【文献】
JOURNAL OF THE NATIONAL CANCER INSTITUTE,2002年,Vol.94, No.23,p.1745-1757
【文献】
INTERNATIONAL JOURNAL OF RADIATION: ONCOLOGY BIOLOGY PHYSICS,2007年,Vol.67, No.3,p.888-896
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多形性グリオブラストーマ、乳癌、膵臓癌、バーケットリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、前立腺癌、直腸癌、再発性癌、転移性乳癌、化学療法耐性腫瘍および薬物耐性癌から選択される癌に伴う細胞において、アポトーシスを引き起こすために有用な薬学的組成物であって、4-[5-(2,5-ジメチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル] ベンゼンスルホンアミド;およびボルテゾミブを含む薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、ERストレス反応の間の重大な現象を単純化したモデルを示す。多くのERストレス(例えば、SERCAの阻害の後など)の場合、翻訳減衰が生じ、ERストレス反応(ESR)の続く現象に与る。ESRは、2つの相反する部分から構成される:(1)ストレス下での細胞の生存を保証する防御工程を実行する保護的な要素(左側の囲みに列挙される)、および(2)プロアポトーシス(死を誘導する)要素(右側の囲みに列挙される)、これはストレスが過度になりすぎた場合や、救済ができない場合(SERCA阻害剤が継続して存在する場合など)に細胞死を支配および引き起こし始める。低レベル/慢性ERストレスの場合、これは腫瘍細胞において頻繁に存在するのであるが、左側の囲み内の要素の優位性が維持され、腫瘍組織において多くの場合存在する悪条件下(低い酸素濃度、低グルコース濃度)でさえ腫瘍細胞が生存することを支援する;これらの状況下では、右囲み内の要素は、存在しないか、または弱い活性でのみ存在するかの何れかである。しかしながら、腫瘍細胞が更なるERストレスに遭遇した場合、例えば、SERCAの薬理学的な阻害剤などによるなどの場合、既に存在する低レベルのERストレスは、強度に悪化し、右囲み内に示される要素が活性化され、優位性を獲得する:これらの状況下では、左囲みの要素の防御的な作用力は圧倒され始め、右囲みの要素が腫瘍細胞死を実行するであろう。列記されるカスパーゼ12はこの酵素のマウス形態について適用するものであり、ヒトのオルソロガスはカスパーゼ4であることに留意されたい(即ち、ESRの現象において、ヒトカスパーゼ4およびマウスカスパーゼ12は同様の機能を果たす)。
【
図2】
図2は、ERストレス反応系の3つの主要な活性レベルと、GRP78およびCHOPのアンタゴニスト防御/プロアポトーシス機能とを示す。(A)「ERストレスなし」条件(左)は、正常細胞においては不履行な状況である。ここで、ERルーメンにおける非常に低レベルのGRP78は、PERK、IRE1およびATF6に結合し、これらのERストレス要素をそれらの不活性状態に維持する。(B)癌細胞において、慢性的なストレス(低グルコース、低酸素、誤って折り畳まれた蛋白質)が「低ERストレス」状態(中央)を生ずる。ここで、低レベルの継続するストレスは、ERストレス反応系の部分的な活性を導き、GRP78の高レベルに強調を付す(太い矢印)、これはERストレス系の防御的要素を提供し、更に腫瘍細胞の化学療法抵抗性をより増加する。このシナリオにおいて、ER膜貫通要素PERK、IRE1およびATE6は低いレベルの活性を示し、仮説はGRP78により微調整され、調節される。増加したレベルGRP78は、初期のストレス状態の有害な作用を中和するのを助け、これは、例えば、誤って折り畳まれた蛋白質のためのシャペロンとして作用する能力を介するなどによる。(c)持続性の高レベルなストレスは、「重篤なERストレス」状態を生じ(右)、これは翻訳開始因子2アルファ(eIF2α)のPERK媒介のリン酸化を介する蛋白合成を重度な(しかし一過性の)阻害(=不活性化)により特徴づけられる(太線)。これらの状況下、GRP78の防御作用は圧倒され、プロアポトーシス性のCHOPの活性化と続く細胞死の開始が優位性を占める(極太矢印)。我々の研究は、DMCでの腫瘍細胞の治療において、「重篤なERストレス」のシナリオが当て嵌まることを示してきた。この薬物の継続的な存在において、GRP78の上昇したレベルにも関らず、細胞は薬物誘導性ストレスを中和することができず、その代りにCHOPの強い誘導とカスパーゼ4の活性化がアポトーシスを開始し、細胞を死に至らす。
【
図3】
