特許第6203659号(P6203659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203659
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   B41J2/01 121
   B41J2/01 305
   B41J2/01 301
   B41J2/01 303
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-29987(P2014-29987)
(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公開番号】特開2015-24648(P2015-24648A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年5月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-129662(P2013-129662)
(32)【優先日】2013年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395003187
【氏名又は名称】株式会社OKIデータ・インフォテック
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一男
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−107330(JP,A)
【文献】 特開2009−016062(JP,A)
【文献】 特開2013−119218(JP,A)
【文献】 特開2012−179802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルから記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録ヘッドを搭載して前記記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に往復移動するキャリッジと、
前記記録ヘッドの前記ノズルの配置された面に対向して配置され、前記搬送手段によって搬送される前記記録媒体を保持するプラテンと、
前記プラテンと前記キャリッジとを少なくとも内蔵する筐体と
を備え、前記記録媒体を間欠搬送させ、前記記録ヘッドから前記インクを吐出し、前記記録媒体に画像を記録するインクジェットプリンターにおいて、
プラスイオンを生成する第1イオナイザーと、マイナスイオンを生成する第2イオナイザーと、前記第1イオナイザーを駆動する第1駆動回路と、前記第2イオナイザーを駆動する第2駆動回路と、前記第1駆動回路と前記第2駆動回路を制御する制御手段と、
前記筐体の背面側に配置され、外部の気体を前記筐体の内に吸気する筐体吸気手段と、
前記プラテンの前記搬送方向の下流側に設けられ、記録後の前記記録媒体を案内するフロントペーパーガイドと、
前記フロントペーパーガイドに対して先端が離間して配置され、前記記録ヘッドの前記ノズルの配置された面より鉛直方向の下方に前記先端が位置し、前記筐体に回動可能に接続されたカバーと、
を有し、
前記カバーは前記先端に向かうほど前記フロントペーパーガイドに近くなるように配置され、
前記フロントペーパーガイドの前記搬送方向の下流側が鉛直方向に向かって湾曲し、
前記筐体吸気手段によって吸気され、前記カバーに向った前記気体は、前記カバーによって、前記カバーに沿って前記フロントペーパーガイドと前記カバーの間の隙間方向に案内され、
前記筐体吸気手段によって吸気された前記気体の一部が前記フロントペーパーガイドと前記カバーの間から排出され、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路は夫々独立して前記制御手段に制御されることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
前記往復移動する前記キャリッジの移動方向の側面に前記第1イオナイザーと前記第2イオナイザーを前記搬送方向に沿って離間させて並べて配置し、前記第1イオナイザーと前記第2イオナイザーのイオンの放出口が前記プラテン側に向けて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【請求項3】
