特許第6203609号(P6203609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203609
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A61B8/06
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-240868(P2013-240868)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-100399(P2015-100399A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】神山 直久
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−212680(JP,A)
【文献】 特開2011−110211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の座標空間における被検体のある断面に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブと、
前記所定の座標空間における前記超音波プローブの位置を検出する位置検出部と、
前記超音波プローブによって取得されたエコー信号に基づく複数断面の超音波画像において、所望の部分を指示する入力を操作者が行なう入力部と、
前記所定の座標空間において前記所望の部分と対応する部分の位置情報であって、前記位置検出部によって検出された前記超音波プローブの位置に基づいて特定された位置情報を記憶する記憶部と、
造影剤が投与された前記被検体に対して、前記超音波プローブにより超音波が送受信されて得られたエコー信号に基づくデータの位置情報であって前記位置検出部によって検出された前記超音波プローブの位置に基づいて特定された前記座標空間における位置情報と、前記記憶部に記憶された位置情報とに基づいて、前記所望の部分を含む断面又は該所望の部分から所定の距離の範囲内に位置する部分を含む断面における前記エコー信号に基づくデータを特定し、該データの所定領域についての信号強度の時間変化曲線を作成する時間変化曲線作成部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記入力部により、前記所望の部分として前記超音波画像において関心領域が指示され、
前記時間変化曲線作成部は、前記エコー信号に基づくデータの位置情報と、前記記憶部に記憶された前記関心領域と前記座標空間において対応する部分の位置情報とに基づいて、前記座標空間における関心領域を含む断面についての前記エコー信号に基づくデータを特定して、該データに基づいて前記関心領域についての時間変化曲線を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記入力部により、前記所望の部分として前記超音波画像において点が指示され、
前記時間変化曲線作成部は、前記エコー信号に基づくデータの位置情報と、前記記憶部に記憶された前記点と前記座標空間において対応する点の位置情報とに基づいて、前記座標空間における点を含む断面又は該座標空間における点から前記所定の距離の範囲内に含まれる断面についての前記エコー信号に基づくデータを特定して、該データに基づいて前記所定領域における信号強度の時間変化曲線を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記エコー信号に基づくデータが、前記位置検出部によって検出された前記超音波プローブの位置に基づいて特定される前記座標空間における位置情報とともに記憶される記憶部を備え、
前記時間変化曲線作成部は、前記記憶部に記憶されたデータに基づいて前記時間変化曲線の作成を行なう
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記時間変化曲線作成部は、前記時間変化曲線の欠落部を補間して、補間済時間変化曲線を作成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記超音波プローブによる超音波の送受信面と、前記所望の部分との距離を示すインジケータを前記超音波画像に表示させるインジケータ表示制御部を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤が投与された被検体に対して超音波の送受信を行なって得られたエコー信号の信号強度の時間変化曲線を作成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置を用いて行われる造影検査では、腫瘍などに設定された関心領域と周囲の組織とで、血流に乗って流入する造影剤のエコー信号強度を比較することにより、血流量や、血流速度が正常であるか異常であるかを把握することができる。これにより、腫瘍の良悪性診断や悪性度の定量化などが可能となる。
【0003】
