特許第6203639号(P6203639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203639電界紡糸されたPTFEでコーティングされたステントおよび使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203639
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】電界紡糸されたPTFEでコーティングされたステントおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/04 20060101AFI20170914BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20170914BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   A61L31/04 110
   A61L31/12 100
   A61L31/14
   A61L31/14 400
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-551390(P2013-551390)
(86)(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公表番号】特表2014-511202(P2014-511202A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】US2012023006
(87)【国際公開番号】WO2012103501
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年6月23日
(31)【優先権主張番号】61/437,404
(32)【優先日】2011年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399125104
【氏名又は名称】メリット・メディカル・システムズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Merit Medical Systems,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100117444
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(72)【発明者】
【氏名】エラー,ジーク
(72)【発明者】
【氏名】ホール,ジョン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ,レイチェル リン
(72)【発明者】
【氏名】ラドフォード,ロバート ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ドルマッチ,バート
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−501539(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/017698(WO,A1)
【文献】 特表2005−511242(JP,A)
【文献】 特表2010−517625(JP,A)
【文献】 特表2010−540190(JP,A)
【文献】 特表2007−519491(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/083530(WO,A1)
【文献】 特公昭60−043981(JP,B1)
【文献】 特開2008−011942(JP,A)
【文献】 特表2005−507464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/18
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略管状の本体を備えるステントにおいて、
前記略管状の本体は、
前記ステントの外側表面を画定するように配設された、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維の第1の層と、
前記ステントの内側表面を画定するように配設された、電子紡糸されたPTFE繊維の第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層との間に配設された結合層と、
を備え、
前記結合層は、組織の内部成長に対して不浸透性であるように構成され、ポリマー材料を含み、前記結合層の前記ポリマー材料の一部は、PTFE繊維の前記第1の層における繊維開口部の内部に配置されている、ステント。
【請求項2】
PTFEの前記第1の層が、2ミクロンから8ミクロンの間の平均孔サイズを有するPTFEを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
PTFEの前記第1の層が、3ミクロンから5ミクロンの間の平均孔サイズを有する、請求項に記載のステント。
【請求項4】
堆積されたPTFEの前記第2の層が、8ミクロン以下の平均孔サイズを有する電界紡糸されたPTFEを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記結合層が、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
堆積されたPTFEの前記第2の層が、堆積されたPTFEの前記第2の層上で組織成長を可能にするように構成されている、請求項1に記載のステント。
【請求項7】
前記ステント内の前記PTFEすべてが、電界紡糸されたPTFEを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項8】
前記ステントの端部に隣接するカフをさらに備え、前記カフが、前記カフ内への細胞の内部成長を促進するように構成されている、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
患者の管腔内に配設されたときに径方向の圧縮に抵抗するように構成されたスキャフォールディング構造をさらに備える、請求項1に記載のステント。
【請求項10】
ステントを構築する方法であって、
PTFEの第1のチューブを回転マンドレル上に電界紡糸することと、
前記第1のチューブを焼結することと、
組織不浸透性の結合層を前記第1のチューブの周りに施与することと、
電界紡糸されたPTFEの第2のチューブを前記結合層の周りに施与することとを含み、
前記組織不浸透性の結合層は、ポリマー材料を含み、前記組織不浸透性の結合層の前記ポリマー材料の一部は、電界紡糸されたPTFE繊維の前記第2のチューブにおける繊維開口部の内部に配置されている方法。
【請求項11】
PTFEの前記第1および第2のチューブを電界紡糸することが、PTFE分散液と水中に溶解されたPEOとを組み合わせることによって形成された混合物を電界紡糸することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
管状の本体を備えるステントにおいて、
前記管状の本体は、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維の第1の層と、
電子紡糸されたPTFE繊維の第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層との間に配設された結合層と、
を備え、
前記結合層は、組織の内部成長に対して不浸透性であるように構成され、ポリマー材料を含み、前記結合層の前記ポリマー材料の一部は、PTFE繊維の前記第1の層における繊維開口部の内部に配置され、
前記ステントは、前記ステントの端部に隣接するカフをさらに備え、前記カフが、前記カフ内への細胞の内部成長を促進するように構成されている、ステント。
【請求項13】
前記ステントの両端部に隣接するカフをさらに備え、前記カフが、前記カフ内への細胞の内部成長を促進するように構成されている、請求項12に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に医療装置に関する。より詳細には、本開示は、ステントまたは他の人工装具、特に電界紡糸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によってコーティングされた人工器官に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
