(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空中移動機器と、この空中移動機器に搭載された撮影装置と、前記空中移動機器に搭載され、前記撮影装置で撮影したデータを送信する撮影データ送信部と、前記空中移動機器に搭載され、点検対象部分である橋梁の損傷程度認識用に、寸法基準を提供する測定機能部と、前記撮影したデータとデータベースに蓄積された橋梁の劣化傾向データとを比較して、判断された劣化レベル判断に基づいて、前記空中移動機器の飛行経路を制御する自動飛行制御装置と、を備えた橋梁の損傷状態調査システム。
空中移動機器と、この空中移動機器に搭載された撮影装置と、前記空中移動機器に搭載され、前記撮影装置で撮影したデータを送信する撮影データ送信部と、前記空中移動機器に搭載され、点検対象部分である橋梁の損傷程度認識用に、寸法基準を提供する測定機能部と、前記撮影したデータとデータベースに蓄積された橋梁の劣化傾向データとを比較して、判断された劣化レベル判断に基づいて、前記測定機能部を制御する測定機能部制御部と、備えた橋梁の損傷状態調査システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の橋梁の損傷状態調査では、特殊車両である橋梁点検車101を橋梁に沿って、その橋梁全長移動して行うので、橋梁100周辺を交通規制する必要があり、自動車等の渋滞の原因となったり、特殊車両である橋梁点検車101の可動費用や作業員の作業費用等多くの費用を要するという問題点があった。
【0006】
また、事前の警察への届出が不可欠な点等、複雑かつ多大な手続きと時間を必要とするという問題点もあった。
【0007】
この発明は、以上の問題点を解決するために、橋梁を構成する部材に生じるひび割れや、損傷の程度等、橋梁の損傷状態を、簡易に運用可能な無人の空中移動機器を用いて行い、橋梁周辺を交通規制必要もなく、低コストかつ簡単な作業で正確な橋梁の損傷状態の調査が行える橋梁の損傷状態調査システム、橋梁の損傷状態調査方法および空中移動機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わる橋梁の損傷状態調査システムは、空中移動機器と、この空中移動機器に搭載された撮影装置と、前記空中移動機器に搭載され、前記撮影装置で撮影したデータを送信する撮影データ送信部と、前記空中移動機器に搭載され、点検対象部分である橋梁の損傷程度認識用に、寸法基準を提供する測定機能部とを備えたものである。
【0009】
この発明に係わる橋梁の損傷状態調査方法は、空中移動機器から送信されてきた、寸法基準付きの撮影データを受信し、リアルタイムに橋梁の損傷状態を調査可能とするものである。
【0010】
この発明に係わる空中移動機器は、撮影装置と、前記撮影装置で撮影したデータを送信する撮影データ送信部と、点検対象部分である橋梁の損傷程度認識用に、寸法基準を提供する測定機能部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、空中移動機器を用いて、橋梁周辺を交通規制必要もなく、低コストかつ簡単な作業で迅速且つ正確な橋梁の損傷状態調査が行えるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明は、デジタルカメラやビデオ等の撮影装置を備えた無人ヘリコプター等の空中移動機器を用いて、橋梁を構成する部材に生じるひび割れや、損傷の程度等の橋梁の劣化状況を空中から直接撮影し、その撮影データを分析して、橋梁の損傷状態を調査するものである。
【0013】
実施の形態1
以下、本発明における一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、この空中移動機器を用いた橋梁の損傷状態調査方法の全体システム説明図を示す。
【0014】
この橋梁の損傷状態調査システムは、軽量のカメラ、ビデオ等の撮影装置1を備えた無人ヘリコプター等の空中移動機器2と、この空中移動機器2を制御操作する操作システム部3と、空中移動機器2の撮影装置1からの撮像データを受信する受信装置4とを有する。
【0015】
実施の形態1の構成
(1)空中移動機器2は、
図2および
図3に示すように、デジタルカメラ、ビデオ等の撮影装置1と、空中移動機器2の推進力を付与するローター5と、LEDライト等の照明部6と、撮影装置1で撮影したデータを送信する撮影データ送信部7と、レーザー光線等の照射手段を備え、点検対象部分のレーザー光線等の点と点の距離や、点の大きさを基準として点検対象部分である損傷の長さや大きさを推定したりする際に、寸法基準を提供する測定機能部8と、自動飛行制御用GPS9と接続された自動飛行制御装置10とを備えている。
