【実施例1】
【0031】
図1に、本実施形態に係る給湯装置1を示す。給湯装置1は、給湯装置本体10と、化粧カバー20と、を備える。
【0032】
給湯装置本体10は、例えば、家屋外の地面F上に脚部23を介して配置され、その筐体11の上面がL字状の固定具13を用いて家屋等の壁面Wに固定される。ここで、給湯装置本体10の下端から湯水等を屋内に供給するための配管類15(
図1において点線を用いて示す)が、壁面Wを介して屋内に延設されている。
【0033】
図2に、化粧カバー20の分解斜視図を与える。化粧カバー20は、ケーシング(本体)21と、カバー22と、から構成される。図中、ケーシング(本体)21とカバー22は、基準軸Lについて分解して示されている。
【0034】
(固定対象の構造)
本体21は、平板状の2つの側面21dと、両端に取付片が設けられた3つの梁21a,21c,21gと、から構成される。ここで、梁21aには、2つのネジ穴21fが形成されている。また、梁21cには、2つのスリット21eが形成されている。
【0035】
2つの側面21dはX軸方向の一側と他側にそれぞれの内面を対向して配置され、それらの前部上側(−Y,+Z側)の端部が梁21aにより、それらの前部下側(−Y,−Z側)の端部が梁21cにより、それらの後部下側(+Y,−Z側)の端部が梁21gにより、連結されている。梁21a,21c及び梁21gは、一面をそれぞれ前方(−Y方向)及び後方(+Y方向)に向け、取付片を側面21dの内面に当接して、ネジ、ビス等の固定具を用いて或いは溶接により側面21dに固定されている。なお、梁の数、形状、材質等及び側面21dへの取付方法は、側面21dを支持するのに十分な強度が得られるよう適当に定めることとする。
【0036】
本体21は、
図1に示すように、給湯装置本体10の下(−Z側)に、2つの側面21dの外面が給湯装置本体10の筐体11の側面と略面一に、配置される。これにより、給湯装置本体10の下端から延びる配管類15が、2つの側面21dの間を上下(Z軸方向)及び前後(Y軸方向)に通って、屋内に向かって配設されることとなる。
【0037】
本体21の下端には下端面21hが前側(−Y側)に設けられ、下端面21hには3つの係止部材21eが突設されている。この係止部材21eは、下端面21hの−Y端を+Z方向に屈曲することで下端面21hと一体的に形成してもよいし、別部材を下端面21hに溶接等により固定することで形成してもよい。
【0038】
(被固定物の構造)
カバー22は、前面22aと、上面22b及び下面22cと、フランジ22dと、を含んで形成されている。
【0039】
前面22aは、−Y方向に凸状に形成されている。前面22aの上端(+Z端)近傍には、後述するように固定具(ネジ31)を通すための2つの孔22fが設けられている。
【0040】
上面22b及び下面22cは、略等脚台形状の平板であり、それぞれ前面22aの上端及び下端に固設されている。下面22cには、3つのスリット22eが設けられている。スリット22eの構造については後述する。
【0041】
(固定構造)
図3に、係止構造30を示す。
図3(A)にスリットを示した。スリット22eは、幅s1の略長方形の第1穴部22e1と、第1穴部の幅方向に交差する方向に連なる幅s2の略長方形の第2穴部22e2とを有し、凸字状である。
【0042】
図3(B)に係止部材をスリットに合わせて示した。係止部材21eは、幅t1の略長方形の基端部と、幅(長底辺の長さ)t2の略等脚台形の先端部とを有する。s1、s2、t1、t2は、s1>t2>s2>t1の関係にある。先端部は、第1穴部を通過するが、第2穴部を通過しない。基端部は、第1穴部及び第2穴部のいずれにも挿入され得る。図は、先端部については第1穴部を通過させ、基端部を第1穴部に挿入した状態を示す。
【0043】
図3(C)に係止部材をスリットに合わせて示した。
図3(B)と異なり、基端部を第2穴部に挿入した状態である。先端部は第2穴部を通過しないので、この状態からは、基端部が第1穴部に移動しない限り、係止部材21eがスリット22eを外れることがない。
【0044】
図4に、係止部材とスリットの位置関係を示す。
図4(A)に係止部材の位置を示す。下端面21hの−Y端に、3つの係止部材21eが設けられている。中央の係止部材が第1係止部材、両端の係止部材が第2係止部材である。第1係止部材及び第2係止部材は、いずれも
図3(B)に示した通りの形状である。(第1係止部材及び第2係止部材は同形状である。)
【0045】
