特許第6203627号(P6203627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203627燃料電池の酸化剤供給ヘッダ、燃料電池及び燃料電池への酸化剤供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203627
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】燃料電池の酸化剤供給ヘッダ、燃料電池及び燃料電池への酸化剤供給方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2484 20160101AFI20170914BHJP
   H01M 8/24 20160101ALI20170914BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170914BHJP
【FI】
   H01M8/24 M
   H01M8/24 R
   !H01M8/12
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-261607(P2013-261607)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-118807(P2015-118807A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年11月18日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「固体酸化物形燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】宮本 晃志
(72)【発明者】
【氏名】水原 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】眞竹 徳久
(72)【発明者】
【氏名】松尾 毅
(72)【発明者】
【氏名】安永 正樹
(72)【発明者】
【氏名】惣田 智紀
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−171676(JP,A)
【文献】 特開2008−135300(JP,A)
【文献】 特開2011−100638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム構造の酸化剤ダクトと、
前記酸化剤ダクトの外側面に接続され、前記酸化剤ダクトに酸化剤を供給する酸化剤供給管と、
前記酸化剤ダクトに形成され、前記酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に連通する複数の連通孔と、
前記連通孔が形成された前記酸化剤ダクトの面と対向して設置された仕切り面と、
を備えることを特徴とする燃料電池の酸化剤供給ヘッダ。
【請求項2】
前記連通孔は、矩形状とされた前記酸化剤ダクトの4つの角部において密となり、長辺方向における中央部に向かって疎となるようにして設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の酸化剤供給ヘッダ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池の酸化剤供給ヘッダを具備していることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
前記酸化剤供給ヘッダと、該酸化剤供給ヘッダの下方に位置する燃料排出ヘッダとの間に、断熱材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
フレーム構造の酸化剤ダクトと、前記酸化剤ダクトの外側面に接続され、前記酸化剤ダクトに酸化剤を供給する酸化剤供給管と、前記酸化剤ダクトに形成され、前記酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に連通する複数の連通孔と、前記連通孔が形成された前記酸化剤ダクトの面と対向して設置された仕切り面とを備える燃料電池への酸化剤供給方法であって、
前記連通孔から吹き出された酸化剤が、前記仕切り面に衝突した後、前記酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に向かって進むことを特徴とする燃料電池への酸化剤供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の酸化剤供給ヘッダ、燃料電池及び燃料電池への酸化剤供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気化学反応による発電方式を利用した発電装置であり、優れた発電効率及び環境対応等の特性を有している。このため、21世紀を担う都市型のエネルギー供給システムとして、実用化に向けた研究開発が進んでいる。