図3は、セレコキシブ(Celecoxib)とDMCが種々の細胞株においてCHOP蛋白質レベルを誘導することを示す。多くの異なる癌細胞株(左に示す通り)を、セレコキシブ(Cxb; 40 および 60 μM)またはDMC(30 および 50 μM)の存在において48時間培養した(Co: コントロール, 未処理細胞)。総細胞溶解物を調製し、CHOPに特異的な抗体を用いるウェスタンブロット分析により分析した。同等な添加のためのコントロールとして、全てのブロットをアクチンに対する抗体でも分析した(これらのコントロールの1つのみを最後に示す)。腫瘍型の各細胞株を右側に示す。
【
図4】
図4は、ERストレスの指標がDMCとタプシガルジンより同様に示されることを示す。U251グリオブラストーマ細胞を1μMのタプシガルジン(Tg)または60μMのDMCの存在において示す通りの種々の時間に亘り培養した。総細胞溶解物を調製し、ERストレス蛋白質GRP78、CHOPおよびカスパーゼ4(Casp 4)に対する特異的な抗体を用いたウェスタンブロットにより分析した。アクチンは添加コントロールとして使用した。プロcasp 4は不活性カスパーゼ4プロ酵素を示すのに対して、切断されたCasp 4はこの酵素の活性化型を示す;*はより速い移動のバンドを示し、これはこれらのウェスタンブロットにおいて相反して観察された。
【
図5】
図5は、他のコキシブ(coxibs)またはNSAIDではないが、DMCおよびセレコキシブが細胞質へのカルシウム放出を誘導することを示す。(A)U251細胞をDMCまたは種々のコキシブおよびNSAIDで処理し、細胞内カルシウムレベルの変化を材料および方法において記載する通り記録した。上段の2つのパネルは、DMCまたはセレコキシブ処理に対する反応において一貫して観察されたカルシウム増加の典型的なスパイクを示す。3番目のパネルはバルデコキシブ(valdecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、インドメタシンおよびスリンダクに対する典型的な反応(即ち、その欠如)を示す(バルデコキシブについてのみ示す)。矢印は、薬物添加の時点を示す。(B)チャートは平均(平均±SD)カルシウムが種々の薬物での処理に対する反応において幾つかの反復から増加することを示す。本質的に同様の結果がLN299細胞株でも観察された。
【
図6】
図6は、CHOPおよびGRP78の誘導がセレコキシブおよびDMCに対して特異的であるこを示す。U251グリオブラストーマをDMC、セレコキシブ、ロフェコキシブまたはバルデコキシブの存在において培養し、CHOPおよびGRP78の蛋白質レベルをウェスタンブロット分析により測定した。表示は、(A)50μMの各薬物での時間動態、(B)15時間の誘導後の濃度依存性である。Bgrは、GRP78抗体で相反して観察されるバックグラウンドシグナルを指す。全てのブロットは、並行して処理し、従って、異なるシグナル強度を異なるパネル間で直接に比較可能である。DMCが最も強力な刺激であり、それに対してロフェコキシブおよびバルデコキシブはこれらの条件下では不活性であることに留意されたい。
【
図7】
図7は、CHOPおよびGRP78の誘導がセレコキシブおよびDMCに対して特異的であり、カルシウムを必要とすることを示す。U251グリオブラストーマ細胞をDMC,セレコキシブ、ロフェコキシブまたはバルデコキシブの存在において培養し、CHOPおよびGRP78の蛋白質レベルをウェスタンブロット分析により測定した。表示は、(A)50μMの各薬物の時間動態、および(B)15時間の誘導後の濃度依存性を示す。Bgrは、GRP78抗体とは相反して観察されるバックグラウンドシグナルを指す。(C)では、細胞を、20μMのBAPTA-AMおよび0.78mMのEGTAの存在または不在において60μMのDMCで処理した。両者共にC
2+の強いキレーターである。AおよびBにおける全てのブロットを並行して処理し、従って、シグナル強度を異なるパネル間で直接に比較可能である。
【
図8】
図8は、CHOPおよびGRP78の誘導がアポトーシスの増加と細胞増殖および生存の減少と相関することを示す。U251グリオブラストーマ細胞を異なる薬物で処理し、細胞増殖および細胞死の種々のパラメータを比較して分析した。コントロールとして、細胞を未処理(Co)で維持するか、または溶媒DMSO単独で処理するかの何れかとした。(A)細胞を30または50μMのDMCで48時間処理し、細胞増殖/生存における影響と細胞死における影響を種々の分析により測定した。「コロニーの数」で表示したグラフは、コロニー形成分析からの結果を示し、ここでは、新たに増殖した細胞のコロニーを生じ得る生存細胞の純粋な数を測定した。「細胞増殖および生存(%)」で表示したグラフは、48時間の薬物処理期間の終わりに行った慣習的なNTTアッセイの結果を示す。「アポトーシス細胞(%)」で表示したグラフは、48時間の薬物処理後のTUNELアッセイにより明らかになったアポトーシス下にある細胞のパーセンテージを示す。これらのグラフの下に、48時間の薬物処理後のERストレス指標CHOP、GRP78およびカスパーゼ4の発現レベルを示し、これらは特異的な抗体でのウェスタンブロットにより測定した(添加コントロールとしてアクチンを使用した)。(B)細胞を表示された通りの種々の濃度の異なる薬物で48時間処理し、細胞死を細胞死ELISAキットで測定した。(C)細胞を表示した通りのDMCまたは種々のコキシブおよび伝統的なNSAIDで48時間処理し、細胞増殖および生存を慣習的なMTTアッセイで測定した(コントロール、未処理細胞を100%として設定した)。他に詳細が記載される通り(34)、MTTアッセイは96穴プレートで1穴当たり3.0-8.0x10
