特許第6203547号(P6203547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203547
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ライトペン型ディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A61N5/06 Z
   A61N5/06 A
   A61N5/06 B
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-125476(P2013-125476)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2014-406(P2014-406A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】12172220.1
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513151314
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】Aptar France S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ゾウグ
(72)【発明者】
【氏名】エミール・フェリアーニ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・デュケット
(72)【発明者】
【氏名】リュシャノ・クラヴェロ
【審査官】 伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0216219(US,A1)
【文献】 特開2012−011063(JP,A)
【文献】 特表2009−525769(JP,A)
【文献】 特開2005−104920(JP,A)
【文献】 特開2006−198108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(11、12)と、
前記筐体(11、12)内に設けられ、かつ、皮膚疾患を治療するために、皮膚に照射して皮膚の再生を促すことができる光源(23)を備える電子モジュール(2)と、
前記電子モジュール(2)に電力を供給するためのバッテリー(22)とを備え、
前記光源は、1以上のLEDを備え、
前記電子モジュール(2)は、皮膚治療できる十分なフルエンスを確保しながら温度センサーを用いずにLED(23)の温度を抑制するべく、連続波駆動モード及びパルス波駆動モードで前記光源を駆動し、かつ、前記連続波駆動モード及び前記パルス波駆動モードのいずれを使用するかを時間に応じて変化させる駆動手段(26)を備える
温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項2】
前記筐体(12)は、所望の皮膚疾患治療に応じて交換できる、前記光源(23)を備えた取り外し可能な電子モジュール(2)を備える
請求項1に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項3】
前記光源は、400nmから1100nmの波長の光を放出する
請求項1または2に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項4】
前記筐体は、第1部分(11)と第2部分(12)とで構成され、前記第1部分と前記第2部分とは取り外し可能に互いに固定される
請求項1に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項5】
前記第2部分(12)は、前記光源(23)を備え、かつ、前記光源(23)から放出された光を治療対象の皮膚に照射できるように当該光に対して透明な表面部分(14)を有する
請求項4に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項6】
さらに、前記電子モジュール(2)を作動させるオン/オフスイッチ(25)を備える
請求項1〜5のいずれか1項に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項7】
さらに、皮膚に接触している場合にのみ前記光源(23)を作動させる皮膚検知スイッチ(16、16’)を備える
請求項1〜6のいずれか1項に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項8】
さらに、液体を吐出するための液体ディスペンサー(17、13)を備える