より詳細な造影検査のために、血流量や血流速度の詳細を定量化することも行われる。この場合、エコー信号の信号強度の時間変化曲線(Time Intensity Curve:TIC)が用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。このTICは、超音波画像において設定された関心領域についての平均信号強度を縦軸とし、時間を横軸としたグラフ(graph)である。
【0004】
TICは、所要時間の観察を必要とする。従って、操作者は、造影剤が投与された被検体におけるTICの観察断面において超音波プローブを所定時間固定した状態で超音波の送受信を行ない、得られたエコー信号に基づいて作成されるTICの観察を行なう。観察断面が異なる場合は、被検体に対して造影剤が再投与され、再度エコー信号が取得されてTICの観察が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−94292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、TICの観察断面が異なるごとに、上述のように造影剤を投与することは、コスト増になる。また、ある観察断面におけるTICの観察が行われた後に、造影剤を再投与するまでには、時間を空ける必要があり、TICの観察時間も含めれば、複数回の造影剤を投与してのTICの観察は、時間がかかる。
【0007】
例えば、二次元マトリクスアレイ(2Dアレイ)の超音波プローブを用い、三次元領域において超音波の送受信を行なって、エコーデータを取得すれば、造影剤の再投与を行なわずに、複数の観察断面について、TICの観察が可能である。しかし、二次元マトリクスアレイの超音波プローブは、被検体のある断面に対して超音波の送受信を行なう1Dアレイ等の超音波プローブと比較して画質が劣り、また振動子開口がより大きくなるために操作性や被検体への密着性が低下するといった課題がある。
【0008】
そこで、二次元マトリクスアレイを用いずに、複数回の造影剤の投与を行なうことなく、複数断面におけるTICの観察を可能とする超音波診断装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するためになされた一の観点の発明は、所定の座標空間における被検体のある断面に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブと、前記所定の座標空間における前記超音波プローブの位置を検出する位置検出部と、前記超音波プローブによって取得されたエコー信号に基づく複数断面の超音波画像において、所望の部分を指示する入力を操作者が行なう入力部と、前記所定の座標空間において前記所望の部分と対応する部分の位置情報であって、前記位置検出部によって検出された前記超音波プローブの位置に基づいて特定された位置情報を記憶する記憶部と、造影剤が投与された前記被検体に対して、前記超音波プローブにより超音波が送受信されて得られたエコー信号に基づくデータの位置情報であって前記位置検出部によって検出された前記超音波プローブの位置に基づいて特定された前記座標空間における位置情報と、前記記憶部に記憶された位置情報とに基づいて、前記所望の部分を含む断面又は該所望の部分から所定の距離の範囲内に位置する部分を含む断面における前記エコー信号に基づくデータを特定し、該データの所定領域についての信号強度の時間変化曲線を作成する時間変化曲線作成部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0010】
上記一の観点の発明によれば、前記複数断面の超音波画像において操作者によって指示された所望の部分を含む断面又は該所望の部分から所定の距離の範囲内に位置する部分を含む断面における前記エコー信号に基づくデータの所定領域についての信号強度の時間変化曲線が作成されるので、複数断面についての前記時間変化曲線の観察を、一回の造影剤の投与で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態における超音波診断装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2図1に示された超音波診断装置における表示制御部の構成を示すブロック図である。
図3】第一実施形態におけるエコー信号の取得の作用を示すフローチャートである。
図4】被検体において超音波の送受信が行われる異なる二つの断面を示す説明図である。
図5】ある断面におけるBモード画像に、関心領域が設定された状態の表示部を示す図である。
図6図5とは異なる他の断面におけるBモード画像に、関心領域が設定された状態の表示部を示す図である。
図7】被検体の体表面における超音波プローブの位置の時間変化を示す図である。
図8】時間変化曲線の作成の作用を示すフローチャートである。
図9】造影画像が表示された表示部を示す図である。
図10】時間変化曲線の一例を示す図である。
図11】補間済時間変化曲線の一例を示す図である。
図12】造影画像とともに補間済時間変化曲線が表示された表示部を示す図である。
図13】記憶部に記憶された全てのデータに基づいて作成されたある関心領域についての時間変化曲線の一例を示す図である。
図14】第一実施形態の変形例において、インジケータが表示された表示部を示す図である。
