(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
GLONASS(Global Navigation Satellite System)衛星から受信したGLONASS衛星信号を復調して、GLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻情報を取得するGLONASS衛星信号復調部と、
GPS(Glaobal Positioning System)衛星から受信したGPS衛星信号を復調して、GPS時刻系のGPSの衛星送信時刻情報を取得するGPS衛星信号復調部と、
前記GLONASS衛星信号復調部が取得した前記GLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻情報と、前記GPS衛星信号復調部が取得した前記GPS時刻系のGPSの衛星送信時刻情報と、を標準時の時差の補償後に比較することにより、うるう秒補正値を算出するうるう秒補正値算出部と、
を備えることを特徴とするGLONASS受信機。
前記GLONASS衛星及び自機の間の擬似距離及び幾何学距離、前記GPS衛星及び自機の間の擬似距離及び幾何学距離、前記うるう秒補正値算出部が算出した前記うるう秒補正値を観測量とし、前記GLONASS衛星信号及び前記GPS衛星信号の自機内のバンドパスフィルタの時定数差であるハード遅延差を未知量とした測位方程式を解くことにより、前記ハード遅延差を推定するとともに、自機の位置を測定するハード遅延差推定付き自機位置測定部、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のGLONASS受信機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、GLONASS及びGPSには、以下のような相違が挙げられる。まず、GLONASSの時刻系は、うるう秒調整されるが、GPSの時刻系は、うるう秒調整されない。よって、GLONASS及びGPSの混合測位を行なうにあたり、両時刻系を揃える必要があり、両時刻系を揃えるためには、両時刻系に対するうるう秒調整の有無を考慮する必要があり、両時刻系に対するうるう秒調整の有無を考慮しなければ、年に1回程度実施される可能性があるうるう秒調整タイミングにおいて測位異常を生じさせてしまうという課題がある。次に、GLONASS及びGPSの衛星信号は、異なる送信周波数を有する。よって、GLONASS及びGPSの混合測位を行なうにあたり、両衛星信号に対する自機内におけるバンドパスフィルタによる通過帯域幅の違いによって生じるハード遅延差を考慮しなければ、測位誤差を生じさせてしまうという課題がある。
【0006】
特許文献1では、ハード遅延差を考慮しているが、GLONASS時刻系のうるう秒調整を全く考慮していないため、GLONASS及びGPSの混合測位を行なうにあたり、うるう秒調整タイミングにおいて測位異常が生じる。また、ハード遅延差は、両衛星信号の送信周波数と同一周波数のパイロット信号を自機内の専用の生成回路で生成し、生成時刻及び受信時刻の時間差を自機内の専用のパイロット信号用受信チャンネル部で測定することにより計測される。よって、パイロット信号の生成回路及びパイロット信号用受信チャンネル部の分だけ、GLONASS受信機の回路規模が増大してしまう。
【0007】
非特許文献1では、GLONASS時刻系のうるう秒調整及びハード遅延差を考慮している。ここで、GLONASS時刻系のうるう秒調整の影響を補正するための情報(以下、うるう秒補正情報と呼ぶ)は、GPSの航法データから取得し、取得したうるう秒補正情報を用いて、GLONASS時刻系をGPS時刻系に変換することにより、GLONASS及びGPSの混合測位を行なう。そして、ハード遅延差は、GPSとGLONASSのバンドパスフィルタの時定数差のことであり、前記時定数差は、GPSとGLONASSの信号到達の違いを生じさせ、結果的にGPSとGLONASSの間の相対的な受信時刻差になる。そこで、ハード遅延差は、GPSとGLONASSの間の相対的な受信時刻差を未知量として追加した測位方程式を解くことにより推定されている。ここで、バンドパスフィルタの時定数は、設計時に理論計算可能ではあるが、実環境における温度変化や部品個体差によるアナログ回路特性の変化のため、測位誤差を少なくするためには理論計算値を用いずに推定する必要がある。ハード遅延差を推定することにより、ハード遅延差による測位結果への影響が排除されている。
