特許第6203595号(P6203595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203595ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203595
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/20 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   C07D213/20CSP
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-214318(P2013-214318)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2015-78131(P2015-78131A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167646
【氏名又は名称】広栄化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古賀 悠子
(72)【発明者】
【氏名】本間 知之
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−163271(JP,A)
【文献】 特開2013−028586(JP,A)
【文献】 特開2005−232077(JP,A)
【文献】 特開2010−229321(JP,A)
【文献】 特開2006−278167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
(式中、Rは炭素数7〜13のアラルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表されるピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド。
【請求項2】
がベンジル基である請求項1に記載のピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド。
【請求項3】
が水素原子である請求項1または2のいずれかに記載のピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド。
【請求項4】
がメチル基である請求項1または2のいずれかに記載のピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド。
【請求項5】
X (2)
(式中、Rは炭素数7〜13のアラルキル基を示す。Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化アルキル化合物と式(3):
【化2】
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表されるピリジン化合物を反応させて式(4):
【化3】
(式中、R、RおよびXは前記に同じ。)で表されるピリジニウム=ハライドを得、該ピリジニウム=ハライドを式(5):
M(FSON (5)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)で表されるアルカリ金属=ビス(フルオロスルホニル)イミドとイオン交換反応させることを特徴とする請求項1に記載のピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオンにピリジニウムイオンを有し、アニオンにビス(フルオロスルホニル)イミドイオンを有するピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドは、公知の化合物であり、これらは電池、キャパシタ、コンデンサ、太陽電池などの電気化学デバイス用電解質および帯電防止剤などに用いられることが知られている(特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、1−ノニルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドおよび1−ドデシル−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドを除く、ピリジニウムの1位に炭素数9〜12のアルキル基または炭素数7〜13のアラルキル基を有し、ピリジン環上に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を有するピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドは、これまでに知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−278167号公報
【特許文献2】特開2010−229321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電池、キャパシタ、コンデンサ、太陽電池などの電気化学デバイス用電解質および帯電防止剤などに用いることができる、ピリジニウムの1位に炭素数9〜12のアルキル基または炭素数7〜13のアラルキル基を有し、ピリジン環上に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を有する新規なピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(ただし、1−ノニルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドおよび1−ドデシル−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドを除く)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(1):
【0006】
【化1】
(式中、Rは炭素数9〜12のアルキル基または炭素数7〜13のアラルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表されるピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(ただし、1−ノニルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドおよび1−ドデシル−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドを除く)(以下、ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(1)という。)およびその製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(1)は、電池、キャパシタ、コンデンサ、太陽電池などの電気化学デバイス用電解質および帯電防止剤などに用いることができるため、有用な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
式(1)中、Rは炭素数9〜12のアルキル基または炭素数7〜13のアラルキル基である。炭素数9〜12のアルキル基としては、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられ、好ましくはノニル基およびデシル基であり、より好ましくはデシル基である。炭素数7〜13のアラルキル基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、ジメチルベンジル基、ジエチルベンジル基などが挙げられ、好ましくはベンジル基である。Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基およびプロピル基であり、より好ましくはメチル基である。Rのピリジン環上の位置は、2位または4位が好ましく、2位がより好ましい。
【0009】
ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(1)の具体例としては、1−デシルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ウンデシルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、
【0010】
1−ノニル−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ウンデシル−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ノニル−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ウンデシル−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ノニル−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ウンデシル−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、
【0011】
