(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203645
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】仮固定用接着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/02 20060101AFI20170914BHJP
C09J 191/06 20060101ALI20170914BHJP
H01L 21/304 20060101ALN20170914BHJP
H01L 21/301 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
C09J7/02 Z
C09J191/06
!H01L21/304 622J
!H01L21/78 M
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-2591(P2014-2591)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2015-131878(P2015-131878A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(72)【発明者】
【氏名】東 健策
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
【審査官】
澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−189622(JP,A)
【文献】
特開平08−283668(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/099057(WO,A1)
【文献】
特開2012−025879(JP,A)
【文献】
特開2005−133048(JP,A)
【文献】
特開2004−339633(JP,A)
【文献】
特開平6−275717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01L 21/02,21/301,21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座上に仮固定用接着シート、加工部材を順次積載し、積載の途中または積載後に加熱し、その後冷却して該加工部材を該台座に固定し、
該加工部材の加工後に、該加工部材を該台座から剥離した後に溶解液で洗浄する、または溶解液により仮固定用接着シートを溶解せしめることで該加工部材を台座から離脱させる、のいずれかの加工方法に用いられる、接着剤を主成分とする仮固定用接着シートであり、
前記接着剤が、ワックスを含有する組成物からなり、
シート状の芯材を有することを特徴とする仮固定用接着シート。
【請求項2】
前記芯材が多孔質材料であることを特徴とする請求項1に記載の仮固定用接着シート。
【請求項3】
前記多孔質材料が織布若しくは不織布であることを特徴とする請求項2に記載の仮固定用接着シート。
【請求項4】
シート状の多孔質材料を少なくとも一方の面に密着させていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の仮固定用接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工部材を一時的に固定するための仮固定用接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
厚さ1mm以下の薄いシリコンウエハをバックグラインド加工したり、チップ化したりするためには、通常ウエハとその外周に配置したフレームとをバックグラインドテープやダイシングテープに貼り付けて固定した状態でそれぞれの加工が行われている。これらのテープは、少なくとも片面に粘着層が設けられており、この粘着層によりウエハを密着固定すると共に、加工後は加熱やUV照射、延伸することでテープからシリコンウエハやチップを剥離し易いように設計されている。