前記記録ヘッドの前記搬送方向の上流側に配置され、前記記録媒体を案内するリアペーパーガイドと、
前記リアペーパーガイドに対して前記搬送方向の下流側に向かい前記リアペーパーガイドに近くなるように配置され、前記筐体吸気手段で吸気された前記気体が前記リアペーパーガイドに沿って前記搬送方向の上流側に流れ難くする屈曲部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【請求項4】
前記キャリッジは、前記筐体吸気手段に向かって突出して配置され、該突出した部分の先端であって前記筐体吸気手段に対向する位置に前記筐体吸気手段によって吸気される前記気体を前記キャリッジ内に吸気するキャリッジ吸気手段を備えたダクトと、
前記キャリッジの前記搬送方向の下流側の正面の下部に前記往復移動する前記キャリッジの移動方向に沿って配置された長穴状の排気口と、を有し、
前記筐体吸気手段によって吸気された前記気体は、前記キャリッジ吸気手段によって前記キャリッジの内を流れる前記気体と、前記キャリッジの外を流れる前記気体に分かれ、
前記排気口から排出される前記気体は前記カバー方向に排出され、前記キャリッジの外を流れる前記気体と混合されて前記筐体外に排出されることを特徴とする請求項に記載のインクジェットプリンター。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1イオナイザーと前記第2イオナイザーの使用時間を計測する計測手段を有し、
前記制御手段は、予め前記使用時間と前記第1イオナイザーからのイオンの生成量および前記使用時間と前記第2イオナイザーからのイオンの生成量を関連付けて記憶し、
前記制御手段は、前記使用時間に応じて前記第1イオナイザーと前記第2イオナイザーからイオンを生成し、前記記録媒体へのイオンの照射量を制御することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のインクジェットプリンター。
【請求項6】
使用する前記記録媒体の種類を入力する入力手段をさらに有し、
前記制御手段は、予め前記記録媒体の種類と前記第1イオナイザーからのイオンの生成量および前記記録媒体の種類と前記第2イオナイザーからのイオンの生成量を関連付けて記憶し、
前記制御手段は、前記入力手段から入力された前記記録媒体の種類に応じて前記第1イオナイザーと前記第2イオナイザーからイオンを生成し、前記記録媒体へのイオンの照射量を制御することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙、樹脂フィルムなどの記録媒体にインクを吐出して画像等を記録するインクジェットプリンターが知られている。インクジェットプリンターでは、ノズル面に多数のノズルが配置されたインクジェット式の記録ヘッドが用いられ、ノズルから記録媒体にインクを吐出して所望の画像を記録する。
【0003】
記録ヘッドに対向した位置にプラテンが配置され、記録媒体はプラテンに平面状に保持され、そこにインクが吐出される。記録媒体は、プラテンの上流側に設けられた搬送ローラーとピンチローラーによって挟まれ搬送される。記録媒体は、ローラーから離れるときに生じる静電気、プラテンや他の搬送経路で摩擦によって生じる静電気などによって帯電する場合がある。
【0004】
また、記録ヘッドから吐出されるインク滴は、主なインク滴の他に微小粒のインクが飛び散りミストとなって浮遊することがある。記録媒体が帯電していると、このミストが帯電している個所に集中的に付着し、記録媒体上に予期せぬ模様となって記録されてしまう場合があり、画像品質を悪くする要因となる。
【0005】
例えば、特開平6−246910号公報には、印刷ヘッドを被印刷物に対して相対移動させながら、被印刷物に印刷を行う印刷装置において、印刷ヘッドと被印刷物との相対的移動方向の上流側に静電除去手段が設け、被印刷物の除電を行う印刷装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−246910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の印刷装置では、静電除去手段に被印刷物の帯電を電気的に中和するイオンを発生させるイオン発生器を用いている。これを、印刷ヘッドと被印刷物との相対的移動方向の上流側に設置し、上流側で中和した後、印刷ヘッドによって印刷を行うものである。また、このイオン発生器には交流コロナ放電式除電器が用いられ、生成した正・負のイオンを被印刷物にエアと共に吹き付けている。