【0008】
ところで、GPSの航法データ内のうるう秒補正情報は、12.5分間隔で送信されている。よって、最新のうるう秒補正情報は、受信状況が良いオープンスカイ環境においても最大12.5分間待つ必要があり、リアルタイムに取得することができない。そして、最新のうるう秒補正情報を得ることができなければ、過去に受信したうるう秒補正情報を用いることになる。過去のうるう秒補正情報は、最新のうるう秒補正情報と一致している保証はないため、最新のうるう秒調整によって、±1秒以上の誤差を含む可能性がある。
【0009】
±1秒以上のうるう秒補正誤差は、光速を乗じて距離換算すればGPSとGLONASSの擬似距離間のオフセット的な距離誤差となり、前記距離誤差を除去できなければ測位結果に影響を及ぼすことになる。±1秒以上のうるう秒補正誤差を距離換算せずにGLONASS及びGPSの間の相対的な受信時刻差とし、前記相対的な受信時刻差を未知量として追加した測位方程式を用いれば、±1秒以上のうるう秒補正誤差は、ハード遅延差とともに未知量に吸収される。そして、ハード遅延差及び±1秒以上のうるう秒補正誤差は、一つの未知量として推定される。つまり、この一つの未知量は、数十nsオーダーのハード遅延差及び秒オーダーのうるう秒補正誤差を線形結合した形になり、測位方程式で推定される。しかしながら、数十nsオーダーのハード遅延差と秒オーダーのうるう秒補正誤差の比は約10
8倍であるため、うるう秒調整タイミングではこの一つの未知量が約10
8倍変化する。推定する未知量が10
8倍もの非線形な変化をする場合には、この変化に対して小さすぎるオーダーであるハード遅延差を精度良く推定できない。未知量が精度良く推定できなければ、大きな測位誤差が生じる。
【0010】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、GLONASS及びGPSの混合測位を行なうGLONASS受信機において、うるう秒調整誤差がないうるう秒補正情報をリアルタイムに取得し、回路規模を増大させることなく、ハード遅延差を精度よく推定し、測位異常及び測位誤差を生じさせないことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、GLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻情報と、GPS時刻系のGPSの衛星送信時刻情報と、を標準時の時差の補償後に比較することにより、うるう秒補正値を算出することとした。
【0012】
具体的には、本発明は、GLONASS衛星から受信したGLONASS衛星信号を復調して、GLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻情報を取得するGLONASS衛星信号復調部と、GPS衛星から受信したGPS衛星信号を復調して、GPS時刻系のGPSの衛星送信時刻情報を取得するGPS衛星信号復調部と、前記GLONASS衛星信号復調部が取得した前記GLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻情報と、前記GPS衛星信号復調部が取得した前記GPS時刻系のGPSの衛星送信時刻情報と、を標準時の時差の補償後に比較することにより、うるう秒補正値を算出するうるう秒補正値算出部と、を備えることを特徴とするGLONASS受信機である。
【0013】
この構成によれば、GLONASS受信機において、最新のうるう秒補正情報を取得することができるため、測位異常を生じさせないことができる。
【0014】
また、本発明は、前記GLONASS衛星及び自機の間の擬似距離及び幾何学距離、前記GPS衛星及び自機の間の擬似距離及び幾何学距離、前記うるう秒補正値算出部が算出した前記うるう秒補正値を観測量とし、前記GLONASS衛星信号及び前記GPS衛星信号の自機内のバンドパスフィルタの時定数差であるハード遅延差を未知量とした測位方程式を解くことにより、前記ハード遅延差を推定するとともに、自機の位置を測定するハード遅延差推定付き自機位置測定部、をさらに備えることを特徴とするGLONASS受信機である。
【0015】
この構成によれば、GLONASS受信機において、回路規模を増大させずに、ハード遅延差を精度よく推定することができるため、測位誤差を生じさせないことができる。
