(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザユニットと、前記レーザユニットから発せられたレーザ光束をコリメート光束に変換するコリメートレンズと、前記コリメート光束を位相変調してホログラム画像を生成する位相変調アレイと、が設けられた画像処理装置において、
第1および第2の位置決めブロックのそれぞれに、前記レーザユニットが位置決めされて固定されており、
前記位置決めブロックのそれぞれは、前記レーザユニットから発せられたレーザ光束が通過するための光通路を画成する箱状であって、前記コリメートレンズは、前記光通路の内部で光軸方向へ位置が調整されて固定され、変換されたコリメート光束の光軸方向に垂直な断面を長方形とするものであり、
基準ベース上に形成された位置決め基準面に前記第1の位置決めブロックが設置されて固定され、前記第1の位置決めブロックの上面に位置決め基準面が形成されて、その上に前記第2の位置決めブロックが設置されて固定されており、
それぞれの位置決めブロックからのコリメート光束が前記位相変調アレイに照射される長方形の領域が、互いに重複せず、かつ長辺どうしが前記位置決めブロックの積層方向に隣接する所定の位置関係となることを特徴とする画像処理装置。
前記光通路の互いに対向する壁面に、保持摺動平面が間隔を空けて対向しており、前記コリメートレンズが、対向する前記保持摺動平面に挟まれた状態で、光軸に沿う方向へ位置調整されて固定されている請求項1記載の画像処理装置。
前記基準ベースと前記第1の位置決めブロックとの間に調整スペーサが介在し、前記第1の位置決めブロックは、高さが調整された後に固定され、前記第1の位置決めブロックと前記第2の位置決めブロックとの間に調整スペーサが介在し、前記第2の位置決めブロックは、高さが調整された後に固定されている請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。
前記(a)の工程では、前記レーザユニットの発光点の位置を調整し、その後に、前記レーザユニットから発せられるレーザ光束の傾きを調整して、前記レーザユニットを前記位置決めブロックに固定する請求項5記載の画像処理装置の組立方法。
前記(c)の工程では、前記基準ベースと前記第1の位置決めブロックとの間に調整スペーサを介在させて、前記第1の位置決めブロックの高さを調整し、前記第1の位置決めブロックと前記第2の位置決めブロックとの間に調整スペーサを介在させて、前記第2の位置決めブロックの高さを調整する請求項5または6記載の画像処理装置の組立方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すように、ホログラム素子を使用した光学装置では、コリメートレンズにより、常に高精度な平行光束を送り出すことが必要である。しかし、コリメートレンズを常に光軸方向へ移動させて補正する方法では、平行光束検出手段や、コリメートレンズを移動させる可動機構が必要になり、装置が複雑化する。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、レーザ光源とコリメートレンズとの相対位置を常に高精度に保てるようにして、平行光束を送り出すことができる画像処理装置およびその組立方法を提供することを目的としている。
【0007】
また、本発明は、複数のレーザ光源を使用した場合に、個々のレーザ光源からのレーザ光束を高精度な平行光束に変換して送出できる画像処理装置およびその組立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、レーザユニットと、前記レーザユニットから発せられたレーザ光束をコリメート光束に変換するコリメートレンズと、前記コリメート光束を位相変調してホログラム画像を生成する位相変調アレイと、が設けられた画像処理装置において、
第1および第2の位置決めブロックのそれぞれに、前記レーザユニットが位置決めされて固定されており、
前記位置決めブロックのそれぞれ
は、前記レーザユニットから発せられ
たレーザ光
束が通過する
ための光通路
を画成する箱状であって、前記コリメートレンズ
は、前記光通路の内部で光軸方向へ位置が調整されて固定され
、変換されたコリメート光束の光軸方向に垂直な断面を長方形とするものであり、
基準ベース上に形成された位置決め基準面に前記第1の位置決めブロックが設置されて固定され、前記第1の位置決めブロックの上面に位置決め基準面が形成されて、その上に前記第2の位置決めブロックが設置されて固定されており、
それぞれの位置決めブロック
からのコリメート光束が前記位相変調アレイに照射される
長方形の領域が、互いに重複せず、かつ長辺どうしが前記位置決めブロックの積層方向に隣接する所定の位置関係となることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の画像処理装置は、
個々の位置決めブロックに、レーザユニットとコリメートレンズとが、その相対位置を高精度に決めた状態で固定されているので、レーザユニットから発せられたレーザ光束を常に高精度な平行光束として送り出すことができる。そのため、精度のよいホログラム画像を生成しやすくなる。また、コリメートレンズよりも前方の光路上において調整が必要とされる箇所を最少限にできるようになる。
さらに、複数の位置決めブロックが積み上げられて組み立てられる構成であるため、それぞれの位置決めブロックから送り出される複数の平行光束の相対位置を高精度に決めることができる。
【0010】
