特許第6203600号(P6203600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6203600-コンバインドサイクルプラント 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203600
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】コンバインドサイクルプラント
(51)【国際特許分類】
   F01K 23/10 20060101AFI20170914BHJP
   F02C 6/18 20060101ALI20170914BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   F01K23/10 H
   F02C6/18 B
   F01K23/10 U
   F01K23/10 X
   F01K23/10 G
   F01D17/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-219796(P2013-219796)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-81560(P2015-81560A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 建樹
(72)【発明者】
【氏名】緒方 康二
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 英二
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−161698(JP,A)
【文献】 特開2010−242673(JP,A)
【文献】 特表2013−502538(JP,A)
【文献】 特開2002−333376(JP,A)
【文献】 実開昭57−121701(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00
F01K 23/10
F02C 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、ガスタービンの排熱を用いて蒸気を生成する排熱回収ボイラと、排熱
回収ボイラで生成した蒸気を該排熱回収ボイラから蒸気系統を通じて供給する蒸気タービ
ンを有するコンバインドサイクルプラントにおいて、
前記蒸気系統は、蒸気タービンの初段入口に蒸気を導く第1の蒸気系統と、該第1の蒸気系統から分岐して蒸気タービンの初段よりも下流側の段落入口に蒸気を導く第2の蒸気系統とを有し、
前記第1の蒸気系統に設置された、初段入口に供給する蒸気の供給量を調節する第1の蒸気弁と、前記第2の蒸気系統に設置された、初段よりも下流側の段落入口に供給する蒸気の供給量を調節する第2の蒸気弁とを備え、
前記ガスタービンの効率低下によるガスタービン排熱量の増加により、前記排熱回収ボイラで生成される蒸気流量が定格の蒸気流量よりも増加して予め定めた閾値を越えた場合に、前記第1の蒸気弁の弁開度を全開に保持すると共に、第2の蒸気弁を開操作して前記第1の蒸気系統及び前記第2の蒸気系統を通じて蒸気タービンの初段入口及び初段よりも下流側の段落入口に蒸気を供給する操作信号を前記第1の蒸気弁及び第2の蒸気弁にそれぞれ出力する制御装置を備えたことを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【請求項2】
請求項1に記載のコンバインドサイクルプラントにおいて、
前記蒸気タービンは、供給される蒸気の圧力が高い高圧タービンと、供給される蒸気の圧力が低い中低圧タービンから構成されており、
前記第1の蒸気系統は排熱回収ボイラから蒸気タービンの高圧タービンの初段入口に排熱回収ボイラで発生した蒸気の一部を供給するように配設されており、
前記第2の蒸気系統は前記排熱回収ボイラから蒸気タービンの高圧タービンの初段よりも下流側の段落入口に排熱回収ボイラで発生した蒸気の他の一部を供給するように配設されていることを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【請求項3】
