(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203537
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント基板、超音波プローブ及び超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-110080(P2013-110080)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-226431(P2014-226431A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】吉川 泰生
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 慎一
【審査官】
宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−527013(JP,A)
【文献】
特開2009−261840(JP,A)
【文献】
特開昭57−031298(JP,A)
【文献】
特開平01−146499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
H04R 17/00 − 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブの筐体内においてアジマス方向に配列された複数の超音波振動子と電気的に接続される複数の導体部が形成され、アジマス方向に引き出されるように前記筐体内に設けられるフレキシブルプリント基板であって、被検体との当接面側の前記筐体の端部における内部空間のエレベーション方向における最小幅以下の幅を有する幅狭部と、該幅狭部の両側に形成され該幅狭部よりも大きな幅で形成された幅広部とを有し、前記幅狭部が、前記複数の超音波振動子の配列幅の一部に位置するように前記超音波プローブに設けられることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項2】
前記導体部の各々は、フレキシブルプリント基板の長手方向に沿って形成され、前記フレキシブルプリント基板の幅方向において所要の間隔で設けられており、隣り合う前記導体部の間隔は、隣り合う前記超音波振動子の間隔よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項3】
前記複数の導体部のうち少なくとも一部の導体部は、前記幅広部から前記幅狭部へ向かう方向において、前記超音波振動子との接続部へ向けて、前記フレキシブルプリント基板の幅方向の端部側から中心へ向かう部分を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のフレキシブルプリント基板を備えることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項5】
前記超音波プローブの筐体は、被検体との当接面側の端部であって、アジマス方向における両端部に、前記幅広部を収容可能な内部空間部を有することを特徴とする請求項4に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記空間部は、前記筐体における被検体との当接面側の端部であって、アジマス方向における両端部に設けられた突出部により形成されることを特徴とする請求項5に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
コンベックスプローブであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の超音波プローブを備えることを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブ内に設けられるフレキシブルプリント基板、超音波プローブ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置では、装置本体と接続された超音波プローブから被検体に対して超音波を照射し、得られたエコー信号に基づいて作成された超音波画像を表示する。
【0003】
前記超音波プローブは、圧電材料からなる超音波振動子を備えており、この超音波振動子に電圧を印加して振動させ、超音波を発生させる。また、前記超音波振動子で発生し、被検体内を伝搬する超音波が、生体組織で反射したエコー(echo)は、超音波振動子で電気信号に変換される。この電気信号に基づいて、超音波画像が作成される。
【0004】
超音波振動子への電圧の供給及び超音波振動子からのエコー信号の取り出しのため、超音波振動子にはフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)が接続されている。例えば、特許文献1では、前記フレキシブルプリント基板は、前記超音波振動子の長手方向に引き出されるように設けられている。
【0005】
前記フレキシブルプリント基板には、その長手方向に沿って複数の導体部が形成されている。この導体部は、フレキシブルプリント基板の幅方向に所要の間隔で設けられている。この導体部が、前記超音波振動子と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−278766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記フレキシブルプリント基板が、前記超音波振動子の長手方向(エレベーション(elevation)方向)に引き出されるように設けられていると、互いに隣り合う前記超音波振動子の間隔が小さい超音波プローブにおいては、フレキシブルプリント基板において互いに隣り合う導体の間隔も小さくなる。隣り合う導体の間隔が小さいと、フレキシブルプリント基板の製造が困難となり、コストも高くなる。そこで、本願発明者は、隣り合う超音波振動子の間隔が小さくても、隣り合う導体の間隔を小さくせずともよいように、超音波振動子の長手方向と交差する方向(アジマス(azimuth)方向)に、フレキシブルプリント基板を引き出すことを検討している。
【0008】
ところで、超音波の送受信時には、操作者は、超音波プローブをエレベーション方向に傾ける煽り動作を行なうことがある。この煽り動作が行われる時に、超音波プローブのエレベーション方向における幅が大きくなるほど、超音波プローブの送受信面が、被検体の表面から離れ易くなる。そこで、煽り動作が行われる時において、被検体の表面から超音波プローブの送受信面が離れにくくするため、超音波プローブのエレベーション方向における幅をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0009】