【図面の簡単な説明】
【0003】
本明細書において開示する実施形態は、添付の図を併用して以下の説明および付属の特許請求の範囲からより完全に明らかになる。これらの図は、典型的な実施形態を表すにすぎず、その実施形態は、添付の図を使用することによってさらなる特異性および詳細を用いて説明される。
【0004】
図1】ステントの1つの実施形態の正面図である。
図2A】ステントの1つの実施形態の2つの隣接するコイルの正面部分の切断図である。
図2B図1のステントの一方の端部の詳細図である。
図2C】ステントの端部部分の代替的な設計の詳細図である。
図3】広げられた端部を有するステントの別の実施形態の上面図である。
図4図3のステントの正面図である。
図5】ワイヤがステントの構造を形成するためにどのようにして成形され得るかを示す、ステントの1つの実施形態の斜視図である。
図6A】被覆されたステントの斜視図である。
図6B】平面6B−6Bに沿った図6Aのステントの断面図である。
図7】体腔内に留置されたステントの1つの実施形態を示す図である。
図8A】ステント用の電界紡糸されたPTFEの外側被覆の1つの実施形態の走査型電子顕微鏡写真(「SEM」)画像である。
図8B】ステント用の電界紡糸されたPTFEの外側被覆の1つの実施形態の走査型電子顕微鏡写真(「SEM」)画像である。
図8C】ステント用の電界紡糸されたPTFEの外側被覆の1つの実施形態の走査型電子顕微鏡写真(「SEM」)画像である。
図8D】ステント用の電界紡糸されたPTFEの外側被覆の1つの実施形態の走査型電子顕微鏡写真(「SEM」)画像である。
図9A図8Aのステントの被覆の電界紡糸されたPTFE内層のSEM画像である。
図9B図8Bのステントの被覆の電界紡糸されたPTFE内層のSEM画像である。
図9C図8Cのステントの被覆の電界紡糸されたPTFE内層のSEM画像である。
図9D図8Dのステントの被覆の電界紡糸されたPTFE内層のSEM画像である。
図10A】ステントの別の実施形態の電界紡糸されたPTFEの外側被覆のSEM画像である。
図10B】ステントの別の実施形態の電界紡糸されたPTFEの外側被覆のSEM画像である。
図10C】ステントの別の実施形態の電界紡糸されたPTFEの外側被覆のSEM画像である。
図10D】ステントの別の実施形態の電界紡糸されたPTFEの外側被覆のSEM画像である。
図11A図10Aのステントの被覆の電界紡糸されたPTFEの内層のSEM画像である。
図11B図10Bのステントの被覆の電界紡糸されたPTFEの内層のSEM画像である。
図11C図10Cのステントの被覆の電界紡糸されたPTFEの内層のSEM画像である。
図11D図10Dのステントの被覆の電界紡糸されたPTFEの内層のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ステントは、多様な目的のためにさまざまな体腔内に留置され得る。ステントは、たとえば、中心静脈系内に、この中心静脈系の管腔内の閉塞の処置を含む多様な治療目的のために留置され得る。本開示は、中心静脈(「CV」)系用に設計されたステント、末梢血管(「PV」)ステント、腹部大動脈瘤(「AAA」)ステント、気管支ステント、食道ステント、胆管ステント、または任意の他のステントに適用可能になり得ることが理解されよう。さらに、本開示は、移植片などの他の人工器官にも同様に適用可能になり得る。したがって、ステントの特有の例に関連して以下で記載する本開示は、他の人工装具にも同じように適用し得る。
【0006】
本明細書において概括的に説明し図に示すような実施形態の構成要素は、多種多様な異なる形で配置構成および設計され得ることが容易に理解されよう。したがって、図に表すさまざまな実施形態の以下のより詳細な説明は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、さまざまな実施形態を表すにすぎない。実施形態のさまざまな態様が図に提示されているが、特に指示されない限り、図は必ずしも原寸通りに描かれていない。
【0007】
「連結される(connected to)」、「結合される(coupled to)」、および「連通する(in communication with)」の語句は、機械的、電気的、磁気的、電磁的、流体および熱的な相互作用を含む、2つ以上の実体の間の任意の形態の相互作用を示している。2つの構成要素は、互いに直接接触していない場合でも互いに結合され得る。たとえば、2つの構成要素は、中間の構成要素を介して互いに結合されてもよい。
【0008】
「近位」および「遠位」の方向的用語は、ステント上の対向する位置を示すために本明細書において使用される。ステントの近位端部は、ステントが、施術者によって使用されている留置装置内に配設されたときに施術者に最も近いステントの端部として定義される。遠位端部は、ステントの長手方向に沿って近位端部に対向する端部であり、または施術者から最も遠くにある端部である。当技術分野で使用されているように、これらの用語は、ステントが留置された後、異なる意味を有することがある(すなわち、「近位」端部は、用途に応じて患者の頭または心臓に最も近い端部を示すことがある)ことが理解される。整合させるために、本明細書では、留置前の「近位」および「遠位」と標識されたステントの端部は、ステントが留置されたかどうかに関わらず同じままである。ステントの長手方向は、略管状ステントの軸に沿った方向である。ステントが、ポリマー層に結合された金属ワイヤ構造から構成される実施形態では、金属構造は、「スキャフォールディング」として示され、ポリマー層は「コーティング層」として示される。用語「コーティング」は、ポリマーの単一相、同じポリマーの複数層、または組み合わせて使用された別個のポリマーを含む層を示すこともある。
【0009】
中心静脈系内の管腔は、全体的に内皮細胞で裏打ちされる。中心静脈系全域にわたる内皮細胞のこの裏打ちは、内皮を構成する。内皮は、中心静脈系の管腔を流れ抜ける血液と管腔の内壁の間の境界面として作用する。他の機能の中でも内皮は、管腔内の血液の乱流を低減するまたは防止するものである。
【0010】
多孔性または半多孔性材料のコーティングを含む治療用ステントは、ステントの内側表面上に内皮層の形成を可能にすることができる。ステント内の内皮の形成を可能にするステントは、治療領域における治癒をさらに促進することができる。たとえば、内皮細胞でコーティングされたステントは、周囲の体腔とより整合することができ、血液乱流を減少させ、または血栓症、すなわち血液凝固の形成のリスクを低減する結果をもたらす。したがって、ステントの内側表面上に内皮層の形成を可能にするステントは、特に生体適合性になることができ、施与された地点における外傷を減少させ、副作用を少なくする結果をもたらす。
【0011】
電界紡糸されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、内皮細胞の成長が望ましいところでステントコーティングとして使用され得る。「電界紡糸法」は、充電された表面上にPTFEの小さいストリングを堆積させることによってマット、チューブ、または他の形状を形成するプロセスを示している。電界紡糸プロセスは、そのように形成されたPTFEの厚さ、密度、多孔性、および他の特性を制御する。PTFEの電界紡糸法は、参照によって本明細書に組み込まれている、米国特許出願公報である米国特許出願第2010/0193999号で説明されている。
【0012】
本開示は、特定の実施形態では、電界紡糸されたPTFEの少なくとも1つの層でコーティングされた金属スキャフォールディングを有するステントに関する。特定の構造およびコーティングを以下で説明しているが、以下で説明するスキャフォールディングまたはコーティングの任意の特徴を、本開示の範囲から逸脱することなく任意の他の開示された特徴と組み合わせてもよいことが理解されよう。たとえば、特定の図は、コーティングを有さない金属スキャフォールディングを示しており、これらの図で説明し示す特徴は、本明細書において開示するコーティングの任意の組合せと組み合わせられてもよい。
【0013】
