(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波形に開口された入口が、幅が5〜20cmの範囲であり、隣接する山同士の間隔および隣接する谷同士の間隔が1〜5cmの範囲である、請求項1記載の長尺状繊維トウの開繊物を製造するための製造装置。
前記波形通路の入口の幅(W1)と前記波形通路の出口の幅(W2)の比(W1/W2)が2〜10の範囲である、請求項1または2記載の長尺状繊維トウの開繊物を製造するための製造装置。
前記粒状添加剤の添加部が上型と下型が組み合わされたものであり、前記上型と前記下型が組み合わされることで前記波形通路が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の長尺状繊維トウの開繊物を製造するための製造装置。
前記膨張・整形ユニットが、筒状のアダプターの内壁面に複数の板バネが取り付けられており、さらに前記複数の板バネの内側に筒状の網部材が取り付けられているものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の長尺状繊維トウの開繊物を製造するための製造装置。
膨張・整形ユニットが、筒状のアダプターの内壁面に複数の板バネが取り付けられており、さらに前記複数の板バネの内側に筒状の網部材が取り付けられているものであり、
前記網部材の開口の大きさが、前記粒状添加剤の添加部で添加する粒状添加剤よりも小さなものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の長尺状繊維トウの開繊物を製造するための製造装置。
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテート繊維は、たばこフィルタ用材料のほか、使い捨ておむつ、生理用品などの衛生材料用吸収体として用いられている。
セルロースアセテートフィラメントのトウは、糸に膨らみをもたせ、紡績作業を容易にするため、捲縮が付与されている。捲縮されたフィラメントは、立方体の梱包容器内にベール状に梱包された状態で、脱気・圧縮された状態で輸送される。そして、最終製品の製造時には、ベールからフィラメントを取り出した後に開繊し、その後、所望形状に成形される。
【0003】
特許文献1では、空気開繊ジェット装置を使用して、ベールから取り出したフィラメントを開繊し、開繊されたトウを、例えば個人介護製品のための吸収性構造として使用するために適した形状に形成するためのシステムが提案されている。
特許文献1では、SAP(高分子吸水材)などの粒状添加物は、空気開繊後に添加されるため、開繊体の上面(SAP添加側)にSAPが多く偏在した吸収体しか得られないという課題がある。
【0004】
特許文献2では、断面楕円形状又は円形状の開繊室を備えた空気開繊装置が開示されている。
空気開繊装置を使用した空気開繊は、開繊効果が高く、特に円筒形の空気開繊装置を用いるとトウの配列がランダムとなった開繊体が得られる。
一方、トウの配列がランダムとなった開繊体は、開繊後にSAPを添加しても開繊体の中にSAPが入りにくい。
したがって、特許文献1と同様にSAPが多く偏在した吸収体しか得られないという課題がある。
【0005】
特許文献3では、予備開繊ユニット、開繊ユニット及び膨張・整形ユニットは、繊維トウを連続的に送るための連通空間を形成した製造装置が開示されている。
特許文献3の製造装置では、SAPを添加した後に空気開繊をするため、SAPが均一に添加した吸収体を得られるが、添加したSAPの一部が飛散して開繊物に残留し難い場合があるという点で改良の余地があった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の製造装置は、予備開繊ユニット1、予備解繊ユニット1に接続された開繊ユニット2、開繊ユニット2に接続された膨張・整形ユニット3を有している。
予備開繊ユニット1、開繊ユニット2および膨張・整形ユニット3は、繊維トウ10を上流側の予備開繊ユニット1から下流側の膨張・整形ユニット3に向かって連続的に送るための連通した空間を形成するようにして接続されている。
以下、本発明の製造装置とそれを使用した製造方法を説明する。
【0013】
(1)予備開繊ユニット1における予備開繊工程
予備開繊ユニット1において、1対のロール11と1対のロール12間に繊維トウベールから取り出した、捲縮された繊維トウ10を連続的に通しながら、予備開繊する。
1対のロールで繊維トウ10を挟み込まない場合には、繊維トウ10は開繊ユニット2において十分な張力を得ることができない。