1−ノニル−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ウンデシル−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ノニル−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ウンデシル−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ノニル−4−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−デシル−4−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ウンデシル−4−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ドデシル−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、
【0012】
1−ベンジルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−メチルベンジル)ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−メチルベンジル)ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−メチルベンジル)ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−エチルベンジル)ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−エチルベンジル)ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−エチルベンジル)ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、
【0013】
1−ベンジル−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−メチルベンジル)−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−メチルベンジル)−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−メチルベンジル)−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−エチルベンジル)−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−エチルベンジル)−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−エチルベンジル)−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ベンジル−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−メチルベンジル)−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−メチルベンジル)−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−メチルベンジル)−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−エチルベンジル)−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−エチルベンジル)−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−エチルベンジル)−3−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ベンジル−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−メチルベンジル)−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−メチルベンジル)−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−メチルベンジル)−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−エチルベンジル)−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−エチルベンジル)−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−エチルベンジル)−4−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、
【0014】
1−ベンジル−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−メチルベンジル)−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−メチルベンジル)−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−メチルベンジル)−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−エチルベンジル)−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−エチルベンジル)−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−エチルベンジル)−2−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ベンジル−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−メチルベンジル)−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−メチルベンジル)−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−メチルベンジル)−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−エチルベンジル)−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−エチルベンジル)−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−エチルベンジル)−3−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ベンジル−4−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−メチルベンジル)−4−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−メチルベンジル)−4−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−メチルベンジル)−4−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(2−エチルベンジル)−4−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(3−エチルベンジル)−4−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、1−(4−エチルベンジル)−4−エチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドなどが挙げられる。
【0015】
本発明のピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(1)は、式(2):
X (2)
(式中、Rは炭素数9〜12のアルキル基または炭素数7〜13のアラルキル基を示す。Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化アルキル化合物(以下、ハロゲン化アルキル(2)という。)と式(3):
【0016】
【化2】
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表されるピリジン化合物(以下、ピリジン(3)という。)を反応させて式(4):
【0017】
【化3】
(式中、R、RおよびXは前記に同じ。)で表されるピリジニウム=ハライド(以下、ピリジニウム=ハライド(4)という。)を得、該ピリジニウム=ハライド(4)を式(5):
M(FSON (5)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)で表されるアルカリ金属=ビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、アルカリ金属=ビス(フルオロスルホニル)イミド(5)という。)と反応させることによって製造できる。