図4(B)にスリットの位置を示す。下面22cに3つのスリット22eが設けられている。中央のスリットが第1スリット、両端のスリットが第2スリットである。第1スリットと第2スリットとは、凸字形状が逆に向いている。第1スリットの第1穴部と第2スリットの第1穴部とはY座標を異にしている。すなわち、X軸に平行な直線が3つのスリット全ての第1穴部を通ることはない。
【0046】
カバー22をケーシング本体21に取り付ける手順は、以下のとおりである。まず、カバー22の±X端を両手で把持して、3つのスリット22eをそれぞれ対向する係止部材21eの上に配置する。
【0047】
係止部材とスリットとが上記の位置関係にあると、X軸に平行に配された3つの係止部材を、そのままで3つのスリットの第1穴部に挿入することができない。そこで、カバー22(下面22c)の中央を−Y方向に引いて(またはカバー22の±X端を狭めるように圧縮して)、下面22cを弾性変形させる。
図4(C)に弾性変形後のスリットの位置を示す。弾性変形によって3つのスリット全ての第1穴部の箇所に係止部材が位置する。この状態において、カバー22を下方に移動し、3つの係止部材を3つのスリットの第1穴部に挿入する。なお、
図4(C)は、理解を容易にするために下面22cの変形(湾曲)度合いを実際よりも大きく描いたものである。
【0048】
図4(D)に、弾性変形が解消した状態での係止部材とスリットの位置関係を示す。3つの係止部材の全てが3つのスリットの第1穴部に配されることはなく、カバー22がケーシング本体21から外れることはない。
【0049】
力が加わってカバー22が移動しても、カバー22がケーシング本体21から外れることはない。正面又は背面からの力(Y方向の風に起因すると考えられる)に対しては、第1係止部材又は第2係止部材の一方が対向するスリットの第2穴部に配される。XY平面で回転する力(X方向の風に起因すると考えられる)に対しては、2つの第2係止部材のいずれか1つが対向するスリットの第2穴部に配される。
【0050】
上述の通り、係止部材21eをスリット22eに挿入することで、係止部材21eの先端部がZ軸方向に係止される。これにより、係止部材21e(カバー22)が下端面21h(本体21)から外れることがない。
【0051】
カバー22を本体21に固定して本体21(側面21b)の前面の開口を塞いで化粧カバー20を形成することで、給湯装置本体10の下端から延びる配管類15が隠される。
【0052】
また、3つの係止構造はカバー22と本体21との間に直線状に配されており、カバー22の上部の固定を外せば、カバー22を本体21に対して傾ける(YZ平面で回転させる)ことができる。
【0053】
なお、カバー22を本体21から取り外す場合、逆の手順に従うことで容易に取り外すことができる。
【0054】
以上、詳細に説明したように、本発明に係る固定構造30を利用して、係止部材21eが、スリット22eに挿入されることで係止部材21eの少なくとも1つがスリット22eの第2穴部により係止され、カバー22の上部を本体に着脱可能に固定することで、カバー22がケーシング(本体)21に固定される。これにより、カバー22のケーシング(本体)21への固定を容易に外すことができるとともに、カバー22の上部の固定が外れてもカバー22がケーシング(本体)から落下することがなく、安全に使用することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態の化粧カバー20では、カバー22を本体21に対して傾けることができる。そこで、化粧カバー20内の配管類15等の観察或いは簡単な整備を要する場合、カバー22を本体21から取り外さず、ネジ31を外してカバー22の上部の固定のみを外し、カバー22を手前(−Y側)に倒してその上方のみを開けて処理することもできる。
【0056】
また、本実施形態の給湯装置1の化粧カバー20では、ネジ31を用いて、カバー22(の上部)を本体21(梁21a)に着脱可能に固定したが、これに限らず、着脱可能に固定することができるものであれば適当な固定具(留め具)を使用してよい。
【0057】
また、本実施形態の固定構造では、3対の係止部材21eとスリット22eを採用したが、4対以上であってもよい。必要とする取り付け強度に応じて、その数を適当に定めることができる。その際、弾性変形による取り付けと回転力への耐性とに鑑み、両端に各1個以上の第2スリットを設け、その間の中央に1個以上の第1スリットを設けることが好ましい。
【0058】
また、本実施形態の固定構造では、カバー22が弾性を有するものとしたが、係止部材21eが弾性を有し、係止部材を前後に移動させてカバーを取り付けてもよい。
【0059】