図15】第一実施形態の変形例において、インジケータが表示された表示部を示す図である。
図16】第二実施形態におけるエコー信号の取得の作用を示すフローチャートである。
図17】Bモード画像において操作者によって指示された点が表示された状態の表示部を示す図である。
図18】Bモード画像において操作者によって指示された二つの点が表示された状態の表示部を示す図である。
図19】関心領域が設定された表示部を示す図である。
図20】操作者によって指示された点に基づいて設定された球に、記憶部に記憶されたデータが取得された断面が含まれている状態を示す説明図である。
図21】第三実施形態におけるエコー信号の取得の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8、記憶部9を備える。
【0013】
前記超音波プローブ2は、アレイ状に配置された複数の超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。この超音波プローブ2は、1Dアレイプローブ、1.5Dアレイプローブなど、ある断面における超音波の送受信を行なう超音波プローブである。
【0014】
前記超音波プローブ2には、例えばホール素子で構成される前記磁気センサ10が設けられている。この磁気センサ10により、例えば磁気発生コイルで構成される磁気発生部11から発生する磁気が検出されるようになっている。前記磁気センサ10における検出信号は、前記表示制御部5へ入力されるようになっている。前記磁気センサ10における検出信号は、図示しないケーブルを介して前記表示制御部5へ入力されてもよいし、無線で前記表示制御部5へ入力されてもよい。前記磁気発生部11及び前記磁気センサ10は、後述のように前記超音波プローブ2の位置及び傾きを検出するために設けられている。
【0015】
前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2から所定の走査条件で超音波を送信するための電気信号を、前記制御部8からの制御信号に基づいて前記超音波プローブ2に供給する。また、前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、A/D変換、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0016】
前記エコーデータ処理部4は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、超音波画像を作成するための処理を行なう。例えば、前記エコーデータ処理部4は、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行ってBモードデータを作成する。また、前記エコーデータ処理部4は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、被検体に投与された造影剤が強調された造影画像を作成するための処理を行なって造影データを作成する。例えば、前記エコーデータ処理部4は、エコー信号の高調波成分を抽出するためのフィルタ処理を行なう。前記エコーデータ処理部4は、パルスインバージョン(Pulse Inversion)法によって造影剤からのエコー信号を抽出する処理を行なってもよい。また、前記エコーデータ処理部4は、異なる振幅の超音波を送信して得られたエコー信号に基づくエコーデータを減算して造影剤からの信号成分を抽出する処理(振幅変調法:Amplitude Modulation)を行なってもよい。
【0017】
前記表示制御部5は、図2に示すように、位置算出部51、表示画像制御部52、指示部分設定部53、時間変化曲線作成部54を有する。前記位置算出部51は、前記磁気センサ10からの磁気検出信号に基づいて、三次元空間において、前記磁気発生部11を原点とする座標空間における前記超音波プローブ2の位置及び傾きの情報(以下、「プローブ位置情報」と云う)を算出する。さらに、前記位置算出部51は、前記プローブ位置情報に基づいてエコーデータの前記座標空間における位置情報(超音波画像の位置情報)を算出する。
【0018】
前記磁気発生部11を原点とする座標空間は、本発明における所定の座標空間の実施の形態の一例である。また、前記位置算出部51及び前記磁気センサ10は、本発明における位置検出部の実施の形態の一例である。
【0019】
前記表示画像制御部52は、前記エコーデータ処理部4から入力されたローデータ(raw data)を、スキャンコンバータ(Scan Converter)によって走査変換して超音波画像データを作成する。前記ローデータが前記Bモードデータである場合、前記超音波画像データとして、Bモード画像データが作成される。また、前記ローデータが前記造影データである場合、前記超音波画像データとして、造影画像データが作成される。
【0020】
ちなみに、前記ローデータ及び前記超音波画像データは、本発明におけるエコー信号に基づくデータの概念に含まれる
【0021】
また、前記表示画像制御部52は、前記超音波画像データに基づく超音波画像、すなわち前記Bモード画像データに基づくBモード画像や、前記造影画像データに基づく造影画像を、前記表示部6に表示させる。
