特許第6203623号(P6203623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工サーマルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6203623-送風機 図000002
  • 特許6203623-送風機 図000003
  • 特許6203623-送風機 図000004
  • 特許6203623-送風機 図000005
  • 特許6203623-送風機 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203623
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/54 20060101AFI20170914BHJP
   F04D 25/16 20060101ALI20170914BHJP
   F04D 25/08 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   F04D29/54 D
   F04D25/16
   F04D25/08 303
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-258800(P2013-258800)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-113818(P2015-113818A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】姫野 太充
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】三苫 恵介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆博
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−128148(JP,A)
【文献】 特開2008−202890(JP,A)
【文献】 特開平07−305868(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0091563(US,A1)
【文献】 実開昭56−147398(JP,U)
【文献】 特開2007−101016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/54
F04D 25/16
F04D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ファンと、前記第1ファンと並列に設けられる第2ファンとを有する、ファン部と、
前記第ファンの周囲を取り囲む第1マウスと、前記第2ファンの周囲を取り囲む第2マウスを有し、樹脂材料からなるベルマウスと、を備え、
前記第1マウスと前記第2マウスの互いに対向する部位に平坦な面が形成されており、
前記第1マウスと前記第2マウスは、外力を受けて変位すると、互いに対向する前記平坦な面が接する、
ことを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記第1マウスおよび前記第2マウスの少なくとも一方は、
周方向にリブが形成されている、
請求項1に記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機に関し、特に樹脂製のベルマウスを備える送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、室内の空気を熱交換する室内機と、外気に対して放熱または外気から吸熱し、送風機を備える室外機を有している。送風機は、ファンと、ファンの周囲を取り囲み、空気を送風するためのベルマウスを備えている。ベルマウスは、ファンと一定のクリアランスを設けて設置される。クリアランスは小さいほど、ベルマウスの送風効果が高くなるため、一般的に、クリアランスは小さく設定される。
ベルマウスを構成する突出口(以下、マウスと呼ぶ)は、ファンの数に対応して設けられる。例えば、特許文献1の室外機は、鉛直方向に並列した2つのファンに対し、マウスが間隔をあけて2つ設けられている。
【0003】
送風機には、金属製あるいは樹脂製のベルマウスが用いられている。
金属製のベルマウスは、剛性が高いため、積雪荷重や風荷重等の外力により変形するおそれが低いが、加工上の制限があるため形状の自由度は低い。
一方、樹脂製のベルマウスは、例えば射出成形により形成することができるため、形状の自由度は高くなるが、金属製に比べ剛性が低いため、外力により撓み、ベルマウスが変形するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−231985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マウスが2つ並列し、一体的に形成された樹脂製のベルマウスは、左右両端を固定部材で固定される。ベルマウスに外力が加わると、中央部は外力に対する支えがないため、ベルマウスの中央部分が撓んで、凹むおそれがある。ベルマウスの中央部分が凹むと、マウスは、中央側に変位するため、マウスの配列方向のクリアランスは大きくなり、配列方向と垂直の方向のクリアランスは小さくなる。クリアランスが大きくなると、ベルマウスの送風の性能が低下し、室外機の性能が低下する。