また、本実施形態の給湯装置1の化粧カバー20は、本体21の前面が全て開き、この前面を同形状のカバー22を用いて覆う構成を採用したが、これに限られず、本体21に前面を設け、その一部に設けられて開口をその開口と同形状又はそれより大きい形状のカバーを用いて覆う構成を採用することもできる。また、前面でなく側面、後面、或いは下面が開く構成とし、その一面を、カバー22を用いて覆う構成を採用してもよい。
【0060】
本実施形態の給湯装置1では、給湯装置本体10の下端から延設される配管類15を隠すために、給湯装置本体10の下に化粧カバー20を配置したが、配管類15の延設方向に応じて化粧カバー20を配置することができる。例えば、給湯装置本体10の上に化粧カバー22を配置してもよい。
【0061】
また、本実施形態の固定構造30は、給湯装置1の化粧カバー20においてのみ利用可能なものではなく、被固定物を固定対象に固定するあらゆるものに利用することができる。
【実施例2】
【0062】
本実施例は、長さの異なる係止部材を用いるものである。カバー22をケーシング本体21に取り付ける手順のみが実施例1と異なる。この部分を説明し、他の説明は実施例1と同様なので省略する。
【0063】
(一形態)
図5(A)に、係止部材を示す。図の中央は第1係止部材21e1であり、両端は第2係止部材21e2である。第1係止部材21e1の先端は、第2係止部材21e2の先端よりもより先端側に配置されている。第1係止部材21e1の基端部は第2係止部材21e2の基端部よりも長い。
【0064】
カバー22をケーシング本体21に取り付ける手順は、以下のとおりである。まず、カバー22の±X端を両手で把持して、3つのスリット22eをそれぞれ対向する係止部材21eの上に配置する。
【0065】
この状態で、第1係止部材21e1の先端を第1スリットの第1穴部に挿入する。
図5(B)にかかる挿入後の状態を示す。なお、図において係止部材はスリットに挿入されたもののみを示し、スリットに挿入されずに下面22cの下側にあるものは表示しない。(以下、
図5(C)〜(E)、
図6(B)〜(D)において同様。)
【0066】
そこで、カバー22の±X端を狭めるように圧縮して、下面22cを弾性変形させる。
図5(C)に弾性変形後のスリットの位置を示す。弾性変形によって3つのスリット全ての第1穴部の箇所に係止部材が位置する。第1係止部材21e1の先端が第1スリットの第1穴部に挿入され第1スリットの位置が固定されるので、弾性変形によって3つのスリットの位置を合わせることが、実施例1よりも容易である。この状態において、カバー22を下方に移動し、3つの係止部材を3つのスリットの第1穴部に挿入する。
図5(D)に挿入後のスリット及び係止部材を示す。
【0067】
図5(E)に、弾性変形が解消した状態での係止部材とスリットの位置関係を示す。3つの係止部材の全てが3つのスリットの第1穴部に配されることはなく、カバー22がケーシング本体21から外れることはない。
【0068】
(他形態)
図6(A)に、係止部材を示す。図の中央は第1係止部材21e1であり、両端は第2係止部材21e2である。第1係止部材21e1の先端は、第2係止部材21e2の先端よりもより先端側に配置されている。第1係止部材21e1の基端部は第2係止部材21e2の基端部よりも長い。
【0069】
前述の形態との相違は、第1係止部材21e1の基端部が第2係止部材21e2の基端部よりも十分に長く、第2係止部材21e2の先端が第1係止部材21e1の基端部に対応する位置に配置されることである。これにより、第2係止部材21e2をスリットに挿入せずに、第1係止部材21e1の基端部を第1スリットの第2穴部に移動させることができる。
【0070】
カバー22をケーシング本体21に取り付ける手順は、以下のとおりである。まず、第1係止部材21e1の先端部を第1スリットの第1穴部に挿入し(
図6(B)参照)、第1係止部材21e1の基端部を第1スリットの第2穴部に移動させる(
図6(C)参照)。
【0071】
その後、カバー22を下方に移動し、第2係止部材を第2スリットの第1穴部に挿入する。この操作は、下面22cを弾性変形させずに行うことができる。
【0072】
図6(D)に、全ての係止部材を挿入した状態での係止部材とスリットの位置関係を示す。3つの係止部材の全てが3つのスリットの第1穴部に配されることはなく、カバー22がケーシング本体21から外れることはない。
【0073】
以上、3つの係止部材及びスリットの例を説明したが、本形態は弾性変形を必要としないので、4つ以上の係止部材及びスリットでも適用することができる。また、係止部材の位置に依存せずに適用できるので、第1係止部材21e1でなく第2係止部材21e2を長くすることもできる。