(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記往復移動する前記キャリッジの移動方向の側面に前記第1イオナイザーと前記第2イオナイザーを前記記録媒体の搬送方向に沿って離間させて並べて配置され、前記第1イオナイザーと前記第2イオナイザーのイオンの放出口を前記プラテン側に向けて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
前記キャリッジは、前記筐体吸気手段に向かって突出して配置され、該突出した部分の先端であって前記筐体吸気手段に対向する位置に前記筐体吸気手段によって吸気される前記気体を前記キャリッジ内に吸気するキャリッジ吸気手段を備えたダクトと、
前記キャリッジの前記搬送方向の下流側の正面の下部に前記移動方向に沿って配置された長穴状の排気口と、を有し、
前記筐体吸気手段によって吸気された前記気体は、前記キャリッジ吸気手段によって前記キャリッジの内を流れる前記気体と、前記キャリッジの外を流れる前記気体に分かれ、
前記排気口から排出される気体は前記カバー方向に排出され、前記キャリッジの外を流れる前記気体と混合されて前記筐体外に排出されることを特徴とする請求項3に記載のイ ンクジェットプリンター。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。
図1は、インクジェットプリンターの断面図である。インクジェットプリンター1は、インクジェット式の記録ヘッドを搭載したキャリッジ2が紙面奥行き方向に往復移動する。キャリッジ2はレール8に沿って移動する。記録ヘッドのノズル面に対向する位置にプラテン3が配置されている。プラテン3は平板であり、貫通孔が多数設けられている。プラテン3の下側に密閉空間が設けられ、そこから吸引ファン14によって空気が排出される。空気が排出されると密閉空間の気圧が下がる。プラテン3には貫通孔があるので、プラテン3上にある記録媒体が吸着する。記録ヘッドのノズル面には多数のノズルが備わり、インクを吐出する。キャリッジ2の位置に応じてインクを吐出することで所望の画像を記録媒体に記録する。インク吐出際に主な吐出滴の他に、わずかながら微小粒のインクが飛散してしまい、空中をミストとなって浮遊する。
【0014】
プラテン3の記録媒体の搬送方向下流側にはフロントペーパーガイド5が備わり、上流側にはリアペーパーガイド4が備わる。搬送ローラー6はリアペーパーガイド4とプラテン3の間に配置されている。記録媒体はリアペーパーガイド4で加熱され、搬送ローラー6とそれと対のピンチローラーによって挟持されながら搬送され、プラテン3に送られ、更にフロントペーパーガイド5に沿って排出される。プラテン3とフロントペーパーガイド5にもヒーターが備わり、記録媒体を加熱し、記録媒体に付着したインクの乾燥を促す。搬送ローラー6とそれに対になるピンチローラーに挟まれた後、ローラー対から排出されるときのローラーから記録媒体が剥離され時に静電気が生じる場合があり、帯電の原因の一つとなっている。また、搬送路と記録媒体の摩擦によっても静電気が生じ、帯電の原因となっている。
【0015】
リアペーパーガイド4の上方には、筐体12の端部を曲げた部分である屈曲部21があり、リアペーパーガイド4と対向している。屈曲部21は筐体12の内側方向に曲げられ、さらに、先端に行くほどリアペーパーガイド4に近づく。また、屈曲部21の先端部は、鉛直方向において、プラテン3の表面の平坦部より低く配置してある。このようにすることで、筐体12の背面に配置してある筐体吸入ファン13で吸った気体を、少しでも記録媒体の搬送方向の下流方向、すなわちキャリッジ2あるいはカバー7の方向に流れ易くしている。言い換えれば、吸い込んだ気体が、屈曲部21とリアペーパーガイド4の間から出にくくなる。
【0016】
フロントペーパーガイド5は、その上部にあるカバー7の先端と対向している。また、カバー7は、先端に向かうほどフロントペーパーガイド5に近づく。フロントペーパーガイド5は、記録媒体の搬送方向の下流方向に行くほど下方に下がるように湾曲している。このようにすることで、カバー7とフロントペーパーガイド5によって、筐体12内の気体がフロントペーパーガイド5の表面に沿って流れやすくしている。フロントペーパーガイド5は裏面側の内部にヒーターがあり、それによって加熱することで、記録媒体に付着したインクの乾燥を促す。その場合に記録媒体の表面付近に蒸発した溶剤が滞留するとインクの乾燥を阻害する。そのため、風を送り滞留を防止することもしている。フロントペーパーガイド5に沿って矢印15で示された方向に気流を作るようにフロントペーパーガイド5に対してカバー7を近づけ、更に下方に向くように配置してある。