このような燃料電池は、燃料側の電極である燃料極と、空気(酸化剤)側の電極である空気極と、これらの間にありイオンのみを通す電解質とにより構成されており、電解質の種類によって様々な形式が開発されている。
【0003】
このうち、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」という。)は、電解質としてジルコニアセラミックスなどのセラミックスが用いられ、天然ガス、石油、メタノール、石炭ガス化ガスなどを燃料として運転される燃料電池である。このSOFCは、イオン伝導率を高めるために作動温度が約900〜1000℃程度と高く、用途の広い高効率な高温型燃料電池として知られている。
このような燃料電池に適用される燃料電池への空気供給方法としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−171676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10に示すように、上記特許文献1に開示された燃料電池(燃料電池モジュール)10は、断熱材のケーシング(容器)11と、略円筒状に形成された複数のセルチューブ(燃料電池セルスタック)12と、セルチューブ12の両端を支持する上下の管板13,14と、これら上下の管板13,14の間に配置された上下の断熱体15,16と、ケーシング11の下部に設けられ、燃料排出ヘッダ(第一空間)20を収納して空気流路(後述する空気供給流路40および空気流通孔41)を形成する二重容器構造の支持架台30と、を備えている。
また、上断熱体15は、後述する空気排出ヘッダ23を形成するため、第1上断熱体15Aと第2上断熱体15Bとに二分割されている。すなわち、空気排出ヘッダ23は、第1上断熱体15Aと第2上断熱体15Bとの間に形成されている。
【0006】
ケーシング11と上下の断熱体15,16との間には、具体的には第1断熱体15Aと下断熱体16との間には、発電室17が形成されている。ケーシング11と上管板13との間には、燃料供給ヘッダ(燃料供給室)18が形成され、上面に燃料供給管19が接続されている。下管板14の下側には、燃料排出ヘッダ20の空間が形成されている。
そして、下管板14と下断熱体16との間には、空気供給ヘッダ22が形成され、上管板13と上断熱体15との間には、空気排出ヘッダ23が形成されている。なお、図中の符号24は、空気排出ヘッダ23に接続された空気排出管である。
【0007】
上管板13は、略長方形の水平断面形状を有する角柱状のケーシング11において、長手方向の上側(図10の上方)に配置された板状の部材であり、燃料供給ヘッダ18の下面部材でとなる。
また、下管板14は、同じく長手方向の下側(図10の下方)に配置された板状の部材であり、燃料排出ヘッダ20の上面部材とともに空気供給ヘッダ22の下面部材となる。また、下管板14は、後述する空気供給流路40の上端部を封止し、外周部が鍔部20aとして機能する部材である。
下管板14には、セルチューブ12の一方の端部が気密に固定支持されている。燃料ガスはセルチューブ12の内面を流れることで、発電室を経由して燃料供給ヘッダ18から燃料排出ヘッダ20に流通している。
なお、この場合の長手方向については、略角柱形状となるケーシング11の上下方向と読み替えることも可能である。
【0008】
セルチューブ12は、多孔質セラミックスから形成された略円筒状の管であり、長手方向における中央部には発電を行う燃料電池セル(図示せず)が設けられている。
セルチューブ12は、一方の開口端が燃料供給ヘッダ18に開口するとともに、他方の開口端が燃料排出ヘッダ20内に開口するように、上下の管板13,14に穿設した貫通孔よって支持されている。また、セルチューブ12は、燃料電池セルが発電室17内にのみ位置するように配置されている。
【0009】
上断熱体15は、ケーシング11の長手方向の上側(図10の上方)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材である。下断熱材16は、ケーシング11の長手方向の下側(図10の下方)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材であり、空気供給ヘッダ22の上面部材ともなる。
上断熱体15および下断熱体16には、セルチューブ12を挿通させる孔15a,16aが形成され、孔15a,16aの直径は、空気の流通を可能にするためセルチューブ12の直径よりも大きく形成されている。