【0016】
また、本発明は、前記ハード遅延差推定付き自機位置測定部は、前記ハード遅延差の推定精度を前記測位方程式の未知量の分散計算式に基づいて算出し、前記測位方程式の未知量の分散計算式に基づいて算出した前記ハード遅延差の推定精度が、所定の閾値未満のときには、前記測位方程式において前記ハード遅延差を未知量として自機の位置を測定し、前記測位方程式の未知量の分散計算式に基づいて算出した前記ハード遅延差の推定精度が、前記所定の閾値以上のときには、前記測位方程式においてバックアップ値又はデフォルト値の前記ハード遅延差を用いて自機の位置を測定することを特徴とするGLONASS受信機である。
【0017】
ハード遅延差の推定精度が高いと見込まれるときには、測位方程式においてハード遅延差を未知量として精度よく推定する。ハード遅延差の推定精度が低いと見込まれるときには、測位方程式においてハード遅延差を推定精度がある程度は高いと見込まれた既知数とする。よって、測位誤差を生じさせないことができる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明は、GLONASS及びGPSの混合測位を行なうGLONASS受信機において、うるう秒調整誤差がないうるう秒補正情報をリアルタイムに取得し、回路規模を増大させることなく、ハード遅延差を精度よく推定し、測位異常及び測位誤差を生じさせないことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0021】
本発明のGLONASS受信機の構成を
図1に示す。GLONASS受信機Rは、アンテナA、ダウンコンバータ11、12、バンドパスフィルタ13、14、GLONASS衛星信号受信チャンネル15−1〜15−N、GPS衛星信号受信チャンネル16−1〜16−N、GLONASS衛星信号復調部17−1〜17−N、GPS衛星信号復調部18−1〜18−N、うるう秒補正値算出部19及びハード遅延差推定付き自機位置測定部20から構成される。アンテナAは、GLONASS及びGPSの衛星信号を受信する。
【0022】
ダウンコンバータ11は、GLONASSの衛星信号をデジタル回路で処理しやすくするためにダウンコンバートする。ダウンコンバータ12は、GPSの衛星信号をデジタル回路で処理しやすくするためにダウンコンバートする。
【0023】
バンドパスフィルタ13は、GLONASSの衛星信号のL1信号を取り出すにあたり、搬送波周波数1602MHz+k×562.5kHz(kは−7から6までの整数)を中心に、帯域が約9MHzの範囲以内の信号を通過させる。バンドパスフィルタ14は、GPSの衛星信号のL1信号を取り出すにあたり、搬送波周波数1575.42MHzを中心に、帯域が約2MHzの範囲以内の信号を通過させる。GLONASS衛星信号及びGPS衛星信号の自機R内におけるハード遅延差は、バンドパスフィルタ13及びバンドパスフィルタ14の通過帯域幅の相違に基づいて生じうる。
【0024】
GLONASS衛星信号受信チャンネル15−1〜15−Nは、N個の各々のチャンネルで、GLONASSのN個の各々の衛星信号を受信する。GPS衛星信号受信チャンネル16−1〜16−Nは、N個の各々のチャンネルで、GPSのN個の各々の衛星信号を受信する。ここでの「受信する」とは、衛星信号を捕捉し、追尾して、航法データのビット情報を取り出す動作のことである。
【0025】
GLONASS衛星信号復調部17−1〜17−Nは、N個の各々のチャンネルについて、GLONASSのN個の各々の衛星信号を復調する。GPS衛星信号復調部18−1〜18−Nは、N個の各々のチャンネルについて、GPSのN個の各々の衛星信号を復号する。ここでの「復調する」とは、追尾して取り出された航法データのビット情報から、航法データ情報、衛星送信時刻情報及び各種補正パラメータなど、測位に必要な情報を取り出すことである。
【0026】
航法データ情報は、衛星位置を計算するためのエフェメリス情報やアルマナック情報のことであり、衛星送信時刻情報は、衛星システムの所定基準時刻からの経過時間のことである。また、衛星送信時刻情報の時刻系は、GPSの場合はGPS時刻系であり、GLONASSの場合はGLONASS時刻系である。各種補正パラメータとは、衛星時計補正情報や電離層補正情報やうるう秒補正情報のことである。
【0027】