【0017】
キャリッジ2の上部にダクト9が筐体12の背面方向に向かい設けられている。ダクト9の背面方向の端部には、キャリッジ吸入ファン11が備わっている。筐体吸入ファン13とキャリッジ吸入ファン11は対向するように配置されている。
【0018】
ダクト9はキャリッジ2の移動方向の両端に夫々設けられている。夫々のダクト9の先端には、キャリッジ2内に気体を吸入するキャリッジ吸気手段であるキャリッジ吸入ファン11が設けられている。このキャリッジ吸入ファン11から気体を吸入し、その気体はダクト9を通り、キャリッジ2内を通り、キャリッジ2の下方であって記録媒体の搬送方向下流側の側壁に設けられた排気口10から外部、すなわち筐体12内、に排出される。排気口10はカバー7に向けられ、排出された気体はこのカバー7の方向に流れる。このキャリッジ2内の気体の流によって記録ヘッド2も含めキャリッジ2内が冷却される。排気口10はキャリッジ2の移動方向すなわち幅方向に沿って設けられた長穴である。好ましくは、キャリッジ2の記録ヘッドの配置に対応した幅分の長穴が設けられることである。筐体12内に気体が滞留せずに気体の排出が容易にできる。
ダクト9の上部にはフラットケーブル18とインクチューブ19が這いまわされて配置されている。キャリッジ2の外に設けられた電気回路とインクタンクに接続されている。
【0019】
筐体吸入ファン13の高さは、キャリッジ吸入ファン11より高くしてあり、2倍の高さとしてある。すなわち、筐体吸入ファン13は大型のファンを用いて外気をたくさん吸引している。筐体12内に吸われた気体はキャリッジ吸入ファン11によってキャリッジ2の内部に吸われるものと、キャリッジ2の外側を通るものがある。吸われた空気は、筐体12の正面に配置されているカバー7方向に向かう。キャリッジ吸入ファン11によって、筐体吸入ファン13が塞がれないようすることで、急激な気流の向きの変更を少なくできる。カバー7の上端が筐体12に回動可能に接続されている。
【0020】
また、排気口10から排出された気体はカバー7に向けられ、カバー7に当たった気体は、カバー7が傾いているので、それに沿って下方向に気流を生じさせ、さらに、フロントペーパーガイド5に沿って流れる。排気口10から排気された気体は、キャリッジ2外を流れる気体と混ざり合いながら外に排出されることになる。キャリッジ吸入ファン11で吸引された気体は、排出口10から排出されるときに、キャリッジ2外を流れる気体より早く流れている。この排出口10からの気流に連動し、周囲の気体の流れも速くなり、スムーズにフロントペーパーガイド5とカバー7の間から外に排出できる。筐体内に滞留するインクから蒸発して気体となった溶剤の排出を進めることができるので、インクの乾燥を早められる。
【0021】
プラスイオンを生成する第1イオナイザー16とマイナスイオンを生成する第2イオナイザー17が、キャリッジ2の側面に配置されている。第1イオナイザー16と第2イオナイザー17は、下方すなわちプラテン3方向に開口され、イオンが放出される。イオンの照射方向20で示した方向に主にイオンが放出される。第1イオナイザー16と第2イオナイザー17から放出されたイオンは記録媒体の静電気を除電する。これらイオナイザーは、電極に直流の高電圧を印加するDCタイプが好ましい。
【0022】
第1イオナイザー16と第2イオナイザー17は、記録媒体の搬送法方向に沿って若干の距離を隔てて配置されている。放出されたイオンは、筐体12内の気流によって撹拌、排出されるが、一部は記録媒体の帯電を除電する。
【0023】
記録媒体は、記録時に記録ヘッドの長さに対して、複数分の1の距離を搬送し、複数回に亘って同一エリアの記録を行う。例えば、4回から12回程度に分けて印刷を行う。このような記録方法を用いるプリンターでは、プラテン3の幅全体を覆う幅のイオナイザーを用いずとも、狭い範囲にイオンを放出するイオナイザーを用いても、記録媒体の帯電を除電することができる。また、同一領域を複数回にわたってイオナイザーからイオンを提供することで、除電の確実性が増す。
