特許第6203622号(P6203622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203622
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】携帯用作業機
(51)【国際特許分類】
   A01G 3/08 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A01G3/08 503Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-257624(P2013-257624)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-112081(P2015-112081A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(72)【発明者】
【氏名】今福 健治
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−116887(JP,A)
【文献】 特開平05−195804(JP,A)
【文献】 特開平05−185403(JP,A)
【文献】 特開2003−117902(JP,A)
【文献】 米国特許第05687689(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 3/04−3/08
B25F 5/02
B27B 17/00
E01H 1/08
F02B 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面視でコ字形に形成されたエンジンケースの内側空間にエンジンを配置し、前記エンジンケースのエンジン排気側に取り付けられる側部カバーと、前記エンジンケースの上壁に配置された操作用のハンドルとを有する携帯用作業機であって、
前記側部カバーを、エンジン排気部分を覆うマフラカバーと、前記エンジンで駆動される回転駆動部を覆う駆動部カバーとに分割し、
前記マフラカバーは、エンジンを冷却した冷却熱風を通す風穴とエンジンの排気ガスを通す風穴とを有すると共に、前記冷却熱風を通す風穴又は排気ガスを通す風穴と交差するように配設された補強リブを有し、更に前記駆動部カバーの後端側に隣接する前端側には内方へ折れ曲がった細長状の補強枠を備え、前記エンジンケースのコ字形の根元部と該根元部から延びる上下板部の中間部とで固定され
前記駆動部カバーは、前記マフラカバーの前方側にてエンジンケースの上下板部の間に着脱可能に装着され
前記エンジンケースのコ字形の根元部に燃料タンクを備えた、
ことを特徴とする携帯用作業機。
【請求項2】
前記冷却熱風を通す風穴及び排気ガスを通す風穴は、前記エンジンケースの長手方向に延びて形成されたことを特徴とする請求項に記載の携帯用作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを動力源とするチェンソー、刈払機、送風機等の携帯用作業機に関し、詳しくは、エンジンケースのエンジン排気側に取り付けられる側部カバーの構造を改良して、エンジンケースの揺れと変形に対する剛性を向上すると共に、作業部品の着脱作業性を向上する携帯用作業機に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の携帯用作業機、例えばチェンソーは、側面視でコ字形に形成されたエンジンケースの内側空間にエンジンを配置し、前記エンジンケースのエンジン排気側に取り付けられる側部カバーと、前記エンジンケースの上壁に配置された操作用のハンドルとを有して成っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7168132号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載のチェンソーにおいては、エンジンケースのエンジン排気側に取り付けられる側部カバーが一体物に形成されて前後に長く延びており、この長い側部カバーを、エンジンケースの前部側にて1個のネジで取り付けていた。そして、木材等の切断作業の作業部品であるガイドバー及びソーチェンを装着するのに、前記側部カバーの全体を外して、エンジンケースの前部側にガイドバーとソーチェンを取り付けるようになっていた。
【0005】