図1図2A、および図2Bは、ステントの可能な実施形態の図を示している。図3および図4は、広げられた端部を含むステントの1つの実施形態の図である。図5は、ステント用のスキャフォールドを形成するためにワイヤがどのように成形され得るかの1つの実施形態を示している。図6Aおよび図6Bは、被覆されたステントの実施形態を示している。図7は、体腔内で留置されたステントを示している。最後に、図8A図11Dは、ステント用の可能なコーティングの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。上記で示したように、任意の特定の図で示すステントは、特定のコーティングを有して示されるかどうか、またはとにかく何らかのコーティングを有して示されるかどうかに関わらず、いかなる実施形態も、本明細書で図示または説明するコーティングの組合せの任意のものを有して構成され得ることが理解されよう。
【0014】
図1は、ステント100の実施形態の正面図を示している。図示する実施形態は、スキャフォールディング構造を形成する金属ワイヤ110の形の1つの実施形態を示している。図1で示すように、スキャフォールディングは、単一の連続ワイヤからなることができる。
【0015】
図1図2A、および図2Bを概括的に参照すると、図示するステントの特定の特徴が示されている。任意の図で使用する数字および記号表示は、その特徴が各図において類似するように特定されるか否かに関係無く、他の図示する実施形態における類似の特徴に適用されることが理解されよう。これらの図に概括的に示すように、ステント100は、スキャフォールディングを形成するように成形されたワイヤ110からなることができる。ワイヤ110は、波形タイプの形で成形されてもよく、この波形は、ステントの頂点102およびアーム104を画定する。スキャフォールディングは、さらに、被覆層(図示されず)に結合され得る。加えて、一部の実施形態では、本明細書で開示する任意の被覆は、たとえばレーザ切断されたステント枠、ポリマーステント枠、ワイヤスキャフォールディングなどのスキャフォールディングまたはステント枠の任意のタイプに適用され得る。
【0016】
ステント100は、ステントの中央セクションが、端部より「硬質」であるように設計され得る。ステントの「硬度」は、ステントの相対的強度(たとえば、その圧縮性)を示している。ステントのより硬質の部分は、より軟質の部分より大きい強度(すなわち、より大きい径方向の外向きの力を発揮する)を有することになる。1つの実施形態では、ステントの中央セクションは、相対的により軟質である近位および遠位の端部セクションより硬質である。
【0017】
4つの基本的な設計パラメータが、図示するステントの特性(硬度、強度、圧壊力、フープ力、可撓性など)に影響を与えるように操作され得る。これらの特性は、(1)図1および図2AではHxとして指定される頂点から頂点の距離、(2)図1および図2AではAxとして指定されるアーム長さ、(3)図2AではRxとして指定される頂点半径、および(4)スキャフォールディンワイヤ110の直径である。これらの値は、ステント上の異なる点において一定であってもなくてもよい。したがって、下付き文字「x」は、総称的に使用され、すなわち、「H」として特定される各々の距離は、特定の点における頂点から頂点の距離を意味する下付き文字1、2、3などと共に頂点から頂点の距離を示している。これらの下付き文字の記号表示は、特有の距離を必ずしも示さず、相対的に使用され得ること(すなわち、H1はH2より小さいものとして指定されてもよく、このときいずれの測定値にも任意の正確な値をあてはめない)が理解されよう。さらに、本開示の利益を有する当業者に明らかであるように、測定値および下付き文字の類似パターンは、本明細書で説明する他のパラメータに、たとえばAxおよびRxに使用される。
【0018】
全体的なステント設計は、所望の径方向力、圧壊プロファイル、および歪みプロファイルを最適化するように構成され得る。ステント設計パラメータは、所望のステント特性を作り出すように各々が構成され調整され得る。たとえば歪みプロファイルは、使用されている材料の破壊点より小さくなるように構成され得る。
【0019】
第1のパラメータである頂点から頂点の距離は、Hxとして指定される。この測定値は、第1の頂点と第2の頂点の間の距離を意味し、この場合両方の頂点は、実質的には、ステントの長手方向軸と同一平面であり平行であるステントの外径上の線に沿って存在する。一部の実施形態では、Hxは、ステントの全体長さに沿って一定とすることができる。他の実施形態では、ステントの長さは、1つまたは複数の「ゾーン」に分割されてもよく、この場合Hxは、ゾーン内では一定であるが各ゾーンは異なるHxを有することができる。さらに他の実施形態では、Hxは、ステントの全体長さに沿って変化することができる。Hxは、ステントの特性を決定するように他の設計パラメータに関連して構成されてもよい。通常、より小さいHx値を有するステントの領域は、より大きいHx値を有する領域より硬質である。
【0020】
図1に示す実施形態では、ステントの両端部に2つの「広がりゾーン」と、ステントの残りの長さに沿った中央体ゾーンとが存在する。図示する実施形態では、H1は、ステントの中央体ゾーン内の頂点から頂点の距離を指定し、H2は、ステントの広がりゾーン内の頂点から頂点の距離を指定する。図示する実施形態では、頂点から頂点の距離、H2は、ステントの遠位端部近くの広がりゾーン内およびステントの近位端部近くの広がりゾーン内の両方で同じである。一部の実施形態では、H1はH2より小さくなることができ、その結果、中央体内では相対的に硬質であり、端部上では相対的に軟質であるステントをもたらす。そのような特性を有するステントは、たとえば腫瘍または他の閉塞を処置するために強度が中央体に沿って必要である用途において利用され得るが、その端部は健康な組織上に載置するように構成され、この場合端部がより軟質であることにより健康な組織に対する外傷が最小限に抑えられる。
【0021】
軟質の端部および硬質の中央体が望ましい実施形態では、H1は、約2mmから30mmの間、H2は約2.1mmから30.1mmの間とすることができる。たとえば、CVまたはPV用途用のステントでは、H1は約3mmから10mmの間、H2は約3.1mmから10.1mmの間とすることができ、たとえば3mm<H1<8mmおよび3.5mm<H2<9mm、3mm<H1<6.5mmおよび4mm<H2<8mm、または3mm<H1<5mmおよび5.5mm<H2<6.5mmなどになる。
【0022】
2つ以上の頂点から頂点の長さが1つのステント上に存在する他の実施形態では、頂点から頂点の長さの変化は、ステントの中央点からの頂点の変位に相関付けられ得る。換言すれば、頂点から頂点の長さは、ステントの中央点から外方に端部に向かって移動するにつれて、ステントの長さの中央点の両側に同じ表面形状、したがって同じ特性をステントに与えるようにして増分的に増大することができる。他の実施形態では、異なる表面形状が、ステントの長さに沿った任意の点で利用され得る。上記で開示したHxに対する値の範囲は、同じようにして、ステントが複数の頂点から頂点の長さを有する実施形態に適用されることが理解されよう。たとえば、1つの実施形態では、ステントは、H1に対して上記で開示した範囲の1つ内の、中央体における頂点から頂点の長さを有することができ、Hxの値は、段階的にまたは何らかの他のパターンで、ステントの長さに沿って増分的に変化して、H2の相補的範囲内の端部における頂点から頂点の長さに達することができる。
【0023】
さらには、一部の実施形態では、Hxの値は、隣接するコイルが互いの中で「入れ子」にされるほど十分小さくすることができる。換言すれば、第1のらせんコイルの頂点は、次の隣接するコイルの頂点のすぐ下の空間内に上方に延びることができる。換言すれば、低い方のコイルの頂点は、高い方のコイルのアーム間に配設されるように十分な量を延びることができる。他の実施形態では、Hxの値は、隣接するコイルが完全に分離されるほど十分大きくすることができる。隣接するコイルが「入れ子」にされる実施形態では、ステントの任意の特定の断面におけるワイヤの数は、入れ子にされないステントより大きくなることができる。換言すれば、ステントの長手方向軸に直交して配設された想像面に沿ってステントを切断すると、ステントが入れ子にされる場合、入れ子にされないステントと比較してより多くのワイヤが交わる。Hxの値が小さくなるほど、より多くの列とそのような平面が交わることができる(すなわち、すぐ隣の隣接する列だけではなくそれ以上が特定の列の頂点の下方の空間内に延びることができる)。入れ子にされたステントは、送達カテーテル内に装填されたときにスキャフォールディング構造内に相対的に大きい歪みを作り出す可能性がある。したがって一部の場合、入れ子にされたステント用の送達カテーテルは、入れ子にされないステント用に構成された送達カテーテルより相対的に大きくなり得る。さらに入れ子にされたステントは、類似のパラメータを有する入れ子にされないステントと比較して相対的に剛性であってもよい。
