(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エンジン回転数低下部は、前記燃焼復帰部の燃料供給を禁止することにより、前記エンジンの回転数を低下させることを特徴とする請求項1または2に記載のアイドルストップシステムの制御装置。
前記エンジン回転数低下部は、再始動アシストを行うと判定する前の燃料の点火時期よりも、燃料の点火時期を遅角することにより、前記エンジンの回転数を低下させることを特徴とする請求項1または2に記載のアイドルストップシステムの制御装置。
前記エンジン回転数低下部は、再始動アシストを行うと判定する前のスロットル開度よりも、スロットル開度を小さくすることにより、前記エンジンの回転数を低下させることを特徴とする請求項1または2に記載のアイドルストップシステムの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を以下の3つの実施形態により説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るアイドルストップシステム1の装置構成および回路接続状態を示した模式図である。本実施形態では、アイドルストップシステム1は、燃料を供給することによりクランク軸が回転するエンジン(図示せず)と、エンジンの始動をアシストするスタータ101と、スタータ101およびエンジンを制御する制御装置108とを備えている。
【0012】
本実施形態に係るスタータ101は、いわゆるピニオン押し出し方式のスタータであり、具体的には、エンジンの始動をアシストするスタータモータ105と、スタータモータ105により回転駆動するピニオンギア103と、ピニオンギア103を押し出すためのマグネットスイッチ102と、を少なくとも備えている。
【0013】
スタータモータ105の回転はその内部にある減速機構で減速する。これによりスタータモータ105のトルクを増大させてピニオンギア103に伝達される。スタータモータ105は、マグネットスイッチ102に通電するとピニオンギア103を押し出して(
図1の右方向)、リングギア104に噛み込ませる構造となっている。ここで、リングギア104は、エンジンのクランク軸の回転に同期するものであり、クランク軸に取付けられている。なお、ピニオンギア103を押し出す機能を備えるものであれば、本実施形態の如きマグネットスイッチに限定されるものではない。
【0014】
ピニオンギア103はワンウェイクラッチ107と一体化されている。上述した如く、ピニオンギア103は、制御装置108からのマグネットスイッチ102への通電により、スタータモータ105の軸方向に移動可能な構造となっている。ピニオンギア103はエンジンのクランク軸に連結されたリングギア104と噛み合わせて回転することでエンジンに動力を伝えることができる。
【0015】
ワンウェイクラッチ107はスタータモータ105がエンジンを正回転させる方向にしか動力が伝わらない構成にする。これにより、ピニオンギア103がリングギア104に噛み合っている時は、リングギア104の回転数は、スタータモータ105の回転数に対して、減速比に応じた同期回転数になるか、もしくは、それよりも速い回転数になる。
【0016】
すなわち、リングギア104がピニオンギア103の回転速数よりも低下しようとすると、ワンウェイクラッチ107が動力を伝達するため、リングギア104の回転数がスタータモータ105に対する同期回転数を下回ることはない。一方で、同期回転数よりもリングギアの回転数の方が高い時は、ワンウェイクラッチが動力を伝達しないため、リングギア104からスタータモータ105側へ動力が伝達されることはない。
【0017】
図1に示すように、アイドルストップシステム1は、燃料を供給することによりクランク軸が回転するエンジンと、クランク軸の回転に同期したリングギア104と、エンジンの始動をアシストするスタータモータ105と、エンジンの始動をアシストする際にリングギア104に噛み込むとともにスタータモータ105により回転駆動するピニオンギア103とを少なくとも備えている。
【0018】