本発明は、前記光通路の互いに対向する壁面に、保持摺動平面が間隔を空けて対向しており、前記コリメートレンズが、対向する前記保持摺動平面に挟まれた状態で、光軸に沿う方向へ位置調整されて固定されているものが好ましい。
【0011】
保持摺動平面にコリメートレンズを挟むことで、コリメートレンズを、そのレンズ光軸の倒れを小さくした状態で、光軸方向へ位置調整して固定することが可能になる。
【0012】
本発明は、前記レーザユニットを、前記位置決めブロックの取付け面に固定する第1の位置決め部材と第2の位置決め部材とが設けられており、
前記第1の位置決め部材は、前記取付け面に当接して、前記位置決めブロックに設定されている規定光軸と直交する面内での位置が調整された後に前記取付け面に固定され、
前記レーザユニットは前記第2の位置決め部材に保持されており、前記第2の位置決め部材が、前記第1の位置決め部材に対してレーザ光
束の照射方向の傾きが調整された後に、前記第1の位置決め部材に固定されているものとして構成される。
【0015】
例えば、前記基準ベースと前記第1の位置決めブロックとの間に調整スペーサが介在し、前記第1の位置決めブロックは、高さが調整された後に固定され、前記第1の位置決めブロックと前記第2の位置決めブロックとの間に調整スペーサが介在し、前記第2の位置決めブロックは、高さが調整された後に固定されているものとなる。
【0016】
また、本発明は、レーザユニットと、前記レーザユニットから発せられたレーザ光束をコリメート光束に変換するコリメートレンズ
と、をそれぞれ備えた第1および第2の位置決めブロックと、前記コリメート光束を位相変調してホログラム画像を生成する位相変調アレイと、が設けられ
、前記第1および第2の位置決めブロックはそれぞれ、前記レーザユニットから発せられたレーザ光束が通過するための光通路を画成する箱状であり、前記コリメートレンズは、変換されたコリメート光束の光軸方向に垂直な断面を長方形とするものである画像処理装置の組立方法において、
(a)
前記第1および第2の位置決めブロックに対してそれぞれ、前記レーザユニットを、位置を調整して固定する工程と、
(b)それぞれの前記位置決めブロックの内部に形成された
前記光通路内で、前記コリメートレンズを、光軸方向へ位置調整してから固定する工程と、
(c)前記第1の位置決めブロックを、基準ベースの位置決め基準面に設置する工程、ならびに前記第1の位置決めブロックの上面に形成された位置決め基準面に、前記第2の位置決めブロックを設置する工程と、
(d)それぞれの前記位置決めブロック
からのコリメート光束が前記位相変調アレイ
に照射される長方形の領域が、互いに重複せず、かつ長辺どうしが前記位置決めブロックの積層方向に隣接する所定の位置関係となるように、それぞれの前記位置決めブロックの対応する位置決め基準面上での向きを調整する工程と、
(e)前記第1の位置決めブロックと前記第2の位置決めブロックを、それぞれ固定する工程と、
を有することを特徴とするものである。
本発明の画像処理装置の組立方法では、個々の位置決めブロックにおいて前記レーザユニットとコリメートレンズとの相対位置が決められているため、複数の位置決めブロックを重ねたときに、個々のレーザユニットとコリメートレンズとの相対位置を調整することが不要になり、複数の位置決めブロックの向きなどを個別に調整するだけで、複数の平行光束の相対位置を高精度に決めて送り出すことができる。
【0017】
例えば、前記(a)の工程では、前記レーザユニットの発光点の位置を調整し、その後に、前記レーザユニットから発せられるレーザ光束の傾きを調整して、前記レーザユニットを前記位置決めブロックに固定する。
【0020】
前記(c)の工程では、前記基準ベースと前記第1の位置決めブロックとの間に調整スペーサを介在させて、前記第1の位置決めブロックの高さを調整し、前記第1の位置決めブロックと前記第2の位置決めブロックとの間に調整スペーサを介在させて、前記第2の位置決めブロックの高さを調整することが好ましい。
【0021】
上記調整スペーサを使用することで、それぞれの平行光束の上下の高さ位置を高精度に決めることができる。
【0022】
なお、本発明は、位置決めブロックが2個積み重ねられているものであってもよいし、3個以上の位置決めブロックが重ねられているものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の画像処理装置は、レーザユニットとコリメートレンズとの相対位置が、個々の位置決めブロック内で高精度に決められているため、位置決めブロックから常に高精度な平行光束を送り出すことができる。
【0024】
また、複数のレーザユニットを使用する場合に、個々のレーザユニットと対応するコリメートレンズとの相対位置が高精度に決められた後に、個々の位置決めブロックが重ねられるため、個々の位置決めブロックの向きを変えるだけで、それぞれの位置決めブロックから送り出される平行光束の相対位置関係を高精度に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(車載構造)
図1に示すように、本発明の実施の形態の画像処理装置10は、自動車1の車室内前方のダッシュボード2の内部に埋設されていわゆるヘッドアップディスプレイとして使用される。
【0027】
画像処理装置10からウインドシールド3の表示領域3aに、
図2に示す表示画像70が投影される。表示領域3aは半反射面として機能するため、表示領域3aに投影された表示画像70は、表示領域3aにおいて運転者5に向けて反射されるとともに、ウインドシールド3の前方に虚像6が結像する。ウインドシールド3の前方の虚像6を目視することで、運転者5には、ステアリングホイール4の上方の前方に各種の情報が表示されているように見える。
