(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203597
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/22 20060101AFI20170914BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20170914BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20170914BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
B60C9/22 C
B60C9/00 J
B60C9/20 E
B60C9/22 G
B60C9/20 G
B60C9/18 K
B60C9/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-218656(P2013-218656)
(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公開番号】特開2015-80972(P2015-80972A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100161458
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 淳郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】直井 浩一
(72)【発明者】
【氏名】林 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】千足 英之
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−094906(JP,A)
【文献】
特開2006−182125(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/117476(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚り合わされることなくタイヤ幅方向に並列に引き揃えられた複数本のスチールモノフィラメントがゴム中に埋設されてなるベルト層が、層間で互いに交差するように少なくとも2層配置されてなる交差ベルトと、該交差ベルトのタイヤ半径方向内側または外側に、タイヤ周方向に対し0〜10°の角度で補強素子が埋設されてなる少なくとも1層のベルト補強層と、を備える空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層の前記スチールモノフィラメントの打ち込み本数が26〜100本/50mmであって、前記スチールモノフィラメントのタイヤ周方向に対する角度が35°以上であり、かつ、前記ベルト補強層の前記補強素子が、有機繊維コードからなり、
前記少なくとも2層のベルト層の層間ゴムゲージをh1、前記ベルト層と前記ベルト補強層との層間ゴムゲージをh2としたとき、下記式(1)、
h1>h2 (1)
で表される関係を満足することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記少なくとも2層のベルト層の各ベルト層の厚さをS(mm)、前記スチールモノフィラメントの径をs(mm)、前記ベルト補強層の厚さをT(mm)、前記有機繊維コードの径をt(mm)、としたとき、下記式(2)、
1.24<(T+S)/(t+s)<3.63 (2)
で表される関係を満足する請求項1記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、軽量性、耐久性、および耐摩耗性が高次元で実現した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費を向上させるために、タイヤの軽量化に対する要求はますます高まってきている。従来、タイヤの軽量化を目的して、ベルトコードとして複数本のスチールフィラメントを撚り合わせた撚りコードではなく、スチールモノフィラメントを撚り合わせずにベルトコードとして用いる技術が知られており、このスチールモノフィラメントからなるベルト層を少なくとも2層、互いに交差するように配置した交差ベルトの開発がなされている。このようにベルトコードをモノフィラメント化した場合、ベルト層の薄肉化が可能になるため、タイヤの軽量化が可能になる。
【0003】
しかしながら、スチールモノフィラメントからなるベルト層を用いた場合、ベルト面内における曲げ剛性(面内曲げ剛性)の低下をもたらし、タイヤの耐久性や耐摩耗性が低下してしまうという問題を有している。そこで、特許文献1では、不足した面内曲げ剛性を補うため、タイヤ周方向に対して、80〜90°の角度で埋設されたスチールコードからなるベルト補助層を設けた乗用車用空気入りラジアルタイヤが提案されている。特許文献1によれば、ベルト補助層を設けることで、ベルトコードの座屈を抑制して、モノフィラメント化により低下する曲げに対する疲労性を補うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−254668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スチールコードからなるベルト補強層を設けると、スチールの使用量が増加し、タイヤの重量増加につながる。