3個の細胞を使用して行った。パネルでは、CHOPおよびGRP78蛋白質の発現レベルをウェスタンブロット分析により測定した。DMCが最も強力であり、セレコキシブが実質的にはより弱く、他のコキシブまたは伝統的なNSAIDの何れもこれらの条件下では不活性であったことに留意されたい。
【
図9】
図9は、セレコキシブおよびDMCによる細胞死滅をGRP78のノックダウンが増強し、これに対いてカスパーゼ4のノックダウンが減少することを示す。U251グリオブラストーマ細胞を、GRP78(si-GRP78)またはカスパーゼ4(si-Casp4)に向かうsi-RNAで一時的にトランスフェクションした。コントロールとして、緑色蛍光蛋白質を標的とするsi-RNA(si-GFP)を使用した。トランスフェクション後の72時間後、並行した培養物を、si-GRP78/si-GFPの場合には 40μMのセレコキシブ(Cxb)と30μMのDMCで、si-Casp4/si-GFPの場合には60μMのCxbと40μMのDMCで処理し、コントロール培養物は、薬物処理なしか、または溶媒(DMSO)単独での処理をした。薬物処理の48時間後、薬物を除去し、生存細胞のフラクションをコロニー形成アッセイにより測定した。表示は、生存細胞のパーセンテージである(ここで、薬物なしの処理条件下のコロニー数を100%とした)。示したp値は、si-GRP78とコントロールsi-RNA(si-GFP)を受けた細胞間での、si-Casp4 とコントロールsi-RNA を受けた細胞間でのそれぞれの生存における統計学的な有意差を示す。(B)si-RNAの有効性を証明するために、標的蛋白質のウェスタンブロット分析を行った。ERストレスモデルから予測された通り、GRP78のノックダウンはCHOP蛋白質のレベルの増加を導いたことに留意されたい;ここで、GRP78のシグナリングはDHOPの上流である。ERストレスモデルから予測された通り、カスパーゼ4si-RNAも、その標的を下方制御したが(切断されたカスパーゼ4は検出不可能となる)、セレコキシブまたはDMCに対する反応におけるGRP78の誘導に対しては影響を与えなかった;ここでカスパーゼ4はGRP78シグナリングの下流である。
【
図10】
図10は、DMCとセレコキシブは、インビボで腫瘍細胞におけるERストレスとアポトーシスを刺激するが、ロフェコキシブはこれを刺激しないことを示す。ヌードマウスに経皮的にU87グリオブラストーマ細胞を移植した。腫瘍が500mm
3 の体積に達したら、2つの動物をそれぞれDMCまたはロフェコキシブ(150mg/kg)の何れか、または薬物なしで36時間処理した。その後、6つの動物全てを屠畜し、それらの腫瘍をCHPO蛋白質について免疫組織化学的染色、並びに細胞死/アポトーシスについてTUNELアッセイにより分析した。左のパネル:CHOP蛋白質(小さい四角は、中央のパネルに同じ領域を拡大した写真を示す領域を示す)。右のパネル:細胞死(矢印はTUNEL陽性、即ち、アポトーシス細胞の例を示す)。実験全体を、50時間に亘る(セレコキシブを含む)薬物の1日用量を増やして繰り返し(材料および方法を参照されたい)、同様の結果を得た。全ての場合において、代表的な区画を示す。
【
図11】
図11は、DMCが、インビボで腫瘍増殖を阻害したが、ロフェコキシブは阻害しなかったことを示す。ヌードマウスにU87グリオブラストーマ細胞を経皮的に移植した。触知できる腫瘍が形成されたら、当該動物にDMC、ロフェコキシブを含むまたは薬物なしの咀嚼サプリメントを毎日与えた。腫瘍サイズを3日毎に測定した。表示は、各群(n=5)における平均(平均値±SD)腫瘍体積である。アスタリスク(
**):42日目におけるコントロールとDMC処理動物の間でp<.0。
【
図12】
図12は、ボルテゾミブ(bortezomib)、セレコキシブおよびDMCがグリオブラストーマ細胞の生存を減少することを示す。種々のグリオブラストーマ細胞株の細胞増殖および生存を、(A)ボルテゾミブ(BZM)、(B)セレコキシブ(CZB)、または(C)2,5-ジメチル-セレコキシブ(DMC)の濃度を増加して存在させた培養の48時間後のMTTアッセイにより測定した。ボルテゾミブ(bortezomib)の抗多発性ミエローマ効果を知るための比較目的のために、RPMI/8226多発性ミエローマ細胞株を(A)において含めた。