【0024】
また、プラスイオンとマイナスイオンを別々の電極を用いることで、プラスイオンとマイナスイオンの再結合の頻度を下げて、記録媒体に到達するイオン数を多できるようにしている。第1イオナイザー16と第2イオナイザー17との距離は5mmから20mm程度が好ましく、あまり離しすぎると、すなわち記録媒体の搬送量より離してしまうと、同一のエリアにプラスイオンとマイナスイオンの両方を供給できず、一方だけを供給してしまい、両イオンの濃度のバランスが崩れ、帯電を好適に除電できなくなってしまう。また、第1イオナイザー16または第2イオナイザー17から記録媒体までの距離を10mmから30mmの近距離に配置することで、イオンが記録媒体以外の方向に飛散するのを防止している。記録媒体から離しすぎるとイオンが記録媒体に到達する前に拡散してしまい除電できず、近すぎると、同一のエリアにプラスイオンとマイナスイオンの両方を供給できず、一方だけを供給してしまい、両イオンの濃度のバランスが崩れ、帯電を好適に除電できなくなってしまう。
【0025】
図2は、インクジェットプリンター内の吸気手段と排気手段の配置を説明する図である。この図を用いて筐体12内の空気の流れを説明する。筐体12の中に吸われた気体は、筐体側面排気ファン23、筐体背面排気ファン22、リアペーパーガイド4と屈曲部21の間、プラテン3からの吸引、およびフロントペーパーガイド5とカバー7の間から排出される。インクジェットプリンター1の筐体12の背面には気体を吸引する筐体吸気手段である筐体吸入ファン13が多数備わる。筐体吸入ファン13は筐体12の長手方向に沿って配置されている。筐体吸入ファン13はキャリッジ吸入ファン11と対向するように配置されている。こうすることで、キャリッジ2内に筐体12の外側の空気を多く吸い込めるからである。
【0026】
レール8およびプラテン3も筐体の長手方向に沿って配置されている。プラテン3は平板プラテンであり、貫通孔が多数設けられている。プラテン3の下側には、プラテン3、プラテン3の両端の下方にある立設板20などで区切られた空間があり、その空間内の気体を吸引ファン14で外に排出して負圧を作り、プラテン3上を搬送されてきた記録媒体を吸引して吸着する。
筐体吸入ファン13からカバー7の方向へ風が流れ、カバー7に沿って下方に向かい、フロントペーパーガイド5との隙間から外に排出される気体の流れ道がある。
【0027】
プラテン3の記録媒体の搬送方向上流側には、記録媒体を搬送するための搬送ローラー6が多数あり、搬送ローラー6はプラテン3の長手方向に沿って等間隔に配置されている。筐体12の一方の端には記録ヘッドのメンテナンスユニット24が備わる。メンテナンスユニット24は、記録ヘッドのノズル面を払拭するワイパーとノズル面に密着してインクを吸引するキャップなどが備わる。このメンテナンスユニット24側の筐体12の側面には、筐体側面排気ファン23が備わり、筐体12内の気体を外部に排気する。また、筐体12のプラテン3を挟んで逆側には、キャリッジ2の往復移動時の折り返しのための空間が備わる。その空間の奥、すなわち筐体12の背面には、筐体背面排気ファン22が備わり、筐体12内の気体を外部に排気する。このようにファンにより排気することで、カバー7とフロントペーパーガイド5との間を通って排出される空気の量を減らすことができ、記録媒体の冷却を少しは抑えることができる。また、第1イオナイザー16と第2イオナイザー17で生成したイオンを記録媒体に当たるように気流によって撹拌もしている。
【0028】
図3は、インクジェットプリンターの外観図である。インクジェットプリンター1は、筐体12を脚25で支えている。脚25は筐体12の下面の端方に固定される。
【0029】
図4は、インクジェットプリンターのブロック図である。制御手段30はROM34に記憶されているプログラムに従って全体の制御を行う。ROM34は、プログラムや初期設定値などを記憶する不揮発性メモリーである。RAM33は、制御手段30のワークエリア、情報の一時記憶などを行うRAMである。
【0030】