【0008】
しかし、交流型なので、放電針に交流の高電圧を印加する必要がある。交流の高電圧を生成する回路が必要になり、また、イオンの量を調節するためにON/OFFの制御をさせたい場合には、さらに回路規模が大きくなり複雑な物が必要になる。キャリッジの大型化そして装置の大型化してしまうという問題があった。
【0009】
また、一つの電極によってプラスイオンとマイナスイオンを生成するので、再結合の頻度が高くなり、記録媒体にイオンが到達する前に消滅してしまう頻度が高くなり、静電気除去の効率が悪いものであった。
【0010】
従来の技術では、印刷ヘッドを固定してもちいるライン型のプリンターも想定しているので、エアを吹き付ける装置も必要であり、印刷ヘッドに取り付けた場合に重くなり、装置が大型化してしまう。
従来の技術では、上記のような課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のインクジェットプリンターは、複数のノズルから記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録ヘッドを搭載して前記記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に往復移動するキャリッジと、前記記録ヘッドの前記ノズルの配置された面に対向して配置され、前記搬送手段によって搬送される前記記録媒体を保持するプラテンと、前記プラテンと前記キャリッジとを少なくとも内蔵する筐体とを備え、前記記録媒体を間欠搬送させ、前記記録ヘッドから前記インクを吐出し、前記記録媒体に画像を記録するインクジェットプリンターにおいて、プラスイオンを生成する第1イオナイザーと、マイナスイオンを生成する第2イオナイザーと、前記第1イオナイザーを駆動する第1駆動回路と、前記第2イオナイザーを駆動する第2駆動回路と、前記第1駆動回路と前記第2駆動回路を制御する制御手段と、前記筐体の背面側に配置され、外部の気体を前記筐体の内に吸気する筐体吸気手段と、前記プラテンの前記搬送方向の下流側に設けられ、記録後の前記記録媒体を案内するフロントペーパーガイドと、前記フロントペーパーガイドに対して先端が離間して配置され、前記記録ヘッドの前記ノズルの配置された面より鉛直方向の下方に前記先端が位置し、前記筐体に回動可能に接続されたカバーと、を有し、前記カバーは前記先端に向かうほど前記フロントペーパーガイドに近くなるように配置され、前記フロントペーパーガイドの前記搬送方向の下流側が鉛直方向に向かって湾曲し、前記筐体吸気手段によって吸気され、前記カバーに向った前記気体は、前記カバーによって、前記カバーに沿って前記フロントペーパーガイドと前記カバーの間の隙間方向に案内され、前記筐体吸気手段によって吸気された前記気体の一部が前記フロントペーパーガイドと前記カバーの間から排出され、前記第1駆動回路と前記第2駆動回路は夫々独立して前記制御手段に制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、記録ヘッドに取り付けるイオナイザーおよび駆動回路を小型、軽量化でき、効率的に記録媒体の静電気を除去できる。記録媒体から静電気を除電された記録媒体に画像を記録することで、高画質に記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、インクジェットプリンターの断面図である。
図2図2は、インクジェットプリンター内の吸気手段と排気手段の配置を説明する図である。
図3図3は、インクジェットプリンターの外観図である。
図4図4は、インクジェットプリンターのブロック図である。
図5図5は、イオナイザーの劣化を説明する図である。
図6図6は、記録媒体の種類に対応した照射率を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。