【0022】
前記指示部分設定部53は、前記表示部6に表示された超音波画像において、操作者が前記操作部7を用いて所望の部分を指示すると、指示された部分の前記座標空間における座標情報を前記記憶部9に記憶する。
【0023】
前記時間変化曲線作成部54は、後述するように、造影画像に設定された関心領域における信号強度の時間変化曲線(TIC)を作成し、前記表示部6に表示させる。
【0024】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイなどである。前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。前記操作部7は、本発明における入力部の実施の形態の一例である。
【0025】
前記制御部8は、特に図示しないがCPU(Central Processing Unit)を有して構成される。この制御部8は、前記記憶部9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0026】
前記記憶部9は、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)や、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)である。前記記憶部9は、本発明における記憶部の実施の形態の一例である。
【0027】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。先ず、被検体におけるエコー信号の取得について、図3のフローチャートに基づいて説明する。ステップS1では、操作者は、前記超音波プローブ2によって被検体に対する超音波の送受信を開始してエコー信号を取得し、このエコー信号に基づくBモード画像を前記表示部6に表示させる。
【0028】
次に、ステップS2では、操作者は、前記操作部7を用いて、Bモード画像に関心領域を設定する。前記指示部分設定部52は、前記操作部7における前記関心領域Rを設定する入力に基づいて、前記Bモード画像に前記関心領域を設定し、前記Bモード画像における位置情報を前記記憶部9に記憶する。ただし、この位置情報は、前記表示部6に表示されるBモード画像以外の超音波画像(例えば後述の造影画像)における位置情報でもある。
【0029】
また、前記指示部分設定部52は、前記座標空間において前記関心領域と対応する領域の位置情報を特定してこれを前記記憶部9に記憶する。従って、前記座標空間にも関心領域が設定される。
【0030】
より詳細に説明すると、前記関心領域は、操作者が後述の時間変化曲線を観察したい領域に設定される。また、前記関心領域は、複数の断面について設定される。本例では、操作者は、図4に示すように、被検体Pにおける異なる断面D1及び断面D2の各々において前記超音波プローブ2による超音波の送受信を行ない、各々の断面について前記関心領域を設定する。具体的には、図5に示すように、前記断面D1におけるBモード画像BI1において、関心領域R1が設定される。また、図6に示すように、前記断面D2におけるBモード画像BI2において、関心領域R2が設定される。前記記憶部9には、前記Bモード画像BI1における前記関心領域R1の位置情報及び前記Bモード画像BI2における前記関心領域R2の位置情報が記憶される。前記関心領域R1,R2は、本発明における所望の部分の実施の形態の一例であり、本発明における所定領域の実施の形態の一例である。
【0031】
また、前記座標空間において、前記関心領域R1,R2に対応する領域の位置情報が前記記憶部9に記憶される。前記座標空間において前記関心領域R1に対応する領域を関心領域Rr1とし、前記座標空間において前記関心領域R2に対応する領域を関心領域Rr2とする。すなわち、前記記憶部9には、前記関心領域のRr1,Rr2の位置情報が記憶される。前記関心領域Rr1,Rr2の位置情報は、前記位置算出部51によって算出される前記エコーデータの前記座標空間における位置情報に基づいて特定される。前記関心領域Rr1,Rr2の位置情報は、本発明において記憶部に記憶される位置情報の実施の形態の一例である。
【0032】
次に、ステップS3では、被検体Pに対して造影剤の投与が行われる。このステップS3において造影剤の投与が行われると、ステップS4において、操作者は前記超音波プローブ2による超音波の送受信を行ない、エコー信号を取得する。操作者は、前記断面D1に設定された前記関心領域Rr1と、前記断面D2に設定された前記関心領域Rr2とが、超音波の送受信面に含まれるように、前記超音波プローブ2を位置させる。
【0033】
例えば、操作者は、図7に示すように、断面D1と断面D2の間を往復するように前記超音波プローブ2を動かしながら超音波の送受信を行なう。図7では横軸が時間、縦軸が被検体Pの体表面における位置を示しており、符号Lは前記超音波プローブの軌跡を示している。前記超音波プローブ2は、破線で示された断面D1と断面D2の間を往復する。この図7に示されているように、前記超音波プローブ2が前記断面D1に留まる期間td1の長さと、前記超音波プローブ2が前記断面D2に留まる期間td2の長さは、異なっていてもよい。また、期間td1の各々の長さが異なっていてもよく、期間td2の各々の長さが異なっていてもよい。