【0024】
本開示の利益を有する当業者に明らかであるように、硬質の中央体および軟質の端部を有するステントは、多様な用途に望ましい場合がある。さらに、一部の場合では、基本的に「対称的な」ステントが望ましく、換言すれば、中央体セクションにおいて特定の特性および端部において他の特性を有し、両方の端部における特性が実質的に同一であるステントが望ましい場合がある。当然ながら、他の実施形態は、ステントの全体長さに沿って変化する特性を有することができる。変数、たとえばH1とH2の間の相違を変更する効果が、実質的に対称的なステント(図1のような)に関連して説明され得るが、同じ原理は、表面形状がステントの全体長さに沿って変化するステントの特性を制御するために使用されてもよいことが理解されよう。本開示の利益を有する当業者によって理解されるように、これは、本明細書で説明した変数パラメータの各々、たとえばHx、Ax、およびRxに適用される。
【0025】
第2のパラメータであるアーム長さは、図1および図2AにおいてAxとして指定される。Hxと同様に、Axは、ステントの長さに沿って一定であり、ゾーン内で一定であり、またはステントの長さに沿って変化することができる。Axの長さにおける変動は、特定の組の特性を有するステントを作り出すために他のパラメータにおける変動と連動して構成され得る。概して、Axが相対的に短いステントの領域は、Axがより長い領域よりも硬質になる。
【0026】
一部の実施形態では、ステント100の中央セクション近くのアーム長さA1は、端部近くのアーム長さA2より短い。この形の結果、ステントは、中央セクション内では相対的に硬質になり得る。軟質の端部および硬質の中央体が望ましい実施形態では、A1は、約2mmから30mmの間、A2は約2.1mmから30.1mmの間とすることができる。たとえば、CVまたはPV用途用のステントでは、A1は、約2mmから10mmの間、A2は約2.1mmから10.1mmの間とすることができ、たとえば2.5mm<A1<8mmおよび3mm<A2<9mm、3mm<A1<6mmおよび4mm<A2<7.5mm、または4mm<A1<5mmおよび5mm<A2<6mmになる。
【0027】
2つ以上のアーム長さが1つのステント内に存在する他の実施形態では、アーム長さの変化は、ステントに沿った中央点からのアームの変位に相関付けられ得る。換言すれば、アーム長さは、ステントの中央点から外方に端部に向かって移動するにつれて、ステントの長さの中央点の両側に同じ表面形状、したがって同じ特性をステントに与えるようにして増分的に増大することができる。他の実施形態では、異なる表面形状が、ステントの長さに沿った任意の点で利用され得る。上記で開示したAxに対する値の範囲は、同じようにして、ステントが複数のアーム長さを有する実施形態に適用されることが理解されよう。たとえば、1つの実施形態では、ステントは、A1に対して上記で開示した範囲の1つ内の、中央体におけるアーム長さを有することができ、Axの値は、段階的にまたは何らかの他のパターンで、ステントの長さに沿って増分的に変化して、A2の相補的範囲内の端部におけるアーム長さに達することができる。
【0028】
第3のパラメータである頂点半径は、図2AではR1として指定される。HxおよびAxと同様に、Rxは、ステント内に望ましい特性を作り出すように構成され得る。一部の実施形態では、各頂点の内側半径は、実質的に一定の半径を有する円孤を形成することができる。図2Aにおいて点線で示すように、この円孤は、頂点内に円を形成するように延ばすことができる。測定値Rxは、そのように説明された円孤および円の半径を示している。さらに、一部の実施形態では、ステントのスキャフォールディングのアームおよび頂点は、マンドレルから突起するピンの周りにワイヤを型成形することによって形成される。使用されるピンの半径は、頂点にその形状を与え、したがって頂点と実質的に同じ半径を有する。一部の実施形態では、Rxは、ステントの全体長さに沿って一定であり、ステントの長さに沿ってゾーン内で一定であり、またはステントの全体長さに沿って変化する。Rxの大きさにおける変動は、特定の組の特性を有するステントを作り出すために他のパラメータにおける変動と連動して構成され得る。通常、Rxが相対的に小さいステントの領域は、Rxがより大きい領域よりも硬質になる。
【0029】
さらに、一部の場合では、Rxの値がより小さくなると、スキャフォールディングが圧縮されたとき、たとえばステントが送達カテーテル内に配設されたときのワイヤスキャフォールディング内の歪みが相対的に小さくなる結果になり得る。さらには、ワイヤが相対的に大きい直径を有すると、より小さい直径のワイヤと比較して、圧縮されたときにRxによって測定される半径においてまたはそれに隣接して歪みが相対的により小さい結果になり得る。したがって、一部の場合では、歪みは、Rxの値およびスキャフォールディングを形成するワイヤの直径を変化させることによって特定の設計に対して最適化され得る。
【0030】
他の変数のように、Rxは、ステントの用途および所望の特性に応じた値の範囲をとることができる。一部の実施形態では、Rxは、約0.25mmから1.5mmの間とすることができる。たとえば、CVまたはPV用途用のステントでは、Rxは、約0.35mmから0.70mmの間とすることができ、たとえば0.35mm<Rx<0.65mm、0.35mm<Rx<0.6mm、または0.4mm<Rx<0.5mmとする。
【0031】
xの開示する範囲は、Rxの値がステントの長さに沿って一定であるかどうかに関係無く、ステントが異なるRx値を有するゾーンに分割されるかどうかに関係無く、またはRxがステントの全体長さに沿って変化するかどうかに関係無く、適用されることが理解されよう。
【0032】
第4のパラメータであるワイヤ直径は、以下で図5に関連して詳細に論じられる。
【0033】
図2Aは、ステントの2つの隣接するコイルの正面部分の切断図を示している。図示するコイルの部分は、例示的であることを意味し、3つのパラメータHx、Ax、およびRxの明確な図を提供している。これらのパラメータの3つすべては、特定の特性を有するステントを作り出すために構成され得ることが理解されよう。本明細書において開示するこれらのパラメータの値、範囲、または相対的大きさの任意の組合せが、本開示の範囲内で使用され得る。これらの値を一緒にした例として、相対的に硬質の中央体および軟質の端部を有するCVまたはPVステントの1つの実施形態では、H1は約4mm、H2は約5.9mmとすることができ、A1は約4.5mm、A2は約5.6mmとすることができ、R1は約0.5mmとすることができる。
【0034】
図2Bは、ステントの一方の端部を拡大した図である。スキャフォールディングが単一の連続ワイヤによって形成される実施形態において、図2Bは、ワイヤ106の端部がスキャフォールディングに結合され得る1つの方法を示している。図示するように、ワイヤは、最後のコイルが前のコイルに近付き、これに実質的に平行に通るように配設され得る。この形の結果、2つのコイル間の頂点から頂点の距離は、ワイヤの端部106近くで低減する。一部の実施形態では、この移行は、ワイヤの長さに沿って約4個〜8個の頂点の距離に沿って起こる。たとえば、ステントが、端部に最も近いステントの領域に沿ってH2’の頂点から頂点の間隔を有して構成される場合、頂点から頂点の距離は、H2’からより小さい距離へと低減していき、それによってワイヤ106の端部が約4個から8個の頂点にわたって前のコイル(図2Bに示すように)に接することが可能になる。
【0035】
図2Cは、ワイヤスキャフォールディングの代替的な形を示している。図2Cの実施形態では、頂点102’は、ワイヤの長さに沿って相対的高さにおいて交互になる。特に図示する実施形態では、頂点は、らせんコイルの周りにより高い頂点、より短い頂点、より高い頂点、より短い頂点などを含むパターンを形成する。一部の場合では、ステントは、ステントの一方の端部または両方の端部において頂点を交互にさせて構成され得る。たとえば、図1に示すようなステントは、ステントの一方の端部または両方の端部において図2Cに示す頂点102’およびアーム104’のパターンを有して構成されてもよい。頂点のそのような交互パターンは、ステントの端部において血管壁に沿って力を分散させることができ、したがって相対的に非外傷性の端部を作り出す。