図1に示す通り、クランク角度センサ109(エンジン回転数検出装置、クランク角度検出装置)からの信号、ピニオン回転センサ110(ピニオン回転数検出装置)、ブレーキスイッチ111、車速センサ112からの信号は制御装置108に入力される。なお、リングギア104とエンジンのクランク軸は連結されているので、リングギア回転数とクランク軸回転数(エンジン回転数)は同義である。
【0019】
制御装置108は、通常の燃料噴射制御(燃料噴射弁の制御)、点火(点火プラグの制御)、空気制御(電子制御スロットルの制御)を行っている。これに加えて、制御装置108は、ブレーキスイッチからの信号に基づくブレーキペダル状態、車速センサ112からの車速等の各種情報(車両の運転状態)から、アイドルストップ条件の成立を判定する。ここで、アイドルストップ条件が成立した場合には、エンジンのアイドルストップを許可し、燃料噴射弁を制御することによりエンジンへの燃料の供給を停止し、これによりエンジンを自動停止させる(アイドルストップさせる)。
【0020】
上述した車両の運転状態から、エンジンの再始動要求が発生した時には、制御装置は、燃料噴射弁を制御することによりエンジンへの燃料供給の再開をするとともに、点火プラグを制御することにより点火タイミングを制御する。このようにしてエンジン再始動制御が実行される。
【0021】
また、制御装置108からはピニオン押し出し指令信号とモータ回転指令信号がそれぞれ独立して出力される。
図1で示す通り、ピニオン押し出し指令信号を伝えるマグネットスイッチ通電用スイッチ106aとモータ回転指令信号を伝えるスタータモータ通電用スイッチ106bが、ピニオンギア103の押し出しとスタータモータ105の回転とを制御する。マグネットスイッチ通電用スイッチ106aおよびスタータモータ通電用スイッチ106bとして、例えば機械式接点を持つリレースイッチや、半導体を用いたスイッチなどを使うことができる。
【0022】
このような装置構成からなるアイドルストップシステム1において、制御装置108は、以下の如き制御を行う。
図2は、本発明の第1実施形態に係るアイドルストップシステムを制御する制御装置の制御ブロック図である。
【0023】
図1に示す制御装置108は、上述した車両の運転状態を検出するセンサの出力信号をA/D変換器を介して入力し、入力したデータおよび予めメモリー等で記憶されたデータに基づいて以下に示す演算等をCPUで行い、A/D変換器を介して制御信号を出力することによりアイドルストップシステム1を制御する。
【0024】
ソフトウエアの構成として、制御装置108は、少なくとも
図2に示すよう制御ブロックで構成される。具体的には、アイドルストップ判定部201は、車速センサからの車速信号、ブレーキスイッチ信号、リングギア回転数等により車両がアイドルストップの条件が成立しているかを判定する。燃料供給停止部202は、アイドルストップ判定部201でアイドルストップの条件が成立したときにエンジンへの燃料供給の停止を行う。燃料供給停止部202は、具体的には、エンジン内で燃料の燃焼が行われないように、燃料噴射弁の制御を行う。この際、必要に応じて点火プラグによる点火を停止するように、点火プラグの制御も行ってよい。
【0025】
ここで、燃料供給停止部202でエンジンへの燃料供給が停止した際には、エンジン回転数が低下する。そこで、惰性回転判定部203では、エンジンの再始動要求がされた際に、エンジンが惰性回転しているかどうかを判定する。具体的には、燃料供給停止部202により燃料供給が停止してからクランク軸(エンジン)の回転が停止するまでの間のエンジン惰性回転中であるか否かを判定する。より具体的なエンジン惰性回転中であるか否かの判定は、リングギア回転数(エンジン回転数)またはその変化量(クランク角度の変化度合い)に基づいて行う。
【0026】
ここで、エンジンの再始動要求がされたか否かの判定は、再始動要求判定部204で、ブレーキスイッチの信号等に基づいて行われる。たとえば、ブレーキスイッチがオフの場合、エンジンの再始動要求がされたと判定される。燃焼復帰部205は、上述した燃焼復帰の条件が成立したときに、燃料噴射量の制御、点火タイミングの制御、および吸入空気量の制御を行うべく、燃料噴射弁、燃料点火プラグ、およびスロットル弁に制御信号を出力する。燃焼復帰部205は、惰性回転判定部203がエンジン惰性回転中であると判定したときに、エンジンに燃料を供給し、供給した燃料を燃焼する。
【0027】
