(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホスホン酸系キレート剤が、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、グリシン−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)(グリホシン)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)またはそれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項6に記載の洗浄液組成物。
【背景技術】
【0002】
ICの高集積化に伴い、微量の不純物の混入が、デバイスの性能および歩留まりに大きく影響を及ぼすため、厳しいコンタミネーションコントロールが要求されている。すなわち、基板の汚染を厳しくコントロールすることが要求されており、そのため半導体基板製造の各工程で各種洗浄液が使用されている。
一般に、半導体基板用洗浄液として、粒子汚染除去のためにはアルカリ性洗浄液であるアンモニア−過酸化水素水−水(SC−1)が用いられ、金属汚染除去のためには酸性洗浄液である硫酸−過酸化水素水、塩酸−過酸化水素水−水(SC−2)、希フッ酸などが用いられ、目的に応じて各洗浄液が単独または組み合わせて使用されている。
【0003】
一方、デバイスの微細化および多層配線構造化が進むに伴い、各工程において基板表面のより緻密な平坦化が求められ、半導体基板製造工程に新たな技術として研磨粒子と化学薬品の混合物スラリーを供給しながらウェハをバフと呼ばれる研磨布に圧着し、回転させることにより化学的作用と物理的作用を併用させ、絶縁膜や金属材料を研磨、平坦化を行う化学的機械研磨(CMP)技術が導入されてきた。
特に配線抵抗が従来のAlよりも低いCuを用いた最先端のデバイスでは、ダマシンプロセスによるCu配線形成が行われる。ダマシンプロセスは、配線パターンを層間絶縁膜に溝として形成し、スパッタリングや電解めっきを用いてCuを埋め込んだ後、不要なブランケットCuを化学的機械研磨などにより除去し、配線パターンを形成するプロセスである。
【0004】
CMP後の基板表面は、スラリーに含まれるアルミナやシリカ、酸化セリウム粒子に代表される粒子や、研磨される表面の構成物質やスラリーに含まれる薬品由来の金属不純物により汚染される。これらの汚染物は、パターン欠陥や密着性不良、電気特性の不良などを引き起こすことから、次工程に入る前に完全に除去する必要がある。これらの汚染物を除去するための一般的なCMP後洗浄としては、洗浄液の化学作用とポリビニルアルコール製のスポンジブラシなどによる物理的作用を併用したブラシ洗浄が行われる。洗浄液としては、従来、粒子の除去にはアンモニアのようなアルカリが用いられていた。また、金属汚染の除去には、有機酸と錯化剤を用いた技術が特許文献1や特許文献2に提案されている。
【0005】
さらに、金属汚染と粒子汚染を同時に除去する技術として、有機酸と界面活性剤を組み合わせた洗浄液が特許文献3に提案されている。しかし、半導体素子の配線パターンの微細化の進行に伴い、CMP後洗浄中のCuの腐食が重要視され、酸性洗浄液では、表面のラフネスが増大することが問題となっている。一方、塩基性洗浄液は、配線の微細化に伴って導入されている低誘電率層間絶縁膜(low−k)材料にダメージを与える。
【0006】
特許文献5には、カルボン酸、アミン含有化合物およびホスホン酸を含むCMP後の半導体表面の清浄化溶液、特許文献6には、アルカリ成分と吸着防止剤を含む半導体ウェハ処理液が記載されているが、何れもCu配線を有する基板について検討されていない。
【0007】
Cu配線を有する基板を洗浄する組成物として、特許文献7には、スルホン酸系ポリマーを有する配合物、特許文献8には、多孔性誘電体、腐食阻害溶媒化合物、有機共溶媒、金属キレート剤および水を含む洗浄組成物、特許文献9には、キレート剤またはその塩、アルカリ金属水酸化物および水を含む洗浄液が記載されているが、何れの組成物もlow−k材料に対するダメージは検討されておらず、また微粒子および金属不純物の両方を除去することについても検討されていない。特許文献10には、low−k材料の表面を不活性にする不活性化剤を含む洗浄液が記載されているが、同不活性化剤により形成された不活性化膜を除去する工程が必要になる。
【0008】
Cu配線を形成するダマシンプロセスにおいては、CMPスラリー中にCuの研磨速度制御を目的とした有機系防食剤が添加されている。有機系防食剤には、主にベンゾトリアゾール(BTA)が用いられ、これら有機系防食剤がCMPプロセス時にCuと反応し、Cuを介して架橋されたダイマー、オリゴマーとなり、難溶性の有機残渣として基板表面に残留する。近年、このCuによる有機残渣除去性がCMP後洗浄液に求められる重要な特性となっており、上記に挙げた現行の洗浄液では除去性が不十分であることが最大の問題点となっている。Cuによる有機残渣を除去する組成物としては、特許文献11にアミンとグアニジンの塩またはグアニジン誘導体の塩を含む洗浄液、特許文献12に脂肪族アミンと没食子酸と第四級アンモニウムヒドロキシドとアスコルビン酸を含む洗浄液、特許文献13に環状アミンと没食子酸と第四級アンモニウムヒドロキシドとアスコルビン酸を含む洗浄液、特許文献14にヒドラジンと有機溶剤を含む洗浄液、特許文献15および16に有機アミンと多価水酸基含有化合物を含む洗浄液、特許文献17に有機アミンと第四級アンモニウム化合物とウレア基またはチオウレア基有する化合物を含有する洗浄液などが記載されているが、グアニジンやウレア基を有する化合物および多価水酸基含有化合物では、有機残渣除去性が不十分であり、アスコルビン酸は、有機残渣除去性に効果がないばかりか、金属不純物除去性を低下させてしまう。
