて、走行車両が課金される第1の道路の所定領域を走行する前記車両の軌跡データを作成する軌跡データ作成部と、作成された複数の前記軌跡データのうち、走行車両が課金されない又は前記第1の道路よりも低額に課金される第2の道路側に位置する代表点を抽出する代表点抽出部と、複数の前記所定領域についてそれぞれ抽出された複数の前記代表点に基づいて、地図データ上に前記第1の道路のデータを作成する道路データ作成部とを備える。
本発明に係る地図作成方法は、軌跡データ作成部が、車両の位置情報に基づいて、走行車両が課金される第1の道路の所定領域を走行する前記車両の軌跡データを作成するステップと、代表点抽出部が、作成された複数の前記軌跡データのうち、走行車両が課金されない又は前記第1の道路よりも低額に課金される第2の道路側に位置する代表点を抽出するステップと、道路データ作成部が、複数の前記所定領域についてそれぞれ抽出された複数の前記代表点に基づいて、地図データ上に前記第1の道路のデータを作成するステップとを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両が走行している道路を推定するための地図データ上の道路データを正確に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る課金用地図作成システムを示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る道路課金システムを示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る課金用地図作成システムの動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る課金用地図作成システムの道路データ作成処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る道路課金システムの課金処理を示すフローチャートである。
図6】地図データに基づく地図を示す説明図である。
図7】地図データに基づく地図を示す説明図である。
図8】地図データに基づく地図を示す説明図である。
図9】地図データに基づく地図を示す説明図である。
図10】本発明の一実施形態に係る課金用地図作成システムの道路データ作成処理の第1実施例を示す説明図である。
図11】本発明の一実施形態に係る課金用地図作成システムの道路データ作成処理の第2実施例を示す説明図である。
図12】本発明の一実施形態に係る課金用地図作成システムの道路データ作成処理の第2実施例を示す説明図である。
図13】地図データに基づく地図を示す説明図である。
図14】地図データに基づく地図を示す説明図である。
図15】地図データに基づく地図を示す説明図である。
図16】地図データに基づく地図を示す説明図である。
図17】従来の地図データに基づく道路課金システムの課金処理を示す説明図である。
図18】本発明の一実施形態に係る課金用地図作成システムの道路データ作成処理の第3実施例による地図データに基づく道路課金システムの課金処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る課金用地図作成システム1の構成について説明する。
課金用地図作成システム1は、道路課金システム2に適した地図を作成する。ここで、道路課金システム2とは、車両に搭載された車載器3を利用して、有料道路を走行している車両に対して課金するシステムである。車載器3が記憶する地図データM上の道路データLに有料道路又は無料道路の属性を持たせることによって、車載器3において推定された現在走行している道路が有料道路であれば、車両に対して課金処理を行う。
【0021】
課金用地図作成システム1は、課金が必要な有料道路及び課金が不要な無料道路を地図上に正確に配置することによって、上述の道路課金システム2において車両に対する課金の有無や課金額を正確に取得することが可能になる課金用地図を作成する。
【0022】
課金用地図作成システム1は、例えば、車両に搭載される車載器3と、車載器3とのデータの送受信が可能であり課金用地図を作成する地図作成サーバ装置4などを備える。
【0023】
車載器3は、図1に示すように、車両の位置を取得する位置情報取得部6と、車両の位置の経時変化に基づく軌跡データTを作成し記憶する軌跡データ作成部7と、軌跡データTを地図作成サーバ装置4に送信したり、地図作成サーバ装置4から作成又は更新された地図データMを受信したりする送受信部8などを備える。
【0024】
車載器3は、例えばカーナビゲーション装置であり、位置情報取得部6は、GPS、ジャイロ及び車速センサーなどを用いて車両の現在位置Pを取得する(図6参照)。図6では、道路Rと道路Rを走行する複数の車両から得られる複数の現在位置Pがプロットされている。