【0028】
(画像処理装置10の全体構造)
図3に示すように、画像処理装置10のケースは、下部ケース11と上部ケース12とに分離されており、ケースの内部に光学ユニット20が収納されている。光学ユニット20は光学ベース21を有しており、光学ベース21は、下部ケース11の内部で、エラストマーや金属ばねなどの弾性部材を介して支持されている。例えば、光学ベース21の下面から突出する支持突部が下部ケース11の底部に開口する支持穴に挿入され、前記支持突部と前記支持穴との隙間がエラストマーで埋められている。
【0029】
下部ケース11は、車室内のダッシュボード2の内部に固定されるが、光学ベース21が弾性部材を介して支持されているため、車体振動が光学ユニット20に直接に影響を与えるのを防止できる。下部ケース11と上部ケース12とが合成樹脂材料で形成され、光学ベース21がアルミニウムなどの金属からダイキャスト成形法などで形成されていると、下部ケース11と光学ベース21との熱膨張係数の相違によって光学ベース21に大きな応力が作用することがある。しかし、前記弾性部材による支持構造を採用することで、下部ケース11から光学ベース21に過大な熱応力が作用するのを防止できる。
【0030】
光学ユニット20が内部に収納された状態で、下部ケース11と上部ケース12は、下部ケース11に一体に形成された位置決めピン15による凹凸嵌合で互いに位置決めされる。下部ケース11の複数か所に雌ねじ穴16が形成されており、上部ケース12に挿通された固定ねじが雌ねじ穴16に螺着されて、下部ケース11と上部ケース12とが互いに固定される。
【0031】
上部ケース12に、投影窓13が開口している。この投影窓13がダッシュボード2の上面に露出して配置され、投影窓13からウインドシールド3の表示領域3aに表示画像70が投影される。投影窓13には透光性のカバー板14が装着されている。カバー板14によってケース内部に塵埃が侵入するのが防止されている。投影窓13からケース内部に外光が直接入り込まないように、カバー板14は、表示領域3aに投影されるホログラム画像の表示光以外の波長の光の透過を抑制する光学フィルターで構成されることが好ましい。
【0032】
図3と
図4に示すように、光学ユニット20では光学ベース21上に各種光学部品が実装されている。
図4に示すように、光学部品の構成により、光学ユニット20は、位相変調部20Aとホログラム結像部20Bならびに投影部20Cとに区分される。
【0033】
(位相変調部20Aの構造)
図5と
図6に示すように、位相変調部20Aには、基準ベース22が設けられており、この基準ベース22が、光学ベース21の上にねじ止めにより固定されている。
【0034】
基準ベース22上に、第1の発光部23Aと第2の発光部23Bとが重ねて配置されている。第1の発光部23Aは第1の位置決めブロック24Aを有し、第2の発光部23Bは第2の位置決めブロック24Bを有している。
【0035】
図6に示すように、基準ベース22の上面に位置決め基準面22Aが形成されている。位置決め基準面22Aの4か所に、浅い凹部22Dが形成されており、それぞれの凹部22Dの底部に雌ねじ穴22Eが形成されている。凹部22Dの内部に調整スペーサ61が設置される。第1の位置決めブロック24Aは、調整スペーサ61の上に設置され、
図5に示すように、複数の固定ねじ25Aが第1の位置決めブロック24Aに挿通されて雌ねじ穴22Eに螺着されている。
【0036】
調整スペーサ61は厚さの異なるものが複数種類用意されており、いずれかの厚さのものが選択されて使用され、第1の位置決めブロック24Aの垂直方向(ii)での高さが決められる。第1の位置決めブロック24Aの高さ調整の際に調整スペーサ61が不要な場合には、第1の位置決めブロック24Aは、位置決め基準面22Aに直接固定される。
【0037】
図6に示すように、第1の位置決めブロック24Aの上面に位置決め基準面24Cが形成されている。位置決め基準面24Cの4か所に浅い凹部24Dが形成され、凹部24Dの底部に雌ねじ穴24Eが形成されている。凹部24D内に調整スペーサ62が設置される。第2の位置決めブロック24Bは、調整スペーサ62の上に設置され、第2の位置決めブロック24Bに挿入された複数の固定ねじ25Bが雌ねじ穴24Eに螺着される。厚さの相違する複数種類の調整スペーサ62の中から最適なものを選択することで、第2の位置決めブロック24Bの垂直方向(ii)での高さを調整することができる。調整スペーサ62が不要な場合には、第2の位置決めブロック24Bが、位置決め基準面24Cに直接に固定される。
【0038】
図6に、第1の位置決めブロック24Aの内部構造が示され、
図8に、第2の位置決めブロック24Bの内部構造が示されている。
【0039】
図6に示すように、第1の位置決めブロック24Aには、内部に光通路26Aが形成されている。光通路26Aの閉鎖側端部(
図6の図示左側の端部)に、第1のレーザ光源である第1のレーザユニット27Aが取り付けられている。第1のレーザユニット27Aは、金属製のケースの内部に半導体レーザチップが収納されて構成されている。光通路26Aの内部にはコリメートレンズ28Aが固定されている。
【0040】
図8に示すように、第2の発光部23Bに設けられた第2の位置決めブロック24Bの内部にも光通路26Bが形成されており、その閉鎖端部に、第2のレーザ光源である第2のレーザユニット27Bが装備されている。光通路26Bの内部にコリメートレンズ28Bが固定されている。
【0041】
図8と