【0036】
端部106は、当技術分野で知られている多様な方法でスキャフォールディングに取り付けられ得る。端部106は、スキャフォールディングにレーザ溶接されても、スキャフォールディングに機械的に締め付けられてもよい。ステントがポリマーカバーを含む実施形態では、端部106は、単にカバーに接合されるだけで固定され得る。他の場合では、ストリングを使用して端部106をスキャフォールディングの隣接部分に接合するまたは結び付けることができる。同様に、一部の場合では、X線不透過性マーカを、端部106をスキャフォールディングに結合させるようにして端部106の周りに締め付けてもよい。加えて、当技術分野で知られている他の方法が利用されてもよい。
【0037】
さらには、一部の実施形態では、ステント100は、ステント100に沿って1つまたは複数の点においてX線不透過性マーカを有して構成され得る。そのようなマーカは、スキャフォールディング構造に締め付けられ得る。他の実施形態では、X線不透過性リボン、たとえば金リボンが、ステント100に装着または施与され得る。一部の実施形態では、これらのマーカは、ステント100の端部もしくはその隣接する端部に、または両方の端部に位置することができる。任意のX線不透過性材料、たとえば金またはタンタルが使用されてもよい。
【0038】
図1ならびに図3および図4を再度参照すると、ステント100は、広げられた端部を有して構成され得る。特定の実施形態では、ステントは、近位および遠位の両方端部において、近位端部のみにおいてもしくは遠位端部のみにおいて広がりを有してもよく、またはどちらの端部にも広がりを有さなくてもよいことが理解されよう。これらの実施形態の特定のものでは、ステント100は、ステントの中央体ゾーン内に実質的に一定の直径を有することができ、このときその端部は、端部のより大きい直径へと外方向に広がっている。近位および遠位端部における広がりの表面形状は、同じでも同じでなくてもよいことが理解されよう。
【0039】
図1に示す実施形態では、ステント100は、ステントの中央体において直径D1を有する。この直径は、ステントの中央体全体に沿って一定とすることができる。図示する実施形態は、端部において第2の直径D2を有する。直径におけるこの変化は、ステントの端部において「広がりゾーン」、または直径が増大している領域を作り出し、したがって、ステントは、「広げられた」部分を含むものとして説明され得る。一部の実施形態では、広がりゾーンは約1mmから60mmの長さになる。たとえば、CVまたはPV用途用に設計された特定のステントでは、広がりゾーンは、約3mmから約25mmの長さとすることができ、たとえば約4mmから15mm、または約5mmから約10mmの長さになる。
【0040】
図3および図4もまた、ステントが端部においてどのように広げられ得るかを示している。直径D1’およびD1”は、D1に類似する中央体直径を示し、一方でD2’およびD2”は、D2に類似する端部直径を示している。さらに、図4に示すように、広げられた端部は、中央体におけるステントの表面と広がりの表面の間に、角度アルファを作り出すことができる。一部の場合では、広がりセクションは、図4に示すように、一定の角度で一様に広がり出す。一部の実施形態では、角度アルファは、約1度から約30度になる。たとえば、CVまたはPV用途用に設計された一部のステントでは、アルファは、約2度から8度になり、たとえば約2.5度から約7度、または約3度から約5度になる。例示的な一実施形態では、アルファは約3.6度とすることができる。
【0041】
図1のステント100はまた長さLも有する。この長さは、ステントの望まれる用途に応じて変化することができることが理解されよう。ステントが端部において広がりゾーンを有する実施形態では、より長いステントは、比例して長くなる広がりゾーンを有してもよく、または有さなくてもよい。一部の実施形態では、この広がりゾーンは、ステントの全体長さに関わらず、上記で説明した任意の長さとすることができる。
【0042】
開示されたステントは、多様なサイズで形成されてもよいことが理解されよう。一部の実施形態では、Lは約20mmから約200mmとすることができる。たとえばCV用途では、ステントは、約40mmから100mm、またはたとえば、少なくとも約50mm、60mm、70mm、80mm、もしくは90mmの間の任意の値の長さLを有することができる。PV用途では、ステントは、約25mmから150mm、またはたとえば、少なくとも約50mm、75mm、100mmもしくは125mmの間の任意の値の長さLを有することができる。ステントはまた、他のステント用途では、これらの例示的な値より長くても短くてもよい。
【0043】
同様に、ステントは、多様な直径を有して形成されてもよい。一部の実施形態では、ステントの中央体の直径は、約4mmから約40mmの間とすることができる。たとえば、CVまたはPV用途では、ステントは、約3mmから16mm、またはこの範囲内の約5mmから14mmの間、もしくは約7mmから約10mmの間などの任意の距離の中央体の内径を有することができる。
【0044】
ステントは、使用される中央体の直径に関わらず、広げられた端部を有して構成されてもよく、または構成されなくてもよい。一部の中心静脈の実施形態では、広げられた端部の最大直径は、中央体の直径より約0.5mmから約2.5mmの間だけ大きくなる。たとえば、広げられた端部の最大直径は、中央体の直径より、約1mmから約2mmの間だけ、あるいは約1.25mmまたは約1.5mmの間などの約1.25mmから約1.5mmの間だけ大きくなることができる。
【0045】
次に図5を参照すると、ステントのスキャフォールディングは、単一の連続ワイヤから形成され得る。一部の実施形態では、ワイヤは、Nitinol(ASTM F2063)または他の適切な材料から構成され得る。一部の実施形態では、ワイヤは、約0.005インチ(0.013cm)から約0.020インチ(0.051cm)の間の直径を有する。たとえば、CVまたはPV用途用に設計された一部のステントでは、ワイヤが約0.009インチ(0.023cm)から約0.011インチ(0.028cm)の直径である特定の実施形態、またはワイヤが約0.010インチ(0.025cm)の直径である実施形態を含んで、ワイヤ直径は、約0.008インチ(0.020cm)から約0.012インチ(0.030cm)の直径とすることができる。さらには、胸部大動脈用に構成されたステントは、約0.015インチ(0.038cm)または0.010インチ(0.025cm)までの直径のワイヤを含む、0.020インチ(0.051cm)までの直径のワイヤから形成され得る。
【0046】
図5は、一部の実施形態において、ワイヤ110が、ステントの長さに沿って傾斜するコイルを作り出すらせんパターンでどのようにして巻き付けられ得るかを示している。アームおよび頂点を形成するワイヤの波形は、点線120によって表されるこのらせん周りで中心揃えされ得る。
【0047】
次に図6Aおよび図6Bを参照すると、一部の実施形態では、ステント100は、スキャフォールディングを形成するワイヤ110と、スキャフォールディングに結合されたカバー200とから構成され得る。一部の実施形態では、このカバーは、単一の層から構成されてもよく、一方で他の実施形態では、これは、材料の2つ、3つ、またはそれ以上の層から構成されてもよい。1つまたは複数の層は、ポリマーから構成され得る。
【0048】
図示する実施形態は、2つのカバー層、すなわち外層210および内層220を有する。スキャフォールディングの一部分は、特定の点において一方または両方の層を突き抜けることができ、またはスキャフォールディングは、外側直径上で外層210によって、および内側直径上で内層220によって完全に閉鎖されてもよい。
【0049】
一部の実施形態では、外層210、内層220、またはその両方は、電界紡糸されたPTFEから構成され得る。電界紡糸されたPTFEは、PTFEの無作為に堆積されたストリングから形成されたPTFEのチューブ、マット、または他の形状からなる。前に示したように、PTFEの電界紡糸法は、米国特許出願公報である米国特許出願第2010/0193999号で説明されている。参照文献で説明されているように、電界紡糸法は、静電場の存在下で、収集面上にポリマーを堆積させることを含むことができる。一部の場合では、ポリマーは、帯電され、1つまたは複数のオリフィスから放出され得る。