【0034】
このように、前記超音波プローブ2が前記断面D1と前記断面D2の間を往復しながら取得されたエコー信号に基づくデータは、前記記憶部9に記憶される。この記憶部9に記憶されるデータは、前記エコーデータ処理部4によって作成された造影データであってもよい。前記データは、前記座標空間における位置情報とともに、前記記憶部9に記憶される。前記データの位置情報は、前記位置算出部51によって算出された位置情報である。エコーデータが記憶されると処理が終了する。
【0035】
次に、得られたデータに基づく時間変化曲線(TIC)の作成について、図8のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS11では、操作者は時間変化曲線の作成を開始する入力を前記操作部7において行なう。このステップS11において操作者による入力が行われると、ステップS12では、前記時間変化曲線作成部54は、前記記憶部9に記憶されたデータに基づいて、時間変化曲線を作成し、これを前記表示部6に表示する。
【0036】
このステップS12では、前記表示画像制御部52が、図9に示すように、造影データに基づく造影画像CIを前記表示部6に表示させてもよい。前記記憶部9に造影データが記憶されている場合、この造影データに基づく造影画像CIが表示される。一方、前記記憶部9に記憶されているデータが、前記造影データが作成される前のエコーデータである場合、前記エコーデータ処理部4によって造影データが作成される。
【0037】
前記時間変化曲線の作成について具体的に説明する。前記時間変化曲線作成部54は、前記記憶部9に記憶された前記造影データのうち、前記断面D1,D2についての造影データを用いて、前記超音波画像に設定された関心領域R1,R2における造影データの信号強度の時間変化を示す前記時間変化曲線を作成する。前記造影データの信号強度は、前記関心領域R1,R2の各々における平均の信号強度である。
【0038】
前記時間変化曲線作成部54は、前記時間変化曲線を作成する時に、前記記憶部9に記憶されたデータの位置情報と、前記記憶部9に記憶された前記関心領域R1,R2,Rr1,Rr2の位置情報を用いる。具体的に述べると、前記時間変化曲線作成部54は、前記記憶部9に記憶されたデータの位置情報と、前記記憶部9に記憶された前記座標空間における前記関心領域Rr1,Rr2の位置情報に基づいて、前記座標空間に設定された関心領域Rr1,Rr2を含む断面D1,D2についての造影データCD1,CD2を特定する。そして、前記時間変化曲線作成部54は、前記造影データCD1,CD2のうち、前記超音波画像に設定された関心領域R1,R2の位置のデータを抽出して、このデータに基づいて前記時間変化曲線を作成する。
【0039】
時間変化曲線の一例を図10に示す。この図10において、時間変化曲線T1は、前記関心領域R1についての時間変化曲線であり、時間変化曲線T2は、前記関心領域R2についての時間変化曲線である。前記時間変化曲線T1は、図7に示す前記期間td1において得られる。従って、前記時間変化曲線T1は、前記期間td1のみにおける間欠的な時間変化曲線である。また、前記時間変化曲線T2は、図7に示す前記期間td2において得られる。従って、前記時間変化曲線T2は、前記期間td2のみにおける間欠的な時間変化曲線である。
【0040】
ちなみに、図10における破線部分は、時間変化曲線T1,T2の欠落部分を示している。
【0041】
前記時間変化曲線作成部54は、前記時間変化曲線T1,T2に対して欠落部分を補う補間処理を行ない、図11に示すように補間済時間変化曲線Ti1,Ti2を作成する。補間処理としては、例えば直線補間、スプライン補間などが挙げられる。また、ガンマ曲線補間などフィッティング法が用いてもよい。
【0042】
前記時間変化曲線作成部54は、図12に示すように、前記造影画像CIとともに、前記補間済時間変化曲線Ti1,Ti2を前記表示部6に表示させる。これにより、操作者は、前記断面D1における前記関心領域R1の信号強度の時間変化と、前記断面D2における前記関心領域R2の信号強度の時間変化を、一回の造影剤の投与で知ることができる。
【0043】
また、特に図示しないが、前記時間変化曲線作成部54は、補間前の前記時間変化曲線T1,T2を前記表示部6に表示させてもよい。これにより、造影剤投与前と、造影剤投与後の所定のタイミングにおける信号強度を知ることができ、診断に役立てることができる。この場合、信号強度を知りたいタイミングで、前記関心領域Rr1,Rr2を含む断面における超音波の送受信が行われることが好ましい。
【0044】
ここで、前記記憶部9に記憶された全てのデータ、すなわち前記断面D1、前記断面D2及びこれら断面D1,D2の間の領域において取得されたデータに基づいて、時間変化曲線が作成された場合について、本例との比較のため説明する。図13に示された時間変化曲線T′は、前記造影画像CIにおける前記関心領域R1の信号強度の時間変化曲線の一例である。この時間変化曲線T′は、前記断面D1における前記関心領域R1の造影データの信号強度の時間変化のほか、他の部分における前記関心領域R1の造影データの信号強度の時間変化を含んでいる。従って、この時間変化曲線T′を見ても、前記断面D1における前記関心領域R1の造影データの信号強度の時間変化を知ることは困難である。