図9では、説明の便宜上、第1のレーザユニット27Aから発せられるレーザ光束と、第2のレーザユニット27Bから発せられるレーザ光束を、同じ符号B0で示している。レーザ光束B0は発散光である。
図9に示すように、レーザ光束B0の断面形状は楕円形または長円形であり、長軸は基準ベース22の上面と平行な水平方向(i)に向けられ、短軸が基準ベース22の上面に垂直な垂直方向(ii)に向けられている。
【0042】
図9に示すように、コリメートレンズ28A,28Bの有効径(有効領域)の形状は長方形であり、長方形の長辺が、レーザ光束B0の断面の長軸方向と同じ水平方向(i)に向けられている。第1のレーザユニット27Aから発せられるレーザ光束B0がコリメートレンズ28Aを通過すると、断面が長方形のコリメート光束(平行光束)B1に変換される。同様に、第2のレーザユニット27Bから発せられるレーザ光束B0がコリメートレンズ28Bを通過すると、断面が長方形のコリメート光束B1に変換される。
【0043】
図6に示すように、位置決めブロック24Aの光通路26Aの開口端は透光カバー29Aで塞がれている。同様に、
図8に示すように、第2の位置決めブロック24Bの光通路26Bの開口端が透光カバー29Bで塞がれている。
【0044】
図9に示すように、レーザユニット27A,27Bから発せられるレーザ光束B0には、P波成分の光の偏光方向が主に短軸方向に向けられているものがある。この場合には、透光カバー29Bが1/2波長板で構成されることが好ましい。1/2波長板が使用されると、偏光方向が90度変化させられ、コリメート光束B1では、偏光方向が水平方向(i)となるP波成分が多くなる。その結果、
図2に示すように、表示領域3aでは、P波成分の偏光方向がウインドシールド3に対して水平方向(i)に向けられるようになり、表示領域3aで、表示画像70が半反射しやすくなる。
【0045】
図3と
図4に示すように、位相変調部20Aには、第1のレーザユニット27Aと第2のレーザユニット27Bから発せられる熱を放熱する放熱冷却部37が設けられている。
【0046】
第1の発光部23Aのレーザユニット27Aと第2の発光部23Bのレーザユニット27Bとで、発せられるレーザ光の波長が相違している。実施の形態の画像処理装置10では、第1の発光部23Aから発せられるコリメート光束B1の波長が642nmで赤色系であり、第2の発光部23Bから発せられるコリメート光束B1の波長が515nmであり緑色系である。
【0047】
そこで、以下においては、第1の発光部23Aから得られるコリメート光束を符号B1rで説明し、第2の発光部23Bから得られるコリメート光束を符号B1gで説明する。
【0048】
図5に示すように、基準ベース22には、位置決め保持部22Bが一体に形成されており、位置決め保持部22Bに形成された保持枠部22Cの内部に位相変調アレイ31が保持されている。同じ基準ベース22に、第1の発光部23Aと第2の発光部23Bとを位置決めする位置決め基準面22Aと、保持枠部22Cとが一体に形成されているため、第1の発光部23Aならびに第2の発光部23Bと、位相変調アレイ31との相対位置を、高精度に決めることができる。よって、第1の発光部23Aと第2の発光部23Bのそれぞれから発せられるコリメート光束B1r,B1gを位相変調アレイ31の光学面31aに対して最適な入射角度で入射させることができる。
【0049】
位相変調アレイ31は、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)である。LCOSは、液晶層とアルミニウムなどの電極層とを有する反射型パネルである。LCOSは、液晶層に電界を与える電極が規則的に並んで複数のピクセルが構成されている。それぞれの電極に与えられる電界強度の変化により、液晶層内の結晶の層の厚さ方向への倒れ角度が変化し、反射されるレーザ光はピクセル毎に位相が変化させられる。
【0050】
図3と
図4に示すように、位相変調部20Aには、位相変調アレイ31で発生する熱を放熱する放熱冷却部38が設けられている。
【0051】
図5と
図6に示すように、第1の発光部23A内のコリメートレンズ28Aで変換されたコリメート光束B1rは、位相変調アレイ31の下部の領域に与えられ、第2の発光部23B内のコリメートレンズ28Bで変換されたコリメート光束B1rは、位相変調アレイ31の上部の領域に与えられる。位相変調アレイ31では、コリメート光束B1rが与えられる領域が第1の変換領域M1となり、コリメート光束B1gが与えられる領域が第2の変換領域M2となる。
【0052】
コリメート光束B1rとコリメート光束B1gは断面が長方形であるため、第1の変換領域M1と第2の変換領域M2も長方形となる。基準ベース22で、第1の発光部23Aと第2の発光部23Bとの垂直方向(ii)での相対位置が調整されることで、第1の変換領域M1と第2の変換領域M2とが互いに重複しないように設定される。
【0053】
第1の変換領域M1に与えられたコリメート光束B1rは、位相変調アレイ31の複数のピクセルのそれぞれを通過することで位相が変換され、第2の変換領域M2に与えられたコリメート光束B1gも、複数のピクセルのそれぞれを通過することで位相が変換される。
図8に示すように、位相変調アレイ31から反射される変調光束B2は、それぞれのピクセルを通過した光が互いに干渉した干渉光となる。この干渉光には、赤色系のコリメート光束B1rの光成分どうしの干渉と、緑色系であるコリメート光束B1gの光成分どうしの干渉、さらには、コリメート光束B1rの光成分とコリメート光束B1gの光成分との干渉も含まれる。
【0054】