【0025】
軌跡データ作成部7は、車両の識別情報、道路データ、及び取得された車両の複数の現在位置Pに関する位置情報などに基づいて、図6に示すように、複数の現在位置Pの時系列から車両の軌跡データTを作成し、記憶媒体に記録する。
記憶媒体に記録された軌跡データTは、予め決められたタイミング、例えば一定の時間間隔又は走行条件などに応じて、地図作成サーバ装置4に送信される。また、地図作成サーバ装置4で作成された地図データMは、車両の走行条件や地図データMの更新のタイミングなどに応じて、地図作成サーバ装置4から車載器3に送信される。
【0026】
地図作成サーバ装置4は、図1に示すように、車載器3から軌跡データTを受信したり、作成又は更新された地図データMを車載器3に送信したりする送受信部11と、複数の軌跡データTから道路データLの作成に必要な代表点Pを決定する解析部12と、決定された代表点Pに基づいて道路データLを作成する道路データ作成部13と、作成された道路データLから地図データMを更新する地図更新部14などを備える。
【0027】
解析部12は、図7に示すように、対象とする道路R,Rを分割して複数の領域Aを作成する領域作成部31と、領域A内における複数の車載器3から取得した軌跡データTに基づいて代表点Pを抽出する代表点抽出部32などを備える。
領域作成部31は、例えば、対象とする道路の進行方向に対して垂直方向に分割線Dを引き、道路の進行方向に沿って2本の分割線Dで挟まれた複数の領域Aを作成する。
代表点抽出部32は、対象とする道路の複数の領域Aにおいて、複数の軌跡データTの度数分布に基づいて、代表点P図8参照)を抽出する。また、代表点抽出部32は、対象とする道路の複数の領域Aにおいて、対象とする道路に関する課金情報や、対象とする道路に対して平行又は交差する道路に関する課金情報に基づいて、代表点Pを抽出する。
【0028】
道路データ作成部13は、抽出された複数の代表点Pを結んだり、近似線を求めたりすることによって、図9に示すように直線状又は曲線状の道路データLを作成する。ここで作成される道路データLは、道路に関する位置情報であって、道路幅を有さず、線幅を持たない線に関する情報でよい。
【0029】
地図更新部14は、作成された道路データLを既に作成されている既存の地図データMの道路データLと照合するなどして、更新が必要と判断される場合は道路データLを入れ替えて、新たな地図データMを作成する。そして、地図更新部14は、道路課金システム2に使用される地図データMを更新する。
【0030】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る道路課金システム2の構成について説明する。
道路課金システム2は、例えば、車両に搭載される車載器3と、車載器3とのデータの送受信が可能であり各車両に対する課金処理を行う課金サーバ装置5などを備える。
車載器3は、上述した位置情報取得部6と、取得された車両の現在位置に基づいて、走行している道路の課金の有無や課金額などを判断し、課金データを記憶する課金処理部9と、課金データについて課金サーバ装置5と送受信する送受信部8などを備える。
課金サーバ装置5は、課金データについて車載器3と送受信する送受信部21と、課金データに基づいて各車両の課金処理・管理を行う課金処理部22などを備える。
【0031】
次に、図3を参照して、課金用地図作成システム1の動作について説明する。
まず、車載器3を搭載した車両が道路を走行することによって、車載器3は、車両の現在位置Pに関する位置情報を取得する(ステップS1)。位置情報には、例えば緯度、経度、及び走行している道路に関するデータが含まれる。走行している道路に関するデータは、マップマッチング処理等によって、緯度及び経度に基づいて地図データMから逐次特定できる場合は、そのデータを走行している道路に関するデータとして取得する。一方、候補が複数ある場合など地図データMから逐次特定できない場合は、後処理で、前後の現在位置Pを含む軌跡データTから推定してから特定される。
【0032】
車載器3は、複数の位置情報を取得すると、これらを時系列で関連付けて、車両の軌跡データTを作成する(ステップS2)。作成された軌跡データTは、記憶媒体に記録される。そして、軌跡データTは、予め決められたタイミング、例えば時間間隔や走行条件などに応じて、地図作成サーバ装置4に送信される(ステップS3)。
【0033】
次に、地図作成サーバ装置4は、複数の車載器3から、複数の軌跡データTを受信する(ステップS11)。そして、複数の軌跡データTから解析を行い(ステップS12)、道路データLを作成し(ステップS13)、作成された道路データLから地図データMを更新する(ステップS14)。具体的には、後述するが、軌跡データTから道路データLの作成に必要な代表点Pを、領域Aごとに抽出する。その後、決定された代表点Pに基づいて道路データLを作成し、作成された道路データLから地図データMを更新する。