【0009】
さらに、洗浄液中でのCuの腐食の抑制を目的として、特許文献18にアルコールアミンとピペラジンおよびピペラジン誘導体を含有した洗浄液があるが、防食性が十分ではない。また、特許文献19に第四級アンモニウム水酸化物とカルボキシベンゾトリアゾールを含有した洗浄液があり、さらにドライエッチング後の残渣除去液中または処理後のCuの腐食の抑制を目的として、特許文献20にプリン誘導体を含む水溶液があるが、これらの化合物は、分子構造内の疎水部位の割合が高く、処理後のCu表面に吸着し、新たな有機残渣となる。また、特許文献21に塩基性有機化合物と酸性化合物有機化合物とイミダゾールを含む実質的に中性の調整された洗浄液があるが、中性ではCMPプロセス中に付着した有機残渣を除去することができない。
このように、CMP後にウェハ表面に付着した金属不純物、パーティクルおよび有機残渣などの不純物、特に有機残渣の除去性に優れ、なおかつCuの腐食および低誘電率層間絶縁膜に対するダメージの問題が無い洗浄液組成物はこれまで知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、半導体素子などの電子デバイスの製造工程において、研磨処理、エッチング処理、化学的機械研磨(CMP)処理などを施された基板の金属材料表面の洗浄において、金属不純物、微粒子、Cuと有機防食剤との反応生成物である有機残渣などの不純物、特に有機残渣の除去性に優れ、Cuなどの金属材料に対する腐食なく、さらに洗浄後のCu表面を薄い酸化膜層で保護することにより、さらなる酸化を抑制することができる洗浄液組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、基板の洗浄用のみならず、あらゆる用途において、Cuを含む有機残渣の溶解に用いることができる洗浄液組成物および該洗浄液組成物を用いた、有機残渣を溶解する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく鋭意研究する中で、本発明者らは、塩基性化合物を1種または2種以上と、窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含み、水素イオン濃度(pH)が8〜11である洗浄液組成物が、金属不純物と微粒子、中でも有機残渣に対して高い除去性を有し、Cuなどの金属材料に対して腐食なく、かつ洗浄後のCu表面を薄い酸化膜で保護することにより、さらなる酸化を抑制することが出来ることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1] Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物であって、塩基性化合物を1種または2種以上と、窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含み、水素イオン濃度(pH)が8〜11である、前記洗浄液組成物。
[2] Cu配線を有する基板が、化学的機械研磨(CMP)後に得られる基板である、[1]に記載の洗浄液組成物。
[3] 窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物が、五員環化合物である、[1]または[2]に記載の洗浄液組成物。
【0015】
[4] 塩基性化合物が、第四級アンモニウム化合物または直鎖脂肪族アミンである[1]〜[3]のいずれかに記載の洗浄液組成物。
[5] イソアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体および没食子酸からなる群から選択される1種または2種以上を含まない、[1]〜[4]のいずれかに記載の洗浄液組成物。
[6] 塩基性化合物が、水酸化テトラメチルアンモニウムを除く第四級アンモニウム化合物またはアルカノールアミンである、[1]〜[5]のいずれかに記載の洗浄組成物。
【0016】
[7] さらに、ホスホン酸系キレート剤を1種または2種以上含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の洗浄液組成物。
[8] ホスホン酸系キレート剤が、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、グリシン−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)(グリホシン)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)またはそれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上である、[7]に記載の洗浄液組成物。
[9] さらに、アニオン型またはノニオン型界面活性剤を1種または2種以上含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の洗浄液組成物。
【0017】
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の洗浄液組成物用の原液組成物であって、10倍〜1000倍に希釈することにより前記洗浄液組成物を得るために用いられる、前記原液組成物。
[11] [1]〜[9]のいずれかに記載の洗浄液組成物を、Cu配線を有する基板に接触させる工程を含む、半導体基板の製造方法。