図3に示すように、位相変調部20Aには、レンズホルダ32が設けられている。レンズホルダ32は基準ベース22上に位置決めされて固定されている。レンズホルダ32にFTレンズ(フーリエ変換レンズ)33が保持されている。位相変調アレイ31で反射された変調光束B2は、FTレンズ33を透過してフーリエ変換された変調光束B3となる。
【0055】
図3に示すように、位相変調部20Aには、ミラー保持部材39に保持された送光ミラー34が設けられている。送光ミラー34は平面ミラーであり、その反射面にFTレンズ33の光軸が所定の角度で入射している。FTレンズ33でフーリエ変換された変調光束B3は、送光ミラー34で反射され、反射された変調光束B4が、光学ユニット20内を通過して、ホログラム結像部20Bへ送られる。
【0056】
(ホログラム結像部20Bの構造)
図3に示すように、ホログラム結像部20Bには、ミラー保持部材35aに保持された第1の中間ミラー35と、ミラー保持部材36aに保持された第2の中間ミラー36とが設けられている。第1の中間ミラー35と第2の中間ミラー36は平面ミラーである。
図4に示すように、第1の中間ミラー35の反射面は、位相変調部20Aに設けられた前記送光ミラー34の反射面に対向している。また、第1の中間ミラー35と第2の中間ミラー36の反射面は所定の角度で対向している。ホログラム結像部20Bでは、第2の中間ミラー36の反射面による反射方向にスクリーン51が配置されている。
【0057】
図4に示すように、送光ミラー34で反射された変調光束B4は、ケース内を図示右方向へ進行してから第1の中間ミラー35で反射され、反射された変調光束B5が第2の中間ミラー36で反射される。そして、第2の中間ミラー36で反射された変調光束B6がスクリーン51に与えられる。
【0058】
位相変調アレイ31では、第1の変換領域M1において赤色系のレーザ光の位相が個々のピクセル毎に変換され、第2の変換領域M2において緑色系のレーザ光が個々のピクセル毎に変換される。赤色系と緑色系のレーザ光の干渉光が混在した光は、FTレンズでフーリエ変換され、その変調光束B3,B4,B5,B6がケース内の光路を経てスクリーン51にデフォーカス(defocus)状態で結像され、スクリーン51にホログラム画像が結像する。
【0059】
位相変調アレイ31を経た干渉光がFTレンズ33を経て集光されると、1次回折光がスクリーン51に結像される。スクリーン51には、
図2に示す表示領域3aに投稿される表示画像70とほぼ同じ内容のホログラム画像が結像する。このホログラム画像は、赤色系と緑色系ならびに2つの色相の混合色で形成される。変調光束B3,B4,B5,B6は光の干渉成分を含んでいるため、位相変調アレイ31からスクリーン51に至る空間に、2次回折光や3次回折光などが生成する多数の迷光画像が存在する。そこで、位相変調アレイ31からスクリーン51までの光路上に、複数段のアパーチャーが形成されて、1次回折光のみがスクリーン51に到達できるようにしている。
【0060】
図3と
図4に示すように、位相変調部20Aからの光の出射部に遮光壁41aが設けられ、遮光壁41aに矩形状の第1のアパーチャー41が開口している。ホログラム結像部20Bへの光の入射部には、遮光壁42aが設けられ、遮光壁42aに矩形状の第2のアパーチャー42が開口している。第2の中間ミラー36とスクリーン51の間には遮光壁43aが設けられており、この遮光壁43aに矩形状の第3のアパーチャー43が開口している。第3のアパーチャー43は、
図11にも示されている。
【0061】
送光ミラー34で反射された変調光束がスクリーン51へ至るまでの光路上に、3段階のアパーチャー41,42,43が設けられて、1次回折光以外の迷光が遮光され、スクリーン51に、ホログラム画像を形成する1次回折光のみが到達できるようになっている。
【0062】
図11に示すように、ホログラム結像部20Bでは、第3のアパーチャー43の先側(出光側)に、スクリーン51が配置されている。第2の中間ミラー36で反射された変調光束B6は、第3のアパーチャー43を通過してスクリーン51に到達し、スクリーン51に1次回折光によるホログラム画像が生成される。スクリーン51は、表面に細かな凹凸が形成された透過型のディフューザ(Diffuser)であり、スクリーン51に結像したホログラム画像を含む光は、スクリーン51を透過して発散光の投影光B7となる。
図4に示すように、投影光B7は、遮光壁42aに形成された第4のアパーチャー44を通過して投影部20Cに与えられる。
【0063】
図11に示すように、ホログラム結像部20Bでは、第3のアパーチャー43が開口している遮光壁43aにモータ52が固定されており、円板形状のスクリーン51がモータ52の動力で常に回転させられている。スクリーン51を回転させることで、表示画像70のチラツキの原因となるスペックルノイズ(speckle noise)を低減させることができる。
【0064】
図11に示すように、ホログラム結像部20Bでは、遮光壁43aにモニタ検知部53が設けられている。モニタ検知部53は第3のアパーチャー43の下側に設けられている。モニタ検知部53は、赤色波長検知部53aと緑色波長検知部53bならびに位置検知部53cの3つの検知部で構成されている。検知部53a,53b,53cのそれぞれは閉鎖空間の内部にピンフォトダイオードなどの受光素子が収納され、第2の中間ミラー36に対向する側に開口部が形成されている。赤色波長検知部53aでは、前記開口部が赤色光を透過させる波長フィルターで覆われ、緑色波長検知部53bでは、前記開口部が緑色光を透過させる波長フィルターで覆われている。
【0065】