【0034】
地図作成サーバ装置4で作成された地図データMは、車両の走行条件や地図データMの更新のタイミングなどに応じて、地図作成サーバ装置4から車載器3に送信される(ステップS15)。その後、車載器3は、更新された地図データMを受信し(ステップS4)、車載器3内部に記憶されている地図データMを更新する(ステップS5)。
【0035】
次に、図4を参照して、課金用地図作成システム1の道路データ作成処理について詳細に説明する。
まず、複数の車載器3から、複数の軌跡データTを受信すると、地図作成サーバ装置4は、道路ごとに複数の軌跡データTを関連付ける(ステップS21)。
また、対象とする道路を分割して複数の領域Aを作成する(ステップS22)。具体的には、図7に示すように、対象とする道路の進行方向に対して垂直方向に分割線Dを引き、道路の進行方向に沿って2本の分割線Dで挟まれた複数の領域Aを作成する。
【0036】
そして、対象とする道路の複数の領域Aにおいて、複数の軌跡データTの度数分布を求める(ステップS23)。度数分布は、道路の幅方向に存在する軌跡データTの頻度を集計したものである。
例えば、図10(A)に示すように、道路R,Rにおいて、複数の軌跡データTが得られたとき、道路の幅方向に存在する軌跡データTの頻度を集計することによって、図10(B)に示すような度数分布が道路R,Rごとに得られる。図10(B)において、度数分布は便宜上正規分布で表しているが、集計結果は、正規分布に限られない。また、度数分布は、ヒストグラムで表されるように、集計されてもよい。
度数分布の頻度算出のもととなる位置情報は、車載器3で実際に得られる位置情報を用いてもよいし、位置情報を滑らかに繋いで作成された軌跡データTと、道路の進行方向に対して垂直方向の直線とが交差する交点の位置情報を用いてもよい。
【0037】
次に、道路データ作成例について、複数の実施例を挙げながら説明する。
まず、第1実施例として、隣り合う2本の道路R,Rがあり、互いに重なっていない場合の道路データ作成例を説明する。隣り合う2本の道路R1,R2があり、互いに重なっていない場合とは、例えば、図9の「重なっていない領域」と示されているように道路が配置されている場合である。
【0038】
この場合、度数分布が求められると、図10(C)に示すように、各道路R,Rの複数の軌跡データTのうち最も内側に位置する位置情報を代表点Pとして抽出する(ステップS24)。そして、代表点Pを滑らかに繋いで、図9に示すように、道路データLを作成する(ステップS13)。
【0039】
このように道路データLが作成された場合、道路課金システム2は、次のように処理が行われる。図5は、本実施形態に係る道路課金システムの課金処理を示すフローチャートである。
道路を走行する車両の位置情報がリアルタイムで取得され(ステップS31)、取得された位置情報に基づいて、車両が位置する道路、すなわち車両が走行している道路が地図データMから検出される(ステップS32)。具体的には、リアルタイムで取得された車両の位置情報と、地図データM上の道路情報とを対比して、最も近い距離にある道路が、車両が実際に走行している道路であると判断される。
【0040】
そして、車両が走行している道路が、課金が必要な有利道路であるか否かが判断される(ステップS33)。有料道路である場合、車載器3にて課金処理が行われ(ステップS34)、課金が不要な無料道路である場合は、課金処理は実施されない(ステップS35)。
【0041】
課金用地図作成システム1では、図6の「重なっていない領域」や図10で示されるように、隣り合う2本の道路R,Rがあり、互いに重なっていない場合、最も内側に位置する位置情報を代表点Pとして抽出して、道路データLを作成している。したがって、2本の道路R,Rのいずれかを走行している車両が、隣接する2本の道路R,Rの更に内側を走行する可能性は少ない。すなわち、車両は、道路R,Rのいずれの場合でも、隣り合う2本の道路R,Rの外側を走行する確率が高い。したがって、車両の位置情報と道路データの位置情報との関係から、車両が走行している道路を推定する際、誤認識が生じにくい。
【0042】
また、上述したとおり、道路データLは、車両が走行する可能性がある最も内側に位置する代表点Pに基づいて、道路データLを作成していることから、道路データLは、道路幅に関する情報を持たなくても、車両の位置情報と道路データの位置情報との関係から車両が走行している道路を誤認識することなく推定できる。
【0043】