【0045】
一方、本例によれば、上述のように、他の部分を除いた前記断面D1,D2のみにおける関心領域R1,R2の造影データの信号強度の時間変化を知ることができる。
【0046】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。図14に示すように、前記表示画像制御部52は、前記表示部6にインジケータIn1,In2を表示させてもよい。例えば、前記インジケータIn1,In2は、造影画像CIに表示される。
【0047】
前記インジケータIn1は、前記座標空間に設定された前記関心領域Rr1と前記超音波プローブ2による超音波の送受信面との距離d1、又は前記関心領域Rr1内の任意の点と前記超音波プローブ2による超音波の送受信面との距離d1′を示す。また、前記インジケータIn2は、前記座標空間に設定された前記関心領域Rr2と前記超音波プローブ2による超音波の送受信面との距離d2、又は前記関心領域Rr2内の任意の点と前記超音波プローブ2による超音波の送受信面との距離d2′を示す。
【0048】
前記インジケータIn1,In2は、前記距離d1,d1′,d2,d2′に応じた面積の四角形である。ただし、前記距離d1,d1′,d2,d2′が零である場合、前記インジケータIn1,In2は、「+」になる。図15では、前記インジケータIn1が「+」で表示された状態が示されている。
【0049】
前記表示画像制御部52は、前記位置算出部51によって算出される超音波の送受信面の位置情報と、前記記憶部9に記憶された前記関心領域Rr1,Rr2の位置情報とに基づいて、前記距離d1,d1′,d2,d2′を算出し、前記インジケータIn1,In2を表示する。前記表示画像制御部52は、本発明におけるインジケータ表示制御部の実施の形態の一例である。
【0050】
前記インジケータIn1,In2が、リアルタイムの造影画像CIに表示されることにより、操作者は、前記ステップS4において、前記断面D1,D2を含むように容易に超音波の送受信を行なうことができる
【0051】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。この第二実施形態では、第一実施形態とはエコー信号の取得時の作用が異なっている。図16のフローチャートに基づいて本例の作用を説明する。
【0052】
図16のフローチャートは、第一実施形態の図3のフローチャートとは、ステップS1の後のステップS2′の処理が異なっている。具体的には、このステップS2′において、図17に示すように、操作者は、前記操作部7を用いてBモード画像BIにおいて点Pを指示する。この点Pは、時間変化曲線の観察をしたい領域内において指示される。前記指示部分設定部52は、前記操作部7における入力に基づいて、前記座標空間において前記点Pと対応する点Ppの位置情報を前記記憶部9に記憶する。また、前記指示部分設定部52は、前記操作部7の入力によって指示された点Pを前記Bモード画像BIに表示させる。
【0053】
本例においても、前記点Pは前記断面D1,D2の各々に設定される。前記断面D1に設定された点を点P1とし、前記断面D2に設定された点を点P2とする。前記図17は、前記断面D1についてのBモード画像BI1において点P1が指示された状態が示されている。一方、図18には、前記断面D2についてのBモード画像BI2において点Pが指示された状態が示されている。前記指示部分設定部52は、前記座標空間において前記点P1,P2と対応する点Pp1,Pp2の位置情報を前記記憶部9に記憶する。前記点Pp1,Pp2は、第一実施形態における前記関心領域Rr1,Rr2の代わりに設定される。前記点P1,P2は、本発明における所望の部分の実施の形態の一例である。
【0054】
また、操作者は、前記第一実施形態と同様に、図19に示すように、Bモード画像BIにおいて前記関心領域R1,R2を設定する。これにより、Bモード画像における前記関心領域R1,R2の位置情報が前記記憶部9に記憶される。ここでは、特に図示して説明はしないが、前記関心領域R1は、前記断面D1についてのBモード画像BI1において設定される。また、前記関心領域R2は、前記断面D2についてのBモード画像BI2において設定される。前記関心領域R1,R2は、本発明における所定領域の実施の形態の一例である。
【0055】
本例では、前記ステップS4におけるエコー信号の取得において、超音波の送受信面が、前記断面D1,D2を完全に含んでいる必要はない。
【0056】
本例における時間変化曲線の作成について説明する。前記時間変化曲線作成部54は、前記点P1,P2を中心とする半径rの球S1,S2を前記座標空間に設定する。そして、前記時間変化曲線作成部54は、前記記憶部9に記憶されたデータの中から、例えば図20に示すように、前記球S1に含まれる断面D1′についての造影データCD1′を特定する。また、前記時間変化曲線作成部54は、前記記憶部9に記憶されたデータの中から、前記球S2に含まれる断面D2′についての造影データCD2′を特定する。前記時間変化曲線作成部54は、前記記憶部9に記憶されたデータの位置情報と、前記座標空間における前記球S1,S2の位置情報とに基づいて、前記造影データCD1′,CD2′の特定を行なう。前記球S1,S2の位置情報は、前記点P1,P2の位置情報に基づいて特定される。