この場合、長い側部カバーの全体を取り外した後に、エンジンケースの前部側にガイドバーとソーチェンを取り付け、その後再び前記エンジンケースに側部カバーの全体を位置合わせして取り付けていた。作業後は、前記と逆手順によりガイドバー及びソーチェンを取り外していた。また、切断作業の緊急停止のブレーキを掛けるフロントハンドガードも前記側部カバーに取り付けられていた。したがって、ガイドバー及びソーチェン並びに側部カバーの着脱の作業性が良いとは言えなかった。
【0006】
また、前記側部カバーは、例えば側面視でコ字形に形成されたエンジンケースの1箇所にネジ止めして取り付けられているだけなので、エンジンの駆動により揺れるエンジンケースの振動や変形を抑えることはできないものであった。すなわち、前記側部カバーは、単にエンジンケースの側面を覆っているだけであり、エンジンケースの揺れと変形に対する剛性を与えるものではなかった。また、前記エンジンケースの揺れにより、エンジンケースの上壁に配置された操作用のハンドルが振動することがあった。
【0007】
そこで、このような問題点に対処し、本発明が解決しようとする課題は、エンジンケースのエンジン排気側に取り付けられる側部カバーの構造を改良して、エンジンケースの揺れと変形に対する剛性を向上すると共に、作業部品の着脱作業性を向上する携帯用作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明による携帯用作業機は、側面視でコ字形に形成されたエンジンケースの内側空間にエンジンを配置し、前記エンジンケースのエンジン排気側に取り付けられる側部カバーと、前記エンジンケースの上壁に配置された操作用のハンドルとを有する携帯用作業機であって、前記側部カバーを、エンジン排気部分を覆うマフラカバーと、前記エンジンで駆動される回転駆動部を覆う駆動部カバーとに分割し、前記マフラカバーは、エンジンを冷却した冷却熱風を通す風穴とエンジンの排気ガスを通す風穴とを有すると共に、前記冷却熱風を通す風穴又は排気ガスを通す風穴と交差するように配設された補強リブを有し、更に前記駆動部カバーの後端側に隣接する前端側には内方へ折れ曲がった細長状の補強枠を備え、前記エンジンケースのコ字形の根元部と該根元部から延びる上下板部の中間部とで固定され、前記駆動部カバーは、前記マフラカバーの前方側にてエンジンケースの上下板部の間に着脱可能に装着され、前記エンジンケースのコ字形の根元部に燃料タンクを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による携帯用作業機によれば、側面視でコ字形に形成されたエンジンケースのエンジン排気側に取り付けられる側部カバーを、エンジン排気部分を覆うマフラカバーと、エンジンで駆動される回転駆動部を覆う駆動部カバーとに分割し、前記マフラカバーを、エンジンを冷却した冷却熱風を通す風穴とエンジンの排気ガスを通す風穴とを有すると共に、前記冷却熱風を通す風穴又は排気ガスを通す風穴と交差するように配設された補強リブを有し、更に前記駆動部カバーの後端側に隣接する前端側には内方へ折れ曲がった細長状の補強枠を備え、前記エンジンケースのコ字形の根元部と該根元部から延びる上下板部の中間部とで固定したことにより、エンジンケースの揺れと変形に対する剛性を向上することができる。したがって、エンジンの駆動によるエンジンケースの揺れや変形を抑えることができる。また、前記駆動部カバーを、前記マフラカバーの前方側にてエンジンケースの上下板部の間に着脱可能に装着したことにより、エンジンケースの前部側に作業部品を着脱する際に駆動部カバーだけを着脱すればよいので、作業部品の着脱作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による携帯用作業機の実施形態を示す右側面図である。
図2】前記携帯用作業機において駆動部カバーを取り外した状態を示す右側面図である。
図3】前記携帯用作業機においてさらに作業部品を取り外した状態を示す右側面図である。
図4】前記携帯用作業機を構成するエンジンケース、マフラカバー等を示す分解斜視図である。
図5】前記マフラカバーを裏面側から見た状態を示す拡大斜視図である。
図6】取り外した状態の駆動部カバーを示す拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明による携帯用作業機の実施形態を示す右側面図であり、図2図1において駆動部カバーを取り外した状態を示す右側面図であり、図3図2においてさらに作業部品を取り外した状態を示す右側面図である。そして、図4は前記携帯用作業機を構成する部品の一部を示す分解斜視図である。