図1は、インクジェットプリンターの断面図である。インクジェットプリンター1は、インクジェット式の記録ヘッドを搭載したキャリッジ2が紙面奥行き方向に往復移動する。キャリッジ2はレール8に沿って移動する。記録ヘッドのノズル面に対向する位置にプラテン3が配置されている。プラテン3は平板であり、貫通孔が多数設けられている。プラテン3の下側に密閉空間が設けられ、そこから吸引ファン14によって空気が排出される。空気が排出されると密閉空間の気圧が下がる。プラテン3には貫通孔があるので、プラテン3上にある記録媒体が吸着する。記録ヘッドのノズル面には多数のノズルが備わり、インクを吐出する。キャリッジ2の位置に応じてインクを吐出することで所望の画像を記録媒体に記録する。インク吐出際に主な吐出滴の他に、わずかながら微小粒のインクが飛散してしまい、空中をミストとなって浮遊する。
【0015】
プラテン3の記録媒体の搬送方向下流側にはフロントペーパーガイド5が備わり、上流側にはリアペーパーガイド4が備わる。搬送ローラー6はリアペーパーガイド4とプラテン3の間に配置されている。記録媒体は、リアペーパーガイド4で加熱され、搬送ローラー6とそれと対のピンチローラーによって挟持されながら搬送され、プラテン3に送られ、更にフロントペーパーガイド5に沿って排出される。プラテン3とフロントペーパーガイド5にもヒーターが備わり、記録媒体を加熱し、記録媒体に付着したインクの乾燥を促す。
【0016】
リアペーパーガイド4の上方には、筐体12の端部を曲げた部分である屈曲部21と対向している。屈曲部21は筐体12の内側方向に曲げられ、さらに、先端に行くほどリアペーパーガイド4に近づく。また、屈曲部21の先端部は、鉛直方向において、プラテン3の表面の平坦部より低く配置してある。このようにすることで、筐体12の背面に配置してある筐体吸入ファン13で吸った気体を、少しでも記録媒体の搬送方向の下流方向、すなわちキャリッジ2あるいはカバー7の方向に流れ易くしている。言い換えれば、吸い込んだ気体が、屈曲部21とリアペーパーガイド4の間から出にくくなる。
【0017】
フロントペーパーガイド5は、その上方にあるカバー7の先端と対向している。また、カバー7は、先端に向かうほどフロントペーパーガイド5に近づく。フロントペーパーガイド5は、記録媒体の搬送方向の下流方向に行くほど下方に下がるように湾曲している。このようにすることで、カバー7とフロントペーパーガイド5によって、筐体12内の気体がフロントペーパーガイド5の表面に沿って流れやすくしている。フロントペーパーガイド5は裏面側の内部にヒーターがあり、それによって加熱することで、記録媒体に付着したインクの乾燥を促す。その場合に記録媒体の表面付近に蒸発した溶剤が滞留するとインクの乾燥を阻害する。そのため、風を送り滞留を防止することもしている。フロントペーパーガイド5に沿って矢印15で示された方向に気流を作るようにフロントペーパーガイド5に対してカバー7を近づけ、更に下方に向くように配置してある。
【0018】
キャリッジ2の上部にダクト9が背面方向に向かい設けられている。ダクト9の背面方向の端部には、キャリッジ吸入ファン11が備わっている。筐体吸入ファン13とキャリッジ吸入ファン11は対向するように配置されている。
【0019】
ダクト9はキャリッジ2の移動方向の両端に夫々設けられている。夫々のダクト9の先端には、キャリッジ2内に気体を吸入するキャリッジ吸気手段であるキャリッジ吸入ファン11が設けられている。このキャリッジ吸入ファン11から気体を吸入し、その気体はダクト9を通り、キャリッジ2内を通り、キャリッジ2の下方であって記録媒体の搬送方向下流側に設けられた排気口10から外部、すなわち筐体12内に排出される。排気口10はカバー7に向けられ、排出された気体はこのカバー7の方向に流れる。このキャリッジ2内の気体の流によって記録ヘッド2も含めキャリッジ2内が冷却される。排気口10はキャリッジ2の移動方向すなわち幅方向に沿って設けられた長穴である。好ましくは、キャリッジ2の記録ヘッドの配置に対応した幅分の長穴を設ける。キャリッジ2内で気体が滞留しにくく、気体の排出を容易にするためである。
ダクト9の上部にはフラットケーブル18とインクチューブ19が這いまわされて配置されている。キャリッジ2の外に設けられた電気回路とインクタンクに接続されている。
【0020】