プラスイオン発生器駆動回路31は、プラスイオン発生器すなわち第1イオナイザー16を制御手段30の制御に基づいて駆動する。マイナスイオン発生器駆動回路32は、マイナスイオン発生器すなわち第2イオナイザー17を制御手段30の制御に基づいて駆動する。キャリッジモーター駆動回路27は、キャリッジ2を移動させるためのモーターの駆動回路であり、制御手段30の制御に基づいて動作する。
【0031】
記録媒体搬送手段26は、制御手段30の制御に基づいて駆動する。記録媒体搬送手段26は、搬送ローラー6および搬送ローラー6を駆動するモーターを含み、記録媒体を搬送する手段である。記録媒体の搬送量は画像パラメーラー記憶手段29に記憶されている記録時のパス数に応じて決められる。
【0032】
画像パラメーター記憶手段29は、記録モードに応じて、記録パス数、第1イオナイザー16および第2イオナイザー17をオンするかオフするかの設定値などの画像記録時に必要なデータを記憶し、制御手段30はこのデータおよびプログラムに基づいて動作する。記録モードは、キャリッジの移動速度、パス数、1回の搬送量、キャリッジ2の移動方向どの方向で記録するか、記録媒体の種類、などの違いによる夫々の組み合わせであり、その組み合わせ毎に第1イオナイザー16と第2イオナイザー17をどのように動作させるかのパラメーターが予め決められ、画像パラメーター記憶手段29に記憶されている。
画像記録手段28は、インクジェット式の記録ヘッドおよびその駆動回路を含み、制御手段30の制御に基づいて動作する。
【0033】
第1イオナイザー16と第2イオナイザー17は制御手段30の制御によって動作し、夫々独立に制御される。また、記録媒体搬送手段26の動作に応じても第1イオナイザー16と第2イオナイザー17は制御される。なるべくプラスとマイナスのイオンを均一に記録媒体に供給できるように制御される。第1イオナイザー16と第2イオナイザー17の片方をオン、他方をオフするように制御も可能であり、必要に応じて放出するイオン量を容易に制御することができる。
【0034】
操作パネル35は、ユーザーの操作によって、制御手段30に対して各種データを設定し、指示することや、データの表示をすることができる。入力されたデータはRAM33に一時的に記憶される。
【0035】
図5は、動作を説明する第1の例を示す図である。
図6は、動作を説明する第2の例を示す図である。この図は記録媒体47にイオンが到達する範囲を示している。記録媒体に到達するイオンは、発生源から遠方に行くに従い少なくなり、その到達範囲を便宜的に円形にして説明する。イオンの到達範囲を示す円36は、記録媒体47の搬送量44毎に、第1エリア41、第2エリア42、第3エリア43からなる例を用いて説明する。記録媒体47に記してある横線は、横線間の距離が1回の搬送で搬送される搬送量44を示している。搬送量44毎に搬送され、記録とイオンの生成による除電がされる。
【0036】
例えば、記録媒体47の搬送方向の或る部分の先端側45から搬送量44に相当する部分が、第1エリア41にかかる。このとき、キャリッジ2が第1の所定速度で移動しながらイオンを生成する。それと共に、記録媒体に印字を行う。ここで、記録媒体47のイオンの照射範囲は、図中斜線で示した第1照射範囲46である。イオンの単位時間当たりの生成量が一定ならば、イオンの照射量はキャリッジの移動速度に比例する。
【0037】
次に、記録媒体47が搬送量44だけ搬送され、次のキャリッジ2が第1の所定速度で移動する。それと共に記録媒体47に印字される。しかし、この例ではイオンの生成は行わない。すなわち第1イオナイザー16と第2イオナイザー17はオフしてある。
【0038】
次に、記録媒体47が搬送量44だけ搬送され、搬送方向の或る部分の先端側45から搬送量44の3回分に相当する部分が、第1エリア41、第2エリア42、第3エリア43にかかる。キャリッジ2が第1の所定速度で移動しながらイオンを生成する。それと共に、記録媒体47に印字を行う。ここで、記録媒体47のイオンの照射範囲は、第1エリア41、第2エリア42、第3エリア43が走査する部分であり、図中斜線で示した第1照射範囲46を含まれる。第1照射範囲46は2回走査される。
【0039】
このように、1走査置きにイオンを生成し、除電を行う。記録媒体上に到達するイオンの照射量は電極から遠いほど少なくなる傾向にある。記録媒体に到達するイオンは、第2エリア42の部分が多く、第1エリア41と第3エリア43が少ない。第1エリア41と第3エリア43によるイオンの生成を重ねることで、均一化を図る。
