【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10に示すように、上記特許文献1に開示された燃料電池(燃料電池モジュール)10は、断熱材のケーシング(容器)11と、略円筒状に形成された複数のセルチューブ(燃料電池セルスタック)12と、セルチューブ12の両端を支持する上下の管板13,14と、これら上下の管板13,14の間に配置された上下の断熱体15,16と、ケーシング11の下部に設けられ、燃料排出ヘッダ(第一空間)20を収納して空気流路(後述する空気供給流路40および空気流通孔41)を形成する二重容器構造の支持架台30と、を備えている。
また、上断熱体15は、後述する空気排出ヘッダ23を形成するため、第1上断熱体15Aと第2上断熱体15Bとに二分割されている。すなわち、空気排出ヘッダ23は、第1上断熱体15Aと第2上断熱体15Bとの間に形成されている。
【0006】
ケーシング11と上下の断熱体15,16との間には、具体的には第1断熱体15Aと下断熱体16との間には、発電室17が形成されている。ケーシング11と上管板13との間には、燃料供給ヘッダ(燃料供給室)18が形成され、上面に燃料供給管19が接続されている。下管板14の下側には、燃料排出ヘッダ20の空間が形成されている。
そして、下管板14と下断熱体16との間には、空気供給ヘッダ22が形成され、上管板13と上断熱体15との間には、空気排出ヘッダ23が形成されている。なお、図中の符号24は、空気排出ヘッダ23に接続された空気排出管である。
【0007】
上管板13は、略長方形の水平断面形状を有する角柱状のケーシング11において、長手方向の上側(
図10の上方)に配置された板状の部材であり、燃料供給ヘッダ18の下面部材でとなる。
また、下管板14は、同じく長手方向の下側(
図10の下方)に配置された板状の部材であり、燃料排出ヘッダ20の上面部材とともに空気供給ヘッダ22の下面部材となる。また、下管板14は、後述する空気供給流路40の上端部を封止し、外周部が鍔部20aとして機能する部材である。
下管板14には、セルチューブ12の一方の端部が気密に固定支持されている。燃料ガスはセルチューブ12の内面を流れることで、発電室を経由して燃料供給ヘッダ18から燃料排出ヘッダ20に流通している。
なお、この場合の長手方向については、略角柱形状となるケーシング11の上下方向と読み替えることも可能である。
【0008】
セルチューブ12は、多孔質セラミックスから形成された略円筒状の管であり、長手方向における中央部には発電を行う燃料電池セル(図示せず)が設けられている。
セルチューブ12は、一方の開口端が燃料供給ヘッダ18に開口するとともに、他方の開口端が燃料排出ヘッダ20内に開口するように、上下の管板13,14に穿設した貫通孔よって支持されている。また、セルチューブ12は、燃料電池セルが発電室17内にのみ位置するように配置されている。
【0009】
上断熱体15は、ケーシング11の長手方向の上側(
図10の上方)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材である。下断熱材16は、ケーシング11の長手方向の下側(
図10の下方)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材であり、空気供給ヘッダ22の上面部材ともなる。
上断熱体15および下断熱体16には、セルチューブ12を挿通させる孔15a,16aが形成され、孔15a,16aの直径は、空気の流通を可能にするためセルチューブ12の直径よりも大きく形成されている。
このような構成にすることで、セルチューブ12と孔15a,16aとの間を通って発電室17に流入する空気に下断熱体16の熱が伝達されやすくなるので、発電室17の温度を高温に保ちやすくなる。
【0010】
ケーシング11の下端部側(下部構造)は、支持架台30の内部に燃料排出ヘッダ20を収納して空気流路を形成する金属部材による二重箱(二重壁)構造となっている。
燃料排出ヘッダ20は、上面に下管板14を備えた中空箱形(略直方体形状)の部材であり、略同形状にして上面を開口させた支持架台30の内部空間(略直方体形状)に収納設置されている。