請求項1〜7のいずれか1項に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項9】
前記液体ディスペンサーは、前記光源(23)によって照射される皮膚表面領域と実質的に同じ領域に液体を吐出するために、透明光表面部分(14)と略平行に配置される
請求項に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項10】
前記液体ディスペンサーは、液体を収容する使い捨てカートリッジ(17)を備える
請求項又はに記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項11】
さらに、当該ライトペン型ディスペンシング装置の外へ出るように、前記液体ディスペンサーから液体を排出させるための液体ポンプアクチュエータ(15)を備える
請求項8〜10のいずれか1項に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項12】
さらに、前記バッテリー(22)のレベルを確認するための電力管理モジュール(28)を備える
請求項1〜11のいずれか1項に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項13】
さらに、前記電力管理モジュール(28)によって制御されるバッテリーレベルインジケーター(29)を備える
請求項12に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項14】
前記電子モジュールは、前記バッテリーがもうすぐ切れることを示すために、検出されたバッテリーレベルに応じて前記光源の光度を変更する
請求項12又は13に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項15】
さらに、前記電子モジュール(2)に接続され、外部装置と通信する通信モジュール(18)を備える
請求項1〜14のいずれか1項に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項16】
前記通信モジュールは、USBコネクタである
請求項15に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項17】
前記通信モジュールは、無線モジュールである
請求項15に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【請求項18】
さらに、前記筐体(12)に設けられた皮膚診断用センサー(19)を備える
請求項1〜17のいずれか1項に記載の温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚疾患を治療する光線力学的療法(PDT)の一環としてLEDからの光を照射し、また、媒体の吐出も可能なポータブルライトペン型ディスペンサーに関する。
【0002】
光線力学的療法、つまり、PDTは、現在、にきび、しわ、さらには、いくつかの形のがんなど多くの場面において、一般的な治療レベルになった。
【0003】
皮膚疾患を治療するためにLEDからの光を皮膚に照射することが知られており、例えば、にきびの治療が挙げられる。特許文献米国特許出願公開第2011/0224598号明細書には、患者の皮膚の炎症性座瘡を治療する炎症性座瘡治療方法が記載されており、当該炎症性座瘡治療方法は、放射赤外発光ダイオード(LED)光を患者の皮膚に照射するステップと、続いて、5―アミノレブリン酸(ALA)感光剤を患者の皮膚に塗布するステップと、ALA処置された皮膚に可視LED光を照射するステップとを含む。当該方法では、患者は、15分の初回光照射を受け、続いて60分のALA塗布を受けてから、23分の最終光照射を受けなければならないので、長時間の拘束が患者に求められる。治療の効果が現れるまで、このようなセッションを定期的に繰り返し行わなければならない。
【0004】
皮膚病を治癒するために、800nmから1100nmの範囲の可視光として光を放出することによって皮膚に照射する方法が用いられることが知られている。例えば、創傷治療では、約835nmの波長で皮膚に照射し、ヘルペスの表面治療では、約1070nmの波長で照射することが知られている。
【0005】
一般的には、ある一定の波長、例えば、400nmから700nmの波長の光を放出することにより、皮膚状態の治療を行うことができる。LEDは、自然的な細胞内の光生化学的反応を誘発することができる。生きている生体系に何らかの影響を与えるためには、LEDから放出された光子が分子の発色団又は光受容体によって吸収されなければならない。光は、適切な線量及び波長で、細胞の細胞膜及びミトコンドリア内において発色団及び他の光吸収体によって吸収される。例えば、約630nmから約660nmの波長で皮膚に照射することにより、皮膚中のコラーゲンの生成を活性化する細胞代謝の刺激が引き起こされ、その結果、しわを減らすといったような皮膚の再生ができることが知られている。このような自然過程が起こり得るまでに照射出力の閾値レベルは達成されなければならず、また、照射は一定期間行わなければならないことが知られている。