請求項2に記載のコンバインドサイクルプラントにおいて、
前記排熱回収ボイラで生成される蒸気流量を検出する検出手段として排熱回収ボイラで発生した蒸気の圧力を測定する圧力検出器を排熱回収ボイラから蒸気タービンに供給する前記蒸気系統に備え
前記制御装置では前記圧力検出器で測定した排熱回収ボイラで発生した蒸気の圧力の測定値に基づいて前記第1の蒸気弁及び第2の蒸気弁の開度を操作して第1の蒸気系統及び第2の蒸気系統を通じて蒸気タービンに供給する蒸気の流量を調節するように構成したことを特徴とするコンバインドサイクルプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンと蒸気タービンを備えたコンバインドサイクルプラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンと蒸気タービンを備えたコンバインドサイクルプラントの従来技術として、特開平8−246814号には、ガスタービンの排熱を利用して、ごみ焼却炉で発生した蒸気を加熱する排熱回収ボイラを備えたコンバインドサイクルプラントにおいて、排熱回収ボイラの中間と蒸気タービンの中間段落を接続する系統を配設して、ガスタービンがトリップして排熱回収ボイラで発生する蒸気温度が急激に低下した場合に、この系統に設けた排熱回収ボイラ中間出口弁を開いて蒸気タービンの中間段落に蒸気を直接導入することで、過大な熱応力を防止する技術が開示されている。
【0003】
特開2000−154704号には、ガスタービン及び蒸気タービンと、このガスタービンの排熱を利用して前記蒸気タービンに供給する蒸気を発生させる排熱回収ボイラを有するコンバインドサイクルプラントにおいて、蒸気タービンの高圧タービンの排気の一部を冷却用としてガスタービン翼に供給して冷却し、このガスタービン翼を冷却した蒸気を蒸気タービンの中圧タービンの中間段落部に回収する蒸気冷却の技術が開示されている。
【0004】
また、特開昭58−23206号公報には、蓄熱器を備えた蒸気タービンにおいて、蒸気圧力の異なる複数の蓄熱器から蒸気タービンの互いに異なる圧力段に蒸気を供給すると共に、複数の蓄熱器から供給される蒸気圧力に応じて蒸気弁を操作して蒸気タービンの高圧段部又は低圧段部に蒸気の供給先を切り換える構成にして、蓄熱器が低圧状態でも運用することを可能にした技術が開示されている。
【0005】
特開2006−161698号公報には、排熱回収ボイラで発生した蒸気を供給する蒸気タービンにおいて、主蒸気加減弁の入口側から分岐して蒸気タービンの再熱部の入口側にオーバーロード弁を介して連通させて高温高圧蒸気を導入する構成にして、主蒸気圧力を押さえながら蒸気タービンの出力を増加させることができる蒸気タービンの過負荷運転装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−246814号公報
【特許文献2】特開2000−154704号公報
【特許文献3】特開昭58−23206号公報
【特許文献4】特開2006−161698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2000−154704号公報(特許文献2)に記載されたような構成のコンバインドサイクルプラントでは、ガスタービンの排熱を用いて排熱回収ボイラが蒸気を生成するため、蒸気タービンに流入する蒸気流量が排熱回収ボイラでの交換熱量に依存する。この排熱回収ボイラの効率を一定とした場合、交換熱量はガスタービン排熱量に比例する。
【0008】
石炭火力などのコンベンショナルな火力プラントでは、ボイラに投入する石炭などの燃料の量によって蒸気流量を制御することが出来るのに対し、コンバインドサイクルプラントでは排熱回収ボイラの効率を一定とした場合、排熱回収ボイラで発生する蒸気流量を変えるためには、ガスタービンから排熱回収ボイラに供給されるガスタービン排熱量を変える、即ち、ガスタービン出力を変える必要があり、実質的に制御不能である。
【0009】
ところで、コンバインドサイクルプラントにおいては、経年劣化によりガスタービンが劣化した場合はガスタービン効率が低下するため、同じガスタービン出力に対して径年劣化したガスタービンから排熱回収ボイラに排出されるガスタービン排熱量が増加する。