【
図13】
図13は、DMCとボルテゾミブがERストレスを誘導することを示す。U251グリオブラストーマ細胞を24時間、(A)ボルテゾミブ(BZM)若しくはDZM、または(B)DMCの濃度を増加させての存在において培養した。総細胞溶解物をユビキチン、GRP78、CHOPおよびカスパーゼ4に対する特異的な抗体を用いるウェスタンブロットにより分析した。アクチンを添加コントロールとして使用した。プロcasp-4は、不活性カスパーゼ4酵素を示し、同時に切断されたcasp-4は当該酵素の活性型を示す。比較の目的のために、10nMのボルテゾミブで処理した細胞を、(B)におけるDMC処理細胞と並行して分析し、ユビキチン結合の量がDMC処理細胞よりもボルテゾミブ処理細胞において非常に高い効果があることが示された。カスパーゼ4ブロットにおいて、多くの非特異性のバックグラウンドバンドが観察されたこと(文献における同様の観察に矛盾しない);特異的バンドは種々のコントロールの使用(図示せず)および文献との比較と同一であったことに留意されたい。
【
図14】
図14は、セレコキシブおよびDMCがボルテゾミブによる増殖阻害および細胞死を増強することを示す。グリオブラストーマ細胞株をボルテゾミブ(BZM)、セレコキシブ(CXB)またはDMC単独または組み合わせにおいて処理した。(A)顕微鏡写真は、48時間の薬物処理後のLN229およびU251細胞における組み合わせ薬物処理の効果を示す。代表的な区画を示す。(B)組み合わせ薬物効果の量的な分析。LN229細胞を約8、24および48時間に亘り上述の通りに薬物で処理した。細胞生存能をトリパンブルー排除アッセイにより測定した。アッセイは、3つ組のサンプルで行い、結果は、3つの独立した実験を代表するものである。表示は、各条件下での生存能力のある細胞の数である(平均値±SD)である。(C)U87MG細胞を24時間、記載する通りの薬物を存在させて培養し、細胞死の程度を細胞死ELISAにより測定した(平均パーセントとして示す;n=4;±SD)。(D)LN229細胞を薬物と共に48時間培養し、コロニーを生じ得る長期間生存する細胞の数をその後2週間測定した(コロニー形成アッセイ)。表示は、3つ組実験からの生存細胞のパーセント(平均値±SD)である。薬物なし処理のコントロールから得たコロニーの数を100%に設定した。A-Dにおいて、以下の薬物濃度を使用した: LN229: 5 nM BZM, 60 μM CXB, 40 μM DMC; U251: 10 nM BZM, 50 μM CXB, or 30 μM DMC; U87MG: 5 nM BZM, 50 μM CXB, 35 μM DMC。アスタリスクは、個々の薬物処理と組み合わせた薬物処理との間の差が統計学的に高い有意差であったことを示す(P<.001)。
【
図15】
図15は、セレコキシブとDMCがボルテゾミブによるERストレスおよびアポトーシスの誘導の上方制御を増強することを示す。(A)U87MGおよび(B)T98G細胞を10nMのボルテゾミブ(BZM)、50μMのセレコキシブ(CXB)または35μMのDMCを記載の通り個別または組み合わせにおいた存在において24時間培養した。総細胞溶解物をウェスタンブロットにより記載の通りGRP78、CHOP、カスパーゼ3(Casp-3)、カスパーゼ4(Casp-4)、カスパーゼ7(Casp-7)、カスパーゼ9(Casp-9)、PAR|PおよびJMKに対する特異的抗体を用いて分析した。アクチンを添加コントロールとして使用した。プロカスパーゼは全長(不活性)カスパーゼプロ酵素を示し、これに対して切断されたカスパーゼはこれらの酵素の活性型を示す。JNK1およびJNK2の活性は、Thr183/Tyr185においてリン酸化されたJNK(p-JNK1/2)を特異的に認識する抗体を使用して測定した。JNK1の相当量を、存在する全てのJNK形態と反応する抗体で確認した。
【
図16】
図16は、GRP78のノックダウンが組み合わせた薬物処理による細胞死滅を増強することを示す。U251細胞をGRP78に方向づけられたsi-RNAで一過性にトランスフェクションした。コントロールとして、緑色蛍光蛋白質を標的とするsiRNA(si-GFP)を使用した。(A)トランスフェクション後72時間、並行する培養物を5nM のボルテゾミブ(BZM)を25μMのセレコキシブ(CXB)または15μMのDMCの何れかと組み合わせて処理した。並行して、トランスフェクトしたコントロール培養物を薬物なしまたは溶媒(DMSO)単独での処理をした。48時間後、薬物を除去し、生存細胞のフラクションを12-14日間の経過に亘りコロニー形成アッセイにより測定した。表示は、コロニーを生じ得る生存細胞のパーセンテージである(ここで、薬物なしの条件下でのコロニー数を100%に設定した)。薬物処理siGRP78トランスフェクション細胞対薬物処理si-GFPトランスフェクション細胞におけるコロニー数の減少は、統計学的に有意であった(p<.002)。