【0006】
このように、コラーゲンの生成には、照射時間と照射出力が重要である。
【0007】
さらに、照射によって皮膚は加熱される。加熱し過ぎると温度が制御不能なレベルになり、望ましくない光生化学的反応が生じたり、皮膚が損傷を受けたりする可能性があることが知られているので、このようなことは避けるべきである。このような皮膚の加熱を抑える方法はいくつか存在する。
【0008】
文献西独国特許出願公開第3134953号明細書には、赤外光源を備えた赤外線照射装置が記載されており、当該赤外光源は、赤外レーザーとして設計され、その光が医療的/治療的処置対象の皮膚領域に当てられる。当該赤外レーザーは、制御回路によって制御され、0.1Hzから5kHzの周波数、好ましくは、8Hzから50Hzの周波数でコヒーレント赤外パルス信号を発する。当該周波数は、皮膚温度に応じて調整部材を用いて調整することができる。当該皮膚温度は、温度センサーを用いて測定することができ、光ディスプレイ装置で表示可能である。赤外レーザーの出力は低いので、照射を受ける皮膚領域は感知できるほど加熱されない。この文献によれば、損傷を防ぐため、皮膚は42℃より高温に加熱すべきではない。
【0009】
文献国際公開第91/18646号には、パルス状の紫外、可視、又は、赤外レーザー放射による温熱療法用の装置及び方法が開示されており、当該パルス状のレーザー放射は、生体組織の治療領域に対して必要なレーザーパルスのフルエンスを確保するシステムを透過する。組織内の微小領域におけるパルス状局所加熱が治療に効果的なレベルに達するまでの間、単一パルスによって局所加熱を、また、一連のパルスによって平均加熱を測定する測定部が、フィードバックによって、パルスエネルギー、パルス繰り返し時間、及び、総照射線量を決定する制御手段を制御することにより、照射を受ける組織領域への熱損傷のリスクを伴わずに必要な治療効果がもたらされる。
【0010】
文献米国特許第6238424号明細書では、光を用いた体外医療処置用装置を開示している。個人の体のすぐ近くで保持されるように構成され、かつ、第1波長の単色光を放出する発光ダイオード又はそれに対応する素子を備えた発光デバイスが設けられている。当該発光デバイスは、第1所定期間にわたって第1状態で発光デバイスに単色光を放出させ、その後、第2所定期間にわたって、予定される第2状態で第1波長とは異なる波長の単色光を選択的に放出させる駆動装置によって動作する。当該駆動装置は、発光デバイスに、それぞれの期間にわたって所定のパルス周波数又は一連のパルス周波数に従い放射光をパルス振動させ、かつ、互いに連続した2つのパルスの各スタートエッジ間の時間の約60%から約90%の間隔の範囲内にあるパルス長を有するパルス光を放出させる。
【0011】
文献欧州特許第1140288号明細書では、光を用いて行われる体外医療処置用装置を開示している。当該装置は、患者の体に対して、又は、患者の体のすぐ近くで保持されることを目的とした発光デバイスと、前記発光デバイスを駆動するための複数の手段とを備え、前記発光デバイスは、単色光を放出するように構成された発光ダイオード又はそれに対応する素子を備え、前記駆動手段は、前記発光デバイスに、1以上の所定期間にわたって1以上の種類の単色光を放出させ、それぞれの前記期間にわたって所定のパルス周波数又は一連のパルス周波数に従い放射光をパルス振動させるように構成され、前記駆動手段は、前記発光ダイオードを駆動するための回路及びコンピュータを備え、前記コンピュータは、電気信号を前記駆動回路に伝達するように構成され、それにより、当該発光ダイオードは、所定の期間内に所定のパルス繰り返し周波数で発光する。当該発明は、少なくとも駆動手段の駆動回路が発光デバイスに取り付けられているという点において特徴的である。
【0012】
このようなデバイスは、皮膚の加熱し過ぎを防ぐかもしれないが、複雑であって、多くの場合、その動作を制御するための別のコンピュータが必要になる。さらに、このようなデバイスには、皮膚温度センサーが必要なものもある。
【0013】
本発明は、別記の請求項で定義したような手持ち式でバッテリー式のライトペン型ディスペンサーにおいて、これらの課題に対処したものである。
【0014】
このライトペン型ディスペンシング装置は、容易な手法で皮膚の加熱し過ぎを防ぎつつ、光源の効率的な運用を可能にする。また、皮膚疾患ごとにプログラム可能であり、様々な局所軟膏と併用しても構わない。