したがって、特許文献1に記載のタイヤでは、交差ベルトをスチールモノフィラメントからなるベルト層で構成することによるタイヤ軽量化の利点を十分に生かすことができず、タイヤの軽量化については必ずしも満足のいくものではないというのが現状である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、軽量性、耐久性、および耐摩耗性が高次元で実現した空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、ベルト層、およびベルト補助層を所定の構造とすることで、上記課題を解消することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のタイヤは、撚り合わされることなくタイヤ幅方向に並列に引き揃えられた複数本のスチールモノフィラメントがゴム中に埋設されてなるベルト層が、層間で互いに交差するように少なくとも2層配置されてなる交差ベルトと、該交差ベルトのタイヤ半径方向内側または外側に、タイヤ周方向に対し0〜10°の角度で補強素子が埋設されてなる少なくとも1層のベルト補強層と、を備える空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層の前記スチールモノフィラメントの打ち込み本数が26〜100本/50mmであって、前記スチールモノフィラメントのタイヤ周方向に対する角度が35°以上であり、かつ、前記ベルト補強層の前記補強素子が、有機繊維コードからなり、
前記少なくとも2層のベルト層の層間ゴムゲージをh1、前記ベルト層と前記ベルト補強層との層間ゴムゲージをh2としたとき、下記式(1)、
h1>h2 (1)
で表される関係を満足することを特徴とするものである。
【0009】
本発明のタイヤにおいては、前記少なくとも2層のベルト層の各ベルト層の厚さをS(mm)、前記スチールモノフィラメントの径をs(mm)、前記ベルト補強層の厚さをT(mm)、前記有機繊維コードの径をt(mm)、としたとき、下記式(2)、
1.24<(T+S)/(t+s)<3.63 (2)
で表される関係を満足することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軽量性、耐久性、および耐摩耗性が高次元で実現した空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一好適実施の形態に係るタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【
図2】本発明の一好適実施の形態に係るタイヤの交差ベルトとベルト補強層の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一好適実施の形態に係る空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。図示するタイヤ10は、接地部を形成するトレッド部1と、このトレッド部1の両側部に連続してタイヤ半径方向内方へ延びる一対のサイドウォール部2と、各サイドウォール部2の内周側に連続するビード部3と、を備えている。トレッド部1、サイドウォール部2およびビード部3は、一方のビード部3から他方のビード部3にわたってトロイド状に延びる一枚のカーカスプライからなるカーカス4により補強されている。
【0013】
本発明のタイヤ10においては、カーカス4のクラウン領域のタイヤ径方向外側に、少なくとも2層(図示例では2層)、好ましくは2層の第1ベルト層5aと第2ベルト層5bとからなるベルト5が配設されておいる。この第1ベルト層5aと第2ベルト層5bは、撚り合わされることなくタイヤ幅方向に並列に引き揃えられた複数本のスチールモノフィラメントがゴム中に埋設されてなり、第1ベルト層5aと第2ベルト層5bは、層間で互いに交差するように配置されて、交差ベルトを形成している。
【0014】
図示する本発明のタイヤ10においては、第1ベルト層5aと第2ベルト層5bのスチールモノフィラメントの打込み本数は、26〜100本/50mmである。スチールモノフィラメントの打込み本数を26本/50mm以上とすることで、十分な面内曲げ剛性を確保することができる。また、スチールモノフィラメントの打込み本数を100本/50mm以下とすることで、ベルト幅方向端部のコード端を起点としたゴム剥離が容易に隣接コード間に伝播するベルトエッジセパレーション(BES)を抑制する耐BES効果を発揮することができる。これらのバランスを良好に保つことができる好適な範囲は、40〜55本/50mmである。
【0015】
また、図示する本発明のタイヤ10においては、ベルト層(第1ベルト層5a、第2ベルト層5b)のスチールモノフィラメントの角度は、タイヤ周方向に対して35°以上である。タイヤ周方向に対してスチールモノフィラメントを高角度で配置することで、交差ベルト5に面内曲げ剛性を付与しており、タイヤ10の耐久性、耐摩耗性を確保している。好ましくは、スチールモノフィラメントのタイヤ周方向に対する角度は、45°以上である。
【0016】
さらに、本発明のタイヤ10は、交差ベルト5のタイヤ半径方向内側または外側(図示例では外側)に、タイヤ周方向に対し0〜10°の角度で補強素子が埋設された少なくとも1層のベルト補強層6が埋設されている。本発明のタイヤのベルト層(図示例では第1ベルト層5a、第2ベルト層5b)は、タイヤ周方向に対して35°以上の角度を有しているため、タイヤ周方向の引張剛性が十分ではない。そこで、ベルト補強層6にて、不足するタイヤ周方向の引張剛性を補っている。
【0017】