【0011】
すなわち、燃料排出ヘッダ20は、支持架台30より若干小さい略同形状の中空部材であり、下管板14がその上面開口を塞ぐようにして、上端部等の適所に固定して取り付けられている。
この場合、下管板14の平面形状を燃料排出ヘッダ20より大きくすることで、外周部が全周にわたって水平方向外向きに突出することとなり、この突出部が燃料排出ヘッダ20の鍔部20aを形成している。なお、
図10中の符号21は、燃料排出ヘッダ20の底面に接続された燃料排出管である。
【0012】
つづいて、
図10の発電室17の下部に配置される空気供給ヘッダ22、空気供給流路(第二空間)40、燃料排出ヘッダ20について、
図11から
図13を用いてさらに詳細に説明する。
支持架台30は、上面が開放されている箱型の部材であって、側面31および底面32により構成されている。側面31の上端部には、側壁鍔部31aが形成されている。側壁鍔部31aには外周側より低い段差部33が全周にわたって設けられている。この段差部33は、支持架台30の内部に燃料排出ヘッダ20を収納する際、燃料排出ヘッダ20の上端外周部に設けた鍔部20aを設置して係止するための部分である。
【0013】
また、支持架台30の底面32には空気供給口34が設けられ、下方へ向けた空気供給ノズル35が接続されている。空気供給ノズル35の側面には、空気供給管36が接続されている。さらに、上述した燃料排出ヘッダ20の燃料排出管21は、空気供給口34および空気供給ノズル35の内部を通り、空気供給ノズル35の底部35aを下方へ貫通して図示しない外部機器に接続されている。
【0014】
空気供給口34および空気供給ノズル35は、燃料排出管21より大径とされる。このため、燃料排出管21の外周面と空気供給ノズル35の内周面との間には、空気供給管36から供給された空気を空気供給ヘッダ22へ導く断面形状がリング状である空気導入空間部37が形成されている。この空気導入空間部37は、支持架台30の内周面と燃料排出ヘッダ20の外周面との間に形成された空気供給流路40の間隙部と空気供給口34を介して連通している。従って、空気供給管36から供給された空気は、空気導入空間部37から、燃料排出ヘッダ20の外周(底面および側面)に形成された空気供給流路40へ流入する。
【0015】
また、空気供給流路40は、支持架台30における側壁31の上端部に設けられる側壁鍔部31aにおいて、段差部33の上面に上述した鍔部20aが設置されることから、空気供給流路40から空気供給ヘッダ22へ、すなわち、空気供給ヘッダ22に空気を供給するため、側壁鍔部31aの段差部33に設けた複数の空気流通孔(酸化剤流通流路)41を備えている。この空気流通孔41は、
図13に示すように、平面視が略長方形の支持架台30において、空気供給室22の周囲に開口するように配置して設けられている。空気供給流路40は、空気流通孔41を介して発電室17と連通しており、酸化剤が空気供給ヘッダ22を経由して発電室17に供給される。
空気流通孔41は、段差部33に設けた凹溝状のスリット41aと、鍔部20aの壁面とにより形成されている。
【0016】
なお、燃料電池10は、セルチューブ12の内側に燃料供給ヘッダ18から燃料ガスを導入して燃料排出ヘッダ20へ排出するとともに、空気供給ヘッダ22から発電室17内に空気を導入してセルチューブ12の外側を空気排出ヘッダ23へ向けて下方から上方へ流し、燃料ガスと酸化剤の空気とを電気化学的に反応させて発電する。
【0017】
さて、
図14に示すように、下管板14の鍔部20aの外周端と、支持架台30の側壁鍔部31aの内周端とは、周方向の全体(スリット41aが形成されている部分を除く)にわたって溶接により接合されている。そのため、下管板14の鍔部20aおよび支持架台30の側壁鍔部31aが、溶接時の熱で変形する。また、鍔部20aは面接触で段差部33に乗っている状態であり、前工程の溶接作業時の熱で下管板14の鍔部20aが変形し、反りが出てしまい、面接触部に不均一な接触箇所が発生してしまう。なお、
図14中の符号42は、溶接部を示している。