しかし、アジマス方向にフレキシブルプリント基板を引き出す場合、超音波プローブのエレベーション方向における幅が小さくなると、フレキシブルプリント基板の幅も小さくなる。これにより、フレキシブルプリント基板において、互いに隣り合う導体部の幅が小さくなってしまう。互いに隣り合う導体部の幅が小さくなると、上述のようにフレキシブルプリント基板の製造が困難になり、コスト高にもなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するためになされた一の観点の発明は、超音波プローブの筐体内においてアジマス方向に配列された複数の超音波振動子と電気的に接続される複数の導体部が形成され、アジマス方向に引き出されるように前記筐体内に設けられるフレキシブルプリント基板であって、被検体との当接面側の前記筐体の端部における内部空間のエレベーション方向における最小幅以下の幅を有する幅狭部と、該幅狭部の両側に形成され該幅狭部よりも大きな幅で形成された幅広部とを有することを特徴とするフレキシブルプリント基板である。
【発明の効果】
【0011】
上記観点の発明によれば、前記フレキシブルプリント基板は、前記幅狭部の両側に前記幅広部を有するので、少なくともこの幅広部においては、互いに隣り合う導体部の間隔を広く保つことができる。一方、前記フレキシブルプリント基板は、被検体との当接面側の前記筐体の端部における内部空間のエレベーション方向における最小幅以下の幅の前記幅狭部を有しているので、超音波プローブのエレベーション方向における幅を抑制することができる。従って、超音波プローブのエレベーション方向における幅を抑制しつつ、互いに隣り合う前記導体部の間隔を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態の超音波プローブにおける超音波振動子とフレキシブルプリント基板とを示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態の超音波プローブの外観を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態の超音波プローブを示す底面図である。
【
図5】フレキシブルプリント基板の層構造を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態のフレキシブルプリント基板を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態の超音波プローブの煽り動作を説明する図である。
【
図8】本発明の実施形態の超音波プローブが体表面に当接した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るフレキシブルプリント基板、超音波プローブ及び超音波診断装置の実施の形態の一例について説明する。
図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8、記憶部9を備える。
【0014】
前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2から所定の走査条件で超音波を送信するための電気信号を、前記制御部8からの制御信号に基づいて前記超音波プローブ2に供給する。また、前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、A/D変換、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0015】
前記エコーデータ処理部4は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、超音波画像を作成するための処理を行なう。例えば、前記エコーデータ処理部4は、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行ってBモードデータを作成する。
【0016】
前記表示制御部5は、前記エコーデータ処理部4から入力されたデータを、スキャンコンバータ(Scan Converter)によって走査変換して超音波画像データを作成する。例えば、前記表示制御部5は、前記Bモードデータを走査変換してBモード画像データを作成する。
【0017】
また、前記表示制御部5は、前記超音波画像データに基づく超音波画像を前記表示部6に表示させる。
【0018】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイなどで構成される。前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0019】
前記制御部8は、特に図示しないがCPU(Central Processing Unit)を有して構成される。この制御部8は、前記記憶部9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0020】
前記記憶部9は、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)や、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)である。
【0021】
前記超音波プローブ2について説明する。前記超音波プローブ2は、
図2に示すように、アジマス方向(X軸方向)において、アレイ状に配置された複数の超音波振動子2aを有して構成され、この超音波振動子2aによって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。
【0022】
前記超音波振動子2aは、フレキシブルプリント基板50に設けられている。このフレキシブルプリント基板50は、アジマス方向に引き出されている。これにより、後述するように前記超音波振動子2aと接続された導体部52は、アジマス方向に引き出されている。
【0023】
ちなみに、
図2は説明のための図であり、前記超音波振動子2aの数は
図2に示された数に限られるものではない。例えば、超音波振動子2aの数は、
図2に示された数よりも多くなっていてもよい。
【0024】
前記フレキシブルプリント基板50及び前記超音波振動子2aは、前記超音波プローブ2の筐体2b(
図3及び
図4参照)内に収容されている。この筐体2b内には、特に図示しないが音響整合層やバッキング層なども設けられている。
【0025】
前記超音波プローブ2は、マイクロコンベックスプローブ(micro convex probe)であり、
図3に示すように、前記筐体2bにおける被検体との当接面(音響レンズ面)2cは、凸型の曲面になっている。上述の
図2に示すように、前記フレキシブルプリント基板50は、前記当接面2cの曲面形状に合わせて、前記筐体2b内において、凸型に曲げられた状態で設けられている。