再始動アシスト判定部207は、燃焼復帰部205によりエンジンへの燃料の供給の開始後、エンジンの運転状態に基づいて、スタータによるエンジンの再始動のアシストを行うか否かを判定する。具体的には、燃焼復帰部205のみにより燃焼復帰始動を行うか、または、これに加えてスタータによるエンジンの再始動のアシストをさらに行うかの判定をエンジン回転数(リングギア回転数)から行う。
【0028】
また、再始動アシスト判定部207は、燃焼復帰部205により燃料が最初に供給された気筒が燃料供給後の膨張行程に達する(具体的には供給された燃料が点火される)までの間(第1の期間)であるか、それとも、膨張行程以降(第2の期間)であるか、現状のエンジンの状態を判定する。そして、第1の期間である場合には、リングギアの回転数とピニオンギアの回転数との回転数差に基づき、スタータ101によるエンジンの再始動のアシストを行うタイミングを決定する。
【0029】
ここで、リングギアの回転数とピニオンギアの回転数との回転数差は、回転数差演算部で演算され、この回転数差が所定値以下になったときに、再始動アシスト判定部207は、スタータ101による再始動アシストの許可信号を出力する。一方、第2の期間である場合には、エンジンの状態(エンジン回転数)によっては燃焼復帰部205のみにより燃焼復帰始動を行うことができることもある。したがって、エンジン回転数が所定の回転数以下である場合に、スタータモータによるエンジンの再始動のアシストを行う。
【0030】
再始動アシスト部208は、再始動アシストの許可信号が出力されたタイミングで、リングギア104をピニオンギア103に噛み込ませ、スタータモータ105を駆動することによりエンジンの再始動をアシストする。具体的には、再始動アシスト部208はピニオン押し出し指令信号とモータ回転指令信号とを出力し、マグネットスイッチ通電用スイッチ106aとスタータモータ通電用スイッチ106bを制御する。これにより、エンジンの再始動のアシストが実行される。
【0031】
ここで、本実施形態では、制御装置1はエンジン回転数低下部209をさらに備えており、エンジン回転数低下部209は再始動アシスト判定部207がエンジンの再始動アシストを行うと判定してから、再始動アシスト部208が、リングギアをピニオンギアに噛み込ませるまで(具体的にはピニオン押し出し指令信号を出力するまで)の間のエンジンの回転数を低下させる。本実施形態では、エンジン回転数低下部は、前記燃焼復帰部の燃料供給を禁止することにより、前記エンジンの回転数を低下させる。
【0032】
なお、惰性回転判定部203で、エンジン惰性回転中でないと判定した場合、再始動要求判定部204で再始動要求の条件が成立したときには、通常の再始動アシストを行う。この際には、再始動アシスト判定部207で再始動アシストの判定を行わず再始動アシスト部208でスタータによるエンジン再始動のアシストを行いつつ、燃焼復帰部205による燃焼復帰を行う。
【0033】
図3および
図4は、
図2に示す制御装置のフローチャートであり、
図5は、
図2に示すアイドルストップシステムのタイミングチャートを示した図である。
図3に示すように、まずステップ301において、アイドルストップ判定部201がアイドルストップ条件の成立を判定した場合ステップ302に進む。ステップ302において、アイドルストップ条件の成立に応じて燃料供給停止部202が燃料供給を停止しステップ303に進む。このとき、
図5に示すように、時刻t1で燃料供給停止フラグはLowからHighとなる。その結果、エンジン回転は惰性回転を始める。
【0034】
次にステップ303では、再始動要求判定部204は再始動要求が発生したかを判定する。ステップ303で再始動要求が発生したと判定された場合には(
図5における時刻t2)、ステップ304に進み、惰性回転判定部203はエンジン惰性回転中であるか否かを判定する。エンジン惰性回転中であるか否かの判定は、例えば、エンジン回転数から判定してもよいし、クランク角度の変化度合いから判定してもよい。
【0035】
ここで、再始動要求判定部204で再始動要求がされていると判定し、ステップ304において惰性回転判定部203がエンジン惰性回転中でないと判定した場合、エンジン回転数とピニオンギアの回転数はどちらも0r/minであり、同期しているため、ステップ321に進み、通常の再始動制御を行う。
【0036】
