(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203632
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】微小部品保持治具
(51)【国際特許分類】
G11B 5/31 20060101AFI20170914BHJP
B24B 37/04 20120101ALI20170914BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
G11B5/31 M
B24B37/04
B24B1/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-271697(P2013-271697)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-125790(P2015-125790A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100074550
【弁理士】
【氏名又は名称】林 實
(72)【発明者】
【氏名】東 竜平
(72)【発明者】
【氏名】大渕 一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 卓
(72)【発明者】
【氏名】森谷 篤
【審査官】
斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−160429(JP,A)
【文献】
特開2009−125872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31
B24B 1/00−1/04
B24B 3/00−3/60;21/00−39/06
B24B 41/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小部品を搭載したローバーを弾性的に支持する荷重付加機構に搭載され、下面に微小部品を支持し且つ上側から個別に垂直方向の加圧力が加えられるコ字形状の複数の加圧部と、荷重付加機構に固定され、前記複数の加圧部を複数の板バネによって弾性的に支持する逆コ字形状の固定部とを備える微小部品保持治具であって、
前記板バネを、前記垂直方向と直交する水平方向に対して前記加圧力方向と逆方向に弓形に湾曲しながら加圧部から固定部に達する湾曲形状になるように構成した微小部品保持治具。
【請求項2】
前記複数の板バネの曲率半径を30mmから60mmの範囲に設定した請求項1記載の微小部品保持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小部品を研磨する研磨装置において微小部品を搭載したローバーを板バネによって弾性的に支持する微小部品保持治具に係り、特に微小部品のピッチが高密度になった場合であっても板バネの破損を低減することができる微小部品保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の機構部品は高精度加工のために微小部品を複数搭載したローバーを板バネによって支持しながら研磨することがあり、例えば、近年の磁気ディスク装置においては、磁気ディスクへの磁気記録密度の向上に伴って磁気ヘッド素子も極小化しており、この磁気ヘッド素子保持治具等の微小部品保持治具は、MR素子(磁気抵抗効果素子)の抵抗値が変化することを利用してデータ再生を行う複合型磁気ヘッドが作用され、この複合型磁気ヘッドは、
図4の上段に示す如く、コイル5と上部磁性膜6と上部シールド膜8により誘導型磁気記録素子を構成し、両端に電極7が接続されたMR素子4をデータ再生時のノイズを低減するための上部シールド膜8及び下部シールド膜9により挟み込むことにより磁気抵抗効果を利用した再生素子を構成し、再生出力に大きく影響する浮上面に露出するMR素子高さHを高精度に研磨加工する必要がある。
【0003】
この複合型磁気ヘッドは、
図4下段から中段に示す如く、セラミックスのウエハ3の表面に誘導型磁気変換素子とMR素子4をスパッタリングとマスク形成と薄膜工程により形成し、このウエハ3を切断加工することによって複数個の磁気ヘッドスライダが連なった
図5に示すローバー12の形態とし、このローバー12を切断加工することで磁気ヘッドスライダの形態にしている。
【0004】
前記MR素子高さHを高精度に研磨加工する研磨装置は、
図6に示す如く、回転する円盤上の研磨定盤101と、この研磨定盤101上にローバーを図示しない磁気ヘッド素子保持治具により弾性的に支持した状態でローバーのヘッド素子毎に荷重を加える荷重付加機構30と、この荷重付加機構30を水平方向移動自在に支持する揺動軸103及び揺動軸103の両端を支持する一対の支柱102と、前記荷重付加機構30の位置決めをスケールガイド25を用いて行うための位置決め機構24と、ローバーの各磁気ヘッド素子の抵抗値変換によりMR素子高さHを検出するギャツプセンサ21とを備え、ギャツプセンサ21によってMR素子高さHを検出しながら荷重付加機構30がローバーのヘッド素子毎に荷重を加えながら研磨を行うように構成されている。
【0005】
従来技術による荷重付加機構30のローバーを弾性的に支持する磁気ヘッド素子保持治具は、側面から図示した場合、
図7に示す如く、下面にローバー12を支持し且つ上側から個別に加圧力が加えられるコ字形状の複数の加圧部41と、荷重付加機構30に固定され、前記複数の加圧部41を複数の直線板バネ45により弾性的に支持する固定部42とを備え、複数の加圧部41の上方から磁気ヘッド素子毎に加圧力を加えることによって、ローバーのヘッド素子毎に荷重を加えながら研磨を行うものである。
【0006】