【0010】
ガスタービンの経年劣化に起因したガスタービンの効率低下によりガスタービンから排熱回収ボイラに排出されるガスタービン排熱量が増加し、排熱回収ボイラでの熱交換熱量の増加により発生する蒸気流量が増加するが、この排熱回収ボイラで発生する蒸気流量の増加によって蒸気タービン内部の差圧(入口圧力と出口圧力(圧力一定)の圧力差)も増加するが、蒸気タービン出口圧力は圧力一定なので蒸気タービン入口圧力が増加する、即ち、排熱回収ボイラ内部圧力が増加することになる。
【0011】
排熱回収ボイラ内部においては、飽和蒸気とガスタービン排気ガスとの熱交換を行っているが、蒸気圧力の増加に伴い飽和蒸気の温度が増加し、ガスタービン排気ガスとの温度差が小さくなる。即ち、排熱回収ボイラの効率が低下する。
【0012】
この結果、コンバインドサイクルプラントを構成するガスタービンの経年劣化に起因したガスタービン排熱量の増加割合に対して、排熱回収ボイラでの蒸気流量の増加割合は小さくなってしまうという課題がある。
【0013】
本発明の目的は、ガスタービンの経年劣化によりガスタービンの効率が低下してガスタービン排熱量が増加した場合でも、排熱回収ボイラの効率を下げずに排熱回収ボイラで生成する蒸気流量を増加させて、プラント出力が低下する割合を抑制したコンバインドサイクルプラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のコンバインドサイクルプラントは、ガスタービンと、ガスタービンの排熱を用いて蒸気を生成する排熱回収ボイラと、排熱回収ボイラで生成した蒸気を該排熱回収ボイラから蒸気系統を通じて供給する蒸気タービンを有するコンバインドサイクルプラントにおいて、前記蒸気系統は、蒸気タービンの初段入口に蒸気を導く第1の蒸気系統と、該第1の蒸気系統から分岐して蒸気タービンの初段よりも下流側の段落入口に蒸気を導く第2の蒸気系統とを有し、前記第1の蒸気系統に設置された、初段入口に供給する蒸気の供給量を調節する第1の蒸気弁と、前記第2の蒸気系統に設置された、初段よりも下流側の段落入口に供給する蒸気の供給量を調節する第2の蒸気弁とを備え、前記ガスタービンの効率低下によるガスタービン排熱量の増加により、前記排熱回収ボイラで生成される蒸気流量が定格の蒸気流量よりも増加して予め定めた閾値を越えた場合に、前記第1の蒸気弁の弁開度を全開に保持すると共に、第2の蒸気弁を開操作して前記第1の蒸気系統及び前記第2の蒸気系統を通じて蒸気タービンの初段入口及び初段よりも下流側の段落入口に蒸気を供給する操作信号を前記第1の蒸気弁及び第2の蒸気弁にそれぞれ出力する制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガスタービンの経年劣化によりガスタービンの効率が低下してガスタービン排熱量が増加した場合でも、排熱回収ボイラの効率を下げずに排熱回収ボイラで生成する蒸気流量を増加させて、プラント出力が低下する割合を抑制したコンバインドサイクルプラントが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例であるガスタービンと蒸気タービンを備えたコンバインドサイクルプラントの概略構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例であるガスタービンと蒸気タービンを備えたコンバインドサイクルプラントについて、図1を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例であるガスタービンと蒸気タービンを備えたコンバインドサイクルプラントの概略構成を示す系統図である。
【0019】
図1に示した本実施例のコンバインドサイクルプラントは、ガスタービンと、ガスタービンの排熱を用いて蒸気を生成する排熱回収ボイラ1と、排熱回収ボイラ1で生成した蒸気を該排熱回収ボイラ1から蒸気系統を通じて供給する蒸気タービンとから構成されている。
【0020】