[12] Cu配線を有する基板に接触させる工程の前に、Cu配線を有する基板を、化学的機械研磨(CMP)する工程を含む、[11]に記載の半導体基板の製造方法。
[13] Cu配線を有する基板に接触させる工程が、Cu配線を有する基板を洗浄する工程である、[11]または[12]に記載の半導体基板の製造方法。
【0018】
[14] 塩基性化合物を1種または2種以上と、窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含み、水素イオン濃度(pH)が8〜11である洗浄液組成物を、Cuを含む有機残渣に接触させる工程を含む、Cuを含む有機残渣を溶解する方法。
[15] Cuを含む有機残渣が、Cu−ベンゾトリアゾール(BTA)複合体を含む、[14]に記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗浄液組成物は、半導体素子などの電子デバイスの製造工程において、研磨処理、エッチング処理、化学的機械研磨(CMP)処理などを施された基板の金属材料表面の洗浄において、金属不純物、微粒子、中でもCuと有機防食剤との反応生成物であるCuを含む有機残渣の除去性に優れ、Cuなどの金属材料に対して腐食なく、さらに洗浄後のCu表面を薄い酸化膜層で保護することにより、さらなる酸化を抑制することができる。また、本発明の洗浄液組成物は、基板の洗浄用のみならず、あらゆる用途において、Cuを含む有機残渣の溶解に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、本発明の好適な実施態様に基づき、詳細に説明する。
まず、本発明の洗浄液組成物および原液組成物について説明する。
本発明の洗浄液組成物は、Cu配線を有する基板を洗浄するための洗浄液組成物である。
本発明の洗浄液組成物は、塩基性化合物を1種または2種以上と、窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含み、水素イオン濃度(pH)が8〜11である。
【0022】
本発明に用いられる塩基性化合物は、所定のpHに調整できるものであれば特に限定されない。
本願発明の洗浄液組成物を、特に電子デバイスなどに使用する場合には、塩基性化合物は、金属イオンを含まない塩基性化合物であることが好ましい。その理由として、塩基性化合物が金属イオンを含むと、逆汚染および基板内部への拡散が発生し、層間絶縁膜の絶縁不良によるリーク電流増大や半導体特性の劣化の原因となることが挙げられる。また、塩基性化合物が金属イオンを含まない場合には、回路基板作製などにおいて抵抗率をより厳密に制御できるという利点がある。
【0023】
塩基性化合物の含有量は、該塩基性化合物の種類や他の成分の種類、含量によって変動するpHを調整する役割のため、特に限定されないが、使用時の含有量として、好ましくは、0.5〜50mmol/Lであり、特に好ましくは、0.5〜30mmol/Lであり、さらに特に好ましくは、0.5〜20mmol/Lである。該塩基性化合物の含有量がかかる範囲より低い場合には、僅かな組成の変動や不純物の混入によってpHが変化する可能性があり、該塩基性化合物の含有量がかかる範囲より高い場合には、low−k材料へのダメージが増大する恐れがある。
【0024】
塩基性化合物としては、第四級アンモニウム化合物、アミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
第四級アンモニウム化合物としては、これに限定されないが、具体的には、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム(コリン)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルフェニルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。好ましくは、コリン、水酸化テトラエチルアンモニウムであり、より好ましくは、コリン、水酸化テトラエチルアンモニウムである。
【0025】
なお、本発明の洗浄液組成物は、一態様において、第四級アンモニウム化合物である、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含まない。水酸化テトラメチルアンモニウムは、第四級アンモニウム化合物の中では毒性が高く、近年製造工程における作業員の健康への影響を懸念するメーカーより敬遠される傾向があるため、出来る限り含有しないほうが好ましい。
【0026】
アミンとしては、分子内に存在するアミンの窒素原子の個数の観点から、1個の窒素原子を有するモノアミン、2個の窒素原子を有するジアミン、3個の窒素原子を有するトリアミンまたはそれ以上の個数の窒素原子を有するポリアミンが挙げられる。また、アミンとしては、アンモニアNH
3の水素原子を、置換基を有してもよい炭化水素基で置換した水素原子の個数の観点から、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンが挙げられる。
これらのアミンとしては、これに限定されないが、第一級脂肪族アミン、第二級脂肪族アミン、第三級脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環式アミンなどが挙げられる。中でも、入手が容易であり、原料価格抑制の観点から、好ましくは、第一級脂肪族アミン、第二級脂肪族アミン、第三級脂肪族アミン、複素環式アミンであり、より好ましくは、第一級脂肪族アミン、第二級脂肪族アミン、第三級脂肪族アミンである。また、アミンには、アルカノールアミンおよびジアミンなども含まれる。
【0027】
