(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203566
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】封止装置および封止方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20170914BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20170914BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20170914BHJP
H01L 31/04 20140101ALI20170914BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/14 A
H05B33/10
H01L31/04
B29C65/48
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-163385(P2013-163385)
(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2015-32552(P2015-32552A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041561
【氏名又は名称】常陽工学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】水流 則幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 誠
【審査官】
岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/001831(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/114882(WO,A1)
【文献】
特開2012−168386(JP,A)
【文献】
特開平04−346655(JP,A)
【文献】
特開2010−094910(JP,A)
【文献】
特開2013−117665(JP,A)
【文献】
特開2009−099417(JP,A)
【文献】
特開2011−258939(JP,A)
【文献】
特開2001−318037(JP,A)
【文献】
特開平11−052744(JP,A)
【文献】
特開2002−221911(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0027369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
B29C 65/48
H01L 31/04
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバー内で機能材料薄膜層を備えた基板フィルム上に封止フィルムを面接着する封止装置であり、
前記真空チャンバーは基板シートを載置して上下動するステージを備えた第1の真空チャンバーと、水平方向に移動する封止ローラーを内部に備え、前記第1の真空チャンバー上で上下動する第2の真空チャンバーからなり、
前記第1、第2の真空チャンバー間に前記封止フィルムを保持するメッシュシートを備えた通気ユニットを配置してなることを特徴とする封止装置。
【請求項2】
前記第1の真空チャンバーのステージの表面、および前記通気ユニットのメッシュシートの上面または下面に静電チャックシートを備えたことを特徴とする請求項1に記載の封止装置。
【請求項3】
前記静電チャックシートをメッシュシートの上面に備えた場合において、該メッシュシートの前記静電チャックシートの静電チャック領域に対応する部分を除去したことを特徴とする請求項2に記載の封止装置。
【請求項4】
前記通気ユニットのメッシュシートの下面に粘着剤を塗布したことを特徴とする請求項1に記載の封止装置。
【請求項5】
前記通気ユニットを前記第2の真空チャンバーに対し着脱可能となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の封止装置。
【請求項6】
前記基板フィルムと封止フィルムのアライメント調整をするためのアライメントカメラを設けたことを特徴とする請求項1に記載の封止装置。
【請求項7】