ロール11とロール12のロール比は、例えば、1〜3、好ましくは1.1〜2.5、さらに好ましくは1.2〜2程度であってもよい。
予備開繊ユニット1と予備開繊工程は、特開2008−255529号公報の段落番号45〜46に記載されたものと同じである。
なお、予備開繊工程は繊維トウ10を挟み込み、繊維トウ10の動きを制御できる方法であれば何れでもよく、例えばエアー圧により狭いスリット部の強く押し付けられるような構造を有するものでも良い。
【0014】
繊維トウ10は、特開2008−255529号公報の〔0042〕〜〔0044〕に記載されたものを用いることができる。
具体的には、セルロースエステル系繊維(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースアセテート系繊維など)、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、オレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維などを例示できる。繊維は単繊維であってもよく複合繊維であってもよく混紡繊維であってもよい。特に、セルロースアセテート系繊維が好ましい。
【0015】
(2)開繊ユニット2(添加部20)において、予備開繊した繊維トウと粒状添加剤を接触させる工程
予備開繊された繊維トウ(トウバンド)10を開繊ユニット2の添加部20に連続的に送りながら、粒状添加剤と接触させた後、開繊部30において開繊する。
【0016】
添加部20は、繊維トウ10を送るための貫通孔が軸方向に形成された添加部本体21を有している。
添加部本体21は、
図2に示すような波形通路25を有している。
波形通路25は、
図3に示すような波形に開口された入口(波形入口)24と、開繊部30(シリンダ状の第1本体部37)側の出口26を有している。
波形入口24は、波形(W字形)であることから、複数の谷部24aと複数の山部24bを有している。
波形通路25を有している添加部本体21は、例えば金属製の上型22と金属製の下型23を組み合わせて形成することができる。
なお、特開2011−241487号公報の
図1の製造装置の添加部20では、入口は
図7に示すような長方形(入口124)またはそれに近似した楕円形であると認められる。
【0017】
波形入口24の幅は、目的とする製品により調整することができるものであるが、紙おむつなどの吸収体を製造するときは、幅5〜20cmの範囲にすることができる。
幅が前記範囲であるとき、下型22の隣接する谷部22a同士の間隔および隣接する山部22b同士の間隔は1〜5cmの範囲にすることができる。上型23の谷部23aおよび山部23bの間隔も同じである。
波形入口24の谷部22aの深さ(上型23の谷部23aから下型22の谷部22aまでの長さ)は、10〜50mmにすることができる。
【0018】
波形通路25の幅は、
図2に示すように波形入口24から出口26に向かって連続的に狭くなっている。
波形入口24の幅(W1)と出口26の幅(W2)の比(W1/W2)は2〜10が好ましく、5〜7がより好ましい。
【0019】
波形通路25は、波形入口24から出口26までの全部に形成されていてもよいが、出口26は波形である必要はなく、さらに
図2に示すように出口26の近傍には波形通路が形成されていない部分26aがあってもよい。
波形入口24から出口26までの長さは10〜30cmにすることができる。
【0020】
波形入口24の谷部24aと山部24bのそれぞれの先端部分は、トウバンド10の損傷を抑制するため、丸みを付けたり、平坦面にしたりすることができる。
このような丸みや平坦面は、波形通路25の一部(例えば、入口24の近傍のみ)または全体(入口24から出口26までの範囲)に形成することができる。
【0021】
添加部本体21には、厚さ方向に形成された粒状添加剤の添加孔22が形成され、添加孔22にはホッパ23が接続されている。添加孔22は、繊維トウ10を送るための添加部本体21に形成された貫通孔と連通されている。
【0022】
添加部本体21は、
図1に示すように長さ方向に2つに分離されており、分離された部分が空気を逃がすための脱気孔24となっているものでもよいし、脱気孔24があれば2つに分離されていなくてもよい。なお、2つに分離されている場合であっても、波形通路25は分離されていない。
脱気孔24は、周知のベントホール(例えば、周知の樹脂成型用の押出機等に設置されているもの)と同じものでもよい。
【0023】
次に、開繊ユニット2の添加部20を用いた粒状添加剤の添加方法について説明する。
予備開繊ユニット1において予備開繊されたトウバンド10は、最初に添加部20の波形入口24に入り、そこから波形通路25を通って、出口26に至ることになる。
