【実施例1】
【0012】
実施例1に係る分岐装置につき、
図1から
図8を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、分岐装置1は、流体管2の穿孔部2aを密封状に囲繞したケース体3内で断面視略円弧上に形成された弁体4を流体管2の外周面に沿って回動させ、ケース体3から延設された分岐部3cの分岐口3dを開放もしくは閉塞し、穿孔部2aと分岐部3cに接続された分岐管5との連通状態を制御する装置である。
【0013】
流体管2は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面が粉体塗装あるいはモルタル層で被覆されている。尚、流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいは石綿、コンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0014】
図2に示されるように、ケース体3は、第1分割ケース3aと第2分割ケース3bとから成り、その内周面が流体管2の外周面から所定間隔離間した状態で取付けられている。尚、ケース体3は、3体以上の複数の分割されたケース体からなる分割構造であってもよいし、若しくは分割構造を有さず、鋳型、或いは、溶接加工や機械加工等で連続形成されていても構わない。更に尚、ケース体3の材質はダクタイル鋳鉄等の金属材により構成されているが、流体管の材質に応じて適用されるものであれば、上記で説明した流体管と同様に種々の材質であってもよい。
【0015】
図2及び
図3に示されるように、第1分割ケース3aには、流体管2の管軸と直交方向に延びて分岐部3cが設けられており、この分岐部3cに分岐管5が挿入され、シール部材9,離脱防止具10によって密封状に接続されている。また、第1分割ケース3aの内周面には、分岐部3cの分岐口3dの外縁に沿って設けられる環状の係止溝3eが形成されている。この係止溝3eは、その開口が流体管2側を向くように分岐部3cの内周面の曲面形状に沿って形成されているとともに、その底面部には、前記開口に向けて突設する凸条3fが周方向に沿って形成されている。
【0016】
また、係止溝3eと分岐口3dとの間には、第1分割ケース3aの管壁を貫通する貫通部3gが設けられ、貫通部3gには駆動ギアユニット6が設けられている。この駆動ギアユニット6は、貫通部3gを密封状に蓋をする蓋部材61と、蓋部材61に対し回転自在に取付けられる回転軸62と、回転軸62におけるケース体3側の端部に設けられるウォームギア63と、蓋部材61に対して固定される取付け具を介して回転自在に取付けられウォームギア63と噛合するウォームホイール64(駆動ギア部)と、から構成されており、回転軸62におけるウォームギア63と対向する側の端部を第1分割ケース3aの外方から操作することで、ウォームホイール64が回動可能となっている。
【0017】
また
図3に示されるように、第1分割ケース3aにおける流体管2の管軸方向の両端部には、弁体4を周方向に移動可能に支持する支持部3hが設けられている。この支持部3hは、流体管2の周方向に沿った形状を成し、分岐口3dの径方向に向けて突設されており、
図6に示されるように弁体4の下面が支持部3hに摺動しながら周方向に移動可能になっている。尚、本実施例では第2分割ケース3bには支持部3hが形成されていないが、第2分割ケース3bにも同様に支持部3hが形成され、弁体4が第2分割ケース3bにまで移動可能になっていてもよい。
【0018】
図4に示されるように、係止溝3eには、弾性体から成る密封リング7が嵌合されて設置されている。尚、係止溝3eと密封リング7との間にゴム用接着剤を介在させ補強してもよい。この密封リング7は、係止溝3eに取付けられる座部7aと、弁体4と当接可能なシール部7bと、密封リング7の両側面における座部7a及びシール部7bの境目に設けられる切欠き溝7c,7cと、から主に構成されている。この座部7aの底面には、周方向に沿って連続する凹部7dが形成されており、凹部7dを挟んだ両側の底面部7j,7kは、それぞれ変形可能となっている。また、この凹部7dを凸条3fに密着嵌合させた状態で密封リング7が係止溝3eに設置されている。
【0019】
シール部7bは、係止溝3eの開口からケース体3内に突設した部分であり、シール部7bには、周方向に沿って溝部7eが形成されており、この溝部7eを挟んだ流体管2側と分岐部3c側とに密封頭部7f,7gが二股に分岐するように設けられている。この密封頭部7f,7gは、先端部が湾曲した形状に形成されているとともに、切欠き溝7c,7cを基点としてそれぞれ独立して個別に変形可能となっている。このように、密封頭部7f,7gは、その根元が切欠き溝7c,7c及び溝部7eにより肉薄となっているため変形しやすくなっている。
【0020】
図2及び
図5に示されるように、弁体4には、前述したウォームホイール64と貫通部3gを介して噛合する従動ギア部4aが外周面に沿って形成されており、ウォームホイール64の回動に伴って流体管2の外周面に沿って回動移動するようなっている。また、