前記封止ローラーを通気ユニットのメッシュシートに対して弾性緩衝させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の封止装置。
【請求項8】
前記封止フィルムが長尺状であり、前記基板フィルムと面接着させた成形部を装置外部へ搬出し、成形単位毎に切断するようにして連続成形が可能となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の封止装置。
【請求項9】
上下に配置した第1、第2の真空チャンバー内で機能材料薄膜層を備えた基板フィルム上に封止フィルムを面接着する封止方法であり、
前記第1の真空チャンバーのステージ上に前記基板フィルムを搬入し、該基板フィルムを前記ステージ上に保持する工程と、
前記第1、第2の真空チャンバー間に配置した通気ユニット下に封止フィルムを搬入し、該封止フィルムを前記通気ユニットのメッシュシートで保持する工程と、
前記第2の真空チャンバーを降下して第1の真空チャンバーとの間に気密状態を形成する工程と、
前記第1、第2の真空チャンバー内の空気を排気して真空状態を形成する工程と、
前記第1の真空チャンバーのステージを上昇させて前記基板フィルムと前記封止フィルムを面接触させる工程と、
前記通気ユニットのメッシュシート上で第2の真空チャンバー内に備えた封止ローラーを水平方向に移動させ、基板フィルムと封止フィルムを面接着させる工程、
からなることを特徴とする封止方法。
【請求項10】
前記基板フィルムと封止フィルムのアライメント調整を行う工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光機能材料、光電変換機能材料、導電機能材料などの機能材料の薄膜層を備えた基板フィルム上に封止フィルムを均等に面接着できるようにする封止装置
および封止方
法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、機能材料の薄膜層を基板に形成し、これを封止して機能材料デバイスとして、特に有機ELディスプレイ、有機EL発光パネル、色素増感太陽電池あるいは有機薄膜太陽電池などの開発が著しく、有機ELディスプレイにおいては、液晶ディスプレイのように見る方向によって階調が変わってしまうという現象がなく、また、コントラストの低下も低く視野角は180度に限りなく近いという特徴がある。また、有機EL発光パネルは、有機化合物中に注入された電子と正孔の再結合によって生じた励起子によって発光するもので、LED照明と同様に次世代照明技術として期待され、また、薄膜太陽電池の小型軽量化が期待されている。
【0003】
ところで、有機EL材料は、空気中の酸素や湿気による酸化反応や加水分解反応などの劣化反応を受けやすく、そのため発光寿命が短い欠点が指摘されている。したがって、有機EL材料の薄膜層からは空気を完全に排除し、合成樹脂基板を採用する場合は防湿バリア層を形成するようにしている。そこで、有機EL発光パネルを製造する場合に、有機EL材料の薄膜層に空気が残存しないように真空状態のチャンバー内において上下一対の基板を張り合わせる封止装置を本願の出願人は提案している(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−168386号公報
【特許文献2】特開2012−230255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に開示した封止装置は、ガラス基板間に有機EL材料を封止するようにしたもので、基板間の接着は、紫外線硬化性のシール材に紫外線を照射して硬化させるようにしたものであり、かかる装置により、大型の有機EL発光パネルでも生産性を向上した自動生産が可能となっている。
【0006】
一方、有機EL発光パネルにおいては、上述したように空気による劣化反応が著しいことから、完全に空気を排除して成形完了後においても空気の進入がないようにしなければならない。また、基板間の密着度に誤差がある場合は、位置によって温度ムラや電流ムラが生じ、これによって輝度ムラが生じてしまう問題がある。
【0007】
有機EL発光パネルはこのような問題を含むことから、大型化するとドット欠陥が生じて発光の均質化を向上できず歩留まりが悪化し、大型化・低価格化への対応が困難であった。また、ガラス基板を採用した場合は、ある程度の大型化は可能であるが、比例して重量が大きくなり、軽量化の妨げになることが問題となっている。
【0008】