【0015】
本発明の変形例及び他の詳細については、従属請求項にて定義される。
【0016】
本発明の実施の形態を説明する以下の詳細な説明及び添付図面により、本発明はよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係るライトペン型ディスペンサーの概観図である。
図2図2は、図1のライトペン型ディスペンサーの断面図である。
図3図3は、本発明に係るライトペン型ディスペンサーの電子モジュールをより詳細に示したものである。
図4図4は、本発明に係るライトペン型ディスペンサーの動作のフローチャートである。
図5図5は、発光期間に対するLEDの相対効率を表したグラフである。
図6図6は、LED温度に対するLEDの相対効率を表したグラフである。
図7図7は、本発明に係るライトペン型ディスペンサーの電子モジュールの機能素子のブロック図である。
図8図8は、図7のブロック図で示した特注光照射プラットフォームのブロック図をより詳細に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るライトペン型ディスペンサーの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、アプリケータ本体11と呼ばれる第1部分とディスペンシング・アプリケータ本体12と呼ばれる第2部分とを有する筐体を備えたライトペン型ディスペンサー1を示している。アプリケータ本体11にはリフィル17が含まれており、このリフィル17は、吐出される液体を収容するための詰め替え可能なカートリッジでもよい。このような液体は、治療する皮膚疾患に応じて、クリームや軟膏などでも構わない。リフィル17は、液体を吐出するためのディスペンシング・アプリケータ本体に液体が入っていけるような周知の方法で、ディスペンシング・アプリケータ本体12に装着することができる。
【0020】
この趣旨で、ディスペンシング・アプリケータ本体12は、リフィルを第1端で受け、リフィル17から受け取る液体を吐出するためのプロダクト・ディスペンシング・ホールであるノズル13を他端に設ける。さらに、ポンプ・アクチュエータ15がディスペンシング・アプリケータ本体12に設けられているので、ユーザは液体に圧力を加えて容易に吐出することが可能である。
【0021】
ノズル13が設けられている側と同じディスペンシング・アプリケータ本体12の端に、導光アプリケータ14が設けられている。導光アプリケータ14によって、後ほどより詳しく説明するように、ライトペン型ディスペンサー内に含まれる1以上の発光ダイオード(LED)などの光源から放出された光はディスペンサーの外に出ることができる。
【0022】
スイッチ検知部16及び16’をさらに設けて、ライトペン型ディスペンサーの動作を制御してもよい。
【0023】
好適には、以下でも説明するように、外部装置との通信用に通信モジュール、この例ではUSBコネクタ18を設けてもよい。当然のことながら、代わりに他のタイプの通信モジュールを用いてもよく、Bluetooth(登録商標)やWi−Fiなどのワイヤレスモジュールも用いて構わない。
【0024】
図2は、断面図で、ディスペンシング・アプリケータ本体12をより詳細に示したものである。図に示すように、リフィル17は、ポンプ・アクチュエータ15を動かすことによって液体がリフィルからライトペン型ディスペンサーの外側、つまり、ユーザの皮膚上へ流れるようにプロダクト・ディスペンシング・ホール、つまり、ノズル13と流体的に接している。
【0025】
光源23、この例では1以上のLEDは、ライトペン型ディスペンサーからユーザの皮膚へ光を放出するための導光アプリケータ14のすぐ近くに設けられてもよい。
【0026】
光は、治療する皮膚疾患に応じて、約400nmから700nmの波長、好ましくは、約660nmの波長で放出されてもよい。約660nmの波長を皮膚に照射することにより、皮膚中のコラーゲンの生成を活性化する細胞代謝の刺激が引き起こされ、その結果、皮膚を再生することができる。このように、導光アプリケータ14は、光源から放出された光の波長に対して透明なディスペンシング・アプリケータ本体12の一部である。光源、つまり、LED23とLEDの制御及び動作に関連する電子回路とに電力を供給するために、バッテリー22、例えば、LiPo二次電池が設けられる。このような電子回路には、例えば、連続波モードやパルスモードで光源を動作させるための駆動手段26(図7参照)が含まれる。この趣旨で、ディスペンシング・アプリケータ本体12内のUSBコネクタ18及びLED23を電子モジュール2に設けることにより、LED23の動作の制御が可能になる。
【0027】