その結果、各スリット41aの断面積に差が生じたり、不均一な接触箇所における隙間が生じたりして、通過する空気の流量に偏りが発生する。その結果、発電室17の温度や発電性能に影響を与えるおそれがあった。
【0018】
また、二重構造となっている場合、発電室17の下部を組み立てる際、集電棒や燃料排出管21は、燃料排出ヘッダ20と支持架台32の両者を貫通させ溶接する必要があった。しかし、溶接作業性が悪く、溶接不良が生じて気密性を保てないおそれがあった。
【0019】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、発電室内に供給される空気を、周方向において均一化することができる燃料電池の酸化剤供給ヘッダ、燃料電池及び燃料電池への酸化剤供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る燃料電池の酸化剤供給ヘッダは、フレーム構造の酸化剤ダクトと、前記酸化剤ダクトの外側面に接続され、前記酸化剤ダクトに酸化剤を供給する酸化剤供給管と、前記酸化剤ダクトに形成され、前記酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に連通する複数の連通孔と、前記連通孔が形成された前記酸化剤ダクトの面と対向して設置された仕切り面とを備えることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、酸化剤ダクトがフレーム構造で設けられて、酸化剤ダクトの外側面にて酸化剤供給管が接続されており、酸化剤ダクトの内方に形成される空間と酸化剤ダクトとが、複数個の連通孔を介して連通されている。
酸化剤ダクトに形成された連通孔の形状(径)によって、酸化剤の圧力損失が決まるため、酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に均一に空気を供給できる。
また、空気孔から吹き出された空気は、仕切り面に衝突した後、空気ダクトの内方に形成される空間に向かって進む、すなわち、仕切り面に衝突して四方八方に拡散した後、空気ダクトの内方に形成される空間に向かって進むことになる。これにより、複数個の連通孔を介して発電室内に供給される空気を、周方向においてさらに均一化することができる。
さらに、酸化剤供給管が酸化剤ダクトの外側面に接続されることから、従来と異なって二重構造とならないため、集電棒や燃料排出管の貫通構造がなくなり、溶接作業が不要となる。
【0022】
上記発明において、前記連通孔は、矩形状とされた前記酸化剤ダクトの4つの角部において密となり、長辺方向における中央部に向かって疎となるようにして設けられてもよい。
【0023】
この構成によれば、複数個の連通孔を介して発電室内に供給される空気の、周方向における均一化を最適化することができる。
【0024】
本発明に係る燃料電池は、上記いずれかの燃料電池の酸化剤供給ヘッダを具備していることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、複数個の空気孔を介して発電室内に供給される空気を、周方向において均一化することができる燃料電池の酸化剤供給ヘッダを具備しているので、燃料電池の発電性能および信頼性を向上させることができる。
【0026】
上記発明において、前記酸化剤供給ヘッダと、該酸化剤供給ヘッダの下方に位置する燃料排出ヘッダとの間に、断熱材が設けられてもよい。
【0027】
この構成によれば、発電室の保温性を向上させることができ、燃料電池の発電性能および信頼性をさらに向上させることができる。
【0028】
本発明に係る燃料電池への酸化剤供給方法は、フレーム構造の酸化剤ダクトと、前記酸化剤ダクトの外側面に接続され、前記酸化剤ダクトに酸化剤を供給する酸化剤供給管と、前記酸化剤ダクトに形成され、前記酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に連通する複数の連通孔と、前記連通孔が形成された前記酸化剤ダクトの面と対向して設置された仕切り面とを備える燃料電池への酸化剤供給方法であって、前記連通孔から吹き出された酸化剤が、前記仕切り面に衝突した後、前記酸化剤ダクトの内側面によって囲まれる空間に向かって進むことを特徴とする。