【0026】
前記筐体2bには、当接面2c側の端部に突出部2dが形成されている。この突出部2dは、
図4に示すように、前記筐体2bの四隅に形成されている。前記突出部2dが形成されている部分において、前記筐体2bの内部空間2eのエレベーション方向(Z軸方向)における幅W1は、前記突出部2dが形成されていない部分の幅W2と比べて大きくなっている。これにより、前記突出部2dが形成されている部分の内部空間2eに、前記フレキシブルプリント基板50の後述する幅広部56を収容できるようになっている。前記突出部2dが形成されている部分の内部空間2eは、本発明において幅広部を収容可能な内部空間部の実施の形態の一例である。
【0027】
ちなみに、
図4では前記超音波プローブ2の底面(前記当接面2c)のみが示され、奥行きは省略されている。
【0028】
前記フレキシブルプリント基板50は、
図5に示すように、第一絶縁体51、導体部52及び第二絶縁体53が積層されている。前記導体部52は、前記第一絶縁体51に形成されたスルーホール54内にも形成されている。前記導体部52は、前記スルーホール54内の導体部52Hにより、前記超音波振動子2aと電気的に接続されている。
【0029】
前記導体部52は、
図5では一層のみしか図示されていないが、前記フレキシブルプリント基板50に形成される導体部は、複数層であってもよい。例えば、信号用の導体部とグランド(ground)用の導体部とが、それぞれ一層ずつ合計で二層の導体層が、前記フレキシブルプリント基板50に形成されていてもよい。前記フレキシブルプリント基板50の層構造については、図示されたものに限られるものではない。
【0030】
前記フレキシブルプリント基板50は、
図6に示すように、幅狭部55と幅広部56を有している。前記幅狭部55の幅は、前記超音波振動子2aの長さ(エレベーション方向の長さ)と同じ幅になっており、前記内部空間2eの幅W2よりも小さくなっている。従って、前記幅狭部55は、当接面2c側における筐体2bの端部における内部空間のエレベーション方向における最小幅以下の幅になっている。
【0031】
前記幅広部56は、前記フレキシブルプリント基板50の長手方向において前記幅狭部55の両側に形成されている。前記幅広部56の幅は、前記幅狭部55よりも大きく、前記超音波振動子2aの長さよりも大きくなっている。なおかつ、前記幅広部56の幅は、前記幅W1よりも小さくなっている。前記フレキシブルプリント基板50は前記幅広部56を有するので、少なくともこの幅広部56において、前記フレキシブルプリント基板50の幅方向において隣り合う前記導体部52の間隔を広く保つことができる。
【0032】
前記フレキシブルプリント基板50は、前記幅狭部55が、前記超音波振動子2aの配列幅W3の一部に位置するように、前記超音波プローブ2に設けられる。
【0033】
ちなみに、
図6において、符号2a′が付された一点鎖線は、前記超音波振動子2aの位置を示している。また、符号52H′で示された黒丸は、前記導体部52と前記超音波振動子2aとの接続部を示している。
【0034】
前記導体部52は、前記フレキシブルプリント基板50の長手方向に沿って、その幅方向において複数設けられている。前記複数の導体部52のうち、符号Aで示された部分の導体部52は、直線状に形成されている。一方、符号Bで示された部分の導体部52は、前記幅広部56から前記幅狭部55へ向かう方向において、前記超音波振動子2aとの接続部52H′へ向けて、前記フレキシブルプリント基板50の幅方向の端部から中心(フレキシブルプリント基板50の幅方向の中心)へ向かう部分Nを有する。
【0035】
ここで、前記幅狭部55を挟んで一方の幅広部56を幅広部56a、他方の幅広部56を幅広部56bとする。前記導体部52として、前記接続部52H′から前記一方の幅広部56a側へ引き出される導体部と、前記接続部52H′から前記他方の幅広部56b側へ引き出される導体部とが存在している。
【0036】
前記一方の幅広部56a側へ引き出された互いに隣り合う導体部52は、互いに隣り合う超音波振動子2aには接続されておらず、少なくとも一つの超音波振動子2aを間に挟むようにして超音波振動子2aに接続されている。同様に、前記他方の幅広部56へ引き出された互いに隣り合う導体部52も、少なくとも一つの超音波振動子2aを間に挟むようにして超音波振動子2aに接続されている。従って、前記一方の幅広部56a側において互いに隣り合う導体部52及び前記他方の幅広部56b側において互いに隣り合う導体部52のフレキシブルプリント基板50の幅方向における間隔X1は、互いに隣り合う超音波振動子2aの間隔X2よりも広くなっている。
【0037】
本例のフレキシブルプリント基板50によれば、互いに隣り合う導体部52の間隔を広く保つことができる一方で、前記フレキシブルプリント基板50は、前記幅狭部55を有しているので、前記超音波プローブ2のエレベーション方向における幅を抑制することができる。
【0038】
前記超音波プローブ2のエレベーション方向における幅が抑制されることにより、
図7に示すように、前記超音波プローブ2をエレベーション方向(
図7の矢印の方向)に傾ける煽り動作が行なわれる時、前記当接面2cを被検体の体表面から離れにくくすることができる。
【0039】
ここで、上述の通り、前記突出部2dが形成されている部分の幅W1は、前記突出部2dが形成されていない部分の幅W2と比べて大きくなっている(
図4参照)。しかし、前記超音波プローブ2はマイクロコンベックスプローブであり、なおかつ前記突出部2dは、アジマス方向における端部に設けられているので、前記突出部2dは、煽り動作の際に邪魔にならない。具体的に
図8に基づいて説明すると、前記当接面2cは凸状の曲面になっているので、前記突出部2dが形成されていない部分を被検体の体表面BSに当接させれば、前記突出部2dは体表面BSには当接しないので、煽り動作の際に前記突出部2dが邪魔にならない。
【0040】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記突出部2dは、必ずしも形成されていなくてもよい。この場合、前記フレキシブルプリント基板50の幅広部56は、前記筐体2b内に収容できるように、長手方向にスリット(図示省略)を形成してもよい。
【0041】
また、前記幅狭部55は、前記超音波振動子2aの長さと同じ幅である必要はない。例えば、前記幅狭部55の幅は、前記超音波振動子2aの長さよりも小さくなっていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
2a 超音波振動子
2b 筐体
2c 当接面
2d 突出部
2e 内部空間
50 フレキシブルプリント基板
52 導体部
55 幅狭部
56 幅広部