各検知部53a,53b,53cには、1次回折光または1次回折光以外の多次回折光のいずれかが照射される。位置検知部53cの検知出力に基づいて、第1の発光部23Aと第2の発光部23Bおよびその他の各光学部品の位置調整が行われる。また、赤色波長検知部53aと緑色波長検知部53bからの検知出力に基づいて、第1のレーザユニット27Aと第2のレーザユニット27Bの発光強度が自動調整される。また、1次回折光がスクリーン51の投影面51aに結像できるように、位相変調アレイ31が制御される。
【0066】
(投影部20Cの構造)
図3と
図4に示すように、投影部20Cには、第1の投影ミラー55と第2の投影ミラー56とが対向して設けられている。第1の投影ミラー55の反射面55aと第2の投影ミラー56の反射面56aは凹面鏡(拡大鏡)である。スクリーン51で結像したホログラム画像を含む投影光B7はスクリーン51で発散されて第1の投影ミラー55に与えられる。第1の投影ミラー55でホログラム画像を拡大した投影光B8は、第2の投影ミラー56に与えられてホログラム画像がさらに拡大される。
図3に示すように、第2の投影ミラー56の反射面56aで反射された投影光B9は上向きの光束となり、カバー板14を透過し、
図1に示すように、ウインドシールド3の表示領域3aに投影される。
【0067】
図2に示すように、表示画像70では、自動車の速度表示71、シフトレバーのポジション情報72、ナビゲーション情報73など、自動車の走行に付随する各種情報が表示される。この表示画像70は、赤色光または緑色光で表示され、あるいは、赤色光と緑色光との混合色で表示される。
【0068】
ウインドシールド3が半反射面として機能するため、運転者5には、表示画像70がウインドシールド3よりも前方の虚像6の結像位置に存在しているように見える。
【0069】
この画像処理装置10は、スクリーン51に結像されたホログラム画像が拡大されて表示領域3aに投影されるため、ウインドシールド3の外部からカバー板14の内部を覗き見ることがあっても、人の目にレーザ光が直接に与えられることがなく、安全性を確保できる。
【0070】
(位相変調部20Aでの調整)
位相変調アレイ31では、第1の発光部23Aから発せられたコリメート光束B1rが照射される領域が第1の変換領域M1となり、第2の発光部23Bから発せられたコリメート光束B1gが照射される領域が第2の変換領域M2となる。第1の変換領域M1と第2の変換領域M2は、位相変調アレイ31において予め決められた領域に高精度に位置決めされて形成されることが必要である。第1の変換領域M1と第2の変換領域M2の領域設定に狂いが生じると、スクリーン51にホログラム画像を正確に結像させることが困難になる。また、各レンズの相対位置を高精度に決めないと、スクリーンにホログラム画像を鮮明に結像させることができなくなる。
【0071】
そのためには、位相変調部20Aでは、組立作業の際に以下の調整が行われる。
(1)位置決めブロック24A,24Bに対するレーザユニット27A,27Bの固定位置の調整
図6に示すように、第1の位置決めブロック24Aでは、このブロック単体において設計上の規定光軸O1が定められており、同様に第2の位置決めブロック24Bでも、設計上の規定光軸O2が定められている。
【0072】
図7に示すように、第1の位置決めブロック24Aの端面に、取付け面24Fが形成され、取付け面24Fに、光通路26Aに通じる送光穴24Gが形成されている。規定光軸O1は送光穴24Gの中心に位置しており、取付け面24Fは規定光軸O1と垂直な平面となっている。
【0073】
第1のレーザユニット27Aは、第1の位置決め部材63と第2の位置決め部材64を使用して前記取付け面24Fに固定される。第1の位置決め部材63はリング部材であり、中央に貫通穴63aが形成されている。第1の位置決め部材63の取付け面24Fに対面する固定面63bは平面である。固定面63bと逆側では、貫通穴63aの周囲に受け凹面63cが形成されている。
【0074】
第2の位置決め部材64は筒状のブラケットであり、中央部に貫通穴64aが形成されている。第2の位置決め部材64の第1の位置決め部材63に対向する面が突き当て面64bとなっている。第1の位置決め部材63の受け凹面63cと、第2の位置決め部材64の突き当て面64bは、共に球面の一部である。受け凹面63cと突き当て面64bの球面の曲率半径は一致している。あるいは、受け凹面63cの曲率半径が、第2の突き当て面64bの曲率半径よりもやや小さく形成されている。第2の位置決め部材64には、突き当て面64bと逆側に保持筒64cが一体に形成されている。
【0075】
第1の位置決めブロック24Aと、第1の位置決め部材63ならびに第2の位置決め部材64はステンレス鋼などの金属製であり、第1のレーザユニット27Aのケースもステンレス製である。第1のレーザユニット27Aのケースは、第2の位置決め部材64の保持筒64cの内部に挿入されて、レーザ溶接によって互いに固定される。第1のレーザユニット27Aが第2の位置決め部材64に固定された状態で、第1のレーザユニット27Aのレーザ発光点が突き当て面64bの曲率半径のほぼ中心に一致する。
【0076】
第1の発光部23Aの組立作業では、コリメートレンズ28Aを保持した第1の位置決めブロック24Aが、光学調整装置の治具に固定される。光学調整装置には、治具で保持された第1の位置決めブロック24Aの前方にFTレンズと、ビームプロファイラーが設けられている。第1の発光部23Aの組立て調整作業に先立って、光学調整装置に基準レーザが設置され、ビームプロファイラーで理想的な光学パターンが読み取られてメモリに記憶されている。