通常の再始動制御では、上述したように、再始動アシスト部208からの押出し指令信号により、マグネットスイッチ102に通電してピニオンギア103を押し出してリングギア104に噛み合わせる。次に、再始動アシスト部208からのモータ回転指令信号により、スタータモータ105に通電する。これによりエンジンをクランキングして、燃焼復帰部205により燃料供給を再開し(燃焼復帰をし)、エンジンを再始動させる。
【0037】
一方、ステップ304においてエンジン惰性回転中と判定した場合には、ステップ305に進み、燃焼復帰部205で燃料供給を再開し、ステップ306に進む。ステップ306では、エンジン回転数Ne1の読み込みタイミングに達しているか判定する。
【0038】
具体的には、エンジン回転数Ne1の読み込みタイミングは、燃料供給を最初に再開した気筒のクランク角度が、膨張行程以降のタイミングを想定している。すなわち、ステップ305で燃料供給を再開し、燃焼による再始動の実行を要求しても、直ちにエンジンの回転速度が上昇する訳でなく、一定期間の経過を待たなければならない。これは、吸気ポートに燃料を噴射するPFIエンジンを例にすると、燃料供給の再開から、最初に燃料噴射を行った気筒において、燃料噴射を行う吸気行程から燃焼トルクを得ることができる膨張行程まで時間を要するためである。
【0039】
ここで、ステップ306で、エンジン回転数Ne1の読み込みタイミングに達しているかを判定し、条件が成立した場合(
図5における時刻3)、ステップ307へ進む。すなわち、この条件が成立した場合、燃料を再度供給した最初の気筒が膨張行程以降のときの状態にある。ステップ307では、燃焼復帰部205により、エンジン回転数Ne1が燃焼復帰判定基準値NeJDGを超えているかを判定し、この条件が成立した場合(Ne1>NeJDG)、ステップ313へ進み、燃焼復帰始動と判定し、燃焼のみで再始動を行う。
【0040】
一方、ステップ307でエンジン回転数Ne1がNeJDG以下の場合(Ne1≦NeJDG)、ステップ308に進み、ステップ308で再始動アシスト判定部207により予回転スタータアシスト始動と判定し、ステップ309に進む(
図4を参照)。
【0041】
図4に示すように、ステップ309では、エンジン回転数低下部209が、燃焼復帰部205の燃料供給を禁止(停止)することによりエンジンの回転数を低下させる。次に、ステップ310にてスタータモータ105に通電を行い、ピニオンギア103を予回転させる。これによりピニオンギア103が回転運動を始め、ピニオンギア103の回転数が上昇する。本明細書では、リングギアに噛み込み前にこの通電によるスタータモータの回転を「予回転」と称する。
【0042】
次にステップ311において、再始動アシスト判定部207でエンジン回転数Neとピニオンギア103の回転数Npの回転数差がピニオン押し出し許可回転数差PIJDG2以下であるか否かを判定する。条件が成立した場合((Ne−Np)≦PIJDG2),
図5の時刻t4)、ステップ312へ進み、再始動アシスト部208でスタータモータ105の通電を止めるとピニオンギアは惰性回転を続ける。
【0043】
次に、ステップ317では、ピニオンギア103を押し出すためのマグネットスイッチ102に通電を行う。これにより、回転数差が小さい状態でリングギア104に向かってピニオンギア103が押し出されることによりピニオンギア103とリングギア104が噛み込む際の衝撃が緩和され、衝突音、噛み込み音が低減されると共にピニオンギア103とリングギア104の磨耗が緩和できる。
【0044】
次にステップ318で、ピニオンギア103がリングギア104に噛み込んだか否かを判定する。噛み込み判定は、ステップ317のピニオン押し出し通電開始から所定時間(
図5における時刻t4から時刻t5までの期間)経過後、噛み込み完了と判定してよい。つまり、時刻t4から時刻t5までの期間とはピニオン押し出し通電開始からピニオンギア103が移動してリングギア104に到達しリングギアに噛み込んでいくまでの時間である。もしくは、ピニオンギア103とリングギア104が噛み込んだことを検出可能なセンサを設けておき、センサの出力値に基づいて噛み込み完了と判定してもよい。条件が成立した場合(
図5における時刻t5)、ステップ320にてスタータモータに通電してエンジンをクランキングして再始動させる。