このような構成にすることで、セルチューブ12と孔15a,16aとの間を通って発電室17に流入する空気に下断熱体16の熱が伝達されやすくなるので、発電室17の温度を高温に保ちやすくなる。
【0010】
ケーシング11の下端部側(下部構造)は、支持架台30の内部に燃料排出ヘッダ20を収納して空気流路を形成する金属部材による二重箱(二重壁)構造となっている。
燃料排出ヘッダ20は、上面に下管板14を備えた中空箱形(略直方体形状)の部材であり、略同形状にして上面を開口させた支持架台30の内部空間(略直方体形状)に収納設置されている。
【0011】
すなわち、燃料排出ヘッダ20は、支持架台30より若干小さい略同形状の中空部材であり、下管板14がその上面開口を塞ぐようにして、上端部等の適所に固定して取り付けられている。
この場合、下管板14の平面形状を燃料排出ヘッダ20より大きくすることで、外周部が全周にわたって水平方向外向きに突出することとなり、この突出部が燃料排出ヘッダ20の鍔部20aを形成している。なお、図10中の符号21は、燃料排出ヘッダ20の底面に接続された燃料排出管である。
【0012】
つづいて、図10の発電室17の下部に配置される空気供給ヘッダ22、空気供給流路(第二空間)40、燃料排出ヘッダ20について、図11から図13を用いてさらに詳細に説明する。
支持架台30は、上面が開放されている箱型の部材であって、側面31および底面32により構成されている。側面31の上端部には、側壁鍔部31aが形成されている。側壁鍔部31aには外周側より低い段差部33が全周にわたって設けられている。この段差部33は、支持架台30の内部に燃料排出ヘッダ20を収納する際、燃料排出ヘッダ20の上端外周部に設けた鍔部20aを設置して係止するための部分である。
【0013】
また、支持架台30の底面32には空気供給口34が設けられ、下方へ向けた空気供給ノズル35が接続されている。空気供給ノズル35の側面には、空気供給管36が接続されている。さらに、上述した燃料排出ヘッダ20の燃料排出管21は、空気供給口34および空気供給ノズル35の内部を通り、空気供給ノズル35の底部35aを下方へ貫通して図示しない外部機器に接続されている。
【0014】
空気供給口34および空気供給ノズル35は、燃料排出管21より大径とされる。このため、燃料排出管21の外周面と空気供給ノズル35の内周面との間には、空気供給管36から供給された空気を空気供給ヘッダ22へ導く断面形状がリング状である空気導入空間部37が形成されている。この空気導入空間部37は、支持架台30の内周面と燃料排出ヘッダ20の外周面との間に形成された空気供給流路40の間隙部と空気供給口34を介して連通している。従って、空気供給管36から供給された空気は、空気導入空間部37から、燃料排出ヘッダ20の外周(底面および側面)に形成された空気供給流路40へ流入する。
【0015】
また、空気供給流路40は、支持架台30における側壁31の上端部に設けられる側壁鍔部31aにおいて、段差部33の上面に上述した鍔部20aが設置されることから、空気供給流路40から空気供給ヘッダ22へ、すなわち、空気供給ヘッダ22に空気を供給するため、側壁鍔部31aの段差部33に設けた複数の空気流通孔(酸化剤流通流路)41を備えている。この空気流通孔41は、図13に示すように、平面視が略長方形の支持架台30において、空気供給室22の周囲に開口するように配置して設けられている。空気供給流路40は、空気流通孔41を介して発電室17と連通しており、酸化剤が空気供給ヘッダ22を経由して発電室17に供給される。
空気流通孔41は、段差部33に設けた凹溝状のスリット41aと、鍔部20aの壁面とにより形成されている。
【0016】
なお、燃料電池10は、セルチューブ12の内側に燃料供給ヘッダ18から燃料ガスを導入して燃料排出ヘッダ20へ排出するとともに、空気供給ヘッダ22から発電室17内に空気を導入してセルチューブ12の外側を空気排出ヘッダ23へ向けて下方から上方へ流し、燃料ガスと酸化剤の空気とを電気化学的に反応させて発電する。
【0017】
さて、図14に示すように、下管板14の鍔部20aの外周端と、支持架台30の側壁鍔部31aの内周端とは、周方向の全体(スリット41aが形成されている部分を除く)にわたって溶接により接合されている。そのため、下管板14の鍔部20aおよび支持架台30の側壁鍔部31aが、溶接時の熱で変形する。また、鍔部20aは面接触で段差部33に乗っている状態であり、前工程の溶接作業時の熱で下管板14の鍔部20aが変形し、反りが出てしまい、面接触部に不均一な接触箇所が発生してしまう。なお、図14中の符号42は、溶接部を示している。
その結果、各スリット41aの断面積に差が生じたり、不均一な接触箇所における隙間が生じたりして、通過する空気の流量に偏りが発生する。その結果、発電室17の温度や発電性能に影響を与えるおそれがあった。
【0018】