このような過程においてホッパ23及び添加孔22から粒状添加剤60を添加すると、そのまま谷部分に入り込むか、または山部分に当たったあとで谷部分に入り込む。このため、
図4(a)に示すように、厚さ方向の断面形状が波形のトウバンド10の谷部分に粒状添加剤60が存在する状態になる。
その後、
図4(a)の状態の波形のトウバンド10が波形通路25を出口26方向に移動するにしたがって、波形通路25の幅が狭くなるため、隣接する谷同士および隣接する山同士が互いに近接するように幅方向に押し縮められる(あるいは折り畳まれる)ことになる。
その結果、
図4(b)、
図4(c)に示すように、幅方向に押し縮められた波形のトウバンド10が粒状添加剤60を包み込むように変形することになるため、開繊前の段階においても、トウバンド10から粒状添加剤60が脱落し難くなる。
【0024】
粒状添加剤は、最終的に得られる繊維トウ10の開繊物の用途(具備すべき性能)に応じて選択されるものであり、特に制限されるものではない。粒状添加剤としては、吸水目的のための吸収性樹脂乃至水溶性樹脂(SAPなど)、脱臭目的のための樹脂、活性炭等を用いることができる。粒状添加剤の粒径範囲は、用途に応じて決められるものである。
【0025】
粒状添加剤の添加量は、繊維トウ10の質量(100質量部)に対して、100〜800質量部が好ましく、より好ましくは200〜600質量部であり、さらに好ましくは250〜450質量部である。
本発明の製造装置を用いた製造方法によれば、粒状添加剤を繊維トウ10の開繊物に対して保持させることが容易であるため、繊維トウ質量よりも多量の粒状添加剤を添加・保持させることができる。
【0026】
(3)開繊ユニット2(開繊部30)において、粒状添加剤と接触された繊維トウを空気流で開繊する開繊工程
次に、開繊工程において、粒状添加剤と接触された繊維トウ10を空気流で開繊する。
【0027】
まず、開繊ユニット2の開繊部30の構造について説明する。
開繊部30は、両端が開口し、一端側(添加部20側)の開口部が添加部本体21と接続され、他端側の開口部31bが膨張・整形ユニット3と接続されたシリンダ状の第1本体部37とシリンダ状の第2本体部38からなる本体部31により外殻が形成されている。
第1本体部37の外径が第2本体部38の外径は同一にすることもできる。
【0028】
第1本体部37の添加部20側の内部には、ノズル部32が配置されている。ノズル部32は、軸部33と矢尻部34を有しており、それらを貫通して矢尻部34の先端にて開口したノズル(スリット状のノズル)35を有している。
【0029】
第1本体部37には、内部と連通された気体供給孔36が形成されている。気体供給孔36は、ノズル部32の軸部33と正対している。
【0030】
ノズル部32の軸部33と矢尻部34は、第1本体部37の内周面31aとの間に均等間隔となる間隙をおいて配置されている。
前記間隙が小さいほど、相対的に空気供給孔36からの空気吸い込み圧力が大きくなり(吸い込む空気量が小さくなり)、繊維トウ10の推進力が高められ、前記間隙が大きいほど、相対的に空気供給孔36からの空気吸い込み圧力が小さく(吸い込む空気量が大きく)なり、粒状添加剤が空気供給孔36側に逆噴射して飛び散る要因にもなる。
このため、前記間隙の幅は小さい方が好ましいが、余り小さいと生産性が低下することから、前記間隙の幅は0.3〜1.0mmの範囲であることが好ましい。
【0031】
第1本体部37は、ノズル部32が配置された部分の内径は大きくなっており、それに続く第1開繊ゾーン(Z
1)の内径は相対的に小さくなっており、内径は均一である。ノズル35は、第1開繊ゾーン(Z
1)に面している。第1本体部37により形成される第1開繊ゾーン(Z
1)は、幅方向の断面が円形である。
【0032】
第2本体部38に形成された第2開繊ゾーン(Z
2)は、第1開繊ゾーン(Z
1)と第2開繊ゾーン(Z
2)の境界部38aから膨張・整形ユニット3側の開口部38bまでの範囲である。
第2本体部38は、外径は第1本体部37よりも小さくなっているが、内径(第2開繊ゾーン(Z
2)の内径は第1本体部37と同じである。
第2開繊ゾーン(Z
2)の幅方向の断面は円形である。
【0033】
ノズル35のノズル径は、目的とする長尺状の繊維トウ10の開繊物における粒状添加剤の保持形態及び保持量(含有量)に応じて調整する。即ち、ノズル35のノズル径を調整することにより、繊維トウ10の開繊物における吸収剤の保持形態及び保持量(含有量)を制御することができる。
【0034】
ノズル35のノズル径は、5〜30mmの範囲が好ましく、5〜25mmの範囲がより好ましい。