図3は、USBコネクタ18と、バッテリー22と、LED23と、LED駆動手段26やLEDなどの電子部品を保持するPCB21と、電子モジュール2を作動及び停止させるオン/オフプッシュボタン25とを備えた電子モジュール2をより詳細に示したものである。皮膚診断用センサー19をさらに設けてもよい。電子モジュール本体24は電子モジュール2の電子素子を覆っており、電子モジュール本体24にアクセスホール25’を設けることによって、プッシュボタン25を操作すること、及び、それを電子モジュールに接続することが可能になる。さらに、アクセスホール16’’を設けることによって、スイッチ検知部16’を電子モジュール2に接続することが可能になる。
【0028】
さらに、接続部19’を設けて、皮膚診断用センサー19が電子モジュールに接続されるようにしてもよい。この皮膚センサーは、例えば、治療する皮膚の乾燥度/湿潤性、又は、表皮の厚さ、つまり、しわの深さなどを分析するために用いられ、この分析結果を受けて、照射出力及び/又は液体吐出を適応させることにより皮膚疾患の治療を最適化する。
【0029】
手にライトペン型ディスペンサーを持っているユーザがオン/オフボタン25を押すことによって、電子モジュールは作動し、ライトペン型ディスペンサーの動作を可能にする。通常、ライトペン型ディスペンサーは、細長いペン状の形をしており、ユーザが当該ディスペンサーを手に持った際、液体の吐出を作動させるべく第1の指、一般的には人さし指がポンプ・アクチュエータ15上に、そして、第2の指、一般的には親指がスイッチ検知部16’上に位置するように形成される。
【0030】
ライトペン型ディスペンサーが、頬や目の下といった治療する皮膚表面に位置する場合は、スイッチ検知部16が治療する皮膚表面に接触する。スイッチ検知部16及び16’は、組み合わせて動作することによって、光源、つまりLED23の作動を可能にする。検知スイッチのこのような動作は、ディスペンシング・アプリケータ本体12に塗布された金属膜の導体をスイッチ検知部16及び16’として用いることにより行われてもよい。これにより、スイッチ検知部16に接している治療対象の皮膚とスイッチ検知部16’に接している指とを通る電流の経路によってシンプルなショート回路が形成される。このような方法はそのようなものとしてよく知られている。ここでは、これらの方法を、望ましくない光源動作を防ぐための安全策として用いる。実際、ユーザの目など意図しない場所を光が照射するのを防ぐため、ライトペンが皮膚に接触していない場合にはLEDを点灯させるべきではない。また、子供がライトペン型ディスペンサーで遊んでいる場合でも、意に反した使用を防ぐことができる。したがって、一旦、オン/オフプッシュボタン25が作動すれば、ライトペン型ディスペンサーを操作してもよい。
【0031】
リフィルカートリッジ17に入っている液体は、ポンプ・アクチュエータ15を動かすことによって吐出されるので、液体は、プロダクト・ディスペンシング・ホール13を介してリフィル17からディスペンサーの外側へ流れることができる。
【0032】
また、スイッチ16及び16’も作動する場合は、LED23から光を放出することによって皮膚を照射治療することが可能である。光の照射は、治療する皮膚状態に応じて、液体の吐出と同時に、又は、その前後といったように、液体の吐出とは別々に行うこともできる。
【0033】
液体ディスペンシング・ホール13は、光源23によって照射される皮膚表面領域と実質的に同じ領域に液体を吐出するために、導光アプリケータ14と略平行に配置されるのが好ましい。
【0034】
電子モジュール2は、ライトペン型ディスペンサー1の筐体から着脱可能な別個のモジュールとして考えられるのが好適である。これにより、治療する皮膚疾患に応じて、電子モジュール及びLEDを容易に交換することができる。例えば、皮膚治療が異なれば、異なる波長(色)のLEDが必要になる。
【0035】
図4は、本発明に係るライトペン型ディスペンサーの動作処理のフローチャートである。まず、ステップ「スイッチ1はオン?」で示されるように、オン/オフボタン25がオンかオフかを確認することによって処理が開始する。プッシュボタンがオンでなければ、ライトペン型ディスペンサーは操作できず、処理は最初の開始位置に戻る。プッシュボタン25がオンであれば、ディスペンサーのバッテリーレベルを確認する。この趣旨で、好適には、ライトペン型ディスペンサーの電子モジュール2に、電子モジュール2内の全ての電子素子が作動可能な一定の閾値よりもバッテリーレベルが上である限り正しい動作を保証するバッテリー電圧レベル検出部を備えた電力管理モジュール28(図7参照)を設けてもよい。レベルがあまり高くなければ、低バッテリーインジケーター29(図7参照)を作動させて、この情報をユーザに与えてもよい。また、使われているLED23が可視光の波長領域内である場合は、低バッテリーのインジケーターとして、超低出力照射状態のLED23を用いることも可能である。これは、当業者にとって周知の方法で実現してもよいので、ここでは詳細な説明を行わない。