図1に示したように、本実施例のコンバインドサイクルプラントを構成するガスタービンは、空気を圧縮して加圧した燃焼用空気にする圧縮機61と、圧縮機61で加圧した燃焼用空気と燃料を混合して燃焼させ、高温の燃焼ガスを発生する燃焼器63と、燃焼器63で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービン62と、このタービン62の駆動によって回転され、発電する発電機65から構成されている。
【0021】
このタービン62を駆動して該タービン62から排出された排ガスを熱源として、蒸気を発生する排熱回収ボイラ1が設置されており、この排熱回収ボイラ1の内部にタービン62の排ガスと熱交換して過熱蒸気を発生させる過熱器1aと、タービン62の排ガスと熱交換して再熱蒸気を発生させる再熱器1bがそれぞれ備えられている。
【0022】
本実施例のコンバインドサイクルプラントを構成する蒸気タービンは、高圧タービン3と、中圧タービン6と、低圧タービン9から構成されており、更に、これらの高圧タービン3、中圧タービン6、低圧タービン9で駆動されて発電する発電機13と、低圧タービン9から排出された蒸気を冷却して復水にする復水器11と、復水器11の復水を排熱回収ボイラ1に供給する復水ポンプ14が備えられている。
【0023】
そして本実施例のコンバインドサイクルプラントにおいては、排熱回収ボイラ1の過熱器1aで発生した高圧の過熱蒸気は、排熱回収ボイラ1の過熱器1aから蒸気系統2を通じて蒸気タービンの高圧タービン3に供給され、高圧タービン3を駆動する。
【0024】
排熱回収ボイラ1の再熱器1bで再熱され、前記過熱蒸気よりも低圧の再熱蒸気は、排熱回収ボイラ1の再熱器1bから蒸気系統5を通じて蒸気タービンの中圧タービン6に供給され、中圧タービン6を駆動する。
【0025】
中圧タービン6を駆動した蒸気は、中圧タービン6から蒸気系統7を通じて蒸気タービンの低圧タービン9に供給され、低圧タービン9を駆動する。
【0026】
低圧タービン9を駆動した蒸気は、低圧タービン9から排出されて蒸気系統10を通じて蒸気タービンの復水器11に供給され、この復水器11で冷却して復水となる。
【0027】
そして、復水器11の復水は、復水ポンプ14によって排熱回収ボイラ1に供給されるように構成されている。
【0028】
排熱回収ボイラ1の過熱器1aで発生した高圧の過熱蒸気を蒸気タービンの高圧タービン3に供給する前記蒸気系統2は、この蒸気系統2の途中で第1の蒸気系統21と第2の蒸気系統22に分岐して高圧タービン3に接続している。
【0029】
分岐した第1の蒸気系統21は、排熱回収ボイラ1の過熱器1aで発生した高圧の過熱蒸気の一部を、蒸気タービンを構成する高圧タービン3の初段入口に導くように配設されている。
【0030】
また、分岐した第2の蒸気系統22は、排熱回収ボイラ1の過熱器1aで発生した高圧の過熱蒸気の他の一部を、蒸気タービンを構成する高圧タービン3の前記初段よりも下流側の段落入口(段落として1〜3段程度下流側の段落入口)に導くように配設されている。
【0031】
この第1の蒸気系統21には蒸気の流量を調節する第1蒸気弁31が設置され、第2の蒸気系統22には蒸気の蒸気流量を調節する第2蒸気弁32がそれぞれ設置されている。
【0032】
更に、排熱回収ボイラ1の過熱器1aで発生した過熱蒸気の蒸気流量の値に基づいて、第1の蒸気系統21に設けた第1蒸気弁31の弁開度を操作して高圧タービン3の初段入口に供給する過熱蒸気の一部の蒸気流量を調節すると共に、第2の蒸気系統22に設けた第2蒸気弁32の弁開度を操作して高圧タービン3の前記初段よりも下流側の段落入口に供給する過熱蒸気の他の一部の蒸気流量を調節する制御装置50が設置されている。
【0033】
前述したように、ガスタービンの経年劣化に起因したガスタービンの効率低下によりガスタービンから排熱回収ボイラ1に排出されるガスタービン排熱量が増加し、排熱回収ボイラ1での熱交換熱量の増加により排熱回収ボイラ1で発生する蒸気流量が増加するので、前記制御装置50では、排熱回収ボイラ1の過熱器1aで発生した過熱蒸気の蒸気流量の増加値に基づいて、第1蒸気弁31の弁開度及び第2蒸気弁32の弁開度を操作して高圧タービン3の初段及び前記初段よりも下流側の段落入口に供給する蒸気流量をそれぞれ調節するように構成したものである。
【0034】