第一級脂肪族アミン、第二級脂肪族アミンおよび第三級脂肪族アミンとしては、これに限定するものではないが、アルキルアミン、アルカノールアミン、ジアミンおよびトリアミンなどが挙げられる。
第一級脂肪族アミンとしては、これに限定するものではないが、炭素数1〜10のものであり、直鎖状または分岐状であってもよく、具体的には、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、2−(2−アミノエトキシエタノール)、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。中でも、入手が容易であり、原料価格抑制の観点から、好ましくは、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシエタノール)、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールである。
【0028】
第二級脂肪族アミンとしては、これに限定するものではないが、炭素数1〜10のものであり、直鎖状または分岐状であってもよく、具体的には、ジエタノールアミン、N−メチルアミノエタノール、N−ヒドロキシエチルアミノエタノール、ジプロピルアミン、2−エチルアミノエタノールなどが挙げられる。中でも、入手が容易であり、原料価格抑制の観点から、好ましくは、ジエタノールアミンおよびN−メチルアミノエタノールである。
【0029】
第三級脂肪族アミンとしては、これに限定するものではないが、炭素数1〜10のものであり、直鎖状または分岐状であってもよく、具体的には、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールおよびエチルジエタノールアミンなどが挙げられる。中でも、入手が容易であり、原料価格抑制の観点から、好ましくは、トリエタノールアミンである。
【0030】
脂環式アミンとしては、これに限定するものではないが、炭素数3〜10のものであり、具体的には、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。中でも、入手が容易であり、原料価格抑制の観点から、好ましくは、シクロヘキシルアミンである。
【0031】
芳香族アミンとしては、これに限定するものではないが、炭素数6〜10のものであり、具体的には、アニリン、4−アミノフェノールなどが挙げられる。中でも、入手が容易であり、原料価格抑制の観点から、好ましくは、4−アミノフェノールである。
【0032】
複素環式アミンとしては、これに限定するものではないが、炭素数4〜10のものであり、具体的には、ピペリジン、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、N−ヒドロキシエチルピペラジン、N−メチル−N’−ヒドロキシエチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、N,N’−ジメチルアミノエチルメチルピペラジン、1−(2−ジメチルアミノエチル)−4−メチルピペラジン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−ヒドロキシエチルモルホリン、N−アミノエチルモルホリンなどが挙げられる。中でも、入手が容易であり、原料価格抑制の観点から、好ましくは、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N−アミノヒドロキシエチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジンおよび1−(2−ジメチルアミノエチル)−4−メチルピペラジンである。
【0033】
塩基性化合物は、その分子構造によりlow−k材料に対してダメージが生じる場合がある。特に第一級アミンを使用した場合は、low−k材料にダメージを引き起こすことが多い。そのため、塩基性化合物は、第二級アミン、第三級アミンまたは第四級アンモニウム化合物であることが好ましい。
【0034】
また、アミンの中でも分子内に環状構造を有する脂環式アミン、芳香族アミンおよび複素環式アミンの一部の化合物は、Cu表面に強固に吸着して異物となる恐れがあるため、直鎖脂肪族アミンであることが好ましい。また、該直鎖脂肪族アミンとしては、これに限定されないが、アルカノールアミン、ジアミン、トリアミン、テトラミンなどが挙げられる。中でも、入手が容易であり、原料価格抑制の観点から、好ましくは、アルカノールアミンである。
さらに、第一級アミンまたは第二級アミンの一部の化合物は、Cuとの錯安定度定数が高く、水溶性錯体を形成するため、Cuを溶解してしまう傾向にある。したがって、この点において、アミンとしては、好ましくは、炭素数1〜10のアルカノールアミンであり、より好ましくは、第二級脂肪族アミンのジエタノールアミンおよび第三級脂肪族アミンのトリエタノールアミンであり、特に好ましくは、トリエタノールアミンである。
【0035】
窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物の含有量は、窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物の種類や他の成分の種類、含量によって変動するため、特に限定されないが、使用時の含有量として、好ましくは、0.1〜10mmol/Lであり、特に好ましくは、0.1〜5mmol/Lであり、さらに特に好ましくは、0.1〜2mmol/Lである。複素環式単環芳香族化合物の含有量がかかる範囲より低い場合には、有機残渣の除去性が低く、複素環式単環芳香族化合物の含有量がかかる範囲より高い場合には、Cuへのダメージが増大する恐れがある。