【0012】
この携帯用作業機は、エンジンを動力源とするチェンソー、刈払機、送風機等に適用されるものであり、図1図3は、本発明をチェンソーに適用した例を示す。携帯用作業機としてのチェンソーは、作業部品1であるガイドバー2及びソーチェン3を装着してエンジンの駆動により木材等の切断作業を行うもので、側面視で略コ字形に形成されたエンジンケース4(図4参照)の内側空間にエンジン5(図1参照)を配置し、前記エンジンケース4のエンジン排気側に取り付けられる側部カバー6と、前記エンジンケース4の上壁に配置された操作用のハンドル7とを有している。なお、前記操作用のハンドル7はトップハンドルと呼ばれることがあり、このようなトップハンドルを備えたチェンソーは、トップハンドルチェンソー又はトップハンドルソーと呼ばれる。また、図1において、符号8は、切断作業の緊急停止のブレーキを掛けるフロントハンドガードを示す。
【0013】
作業部品1は、木材等の切断作業を行うもので、エンジンで駆動される回転駆動部の近傍に連結される細長板状のガイドバー2と、そのガイドバー2の周縁部に巻回されて走行するソーチェン3とから成る。
【0014】
前記作業部品1を駆動するエンジン5は、図4に示すエンジンケース4の内側空間に配置される。このエンジンケース4は、前記エンジン5を搭載する基部材となるもので、側面視で略コ字形に形成されており、そのコ字形の内側空間にエンジン5が配置され、コ字形の根元部4aには燃料タンク9を備えている。この燃料タンク9の存在により、エンジンケース4の根元部4aが重くなる。
【0015】
前記エンジンケース4のエンジン排気側には、図1に示すように、側部カバー6が取り付けられる。この側部カバー6は、エンジンケース4のエンジン排気側の側面全体を覆うもので、本発明においては、マフラカバー10と、駆動部カバー11とに分割されている。
【0016】
前記マフラカバー10は、エンジン排気部分を覆うもので、エンジン5から延びるマフラから排出される高温の排気ガス及びエンジン5を冷却した高温の冷却熱風を通すようになっており、図4に示すように、エンジンケース4のコ字形の根元部4aと、該根元部4aからコ字形に開いて延びる上板部4b、下板部4cの中間部とで固定されている。すなわち、エンジンケース4の根元部4aの外側面に形成された係止突起12と、マフラカバー10の前記エンジンケース4の係止突起12に対応する箇所に形成された係止孔部13とを嵌合して、マフラカバー10をエンジンケース4の根元部4aに止める。また、マフラカバー10の前記係止孔部13と反対側辺の上下端部に切られたネジ穴にネジ14a,14bを通して前記エンジンケース4の上板部4b、下板部4cの中間部に切られたネジ穴15a,15bに螺合することで、マフラカバー10をエンジンケース4の上板部4b、下板部4cの中間部に止める。なお、エンジンケース4の根元部4aに対するマフラカバー10の止めは、ネジ止めとしてもよい。
【0017】
このように、エンジンケース4のコ字形の根元部4aと該根元部4aから延びる上下板部4b,4cの中間部とでマフラカバー10を固定することにより、エンジンケース4の揺れと変形に対する剛性を向上することができ、エンジン5の駆動によるエンジンケース4の揺れや変形を抑えることができる。なお、図4において、符号22はエンジンケース4の上板部4bに取り付けられたインテークプレートを示し、符号23は下板部4cに取り付けられた断熱シートを示している。
【0018】
図5は、前記マフラカバー10を裏面側から見た状態を示す拡大斜視図である。このマフラカバー10は、樹脂製のカバーであり、冷却熱風を通す風穴16と、排気ガスを通す風穴17とを有している。前記冷却熱風を通す風穴16は、エンジン5を冷却した高温の冷却熱風を通すもので、図4に示すエンジンケース4の長手方向に延びて形成され、細長状に複数本形成されている。また、前記排気ガスを通す風穴17は、エンジン5の高温の排気ガスを通すもので、エンジンケース4の長手方向に延びて形成され、略矩形状の大きな穴が1個形成されている。
【0019】