(B)トランスフェクションされたsi-RNAの有効性および特異性を証明するために、GRP78の発現のウェスタンブロット分析を、si-GFPトランスフェクト細胞から、および並行してそれぞれの薬物で処理したsiGFPトランスフェクト細胞から行った。これらのブロットの両方を同様に進行および展開したので、それにより並列して直接比較が可能である。そのsiRNAによるGRP78の下方制御は100%で有効ではないが、それにも拘らずこの蛋白質のレベルはsi-GFPでトランスフェクトされた照合するコントロール細胞と比較して、各条件において一貫して低かった。注釈として、全体に亘りより低濃度の各薬物がこの実験において使用され、siRNA前処理により更に増強された細胞死の検出が可能にした。
【
図17】
図17は、DMCがインビボにおけるERストレスおよびアポトーシスにおけるボルテゾミブの効果を増強したことを示す。腫瘍関連マウスを1gm/kgのボルテゾミブ(BZM)および7.5mg/kgのDMCを個別で、または組み合わせで処理したか、または未処理で維持した。50時間後、動物を屠畜し、腫瘍をCHOP(ERストレスの指標)の免疫組織化学的染色またはTUNEL(アポトーシスの指標)により分析した。(A)最上段の図は、CHOP抗体で染色された腫瘍組織を示し、中段の図は、同じ領域の(小さい四角により示された領域を)拡大した図を示す。下段の図はTUNEL染色を示す;幾つかの選択されたTUNEL陽性細胞を矢印により示す。(B)TUNEL陽性細胞(赤褐色染色により示される)を、各処理群からの10の任意に選択した顕微鏡視野について測定し、平均±SDとして示す。個別の薬物処理と組み合わせた薬物処理の間での腫瘍細胞死の程度における統計学的有意差を図中に示す。
【
図18】
図18は、テモゾロミド(TMZ)(グリオーマの標準的治療)と非コキシブセレコキシブ類似体であり、悪化されたERストレスを介して作用する2,5-ジメチルセレコキシブ(DMC)との間の相乗効果を示す。結果は、TMZ(300uM)および20uMのDMCの組み合わせで48時間処理した腫瘍関連脳内皮細胞(TuBEC)の増強された細胞死滅を示す。薬物処理後、細胞を更に12日間、薬物なしでインキュベートし、それにより長期間の生存を測定した;その時間で、細胞障害性をトリパンブルー排除技術を使用して評価した。結果は1群当たりの生存細胞の数として示す。
【
図19】
図19は、本発明の態様に従う3つの関連する誘導体のヒトグリオブラストーマ細胞におけるアポトーシス誘導の相対的な能力を示す。最も強力な化合物は2,5-ジトリフルオロメチル誘導体(DTF3C)であった。
【0022】
詳細な説明
概要において記載した通り、本発明は、アポトーシスを誘導するためのERストレス反応機序を用いるための新規戦略の予期せぬ発見に基づく。本発明の戦略に従うと、本発明の態様は、当該戦略を実行するための方法および手段が提供される。特に、本発明は、活動的に増殖するがん細胞および静止した癌細胞の両方においてアポトーシス(細胞死)を誘導する小胞体ストレス(endoplasmic reticulum stress、ESR)を調節することが可能な新たな部類の化学療法の化合物を提供する。これらの化合物はまた、腫瘍の浸潤、血管形成および血管新生を阻害する。更に、これらの化合物は、(CNSを含む)高い生物学的利用能により特徴付けられ、毒性を殆ど示さず、経口投与が可能であり、抗癌作用を増強するための標準的な化学療法剤との組み合わせが可能である。本発明の幾つかの側面に従う治療方法は、異常細胞のコレクションとしてではなく、生きている存在物としての癌の治療に向けられ、全ての癌に適用されてよい。
【0023】
何れかの特定の理論に限定されることを意図するものではないが、ERストレス反応機序の簡単な考察がここで提供され、本発明の戦略が十分かつ完全に理解することを容易にする。
【0024】
ERストレス反応のモデル
小胞体(ER)ストレス反応(ESR)は、通常のER機能、例えば、未折り畳み蛋白質の蓄積、脂質若しくは糖蛋白質の不均衡またはERルーメンのイオン条件の変化などの異なる原因により引き起こされ得る適応性の一組の経路からなる(概説について(5,6)を参照されたい)。ESRの主たる目的は、ストレスの多い障害を緩和すること、および適切なER恒常性を回復することであるが、強度または持続するERストレスの場合では、これらの経路はプログラム細胞死/アポトーシスを引き起こすであろう。ESRの主要なプロサバイバルレギュレーターの1つは、グルコース調節化蛋白質78(glucose-regulated protein 78、GRP78/BiP)であり、これは、分解のための誤って折り畳まれた蛋白質の標的化における、ERC