【0036】
窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物のうち、五員環化合物としては、これらに限定されるものではないが、ピロール、ピラゾリン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、イミダゾリン、オキサゾリン、オキサゾール、イソオキサゾールおよびその誘導体であり、具体的には、1H−ピロール、1−ピロリン、2−ピロリン、3−ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、γ−ブチロラクタム、γ−バレロラクタム、プロリン、プロリル、ヒグリン酸、ヒグロイル、ミナリン、1H−ピラゾール、1−ピラゾリン、2−ピラゾリン、ピラゾリジン、ピラリゾリドン、3−ピラゾロン、4−ピラゾロン、5−ピラゾロン、1H−ピラゾール−4−カルボン酸、1−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボン酸、5−メチル−1H−ピラゾール−3−カルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシピラゾール、1H−イミダゾール、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、4−イミダゾリン、イミダゾリジン、イミダゾリドン、エチレン尿素、ヒダントイン、アラントイン、ヒスチジン、ヒスチジル、ヒスタミン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−ア
ミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。中でも、工業的に入手が容易であり、水溶性が高いという観点から、好ましくは、ピラゾール、3,5−ピラゾールジカルボン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、ヒスチジン、ヒスタミンであり、特に好ましくは、ヒスチジン、ヒスタミン、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールである。
【0037】
また、窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物のうち、六員環化合物は、これらに限定されるものではないが
、ピリジン、ピラジン
、ピリミジン、ピリダジ
ンおよびその誘導体であり、具体的には
、ピペリジル、ピペリジリデン、ピペリジレン、ピペコリン、ルペチジン、コニイン、ピペリドン、ピペコリン酸、ピペコロイル、ピペコルアミド、ニペコチン酸、イソニペコトイル、イソニペコトアミド、ペレチエリン、イソペレチエリン、ピペリン、イソピペリン、カビシン、イソカビシン、ピリジン、ピリジル、ピリジリデン、ピリジレン、ピリジレン、ピペリデイン、2−ピリドン、4−ピリドン、ピコリン、α−コリジン、β−コリジン、γ−コリジン、ピコリン酸、ピコリノイル、ピコリンアミド、ニコチン酸、ニコチノイル、ニコチンアミド、イソニコチン酸、イソニコチノイル、シトラジン酸、キノリン酸、ルチジン酸、イソシンコメロン酸、ジピコリン酸、シンコメロン酸、ジニコチン酸、ベルベロン酸、フサル酸、エチオナミド、ニコチン、コチニン、アナバシン、アナタビン、ホマリン、トリゴネリン、グバシン、アレカイジン、アレコリン、ピコリヌル酸、ニコチヌル酸、リセドロン酸、アミノヒドロキシピラゾール、ジヒドロキシピリジン、ピラジン、ピラジン酸、ピラジノイル、ピラジンアミド
、グリシン無水物、ピリミジン、シトシン、ウラシル、テガフール、カルモフール、チミン、オロト酸、バツビツル酸、バルビタール、ジアルル酸、ジリツル酸、ウラミル、アロキサン、ビオルル酸、アロキサンチン、ムレキシド、イソバルビツル酸、イソウラミル、ジビシン、ビシン、チアミン、ピリタジン、マレイン酸ヒドラジド、メラミン、シアヌル酸が挙げられる。中でも、工業的に入手が容易であり、水溶性が高いという観点から、好ましくは、シトシンおよびシアヌル酸である。
【0038】
本発明の洗浄液組成物は、窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を含む。該複素環式単環芳香族化合物は、基板表面の有機残渣を除去するために添加される。
【0039】
有機残渣としては、これに限定されないが、Cuとベンゾトリアゾール(BTA)などの有機系防食剤とが、CMPプロセス中に反応して生成したCuにより架橋された有機金属錯体のダイマーやオリゴマーである、Cuを含む有機残渣が挙げられ、難溶性である。このCuを含む有機残渣を洗浄液中に溶解させるためには、洗浄液のpHの変更によりCuと有機系防食剤との配位結合を切断し、低分子化させる方法がある。
Cuを含む有機残渣のうち、Cuとベンゾトリアゾール(BTA)などの有機系防食剤とが、CMPプロセス中に反応して生成したCuにより架橋された有機金属錯体のダイマーやオリゴマーとしては、これに限定されないが、例えばCu−ベンゾトリアゾール(BTA)複合体が挙げられる。
【0040】
Cu−BTA複合体とは、Cuおよびベンゾトリアゾール(BTA)が架橋などにより複合体化したものをいい、これに限定されないが、Cu−BTA錯体、Cu−BTA錯体にSiO
2等のスラリー由来の無機物が混合された化合物などが挙げられる。該Cu−BTA錯体は、pH2以下または11以上にすることで錯体を安定に保てなくなり、低分子化されるため、洗浄液に溶解することができる(