【0057】
なお、前記球S1,S2が設定されずに、前記点P1を含む断面D1′についての造影データCD1′及び前記点P2を含む断面D2′についての造影データCD2′が特定されてもよい。
【0058】
前記断面D1′,D2′は、前記点P1,P2及び前記関心領域R1,R2が設定された断面D1,D2とは異なっていてもよい。
【0059】
前記時間変化曲線作成部54は、前記造影データCD1′,CD2′のうち、前記超音波画像に設定された関心領域R1,R2の位置のデータを抽出して、このデータに基づいて、前記関心領域R1の時間変化曲線T1及び前記関心領域R2の時間変化曲線T2を作成する。本例においても、前記第一実施形態と同様に、前記時間変化曲線T1,T2に基づいて補間済時間変化曲線Ti1,Ti2が作成されてもよいことはもちろんである。
【0060】
本例によれば、前記点P1,P2を含む前記断面D1′,D2′又は前記点P1,P2の近傍の前記断面D1′,D2′における関心領域R1,R2の時間変化曲線T1,T2が作成されるので、第一実施形態と同様に、複数断面についての時間変化曲線を、一回の造影剤の投与で得ることができる。
【0061】
次に、第二実施形態の変形例について説明する。前記点P1,P2は、操作者が関心領域R1,R2を設定すると、前記指示部分設定部52によって前記関心領域R1,R2内に自動的に設定されてもよい。この場合、前記点P1,P2は、前記関心領域R1,R2に対して予め設定された位置関係の位置に設定される。例えば、前記関心領域R1,R2が円である場合、円の中心に前記点P1,P2が設定される。
【0062】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。この第三実施形態においても、第一、第二実施形態とはエコー信号の取得時の作用が異なっている。図21のフローチャートに基づいて本例の作用を説明する。
【0063】
先ず、ステップS21では、被検体に対して造影剤の投与が行われる。次に、ステップS22では、操作者は、前記超音波プローブ2によって被検体に対する超音波の送受信を開始してエコー信号を取得する。そして、このエコー信号に基づいて、造影データ及び造影画像データが作成され、造影画像が前記表示部6に表示される。
【0064】
次に、ステップS23では、操作者は、前記操作部7を用いて、造影画像CIに関心領域Rを設定する。本例でも、前記指示部分設定部52は、前記第一実施形態のステップS2と同様にして前記関心領域Rを設定し、造影画像CIにおける前記関心領域Rの位置情報を前記記憶部9に記憶する。
【0065】
本例においても、前記関心領域Rは、異なる複数の断面の造影画像CIにおいて設定される。具体的には、特に図示しないが、断面D1における造影画像CI1において関心領域R1が設定され、前記断面D1とは異なる断面D2における造影画像CI2において関心領域R2が設定される。そして、関心領域R1,R2の位置情報と、座標空間において関心領域R1,R2に対応する領域である関心領域Rr1,Rr2の位置情報とが前記記憶部9に記憶される。
【0066】
前記ステップS23において、前記関心領域R1,R2が設定されると、ステップS24では、操作者は、引き続き前記超音波プローブ2によって超音波の送受信を行なってエコー信号を取得する。このステップS24では、前記第一、第二実施形態の前記ステップS4と同様に、操作者は、前記関心領域Rr1,Rr2が含まれるように、前記超音波プローブ2によって超音波の送受信を行なってエコー信号を取得する。前記エコーデータ処理部4は、得られたエコー信号に基づいて造影データを作成する。この造影データは、前記座標空間における位置情報とともに前記記憶部9に記憶される。
【0067】
本例においても、前記ステップS11,S12の処理によって時間変化曲線が作成される。時間変化曲線は、前記ステップS24において得られた造影データに基づいて作成される。
【0068】
以上説明した本例においても、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
なお、本例においても、前記ステップS3において、第二実施形態と同様に、前記関心領域Rr1,Rr2の代わりに前記点P1,P2の設定が行われてもよい。
【0070】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記第二、第三実施形態においても、第一実施形態の変形例と同様に、前記インジケータIn1,In2が表示されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
7 操作部(入力部)
9 記憶部
11 磁気発生部(位置検出部)
51 位置算出部(位置検出部)
52 表示画像制御部(インジケータ表示制御部)
54 時間変化曲線作成部
図1
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