【0035】
第1開繊ゾーン(Z
1)及び第2開繊ゾーン(Z
2)の内径寸法は、ノズル35のノズル径の3〜10倍程度にすることができる。また生産性の観点からは、繊維トウ10の総デニールが35000であるとき、第1開繊ゾーン(Z
1)及び第2開繊ゾーン(Z
2)の内径寸法は20mmが好ましく、総デニールの数値に比例して増加・減少させることができる。
【0036】
次に、開繊部30における開繊方法について説明する。
添加部20において粒状添加剤と接触した繊維トウ(厚さ方向の断面形状が波形のトウバンド)10は、ノズル部32内を通って、ノズル35から本体部31内の第1開繊ゾーンZ
1に出る。
この段階では、幅方向に折り畳まれた状態のトウバンド10に粒状添加剤が包み込まれた状態で存在しており、気体供給口36から本体部31内に供給された気体流(空気流)と接触する。
気体供給口36は、ノズル部32の軸部33と正対しているため、空気供給時には、空気が直接にトウバンド10に当たることはない。
【0037】
気体供給口36から供給する空気圧は、余り高すぎると次の膨張・整形工程における滞留時間が短くなって膨張が不十分になるおそれがあることから、0.3MPa以下の範囲が好ましく、0.01〜0.3MPaの範囲がより好ましい。
【0038】
気体供給口36から供給された空気は、膨張ユニット3(開口部31b)方向に向かう流れを形成し、その状態にて、ノズル35から第1開繊ゾーンZ
1に出たトウバンド10と接触する。この後、トウバンド10は空気圧により、厚み方向に拡大されて開繊される。
【0039】
なお、上記工程においては、空気流により、ノズル部32の後部とノズル部32の先端部(第1開繊ゾーンZ
1)では圧力差が生じてしまい、ノズル部32の先端部の方が高圧となる。このままの状態であると、添加した粒状添加剤がノズル部32の後端から飛び散ってしまい、添加量を増加させることが難しくなる。
しかし、上記したような脱気孔24を設けておき、そこから空気を逃がして常圧にすることで、粒状添加剤の飛散が防止されるようになり、粒状添加剤の添加量を増加させることができる。
【0040】
(4)膨張・整形ユニット3における開繊された繊維トウを膨張・整形する工程
開繊工程(開繊ユニット2)において開繊され、粒状添加剤が保持された繊維トウ10を膨張・整形ユニット3に送り、膨張させながら整形する。
【0041】
まず、膨張・整形ユニット3の構造について説明する。
膨張・整形ユニット3は、開繊ユニット2から出た、開繊された繊維トウ10を膨張させると共に、外形を整形するためのものである。膨張・整形ユニット3は、本体部31に対してアダプター50を介して接続されている。
【0042】
図1、
図5で示す膨張・整形ユニット3は、幅方向の断面が長方形または楕円形であるアダプター50の内壁面に取り付けられた複数枚の板バネ(または棒バネ)40を有している。
図1に示すように、側面から見たときには複数枚の板バネ40は、先細り形状になるようにしてアダプター50に取り付けられている。
このようにして複数枚の板バネ40を取り付けることによって、第2開繊ゾーンZ2から押し出された開繊トウが膨張したとき、周囲から複数枚の板バネ40が押圧することによる整形作用が働くことから、円滑に整形が行われる。
【0043】
アダプター50は、長軸長さ(長辺長さ)/短軸長さ(短辺長さ)は2〜10の関係を満たしている。長軸長さ(長辺長さ)/短軸長さ(短辺長さ)は3〜8が好ましく、4〜7がより好ましい。
膨張・整形ユニット3の幅方向の断面は上記した関係を満たす形状のものであればよく、楕円形、菱形及びその正対する角部が円弧からなる形状のもの、長方形、長方形の角部が円弧からなる形状のもの、及び長方形の正対する辺が円弧からなるものから選ばれる形状のものが好ましい。
【0044】
膨張・整形ユニット3の内径は、本体部31(第1本体部37)の外径の1倍以上であることが好ましく、1〜1.4倍であることがより好ましい。
膨張・整形ユニット3の長さ(板バネ40の長さ)は、例えば150〜350mmの範囲にすることができる。
膨張・整形ユニット3を所定形状にすることにより、最終的に得られる開繊物の断面形状及び幅を調整することができる。
【0045】
本発明の製造装置においては、
図6に示すように膨張・整形ユニット3の複数の板バネ40の内側に筒状の網部材45が取り付けられていることが好ましい。
筒状の網部材45の断面形状は、アダプター50の断面形状と同じものである。
筒状の網部材45の長さ(L2)は、アダプター50から突き出された部分の板バネ40の長さ(L1)の30%以下の長さであり、好ましくは10〜30%の範囲の長さである。