図3参照)。しかし、前述のとおり、pH2以下ではCuの腐食や処理後に金属Cuが露出され、大気中で著しく酸化が進行してしまい、pH11を超えると、low−k材料へのダメージが懸念されるため、pHの変更による有機残渣の除去は適用できない。そのため、錯体安定度定数がCuとBTAよりも高く、かつ比較的分子内の疎水部位が小さく水溶性が高い錯化剤を添加し、新たにCuと錯化剤との有機金属錯体を形成することでpH8〜11の領域でCu−BTA複合体のような有機残渣を除去することができる。
【0041】
この新たなCuと錯化剤との有機金属錯体は、Cu−BTA複合体と比較して疎水部位の割合が小さいため、洗浄液中に溶解する。この錯化剤として、窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を用いる。窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物としては、これらに限定されるものではないが、五員環化合物および六員環化合物などが挙げられる。四員環以下の化合物では、工業的に安価に製造しているものが少ない点で、原料価格の上昇、品質の安定性確保が懸念されるため適用しにくく、七員環以上の化合物は、水への溶解性が低く、溶解しても水溶液中で不安定なものが多く、また四員環以下の化合物と同じく工業的に安価に製造しているものが少ない点で、原料価格の上昇、品質の安定性確保が懸念されるため適用しにくい。
【0042】
本発明において、洗浄液組成物のpHは、好ましくは、8〜11であり、より好ましくは、9〜11である。
本発明におけるCu配線を有する基板としては、化学的機械研磨(CMP)後に得られる基板であれば、これに限定されないが、例えば、CMP直後の基板およびCu配線が形成された後、上層の絶縁膜をドライエッチングにより加工した直後の基板などが挙げられる。このうち、好ましくは、CMP直後の基板である。
本発明におけるCu配線としては、これに限定されないが、例えば、金属Cu配線、Cu合金配線およびCuおよびCu合金とその他金属膜との積層配線などが挙げられる。
本発明における化学的機械研磨(CMP)は、公知の化学的機械研磨に準じて行うことができ、これに限定されないが、例えば、SiO
2やAl
2O
3等の砥粒を用いた研磨方法および電解水を用いた砥粒レス研磨方法などが挙げられる。このうち、好ましくは、SiO
2やAl
2O
3等の砥粒を用いた研磨方法である。
【0043】
本発明の洗浄液組成物の大きな特徴の一つは、界面活性剤を使用しなくても微粒子を除去できることにある。これは、塩基性領域ではSiO
2などの酸化物の表面の帯電が変化するため、このことを利用して、基板と微粒子の帯電をともにマイナスに制御し、静電反発力的な作用で基板と微粒子を引き離すことが出来るためである。しかしながら、従来の塩基性洗浄液は、基板表面の金属不純物を十分に除去することが出来ない。これは、塩基性領域では金属不純物が水酸化物イオン(OH
−)と反応して、水酸化物もしくはヒドロキシ錯体として基板表面に吸着し、液中に溶解しないためと考えられる。
【0044】
洗浄液のpHを低下させると金属不純物の除去性は向上するが、微粒子の除去性が低下するとともに、基板表面に施されたCuへのダメージは増大する傾向にある。また、逆に洗浄液のpHを上昇させると、微粒子の除去性は向上するが、金属不純物の除去性が低下するとともに、塩基性領域で脆弱なSiOC系low−k材料へのダメージが増大する傾向にある。
本発明によれば、洗浄液組成物のpHを8〜11にすることにより、微粒子および金属不純物の両方を除去し、Cuおよびlow−k材料の両方にダメージを与えずに洗浄することができる。
【0045】
また、このpH領域であれば、Cu−CMP後の洗浄において、洗浄後のCu表面に薄いCu
2O層を形成することができ、大気放置した際の急激な表面の酸化を抑制することができる。Cuは、水系において、酸性領域のpHではCu
2+またはCuOの状態であるため、活性が高い状態にあり、急激に酸化しやすいが、アルカリ性領域においては、CuOやCu
2Oの状態にある(
図3参照)。したがって、酸性領域のpHにおいて、CMP後のCu表面では、不均一な酸化反応が進行し、均一でない酸化膜が表面を覆うとともに、表面のラフネスが増大する。これに対し、pH8〜11においては、薄いCu
2O層を形成することができるため、この層がCu表面の保護膜として機能し、CMP後のCu表面の急激な酸化を抑制し、平坦性に優れた洗浄が可能になる。
【0046】
本発明の洗浄液組成物は、イソアスコルビン酸、アスコルビン酸または没食子酸を含まない。これらの化合物が共存すると、金属不純物除去性の低下が生じるばかりか、イソアスコルビン酸またはアスコルビン酸では、分解による組成物の安定性にも懸念が生じるためである。
【0047】
さらに、本発明の洗浄液組成物は、金属不純物および微粒子の除去性を向上させるために、1種または2種以上のホスホン酸系キレート剤を含んでもよい。
ホスホン酸系キレート剤としては、ホスホン酸由来構造を有するものであれば、これに限定されないが、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、グリシン−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)(グリホシン)、ホスホン酸系キレート剤がニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)またはそれらの塩などが挙げられる。これらのホスホン酸系キレート剤は、pH8〜11の領域で金属不純物(特にFeとZn)の除去性に優れるとともに、CMP後のCu表面上の微粒子の除去性を向上させる効果も有する。