また、二重構造となっている場合、発電室17の下部を組み立てる際、集電棒や燃料排出管21は、燃料排出ヘッダ20と支持架台32の両者を貫通させ溶接する必要があった。しかし、溶接作業性が悪く、溶接不良が生じて気密性を保てないおそれがあった。
【0019】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、発電室内に供給される空気を、周方向において均一化することができる燃料電池の酸化剤供給ヘッダ、燃料電池及び燃料電池への酸化剤供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る燃料電池の酸化剤供給ヘッダは、フレーム構造の酸化剤ダクトと、前記酸化剤ダクトの外側面に接続され、前記酸化剤ダクトに酸化剤を供給する酸化剤供給管と、前記酸化剤ダクトに形成され、前記酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に連通する複数の連通孔と、前記連通孔が形成された前記酸化剤ダクトの面と対向して設置された仕切り面とを備えることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、酸化剤ダクトがフレーム構造で設けられて、酸化剤ダクトの外側面にて酸化剤供給管が接続されており、酸化剤ダクトの内方に形成される空間と酸化剤ダクトとが、複数個の連通孔を介して連通されている。
酸化剤ダクトに形成された連通孔の形状(径)によって、酸化剤の圧力損失が決まるため、酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に均一に空気を供給できる。
また、空気孔から吹き出された空気は、仕切り面に衝突した後、空気ダクトの内方に形成される空間に向かって進む、すなわち、仕切り面に衝突して四方八方に拡散した後、空気ダクトの内方に形成される空間に向かって進むことになる。これにより、複数個の連通孔を介して発電室内に供給される空気を、周方向においてさらに均一化することができる。
さらに、酸化剤供給管が酸化剤ダクトの外側面に接続されることから、従来と異なって二重構造とならないため、集電棒や燃料排出管の貫通構造がなくなり、溶接作業が不要となる。
【0022】
上記発明において、前記連通孔は、矩形状とされた前記酸化剤ダクトの4つの角部において密となり、長辺方向における中央部に向かって疎となるようにして設けられてもよい。
【0023】
この構成によれば、複数個の連通孔を介して発電室内に供給される空気の、周方向における均一化を最適化することができる。
【0024】
本発明に係る燃料電池は、上記いずれかの燃料電池の酸化剤供給ヘッダを具備していることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、複数個の空気孔を介して発電室内に供給される空気を、周方向において均一化することができる燃料電池の酸化剤供給ヘッダを具備しているので、燃料電池の発電性能および信頼性を向上させることができる。
【0026】
上記発明において、前記酸化剤供給ヘッダと、該酸化剤供給ヘッダの下方に位置する燃料排出ヘッダとの間に、断熱材が設けられてもよい。
【0027】
この構成によれば、発電室の保温性を向上させることができ、燃料電池の発電性能および信頼性をさらに向上させることができる。
【0028】
本発明に係る燃料電池への酸化剤供給方法は、フレーム構造の酸化剤ダクトと、前記酸化剤ダクトの外側面に接続され、前記酸化剤ダクトに酸化剤を供給する酸化剤供給管と、前記酸化剤ダクトに形成され、前記酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に連通する複数の連通孔と、前記連通孔が形成された前記酸化剤ダクトの面と対向して設置された仕切り面とを備える燃料電池への酸化剤供給方法であって、前記連通孔から吹き出された酸化剤が、前記仕切り面に衝突した後、前記酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に向かって進むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、発電室内に供給される空気を、周方向において均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る燃料電池の空気供給ヘッダの平面図、(b)は(a)のA−A矢視線断面図、(c)は(a)のB−B矢視線断面図である。
図2図1(b)に二点鎖線で示す円Aを拡大して示す図である。
図3図1(c)に二点鎖線で示す円Bを拡大して示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る燃料電池の空気供給ヘッダを具備している燃料電池の要部を拡大して示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る燃料電池の空気供給ヘッダの一部を拡大して示す斜視図である。