なお、前記した複合型磁気ヘッド及び研磨装置に関する技術は、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許登録第4868856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の特許文献1に記載された技術は、高精度にMR素子高さを加工することができるものの、近年の記録密度向上のニーズによって磁気ヘッド素子(複合型磁気ヘッド)間のピッチが更に高密度になり、板バネには加工精度の必要性から低剛性が求められることもあり、狭ピッチ化及び低剛性によって板バネの強度が低下し、板バネが座屈して破損する可能性があるという課題があった。例えば、従来技術による磁気ヘッド素子保持治具は、前記した加圧部を横一列に20個並設するものであったが、狭ピッチ化によって同外形寸法で3倍以上並設する必要が生じ、直線板バネ幅も同様に短縮され、強度不足によって作業者の取り扱いに伴う座屈方向の荷重によって板バネが破損するという課題があった。
【0009】
本発明の目的は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、ローバーに搭載された微小部品のピッチが高密度になった場合であっても板バネの破損を低減することができる微小部品保持治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために請求項1記載の発明は、微小部品を搭載したローバーを弾性的に支持する荷重付加機構に搭載され、下面に微小部品を支持し且つ上側から個別に垂直方向の加圧力が加えられるコ字形状の複数の加圧部と、荷重付加機構に固定され、前記複数の加圧部を複数の板バネによって弾性的に支持する逆コ字形状の固定部とを備える微小部品保持治具であって、前記板バネを、前記垂直方向と直交する水平方向に対して
前記加圧力方向と逆方向に弓形に湾曲しながら加圧部から固定部に達する湾曲形状になるように構成したことを特徴とし、請求項2に記載の発明は、前記特徴の微小部品保持治具において、複数の板バネの曲率半径を30mmから60mmの範囲に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による微小部品保持治具は、板バネを、加圧力の垂直方向と直交する水平方向に対して円弧状に湾曲しながら加圧部から固定部に達する湾曲形状になるように構成したことによって、微小部品のピッチが高密度になった場合であっても板バネの破損を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態による微小部品保持治具の斜視を示す図。
【
図2】本実施形態による微小部品保持治具の側面を示す図。
【
図3】本実施形態による湾曲板バネの曲率半径と座屈応力を示すグラフ図。
【
図4】従来技術による複合型磁気ヘッドを説明するための図。
【
図7】従来技術による微小部品保持治具を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による微小部品保持治具の一実施形態を、微小部品が磁気ヘッド素子であり、該磁気ヘッド素子を複数搭載した部位をローバーとした磁気ヘッド素子保持治具を例として詳細に説明する。
本実施形態による磁気ヘッド素子保持治具は、研磨装置のローバーを弾性的に支持する荷重付加機構に搭載されるものであって、
図1及び
図2に示す如く、下面にローバーを支持し且つ上側から個別に垂直方向の加圧力が加えられるコ字形状の複数の加圧部41と、荷重付加機構に固定され、前記複数の加圧部41を上方に円弧状(水平方向に対して円弧状)に湾曲した一対の湾曲板バネ43により弾性的に支持する逆コ字形状の固定部42とを備え、前記加圧部41を横一列に1mm以下のピッチで60個以上並設し、外形寸法高さ約35mm、幅約50mm、奥行き約25mmである。前記加圧部41と固定部42と湾曲板バネ43はステンレス鋼により構成されるが、これに限られるものではない。なお、図中のストッパ42a及びストッパ42は、加圧部41が固定部42側に座屈方向に移動することを阻止するためのものである。
【0014】
このように構成された磁気ヘッド素子保持治具は、複数の加圧部41の上方から磁気ヘッド素子毎に加圧力を加えることによって、ローバーのヘッド素子毎に荷重を加えながら研磨を行うことができる。
【0015】
特に本実施形態による磁気ヘッド素子保持治具は、従来技術による加圧部41を支持する板バネを固定部42に向かって直線状に形成していたが、固定部42に向かって上方に円弧状に湾曲した湾曲形状(加圧垂直方向と直交する水平方向に対して円弧状に湾曲しながら加圧部から固定部に達する湾曲形状)を成し、湾曲板バネ43の曲率半径と座屈応力を測定した
図3に示す如く、湾曲板バネ43の曲率半径を30mmから60mmの範囲に設定した場合、0.3mm変位の条件で座屈応力を1000MPa(メガパスカル)前後にすることができ、曲率半径を40mmに設定するのが好ましい。
【0016】
なお、本実施形態においては、
2つの湾曲板バネを使用する例を説明したが、本発明による湾曲バネはこれに限られるものではなく、板バネの個数
は2つに限られるものではない。また、本実施形態においては微小部品として磁気ヘッド素子を例として説明したが、本発明は磁気ヘッド素子を対象とするものに限られるものではなく、複数の微小部品を1つの搭載部材(例えば、ローバー)に搭載して同時に研磨加工を行うための研磨装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0017】
3 ウエハ、4 MR素子、5 コイル、6 上部磁性膜、7 電極、
8 上部シールド膜、9 下部シールド膜、12 ローバー、
21 ギャツプセンサ、24 位置決め機構、25 スケールガイド、
30 荷重付加機構、41 加圧部、42 固定部、43 湾曲板バネ、
45 直線板バネ、101 研磨定盤、102 支柱、103 揺動軸