一方、クリアランスが小さくなると、ファンとベルマウスが干渉し、ファンおよびベルマウスの破損が生じるおそれがある。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、マウスが2つ並列された樹脂製のベルマウスが外力を受けたときに、マウスの変位が抑制される送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明の送風機は、第1ファンと、第1ファンと並列に設けられる第2ファンとを有する、ファン部と、第1ファンの周囲を取り囲む第1マウスと、第2ファンの周囲を取り囲む第2マウスを有し、樹脂材料からなるベルマウスと、を備える。本発明の送風機において、第1マウスと第2マウスの互いに対向する部位に平坦な面が形成されており、第1マウスと第2マウスは、外力を受けて変位すると、互いに対向する部位が接することを特徴とする。
第1マウスと第2マウスは、外力を受けて変位すると、互いに対向する部位が接することで、当該部位に加わる力を打ち消し合うことができる。そのため、第1マウスと第2マウスの変位を抑制することができる。そうすると、第1ファンと第1マウス,第2ファンと第2マウスのクリアランスを維持できるため、送風機の性能の低下やベルマウス又はファンの破損を防止できる。
第1マウスと第2マウスが平坦な面で接することで、局所的な力を生じさせずに、接する部位に加わる力を打ち消し合うことができる。
【0009】
本発明の送風機は、第1マウスおよび第2マウスの少なくとも一方は、周方向にリブが形成されていることが好ましい。
マウスにリブを形成することで、マウスの剛性を向上させることができるため、マウス全体の変形を抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂製のベルマウスにおいて、第1マウスと第2マウスは、外力を受けて変位すると互いに対向する部位が接するため、各マウスが変位することを抑制することができる。また、第1マウスと第2マウスを一体として形成することで、各マウスが変位することを抑制できる。
そのため、ベルマウスとファンの間の初期のクリアランスを維持でき、送風機の性能の低下や、ベルマウスとファンの接触による生じ得るベルマウスおよびファンの破損を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態にかかる空気調和機の室外機を示す概略図である。
図2】第1実施形態にかかるベルマウスを示す平面図である。
図3】外力を受けたときのベルマウスを示す平面図である。
図4】第2実施形態にかかるベルマウスを示す平面図である。
図5】変形例にかかるベルマウスを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、本発明の実施形態にかかる空気調和機の室外機1は、吸入口12が正面10aに形成された筐体10と、筐体10の内部に設けられる熱交換器15と、熱交換器15を通過した空気を排出する送風機16と、を備える。
送風機16は、ファン部17とベルマウス20と、を備える。ファン部17は、第1ファン17aと、第1ファン17aに並列に設けられる第2ファン17bとを有する。
【0013】
本発明は、ベルマウス20の構造に特徴を有する。
ベルマウス20は、室外機1の筐体10の上面10bを覆うように設けられている。ベルマウス20は、樹脂材料からなり、例えば射出成形により形成される。
ベルマウス20は、図2に示すように、基部23と、第1マウス21と、第2マウス22とを備える。以下、第1マウス21と第2マウス22を合わせて、マウス21,22と表記する場合がある。
基部23は矩形状をなし、固定部材により筐体10に固定されている。
第1マウス21および第2マウス22は、基部23から立ち上がるように形成され(図2(b))、幅方向Xに間隔Gをあけて並列されている(図2(a))。
第1マウス21は筒状をなし、第1ファン17aの周囲を取り囲むように設けられている。第1マウス21は、第1ファン17aとクリアランスHをあけて、設けられている。
第1マウス21の側壁の一部には平坦部24で形成されている。平坦部24は、横断面が矩形状をなし、鉛直方向Yに平坦な面が形成されている。第1マウス21の横断面は、平坦部24を除くと、円弧状をなしている。
第2マウス22は、基準線Cを対称軸として、第1マウス21と線対称の形状を有し、第2ファン17bの周囲を取り囲むように設けられている。
また、第2マウス22は、第1マウス21の平坦部24と対向する部位に平坦部26が形成されている。なお、第2マウス22は、第2ファン17bとクリアランスHをあけて、設けられている。
【0014】
間隔Gは、第1マウス21と第2マウス22が外力を受けて変位したときに、平坦部24と平坦部26が接するように設定される。そのため、第1マウス21および第2マウス22が、外力を受けたときに、互いに近づく方向への最大変位量をそれぞれL1、L2とすると、間隔Gは、G<L1+L2を必ず満たす。
なお、本実施形態では、マウス21,22は同じ樹脂で形成されているため、間隔Gは、G<2×L1(2×L2)を満たす。
【0015】
[作用効果]
以下、本実施形態に係るベルマウス20の作用効果を説明する。
第1マウス21が外力を受けると、平坦部24は第2マウス22に近づく方向に変位する。一方、第2マウス22が外力を受けると、平坦部26は第1マウス21に近づく方向に変位する。
互いに変位すると、図3に示すように、平坦部24は所定の位置で平坦部26と接する。平坦部24,26同士が互いに接すると、平坦部24は、平坦部26から、それ自身が変位しようとする力と逆向きの力を受ける。一方、平坦部26は平坦部24から、それ自身が変位しようとする力と逆向きの力を受ける。