2+結合における、および膜貫通ERストレスのセンサーの活性化の調節における、蛋白質の折り畳みとアッセンブリにおいて重要な役割を有する(7)。他方、CCAAT/エンハンサー結合蛋白質相同翻訳因子(CCAAT/enhancer binding protein homologous transcription factor、CHOP/GADD153)およびカスパーゼ4は、ESRのプロアポトーシス性の武器の重要な実行物である(8,9)。
【0025】
図1は、ERストレス反応の簡単なモデルを示す。この図において、上段から下段の整列はストレスの持続時間に相当する(9)。異なるシグナリング現象は、それらがプロアポトーシス(アポトーシス)または抗アポトーシス(生存)効果を細胞において有するのかに応じて左と右に分けられる。図の下段の天秤は、これらの2つの種類のシグナルの間の複雑なバランスを表す。ストレス反応の初期段階において、翻訳減衰が生じ、ERストレスの負荷が減る。次の段階において、遺伝子の幾つかの群がERストレスに長期間適応するために転写性で誘導される。ストレス誘導性の蛋白質の新たな合成は、一般的な減衰から逃れる。ERにおける未折り畳み蛋白質に対処するために、ERシャペロンが最初に誘導され、それらを再度折り畳み、この反応が不適当である場合、ER関連分解(ERAD)要素が次に誘導され、その未折り畳み蛋白質を排除する。ERの再建のために、多様な遺伝子、例えば、アミノ酸移入、グルタチオン生合成および酸化防御の遺伝子なども誘導される。免疫応答および抗アポトーシス効果の顕在化のためにNFκBが活性化される。他方、重度のERストレス条件が持続すると、CHOPの誘導およびc-Jun N末端キナーゼ(JNKキナーゼ)およびカスパーゼ12の活性を含むアポトーシスシグナリング経路が活性化される。生存とアポトーシスとの間の転心は、サバイバルシグナリングとアポトーシスシグナリングの間のバランスに依存し得る。
【0026】
図2は、ERストレスの3つの状態、即ち、ERストレスなし、低ERストレスおよび重度のERストレスを示す。本発明は低レベルのERストレスの状態にあるが、他の点では生存可能な細胞におけるアポトーシスを誘導しできる方法、化合物および組成物を記載する。提供される化合物は、そのような低ERストレスを有する細胞に「近づき」、細胞のシグナリングバランスを生存可能な状態から引き離しアポトーシスの方へ旋回する。提供される化合物の単純にERストレスを悪化する能力は、それらがプロアポトーシスを和らげる能力を示すだけであってさえ、ここの方法において使用することを可能にし、それはまたERストレスの状態には典型的には存在しない正常な細胞におけるアポトーシスを誘導することも最小化する。典型的な低ERストレス状態において、GRP78は、細胞において正常細胞におけるその産生の典型的に二倍よりも高いレベルで細胞において発現され、他方、CHOPの相対的なレベルは、アポトーシスを開始するためには十分ではない。しかしながら、本発明により提供される化合物および組成物の使用において、CHOPのレベルは対応するGRP78のレベルの保護効果を圧倒するのに十分なレベルに増加し、結果として重度のストレスの状態とアポトーシスの開始に導く。提供される化合物の本質において、ERストレスを開始して、何れかの細胞におけるアポトーシスを誘導することが可能であるというよりも、既に低ERストレスにある細胞のERストレスを悪化させることにより単純に「ラクダの背中を壊すストロー」として提供される。提供される化合物のこの重要な特徴が、そのような細胞におけるアポトーシスの誘導により利益を受けることが可能な、その病因が低ERストレスの状態にある細胞に関連する多様な状況のために良好に許容される強力な治療剤として提供されることを可能にする。この状況は、癌並びに多くの他の疾患などの多くの形態に存在する。
【0027】
ERストレス反応と癌治療
腫瘍増殖および生存に対するERストレスの妥当性が理解され始めたが、腫瘍治療の目的の他ためのその潜在的な活用に関しては全く殆ど知られていない。より重要なことには、ERストレス反応経路における攻撃点や生存治療法のための基礎を提供し得る化合物が未だに知られていない。
【0028】
例えば、ERストレス反応を引き起こす潜在的効果のあるモデルの1つは、筋形質/小胞体C
2+-ATPアーゼ(SERCA)、細胞基質のCa
2+を細胞外ER貯蔵区画に隔離する細胞内膜結合酵素の阻害である。SERCの阻害はCa
2+の細胞質への放出を導き、結果として重度のERストレスを引き起こし、アポトーシスを導く。SERCAの幾つかの阻害剤が記載されてきたが、これらの何れも癌治療のためのプロアポトーシス剤として使用されるための許容される治療学的プロフィールを有するものはない。例えば、最も強力なSERCA阻害剤である天然産物のタプシガルジンは、高い毒性とそのヒスタミン放出能のために治療剤としては適切ではない。
【0029】