図6図5に示す燃料電池の空気排出ヘッダおよび図10を用いて説明した燃料電池の空気排出ヘッダの平面図である。
図7図6のC−C矢視線断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る燃料電池の空気供給ヘッダの断面図であって、図3に対応した図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る燃料電池の空気供給ヘッダの断面図であって、図3に対応した図である。
図10】従来の燃料電池の概略を示す縦断面図である。
図11図10に示す燃料電池の下部構造拡大図であり、酸化剤の供給流路となる間隙部がある部分の断面図である。
図12図10に示す燃料電池の下部構造拡大図であり、酸化剤の供給流路となる間隙部がない部分の断面図である。
図13図10に示す燃料電池の下部構造について、要部の拡大断面を示す斜視図である。
図14図12に示す燃料電池の下部構造を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る燃料電池の空気供給ヘッダ50および燃料電池への空気供給方法について、図1から図5を参照しながら説明する。なお、以下では、燃料電池に供給される酸化剤の一例として空気の場合について説明するが、本発明は他の酸化剤でもよい。
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池の空気供給ヘッダ50(以下、「空気供給ヘッダ50」という。)には、矩形管によって額縁形状を形成する空気ダクト52が設けられる。空気供給管51は、空気ダクト52の外側面54に連結するように設けられ、空気が空気供給管51を介して、空気ダクト52に供給される。空気ダクト52は、矩形管により例えば四角形のフレーム形状を形成することで額縁形状とされている。
【0032】
空気供給ヘッダ50は、空気ダクト52と、空気ダクト52を構成する矩形管の外側面54が少なくとも下面57よりも下側に伸びた延長部59を有している。外側面54における延長部59の端部は、下面57と平行して設けられる仕切り面53と接続されている。仕切り面53は4枚の長尺板材が組み合わされた額縁形状を有しており、各長尺板材の幅は下面57の外側面54から内側に伸びる長さとほぼ同等の長さを有している。
本実施形態において、空気供給管51は、空気供給ヘッダ50の短辺側に位置する一対の外側面54にそれぞれ2つずつ接続されている。
【0033】
空気ダクト52は、矩形管によって形成される内部が空洞の空間であり、外側面54と、上面55と、内側面56と、下面57と、により形成(区画)されている。
なお、下面57の外端(外周端)は、外側面54の高さ方向における中間点よりも下方で、かつ、下面57と仕切り面53との間に一定(所定)の隙間が形成されるようにして外側面54に接続されている。
【0034】
図1(a)に示すように、下面57には、板厚方向に貫通する連通孔58が、空気供給ヘッダ50の4つの角部(隅部)において密となり、空気供給ヘッダ50の長手方向における中央部に向かって疎となるようにして設けられている。
そして、図4または図5に示すように、空気供給管51から空気ダクト52に流入した空気は、連通孔58から下方、すなわち、仕切り面53に向かって吹き出され、仕切り面53に衝突した後、空気供給ヘッダ50の内側(内方)、すなわち空気ダクト52の内側面56で囲まれる空間に向かって進み、セルチューブ12と孔16a(図10参照)との間を通って発電室17に流入する。
なお、図4中の符号61は燃料排出ヘッダ、符号62は断熱材を示している。
【0035】
ここで、本実施形態に係る(燃料電池の)空気排出ヘッダ23および図10を用いて説明した(燃料電池の)空気排出ヘッダ23について、図6および図7を参照しながら説明する。
図6に示すように、空気排出ヘッダ23は、空気供給ヘッダ50と同様、直方体形状を呈する部材であり、周縁部には、4つの空気排出管24と連通する空気ダクト72が1本、周方向全体にわたって連続するようにして設けられている。
空気排出ヘッダ23は、平面視矩形状を呈する1枚の仕切り面73と、仕切り面73の4つの辺(周縁)に立設された側板74と、を備えている。
【0036】
図7に示すように、空気ダクト72は、断面視矩形状を呈する空間で、側板74の上端から仕切り面73と平行になるようにして内側(内方)に延びる天板75と、天板75の内端(内周端)から側板74と平行になるようにして下側(下方)に延びて、下端が仕切り面73に接続される側板76と、により形成(区画)されている。
【0037】