筐体吸入ファン13の高さは、キャリッジ吸入ファン11より高くしてあり、2倍の高さとしてある。すなわち、筐体吸入ファン13は大型のファンを用いて外気をたくさん吸引している。筐体12内に吸われた気体はキャリッジ吸入ファン11によってキャリッジ2の内部に吸われるものと、キャリッジ2の外側を通るものがある。吸われた空気は、筐体12の正面に配置されているカバー14方向に向かう。キャリッジ吸入ファン11によって、筐体吸入ファン13が塞がれないようすることで、急激な気流の向きの変更を少なくできる。カバー7の上端が筐体12に回動可能に接続されている。
【0021】
また、排気口10から排出された気体はカバー7に向けられ、カバー7に当たった気体は、カバー7が傾いているので、それに沿って下方向に気流を生じさせ、さらに、フロントペーパーガイド5に沿って流れる。排気口10から排気された気体は、キャリッジ2外を流れる気体と混ざり合いながら外に排出されることになる。キャリッジ吸入ファン11で吸引された気体は、排出口10から排出されるときに、キャリッジ2外を流れる気体より早く流れている。この排出口10からの気流に連動し、周囲の気体の流れも速くなり、スムーズにフロントペーパーガイド5とカバー7の間から外に排出できる。筐体12内に滞留するインクから蒸発して気体となった溶剤の排出を進めることができるので、インクの乾燥を早められる。
【0022】
プラスイオンを生成する第1イオナイザー16とマイナスイオンを生成する第2イオナイザー17が、キャリッジ2の側面に配置されている。第1イオナイザー16と第2イオナイザー17は、下方すなわちプラテン3方向に開口され、イオンが放出される。イオンの照射方向20の方向にイオンが放出される。第1イオナイザー16と第2イオナイザー17から放出されたイオンは記録媒体の静電気を除電する。第1イオナイザー16と第2イオナイザー17は、記録媒体の搬送法方向に沿って若干の距離を隔てて配置されている。放出されたイオンは、筐体12内の気流によって撹拌されるが、一部は記録媒体に到達して帯電を除電する。
【0023】
記録媒体は、記録時に記録ヘッドの長さに対して、複数分の1の距離を搬送し、複数回に亘って同一エリアの記録を行う。例えば、4回から12回程度に分けて印刷を行う。このような記録方法を用いるプリンターでは、プラテン3の幅全体を覆う幅のイオナイザーを用いずとも、狭い範囲にイオンを放出するイオナイザーを用いて、記録媒体の帯電を除電することができる。また、同一領域を複数回にわたってイオナイザーからイオンを提供することで、除電の確実性が増す。
【0024】
また、プラスイオンとマイナスイオンを別々の電極を用いて発生させることで、プラスイオンとマイナスイオンの再結合の頻度を下げて、記録媒体に到達するイオン数を多できるようにしている。第1イオナイザー16と第2イオナイザー17との距離は5mmから20mm程度が好ましく、あまり離しすぎると、すなわち記録媒体の搬送量より離してしまうと、同一のエリアにプラスイオンとマイナスイオンの両方を一度のキャリッジ2の走査で供給できず、一方だけを供給してしまい、両イオンの濃度のバランスが崩れ、帯電を好適に除電できなくなってしまう。また、第1イオナイザー16または第2イオナイザー17から記録媒体までの距離を10mmから30mmの近距離に配置することで、イオンが記録媒体以外の方向に飛散するのを防止している。またイオン同士の再結合も抑制できる。記録媒体から離しすぎるとイオンが記録媒体に到達する前に拡散してしまい除電できず、近すぎると、同一のエリアにプラスイオンとマイナスイオンの両方を供給できず、一方だけを供給してしまい、両イオンの濃度のバランスが崩れ、帯電を好適に除電できなくなってしまう。
【0025】
図2は、インクジェットプリンター内の吸気手段と排気手段の配置を説明する図である。この図を用いて筐体12内の空気の流れを説明する。筐体12の中に吸われた気体は、筐体側面排気ファン23、筐体背面排気ファン22、リアペーパーガイド4と屈曲部21の間、プラテン3からの吸引、およびフロントペーパーガイド5とカバー7の間から排出される。インクジェットプリンター1の筐体12の背面には気体を吸引する筐体吸気手段である筐体吸入ファン13が多数備わる。筐体吸入ファン13は筐体12の長手方向に沿って配置されている。筐体吸入ファン13はキャリッジ吸入ファン11と対向するように配置されている。こうすることで、キャリッジ2内に筐体12の外側の空気を多く吸い込めるからである。
【0026】
レール8およびプラテン3も筐体の長手方向に沿って配置されている。プラテン3は平板プラテンであり、貫通孔が多数設けられている。プラテン3の下側には、プラテン3、プラテン3の両端の下方にある立設板20などで区切られた空間があり、その空間内の気体を吸引ファン14で外に排出して負圧を作り、プラテン3上を搬送されてきた記録媒体を吸引して支持する。