【0016】
この空中移動機器2の撮影装置1によって、a.橋桁の下側(橋梁の桁の下フランジ下面)、b.橋桁の側面(正確には橋桁のウェブ面)、c.橋床版下面等を撮影しながら、橋梁の損傷状態調査を行うので、橋梁の点検対象部分を漏れのないように撮影するために、理想的には複数台設けられていることが好ましい。
【0017】
また、この撮影装置1として、例えば、赤外線カメラを採用した場合には、橋梁の点検対象部分の温度差も撮影したデータに含めることもできる、これによって、ひび割れ等の橋梁の損傷状態調査をより詳細に行うことができる。
【0018】
また、空中移動機器2の撮影データ送信部7は、逐次、地上側の受信装置4に送信され、空中移動機器2の飛行中もリアルタイムで画像を確認することができる。
【0019】
なお、この実施の形態1では、空中移動機器2としてヘリコプターを例示して、説明をしているが、静止、あるいはごく低速度でブレのない撮影ができれば、無人ヘリコプター以外のいかなる空中移動機器であってもよい。
【0020】
また、
図2に示した空中移動機器2において、空中移動機器2の推進力を付与するローター5の周囲に、ローター5が橋梁に接触した場合にローター5の損傷を防止する、例えば、プラスチック製の保護カバー(図示せず)を設けることが好ましい。保護カバーを装着する場合には、撮影装置1の撮影を妨げないような位置及び形状のものを設ける必要がある。
【0021】
(2)操作システム部3は、空中移動機器2を飛行制御する装置である。
通常は、地上側の調査員が空中移動機器2を目指しながら操作したり、さらに、地上側の受信装置4に送信されてきた撮像データをチェックしながら、空中移動機器2の操作を行うが、後述するように、空中移動機器2の自動飛行制御装置10により、飛行経路を自動化することも可能である。
【0022】
また、この操作システム部3は、空中移動機器2を安定的かつ静止、あるいはごく低速度で飛行させるために、外部からの電波などの影響が少ないという機能を有すれば、如何なる構成であってもよい。
【0023】
ここで、例えば、橋梁を構成する部材に生じるひび割れや、損傷は1mm以下のものも存在するので、かなりの精度解像度と、空中移動機器2の安定的かつ静止、あるいはごく低速度な安定飛行が不可欠となる。
【0024】
操縦能力や、風の吹き具合、および撮影装置1の性能により、橋梁と空中移動機器2の距離は変化し、一概には言えないが、例えば、橋桁の点検および撮影では、上記距離を1m程度の飛行を予定している。
【0025】
(3)受信装置4は、空中移動機器2の撮影装置1からの撮像データを受信し、現場で画像再生できるものが好ましい。現場で画像再生しながら、小さな橋梁を構成する部材に生じるひび割れや、損傷の疑いのある箇所を発見した場合には、当該箇所を重点調査出来ることが望ましい。
【0026】
実施の形態1の作用効果
(1)点検対象部分の撮影手法について
a.撮影方法
出願人は過去の経験から多種多様な効果的な撮影方法を創出してきているが、例えば、空中移動機器2の測定機能部8からレーザー光線(例えば1mm直径の点を複数照射)を照射し、レーザー光線の点と点の距離を基準として、点検対象部分である損傷部分の長さを推定したり、点の大きさとの関連で、損傷部分が1mmより大きいか、小さいか、また、比較から0.5mm以下である等、ひび割れの大きさを判断する。
【0027】
(2)撮像データの分析手法について
出願人は過去の経験から多種多様な効果的な分析手法のデータを有している。そこで、調査の過程で、橋梁を構成する部材に生じるひび割れや、損傷が発見された場合、その撮像データから、橋梁を構成する部材に生じるひび割れや、損傷の程度を予測する。
以下、分析手法の一例について説明する。
【0028】
この分析手法は、受信装置4で受信した空中移動機器2の撮影装置1からの撮像データと、データベースに蓄積された橋梁の劣化傾向データとを比較して、自動的に橋梁を構成する部材に生じるひび割れや、損傷の程度等の橋梁の劣化状況や劣化度合いを認識し、橋梁の劣化状況や劣化度合いを算出するものである。
図4は、データベースAに蓄積された劣化傾向データ11a〜11eを示す。
11aは、劣化過程:潜伏期、 ひび割れの形態:橋軸直角方向ひび割れ
11bは、劣化過程:進展期、 ひび割れの形態:直交方向ひび割れ
11cは、劣化過程:加速期(前期)、ひび割れの形態:亀甲状ひび割れ
11dは、劣化過程:加速期(後期)、ひび割れの形態:角落ち・ひび割れのスリット