【0048】
また、本発明の洗浄液組成物は、微粒子の除去性を向上させるために、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤の種類は、除去する微粒子や基板によって適宜選択され、これに限定されないが、水溶性のアニオン型もしくはノニオン型が好ましい。ただし、ノニオン型は、構造中のエチレンオキシドやプロピレンオキシドの数や比率などにより、low−kへのアタックが増大される場合があり、選択には注意が必要である
【0049】
本発明の原液組成物は、希釈することにより本発明の洗浄液組成物を得られるものであり、該原液組成物を、これに限定されないが、例えば10倍以上、好ましくは10〜1000倍、より好ましくは50〜200倍に希釈することにより本発明の洗浄液組成物を得ることができるが、構成される組成により適宜決められるものである。
【0050】
本発明の洗浄液組成物は、大部分が水で構成されているため、電子デバイスの製造ラインに希釈混合装置が設置されている場合、原液組成物として供給し、使用直前に水を含む希釈液(該希釈液は、超純水のみからなるものを含む)により希釈して使用することができるため、運送コストの低減、運送時の二酸化炭素ガスの低減および電子デバイスメーカーにおける製造コストの低減に寄与できるという利点も有する。
【0051】
本発明の洗浄液組成物は、例えば、Cu配線を有する基板に適し、特に化学的機械研磨(CMP)後の基板に適する。CMP後の基板表面は、基板表面の各種配線およびバリアメタル材料(Cu、Ti系化合物、Ta系化合物、Ruなど)および絶縁膜材料(SiO
2、low−k)に加えて、スラリーに含まれる微粒子や金属不純物が存在し得る。微粒子は、例えば主にアルミナ、シリカおよび酸化セリウムなどであり、金属不純物は、研磨中にスラリー中に溶解して再付着したCu、スラリー中の酸化剤由来のFe、またスラリー中に含まれるCu防食剤とCuが反応したCu有機金属錯体などが挙げられる。
【0052】
本発明において、low−k材料とは、層間絶縁膜などに用いられる、低誘電率を有する材料であり、例えばこれに限定するものではないが、多孔質シリコン、シリコン含有有機ポリマー、TEOS(テトラエトキシシラン)などが挙げられる。具体的には、Black Diamond(Applied Materials,Inc.製)、Aurora(ASM International製)などが挙げられる。
【0053】
また、本発明の洗浄液組成物は、上述した以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノンやN、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性有機溶剤、低級アルコール、芳香族アルコールやグリコール等のプロトン性有機溶剤、グルコース等の糖類やD−ソルビトール等の糖アルコール、硫酸、リン酸等の無機酸、シュウ酸、クエン酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
次に、本発明による半導体基板の製造方法について説明する。
本発明による半導体基板の製造方法は、本発明の洗浄液組成物を、Cu配線を有する基板に接触させる工程を含む、半導体基板の製造方法である。
また、本発明による半導体基板の製造方法は、Cu配線を有する基板に接触させる工程の前に、Cu配線を有する基板を、化学的機械研磨(CMP)する工程を含む、半導体基板の製造方法である。
【0055】
接触させる工程としては、これに限定されないが、例えば、CMP後の洗浄工程およびドライエッチングによりCu配線上層の絶縁膜加工後の洗浄工程などが挙げられる。接触させるための方法としては、これに限定されないが、例えば、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法、スプレーやノズルより洗浄液が噴霧される枚葉洗浄法、バッチ式スプレー洗浄法、バッチ式浸漬洗浄法などが挙げられる。このうち、好ましくは、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法およびスプレーやノズルより洗浄液が噴霧される枚葉洗浄法であり、特に好ましくは、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法である。
【0056】
接触させる雰囲気としては、これに限定されないが、例えば、空気中、窒素雰囲気中および真空中などが挙げられる。このうち、好ましくは、空気中および窒素雰囲気中である。
接触時間は、目的に応じて適宜選択されるため、これに限定されないが、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法およびスプレーやノズルより洗浄液が噴霧される枚葉洗浄法の場合には、0.5〜5分間であり、バッチ式スプレー洗浄法およびバッチ式浸漬洗浄法の場合には、0.5〜30分間である。
温度は、目的に応じて適宜選択されるため、特に限定されないが、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法およびスプレーやノズルより洗浄液が噴霧される枚葉洗浄法の場合には、20℃〜50℃であり、バッチ式スプレー洗浄法およびバッチ式浸漬洗浄法の場合には、20℃〜100℃である。
【0057】
半導体基板としては、これに限定されないが、例えば、シリコン、炭化シリコン、窒化シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム、ガリウムリン、インジウムリンなどが挙げられる。このうち、好ましくは、シリコン、炭化シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウムであり、特に好ましくは、シリコン、炭化シリコンである。