本発明はかかる問題を解決するためになされたもので、合成樹脂製のフィルム材を採用して機能材料薄膜層の空気を完全に排除する封止成形が可能となるようにするもので、輝度ムラがなく、しかも軽量大型パネルの機能材料デバイスの製作も可能となるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明は、以下に述べる各手段により上記の課題を解決するようにした。即ち、請求項1に記載の発明では、真空チャンバー内で機能材料薄膜層を備えた基板フィルム上に封止フィルムを面接着する封止装置であり、前記真空チャンバーは基板シートを載置して上下動するステージを備えた第1の真空チャンバーと、水平方向に移動する封止ローラーを内部に備え、前記第1の真空チャンバー上で上下動する第2の真空チャンバーからなり、前記第1、第2の真空チャンバー間に前記封止フィルムを保持するメッシュシートを備えた通気ユニットを配置する。
【0010】
請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の封止装置において、第1の真空チャンバーのステージの表面、および前記通気ユニットのメッシュシートの上面または下面に静電チャックシートを備えるようにする。
【0011】
請求項3に記載の発明では、上記請求項2に記載の封止装置において、静電チャックシートをメッシュシートの上面に備えた場合において、該メッシュシートの前記静電チャックシートの静電チャック領域に対応する部分を除去する。
【0012】
請求項4に記載の発明では、上記請求項1に記載の封止装置において、前記通気ユニットのメッシュシートの下面に粘着剤を塗布する。
【0013】
請求項5に記載の発明では、上記請求項1に記載の封止装置において、通気ユニットを第2の真空チャンバーに対し着脱可能となるようにする。
【0014】
請求項6に記載の発明では、上記請求項1に記載の封止装置において、基板フィルムと封止フィルムのアライメント調整をするためのアライメントカメラを設ける。
【0015】
請求項7に記載の発明では、上記請求項1に記載の封止装置において、封止ローラーを通気ユニットのメッシュシートに対して弾性緩衝させるようにする。
【0016】
請求項8に記載の発明では、上記請求項1の記載の封止装置において、封止フィルムが長尺状であり、基板フィルムと面接着させた成形部を装置外部へ搬出し、成形単位毎に切断するようにして連続成形が可能となるようにする。
【0017】
請求項9に記載の発明では、上下に配置した第1、第2の真空チャンバー内で機能材料薄膜層を備えた基板フィルム上に封止フィルムを面接着する封止方法であり、第1の真空チャンバーのステージ上に前記基板フィルムを搬入し、該基板フィルムを前記ステージ上に保持する工程と、第1、第2の真空チャンバー間に配置した通気ユニット下に封止フィルムを搬入し、該封止フィルムを前記通気ユニットのメッシュシートで保持する工程と、第2の真空チャンバーを降下して第1の真空チャンバーとの間に気密状態を形成する工程と、第1、第2の真空チャンバー内の空気を排気して真空状態を形成する工程と、第1の真空チャンバーのステージを上昇させて前記基板フィルムと前記封止フィルムを面接触させる工程と、通気ユニットのメッシュシート上で第2の真空チャンバー内に備えた封止ローラーを水平方向に移動させ、基板フィルムと封止フィルムを面接着させる。
【0018】
請求項10に記載の発明では、上記請求項9に記載の封止方法において、基板フィルムと封止フィルムのアライメント調整をアライメントカメラにより行う工程を含むようにする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、合成樹脂製の基板フィルムと封止フィルムを真空中で転動する封止ローラーにより接着するようにしたので、基板フィルムと封止フィルムが撓んで密着し、フィルム間のギャップが均等になる。これにより有機EL発光パネルを成形した場合においては、輝度ムラが発生せず全面を均一の発光品質で発光させることができ、しかも大型化・軽量化が可能となる有機EL発光パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明封止装置の基本構成を示す断面図である。
【
図2】本発明封止装置の基本構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明封止装置の通気ユニットを示す上面斜視図である。
【
図4】本発明封止装置の通気ユニットを示す下面斜視図である。