一方、シリコンやガラス、セラミックス、磁性材料、結晶材料等の脆性材料で、インゴットや1mmを超える厚さの板状物を、スライシング、ダイシング、ポリシング、切削などの加工をする場合、上記の粘着テープでは、固定が弱く加工時にこれらの加工部材が剥離したり、動いたりしてしまうことで加工精度が低下する恐れがあった。そこでこれらの加工部材をしっかりと固定(仮固定)するためには、従来ビニル系樹脂、石油系樹脂、ワックス等の熱可塑性を有する接着剤や、エポキシ樹脂等の熱硬化系の接着剤が使用されてきた。前者の熱可塑性接着剤は、粉末若しくは固体の棒状で提供されており、加工部材を固定する台座(若しくは加工部材)を加熱し、その上で接着剤を融解して塗り拡げていき、加工部材(若しくは台座)を押し付けて密着させた後で冷却することで固定を行ってきた。また、後者の熱硬化系接着剤は、1液若しくは2液で提供され、液状の接着剤を台座若しくは加工部材に塗布して両者を貼り合せた後で、常温放置若しくは一定時間加熱することで接着剤が硬化し固定するものである。これらの接着剤で固定された加工部材は、所定の加工が済んだ後で、有機溶剤やアルカリ溶液、熱水等の特定の溶解液を使用して台座から離脱されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2767196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の接着剤を使用する場合、台座若しくは加工部材上に適量の接着剤を均一に塗布する必要があるため、熟練度を有する作業者でなければ行うことが出来なかった。また、このような人手に頼る作業であるため、この仮固定のプロセスを自動化することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本願発明者は、この仮固定プロセスを、特別の熟練者でなくても行うことが出来、更に自動化も可能にするためには、接着剤の形状を予めシート状にしておくことが重要であると考え、本発明に至ったものである。
【0006】
本発明1の仮固定用接着シートは、接着剤を主成分とし、台座上に仮固定用接着シート、加工部材を順次積載し、積載の途中または積載後に加熱し、その後冷却して該加工部材を該台座に固定し、
該加工部材の加工後に、該加工部材を該台座から剥離した後に溶解液で洗浄する、または溶解液により仮固定用接着シートを溶解せしめることで該加工部材を台座から離脱させる、のいずれかの加工方法に用いられることを特徴とする。
【0007】
本発明2の仮固定用接着シートは、前記仮固定用接着シートが、熱可塑性樹脂またはワックスを含有する組成物からなることを特徴とする。
【0008】
本発明3の仮固定用接着シートは、シート状の芯材を有することを特徴とする。
【0009】
本発明4の仮固定用接着シートは、前記芯材が多孔質材料であることを特徴とする。
【0010】
本発明5の仮固定用接着シートは、前記多孔質材料が織布若しくは不織布であることを特徴とする。
【0011】
本発明6の仮固定用接着シートは、シート状の多孔質材料を少なくとも一方の面に密着させていることを特徴とする
【発明の効果】
【0012】
本発明の仮固定用接着シートを使用することで、固体または液状の接着剤を台座または加工部材上に塗布する作業を行うことなく、単に積載するだけで接着剤を供給することができるため、何ら熟練が必要ではなくなった。更に、このようなシートは人手を介さずとも自動化装置により供給できるため、仮固定のプロセス自体を自動化することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】芯材をシート内に配置した本発明の仮固定用接着シートの断面図である。
【
図2】接着剤を芯材に含浸させた本発明の仮固定用接着シートの断面図である。
【
図3】接着剤の表面に芯材を密着させた本発明の仮固定用接着シートの断面図である。
【
図4】剥離材上に本発明の仮固定接着シートを形成した例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に用いられる接着剤としては、熱可塑性樹脂やワックスが好ましく用いられる。
【0015】
熱可塑性樹脂は、常温ではタックを示さない硬い樹脂状であって、加熱時に軟化または融解して台座と加工部材との間に濡れ拡がってその隙間を充填し、この状態で常温まで冷却すれば台座と加工部材とを固く接着固定することができ、更に特定の溶解液には溶解して加工済みの加工部材を離脱することができる材料である。具体的には、天然樹脂としてロジン及びその誘導体、シェラックなど、合成樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂やこれらの変性樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体のような共重合体が挙げられ、これらは単独で、または混合して使用することができる。
【0016】