【0040】
図6では、記録媒体47が搬送される毎に、キャリッジ2が第2の所定速度で移動し、イオンの生成をし、記録媒体に印字がされる。この場合は、記録媒体47には、第1エリア41、第2エリア42、第3エリア43によるイオンが照射されることになる。
【0041】
キャリッジ2の移動速度に応じて、すなわち、イオンを生成する時間に応じて、第1イオナイザー16と第2イオナイザー17のオンとオフを制御することで、好適に静電気を除去し、イオンの生成のし過ぎによる記録媒体の帯電を防止できる。
【0042】
キャリッジ2が早い速度で移動する場合に、
図6に示したようにキャリッジ2の走査毎にイオンを生成し、キャリッジ2が遅い速度で移動する場合に、
図5で示したようにキャリッジ2の1走査置きにイオンを生成する。例えば
図5で示した例のキャリッジ2の速度が
図6で示した例のキャリッジ2の速度の2倍ならば、ほぼ同じ量のイオンが照射されることになる。
【0043】
キャリッジ2の速度と走査毎の第1イオナイザー16と第2イオナイザー17のオンとオフの制御は、記録条件が異なる記録モード毎に予め決められ、ROM34に記憶されている。記録条件は、キャリッジ2の速度、何回の走査で画を完成させるかのパス数、記録する走査方向、記録媒体の種類などがある。また、この条件に応じて第1イオナイザー16と第2イオナイザー17のオンとオフをどの走査で行うかを記憶させてある。特に、記録媒体の種類によっては、帯電し易いものがあり、そのような種類の記録媒体では、キャリッジ速度を遅くし、毎走査イオナイザーをオンする制御が必要となる。また、帯電し難いものの場合、キャリッジ速度を早くするか、イオナイザーをオンする走査を少なくする制御が必要となる。
図5と
図6ではモデル化した例で概念を示したが、実際には予め実験を行い、記録モード毎に最適となる第1イオナイザー16と第2イオナイザー17のオンとオフの制御のためのパラメーターを決め用いる。
【0044】
図7は、記憶されるパラメーターの例を示す図である。ROM34には、印刷の記録モードを示すモード52、キャリッジ2の移動速度を示すスピード48、記録のパス数を示すパス数49、記録媒体の種類を示す種類50、第1イオナイザー16と第2イオナイザー17のオンとオフを示すデータであるON/OFF制御パラメーター51が関連付けられて記憶されている。
【0045】
図8は、動作のフローチャートである。制御手段30がROM34に記憶されているプログラムに従って各種制御を行う。先ずステップS1において、現在の印刷モードの取得がされる。現在の印刷モードはRAM33に一時的に記憶されている。操作パネル35からユーザーの入力によって印刷モードが選択される。または、印刷する画像データに印刷モードが添付され、その内容がRAM33に記憶されている。
【0046】
次にステップS2において、取得した印刷モードに応じて、画像パラメーター記憶手段29に記憶されているデータの中から対応するイオナイザーを制御するためのON/OFF制御パラメーターを取得する。画像パラメーター記憶手段29はROM34内の所定の記録エリアを用いることもできる。
【0047】
次にステップS3において、取得した現在の印刷モードにおけるON/OFF制御パラメーターに基づいて、第1イオナイザー16と第2イオナイザー17のオンとオフをキャリッジの走査毎にオンとオフのどちらかを行う。
【0048】
このようにすることで、印刷モードに応じて、記録媒体の単位面積当たりのイオン供給量を最適することが容易にできる。単位面積あたりのイオン供給量が異なることによる、例えば、イオン供給給料不足の除電不足や、イオン供給量が過剰になりすぎ帯電してしまうという問題を防止できる。プリンターの様々な印刷モードに応じた最適なイオン供給量のパラメーターを持ち、そのパラメーターに応じて、キャリッジの各走査におけるイオナイザーのオンとオフとを切り替えることで、被印刷物の単位面積あたりのイオン供給量を最適な状態にすることができる。
【0049】
また、印刷モードに応じてイオンの生成を容易に制御し、パス数、記録媒体の種類、印刷スピードなどの条件に応じて、イオンの生成量を制御することができる。DCタイプのイオナイザー用いるので、制御が容易となる。また、走査毎にオンまたはオフの制御をするので、高速にオンまたはオフを切換えずに済むので制御が容易であり、記録媒体に対して生成したイオンをほぼ均一な濃度で当てることができる。