【
図5】本発明封止装置の通気ユニットの他の例を示す下面斜視図である。
【
図6】本発明封止装置の封止ユニットの内部の機構を示す斜視図である。
【
図7】本発明封止装置の封止ユニットの内部機構の他の例を示す斜視図である。
【
図8】本発明封止装置の空室筐体の構成を示す斜視図である。
【
図9】本発明封止装置の空室筐体の動作を説明する図である。
【
図10】本発明封止装置の空室筐体の動作を説明する図である。
【
図11】本発明封止装置の送排気回路の構成を説明する図である。
【
図12】本発明封止装置で成形する基板フィルムを説明する図である。
【
図13】本発明封止装置で成形する封止フィルムを説明する図である。
【
図14】本発明封止装置の動作態様を説明する図である。
【
図15】本発明封止装置の動作態様を説明する図である。
【
図16】本発明封止装置の動作態様を説明する図である。
【
図17】本発明封止装置の動作態様を説明する図である。
【
図18】本発明封止装置の動作態様を説明する図である。
【
図19】本発明封止装置の動作態様を説明する図である。
【
図20】本発明封止装置の動作態様を説明する図である。
【
図21】本発明封止装置の発展的構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、機能材料薄膜層として有機薄膜層を封止する有機EL発光パネルの成形を前提とした実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の封止装置Aの基本構成を説明するための断面図であり、
図2にその斜視図を示す。同各図において符号1は、内部が第1の真空チャンバーCH1となる空室筐体であり、上面に開口部1aが形成されており、側面に基板フィルムW1を搬入するための搬入窓1bが形成され、後述する送排気回路に接続された送排気管P1、P2が配設されている。
【0023】
空室筐体1の内部中央には、X方向、Y方向、θ方向に微動させることができる機構を内蔵し、表面に静電チャックシート3を張設したステージ2が設けられ、このステージ2に固定された昇降ロッド4が空室筐体1の底部から外部に延設されており、ギヤボックス5に与えられた電動モーター6の駆動力により昇降ロッド4が上下動し、ステージ2が空室筐体1の内部で昇降する。なお、空室筐体1の底面の前記昇降ロッド4の挿通部分には気密シールSが設けられ、この部分の気密状態が保たれるようにしている。
【0024】
さらに、空室筐体1の底面下には、空室筐体1の内部に搬入される基板フィルムW1の対角線上の4箇所を下面から支持する支持ロッド7を上下動するための流体圧シリンダー8が配置固定されている。なお、空室筐体1の底面の前記支持ロッド7の挿通部分には気密シールSが設けられ、この部分の気密状態が保たれるようにしている。
【0025】
つぎに、前記空室筐体1の上面には、その全範囲を覆う通気ユニット10を配設し、さらにこの通気ユニット10の上面を覆う封止ユニット20を配設するようにしている。前記通気ユニット10は、その上面の構成を
図3に、下面の構成を
図4に示すように、空室筐体1の外形に一致する形状の枠体11にメッシュシート12の側端部を固定して張設している。このメッシュシート12はグラスファイバーなどの靱性が高く可撓性を備えた素材を織成したもので、高い通気性を備えるものである。
【0026】
そして、前記メッシュシート12の中央部には、基板フィルムW1の有機薄膜層の封止範囲に対応する大きさの静電チャックシート13を張設し固定する。この静電チャックシート13は、メッシュシート12の上面あるいは下面に張設してもよいが、上面に張設した場合は
図4に示すように静電チャックシート13の外周端をメッシュシート12に接着固定し、メッシュシート12の前記外周端の内部を切断除去して静電チャック効果が低減しないようにする。
【0027】
上記のようにして張設された静電チャックシート13は可撓性を備えるもので、銅あるいはニッケルITO、銀ナノ粒子あるいはカーボンナノ粒子などを素材とする透明あるいは半透明の金属電極13a、13bを交互に櫛歯状となるように形成したもので、この金属電極13a、13bの終端部13c、13dから直流電流を印加することによりその表面に静電気を発生させ、封止シートの静電チャックが可能となるようにしている。なお、前記ステージ2の静電チャックシート2aも静電チャックシート13と同一の構成を備える。
【0028】
上記の例ではメッシュシート12には静電チャックシート13を配設した例を示したが、