そこで、ガスタービンの経年劣化に起因して排熱回収ボイラ1で発生する蒸気流量の増加を検出するために、排熱回収ボイラ1に設置した過熱器1aで発生した過熱蒸気の蒸気流量を検出する検出手段として、過熱器1aの出口側に配設した蒸気系統2に過熱蒸気の蒸気流量に対応する蒸気圧力を検出する圧力検出器41を設置している。
【0035】
この圧力検出器41によって、蒸気系統2を流下する排熱回収ボイラ1の過熱器1aで発生した過熱蒸気の蒸気流量に対応した蒸気圧力を検出して制御装置50に入力する。
【0036】
前記制御装置50には、ガスタービンの経年劣化に応じて排熱回収ボイラ1で発生する蒸気流量の増加量に対応する閾値として、第1蒸気弁31の弁開度が全開の状態で第2蒸気弁32の弁開度を全開となるように操作する第1の閾値71と、第1蒸気弁31の弁開度が全開の状態で第2蒸気弁32の弁開度を所定の開度を保持するように操作する第2の閾値72をそれぞれ設定している(第1の閾値71>第2の閾値72)。
【0037】
そして、圧力検出器41で検出された過熱器1aで発生した過熱蒸気の蒸気流量に対応する蒸気圧力の検出値の増加状況に基づいて、制御装置50に設置した第1の閾値71として設定した第1圧力設定値、及び第2の閾値72として設定した第2圧力設定値とそれぞれ比較し、制御装置50から操作信号を第1の蒸気系統21に設けた第1蒸気弁31に出力して第1蒸気弁31の弁開度を調節すると共に、操作信号を第2の蒸気系統22に設けた第2蒸気弁32に出力して第2蒸気弁32の弁開度を調節する。
【0038】
即ち、前記制御装置50においては、ガスタービンの経年劣化に起因して排熱回収ボイラ1で発生する蒸気流量の増加に対応して、圧力検出器41で検出した蒸気圧力が定格の蒸気流量に対応する蒸気圧力よりも増加して、第1の閾値71である第1蒸気圧力値(例えば、定格時の蒸気圧力値よりも約2%増加した蒸気圧力値)を越えた場合に、前記制御装置50から操作信号を第1の蒸気系統21に設けた第1蒸気弁31に出力して第1蒸気弁31の弁開度を全開に保持し、第1蒸気系統21を通じて高圧タービン3の初段入口に供給する過熱蒸気の一部の蒸気流量を維持する。
【0039】
同時に、前記制御装置50から操作信号を第2蒸気系統22に設けた第2蒸気弁32に出力して第2蒸気弁32の弁開度を開操作し、第2蒸気系統22を通じて高圧タービン3の初段よりも下流側の段落(段落として1〜3段程度下流側の段落入口)の段落入口から高圧タービン3に蒸気を供給するように第2蒸気弁32の弁開度を調節する。
【0040】
この結果、本実施例のコンバインドサイクルプラントでは、ガスタービンの経年劣化によりガスタービンの効率が低下してガスタービン排熱量が増加した場合でも、第2蒸気系統22を通じて高圧タービン3の前記初段よりも下流側の段落の段落入口から供給する蒸気流量を調節することによって、排熱回収ボイラの効率を下げずに排熱回収ボイラで生成する蒸気流量を増加させて、プラント出力が低下する割合を抑制したコンバインドサイクルプラントが実現できる。
【0041】
上記したように前記制御装置50による第1蒸気弁31の弁開度の操作によって高圧タービン3の初段入口に供給する蒸気の蒸気流量を維持し、第2蒸気弁32の弁開度の操作によって高圧タービン3の初段よりも下流側の段落入口に供給する蒸気の蒸気流量を調節する制御を適用したことによって、圧力検出器41で検出した蒸気圧力の検出信号が、第1の閾値71として設定した第1圧力設定値(例えば、定格時の蒸気圧力値よりも約2%増加した蒸気圧力値)の蒸気圧力値から低下して、第2の閾値72である第2圧力設定値の蒸気圧力値(例えば、定格時の蒸気圧力値よりも約1%増加した蒸気圧力値)よりも高い蒸気圧力値(第1の閾値71>第2の閾値72)に到達した場合に、前記制御装置50から操作信号を第1の蒸気系統21に設けた第1蒸気弁31に出力して第1蒸気弁31の弁開度を全開に保持し、第1蒸気系統21を通じて高圧タービン3の初段入口に供給する蒸気の蒸気流量を維持する。
【0042】
同時に、前記制御装置50から操作信号を第2蒸気系統22に設けた第2蒸気弁32に出力して第2蒸気弁32の弁開度を開操作して所定の開度に保持し、第2蒸気系統22を通じて高圧タービン3の前記初段よりも下流側の段落(段落として1〜3段程度下流側の段落入口)の段落入口に供給する蒸気の蒸気流量が予定の流量を維持するように第2蒸気弁32の弁開度を調節する。