GPSとGLONASSで補正パラメータの内容が異なり、GPSでは12.5分毎にうるう秒補正情報を取り出すことができるが、GLONASSの補正パラメータにはうるう秒補正情報は存在しない。また、都市部走行のように電波が遮断されやすかったり、信号強度が劣化するような受信状況が悪い環境下では、衛星信号を受信することはできても、復調することができないことがある。このため、GPS衛星信号復調部18−1〜18−Nにおいて、12.5分毎に必ずうるう秒補正情報を取得することができるとは限らない。本発明では、GPSの補正パラメータから取り出されるうるう秒補正情報は使用せず、新たに設けるうるう秒補正値算出部19を使用する。
【0028】
うるう秒補正値算出部19については、
図2及び
図3を用いて後述する。ハード遅延差推定付き自機位置測定部20については、
図4を用いて後述する。
【0029】
うるう秒補正値算出部19は、GLONASS衛星信号復調部17−1〜17−Nから出力されるGLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻情報を取得し、GPS衛星信号復調部18−1〜18−Nから出力されるGPS時刻系のGPSの衛星送信時刻情報を取得し、取得したGLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻情報をUTC(Coordinated Universal Time)に変換し、変換したGLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻情報をGPS時刻系のGPSの衛星送信時刻情報と比較することにより、うるう秒補正値を算出する。
【0030】
各時刻系の関係を
図2に示す。UTCは、国際協定に基づく世界時刻である。GLONASS時刻及びUTCは、うるう秒調整が実施される。一方、GPS時刻は、うるう秒調整が実施されない。最近では、2012年6月末日にうるう秒調整のためにGLONASS時刻及びUTCに+1秒が挿入されたが、GPS時刻には+1秒は挿入されていない。GLONASS時刻から3時間を減算すれば、UTCに変換することができる。さらに、UTCとGPS時刻の差を計算すれば、うるう秒補正値Δt
LSを算出することができる。
【0031】
よって、うるう秒補正値算出部19は、GLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻から3時間を減算したUTCを計算し、GPS時刻系のGPSの衛星送信時刻からUTCを減算すれば、うるう秒補正値Δt
LSを計算することができる。ここで、うるう秒補正値算出部19は、GLONASS及びGPSの衛星信号を受信することにより、GLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻及びGPS時刻系のGPSの衛星送信時刻をリアルタイムに取得することができる。よって、うるう秒補正値算出部19は、うるう秒補正値Δt
LSをリアルタイムに計算することができる。
【0032】
本発明のうるう秒補正値算出処理を示すフローチャートを
図3に示す。うるう秒補正値算出部19は、GLONASS時刻の情報として、GLONASS衛星信号復調部17−1〜17−Nから出力されるGLONASSの衛星送信時刻情報を取得し、GPS時刻の情報として、GPS衛星信号復調部18−1〜18−Nから出力されるGPSの衛星送信時刻情報を取得し、GLONASS及びGPSの衛星送信時刻について、GLONASS時刻系とUTCの3時間時差の補償後の差分量を算出し、差分量の小数点第一位以下を四捨五入することにより、うるう秒補正値Δt
LSを算出する。
【0033】
以下、具体的に説明する。GPS及びGLONASSの共用測位が可能状態であるかどうかを判断する(ステップS1)。共用測位が可能状態であると判断すれば(ステップS1においてYES)、ステップS2に進む。共用測位が不能状態であると判断すれば(ステップS1においてNO)、本処理を終了する。以下、ステップS2〜S5を説明する。
【0034】
GLONASS衛星信号復調部17−1〜17−Nから出力されるGLONASSの衛星送信時刻情報と、GPS衛星信号復調部18−1〜18−Nから出力されるGPSの衛星送信時刻情報と、を取得する(ステップS2)。
図2で示したように、GLONASSの衛星送信時刻から3時間を減算して、GLONASSの衛星送信時刻をGLONASS時刻系からUTCに変換する(ステップS3)。