図5に示すように粘着剤15を同図に示すようなストライプパターン、あるいはドットパターンにより塗布しておくようにしてもよい。塗布された粘着剤15はメッシュシート12の編目内に進入するので、メッシュシート12で十分確保され、封止フィルムW2を保持することができる。
【0029】
前記通気ユニット10の枠体11には複数箇所にネジ孔11aが形成されており、この枠体11を封止ユニット20の開口部分のフランジにネジ止めにより着脱可能となるようにし、異なる大きさ形状の静電チャックシート13を備えた通気ユニット10を交換可能となるようにしてサイズの異なる有機機能デバイスパネルの生産に対応することができ、清掃メンテナンスの対応も可能となる。また、枠体11の端部全周には気密シール14を配設していることから、空室筐体1のフランジとの間の気密性が確保することができる。
【0030】
つぎに、封止ユニット20の構成についてその構成を
図1および
図6、
図7に基づいて説明する。封止ユニット20はその下面の開口の内部が空室となっており、この空室が第2の真空チャンバーCH2となるように構成されている。なお、ステージ2にはアライメントカメラ9を設け、基板フィルムW1と封止フィルムW2とのアライメントを行うための画像信号が得られるようにしている。
【0031】
前記第2の真空チャンバーCH2内には、封止ユニット20の天板フランジの内面に固定されたサーボ・モーター21を備える。このサーボ・モーター21の出力軸はスクリュー軸23の一端に連結され、このスクリュー軸23の他端は軸受ユニット22で回転可能に支持されている。前記スクリュー軸23はローラー支持桿28に固定されたナットブロック24に螺合しており、ローラー支持桿28の両端に固定され垂下した軸受ブロック29に円筒状の封止ローラー25のスピンドル25aを軸支している。
【0032】
前記スピンドル25aの両端には案内ローラー26が固定されており、この案内ローラー26が封止ユニット20のフランジ内面に形成したガイド溝20a、20b嵌装されている。したがって、スクリュー軸23の回転に伴ってナットブロック24が前進後退することになる。なお、前記軸受ブロック29にはエアースプリングなどの弾性緩衝手段29aを内蔵し、封止ローラー25が上下方向に微動可能となるようにしており、メッシュシート12の表面に凹凸がある場合、これに追従して圧力が均等に加わるようにしている。
【0033】
図7は封止ローラー25の駆動機構の他の構成例を示すもので、機構的剛性の向上などが可能となる。同図に示すように、サーボ・モーター21a、21bの出力軸はスクリュー軸23a,23bの一端に連結され、このスクリュー軸23a,23bの他端は軸受ユニット22a,22bで回転可能に支持されている。前記スクリュー軸23a、23bにはナットブロック24a、24bが螺合して配設されており、したがって、スクリュー軸23a,23bの回転に伴ってナットブロック24a,24bが前進後退する。
【0034】
前記ナットブロック24a、24bは封止ローラー25の支軸25aを回転可能に支持し、この支軸25aの端部に取り付けた軸受ローラー26が封止ユニット20のフランジ内面に形成したガイド溝20a、20bに嵌装するようにしている。したがって、スクリュー軸23a,23bが回転すると、第2の真空チャンバーCH2内を封止ローラー25がスクリュー軸23a,23bの長手方向に前進後退することになる。
【0035】
このように構成された封止ユニット20が前記通気ユニット10とネジ止めにより一体化されると、封止ユニット20のフランジ部の端部全周に配設した気密シール27により通気ユニット10の枠体11との間の気密性が確保されると共に、封止ローラー25の下面がメッシュシート12および静電チャックシート13上に線状に接触することになる。なお、この封止ユニット20は、図示を省略した駆動装置により昇降するように構成し、封止フィルムW1の搬入および成形が完了した有機EL発光パネルの搬出が可能となるようにする。
【0036】
本発明の封止装置Aは以上のように構成されているが、装置の自動化を達成するには、空室筐体1に基板フィルムW1を搬入する開閉窓を備えることを要する。
図8はかかる構成の一例を示すもので、同図に示すように搬入窓1bの全面を覆う開閉扉30が、昇降装置31のギヤ機構により動力が伝達され上下動するように配設されている。
【0037】
一方、搬入窓1bのフランジ部の全周には、流体圧チューブ32が配設されており、