11eは、劣化過程:劣化期、 ひび割れの形態:抜け落ち
受信装置4で受信した空中移動機器2の撮影装置1からの撮像データは、地上側の情報処理装置の比較処理部(図示せず)によりデータベースAに蓄積された橋梁の劣化傾向データ11a〜11eと比較認識され、送信されてきた撮像データが、現場レベルにおいて簡易に、橋梁の劣化過程のどのレベルに該当するのかが判断されることとなる。
【0029】
この処理装置の比較処理部は、例えば、具体的に劣化レベル判断(潜伏期、進展期、加速期(前期)、加速期(後期)、劣化期)の如何なるレベルに該当するのかを判断して提示するように構成されている。
【0030】
(3)最適な撮影効果を得るための空中移動機器2の移動方法
a.マニュアルによる空中移動機器2の操作及び撮影
上述のように、出願人は過去の経験から多種多様な効果的な橋梁を構成する部材に生じるひび割れや、損傷の程度等の劣化傾向データを有している。
【0031】
そこで、調査の過程で、橋梁を構成する部材に生じるひび割れや、損傷が発見された場合には、橋梁を構成する部材に生じるひび割れや、損傷の程度等の相関性や劣化進行に関する進行方向や位置的劣化進行方向性等の損傷進行の劣化傾向データを利用して、空中移動機器2の撮影ポイントや撮影報告を予測して、空中移動機器2を移動させる。
【0032】
具体的には、空中移動機器2を制御操作する操作システム部3を上記劣化傾向データや報処理装置の比較処理部(図示せず)で判断された橋梁の劣化レベル判断(潜伏期、進展期、加速期(前期)、加速期(後期)、劣化期の該当レベル)に基づいて、操作して、空中移動機器2を移動させる。
【0033】
b.地上側の情報処理装置の劣化レベル認識結果を利用した空中移動機器2の操作及び撮影
地上側の情報処理装置による劣化レベル判断を利用して、その後の飛行経路を、あらかじめ空中移動機器2の自動飛行制御装置10にインプットしておいた橋梁の劣化傾向データ報処理装置の比較処理部(図示せず)で判断された劣化レベル判断(潜伏期、進展期、加速期(前期)、加速期(後期)、劣化期の該当レベル)に基づいて、情報制御プログラムを作動させて、橋梁の点検対象部分の撮影密度をその重要度に対応させて自動化してもよい。
【0034】
例えば、橋梁の劣化レベルが潜伏期や進展期については、撮影を簡単にして、加速期以降を入念に撮影したり、劣化レベルの潜伏期や進展期と加速期以降の関係を重点的に撮影ポイントとしたり、調査目的に応じてプログラムを変更することも可能である。
【0035】
c.また、自動飛行制御装置10の自動飛行制御用GPS9を作動させ、その飛行経路を一部自動化して、空中移動機器2と橋梁との衝突等の不測の事態を回避したり、効率的な撮影が得られるようにしてもよい。
【0036】
また、自動飛行制御用GPS9を利用した自動飛行制御装置10による飛行経路に加え、事前に橋の設計図のデータを空中移動機器2の自動飛行制御装置10にインプットして、飛行経路をデータ制御してもよい。
【0037】
さらに、自動飛行制御用GPS9を利用した自動飛行制御装置10には、事前に橋の設計図のデータとともに、橋桁の間での撮影重要ポイントやどのように撮影装置1のシャッタ作動位置、フォーカス位置、拡大撮影位置倍率、撮影時間等を行うか等を詳細にインプットして、飛行経路のみならず、撮影条件までもデータ制御してもよい。
【0038】
(4)最適な撮影効果を得るための空中移動機器2の測定機能部8による照射方法
上述の上記劣化傾向データや報処理装置の比較処理部(図示せず)で判断された劣化レベル判断(潜伏期、進展期、加速期(前期)、加速期(後期)、劣化期の該当レベル)に基づいて、測定機能部8によるレーザー光線照射方法を最適に照射するように、測定機能部8の照射光線の種類や大きさを、測定機能部8プログラミングしてもよい。
【0039】
例えば、劣化レベルが潜伏期や進展期については、レーザー光線の点と点の距離を通常にして、加速期以降の損傷部分をより詳細に調査するために、レーザー光線照射間隔(例えば0.5mm〜1mm直径の点を複数照射)とすることも可能である。
【0040】
実施の形態1の効果
以上のように、この実施の形態1によれば、空中移動機器を用いて、橋梁周辺を交通規制する必要もなく、低コストのかつ簡単な作業で正確な橋梁の損傷状態調査が行えるという効果が得られる。
【0041】
なお、上記実施の形態1では、空中移動機器を用いた橋梁の損傷状態調査システムおよび調査方法を中心に説明したが、本発明は、この分野に何ら限定されることはなく、橋梁やその他建築物一般の鋼桁の腐食調査や、鋼材の接続部の亀裂等に適用できることはもちろんである。