図2で示したように、変換したGLONASSの衛星送信時刻とGPSの衛星送信時刻の差分量を計算する(ステップS4)。差分量の小数点第一位以下を四捨五入して、うるう秒補正値Δt
LSを計算する(ステップS5)。
【0035】
GLONASS及びGPSの衛星送信時刻は、GLONASS時刻系及びGPS時刻系において1秒よりはるかに小さいオーダーの誤差しか含まない。よって、GLONASS及びGPSの衛星送信時刻について、GLONASS時刻系とUTCの時差(3時間)の補償後の差分量を算出し、差分量の小数点第一位以下を四捨五入することにより、うるう秒誤差のないうるう秒補正値Δt
LSを算出することができる。
【0036】
以上の説明では、うるう秒補正値算出部19は、GLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻から3時間を減算してUTCのGLONASSの衛星送信時刻に変換し、UTCのGLONASSの衛星送信時刻をGPS時刻系のGPSの衛星送信時刻と比較することにより、うるう秒補正値を算出している。
【0037】
変形例として、うるう秒補正値算出部19は、GPS時刻系のGPSの衛星送信時刻に3時間を加算し、3時間を加算されたGPSの衛星送信時刻をGLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻と比較することにより、うるう秒補正値を算出してもよい。
【0038】
より一般的に、うるう秒補正値算出部19は、GLONASS時刻系のGLONASSの衛星送信時刻及びGPS時刻系のGPSの衛星送信時刻を、標準時の時差の補償後に比較することにより、うるう秒補正値を算出してもよい。
【0039】
ハード遅延差推定付き自機位置測定部20は、GLONASS衛星信号復調部17−1〜17−Nから出力されるGLONASS衛星情報と、GPS衛星信号復調部18−1〜18−Nから出力されるGPS衛星情報と、うるう秒補正値算出部19が取得したうるう秒補正情報を使用し、GLONASS衛星信号用のバンドパスフィルタ13とGPS衛星信号用のバンドパスフィルタ14の通過帯域幅の相違によって生じるハード遅延差を未知量にした測位方程式を解くことにより、ハード遅延差を推定するとともに、自機Rの位置を測定する。
【0040】
測位方程式の観測量である擬似距離は、GLONASS衛星信号復調部17−1〜17−Nから出力されるGLONASSの衛星送信時刻と、GPS衛星信号復調部18−1〜18−Nから出力されるGPSの衛星送信時刻から、数1及び数2によって算出する。
【数1】
【数2】
【0041】
ρ
GPSは、GPS衛星及び自機Rの間の擬似距離である。ρ
GLOは、GLONASS衛星及び自機Rの間の擬似距離である。cは、光速である。t
uは、自機Rの時計の時刻である。t
GPS及びt
GLOは、それぞれ、GPS及びGLONASSの衛星送信時刻である。S
i≡[x
Si y
Si z
Si]
Tは、i番目の衛星(GPS衛星又はGLONASS衛星)の位置である。u≡[x
u y
u z
u]
Tは、自機Rの位置である。
【0042】
本実施形態では、さらに、電離層遅延、対流圏遅延、自機Rの時計誤差、衛星の時計誤差及び白色ガウス雑音を考える。GPS及びGLONASSの衛星信号を受信することにより観測された擬似距離は、数3及び数4で表される。
【数3】
【数4】
【0043】
rは、i番目の衛星及び自機Rの間の幾何学距離である。δIは、i番目の衛星及び自機Rの間の電離層遅延である。δTは、i番目の衛星及び自機Rの間の対流圏遅延である。δt
uは、自機Rの時計誤差である。δt
Siは、i番目の衛星の時計誤差である。eは、i番目の衛星及び自機Rの間についての白色ガウス雑音で、平均が0であり、分散がσ
2である。
【0044】
Δt
LSは、うるう秒補正値算出部19が算出したうるう秒補正値である。Δt
UTC−GLOは、UTC及びGLONASS時刻系の時差分の3時間である。δb
GLOは、GLONASS衛星信号用のバンドパスフィルタ13とGPS衛星信号用のバンドパスフィルタ14の通過帯域幅の相違によって生じるハード遅延差である。
【0045】
幾何学距離rは、i番目の衛星及び自機Rの位置に基づく、非線形関数である(数5)。
【数5】
幾何学距離rを線形化するために、自機Rの概略位置u
0の周りで、1次の項までテーラー展開する(数6)。
【数6】