図9に示すように開閉扉30を降下させるときは、流体圧チューブ32内の流体を吸引して開閉扉30との接触を避けるようにする。このようにして搬入窓1bが開放されているときに、同図に示すように基板フィルムW1の搬入がロボットアームRB1により可能となる。そして、基板フィルムW1の搬入が完了すると、
図10に示すように開閉扉30を上昇し、流体圧チューブ32に加圧流体を注入して膨張させ、気密状態が得られるようにする。
【0038】
つぎに、本発明の封止装置Aの送排気回路の構成を
図11に基づいて説明する。同図に示すように空室筐体1に接続された送排気管P1、P2は、バルブ33aを介して大気に繋がる一方、バルブ33b、33cを介して真空ポンプ34に繋がっている。なお、バルブ33cは真空圧調整用のバルブであり、排気後の到達真空圧を制御するために設けられている。
【0039】
本発明の封止装置Aは以上のように構成されており、基板フィルムW1および封止フィルムW2を装置内部に搬入し、セル構造体となった有機EL発光パネルCが完成するまでの処理工程を以下に説明するが、基板フィルムW1および封止フィルムW2は、予備成形されたものを準備しなければならないため、まず、その予備成形された基板フィルムW1および封止フィルムW2の成形処理の態様を以下に説明する。
【0040】
図12に示すように、基板フィルムW1の上面の電極が形成されている発光範囲に有機薄膜層35が形成されており、その外周にシール材36が塗布されている。一方、封止フィルムW2の下面には
図13に示すように、透明接着剤38が例えばツリー状となるようにディスペンサにより塗布されている。前記基板フィルムW1および封止フィルムW2の定位置には、アライメントマーク37a、37b、39a、39bが施されている。なお、封止フィルムに光学用粘着フィルムを採用した場合は、透明接着剤38の塗布処理を省略することができる。
【0041】
以上のようにして予備成形された基板フィルムW1および封止フィルムW2は、
図14に示す搬入待機状態の封止装置Aに搬入されることになる。即ち、同図に示すように昇降装置により通気ユニット10および封止ユニット20は共に上昇しており、空室筐体1と通気ユニット10との間に空間が形成された状態となっている。
【0042】
かかる状態において
図9に示すように空室筐体1の開放されている搬入窓1bから、真空吸着機能を備えたロボットアームRB1により基板フィルムW1の端部下面を真空吸着し、
図15に示すように空室筐体1の内部に搬入する。一方、封止フィルムW2も同様に、真空吸着機能を備えたロボットアームRB2により端部上面が真空吸着されて通気ユニット10下に搬入される。
【0043】
図15の状態に至ると、
図16に示すようにロボットアームRB1は降下して基板フィルムW1をステージ2の静電チャックシート3上に配置し、この静電チャックシート3に通電を開始して基板フィルムW1を静電チャックする。一方、ロボットアームRB2は上昇して封止フィルムW2を通気ユニット10の静電チャックシート13に配置し、この静電チャックシート13に通電を開始して封止フィルムW2を静電チャックする。
【0044】
図16に示す工程における静電チャックが完了すると、
図17に示すように昇降装置により通気ユニット10および封止ユニット20が共に降下し、通気ユニット10の気密シール14が空室筐体1のフランジに密着する。これにより、第1の真空チャンバーCH1と第2の真空チャンバーCH2はメッシュシート12を介して連通した状態となる。
【0045】
このようにして第1の真空チャンバーCH1と第2の真空チャンバーCH2の気密状態が得られると、
図11に示す送排気回路が作動を開始する。このときバルブ33aは閉止、バルブ33bは開放として真空ポンプ34の駆動を開始することにより第1の真空チャンバーCH1の空気、および第2の真空チャンバーCH2の空気がメッシュシート12を介して送排気管P1、P2から吸引されバルブ33cで任意に定めた成形に必要な真空状態(1パスカル程度)が各真空チャンバーCH1、CH2内に得られる。
【0046】
このようにして各真空チャンバーCH1、CH2内が真空状態に至ると、電動モーター6を駆動してステージ2を上昇し、
図18に示すように基板フィルムW1と封止フィルムW2を接近させる。なお、このステージ2の上昇過程において、アライメントカメラ9により基板フィルムW1のアライメントマーク37a、37bおよび封止フィルムW2のアライメントマーク39a、39bを検出し、誤差がある場合はステージ2を微動させて両基板の位置合わせを行う。