【0045】
一方、ステップ306でエンジン回転数Ne1の読み込みタイミングの条件が成立していない場合、すなわち、燃焼復帰部205により燃料が最初に供給された気筒が燃料供給後の膨張行程に達するまでの間の状態である場合には、エンジン回転数Ne1の読み込みタイミングの条件が成立を待たずに、ステップ314に進む。ステップ314では、回転数差演算部がエンジン回転数Neとピニオン回転数Npとの回転数差(Ne−Np)を演算し、再始動アシスト判定部207は、演算された回転数差(Ne−Np)がピニオン押し出し許可回転数差PIJDG1以下であるか否かを判定する。
【0046】
この条件が成立した場合((Ne−Np)≦PIJDG1)、ステップ315に進み、ステップ315では再始動アシスト判定部207によりスタータアシスト始動と判定し、ステップ316に進む(
図4参照)。このようにして、燃焼復帰部205により燃料が最初に供給された気筒が燃料供給後の膨張行程に達するまでの間に、スタータによるエンジンの再始動のアシストを行うか否かを判定することができるため、後述するエンジンの再始動のアシストを迅速に行うことができる。
【0047】
ステップ316では、
図4に示すように、エンジン回転数低下部209が、燃焼復帰部205の燃料供給を禁止(停止)することによりエンジンの回転数を低下させ、ステップ317に進む。ステップ317ではピニオンギア103を押し出すためのマグネットスイッチ102に通電を行う。ステップ318にてピニオンギア103がリングギア104に噛み込んだか否かを判定する。条件が成立した場合、ステップ319にてスタータモータに通電してエンジンをクランキングして、次にステップ320にて燃料供給を再開し、エンジンを再始動させる。
【0048】
従来の方式は、スタータアシスト始動と判定しても燃料供給を継続するのと比較して、本発明の方式は、
図5における時刻t3のタイミングでスタータアシスト始動と判定すると、燃料供給を停止することにより、燃焼によるエンジン回転数の上昇がなくなり、エンジン回転数が速やかに低下し、ピニオンとリングギアが噛み込むまでの時間(
図5における時刻t3から時刻t5の期間)が短縮され、再始動時間が短縮される。
【0049】
〔第2実施形態〕
図6は第2実施形態に係るアイドルストップシステムの制御装置のフローチャートである。
図7は、
図6に示すフローの続きを示したフローチャートである。
図8は、第2実施形態に係るアイドルストップシステムのタイミングチャートを示した図である。
【0050】
第2実施形態に係る制御装置が、第1実施形態に係る制御装置と相違する点は、
図7に示すように、燃料供給停止部202により燃料の供給を停止(禁止)してから、ピニオンを押し出すまでの間、スタータモータでリングギアに噛み込み前のピニオンギアを予回転させていない点である。
図6および
図7に示すステップのうち、第1実施形態の
図3および
図4に示す一連のステップと同じステップは、下2ケタの数字に同じ数字を付して、その詳細な説明は省略する。
【0051】
第1実施形態では、スタータアシスト始動と判定した場合、スタータモータ105に通電を行ない、ピニオンギア103の回転数を上昇させてからピニオンギア103とリングギア104を噛み込ませたが、第2の実施形態では、第1の実施形態の
図4に示すステップ310およびステップ312が省略されているため、スタータアシスト始動と判定した場合、ピニオンの回転数を上昇させずに、エンジン回転数が低下するのを待ってピニオンとリングギアを噛み込ませることになる。これにより、ピニオンギアがリングギアに噛み込むまでの時間は長くなるが、回転数差演算部が不要となり、第1実施形態の如く、モータ回転指令とピニオン押し出し指令を独立して指令する必要が無くなる利点がある。
【0052】
〔第3実施形態〕
図9は、第3実施形態に係るアイドルストップシステムの制御装置のフローチャートである。
図10は、
図9に示すフローの続きを示したフローチャートである。
図11は、第3実施形態に係るアイドルストップシステムのタイミングチャートを示した図である。
【0053】