SERCA阻害剤として見出されたもう一つの化合物は、抗炎症剤のセレコキシブ(celecoxib、セレブレックス、Celebrex(登録商標))であり、これはシクロオキシゲナーゼ2(COX-2、Dannenberg, AJ and Subbaramaiah, K, Cancer Cell 2003:4:431)の阻害剤である。しかしながら、COX-2阻害剤の長期間の使用は、潜在的に生命を脅かす心血管リスクに結びつき、その結果、薬物ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))の撤退に繋がる(Funk, CD and Fitzgerald, GA, Journal of Cardiovascular Pharmacology 2007; 50:470)。更に、COX-2阻害剤(コキシブ)および他のNSAIDの坑癌活性の基礎にある生化学的な機序は、プロスタグランジン合成における初期の段階を触媒するシクロオキゲナーゼ(COX)酵素の阻害を介するものである(10)。セレコキシブがコキシブとして知られるCOX-2特異的阻害剤の一員であるという事実は、その坑癌活性がCOX-2阻害にも関連するという可能性を公然とする。
【0030】
幾つかの最近の研究において、セレコキシブを含む種々のNSAIDでの培養細胞の処理は細胞内カルシウム([Ca
2+]
i)のレベルの上昇を生じ、その後、ERストレス反応の活性化が生じることを記載している(参考文献11 - 16)。これらの観察は部類としてのNSAIDがERストレス反応経路を介してアポトーシスを誘導でき得るという可能性を暗示するものであるが、この効果を引き出すために必要とされるNSAID濃度の高いレベル(0.1 から > 1.0 mmol/L)は、そのような不用意に大いに推測される結び付きを作る。これらの濃度で、COX-2阻害剤などのNSAIDの他の作用は恐らく支配され、それが、それらを高い特異性でアポトーシスを誘導するための手段として好ましくない候補にする。
【0031】
驚くべきことに、幾つかの報告において、セレコキシブは、COX-2の何れかの明らかな介入なしで強力な抗増殖およびポロアポトーシス効果をまだ発揮できるとが見出されている。これらの観察はセレコキシブが、癌性細胞におけるアポトーシスを引き起こすCOX-2とは独立した第二の標的を有し得ることが示唆される一方で、その基礎となる機序は理解されていなかった。
【0032】
本発明者は、この未知の機序を研究するための実験を試み、セレコキシブのCOX-2非依存性の抗腫瘍活性が実際はERストレス反応経路を介することを予想外に発見した。更に、インビトロおよびインビボの両方でERストレスを誘導する強力な活性を示すセレコキシブの構造類似体が存在することを見出した(実験およびデータを支持する例を参照されたい)。NSAIDは高濃度でERストレス反応を刺激し、プロサバイバルなGRP78とプロアポトーシスなCHOP蛋白質の両方の発現を引き起こすことが可能であることが知られているが、明らかに、セレコキシブの効果は、GRP78の保護的効果を圧倒するCHOPの発現の増加を引き起こす強力なERストレスを引き起こし、次にカスパーゼ-4を活性化し、細胞のアポトーシスに関係づけた。
【0033】
定義
ここで使用されるとき、「ERストレス」の語は、ERにおける蛋白質合成を傷害し得る種々の生理学的または病理学的な状態を一括していう。
【0034】
ここで使用されるとき、「SERCA」の語は、筋形質/小胞体C
2+-ATPアーゼの頭文字であり、これは高度に保存された蛋白質(アイソフォーム)の小さい系統群であり、その全てが同様の様式においてカルシウム膜貫通ポンプとして機能する。
【0035】
ここで使用されるとき、「COX-2」の語は、シクロオキシゲナーゼ-2をいい、プロスタグランジン-エンドペルオキシダーゼ2(プロスタグランジン G/H シンターゼおよびシクロオキゲナーゼ)としても知られる。
【0036】
ここで使用されるとき、「CHOP」の語はCCAAT/エンハンサー結合蛋白質相同転写因子をいい、また成長停止およびDNA障害誘導性遺伝子153(growth arrest and DNA damage-inducible gene 153、GADD153)とも称される。
【0037】
ここで使用されるとき、「ERストレス悪化剤」の語は、ERにおけるストレスを直接または間接的に誘導または悪化させることの可能な薬剤をいう。前記薬剤の構成は、これに特に限定されるものではないが、本来化学的または物理的であってもよい。典型的な物理的薬剤(物理的作用因子)は、温度、放射線および音響を含んでもよいが、これらに限定するものではない。典型的な化学的薬剤は、細胞シグナリング分子、細胞毒性剤、トキシンまたは他の代謝産物を含んでよいが、これに限定されるものではない。加えて、細胞美環境の特異的な条件、例えば、低酸素、低pH 、栄養素の欠乏などがERストレスを引き起こしてもよい。
【0038】
ここで使用するとき、「プロドラッグ」の語は、親分子は不活性または最小に活性である薬理学的物質(薬物)をいう。
【0039】
ここで使用されるとき、「相乗」または「相乗効果」の語は、結果として生じる薬理学的効果が個々に使用される薬物の活性と比べてその活性が二倍よりも大きな薬物の組み合わせをいう。