また、いわゆるワックスも単独または、上記の熱可塑性樹脂と共に本発明の仮固定用接着シートに使用することができる。ワックスとは、狭義には高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルを指すが、本発明ではこれに限らず、常温では固くてタックを示さないが、加熱すると容易に融解するワックスと同じ性状を示すもので、台座と加工部材とを硬く接着固定することができ、更に特定の溶解液には溶解して加工済みの加工部材を離脱することができるものであれば使用することができる。具体的には、カルナウバワックスのような植物系ワックス、蜜蝋のような動物系ワックス、モンタンワックスのような鉱物系ワックス、パラフィンワックスのような石油系ワックス、各種合成ワックス、及びこれらのワックスや油脂から抽出・変性した高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類、水素硬化油、グリセリンやポリグリセリンの高級脂肪酸エステルなどであり、これらは単独で、若しくは混合して使用することができる。
【0017】
本発明の仮固定用接着シートには、上記の熱可塑性樹脂やワックスに加え、軟化点や融点、溶融粘度、接着性、固体時の固さや溶解液への溶解性などを調整するために、フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤や、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの水溶性化合物、界面活性剤、有機、無機の各種フィラーなどを配合することができる。また、上記熱可塑性樹脂やワックスが軟化・融解して台座と加工部材とを貼り合わせるタイミングを目視で確認できるように、適切な変色温度の示温材料を配合することも可能である。
【0018】
本発明の仮固定用接着シートは、加熱により軟化、融解して台座と加工部材との間に濡れ拡がり、冷却時には強固にこの2つを接着固定するものであるが、作業性を考慮すると軟化、融解する温度は、50〜200℃の範囲が好ましく、60〜120℃の範囲がより好ましい。
【0019】
本発明の仮固定用接着シートは、接着固定の機能と共に、最終的に溶解液により溶解して除去できるものでなければならない。その溶解液としては、作業の安全性や、自然環境への影響を考慮すると、トリクロルエチレンのようなハロゲン系溶剤や、強酸や強アルカリ液、強酸化性液体などではなく、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系溶剤、ノナン、デカン及びトリデカン等の脂肪族系溶剤、環状脂肪族のナフテン系溶剤、トルエン及びキシレン等のアルキルベンゼン系溶剤、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤などが好ましい。また、苛性ソーダや苛性カリなどの無機アルカリ、アルカノールアミンやアミノアルコールなどの水溶性アミンなどの水溶液も使用できる。更に、仮固定時の加工部材への加工において水を使用することがなければ、溶解液に常温の水や温水を使用することも可能である。
なお、本発明の仮固定用接着シートがこのような溶解液に溶解するためには、その組成物にも工夫が必要であり、例えばアルカリ水溶液に溶解するためには、熱可塑性樹脂やワックスなどにカルボン酸基やそのアルカリ金属塩を含有することが有効であり、また水や温水を溶解液とする場合は、上述のポリエチレングリコールのような水溶性化合物を含有することも可能である。
【0020】
本発明の仮固定用接着シートは、輸送中やハンドリング時にシートが割れることを防ぐために、また台座に加工部材を貼り付けるために押さえた際に、両者が局部的に接触して加工部材の接着面を傷つけることを防止するために、接着シートの内部にシート状の芯材を用いることができる。この芯材としては、熱可塑性樹脂やワックスを含有する組成物がその内部に浸透できるような多孔質材料が好ましい。具体的には、布地や、スクリーン印刷に使用するメッシュのような織布、湿式または乾式の不織布、連結孔を有するスポンジなどが使用可能である。
【0021】
芯材の配置方法としては、
図1に示すように、仮固定用接着シートの厚み方向の内部に配置してもよく、
図2に示すように厚さ方向全域に亘り配置してもよく、
図3のように少なくとも一方の面に密着させてもよい。特に、
図3のように仮固定用接着シートの表面全体をシート状の多孔質材料で包むように密着させた場合、輸送中やハンドリング時にシートが割れることを防ぐためには有効である。
【0022】
本発明の仮固定用接着シートの厚さは、台座や加工部材の表面凹凸の状態により適宜調整することができるが、10μmから5mmが好ましく、より好ましくは100μmから1mmである。10μmより薄いとハンドリングが困難であり、5mmを越える厚さでは、台座と加工部材との間に配置して加熱のより接着固定するのに時間を要するばかりでなく、コスト的にも不利になるため好ましくない。
【0023】
本発明の仮固定用接着シートは、上述の熱可塑性樹脂やワックスを含む組成物を加熱して軟化、融解したものを、