さらにまた、本発明のタイヤは、ベルト補強層6の補強素子は有機繊維コードからなる。補強素子として有機繊維からなるコードを用いることで、スチールを用いた場合を比較してタイヤの軽量化を図ることができる。本発明のタイヤ10においては、ベルト補強層6を構成する補強素子は、タイヤ周方向における引張剛性の確保が目的であるので、高弾性の有機繊維からなるコードを用いることが好ましい。有機繊維コードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、レーヨン、ザイロン(登録商標)(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維)、脂肪族ポリアミド(ナイロン)等の有機繊維コード等を用いることができる。
【0018】
図2は、本発明の一好適実施の形態に係るタイヤの交差ベルトとベルト補強層の部分断面図である。本発明のタイヤ10においては、少なくとも2層のベルト層の層間ゴムゲージ(図示例では第1ベルト層5a、第2ベルト層5bのゴムゲージ)をh1、ベルト層とベルト補強層との層間ゴムゲージ(図示例では第2ベルト層5bとベルト補強層6とのゴムゲージ)をh2としたとき、下記式(1)、
h1>h2 (1)
で表される関係を満足することが好ましい。
【0019】
本発明のタイヤ10は、高角度の交差ベルト5を有しているため面内曲げ剛性が高い。そのため、コーナリング時等には高い接地性を確保できる。しかし、コーナリング限界時にはタイヤ横力に耐えられず、ベルトバックリングを起こす。その際、h1のゲージがh2より薄くなると、ベルト面外曲げ剛性が低下し、ベルトバックリング曲率が大きくなる。その結果、交差ベルト5の耐久性が低下してしまう可能性がある。そこで、交差する第1ベルト層5a、第2ベルト層5b間のゴムゲージをベルト補強層6と第2ベルト層間のゴムゲージよりも大きくすることで、耐疲労性を向上させることができる。また、交差ベルト5は面内曲げ剛性が高いため、コーナリング中に発生するせん断歪みは交差ベルト層間に集中し、ベルト層とベルト補強層間のせん断歪みは小さい。そこでh2をh1より薄くすることができ、タイヤ軽量化が可能になる。
【0020】
また、本発明のタイヤ10においては、ベルト層(図示例では第1ベルト層5a、第2ベルト層5b)の厚さをS(mm)、スチールモノフィラメント7の径をs(mm)、ベルト補強層6の厚さをT(mm)、有機繊維コード8の径をt(mm)としたとき(
図2参照)、下記式(2)、
1.24<(T+S)/(t+s)<3.63 (2)
で表される関係を満足することが好ましい。ここで、T=0.5〜2.0、t=0.2m〜1.8、S=0.66〜1.2、s=0.12〜0.45である。(T+S)/(t+s)を1.25以上とすることで、層間ゲージを保ち、ベルト幅方向端部のコード端を起点としたゴム剥離が容易に隣接コード間に伝播するベルトエッジセパレーション(BES)を良好に防止することができる。一方、3.63以下とすることでゴムの使用量を低減し、耐ベルトエッジセパレーション性(以下、「耐BES性」と称する)と軽量性を両立させることができる。
【0021】
さらに、本発明のタイヤ10においては、ベルト補強層6の幅は、トレッド幅の60%以上であることが好ましい。ベルト補強層6の幅をトレッド幅の60%以上とすることで、タイヤ周方向の引張剛性を効果的に向上させることができる。好ましくは、ベルト補強層6をトレッド幅の全幅に配置する。なお、トレッド幅とは、タイヤを正規リムに装着し、正規内圧を充填し、静止した状態で平板に対し垂直に置き、正規荷重を加えたときのタイヤ接地面のタイヤ軸方向の最大幅をいう。
【0022】
さらにまた、本発明のタイヤ10においては、ベルト補強層6中の有機繊維コード8の打込み本数は20〜80本/50mmであることが好ましい。打込み本数を20本以上とすることで、タイヤ周方向の引張剛性を十分に確保することができる。一方、打込み本数を80本/50mm以下とすることで、タイヤ周方向の引張剛性と耐BES性を両立させることができる。
【0023】
また、本発明のタイヤ10においては、ベルト補強層6中の有機繊維コード8の総繊度は、500〜8000dtexとするのが好ましい。有機繊維コードの総繊度を500dtex以上とすることで、ベルト補強層6の周方向引張剛性を十分に確保することができる。一方、有機繊維コード8の総繊度は8000dtex以下が好ましく、総繊度を8000dtex以下とすることでベルト補強層6の薄肉化を図り、周方向引張剛性と軽量化とを両立させることができる。
【0024】
さらに、本発明のタイヤ10においては、交差ベルト5を構成するスチールモノフィラメント7の線径は0.12〜0.45mmであることが好ましい。スチールモノフィラメント7の線径を0.12mm以上とすることで、交差ベルト5の面内曲げ剛性を十分に確保することがでる。一方、スチールモノフィラメント7の線径を0.45mm以下とすることで、ベルト層の厚みの増加を防止することができ、ベルト層の面内曲げ剛性と軽量化とを両立させることができる。より好ましくは、0.25〜0.35mmである。
【0025】
さらに、交差ベルト5を構成するスチールモノフィラメント7、およびベルト補強層6を構成する有機繊維コード8は、型付けをされていない真直性を有するものが好ましい。真直性のコードは初期伸びがないため、外部からの入力直後から十分な剛性を得ることができるためである。
【0026】
さらにまた、本発明のタイヤ10においては、スチールモノフィラメント7同士の間隔は均等であることが好ましい。スチールフィラメント7同士の間隔を均等とすることで、ベルトトリートの製造が容易になり生産性が向上する。また、スチールフィラメント7同士の間隔に極端に狭い箇所が存在しないため、耐BESに優れている。
【0027】
また、図示する本発明のタイヤ10においては、第1ベルト層5aと第2ベルト層5bを構成するスチールモノフィラメントは、タイヤ周方向に対して対称の角度であることが好ましい。かかる構成とすることで、タイヤの生産性が向上し、また、応力を均等に分担することができるため、タイヤの耐久性の観点からも好ましい。