【0050】
本開示特有である、電界紡糸型PTFEまたは他のポリマーに関連するさらなる情報は、以下に含まれる。密度および多孔性を含む電界紡糸されたPTFEの特性は、電界紡糸プロセスを制御することによって、電界紡糸されたPTFEを作り出す間に制御または影響され得る。
【0051】
一部の実施形態では、PTFE分散液が、PTFEを電界紡糸するためにオリフィスから放出され得る。さらに、一部の例示的な実施形態では、ポリエチレンオキシド(PEO)が、材料を電界紡糸する前にPTFE分散液に加えられ得る。PEOは、分散液中または材料を電界紡糸するプロセス中のPTFE繊維の形成を助けるために、繊維分解剤として加えられ得る。一部の場合では、PEOは、最初に水と混合されると、PTFE分散液中により容易に溶解することができる。一部の例では、こうした溶解度の増大は、PEOをPTFE分散液中に溶解させるのに必要とされる時間を、数日の長い間から30分ほどに短縮することができる。材料が収集器上に電界紡糸された後、材料は、次いで以下でさらに説明するように焼結され得る。一部の場合では、焼結プロセスは、PTFEの構造を硬化させまたは硬質にする傾向がある。さらに、焼結はまた、水およびPEOを無くすこともでき、その結果実質的に純粋なPTFEのマットを生じさせる。
【0052】
1つの例示的なプロセスでは、60重量%のPTFE水分散液が、以下の通りにPEOおよび水と混合された。最初に5mLの水が1.4gのPEOに加えられた。水およびPEOは、PEOが完全に溶解され、溶液が濃厚ゲルを作り出すまで混合された。次いで、30mLの60重量%のPTFEが、PEO/水混合物に加えられた。組み合わされた溶液は、次いで、均質性を達成するまで非撹拌のジャーローラ内で静置または混合された。他の例では、水、PEOおよびPTFEの量が、混合物の粘度、PEO/PTFE比、または他の特性を最適化するように制御され得る。一部の場合では、PTFE分散液と混合する前に水をPEOに加えることは、混合物中の大きな固体塊の数を減少させることを助け、混合物の調製時間を短縮し、組み合わされた混合物が可溶化するのに必要とされる時間を低減することができる。
【0053】
電界紡糸されたPTFEから構成された膜は、さまざまな無作為な点で互いに交差する多くの繊維から構成された微細構造を有することができる。電界紡糸プロセスは、この構造の厚さ、したがって膜の相対的浸透率を制御することができる。膜上に電界紡糸されたPTFEのストランドが多くなるほど、膜は、厚さが増大し、(ストランドの連続層がその下の層の孔および開口部を閉塞することにより)浸透率が低下する。(この微細構造は、以下でより詳細に論じる図9A図11Dに示される。)
【0054】
電界紡糸されたPTFEの複雑な無作為の微細構造は、膜の平均孔サイズの直接測定に困難さを呈する。平均孔サイズは、知られている試験技術および器具を用いて流体に対する膜の浸透率を測定することによって間接的に求めることができる。浸透率が求められると、この測定値を使用して電界紡糸されたPTFE膜の「有効な」孔サイズを求めることができる。本明細書では、電界紡糸されたPTFE膜の「孔サイズ」は、浸透率測定に関するASTM規格F316を用いて測定されたときの電界紡糸されたPTFEの浸透率に対応する膜の孔サイズを示している。この規格は、ASTM公開文献F316の「Standard Test Methods for Pore Size Characteristics of Membrane Filters by Bubble Point and Mean Flow Pore Test」で説明されており、これは参照によって本明細書に組み込まれている。
【0055】
一部の用途では、実質的に不浸透性の外層210を有するステント100を作り出すことが望ましい場合がある。そのような層は、ステントを取り囲む管腔組織のステント内への成長の発生率を低減することができる。これは、ステントが狭窄または他の閉塞を処置するために使用される用途において望ましくなり得、不浸透性の外層は、組織がステントの管腔内へと成長し、体腔を再度遮りまたは制限することを防止することができる。一部の実施形態では、実質的に不浸透性の外層は、約0ミクロンから約1.5ミクロンの平均孔サイズを有する電界紡糸されたPTFEを用いることによって生み出すことができる。他の実施形態では、不浸透性の層は、約0.5ミクロン未満の平均孔サイズを有することができる。さらに別の実施形態では、不浸透性の層は、約1.0ミクロン未満の平均孔サイズを有することができる。一部の実施形態では、不浸透性の層は、結合層、中間層または内層などの、外層以外の層とすることができる。さらには、実質的に不浸透性の層は、たとえば、フィルムまたはディップコーティングとして施与されるフッ素化エチレンプロピレン(FEP)から形成され得る。さらには、FEPは、実質的に不浸透性の層を作り出すために小さい平均孔サイズで電界紡糸され得る。
【0056】
他の可能性のある実施形態では、より多孔性である外層210を有するステントを作り出すことが望ましくなり得る。多孔性の外層210は、治癒および人工器官の体内への融合を可能にすることができる。たとえば、周囲の管腔の組織が、多孔性の外径内へと成長することができる。この「組織の内部成長」は、治療部位における治癒を可能にすることができる。一部の実施形態では、多孔性の外層210は、電界紡糸されたPTFEから形成され得る。
【0057】
特定の実施形態では、相対的に多孔性である内層220が望ましくなり得る。この層は、実質的に不浸透性の外層210と併用して使用されてもよく、または使用されなくてもよい。相対的に多孔性である内層は、ステント100の内側直径上で内皮が成長することを可能にすることができ、この成長は、治癒、生体適合性、およびステント内の血液乱流の低減に望ましくなり得る。一部の実施形態では、内層は、約1ミクロンから約12ミクロンの平均孔サイズ、たとえば約2ミクロンから約8ミクロン、または約3ミクロンから約5ミクロン、あるいは約3.5ミクロンから約4.5ミクロンの平均孔サイズを有する電界紡糸されたPTFEから構成され得る。
【0058】
図6Bは、外層210、内層220、およびワイヤスキャフォールド110を有するステントの断面図を示している。加えて、外層210と内層220の間の場所が、230として示されている。2つの層だけ存在する実施形態では、2つの層間に隙間は存在せず、外層210および内層220は、ワイヤ110によって分離されないところでは直接接触状態になり得ることが理解されよう。
【0059】
他の実施形態では、第3の層が、外層210と内層220の間の場所230内に配設され得る。一部の実施形態では、この層は、外層210と内層220の間の接合を促進するように構成された「結合層」とすることができる。他の実施形態では、結合層は、さらに、ステント全体に対して剛性または引っ張り強度などの特定の特性を与えるように構成され得る。さらには、内層220および外層210の両方が多孔性の性質である実施形態では、結合層は、2つの多孔性層間に不浸透性の層を作り出すように構成され得る。そのような実施形態では、ステントは、ステントの内面および外面の両方での細胞成長および治癒を可能にしながら、ステントの外側からの組織が管腔内へと成長し、管腔を閉塞することを依然として防止することができる。
【0060】