そして、前記マフラカバー10は、その内部に補強リブ18を有している。この補強リブ18は、前記冷却熱風を通す風穴16及び排気ガスを通す風穴17が形成されたマフラカバー10の強度を高めるもので、前記冷却熱風を通す風穴16及び/又は排気ガスを通す風穴17と交差するように配設されている。その角度は適宜でよいが、例えばマフラカバー10の上下軸に対して約40度程度の傾斜角とすればよい。なお、マフラカバー10の前端側(図5において左側端)には、該マフラカバー10の内方へ折れ曲がった細長状の補強枠19が形成されており、この補強枠19によってもマフラカバー10の強度を高めている。このようなマフラカバー10の補強構造によって、図1に示す操作用のハンドル7の上下方向の荷重による揺れや変形を抑制することができる。
【0020】
一方、前記駆動部カバー11は、エンジン5で駆動される回転駆動部を覆うもので、チェンソーにおいてはチェンカバーと呼ばれ、図2に示すガイドバー2及びソーチェン3から成る作業部品1に回転駆動力を伝達するクラッチ20及びその周辺部を覆うようになっており、図1に示すように、前記マフラカバー10の前方側にてエンジンケース4(図4参照)の上下板部4b,4cの間に着脱可能に装着されている。すなわち、図1に示す六角ナット等の締結具21を緩めることにより、図2に示すように駆動部カバー11を取り外すことができ、その駆動部カバー11をマフラカバー10の前方側にセットして締結具21を締め付けることにより、図1に示すように駆動部カバー11を取り付けるようになっている。
【0021】
図6は、取り外した状態の駆動部カバー11を示す拡大右側面図である。この駆動部カバー11は、樹脂製のカバーであり、図2に示すクラッチ20及びその周辺部を覆う適宜の形状とされている。
【0022】
なお、図4において、前記エンジンケース4のマフラカバー10と反対側の側面には、エンジン5を始動させるリコイルスタータが組み付けられて側壁に冷却空気の風穴が多数開口されたスタータケース24が取り付けられる。このスタータケース24は、エンジンケース4のマフラカバー10と反対側の側面に複数のネジ25(例えば4点以上)によるネジ止めにより装着される。この結果、前記エンジンケース4は、左右両側部に取り付けられる構造部材により、エンジンケース4の揺れと変形に対する剛性が向上する。これらのことから、エンジンケース4の燃料タンク9を備えた根元部4aが上下方向に揺れて振動するのを抑制する。また、図1に示す操作用のハンドル7からの荷重を支えると共に、そのハンドル7への揺れの伝達を抑える。
【0023】
次に、このように構成された携帯用作業機の使用について、図1図3を参照して説明する。まず、図1において、本発明の携帯用作業機をチェンソーとして使用する際は、エンジンケース4の前部側に作業部品1であるガイドバー2及びソーチェン3を装着した状態で、操作用のハンドル7を把持してエンジンの駆動により木材等の切断作業を行う。そして、前記ガイドバー2及びソーチェン3を整備したり、交換する場合は、図1に示す駆動部カバー11を止めている締結具21を緩めることにより、図2に示すように駆動部カバー(チェンカバー)11を取り外す。この状態では、マフラカバー10はエンジンケース4の根元部側に装着されたままである。
【0024】
次に、図2において、駆動部カバー11が取り外された状態で、前記ガイドバー2及びソーチェン3を整備したり、交換する。図3は、図2の状態からさらにガイドバー2及びソーチェン3を取り外した状態である。なお、図3において、符号26は、木材等の切断作業を行う際に対象物とチェンソーとがずれないように噛み付かせるスパイクを示している。
【0025】
次に、図3において、他のガイドバー2及びソーチェン3を装着したり、他の作業部品を装着する場合は、図2に示すように、エンジンケース4の前部側にそれらの作業部品を装着した後、図1に示すように、マフラカバー10の前方側に駆動部カバー11を取り付け、締結具21を締め付けて該駆動部カバー11を固定する。このとき、駆動部カバー11は、前記マフラカバー10と分割されて従来の側部カバーより小型に形成されると共に、他の部材は何も取り付けられていないので、その着脱が容易となる。このように、駆動部カバー11の着脱が容易となることから、ガイドバー2及びソーチェン3等の作業部品の着脱作業性も向上する。
【符号の説明】
【0026】
1…作業部品
2…ガイドバー
3…ソーチェン
4…エンジンケース
4a…根元部
4b…上板部
4c…下板部
5…エンジン
6…側部カバー
7…操作用のハンドル
9…燃料タンク
10…マフラカバー
11…駆動部カバー
16…冷却熱風を通す風穴
17…排気ガスを通す風穴
18…補強リブ
24…スタータケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6