筐体吸入ファン13からカバー7の方向へ風が流れ、カバー7に沿って下方に向かい、フロントペーパーガイド5との隙間から外に排出される気体の流れ道がある。
【0027】
プラテン3の記録媒体の搬送方向上流側には、記録媒体を搬送するための搬送ローラー6が多数あり、搬送ローラー6はプラテン3の長手方向に沿って等間隔に配置されている。筐体12の一方の端には記録ヘッドのメンテナンスユニット24が備わる。メンテナンスユニット24は、記録ヘッドのノズル面を払拭するワイパーとノズル面に密着してインクを吸引するキャップなどが備わる。このメンテナンスユニット24側の筐体12の側面には、筐体側面排気ファン23が備わり、筐体12内の気体を外部に排気する。また、筐体12のプラテン3を挟んで逆側には、キャリッジ2の往復移動時の折り返しのための空間が備わる。その空間の奥、すなわち筐体12の背面には、筐体背面排気ファン22が備わり、筐体12内の気体を外部に排気する。このようにファンにより排気することで、カバー7とフロントペーパーガイド5との間を通って排出される空気の量を減らすことができ、記録媒体の冷却を少しは抑えることができる。また、筐体12内の気流は、第1イオナイザー16と第2イオナイザー17で生成したイオンを記録媒体に当たるように撹拌もしている。
【0028】
図3は、インクジェットプリンターの外観図である。インクジェットプリンター1は、筐体12を脚25で支えている。脚25は筐体12の下面の端方に固定される。
【0029】
図4は、インクジェットプリンターのブロック図である。制御手段30はROM34に記憶されているプログラムに従って全体の制御を行う。ROM34は、プログラムや初期設定値などを記憶する不揮発性メモリーである。RAM33は、制御手段30のワークエリア、情報の一時記憶などを行うRAMである。
【0030】
プラスイオン発生器駆動回路31は、プラスイオン発生器すなわち第1イオナイザー16を制御手段30の制御に基づいて駆動する。マイナスイオン発生器駆動回路32は、マイナスイオン発生器すなわち第2イオナイザー17を制御手段30の制御に基づいて駆動する。キャリッジモーター駆動回路27は、キャリッジ2を移動させるためのモーターの駆動回路であり、制御手段30の制御に基づいて動作する。制御が容易なDCタイプのイオナイザーおよび駆動回路が特に好ましい。
【0031】
記録媒体搬送手段26は、制御手段30の制御に基づいて駆動する。記録媒体搬送手段26は、搬送ローラー6および搬送ローラー6を駆動するモーターを含み、記録媒体を搬送する手段である。記録媒体の搬送量は画像パラメーラー記憶手段29に記憶されている記録時のパス数に応じて決められる。
【0032】
画像パラメーター記憶手段29は、記録モードに応じて、記録パス数、第1イオナイザー16および第2イオナイザー17をオンするかオフするかの設定値などの画像記録時に必要なデータを記憶し、制御手段30はこのデータおよびプログラムに基づいて動作する。
画像記録手段28は、インクジェット式の記録ヘッドおよびその駆動回路を含み、制御手段30の制御に基づいて動作する。
【0033】
第1イオナイザー16と第2イオナイザー17は制御手段30の制御によって動作し、夫々独立に制御される。また、記録媒体搬送手段26の動作に応じて第1イオナイザー16と第2イオナイザー17は制御される。なるべくプラスとマイナスのイオンを均一に記録媒体に供給できるように制御される。第1イオナイザー16と第2イオナイザー17の片方をオン、他方をオフするように制御も可能であり、必要に応じて放出するイオン量を容易に制御することができる。
【0034】
図5は、イオナイザーの劣化を説明する図である。X軸方向に第1イオナイザー16及び第2イオナイザー17の使用時間40をとり、Y軸方向に発生するイオン量41をとった図である。線42に示すように、第1イオナイザー16及び第2イオナイザー17の使用時間が長くなるとイオン発生量が少なくなる特性がある。使用開始からの使用時間をT1まで第1期間43、T1からT2までを第2期間44、T2からT3までを第3期間45、T3以降を第4期間46とする。T3の時点でおおよそ使用限度になるように設定されている。例えば、T3を決める際に、所定の劣化度、例えば50%劣化したときを使用限度としてもよい。また、使用する記録媒体に対応して決めても良い。T3を超えた場合に、イオンの発生が減少し、効率が悪く使用しない方がよい。また、第4期間は、終点を決めずに使い続けても良いが、その場合は、イオンの発生量は少なく、予定するイオン照射ができなくなり、予定される性能が発揮できない可能性があることを認識して使用することになる。このように使用する場合、ディスプレイに警告を表示するなどの報知機能を設けることが好ましい。