【0047】
アライメント調整が完了し、ステージ2を上昇させると、ステージ2と封止ローラー25により基板フィルムW1と封止フィルムW2を挟持した状態となり、この状態でサーボ・モーター21a、21bの駆動を開始すると、封止ローラー25がメッシュシート12上を基板フィルムW1に封止フィルムW2を圧接する状態で転動するので、基板フィルムW1と封止フィルムW2は撓んで密着し、均等な接着状態が得られる。
【0048】
即ち、封止ローラー25は円筒状であることから、封止フィルムW2に対して曲面の一部が常に線状に接触する状態となるので、封止フィルムW1の全面に亘って圧接力が均等に加わることになるのである。この封止ローラー25はサーボ・モーター21a、21bの正転・反転を繰り返すことにより、第2の真空チャンバーCH2を往復動させることができ、1往復あるいは数往復を任意に定めることができる。
【0049】
このように封止ローラー25による圧接は真空中で行われるため、当然基板フィルムW1と封止フィルムW2間に空気の存在しない接着となり、シール材36によりその後の空気の進入を防ぐことができる。このようにして成形が完了すると、メッシュシート12の静電チャックシート13への通電を遮断して静電チャック状態を解除する一方、ステージ2の静電チャックシート3への通電を継続したまま
図19に示すようにステージ2を降下する。
【0050】
なお、メッシュシート12に静電チャックシート13を採用した場合は、その通電の遮断により静電チャックシート13からの封止フィルムW2が分離されるが、メッシュシート12に粘着剤15を塗布した
図5に示す通気ユニット10を採用した場合は、ステージ2の静電チャックシート3への通電が継続されているので、粘着剤15からの封止フィルムW1の剥離が強制され分離される。
【0051】
そして、静電チャックシート3への通電を遮断し、
図20に示すように流体圧シリンダー8を作動してその支持ロッド7を上昇すると、ロボットアームRB1により完成した有機EL発光パネルCを装置外部へ搬出することができる。
【0052】
図21は本発明の封止装置により有機EL発光パネルCの連続自動生産が可能となるようにすることを意図した構成であり、長尺の封止フィルムW2を巻き取ってリール状にし、搬入ローラー40および搬出ローラー41により封止フィルムW2を連続的に供給するようにしたものである。封止フィルムW2の供給過程で透明接着剤38を塗布するディスペンサ42および裁断機構43の配置を要するが、かかる構成により完全自動化の連続生産が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上詳細に説明したごとく、本発明の封止装置によれば、真空中でしかも封止ローラーによる外力を与えて接着処理が行われるため、空気を完全に排除することができる有機薄膜層の封止が可能となることから、有機EL発光パネルの成形に好適であるが、有機薄膜太陽電池、あるいは他の機能材料薄膜層を封止して機能材料デバイスを成形することも可能であり、実施の対象が本実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
A・・・・・封止装置
C・・・・・有機EL発光パネル
CH1・・・第1の真空チャンバー
CH2・・・第2の真空チャンバー
W1・・・・基板フィルム
W2・・・・封止フィルム
S・・・・・気密シール
1・・・・・空室筐体
2・・・・・ステージ
3・・・・・静電チャックシート
4・・・・・昇降ロッド
5・・・・・ギヤボックス
6・・・・・電動モーター
7・・・・・支持ロッド
8・・・・・流体圧シリンダー
9・・・・・アライメントカメラ
10・・・・通気ユニット
11・・・・枠体
12・・・・メッシュシート
13・・・・静電チャックシート
14・・・・気密シール
15・・・・粘着剤
20・・・・封止ユニット
20a・・・ガイド溝
20b・・・ガイド溝
21・・・・サーボ・モーター
22・・・・軸受ユニット
23・・・・スクリュー軸
24・・・・ナットブロック
25・・・・封止ローラー
26・・・・軸受ローラー
27・・・・気密シール
28・・・・ローラー支持桿
29・・・・軸受ブロック
29a・・・弾性緩衝手段
30・・・・開閉扉
31・・・・昇降装置
32・・・・流体圧チューブ
33a・・・バルブ
33b・・・バルブ
33c・・・バルブ
34・・・・真空ポンプ
35・・・・有機薄膜層
36・・・・シール材
38・・・・透明接着剤