図5及び
図6に示されるように、この弁体4における流体管2の管軸方向の両端部には、弁体4の回動の進行方向にテーパ面4cを有するストッパ部4bが設けられており、このストッパ部4bは、弁体4の閉塞状態時(
図2及び
図7(a)を参照)において、支持部3hにテーパ面4cから漸次乗り上げるようになっている。これにより、弁体4が分岐部3c側に押し出されるように支持され、弁体4の外周面が密封頭部7f,7gを互いに離間するように漸次押し潰し、穿孔部2aを介して流出する流体が分岐管5に漏れ出すことが確実に防止される。尚、このストッパ部4bは、必ずしも設けられるものに限らない。
【0021】
図7(a)に示されるように、弁体4の閉塞状態においては、穿孔部2aを防錆するために取付けられた防錆コア8によって弁体4の内周面が押圧される状態となっており、弁体4がさらに分岐部3c側に押し出されるように支持される。これにより、弁体4の外周面がさらに密封頭部7f,7gを互いに離間するように押し潰すようになる。また、
図7(b)に示されるように、弁体4の開放状態においては、穿孔部2aと分岐管5とが連通状態となる。尚、例えば、外周面に亜鉛溶射が施されている流体管では、犠牲陽極の効果が大きいので、この防錆コア8は不必要となり設けられていなくてもよい。
【0022】
さらに、密封頭部7f,7gが湾曲形状に形成されていることにより、弁体4との接触面積が小さくなり、前記摩擦力を抑えることができるようになっている。したがって、弁体4との摺動により例えば密封頭部7f,7gがめくれるように変形することを防ぐことができるとともに、弁体4を容易に操作することができる。
【0023】
また、密封頭部7f,7gの湾曲形状により密封頭部7f,7gが弁体4の従動ギア部4aに干渉し、密封リング7が係止溝3eから脱落することを防止できる。
【0024】
ところで、弁体4の閉塞状態において、分岐管5側から流体を注入する圧力試験や、分岐管5を流れる流体の逆流等により、弁体4に対して流体管2側の流体圧よりも高い圧力がかかることが想定される。その場合には、
図8の矢印に示されるように、分岐部3c側からの流体圧により弁体4に対して押し上げる力が働くようになるとともに、分岐管5側の密封リング7に対して流体管2側に移動させる力が働くようになる。つまり、弁体4と密封リング7とが離間するようになる。
【0025】
この場合には、前述したように密封リング7は、分岐管5側からの流体圧により密封頭部7gが単独で弁体4に押し付けられることになり、弁体4が若干押し上げられても密封頭部7gが弁体4に追従し、密封状態を保つことができる。さらに、密封頭部7gは、その根元から変形しやすくなっているため、分岐管5側からの流体圧により密封頭部7gが弁体への押し付けられやすくなり、密封頭部7gの密封能力が高い。
【0026】
また、例えばこの密封頭部7gが弁体4に追従したことにより密封頭部7gと係止溝3eとの間に隙間が形成されても、密封リング7の凹部7dと係止溝3eの凸条3fとが凹凸嵌合しているため、分岐部3c側の流体が前記隙間を介して回り込んでもその流体が反対側に流出することを防止できる。
【0027】
また、分岐部3c側からの流体圧により密封リング7を流体管2側に移動させる力が働いた場合、密封リング7の密封頭部7g側の移動が凸条3fにより停止されるとともに、流体管2側の密封頭部7fには影響を与えず、流体管2側の密封状態も維持されたままにすることができる。このように溝部7eと凹部7dとを基点に密封リング7における流体管2側及び分岐部3c側が独立して個別に変形することができ、流体管2側及び分岐部3c側のどちらから流体圧が受けても、相互に影響を与えることがない。
【0028】
尚、密封リングの変形例として次のようなものもある。
図9に示されるように、密封リング71は、シール部71bが溝部71eの流体管2側に配される断面視略矩形状の密封頭部71fを備えているとともに、この密封頭部71f側の側面は平坦面となっている。したがって、密封頭部71fは変形しにくくなっている。また、溝部71eの分岐部3c側には、密封頭部7gが配されている。このように、密封リング71の流体管2側を従来の密封リングの形状とし、分岐部3c側からの流体圧に対して密封頭部7gが密封できる構成としてもよい。このように、シール部71bは、溝部71eを挟んだ両側が対称形状に形成されるものでなくともよい。
【0029】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0030】
例えば、流体管2にケース体3を取付けた後、分岐部3cに所定の穿孔装置を接続し、不断流状態で穿孔部2aを形成してもよい。
【0031】
また、凹部7dを座部7aの底面に2以上の複数条設け、密封リング7と係止溝3eとの間に回り込んだ流体が滞留できる領域を形成し、流体が反対側に流出しないようにしてもよい。
【0032】
また、シール部7bに溝部7eを複数条設け、3つ以上の密封頭部を形成してもよい。