【0035】
また、プラスイオンを発生させるイオナイザーとマイナスイオンを発生させるイオナイザーとでは、使用時間とイオン発生量の関係は同じでない場合があるので、個々のイオナイザーの特性を考慮して、劣化度の期間を決めて制御することが好ましい。また、この例では、期間を決めて制御しているが、使用時間と劣化度の関数を予め求め、実測した使用時間とその関数から劣化度を求めて照射率の制御を行っても良い。こうすることで、より正確に照射できるようになる。
【0036】
図6は、記録媒体の種類に対応した照射率を説明する図である。記録媒体にイオンを照射する場合、使用する記録媒体の種類に応じて、最適な照射量がある。この最適な照射量を維持するために、第1イオナイザー16及び第2イオナイザー17の使用時間に応じて少なくなるイオン量を考慮する必要がある。例えば、記録媒体の種類と、使用時間に応じたイオンの照射率の関係をテーブルとしてROM34に記憶し、記録媒体の種類を入力すると対応する照射率を演算できるように制御する。これには、第1イオナイザー16及び第2イオナイザー17の使用時間を制御手段30でカウントしておくことで、制御が可能となる。
【0037】
図6で示すテーブルは、メディアAは、第1期間43、第2期間44、第3期間45、第4期間46では、夫々の照射率が0.7、0.8、0.9、1.0である。この値は、照射量に比例する値である。例えば0.7の値のときは、70%の照射量、0.8のときは、80%の照射量となる。1.0のときは、100%の照射量を表している。この照射量は照射時間の長さによって制御しても良い。メディアBは、第1期間43、第2期間44、第3期間45、第4期間46では、夫々の照射率が0.4、0.6、0.8、1.0である。メディアCは、第1期間43、第2期間44、第3期間45、第4期間46では、夫々の照射率が0.6、0.75、0.9、1.0である。
【0038】
制御手段30は、入力手段と時間計測手段を備えることで、第1イオナイザー16と第2イオナイザー17の使用時間を個別に計測する。また予め記録媒体毎に使用時間と照射率のテーブルを記憶しておく。入力手段から入力される記録媒体の種類と、イオナイザーの使用時間とを用いて、テーブルから入力された記録媒体に対応した照射率を演算する。そした、その照射率に応じたイオンの照射制御を行う。
【0039】
テーブルは記録媒体の種類と、使用時間によって、照射率が最適になるように予め決められている。テーブルを記憶しそこから照射率を求めることで、演算処理などの制御を容易にすることができる。また、テーブルを用いる代わりに、関数を記憶し、使用時間から劣化度及び照射率を演算する処理で代用しても良い。より正確になるが、演算量が多くなる可能性がある。
【0040】
また、第4期間46になれば、すなわち使用時間がT3を超えた場合に、第1イオナイザー16及び第2イオナイザー17を交換する警告をすることが好ましい。照射率が100%の状態で照射し続けても、一応は動作するが、イオンの生成が少ないので照射の効果が不十分になる可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明はインクジェットプリンターに利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 インクジェットプリンター
2 キャリッジ
3 プラテン
4 リアペーパーガイド
5 フロントペーパーガイド
6 搬送ローラー
7 カバー
8 レール
9 ダクト
10 排気口
11 キャリッジ吸入ファン
12 筐体
13 筐体吸入ファン13
14 吸引ファン
16 第1イオナイザー
17 第2イオナイザー
22 筐体背面排気ファン
23 筐体側面排気ファン
24 メンテナンスユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6