図6に示すように、側板76には、板厚方向に貫通する連通孔78が、対向する一対の長辺側に一定(所定)のピッチで多数設けられている。
そして、空気排出ヘッダ23から連通孔78を介して空気ダクト72に流入した空気は、最寄りの空気排出管24に向かって進み、最寄りの空気排出管24から排出される。
【0038】
本実施形態によれば、仕切り面53の周縁部に、周方向全体にわたって連続するようにして設けられて、側板54に接続された空気供給管51と連通する1本の空気ダクト52が設けられており、空気ダクト52の内方に形成される空間と空気ダクト52とが、複数個の連通孔58を介して連通されている。
空気ダクト52に形成された連通孔58の形状(径)によって、空気の圧力損失が決まるため、空気ダクト52の内側面によって囲まれる空間に均一に空気を供給できる。
【0039】
また、連通孔58から吹き出された空気は、仕切り面53に衝突した後、空気ダクト52の内方に形成される空間に向かって進む、すなわち、仕切り面53に衝突して四方八方に拡散した後、空気ダクト52の内方に形成される空間に向かって進むことになる。
これにより、複数個の連通孔58を介して発電室17内に供給される空気を、周方向においてさらに均一化することができる。その結果、発電室17の温度や発電性能を安定化させることができる。
さらに、空気供給管51が空気ダクト52の外側面に接続されることから、従来と異なって二重構造とならない。そのため、集電棒や燃料排出管の貫通構造がなくなり、溶接作業が不要となる。その結果、溶接不良による気密性の悪化を回避できる。
【0040】
本実施形態によれば、連通孔58が、4つの角部において密となり、長手方向における中央部に向かって疎となるようにして設けられているので、複数個の連通孔58を介して発電室17内に供給される空気の、周方向における均一化を最適化することができ、ヘッダ50内の酸素分布を均一化することができる。なお、連通孔58の配置および径については、例えば流動解析を実施し、運転時の空気供給ヘッダ50内の空気分布が最も均一化できるように決定される。
【0041】
本実施形態に係る空気供給ヘッダ50を具備した燃料電池によれば、複数個の連通孔58を介して発電室17内に供給される空気を、周方向において均一化することができる空気供給ヘッダ50を具備しているので、燃料電池の発電性能および信頼性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る空気供給ヘッダ50を具備した燃料電池によれば、発電室下部において、従来のような支持架台の内部に燃料排出ヘッダを収納する二重箱構造をとらないので、空気供給ヘッダ50と、燃料排出ヘッダ61との間に、断熱材62を設けることが可能となる。従って、発電室17の保温性を更に向上させることができ、燃料電池の発電性能および信頼性をさらに向上させることができる。
【0043】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る空気供給ヘッダ80および燃料電池への空気供給方法について、図8を参照しながら説明する。
本実施形態に係る空気供給ヘッダ80には、上述した空気供給ヘッダ50と同様、矩形管によって額縁形状を形成する空気ダクト82が設けられる。空気供給管51は、空気ダクト82の外側面84に連結するように設けられ、空気が空気供給管51を介して、空気ダクト82に供給される。空気ダクト82は、矩形管により四角形のフレーム形状を形成することで額縁形状とされている。
【0044】
空気供給ヘッダ80は、空気ダクト82と、空気ダクト82を構成する矩形管の外側面84が少なくとも上面87よりも上側に伸びた延長部90を有している。外側面84における延長部90の端部は、上面87と平行して設けられる仕切り面85と接続されている。
【0045】
上面87は、内側面88の上端から仕切り面85と平行になるようにして外側(外方)に延びている。上面87の外端(外周端)は、外側面84の高さ方向における中間点よりも上方で、かつ、上面87と仕切り面85との間に一定(所定)の隙間が形成されるようにして外側面84に接続されている。
内側面88は、上面87の内端(内周端)から外側面84と平行になるようにして下側(下方)に延びており、内側面88の下端は、下面83に接続されている。
【0046】
仕切り面85の内端(内周端)は、側面86と内側面88との間に一定(所定)の隙間が形成されるように、上面87の内端(内周端)よりも内側(内方)に位置し、上面87は、仕切り面85との間に一定(所定)の隙間が形成されるように、仕切り面85よりも下側(下方)に位置しており、側面86の下端は、下面83との間に一定(所定)の隙間が形成されるように、下面83よりも上側(上方)に位置している。
【0047】