【0018】
ハロゲン化アルキル(2)としては、ノニルクロリド、デシルクロリド、ウンデシルクロリド、ドデシルクロリド、ノニルブロミド、デシルブロミド、ウンデシルブロミド、ドデシルブロミド、ノニルヨージド、デシルヨージド、ウンデシルヨージド、ドデシルヨージド、ベンジルヨージド、4−メチルベンジルヨージド、4−エチルベンジルヨージドなどが挙げられる。
【0019】
ピリジン(3)としては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−プロピルピリジン、3−プロピルピリジン、4−プロピルピリジンなどが挙げられる。
【0020】
ハロゲン化アルキル(2)の使用量は、ピリジン(3)1モルに対して、通常0.5モル〜3.0モル、好ましくは0.6〜2.0モル、より好ましくは0.8〜1.5モルである。
【0021】
ハロゲン化アルキル(2)とピリジン(3)の反応は、溶媒を使用してもしなくともよく、溶媒を使用するときの溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、トルエンなどが挙げられる。溶媒の使用量は特に制限はないが、ピリジン(3)1重量部に対して、通常10.0重量部以下、好ましくは1.0〜5.0重量部である。
【0022】
ハロゲン化アルキル(2)とピリジン(3)の反応を実施するには、例えば、ハロゲン化アルキル(2)、ピリジン(3)および必要に応じて溶媒の混合物を、反応に使用する溶媒の種類にもよるが、通常20℃以上、好ましくは60℃〜120℃で攪拌・混合すればよい。
【0023】
上記のようにしてピリジニウム=ハライド(4)を含む反応混合物を得た後、得られた反応混合物をろ過、濃縮乾固するなどしてピリジニウム=ハライド(4)を得る。得られたピリジニウム=ハライド(4)を本発明のピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(1)を製造するための反応にそのまま用いてもかまわない。また必要で有れば、ピリジニウム=ハライド(4)を有機溶媒(例えば、エチルエーテル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンなど)と混合し、ピリジニウム=ハライド(4)に含まれる未反応原料などを溶媒に溶解した後にろ過して得られる精製されたピリジニウム=ハライド(4)を用いることもできる。
【0024】
次に、ピリジニウム=ハライド(4)とアルカリ金属=ビス(フルオロスルホニル)イミド(5)とのイオン交換反応によるピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(1)の製造について説明する。
【0025】
イオン交換反応で用いるアルカリ金属=ビス(フルオロスルホニル)イミド(5)としては、リチウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドが挙げられる。かかるアルカリ金属=ビス(フルオロスルホニル)イミド(5)の使用量は、ピリジニウム=ハライド(4)1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル〜1.5モルである。
【0026】
イオン交換反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、水、メタノール、ジクロロメタン、トルエンまたはこれらの混合溶媒が用いられる。溶媒の使用量は特に制限はないが、通常ピリジニウム=ハライド(4)1重量部に対して通常20.0重量部以下、好ましくは0.5〜10.0重量部であり、特に好ましくは1.0重量部〜5.0重量部である。
【0027】
ピリジニウム=ハライド(4)、アルカリ金属=ビス(フルオロスルホニル)イミド(5)および溶媒の混合順序は特に限定されず、ピリジニウム=ハライド(4)と溶媒を混合した後にアルカリ金属=ビス(フルオロスルホニル)イミド(5)を添加してもよいし、アルカリ金属=ビス(フルオロスルホニル)イミド(5)と溶媒を混合した後にピリジニウム=ハライド(4)を添加してもよい。また、着色が問題となる場合には、ピリジニウム=ハライド(4)と溶媒を混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、ろ過して得られたろ液をイオン交換反応に用いることもできる。
【0028】
イオン交換反応は、通常10℃〜80℃、好ましくは15℃〜60℃、特に好ましくは20℃〜40℃で通常15分以上、好ましくは30分〜2時間、特に好ましくは45分〜1時間攪拌すれば完結する。
【0029】
反応終了後の反応液中で、疎水性であるピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(1)がその融点以上の温度では液体として、融点以下であれば固体として分離しているので、液体の場合は分液など、固体の場合は濾過などの所望の分離手段により分離後、所望により水洗し、得られた固体を乾燥することによってピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(1)が得られる。また、必要であれば有機溶剤(例えば、酢酸エチル、塩化メチレン等)を反応中または反応終了後に添加し、ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(1)を有機溶剤に抽出してもよく、得られた有機層を所望により水洗し、次いで有機溶剤を留出除去すれば残渣として、ピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド(1)が得られる。
【実施例】
【0030】
次に本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。下記の実施例中、H−NMRはブルカー・バイオスピン株式会社製の「AV400」を使用し、溶媒に重クロロホルムを用いて400MHzで測定した。融点は石井商店製の精密微量融点測定器を用いて、融解開始から完全に融解した温度を測定した。
【0031】
実施例1
2−メチルピリジン70.1g(0.75モル)、ベンジルクロリド114.3g(0.90モル)およびトルエン210.1gを混合し、110℃で19時間反応させた。反応終了後、反応液中に析出した固体をろ過し、得られた固体をトルエン65gで2回洗浄した。トルエン洗浄後の固体を減圧下で乾燥し、1−ベンジル−2−メチルピリジニウム=クロリド165.3gを得た(収率100.0%)。得られた1−ベンジル−2−メチルピリジニウム=クロリド165.3gに、水205.0gおよびカリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド106.3g(0.49モル)を添加し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、有機層と水層とに分液している反応液から有機層を分取し、得られた有機層を水204gで2回洗浄した。水洗後の有機層を減圧下で濃縮乾固し、1−ベンジル−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド151.4gを固体(融点38〜42℃)として得た(収率90.4%)。以下に、1−ベンジル−2−メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドのH−NMRデータを示す。
【0032】
H−NMR δ(ppm):2.82(s,3H),5.71(s,2H),7.19(m,2H),7.44(m,3H),7.86(m,2H),8.36(t,1H),8.60(d,1H).
【0033】
実施例2
ピリジン60.4g(0.76モル)、1−ブロモデカン206.1g(0.93モル)およびトルエン180.4gを混合し、70℃で1時間、110℃で17時間反応させた。反応終了後の反応液をヘプタン210gで3回洗浄し、溶媒を減圧下で留去した。得られた残渣に水380.7gを添加し、1−デシルピリジニウム=ブロミドの水溶液566.9g(純分169.9g、収率74.2%)を得た。得られた1−デシルピリジニウム=ブロミドの水溶液566.9gに、カリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド131.9g(0.60モル)およびジクロロメタン163.6gを添加し、室温で3時間反応させた。反応終了後、有機層と水層とに分液している反応液から有機層を分取し、得られた有機層を水329gで2回洗浄した。水洗後の有機層を減圧下で濃縮乾固し、1−デシルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド216.1gを固体(融点31℃)として得た(収率95.5%)。以下に、1−デシルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドのH−NMRデータを示す。
【0034】
H−NMR δ(ppm):0.86(t,3H),1.20−1.40(m,14H),2.02(m,2H),4.58(t,2H),8.07(t,2H),8.50(t,1H),8.76(d,2H).