【0028】
本発明のタイヤ10は、カーカス4のタイヤ径方向外側に、撚り合わされることなくタイヤ幅方向に並列に引き揃えられた複数本のスチールモノフィラメントがゴム中に埋設されてなるベルト層が、層間で互いに交差するように少なくとも2層配置されてなる交差ベルト5と、交差ベルト5のタイヤ半径方向内側または外側に、タイヤ周方向に対し0〜10°の角度で補強素子が埋設されてなる少なくとも1層のベルト補強層6と、を備え、交差ベルト5を構成するベルト層(図示例では、第1ベルト層5a、および第2ベルト層5b)のスチールモノフィラメントの打ち込み本数が26〜100本/50mmであって、スチールモノフィラメントのタイヤ周方向に対して角度が35°以上であり、かつ、ベルト補強層6の補強素子が、有機繊維コードからなることのみが重要であり、その他の構造については、既知の構造を採用することができる。
【0029】
例えば、図示するように、本発明のタイヤの一対のビード部3にはそれぞれビードコア9が埋設され、カーカス4はこのビードコア9の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されている。また、トレッド部1の表面には適宜トレッドパターンが形成されており、最内層にはインナーライナー(図示せず)が形成されている。さらに、本発明のタイヤ10において、タイヤ内に充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を変えた空気、もしくは窒素等の不活性ガスを用いることができる。本発明の空気入りタイヤは、乗用車用空気入りタイヤに好適である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
<実施例1〜8、比較例1〜4>
図1に示すタイプのタイヤをタイヤサイズ:145/65R15にて作製した。交差ベルト5は2層のベルト層5a,5bからなり、ベルト層を構成するスチールフィラメントの線径、打込み本数、タイヤ周方向に対する角度は表1に示すとおりである。また、実施例1〜8、比較例1〜3はベルト補強層6を1層とし、総繊度5010dtexのアラミドコード(1670dtex/3)を用い、トレッド幅方向の全幅にわたってタイヤ周方向に対して略平行となるように配置した。比較例4はベルト補強層を無とした。第1ベルト層5a、第2ベルト層5bのゴムゲージh1、第2ベルト層5bとベルト補強層6とのゴムゲージh2、(T+S)/(t+s)は表1〜3に示すとおりである。
【0031】
<従来例>
タイヤサイズ:145/65R15にて、2層のベルト層からなる交差ベルトと、交差ベルトのタイヤ半径方向外側に1層のベルト補強層とを有する空気入りタイヤを作製した。交差ベルトは線径0.30mmのスチールフィラメントからなる1×3構造のスチールコードであり、打込み本数、タイヤ周方向に対する角度は表1に示すとおりである。また、従来例1はベルト補強層無し、従来例2はベルト補強層を1層とし、総繊度2880dtex(1440dtex/2)の脂肪族ポリアミド(ナイロン)コードを用い、トレッド幅全幅にわたって、略平行となるように配置した。第1ベルト層、第2ベルト層のゴムゲージh1、第2ベルト層とベルト補強層とのゴムゲージh2、(T+S)/(t+s)は表3に示すとおりである。
【0032】
得られた各タイヤにつき、タイヤ重量、耐ベルト疲労性、耐BES性、耐摩耗性の評価を、下記の手順に従って行った。
【0033】
<タイヤ重量>
タイヤ1本当たりの重量を測定し、従来例1のタイヤより軽量となった場合をマイナスとし、増量となった場合をプラスとした。結果を表1〜3に併記する。
【0034】
<耐ベルト疲労性>
各タイヤをJATMAで規定する正規リムに組みつけ、正規荷重の1.05倍の荷重を負荷し、100kPaの内圧を充填して、8の字走行が可能な自動操縦装置を備えた車両にて、8の字旋回テストコースを旋回加速度0.7G、時速25km/h、300ラップで走行後、タイヤを解剖して、ベルト折れの有無を評価した。各タイヤのコード折れ発生率を、従来例1のタイヤを100とした指数にて示した。この値が小さいほど耐ベルト折れ性が良好である。結果を表1〜3に併記する。
【0035】
<耐BES性>
各タイヤをJATMAで規定する正規リムに組みつけ、正規荷重の2倍の荷重を負荷し、210kPaの内圧を充填して、2万km走行させた後、タイヤを解剖して、ベルト層端部に発生している亀裂の長さ(セパレーション長さ)を測定した。各タイヤの亀裂長さを、従来例1のタイヤの亀裂長さを100とした指数にて示した。この値が小さいほど耐BES性が良好である。結果を表1〜3に併記する。
【0036】
<耐摩耗性>
各タイヤを実車に装着して、実車耐久走行(限界走行モードにて1周3.5kmの既設サーキットを20周走行)後のタイヤ残溝深さ(センターリブ溝)を測定し、従来例1のタイヤを100として指数評価した。この値が小さいほど耐摩耗性性が良好である。結果を表1〜3に併記する。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
表1〜3より、本発明の空気入りタイヤは、耐久性、耐摩耗性、および軽量性に優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0041】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス
5 ベルト(交差ベルト)
6 ベルト補強層
7 スチールモノフィラメント
8 有機繊維コード
9 ビードコア
10 空気入りタイヤ