【0050】
図9は、イオナイザーの劣化について説明する図である。X軸方向に第1イオナイザー16及び第2イオナイザー17の使用時間60をとり、Y軸方向に発生するイオン量61をとった図である。線62に示すように、第1イオナイザー16及び第2イオナイザー17の使用時間が長くなるとイオン発生量が少なくなる特性がある。使用開始からの使用時間をT1まで第1期間63、T1からT2までを第2期間64、T2からT3までを第3期間65、T3以降を第4期間66とする。T3の時点でおおよそ使用限度になるように設定されている。例えば、T3を決める際に、所定の劣化度、例えば50%劣化したときを使用限度としてもよい。また、使用する記録媒体に対応して決めても良い。T3を超えた場合に、イオンの発生が減少し、効率が悪く使用しない方がよい。また、第4期間は、終点を決めずに使い続けても良いが、その場合は、イオンの発生量は少なく、予定するイオン照射ができなくなり、予定される性能が発揮できない可能性があることを認識して使用することになる。このように使用する場合、ディスプレイに警告を表示するなどの報知機能を設けることが好ましい。
【0051】
また、プラスイオンを発生させるイオナイザーとマイナスイオンを発生させるイオナイザーとでは、使用時間とイオン発生量の関係は同じでない場合があるので、個々のイオナイザーの特性を考慮して、劣化度の期間を決めて制御することが好ましい。また、この例では、期間を決めて制御しているが、使用時間と劣化度の関数を予め求め、実測した使用時間とその関数から劣化度を求めて照射率の制御を行っても良い。こうすることで、より正確に照射できるようになる。
【0052】
図10は、記録媒体の種類に対応した照射率を説明する図である。記録媒体にイオンを照射する場合、使用する記録媒体の種類に応じて、最適な照射量がある。この最適な照射量を維持するために、第1イオナイザー16及び第2イオナイザー17の使用時間に応じて少なくなるイオン量を考慮する必要がある。例えば、記録媒体の種類と、使用時間に応じた照射率の関係をテーブルとしてROM34に記憶し、記録媒体の種類を入力すると対応する照射率を演算できるように制御する。これには、第1イオナイザー16及び第2イオナイザー17の使用時間を制御手段30でカウントしておくことで、制御が可能となる。
【0053】
図10で示すテーブルは、メディアAは、第1期間63、第2期間64、第3期間65、第4期間66では、夫々の照射率が0.7、0.8、0.9、1.0である。この値は、照射量に比例する値である。例えば0.7の値のときは、70%の照射量、0.8のときは、80%の照射量となる。1.0のときは、100%の照射量を表している。この照射量は照射時間の長さによって制御しても良い。メディアBは、第1期間63、第2期間64、第3期間65、第4期間66では、夫々の照射率が0.4、0.6、0.8、1.0である。メディアCは、第1期間63、第2期間64、第3期間65、第4期間66では、夫々の照射率が0.6、0.75、0.9、1.0である。
【0054】
制御手段30は、入力手段と時間計測手段を備えることで、第1イオナイザー16と第2イオナイザー17の使用時間を個別に計測する。また予め記録媒体毎に使用時間と照射率のテーブルを記憶しておく。入力手段から入力される記録媒体の種類と、イオナイザーの使用時間とを用いて、テーブルから入力された記録媒体に対応した照射率を演算する。そして、その照射率に応じたイオンの照射制御を行う。
【0055】
テーブルは記録媒体の種類と、使用時間によって、照射率が最適になるように予め決められている。テーブルを記憶し、そこから照射率を求めることで、演算処理などの制御を容易にすることができる。また、テーブルを用いる代わりに、関数を記憶し、使用時間から劣化度及び照射率を演算する処理で代用しても良い。より正確になるが、演算量が多くなる可能性がある。
【0056】
また、第4期間66になれば、すなわち使用時間がT3を超えた場合に、第1イオナイザー16及び第2イオナイザー17を交換する警告をすることが好ましい。照射率が100%の状態で照射し続けても、一応は動作するが、イオンの生成が少ないので、イオン照射の効果が不十分になる可能性がある。