【0077】
第1の位置決めブロック24Aが治具に固定された状態で、第1のレーザユニット27Aが固定された第2の位置決め部材64と、第1の位置決め部材63とが組み合わされて取付け面24Fに突き当てられる。第1のレーザユニット27Aに通電してレーザ光を発光させながら、第2の位置決め部材64と共に第1の位置決め部材63を、取付け面24Fに沿って、X−Y方向へ移動させ、ビームプロファイラーを参照して、第1のレーザユニット27Aの発光点を規定光軸O1に一致させる調整が行なわれる。
【0078】
続いて、第2の位置決め部材64の突き当て面64bを、第1の位置決め部材63の受け凹部63cに対してθxならびにθy方向へ摺動させ、ビームプロファイラーを参照しながら、第1のレーザユニット27Aの傾きを調整する。これにより、第1のレーザユニット27Aからのレーザ光の発光光軸と規定光軸O1との傾きがゼロとなるように調整される。
【0079】
第1の位置決め部材63と第2の位置決め部材64との位置調整が完了したら、第1の位置決め部材63と取付け面24Fとをレーザ溶接で固定し、第1の位置決め部材63と第2の位置決め部材64とをレーザ溶接で固定する。
【0080】
第2の発光部23Bにおいても、第2のレーザユニット27Bが、第1の位置決め部材63と第2の位置決め部材64によって、第2の位置決めブロック24Bに対して、同様にして位置調整されて固定される。
【0081】
(2)コリメートレンズ28A,28Bの位置調整
図6に示すように、第1の発光部23Aに設けられているコリメートレンズ28Aは長方形状である。第1の位置決めブロック24Aに形成された光通路26A内では、左右両側壁に凹部が形成され、この凹部の底部に保持摺動平面65,65が互いに対向して形成されている。コリメートレンズ28Aの幅寸法は、保持摺動平面65,65の対向間隔とほぼ一致しており、保持摺動平面65,65の間に挿入されたコリメートレンズ28Aは、ほとんど傾くことなく、規定光軸O1に沿って前後に平行移動できるようになっている。
【0082】
第1の位置決めブロック24Aが前記光学調整装置の治具に固定され、第1の位置決め部材63と第2の位置決め部材64ならびに第1のレーザユニット27Aの位置が調整されて固定された後に、第1の位置決めブロック24Aを治具に固定させたままの状態で、コリメートレンズ28Aの位置調整が行われる。
【0083】
この位置調整では、コリメートレンズ28Aが吸引治具で保持され、吸引治具の移動に伴ってコリメートレンズ28Aが光通路26A内で規定光軸O1に沿って前後に移動させられる。前記ビームプロファイラーを参照し、ビームプロワイラーで測定された光強度分布が最適値に近い状態となったときに、UV接着剤によって、コリメートレンズ28Aが第1の位置決めブロック24Aに固定される。
【0084】
第2の発光部23Bにおいても同様に調整が行われ、第2の位置決めブロック24Bの内部でコリメートレンズ28Bの位置が調整されて固定される。
【0085】
(3)第1の発光部23Aと第2の発光部23Bの組み付け調整
前記調整工程(1)(2)で説明したように、第1の発光部23Aと第2の発光部23Bはそれぞれが単体で調整されて組み立てられ、その後に基準ベース22に組み付けられる。
【0086】
第1の発光部23Aと第2の発光部23Bを光学ユニット20に組み付ける作業では、
図6に示すように、基準ベース22の位置決め基準面22Aに、調整スペーサ61を介して第1の位置決めブロック24Aが設置される。固定ねじ25Aで仮止めした状態で、第1のレーザユニット27Aを発光させ、位相変調アレイ31にコリメート光束B1rを照射する。コリメート光B1rが照射されている領域である第1の変換領域M1が、測定カメラで観察され、第1の変換領域M1が予め決められた高さとなるように、調整スペーサ61が選択される。
【0087】
次に、第1の位置決めブロック24Aの上に第2の位置決めブロック24Bが設置される。このときも調整スペーサ62を選択することで、第2の発光部23Bの垂直方向(ii)での高さ位置が調整される。調整の確認は、第2のレーザユニット27Bを発光させ、位相変調アレイ31に第2の変換領域M2を形成し、これをカメラで観測することで行なわれる。
【0088】
第1の位置決めブロック24Aと第2の位置決めブロック24Bの設置高さが決められた後に、両位置決めブロック24A,24Bから発せられるコリメート光束B1r,B1gの水平方向での照射角度の調整が行われる。
【0089】
前記高さ調整に続いて、固定ねじ25A,25Bを完全に締め付けることなく、固定ねじ25A,25Bと取付け穴との隙間の範囲内で、第1の位置決めブロック24Aと第2の位置決めブロック24Bをそれぞれ水平方向へ動かして、レーザ照射方向を変化させる。この調整作業は、位相変調アレイ31に対する赤色系のコリメート光束B1rの照射領域(第1の変換領域M1)と、緑色系のコリメート光束B1gの照射領域(第2の変換領域M2)をカメラで観察することで行なわれる。あるいは、表示画像60の表示データに基づく駆動信号によって第1のレーザユニット27Aと第2のレーザユニット27Bを点灯させ、実際にスクリーン51にホログラム画像を結像させ、ホログラム像をカメラで撮影して、ホログラム画像の位置や色相ならびに鮮明度などを観察しながら行われる。
【0090】
第1の位置決めブロック24Aと第2の位置決めブロック24Bの向きが適正な状態となった段階で、固定ねじ25A,25Bが締め付けられ、第1の位置決めブロック24Aと第2の位置決めブロック27Bが固定される。
【0091】
(4)ミラー調整