結合層は、任意の熱可塑性物質からなることができ、電界紡糸されてもされなくてもよい。1つの実施形態では、結合層は、発泡PTFEとすることができる。別のものでは、これは、電界紡糸されたPTFEとすることができる。他の実施形態では、これは、電界紡糸FEPおよびフィルムまたはディップコーティングとして施与されたFEPを含むFEPとすることができる。さらに、結合層は、以下のポリマーの任意のものまたは任意の他の熱可塑性物質からなることができる:デキストラン、アルギン酸塩、キトサン、グアーゴム化合物、デンプン、ポリビニルピリジン化合物、セルロース化合物、セルロースエーテル、加水分解されたポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリカルボキシレート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(イタコン酸)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート−co−アクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリ(メトキシエチレン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール)12%アセチル、ポリ(2,4−ジメチル−6−トリアジニルエチレン)、ポリ(3モルホリニルエチレン)、ポリ(N−1,2,4−トリアゾリルエチレン)、ポリ(ビニルスルホキシド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(N−ビニルピロリドン−co−酢酸ビニル)、ポリ(g−グルタミン酸)、ポリ(Nプロパノイルイミノエチレン)、ポリ(4−アミノ−スルホ−アニリン)、ポリ[N−(p−スルホフェニル)アミノ−3−ヒドロキシメチル−1,4−フェニレンイミノ−1,4−フェニレン)]、イソプロピルセルロース、ヒドロキシエチル、ヒドロキシルプロピルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、アルギン酸アンモニウム塩、i−カラギーナン、N−[(3’−ヒドロキシ−2’,3’−ジカルボキシ)エチル]キトサン、コンニャクグルコマンナン、プルラン、キサンタンゴム、ポリ(アリルアンモニウムクロリド)、ポリ(アリルアンモニウムホスフェート)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ジメチルドデシル(2−アクリルアミドエチル)アンモニウムブロミド)、ポリ(4−N−ブチルピリジニウムメチレンヨウ素)、ポリ(2−N−メチルピリジニウムメチレンヨウ素)、ポリ(N−メチルピリジニウム−2,5−ジイルエテニレン)、ポリエチレングリコールポリマーおよびコポリマー、セルロースエチルエーテル、セルロースエチルヒドロキシエチルエーテル、セルロースメチルヒドロキシエチルエーテル、ポリ(1−グリセロールメタクリレート)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸)90:10、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ(2−ビニル1−メチルピリジニウムブロミド)、ポリ(2−ビニルピリジンN−オキシド)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル2−メタクリルオキシエチルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(4ビニルピリジンN−オキシド)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(アクリルアミド/2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)80:20、ポリ(アクリルアミド/アクリル酸)、ポリ(塩酸アリルアミン)、ポリ(ブタジエン/マレイン酸)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アクリル酸エチル/アクリル酸)、ポリ(エチレングリコール)ビス(2−アミノエチル)、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ビスフェノールAジグリシジルエーテル付加物、ポリ(エチレンオキシドbプロピレンオキシド)、ポリ(エチレン/アクリル酸)92:8、ポリ(lリジン臭化水素酸塩)、ポリ(l−リジン臭化水素酸塩)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(n−ブチルアクリレート/2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ(Nイソ−プロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルピロリドン/2ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ジメチルサルフェート四級化物、ポリ(N−ビニルピロリドン/酢酸ビニル)、ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノラウレート(Tween20(登録商標))、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(ビニルアルコール)、N−メチル−4(4’ホルミルスチリル)ピリジニウム、メトサルフェートアセタール、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルアミン)塩酸塩、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)ナトリウム塩およびポリアニリン。
【0061】
材料に関わらず、結合層は電界紡糸されてもされなくてもよい。さらに、特定の実施形態では、ステントは2つ以上の結合層からなることができる。結合層は、当技術分野で知られている任意の方法で形成され、当技術分野で知られている任意の方法で内層および外層に取り付けられ得る。たとえば、結合層は、内層210の周りに巻き付けられた材料のシート、または後で熱収縮されるまたは別の形で内層および外層に接合される内層210の上方に滑り込ませた材料のチューブを含むことができる。さらに、結合層が電界紡糸される実施形態では、これは、内層210上、スキャフォールディング上またはその両方上に直接的に電界紡糸され得る。一部の場合では、結合層は、ステントが構築された後に溶融されて結合層をステント被覆の隣接層に接合させることができる。
【0062】
さらには、結合層は、ステント被覆の全体特性を変更するように構成され得る。たとえば、一部の場合では、(所望の孔サイズの)電界紡糸されたPTFEのみから構成されたカバーは、所望の引っ張りまたは破裂強度を有さないことがある。PTFE内層、PTFE外層、またはその両方を補強するために相対的により強い材料から構成された結合層が使用され得る。たとえば、一部の場合では、FEP層が、カバーの材料強度を増大させるために使用されてもよい。
【0063】
また、電界紡糸されたPTFEの1つまたは複数の層が、本明細書で開示するもの以外のスキャフォールディング構造に関連して使用されてもよいことも理解されよう。換言すれば、カバー、層、結合層、および関連する構成要素に関する上記の開示は、スキャフォールディング構造の任意のタイプに適用可能であると共に、別個のスキャフォールディング構造を有さないステントまたは移植片にも適用可能である。
【0064】
図7は、体腔50内に配設されたステント100の断面を示している。ステントは、ワイヤスキャフォールディング110およびカバー200を含む。カバー200が外層および内層から構成される実施形態では、外層は、体腔に隣接して配設されてもよく、内層は、体腔の内側部分に向かって配設されてもよい。特に、ステントが実質的に管状の形状ではない実施形態では、外側カバー層は、体腔壁に隣接して配設される層として定義され、内側カバー層は、体腔の内側部分に向かって配設される層として定義される。
【0065】
一部の実施形態では、カバー200は、紡績マンドレル上に膜を電界紡糸することによって形成され得る。換言すれば、収集装置は、電界紡糸プロセス中回転する、実質的に円筒状のマンドレルなどのマンドレルを備えることができる。マンドレルが回転する速度を変化させることにより、膜の特定の特性に影響が及ぼされ得る。たとえば、一部の実施形態では、膜の密度(したがって平均孔サイズ)は、マンドレルの回転速度に関連付けられ得る。さらに、繊維の方向性、または繊維がより制御された方向または方法で堆積される程度も、マンドレルの回転速度に関連付けられ得る。一部の場合では、収集マンドレルは、電界紡糸プロセス中、約1RPMから約50RPM、または約25RPMの速度を含む、約1RPMから約500RPMの間の速度で回転することができる。したがって、紡績マンドレル上に形成された電界紡糸されたPTFEの膜は、継ぎ目の無い、実質的に等方性の特性を有する管状膜を含むことができる。
【0066】
膜がマンドレル上に電界紡糸された後、次いで膜は焼結され得る。PTFEの場合、膜は、約360℃から約400℃の温度を含む、約385℃の温度で焼結され得る。焼結は、PTFEの構造を硬化させる傾向があり、これは、焼結がPTFEの軟質性または流動性を低減することを意味する。さらに、焼結は、PTFEと混合されたすべての水またはPEOを蒸発させることができ、その結果、実質的に純粋なPTFEから構成された材料を生じさせる。