次に、第2実施例として、2本の道路R,Rの分岐点近くなど、測位結果を十分な精度で分離できず、かつ、一方が有料道路Rで他方が無料道路Rである場合について説明する。このケースは、例えば、図9の「重なっている領域」と示されているように道路が配置されており、2本の道路R,Rが分岐を開始している近傍の領域である。
【0044】
この場合、例えば、図11(A)に示すように、道路R,Rにおいて、複数の軌跡データTが得られたとき、道路の幅方向に存在する軌跡データTの頻度を集計することによって、図11(B)に示すような度数分布が道路R,Rごとに得られる。
【0045】
隣り合う有料道路Rと無料道路Rがあり、軌跡データTの度数分布が互いに重なっている場合、度数分布が求められると、図11(C)に示すように、無料道路Rのほうは、最も有料道路R側に位置する位置情報を代表点Pとして抽出する(ステップS24)。そして、代表点Pを滑らかに繋いで、無料道路Rの道路データLを作成する(ステップS13)。
【0046】
有料道路Rのほうは、誤認識が生じてよい確率、すなわち課金漏れを許容する確率に応じて、その確率となる位置情報を代表点Pとして抽出する(ステップS24)。そして、代表点Pを滑らかに繋いで、有料道路Rの道路データLを作成する(ステップS13)。
【0047】
このように道路データLが作成された場合、道路課金システム2は、次のように処理が行われる。
道路を走行する車両の位置情報がリアルタイムで取得され(ステップS31)、取得された位置情報に基づいて、車両が位置する道路が地図データMから検出される(ステップS32)。具体的には、リアルタイムで取得された車両の位置情報と、地図データ上の道路情報とを対比して、最も近い距離にある道路が、車両が実際に走行している道路であると判断される。
【0048】
そして、第1実施例と同様に、車両が走行している道路が、課金が必要な有利道路であるか否かが判断される(ステップS33)。有料道路である場合、車載器3にて課金処理が行われ(ステップS34)、課金が不要な無料道路である場合は、課金処理は実施されない(ステップS35)。
【0049】
課金用地図作成システム1では、隣接する有料道路Rと無料道路Rがあり、軌跡データの度数分布が互いに重なっている場合、無料道路Rの道路データLを作成する際、最も有料道路R側に位置する位置情報を無料道路Rの道路データ作成時の代表点Pとして抽出している。したがって、2本の道路R,Rのいずれかを走行している車両は、隣り合う2本の道路R,Rのうち無料道路Rを走行していると判断される確率が高い。
その結果、2本の道路R,Rの分岐付近において、無料道路Rを走行しているにもかかわらず、課金されてしまうという誤課金を低減できる。
【0050】
一方、有料道路Rの道路データLを作成する際、課金漏れを許容する確率となる位置情報を有料道路Rの道路データ作成時の代表点Pとして抽出している。したがって、2本の道路R,Rのいずれかを走行している車両について、隣り合う2本の道路R,Rのうち有料道路Rを走行していると判断される確率(A%)は、課金漏れを許容する確率をB%とすると、(100−B)%である。
【0051】
図12を用いて、この点について更に説明する。
例えば、図12(A1)に示すように、2本の道路R,Rの代表点Pを定めて、道路データLを作成すると、図12(B1)に示すように、道路Rの走行時に道路Rにマッチングする確率は、75%であり、道路Rにマッチングしてしまい誤認識する確率は、25%である。一方、道路Rの走行時に道路Rにマッチングしてしまい誤認識する確率は、25%であり、道路Rにマッチングする確率は、75%である。すなわち、道路Rが有料道路である場合、道路Rにマッチングしてしまい、誤課金されてしまう確率は、25%残ることになる。
【0052】
これに対して、本実施形態を適用して、図12(A2)に示すように、最も有料道路R側に位置する位置情報を代表点Pとして抽出し、無料道路Rの道路データLを作成すると、道路Rの走行時に道路Rにマッチングしてしまい誤認識する確率は、0.1%であり、道路Rにマッチングする確率は、99.9%である。すなわち、道路Rが有料道路である場合、道路Rにマッチングしてしまい、誤課金されてしまう確率は、0.1%に低減する。
このように、道路データLを作成する基準となる代表点Pの位置を調整することによって、誤課金を低減できる。
【0053】
なお、誤課金を低減する位置に無料道路Rを設定すると、有料道路Rの走行時に無料道路Rであると誤認識してしまう確率が増えて、課金漏れが増加する。したがって、上記では、無料道路Rの道路データLを作成する際、最も有料道路R側に位置する位置情報を無料道路Rの道路データ作成時の代表点Pとして抽出するとしたが、本発明はこの例に限定されない。誤課金の発生と、課金漏れの発生のバランスによって、代表点PAとして抽出する位置情報を、最も有料道路R側とするのではなく、最も有料道路R側よりも無料道路Rに少し寄ったほうに設定してもよい。