【0036】
別の方法として、バッテリーレベルが低いと検出された場合に、バッテリーの充電又は交換が必要だとユーザが気づくよう、光度を弱くして、又は、特定の点滅動作で光源23を作動させてバッテリーがもうすぐ切れることを示してもよい。
【0037】
バッテリーレベルが十分高ければ、次のステップとして、皮膚検知部がオンかどうかを確認する。上述したように、スイッチ検知部16及び16’が共に皮膚と接触している場合に皮膚検知部はオンになる。皮膚検知部がオフであれば、処理は終了し、最初の開始位置に戻る。皮膚検知部がオンであれば、LEDを作動してもよい。LEDの作動は、事前に選択されたモードに従って行うことができる。1以上のモードを、電子モジュールの一部であるメモリモジュールに予めプログラムしておいてもよい。例えば、所定の期間、例えば、20秒から160秒の間、LEDを作動してもよい。さらに、治療する皮膚状態に応じて、連続動作で、又は、パルスモードでLEDを作動してもよい。
【0038】
この期間は、皮膚中にコラーゲンが生成されるように、LEDからの十分な出力照射で十分に長い期間であるべきだが、ユーザはディスペンサーを長く使用しがちなので時間制限されるべきである。実験から、このような期間は160秒までに制限されるべきと判断された。これにより、装置を人間工学的に正しく使用することができる。当然ながら、このような期間の制限は、必要に応じて変更可能な単なる設計上の選択である。
【0039】
さらなる実験中に、本発明の発明者は、LEDの発光効率が時間とともに温度によって変化するという知見を得た。
【0040】
図5は、発光期間に対するLEDの相対効率を表したグラフである。図に示すように、光効率は、最初を100%(1.0)とする。時間とともに、この効率は約70%まで低下する。これは、おそらく、LEDの温度が上昇するためである。実際、本発明の発明者は、LEDの温度に対して効率の変化を測定した。一旦作動すると、LEDは発光して熱を放出する。これは、一般的に他の光源よりもかなり少ないが、LEDの温度上昇によって効率は著しく減少する。
【0041】
図6は、測定の間の、LED温度に対するLEDの相対効率を表したグラフである。図に示すように、測定したLEDに対し、初期効率を、約25℃の室温で100%(1.0)とする。作動中にLEDが加熱するにつれて、その周辺温度が上昇し、その効率が約70%まで低下する。
【0042】
したがって、LEDの駆動動作を制御することによって、効率の減少を抑えることができる。図5及び図6に示すように、連続波駆動モードから連続波駆動モードとパルス駆動モードとを混合させたものへLEDの駆動を変更して測定を行った。
【0043】
例示では、上述した人間工学的に許容される期間に従って、総駆動時間は160秒に制限された。連続波(CW)のみを用いると、効率は時間とともに100%から約70%に減少する。同様に、LED温度は25℃から約48℃以上に上昇し、その結果、効率はまた100%から約70%に減少する。
【0044】
駆動を連続波駆動からパルス波駆動(PW、図では平方根はSQRと示される)に切り替えると、最低効率が80%を超える程度に効率の損失を抑制することができる。図5に示すように、CW駆動を80秒後にPW駆動へ変化させる例では、こうすることによって、さらなる減少を防ぐので、効率を一定に保つことができる。その他の例では、CW駆動を60秒後にPW駆動へ切り替えるので、その結果、効率が上がる。
【0045】
効率が上がるにつれて、温度上昇も抑制される。図6から、LEDの駆動動作を変化させることによって、温度をある値に抑えることができることが分かる。
【0046】
PW駆動に切り替えることによって、LEDを一時的に冷却することができる。それにより、温度は下がって効率が上がる。
【0047】
本発明では、結果的には温度制御となるが、時間とともにLEDの効率が下がることを防ぐために、LEDの動作を制御することが可能である。
【0048】
上述したように、光源からの照射により37℃を超えて皮膚が加熱されると、望ましくない制御不能な皮膚の光生化学的反応が起こる可能性や、温度が42℃を超えた場合には、皮膚の損傷が生じる可能性がある。本発明により、LEDの動作を制御すること、つまり、CWモードからPWモードへ切り替えることによってLED動作の制御が可能なので、LEDの効率を一定に保つことができ、皮膚治療できる十分なフルエンスを確保しながらLEDの温度を制御することができる。さらに、PWモードでは使用するエネルギー量が少ないので、消費電力の削減につながり、より高い効率が実現可能である。