図10に、位相変調部20Aに設けられた送光ミラー34の支持構造が示されている。ミラー保持部材39は、アルミニウムによるダイキャスト法で形成されたものであり、保持枠部39aと支持部39bとが互いに直角となるように一体に形成されている。
【0092】
保持枠部39aの背部に板ばね材料による支持材(図示せず)が固定されており、送光ミラー34は保持枠部39aと支持材との間に弾性的に挟持されている。支持部39bは三角形状であり、保持枠部39aに近い位置に一対の支点固定穴39c,39cが形成され、保持枠部39aから離れた位置に調整固定穴39dが形成されている。一対の支点固定穴39c,39cと調整固定穴39dは、三角形のそれぞれの頂点に配置される位置関係となっている。
【0093】
図10に示すように、FTレンズ33の側方において、光学ベース21の上面に、突条部66が一体に形成され、突条部66の頂部に幅が細い支点突部66aが形成されている。支点突部66aは、送光ミラー34の反射面34aの設計上の位置と平行となるように形成されている。突条部66上の2か所に、支点突部66aを貫通する一対の支点雌ねじ穴66b,66bが形成されている。
【0094】
光学ベース21に浅い凹部67が形成され、凹部67に調整固定雌ねじ穴67aが形成されている。一対の支点雌ねじ穴66b,66bと、調整固定雌ねじ穴67aは、三角形のそれぞれの頂点に配置される位置関係となっている。
【0095】
支持部39bに形成された一対の支点固定穴39c,39cに支点固定ねじ69a,69aが挿通されて支点雌ねじ穴66b,66bに螺着される。凹部67の内部に調整スペーサ68が設置され、調整固定ねじ69bが調整固定穴39dに挿入されて調整固定雌ねじ穴67aに螺着される。
【0096】
調整スペーサ68は厚さの相違するものが複数種類用意されており、いずれかの調整スペーサ68を選択することで、送光ミラー34の倒れ方向(α方向)の角度が調整される。支点固定ねじ69a,69aならびに調整固定ねじ69bで支持部39bが固定されるときに、支持部39bは細幅の支点突部66aを支点として傾くことができる。そのため、どのような厚さの調整スペーサ68を使用しても、支持部39bを、光学ベース21にしっかりと固定することができる。
【0097】
送光ミラー34のα方向への傾き調整と同時に、またはその後で、3個の固定ねじ69a,69a,69bが完全に締め付けられていない状態で、固定ねじ69a,69a,69bと固定穴39c,39c,39dとの隙間の範囲内で、ミラー保持部材39を回転方向(β方向)へ動かして、β方向での傾き角度が調整される。α方向とβ方向の角度調整が完了したら、固定ねじ69a,69a,69bが締め付けられ、光学ベース21にミラー保持部材39が固定される。
【0098】
ホログラム結像部20Bに設けられている前記第1の中間ミラー35を保持しているミラー保持部材35aの形状は、
図10に示したミラー保持部材39と実質的に同じである。ミラー保持部材35aの下には、
図10に示したのと同じ支持構造部が形成されており、第1の中間ミラー35もα方向とβ方向での角度調整が可能となっている。
【0099】
第1の発光部23Aと第2の発光部23Bとでレーザユニット27A,27Bを発光させ、スクリーン51にホログラム像を結像させた状態で、送光ミラー34と第1の中間ミラー35の双方の角度が調整されて、スクリーン51におけるホログラム画像の結像位置が規定された領域となるように調整される。
【0100】
(ケース内の光路の説明)
この画像処理装置10は、自動車に設置された状態で、光学ユニット20の光学ベース21がほぼ水平に向けられる。
図4に示すように、第1の発光部23Aと第2の発光部23Bから発せられるコリメート光束B1r,B1gと、位相変調アレイ31で変換された変調光束B2、ならびにFTレンズを経た変調光束B3の光軸は、全て光学ベース21と平行となるように水平に延びている。また、送光ミラー34で反射された変調光束B4と、第1の中間ミラー35で反射された変調光束B5、ならびに第2の中間ミラー36で反射された変調光束B6の光軸も、光学ベース21と平行で水平に延びている。スクリーン51を通過した投影光B7の光軸も水平であり、第1の投影ミラー55で反射された投影光B8がやや上向きとなって第2の投影ミラー56に与えられ、第2の投影ミラー56で反射された投影光B9がウインドシールド3に向けて上向きに照射される。
【0101】
投影光B8,B9以外の光成分の光束が、投影光B9の上向きの投影方向と交差してほぼ水平に向けられているため、画像処理装置10を薄型に構成することが可能になり、ダッシュボード2の内部に埋設しやすくなる。
【0102】
図3と
図4に示すように、送光ミラー34から第1の中間ミラー35に至る変調光束B4は、第1の投影ミラー55と第2の投影ミラー56との間を通過し、第1の投影ミラー55から第2の投影ミラー56に向かう投影光B8が、前記変調光束B4と交差している。投影部20Cで光を交差させることで、FTレンズ33からスクリーン51までの光路を長く確保でき、スクリーン51に適度な倍率でホログラム画像を結像させることができる。また光束を交差させることにより、光路が長くても、画像処理装置10を小型に構成することが可能になる。
【0103】
図4に示すように、送光ミラー34から第1の中間ミラー35に向かう変調光束B4と、第2の中間ミラー36からスクリーン51に向かう変調光束B6とで、光の向きが逆である。また、スクリーン51から第1の投影ミラー55に向かう投影光B7の向きも前記変調光束B4の向きと逆である。このように、ケース内で光束の向きを逆にすることによっても、装置全体を小型に構成することができる。