なお、アダプター50内に存在する板バネ40の内側も網部材45で覆われていることが好ましい。
【0046】
網部材45の開口の大きさは、空気は抜けるが、粒状添加剤の添加部で添加する粒状添加剤60よりも小さなものである。
網部材45の開口の大きさは、開口形状を円形としたときの直径(D1)が粒状添加剤60の最小径(Dmin)の70%以下の大きさであることが好ましく、60%以下の大きさであることがより好ましく、55%以下(例えば45〜55%)の大きさがさらに好ましい。
D1は、開口形状が円形以外の場合には、同一面積の円形としたときの直径である。
Dminは、例えば粒状添加剤が円柱の場合には直径である。
網部材45は、金属製の網、合成樹脂製の網を使用することができる。
【0047】
次に、膨張・整形ユニット3における膨張・整形方法について説明する。
開繊工程において粒状添加剤が保持され、開繊された繊維トウ10は、本体部の開口部31bからより大きな径の膨張・整形ユニット3に出る。
この過程において、開繊された繊維トウ10は膨張するが、板バネ40の弾性による作用により、過度の膨張が抑制されると共に、膨張・整形ユニット3の断面形状に対応する幅広形状に整形される。
【0048】
膨張・整形工程では、一時的にトウバンド10の開繊物が滞留した後、さらに押し出されることになるが、前記滞留により、粒状添加剤が飛散することなく、トウバンド10の開繊物に保持される。
従来技術では、この膨張・成形工程において粒状添加剤が飛散する場合があった。これは、開繊されたトウバンドの膨張体(トウバンド膨張体)の表面に粒状添加剤が付着されているとき、開繊部30から流れて来る空気流によって前記粒状添加剤が飛ばされることに起因している。
しかし、本発明の製造装置では、大部分の粒状添加剤はトウバンド膨張体の内部に包み込まれた状態であることから、前記空気流を受けても粒状添加剤が飛ばされることはない。
またごく少量の粒状添加剤がトウバンド膨張体の表面に付着しているような場合であっても、トウバンド膨張体が
図5に示す筒状の網部材45を内側から押圧してシールするため、空気流により粒状添加剤が飛ばされたときでも飛散して脱落することが防止される。
【0049】
膨張・整形工程後、トウ開繊物は膨張・整形ユニット3から連続的に押し出され、粒状添加剤が保持された長尺状のトウバンド膨張体が得られる。
本発明の製造装置を使用した製造方法により得られた長尺状のトウ開繊物(トウバンド膨張体)は、たばこフィルタ用材料、使い捨ておむつ、生理用品などの衛生材料用吸収体の製造原料として用いることができる。
【実施例】
【0050】
実施例1
図1に示す製造装置を用いて、セルロースジアセテート繊維トウ(2.2フィラメントデニール,Y型断面,トータルデニール25000)の開繊物を製造した。
添加部本体の開口部(波形入口)は、谷部の深さ35mm、隣接する谷部同士の間隔は30mmであった。
膨張・整形ユニット3は、合8枚の板バネ(厚さ1.2mm、幅6mm、長さ150mm)を用いた。
粒状添加剤としてSAP((株)サンダイヤ製)を7.5g/トウ2gの割合で用いた。
空気供給孔36からの空気圧力は0.15MPとした。運転速度(繊維トウ10の送り速度)は150m/minの範囲で調整した。
【0051】
(SAPの粒径分布)
149μm以下:0質量%
149超〜420μm:52質量%
420超〜590μm:41質量%
590超〜840μm:7質量%
840超〜1680μm:0質量%
【0052】
実施例2
図1に示す製造装置であって、膨張・整形ユニット3にて
図5で示す筒状の網部材45を備えたものを使用したほかは実施例1と同様にして、セルロース繊維トウの開繊物を製造した。
筒状の網部材は、長さ(L2)が50mmのナイロン製のものを使用した。開口径は77μmであった。
【0053】
比較例1
特許文献3の
図1に示す装置を使用したほかは、実施例1と同様に実施した。
【0054】
比較例2
特許文献3の
図1に示す装置であって、膨張・整形ユニット3にて
図5で示す筒状の網部材45を備えたものを使用したほかは実施例1と同様に実施した。
【0055】
(粒状添加剤の脱落率)
膨張・成形後の開繊物(膨張体)から一定量をとり、それに保持されている高分子吸収剤粒子を取り出して質量を計測した。
このようにして取り出した高分子吸収剤粒子の質量と、当初の高分子吸収剤粒子の添加量(高分子吸収剤粒子を7.5g/トウ2g)を使用して、次式から脱落率求めた。結果を表1に示す。
脱落率(%)
=膨張・成形後の開繊物(膨張体)中の高分子吸収剤粒子質量(g)/膨張・成形後の開繊物(膨張体)の質量(g)×7.5/2×100
【0056】
【表1】