【0043】
この結果、本実施例のコンバインドサイクルプラントでは、ガスタービンの経年劣化によりガスタービンの効率が低下してガスタービン排熱量が増加した場合でも、第2蒸気系統22を通じて高圧タービン3の前記初段よりも下流側の段落の段落入口から供給する蒸気流量が予定の流量を維持するように調節することによって、排熱回収ボイラの効率を下げずに排熱回収ボイラで生成する蒸気流量を増加させて、プラント出力が低下する割合を抑制したコンバインドサイクルプラントが実現できる。
【0044】
一般的に、蒸気タービンは、高圧タービン3、中圧タービン6、及び低圧タービン9の三セクションで構成されるが、本実施例のコンバインドサイクルプラントでは、蒸気タービンの形式、構成は問わない。
【0045】
コンバインドサイクルプラントでは、一般的に、ガスタービンの経年劣化による排熱増加量は数%オーダであるのに対し、蒸気タービンは高圧タービン3、中圧タービン、低圧タービン9の合計20〜30段程度で設計されることが多い。
【0046】
そこで、本実施例のコンバインドサイクルプラントにおいては、排熱回収ボイラ1で発生した蒸気を高圧タービン3に導入する第1の蒸気系統21と第2の蒸気系統22が該高圧タービン3に接続している両者の間の距離は、高圧タービン3の内部で段落として1〜3段程度であり、よって、第1の蒸気系統21と共に第2の蒸気系統22も高圧タービン3に配設されることになる。
【0047】
蒸気タービンは一般的に入口圧力が高いほどランキンサイクル上の理論熱効率が良くなるが、蒸気タービンの入口圧力が高すぎると排熱回収ボイラ1の効率低下によって蒸気流量そのものが減ってしまい、蒸気流量×蒸気タービン効率=蒸気タービン出力は低下することになる。
【0048】
コンバインドサイクルプラントを構成する蒸気タービン及び排熱回収ボイラはコスト等とのバランスを考慮して適切に設計されているため、本実施例のコンバインドサイクルプラントでは、そのバランスが崩れることを防ぐように構成している。
【0049】
本実施例のコンバインドサイクルプラントでは、排熱回収ボイラ1で発生する蒸気を通常は第1の蒸気系統21を通じて高圧タービン3の初段入口に供給して運用するが、ガスタービン排熱量が増加することで蒸気流量が増加し、蒸気タービン入口の圧力が増加して排熱回収ボイラ内部の蒸気圧力が増加した場合は、第1の蒸気系統21を通じて排熱回収ボイラ1で発生する蒸気の一部を高圧タービン3の初段に供給することに加えて、第2の蒸気系統22を通じて排熱回収ボイラ1で発生する蒸気の他の一部を高圧タービン3の初段よりも下流側の段落入口に供給するようにすることで、蒸気が通過する蒸気タービン内部段落を調整して蒸気タービン入口圧力及び排熱回収ボイラ内部圧力を調整することが可能となる。
【0050】
この結果、本実施例のコンバインドサイクルプラントでは、ガスタービンの経年劣化によりガスタービンの効率が低下してガスタービン排熱量が増加した場合でも、第2蒸気系統22を通じて高圧タービン3の前記初段よりも下流側の段落の段落入口から供給する蒸気流量が予定の流量を維持するように調節することによって、排熱回収ボイラの効率を下げずに排熱回収ボイラで生成する蒸気流量を増加させて、プラント出力が低下する割合を抑制したコンバインドサイクルプラントが実現できる。
【0051】
以上説明したように、本実施例によれば、ガスタービンの経年劣化によりガスタービンの効率が低下してガスタービン排熱量が増加した場合でも、排熱回収ボイラの効率を下げずに排熱回収ボイラで生成する蒸気流量を増加させて、プラント出力が低下する割合を抑制したコンバインドサイクルプラントが実現できる。
【符号の説明】
【0052】
1:排熱回収ボイラ、2:蒸気系統、3:高圧タービン、4、5、10:蒸気系統、6:中圧タービン、9:低圧タービン、11:復水器、12:タービンロータ、13:発電機、14:復水ポンプ、21:第1の蒸気系統、22:第2の蒸気系統、31:第1蒸気弁、32:第2蒸気弁、50:制御装置、61:圧縮機、62:ガスタービン、63:燃焼器、65:発電機、71:第1の閾値、72:第2の閾値。
図1