ここで、gは、方向余弦行列と呼び、i番目の衛星の位置S
i及び自機Rの概略位置u
0の間の幾何学距離の勾配ベクトルの転置行列である(数7)。
【数7】
【0046】
数3、数4及び数6での未知量は、自機Rの位置u、自機Rの時計誤差δt
u、並びに、GLONASS衛星信号及びGPS衛星信号の自機R内におけるハード遅延差δb
GLOである。また、数3、数4及び数6での観測量及び既知量は、GPS及びGLONASSの擬似距離ρ
GPS及びρ
GLOと、衛星位置S
iと、自機Rの概略位置u
0と、幾何学距離rと、対流圏遅延δTと、電離層遅延δIと、衛星時計誤差δt
Siと、うるう秒補正値Δt
LSと、GLONASS時刻系とUTCの時差Δt
UTC−GLOである。
【0047】
ここで、衛星位置S
i及び衛星時計誤差δt
Siは、GLONASS衛星信号復調部17−1〜17−N及びGPS衛星信号復調部18−1〜18−Nから出力される航法データ情報(エフェメリス情報)と補正パラメータから計算され、対流圏遅延δTは、周知のモデル式を使用して計算され、電離層遅延δIは、GPS衛星信号復調部18−1〜18−Nから出力される補正パラメータを使用して計算される。
【0048】
GPS及びGLONASSの衛星信号を受信して得られる観測量及び既知量を左辺にまとめ、求めたい未知量を右辺にまとめると、測位方程式は、数8のように書き換えられる。
【数8】
ここで、yは観測ベクトル、Hは計画行列、θは未知ベクトル、εは誤差ベクトルであり、y、H、θ、εは、それぞれ、数9〜数12で表される。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【0049】
1番目の衛星は、GPS衛星であるとした。i番目の衛星は、GLONASS衛星であるとした。ここで、捕捉したGPSの衛星数をmとし、捕捉したGLONASSの衛星数をnとすると、観測ベクトルy及び誤差ベクトルεは、m+n行1列の行列である。方向余弦行列gは、1行3列の行列であり、よって、計画行列Hは、m+n行5列の行列である。自機Rの位置u及び概略位置u
0は、3行1列のベクトルであり、自機Rの時計誤差δt
uは、1行1列であり、ハード遅延差δb
GLOは、1行1列であり、よって、未知ベクトルθは、5行1列のベクトルである。
【0050】
数8の測位方程式の未知ベクトルθを推定するため、数13の最小二乗法を用いる。
【数13】
ここで、Pは、観測量の分散値で構成される重み行列である。また、数11の自機Rの概略位置u
0が不明な時は、自機Rの概略位置を地球中心(ゼロ点)にして数13を解き、数13を解いて得られた自機Rの推定位置uを自機Rの概略位置u
0に設定して再び数13を解くという、数13の繰り返し計算を実行するようにする。ここでは最小二乗法で未知ベクトルを推定する(解く)方法を説明したが、カルマンフィルタで未知ベクトルを推定するようにしても良い。カルマンフィルタは未知量ベクトルの時間変化モデルが適切に設計できれば最小二乗法より未知量の推定精度が良くなるという特徴がある。
【0051】
本発明のハード遅延差推定付き自機位置測定処理を示すフローチャートを
図4に示す。ハード遅延差推定付き自機位置測定部20は、測位方程式を解く前に、GLONASS及びGPSの衛星信号の通過帯域幅の相違によって生じるハード遅延差の推定精度の善し悪しを判断し、ハード遅延差の推定精度が良いと見込まれるときには、ハード遅延差を未知量として測位方程式を解くことで、自機Rの位置及びハード遅延差を推定し、ハード遅延差の推定精度が悪いと見込まれるときには、推定するよりは精度が良いバックアップ値又はデフォルト値をハード遅延差に用いて測位方程式を解くことで、自機Rの位置を推定する。
【0052】
ハード遅延差の推定精度の評価指標として、DOP(Dilution of Precision)を用いる。DOPは、測位方程式を解くことで推定される自機Rの位置u及び自機Rの時計誤差δt
uの推定精度の評価指標として用いられるが、本発明では、ハード遅延差の推定精度の評価指標として用いられるように拡張する。そして、評価指標の値によって、推定精度の善し悪しを判断する。
【0053】
数13の重み行列PをP=Iとする。数9の観測ベクトルyの分散をCov(y)=Iとする。ここで、Cov(y)は、変数yの分散であることを意味し、Iは、単位行列である。数11の未知ベクトルθの分散は、数14で表される。
【数14】
【0054】