空気ダクト82は、矩形管によって形成される内部が空洞の空間であり、下面83と、外側面84と、上面87と、内側面88と、により形成(区画)されている。
また、仕切り面85と上面87との間に形成された隙間、側面86と内側面88との間に形成された隙間、側面86の下端と下面83との間に形成された隙間により、空気流路が形成されている。
【0048】
上面87には、板厚方向に貫通する連通孔89が、図1(a)と同様、空気供給ヘッダ80の4つの角部(隅部)において密となり、空気供給ヘッダ80の長手方向における中央部に向かって疎となるようにして設けられている。
そして、図8に示すように、空気供給管51から空気ダクト82に流入した空気は、連通孔89から上方、すなわち、仕切り面85に向かって吹き出され、仕切り面85に衝突した後、空気供給ヘッダ80の内側(内方)に向かって進む。空気供給ヘッダ80の内側(内方)に向かって進んだ空気は、側面86に衝突した後、空気供給ヘッダ80の下側(下方)に向かって進む。空気供給ヘッダ80の下側(下方)に向かって進んだ空気は、下面83に衝突した後、空気供給ヘッダ80の内側(内方)に向かって進み、セルチューブ12と孔16a(図10参照)との間を通って発電室17に流入する。
【0049】
本実施形態に係る空気供給ヘッダ80および燃料電池への空気供給方法の作用効果は、上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0050】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態に係る空気供給ヘッダ100および燃料電池への空気供給方法について、図9を参照しながら説明する。
本実施形態に係る空気供給ヘッダ100には、上述した空気供給ヘッダ50,80と同様、矩形管によって額縁形状を形成する空気ダクト102が設けられる。空気供給管51は、空気ダクト102の外側面54に連結するように設けられ、空気が空気供給管51を介して、空気ダクト52に供給される。空気ダクト52は、矩形管により四角形のフレーム形状を形成することで額縁形状とされている。
【0051】
空気供給ヘッダ100は、空気ダクト102と、空気ダクト102を構成する矩形管の上面105が少なくとも内側面107よりも内側に伸びた延長部109を有している。上面105における延長部109の端部は、内側面107と平行して設けられる仕切り面106と接続されている。
【0052】
上面105の内端(内周端)は、仕切り面106と内側面107との間に一定(所定)の隙間が形成されるように、内側面107の内端(内周端)よりも内側(内方)に位置し、仕切り面106の下端は、下面103との間に一定(所定)の隙間が形成されるように、下面103よりも上側(上方)に位置している。
また、内側面107の上端は、上面105の幅方向における中間点よりも内側(内方)で、かつ、仕切り面106と内側面107との間に一定(所定)の隙間が形成されるようにして上面105に接続され、内側面107の下端は、下面103に接続されている。
【0053】
空気ダクト102は、矩形管によって形成される内部が空洞の空間であり、下面103と、外側面104と、上面105と、内側面107と、により形成(区画)されている。
また、仕切り面106と内側面107との間に形成された隙間、仕切り面106の下端と下面103との間に形成された隙間により、空気流路が形成されている。
【0054】
内側面107には、板厚方向に貫通する連通孔108が、図1(a)と同様、空気供給ヘッダ100の4つの角部(隅部)において密となり、空気供給ヘッダ100の長手方向における中央部に向かって疎となるようにして設けられている。
そして、図9に示すように、空気供給管51から空気ダクト102に流入した空気は、連通孔108から内方、すなわち、仕切り面106に向かって吹き出され、仕切り面106に衝突した後、空気供給ヘッダ100の下側(下方)に向かって進む。空気供給ヘッダ100の下側(下方)に向かって進んだ空気は、下面103に衝突した後、空気供給ヘッダ100の内側(内方)に向かって進み、セルチューブ12と孔16a(図10参照)との間を通って発電室17に流入する。
【0055】
本実施形態に係る空気供給ヘッダ100および燃料電池への空気供給方法の作用効果は、上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更して実施することもできる。
【符号の説明】
【0057】
50,80,100 空気供給ヘッダ(酸化剤供給ヘッダ)
51 空気供給管(酸化剤供給管)
52,82,102 空気ダクト(酸化剤ダクト)
53,83,103 仕切り面
54,84,104 外側板
58,89,108 連通孔
61 燃料排出ヘッダ
62 断熱材
図1
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