【0054】
次に、図13図18を参照して、第3実施例として、複数本の道路が、第2実施例のように略平行に進行していく場合ではなく、略垂直方向に分岐していく場合について説明する。
交差点近くなど、測位結果を十分な精度で分離できず、かつ、一部の道路が有料道路で残りが無料道路である場合について説明する。従来、マップマッチング処理にて誤認識が生じた場合、図17に示すように、無料道路Rから無料道路Rへ左折したにもかかわらず、有料道路Rを走行していると認識されてしまうことがあった。この場合、その後の処理で無料道路Rを走行していると変更できた場合でも、一部有料道路Rを走行していると認識された期間では、課金が生じてしまっている。
【0055】
第3実施例の課金用地図作成システム1の道路データ作成処理について説明する。
まず、複数の車載器3から、複数の軌跡データTを受信すると、地図作成サーバ装置4は、道路ごとに複数の軌跡データTを関連付ける(ステップS21)。図13は、複数の現在位置Pから作成された地図データM上の軌跡データTを示している。
そして、対象とする複数の分岐道路のうち無料道路R,Rを分割して複数の領域Aを作成する(ステップS22)。具体的には、図14に示すように、対象とする無料道路R,Rの進行方向に対して垂直方向に分割線Dを引き、無料道路R,Rの進行方向に沿って2本の分割線Dで挟まれた複数の領域Aを作成する。
【0056】
そして、対象とする無料道路R,Rの複数の領域Aにおいて、複数の軌跡データTの度数分布を求める。度数分布が求められると、図15に示すように、無料道路R,Rのほうは、有料道路Rが延びていく方向に最も近い点、すなわち無料道路R,Rから最も離隔している点に位置する位置情報を代表点Pとして抽出する(ステップS24)。そして、図16に示すように、代表点Pを滑らかに繋いで、無料道路R,Rの道路データLを作成する(ステップS13)。その結果、例えば図18に示すように、無料道路R,Rの位置が当初の位置からずれた位置に配置される。
【0057】
道路課金システム2は、第3実施例の場合も、第2実施例と同様に処理が行われる。
道路を走行する車両の位置情報がリアルタイムで取得され(ステップS31)、取得された位置情報に基づいて、車両が位置する道路が地図データMから検出される(ステップS32)。具体的には、リアルタイムで取得された車両の位置情報と、地図データ上の道路情報とを対比して、最も近い距離にある道路が、車両が実際に走行している道路であると判断される。
【0058】
そして、車両が走行している道路が、課金が必要な有利道路であるか否かが判断される(ステップS33)。有料道路である場合、車載器3にて課金処理が行われ(ステップS34)、課金が不要な無料道路である場合は、課金処理は実施されない(ステップS35)。
【0059】
課金用地図作成システム1では、交差する有料道路Rと無料道路R,Rがあり、軌跡データTの度数分布が互いに重なっている場合、有料道路Rが延びていく方向に最も近い点に位置する位置情報を代表点Pとして抽出し、無料道路R,Rの道路データLを作成している。したがって、有料道路Rと無料道路R,Rのいずれかを走行しているか不明瞭な車両は、交差する道路のうち無料道路R,Rを走行していると判断される確率が高い。
その結果、分岐付近において、無料道路R,Rを走行しているにもかかわらず、課金されてしまうという誤課金を低減できる。
【0060】
以上、本実施形態によれば、車両が走行している道路を推定するための地図データ上の道路データを正確に作成することができる。そして、複数の道路のうち一の道路を走行している車両が、その一の道路ではなく他の道路に位置すると判断される誤認識を低減できる。
【0061】
なお、上記実施形態では、車載器3が、車両の位置情報に基づいて、軌跡データを作成し、車載器3で作成された軌跡データが、車載器3から地図作成サーバ装置4に送信される例について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、車載器3が、車両の位置情報を地図作成サーバ装置4に送信し、地図作成サーバ装置4が、受信した車両の位置情報に基づいて、軌跡データを作成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 課金用地図作成システム
2 道路課金システム
3 車載器
4 地図作成サーバ装置
5 課金サーバ装置
6 位置情報取得部
7 軌跡データ作成部
8 送受信部
9 課金処理部
11 送受信部
12 解析部
13 道路データ作成部
14 地図更新部
21 送受信部
22 課金処理部
31 領域作成部
32 代表点抽出部
図1
図2
図3
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