【0049】
こうすることで、光線治療の特定用途に対してLEDの特定駆動モードを定義することにより電子モジュール2をプログラムすることができる。図6に示すように、総期間は160秒に制限してもよく、LEDの駆動モードに応じて、温度を37℃(60秒のCWに続いて100秒のPW)又は42℃(80秒のCWに続いて80秒のPW)に抑えることができる。当然のことながら、いくつかの駆動モードを事前にプログラムすることができるので、特定動作の選択が可能である。
【0050】
このような選択は、ユーザによって行われてもよいが、好ましくは、塗布される液体に応じて定義されても構わない。例えば、しわ取り治療用の液体を使用する場合は、にきび治療用の液体を使用する場合と異なる温度であることが望ましい。
【0051】
このように、本発明に係るライトペン型ディスペンサーは、光源駆動手段26を適切に動作させることにより、例えば37℃を超えないように電子モジュールがLEDの動作を制御するようプログラムすることができる。
【0052】
したがって、LEDが一定温度より低くなるように駆動モードをプログラムすることが可能である。そうすることによって、LEDの効率は一定の閾値より下になることはなく、皮膚疾患の治療において望ましい効果を得るのに十分な出力を確保できる。
【0053】
さらに、ライトペン型ディスペンサーの場合、望ましい動作を保証するために駆動モードを時間関数としてプログラムできるよう、使用するLEDを測定かつ調整することができる。このように、温度センサーを必要とせず、あるいは、冷却液や温度シンクなどの熱消散部を用いずにLEDの加熱し過ぎを防ぐことができる。以上のように、温度センサー非搭載ポータブルライトペン型ディスペンシング装置を得てもよい。
【0054】
図7は、本発明に係るライトペン型ディスペンサーの電子モジュール2の機能素子のブロック図である。電子モジュール2の機能素子は、動作を制御するシステムプロセッサCPU27を備えている。CPU27は、上述したような、電力管理モジュール28を介して、バッテリー22によって作動する。好適には、電力管理モジュール28は、例えば、赤(低)や緑(OK)の光などでバッテリー不足かどうかを示すバッテリー・レベル・インジケーター29に接続されている。また、CPU27は、光源23を適切に駆動するためのLED駆動手段26に接続されている。
【0055】
ユーザ制御は、CPUの動作を制御するために設けられる。例えば、オン/オフプッシュボタン25である。また、皮膚検知部が、上述した検知部16及び16’として、CPUの動作を制御するために設けられ、光源が作動すべきでないときに作動することを防ぐ。
【0056】
さらに、CPUは、外部装置又はネットワークと通信するための通信モジュール18にも接続されている。このような通信モジュールは、LEDドライバのプログラミングを可能にするように構成されてもよいが、CPUから情報を受信してもよい。さらに、当該通信モジュールは、インターネットなどのネットワークと接続するように構成される。
【0057】
図8は、図7のブロック図で示した特注光照射プラットフォームのブロック図をより詳細に示したものである。このようなプラットフォームは、通信モジュール18を介してライトペン型ディスペンサーに接続されるインターネット又は適切なネットワーク上にあってもよい。
【0058】
このプラットフォームにより、液体のサプライヤ又は皮膚疾患治療を担当する医師へのフィードバックが可能になる。このように、例えば、事前にプログラムされている光源の駆動モードを変更することによって、治療のカスタマイズ及び/又は治療自体の最適化を可能にできる。
【0059】
ユーザ又は専門家が治療結果及び治療に用いたパラメータを共有でき、さらに、駆動モードの新たなプログラミングをリクエストして情報のやり取りも行える適切なプラットフォームにさらに接続されてもよい。
【0060】
したがって、図8に示すように、数名のユーザからの入力結果に基づいて最適なエネルギー効率を判断し、最適なモードを選択することができる。そして、通信モジュール18を介して光源の駆動手段をプログラムし直すことにより照射モードを適応させることができる。
【0061】
さらに、このように情報を共有したりやり取りする行為は、スマートフォンに適したアプリケーションを用いることによってスマートフォンで行ってもよい。
【0062】
ここでは本発明の好ましい実施の形態を説明してきたが、当業者であれば、その概念を含む他の実施の形態も利用できると分かるであろう。したがって、本発明は、開示された実施の形態に限定されるものではなく、むしろ、別記の請求項の範囲によってのみ限定されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8