【0067】
一部の実施形態では、PTFE層は、マンドレル上に紡糸され次いで焼結され得る。膜が焼結されると、材料のチューブは、(膜がマンドレルにいかなる形でも接着することを最初に遮るために)マンドレルから取り外され、次いでマンドレル上に滑り戻され得る。他の場合では、低摩擦コーティングが、膜が電界紡糸される前にマンドレルに代替的にまたは追加的に施され得る。膜がマンドレルに再度施与されると、ワイヤスキャフォールディングをマンドレルおよび膜の上方に形成することができる。材料の第2の層が次いで、スキャフォールディングおよび膜上に紡糸され、続いて焼結され得る。さらに層が付加され得る。
【0068】
一部の場合では、層は、PTFEの第1の層と、FEPの第2の層と、PTFEの第3の層とを含むことができる。平均孔サイズを含むこれらの層の各々の特性は、特定の層内の組織の成長を阻害する、または特定の層上での内皮の成長を可能にするコーティングを形成するように制御され得る。
【0069】
別の例では、PTFEの第1の層は、マンドレル上に紡糸され、焼結され、マンドレルから取り外され、マンドレル上に戻され、スキャフォールディング構造が施与され得る。次いでFEP層が、フィルム層をディップし、噴霧し、施与することによって、電界紡糸することによって、または他の処理によって施与され得る。FEP層は、外側PTFE層を施与する前に焼結されても焼結されなくてもよい。
【0070】
別の特定の例では、PTFEの第1の層は、ここでもマンドレル上に紡糸され、焼結され、取り外され、戻され、スキャフォールディング構造が施与され得る。次いでFEP層が、フィルム層として施与され得る。一部の場合では、これは、たとえばはんだこてによって所定位置に「留められ」得る。(マンドレル上に電界紡糸し、焼結することによって別個に形成され得る)PTFEの外側チューブが次いで、FEPフィルム層の上方に配設され得る。次いで構造体全体が、たとえば圧縮ラップを施与することによって加圧され得る。一部の実施形態では、このラップは、PTFEベース材料を含む任意の適切な材料を含むことができる。他の実施形態では、Kaptonフィルムが圧縮ラップの前に構造体の周りに巻き付けられて、構造体が圧縮ラップに付着することを防止することができる。
【0071】
次いで圧縮された層は、FEPの溶融温度を上回るが、PTFEの焼結温度以下で加熱され得る。たとえば、FEPの溶融温度は、約325℃を含む、約300℃から約330℃とすることができる。PTFEは、約360℃から約400℃の温度で焼結され得る。したがって、構造体全体は、約325℃などの適切な温度まで加熱され得る。一部の実施形態では、構造体は、約15分から約20分の間この温度で保持され得る。このため、FEPが、これを取り囲む多孔性のPTFEナノ繊維層内に「流れる」ことが可能になり得る。FEP結合層とPTFEの外側および内側のカバー層の結合により、仕上げられた被覆の強度が増大し得る。次いで構造体は冷却され、圧縮ラップおよびKaptronフィルムが破棄され得る。構造体は次いで、マンドレルから取り外され得る。
【0072】
上記で説明した例示的なプロセスによって形成されたステントは、多孔性および強度の所望の特性を有して構成され得る。一部の場合では、FEP材料は、PTFEナノ繊維をコーティングすることができるが、依然として内皮の成長を可能にする多孔性を可能にする。FEPがPTFEをコーティングする程度は、処理の温度および時間によって制御され得る。構造体が保持される温度が低くなるおよび/またはその時間が短くなるほど、流れ得るFEPは少なくなる。一部の場合では、層内の組織を成長させないFEPの結合層は、構造物を約260℃に加熱するだけで形成され得る。
【0073】
加えて、一部の実施形態では、ステントはまた、ステントの一方の端部または両方の端部にカフを含むことができる。カフは、ステントの端部の一方に隣接して配設された、ステントの外径上の追加のコーティングとすることができる。カフは、カフ内へのすばやい細胞の内部成長を促進するように構成されてもよく、たとえばカフは、ステントの被覆の外層より多孔性とすることができる。多孔性、コーティングのタイプ、材料のタイプ、有機材料の使用、および/または使用または合成材料および有機材料から形成された複合材料などの要因が使用されて、すばやい組織の内部成長に合わせて構成されたカフを作り出すことができる。ここでもカフは、ステントの一方の端部または両方の端部におけるすばやい成長または内皮化を促進するように構成され得る。一部の実施形態では、カフは、ステントの両方の端部に隣接して配設され得る。1つのカフまたは複数のカフは、血管壁に対してステントの端部を「固定する」傾向があり、血管壁に対するステント端部の相対移動を低減することができる。そのような移動の低減は、ステント端部による血管の炎症を減少させることができ、狭窄などの合併症を最小限に抑える。カフは、一部の場合ではCVOタイプの用途での使用に合わせて構成されてもよい。
【0074】
一部の実施形態では、ステントの被覆の外層は、層内の組織成長を抑制するために相対的に非多孔性になるが、外側カバー層の周りに配設されたカフは、各端部の近くに、一部の内部成長が発生し得るセクションをもたらすことができる。
【0075】
カフは、PTFEなどの電界紡糸材料から構成され、本明細書で説明する方法を含む任意の方法によって外側被覆層に接合され得る。たとえば、FEPの層が外側被覆層とカフの間に配設され、加熱されて層を接合させることができる。他の実施形態では、カフは、ステントに糊付けされたコラーゲン層を含むことができる。さらに、共に電界紡糸されたコラーゲンおよびPTFEのカフが利用されてもよい。
【0076】
図8A図9Dは、ステント被覆の例示的な実施形態の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。図8A図8Dは、被覆の外層の画像であり、一方で図9A図9Dは、被覆の内層の画像である。各々のSEMでは、SEM画像上で構造を見えるようにするために、電界紡糸されたPTFEは金の非常に薄い層で被覆された。
【0077】
図8Aは、750倍における外側被覆のSEM画像であり、図8Bは1500倍におけるSEM画像であり、図8Cおよび図8Dは3000倍におけるものである。同様に、図9Aは750倍における内側被覆の画像であり、図9Bは1500倍におけるものであり、図9Cおよび図9Dは3000倍におけるものである。
【0078】
これらのSEM画像は、電界紡糸されたPTFEの微細構造を反映して、被覆を形成するPTFEの無作為に堆積された十字交差の分枝を表している。
【0079】
図10A図11Dは、ステント被覆の第2の例示的な実施形態の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。図10A図10Dは、被覆の外層の画像であり、一方で図11A図11Dは、被覆の内層の画像である。ここでも各々のSEMでは、SEM画像上で構造を見えるようにするために、電界紡糸されたPTFEは金の非常に薄い層で被覆された。
【0080】
図10Aは、750倍の外側被覆のSEM画像であり、図10Bは1500倍のSEM画像であり、図10Cおよび図10Dは3000倍のものである。同様に図11Aは、750倍の内側被覆の画像であり、図11Bは1500倍のものであり、図11Cおよび図11Dは3000倍のものである。
【0081】
ステントの特有の実施形態が、図示され説明されてきたが、説明した本開示は、開示した正確な形状および構成要素に限定されないことを理解されたい。本開示の利益を有する当業者に明らかであるさまざまな改変、変更、および変形が、本開示を利用して、開示した方法およびシステムの構成、作動、および詳細に加えられてもよい。
【0082】
さらに精緻化することなく、当業者は、先述の説明を使用して本開示を最大限利用できると考えられる。本明細書において開示した例および実施形態は、単に説明的かつ例示的にすぎず、本開示の範囲をいかなる形でも限定するものではないと解釈されるものである。本開示の利益を有する当業者には、本明細書の開示の基礎となる原理から逸脱することなく上記で説明した実施形態の詳細に変更が加えられてもよいことが明らかになるであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D