未知ベクトルθの分散Cov(θ)のTraceを、数15のように表す。
【数15】
GDOP(Geometrical DOP)、PDOP(Position DOP)、TDOP(Time DOP)及びGGTDOP(GPS to GLONASS Time DOP)は、それぞれ、数式16〜19で表される。
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【0055】
数18のTDOP及び数19のGGTDOPが所定の閾値(例えば3)より小さいときには、ハード遅延差の推定精度が良くなる。数18のTDOP又は数19のGGTDOPが所定の閾値(例えば3)より大きいときには、ハード遅延差の推定精度が悪くなる。ハード遅延差の推定精度が悪いと判断した場合は、過去に良い精度で推定されたハード遅延差を用いて測位方程式を解くようにする。
【0056】
以下、具体的に説明する。数8の測位方程式を立てる(ステップS11)。捕捉された衛星数が閾値(ここでは、未知ベクトルθの行数に等しい数)以上であるかどうかを判断する(ステップS12)。数18のTDOP及び数19のGGTDOPが閾値(例えば3)未満であるかどうか判断する(ステップS13)。判断結果に応じて、以下の処理を行なう。
【0057】
捕捉された衛星数が閾値以上であるとともに(ステップS12においてYES)、数18のTDOP及び数19のGGTDOPが閾値未満であれば(ステップS13においてYES)、ハード遅延差の推定精度は良いと判断する。よって、ハード遅延差の推定値を未知量にした数8の測位方程式を最小二乗法で解く(ステップS14)。測位方程式を解いた後は、推定したハード遅延差をバックアップする(ステップS15)。
【0058】
捕捉された衛星数が閾値以上であるとしても(ステップS12においてYES)、数18のTDOP又は数19のGGTDOPが閾値以上であれば(ステップS13においてNO)、ハード遅延差の推定精度は悪いと判断する。
【0059】
ハード遅延差の推定精度が悪いと判断した場合は、バックアップしたハード遅延差があれば(ステップS16においてYES)、バックアップしたハード遅延差を用いて測位方程式を解き(ステップS17)、バックアップしたハード遅延差がなければ(ステップS16においてNO)、デフォルト値のハード遅延差を用いて測位方程式を解く(ステップS18)。ここで、デフォルト値とは、工場出荷時又は受信機開発時などに、良好な状態下で事前に測定された値のことであり、ROMに初期値として書き込まれた値のことである。
【0060】
ハード遅延差の推定精度が悪いと判断した場合は、ハード遅延差としてバックアップ値又はデフォルト値を用いることにより、数8で未知量であったハード遅延差を既知量とした測位方程式を解くことになる(ステップS17又はステップS18)。具体的には、数8において、観測ベクトルy、計画行列H、未知ベクトルθを、それぞれ、以下の数20から数22までにより構成し直して、測位方程式を解く。
【数20】
【数21】
【数22】
【0061】
捕捉された衛星数が閾値未満であれば(ステップS12においてNO)、未知量の数と比べて観測量の数が少ないため、数8の測位方程式は解けないので、バックアップしたハード遅延差があれば(ステップS16においてYES)、バックアップしたハード遅延差を用いて数20から数22までで構成された測位方程式を解き(ステップS17)、バックアップしたハード遅延差がなければ(ステップS16においてNO)、デフォルト値のハード遅延差を用いて数20から数22までで構成された測位方程式を解く(ステップS18)。
【0062】
バックアップしたハード遅延差がない場合というのは(ステップS16においてNO)、バックアップメモリがクリアされているような工場出荷時や、電池切れでバックアップの情報が消えている時などが該当する。このため、バックアップしたハード遅延差がないという状況は、頻繁には発生しない。
【0063】
ハード遅延差の推定精度が良いと見込まれるときには、測位方程式においてハード遅延差を未知量としてハード遅延差を精度よく推定する。ハード遅延差の推定精度が悪いと見込まれるときには、測位方程式においてある程度は推定精度が良い過去のハード遅延差を用いて既知量とする。ハード遅延差の推定精度が悪いと、測位誤差も連動して悪くなるが、測位方程式を解く前にハード遅延差の推定精度の善し悪しを判定することによって、測位誤差の減少を図ることができる。