図4のように剥離性の基材(剥離フィルム、離型紙等)上に所定の厚さに押し出したり、所定のギャップを設けたロールを通すことでシート化したりすることができる。また、組成物を一旦溶剤に溶解して溶液を作り、これを塗工、乾燥して、シート化することも可能である。
【0024】
なお、上述の多孔質材料を芯材として使用したり、または表面に密着させた形状にしたりするためには、仮固定用接着シートの最終形態において泡の混入がないようにすることが重要である。泡が混入している場合、加工部材の台座への固定が局部的に不十分となり、特にダイシング加工の場合にはダイシングした加工部材が離脱する可能性がある。泡の混入を防止するためには、加熱して融解した組成物の段階で脱泡を行うと共に、多孔質材料に対しては予め組成物を含浸させるなどの工夫を行う必要がある。
【0025】
本発明の仮固定用接着シートは、常温では硬くて割れ易いため、厚紙のような折れ難い基板に挟んだ状態で出荷する必要がある。また、上述のシート化する際に使用した剥離フィルムや離型紙を付けたまま出荷し、使用直前に、若しくは台座に載せて加熱して軟化、融解した後で、剥離フィルムや離型紙を剥離することも可能である。
【0026】
本発明の仮固定用接着シートを使用して仮固定する際の加工部材としては、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)などの半導体、石英ガラスを含む各種ガラス材料、アルミナ、ジルコニア、窒素アルミ、チタン酸バリウムなどのセラミックス、フェライトやセンダストなどの磁性材料、水晶やガーネット、サファイアなどの結晶材料が挙げられる。また、本発明の仮固定用接着シートは、上述の工業用途の加工だけでなく、岩石や化石、生物などの標本作りのための加工にも使用することができる。
【0027】
また、本発明の仮固定用接着シートを用いて加工部材を固定する「台座」とは、上記加工部材を加工中に仮固定用接着シートにより固定するための治具を指し、その形状や材質は加工部材の形状表面凹凸状態、加工の目的に応じて最適なものが採用される。台座の一般的な材質としては、アルミニウムやステンレスなどの金属、ガラス、メラミンやフェノール、エポキシなどの熱硬化樹脂、セラミック、カーボンなどが挙げられるが、本発明の仮固定用接着シートでは加熱が必要であるため、熱伝導性の高い材質が好ましい。そして、台座には加工時に変形しないような剛性が求められるため、高弾性率で一定の厚みも必要である。加工部材を貫通するような穴あけ加工や、ワイヤーソーなどによる切断加工では、必要に応じて台座自体に予め凹凸を形成しておくことも可能である。なお、台座自体は加工装置にねじやクランプ、真空吸着などの着脱可能な方式で固定される。
【0028】
本発明の仮固定用接着シートを使った一連の加工プロセスは以下のようになる。
(1)台座の上に、仮固定用接着シートを載せ、台座を加熱することで接着シートを軟化、融解する。
(2)軟化、融解した接着シート上に加工部材を載せ、必要の応じて圧力を掛けて加工部材を台座に密着させる。
(3)これを冷却することで加工部材の台座への固定が完了する。
(4)加工部材に対して、所定の加工を実施する。
(5)加工済みの加工部材を台座ごと溶解液に浸漬し、加工部材を台座から離脱させる。
(6)離脱した加工部材を溶解液で洗浄し、乾燥する。
【0029】
なお、上記(1)において、予め台座を加熱しておき、その上に仮固定用接着シートを載せたり、(1)(2)において台座上に仮固定用シート、該加工部材を順次積載した後で加熱したりすることも可能である。また、台座ではなく加工部材の方に先に仮固定用接着シートを載せることも可能である。更に、(5)(6)において、加工済みの加工部材を予め、スクレイパーや加熱により台座から剥がした後で溶解液で洗浄することも可能である。
【0030】
加工部材に対して行う「加工」は、研磨(ポリシング、グラインデイング)、切削(穴あけ含む)、切断(スライシング、ダイシング含む)などの、加工部材を強固に固定しておかなければ目的の加工精度を得ることができない加工方法を想定しているが、これらの加工中に仮固定用接着シートによる固定を損なう恐れのある発熱を防ぐために、必要に応じて冷却液を流す等の工夫が行われる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の仮固定用接着シートを用いることで、熟練工でなくとも台座上に加工部材を固定させることができるほか、加工部材の固定に掛かる時間の短縮、加工部材固定の自動化を行なうことができる。
【符号の説明】
【0032】
1・・・・・・仮固定用接着シート
11・・・・・接着剤
12・・・・・芯材
13・・・・・剥離性の基材