第3実施形態に係る制御装置が、第1実施形態に係る制御装置と相違する点は、第1実施形態では、エンジン回転数低下部が、燃焼復帰部の燃料供給を禁止することにより、前記エンジンの回転数を低下させていたが、第3実施形態では、エンジン回転数低下部が、再始動アシストを行うと判定する前の燃料の点火時期よりも、燃料の点火時期を遅角することにより、前記エンジンの回転数を低下させている点である。具体的には、一連の制御フローにおいて、
図10に示すステップ909,916のみが相違する。
【0054】
従って、
図3および
図4に示すステップのうち、ステップ309、316以外の第1実施形態の
図3および
図4に示す一連のステップと同じステップは、下2ケタの数字に同じ数字を付して(上1ケタを3から9の数字に変更して)、その詳細な説明は省略する。
このように、第1実施形態のように、ステップ309、316で燃焼復帰部の燃料供給を禁止することにより、前記エンジンの回転数を低下させる代わりに、第3実施形態の如く、ステップ909およびステップ916で、再始動アシストを行うと判定する前の燃料の点火時期よりも、燃料の点火時期を遅角することにより、前記エンジンの回転数を低下させる。
【0055】
具体的には、再始動アシスト判定部207がスタータモータによるエンジンの再始動アシストを行うと判定してから、再始動アシスト部208がリングギア104をピニオンギア103に噛み込ませるまでの間の少なくとも一部の期間において、エンジン回転数低下部209は、再始動アシストを行うと判定するタイミング前の燃料の点火時期(または、
図11に示す燃料供給を停止する前の点火時期ADV1)よりも、燃料の点火時期を遅角させることにより、エンジンの回転数を低下させる。このようにして、燃料の点火時期を遅角させることにより、燃焼によるエンジン回転数の上昇が小さくなり、エンジン回転数が速やかに低下し、ピニオンとリングギアが噛み込むまでの時間(
図11における時刻t3から時刻t5の期間)が短縮され、再始動時間が短縮される。
【0056】
第3実施形態では、第1実施形態のステップ309、316で燃焼復帰部の燃料供給を禁止することにより、エンジンの回転数を低下させる代わりに、ステップ909およびステップ916で、再始動アシストを行うと判定する前の燃料の点火時期よりも、燃料の点火時期を遅角することにより、エンジンの回転数を低下させた。
【0057】
この他にも、エンジンの回転数を低下させる手段として、再始動アシストを行うと判定する前のスロットル開度よりも、スロットル開度を小さくすることにより、前記エンジンの回転数を低下させてもよい。すなわち、スロットル開度を小さくすることにより(具体的にはスロットル弁の開度を減少方向に制御することにより)、吸気負圧が増大してポンピングロスが増大し、このポンピングロスの増大によってエンジン回転速度が急速に降下させることができる。
【0058】
この他にも、エンジンに可変バルブ機構を有している場合には、エンジン回転数低下部は、再始動アシストを行うと判定する前の吸気バルブタイミングよりも、吸気バルブタイミングを遅角することにより、前記エンジンの回転数を低下させてもよい。
【0059】
このようにして、吸入空気量または燃焼室に流入するタイミングを制御することにより、エンジンの回転数を低下させることができ、第1実施形態における、燃焼復帰部の燃料供給の禁止、第3実施形態における点火時期の遅角化と合わせて行うことにより、迅速にエンジンの回転数を低下させることができる。
【0060】
さらに、別の態様としては、エンジン回転数低下部が、クランク軸に連結された機器を作動させて、エンジンに負荷を与えることにより、エンジンの回転数を低下させてもよい。ここでは、クランク軸に連結された機器であって、これを作動させて、エンジンに負荷を与えることができる機器は、エアコンのコンプレッサ、オルタネータなどを挙げることができる。この態様であっても、クラックシャフトの回転抵抗を高めることにより、エンジン惰性回転を速やかに下降させ、これに伴い、エンジンを速やかに再始動させることができる。
【0061】
尚、本発明を適用可能なエンジンは、筒内燃料噴射型のエンジンに限定されず、吸気ポートに燃料噴射する吸気ポート型のエンジンや、吸気ポートと筒内燃料噴射を併用するデュアル燃料噴射型のエンジンにも適用して実施できる。また、気筒数やエンジン形式(V型や水平対抗型)についても限定されず、適用して実施できる。
【0062】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。