そうすると、互いに平坦部24,26に加わる力が打ち消され、マウス21,22は変位しなくなる。また、平坦部24,26は、互いに平面同士で接するため、局所的な力が加わることを回避できる。
そのため、第1ファン17aと第1マウス21,第2ファン17bと第2マウス22のクリアランスHはほぼ維持される。クリアランスHが維持されると、送風機16の性能の低下やベルマウス20とファン17a,17bの接触による、ベルマウス20又はファン17a,17bの破損を防止できる。
【0016】
また、従来、樹脂製のベルマウスは、外力を受けると変位するおそれがあるため、主にファンが1つの1ファン仕様の送風機に使用していたが、本実施形態の樹脂製のベルマウス20は、2つのマウス21,22を設けても、外力によるそれらの変位を抑制できるため、ファンが2つ設けられている2ファン仕様の送風機に使用できる。
【0017】
さらに、本実施形態のベルマウス20は、樹脂材料からなるため、射出成形により形成できる。そのため、金属製のベルマウスと比べて、マウス21,22の高さを自由に変更できる。マウス21,22の高さを高くすることで、排出する空気の送風する効果を向上することができる。
【0018】
[第2実施形態]
第1実施形態では、マウス21,22が間隔Gをあけて設けられているベルマウス20について述べた。本実施形態では、第1マウス51と第2マウス52が一体として形成されたベルマウス50について述べる。なお、第1実施形態と同様な部分には同じ符号を付し、説明を省略する。
第1マウス51および第2マウス52は、図4に示すように、基部23から立ち上がるように一体的に形成され、幅方向Xに並列している。
第1マウス51は筒状をなし、第1ファン17aの周囲を取り囲むように設けられている。第1マウス51は、第1ファン17aとクリアランスHをあけて、設けられている。
第2マウス52は、基準線Cを対称軸として、第1マウス51と線対称の形状を有し、第2ファン17bの周囲を取り囲むように設けられている。第2マウス52は、第2ファン17bとクリアランスHをあけて、設けられている。
なお、第1マウス51と第2マウス52が一体となっている部位を、便宜上、連結部とよぶ。
【0019】
[作用効果]
本実施形態に係る、第1マウス51および第2マウス52は、一体的に形成されている。
第1マウス51は、外力を受けると、第1マウス51側から連結部に力が加わる。同様に、第2マウス52は、外力を受けると、第2マウス52側から連結部に力が加わる。
双方に加わる力は、逆向きであるため、連結部に加わる力は打ち消される。そのため、マウス51,52の変位は抑制される。
マウス51,52の変位が抑制されると、設定されていたクリアランスHを維持することができる。そのため、送風機16の性能の低下や、マウス51,52とファン17a,17bの接触によるベルマウス50およびファン17a,17bの破損を防止できる。
【0020】
また、本実施形態にかかるベルマウス50も、第1実施形態と同様に、2ファン仕様の送風機16に適用できる。さらに、射出成形で形成することで、マウス51,52の高さを調節することができるため、排出する空気の送風効果を向上させることができる。
【0021】
[変形例]
以上の実施の形態では、マウス21,22(51,52)の変位を抑制できるベルマウス20(50)について述べたが、変形例ではさらにマウスの変位を抑制する手段について、以下、第2実施形態で述べたベルマウス50を例に挙げ説明する。
図5に示すように、マウス51,52の外周壁の周方向に、それぞれリブ31,32を設ける。リブ31,32は、樹脂材料からなり、マウス51,52と一体的に形成される。
【0022】
[作用効果]
リブ31,32を設けることで、マウス51,52の剛性は高くなるため、マウス51,52全体が、外力に対して、変位しづらくなる。そうすると、マウス51,52全体が、元の形状を維持することができるため、ベルマウス50の送風効果を維持することができる。
なお、リブはマウス51,52の双方に設ける場合に限定されず、どちらか一方に設けてもよい。
また、リブは、第1実施形態のマウス21,22に設けることもでき、上記の効果と同様な効果を享受できる。
【0023】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
例えば、第1実施形態では、平坦部24,26を有するマウス21,22について述べたが、平坦部24,26を有さないベルマウスであっても、第1マウス21の外周壁と、第2マウス22の外周壁が接することで、互いに変位を抑制するため、送風機16の性能の低下や、ベルマウスおよびファンの破損を防止できる。
また変形例において、リブ31,32は、マウスの外周壁に設けたが、内周壁に設けることもできる。リブ31,32を内周壁に設けた場合でも、マウスの剛性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 室外機
10 筐体
10a 正面
10b 上面
12 吸入口
15 熱交換器
16 送風機
17 ファン部
17a 第1ファン
17b 第2ファン
20 ベルマウス
21 第1マウス
22 第2マウス
23 基部
24 平坦部
26 平坦部
31,32 リブ
50 ベルマウス
51 第1マウス
52 第2マウス
C 基準線
G 間隔
H クリアランス
X 幅方向
Y 鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5