上述の接触条件は、目的に応じて適宜組み合わせることができる。
【0058】
次に、本発明によるCuを含む有機残渣を溶解する方法について説明する。
本発明のCuを含む有機残渣を溶解する方法は、塩基性化合物を1種または2種以上と、窒素原子を含む複素環式単環芳香族化合物を1種または2種以上とを含み、水素イオン濃度(pH)が8〜11である洗浄液組成物を、Cuを含む有機残渣に接触させる工程を含む。
洗浄液組成物としては、上述したものであれば特に限定されないが、詳述した本発明の洗浄液組成物を用いることができる。
接触させる方法としては、上述したものであれば特に限定されない。
【実施例】
【0059】
次に、本発明の洗浄液組成物について、以下に記載する実施例および比較例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1〜6に示した洗浄液組成物の実施例および比較例において、濃度は、各実施例または比較例における洗浄液組成物中での濃度を示す。
【0060】
<評価1:有機残渣除去性>
表面に電解めっき法によりCuを成膜した8インチのシリコンウェハを1.0×1.5cm
2に割断し、BTA水溶液(濃度10mM、pH8)48mLが入ったポリエチレン容器中に30℃、5分間無撹拌浸漬し、Cu表面にCu−BTA複合体層を形成させた後、超純水リンスを1分間行い、窒素ブローにより乾燥させた。そのウェハを各洗浄液48mLが入ったポリエチレン容器中に30℃、5分間無撹拌浸漬後、再び超純水リンスを1分間行い、窒素ブローにより乾燥させた。続いて、そのウェハを腐食水溶液(ニトリロ三酢酸 1mM+トリエタノールアミン 50mM)48mLが入ったポリエチレン容器中に30℃、2分間無撹拌浸漬後、ウェハを取り出し、腐食水溶液中のCu濃度をICP−MS(融合結合プラズマ質量分析装置)で分析した。腐食水溶液中のCu濃度が高いほど、Cu表面に保護膜として形成されたCu−BTA複合体が少なく、腐食水溶液の前に処理した洗浄液の有機残渣除去性が高いと判断した。表1に洗浄液組成物の組成および結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
<評価2:Cuへのダメージ性(エッチングレート)>
表面に電解めっき法によりCuを成膜した8インチのシリコンウェハを1.5×1.5cm
2に割断し、フッ酸(0.5wt%)水溶液中に25℃、1分間無攪拌浸漬処理し、超純水リンス、乾燥後、各洗浄液 48mLが入ったポリエチレン容器中に30℃、2分間無攪拌浸漬後、ウェハを取り出した洗浄液中のCu濃度をICP−MSで測定し、ウェハのCuの表面積と洗浄液中のCu濃度より、洗浄液のCuのエッチングレート(E.R.)を算出した。各洗浄液は、所定濃度に調製したキレート剤水溶液のpHをpHメーターで測定し、塩基性化合物を滴下することにより、所定のpHに調整した。表2に洗浄液組成物の組成および結果を示す。
【0063】
【表2】
【0064】
<評価3:Cuへのダメージ性(表面粗さ)>
表面に電解めっき法によりCuを成膜した8インチのシリコンウェハをシュウ酸(1wt%)水溶液中に25℃、1分間無攪拌浸漬処理し、超純水リンス、乾燥後、洗浄液中に25℃、30分間無攪拌浸漬処理後、超純水リンス、乾燥後、AFM(原子間力顕微鏡)を用いてCuの表面粗さ(平均面粗さ:Ra)を測定した。表3に洗浄液組成物の組成および結果を示す。
【0065】
【表3】
【0066】
<評価4:金属不純物除去性>
シリコンウェハを体積比アンモニア水(29重量%)−過酸化水素水(30重量%)−水混合液(体積比1:1:6)で洗浄後、回転塗布法にてカルシウム(Ca)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)を10
12atoms/cm
2の表面濃度になるように汚染した。汚染したウェハを各洗浄液に25℃、3分間無撹拌浸漬後、ウェハを取り出して超純水にて3分間流水リンス処理、乾燥し全反射蛍光X線分析装置でウェハ表面の金属濃度を測定し、金属不純物除去性を評価した。表4に洗浄液組成物の組成および結果を示す。
【0067】
【表4】
【0068】
<評価5:微粒子除去性>
表面に電解めっき法によりCuを成膜した8インチのシリコンウェハをCMP装置とCMPスラリー(シリカスラリー(φ 35nm)を用いて30秒間研磨した。その後、洗浄装置を用いて、各洗浄液で室温、30秒間ブラシスクラブ洗浄、超純水にて30秒間リンス処理を行い、スピン乾燥を行った。洗浄後のウェハは、表面検査装置を用いて、表面の微粒子数を計測し、微粒子除去性を評価した。表5に洗浄液組成物の組成および結果を示す。
【0069】
【表5】
【0070】
<評価6:low−k材料へのダメージ性 >
CVD型SiOC系低誘電率(low−k)材料(誘電率:2.4)を成膜したシリコンウェハを各洗浄液中について、25℃、3分間および30分間無攪拌浸漬処理し、超純水リンス、乾燥後、FT−IR(フーリエ変換赤外吸収分光分析装置)を用いて、赤外吸収(IR)スペクトルを測定し、1150cm
−1付近のSi−O結合由来の吸収を比較した。
表6に洗浄液組成物の組成および評価結果を示す。また、実施例29のIRスペクトル(
図4)および実施例30のIRスペクトル(
図5)を示す。
図4および
図5において、Si−O結合を示す1150cm
−1付近のスペクトル変化が観察されないことから、low−k材料へのダメージがないことが読み取れる。
【0071】
【表6】