【0040】
ここで用いられるとき、用語、アルキル、アルコキシ、カルボニル等は これらの当業者によって一般的に理解されるように用いられる。
この明細書で用いられるとき、アルキル基は約20炭素を上回る、または1から16炭素を含む直鎖、分岐、環状 アルキル基を含むことができ、かつ直線または分岐である。ここでのアルキル基の例は、限定されないが、メチル, エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、およびイソヘキシルを含む。ここで用いられるとき、低アルキルは 約1または約2炭素から約6炭素を有する炭素鎖を指す。適切なアルキル基は飽和または不飽和であってもよい。更に、アルキルもまたC1-C15 アルキル、アリル、アレニル、アルケニル、C3-C7ヘテロ複素環 アリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、オキソチオ、アルコキシ、ホルミル、カルボキシ,カルビキシアミノ、ホスホリル、ホスホナート、ホスホアミド、スルホニル、アルキルスルホネートおよびスルホンアミドからなる群から選択される置換基で1つまたはそれ以上の炭素を1またはそれ以上の回数で置換されてもよい。また、アルキル基は10を上回るヘテロ原子、ある態様において1, 2, 3, 4, 5,6, 7, 8または9 ヘテロ原子置換基を含んでもよい。適切なヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄およびリンを含む。
ここで用いられるとき、「シクロアルキル」 は単または多環式環系、ある態様で3から10炭素原子、他の態様で3から6炭素原子を指す。シクロアルキル基の環系は融合、架橋、スピロ接続様式で互いに結合され得る1環または2以上の環で構成されてもよい。
ここで用いられるとき、「アリール」は3から16炭素原子を含む芳香族単環式または多環式基を指す。この明細書で用いるとき、アリール基は10を上回るヘテロ原子、ある態様において 1, 2, 3または 4ヘテロ原子を含み得るアリール基である。アリール基もまたアリール基または低アルキル基で1またはそれ以上の回数、ある態様において、1から3または4回任意に置換されてもよく、且つそれは他のアリールまたはシクロアルキルリングと融合されてもよい。適切なアリール基は、例えばフェニル、ナフチル、トリル、イミダゾリル、ピリジル、ピロイル、チエニル、ピリミジル、チアゾイルおよびフリル基を含む。
この明細書で用いられるとき、環は1またはそれ以上の窒素、酸素、硫黄またはリン原子を含み得る20原子を上回って有するように規定され、且つ環が水素, アルキル, アリル, アルケニル, アルキニル, アリール, ヘテロアリール, クロロ,ヨード, ブロモ, フルオロ, ヒドロキシ, アルコキシ, アリールオキシ, カルボキシ, アミノアルキルアミノ,ジアルキルアミノアシルアミノ, カルボキシアミノ, アイアノ,オキソ ,チオ, アルキルチオ, アリールチオ, アシルチオ, アルキルスルホネート, アリールスルホネート,ホスホリルホスホネート、ホスホアミドおよびスルホニルからなる群から選択される1またはそれ以上の置換基を有することができ、且つ更に環が炭素環式を含む1またはそれ以上の融合環、複素環式, アリールまたは ヘテロアリール環を含んでもよい。
ここで用いるとき、アルケニル および アルキニル 炭素鎖は、明記がない限り、2から20炭素または2から16炭素を含み、且つ直線または分岐である。2から20炭素のアルケニル炭素鎖はある態様において、1から8の二重結合を含み、且つ2から16炭素のアルケニル炭素鎖はある態様において1から5の二重結合を含む。2から20炭素のアルキニル炭素鎖はある態様において1から8の三重結合を含み、かつ2から16炭素のアルキニル炭素鎖はある態様において1から5の三重結合を含む。
ここで用いられるとき、「ヘテロアリール」はある態様において約5から約15要素の単環式または多環式芳香族環系を指し、ここで環系中の1つまたはそれ以上、ある態様において1から3の原子はヘテロ原子、すなわち限定されないが、窒素、酸素または硫黄を含む炭素以外の元素である。ヘテロアリール基はベンゼン環に任意に融合してもよい。ヘテロアリール 基は限定されないが、フリル、イミダゾリル、ピロリジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N−メチル、ピロリル、キノリニルおよびイソキノリニルを含む。
ここで用いるとき、「ヘテロ環式」はある態様において3から10要素、別の態様において4から7要素、更に他の態様において5から6の要素の、単または多環式非芳香族環系を指し、ここで環系中の1またはそれ以上、ある態様において1から3の原子はヘテロ原子、すなわち限定されないが窒素、酸素または硫黄を含む炭素以外の元素である。態様において、ヘテロ原子は窒素であり、窒素はアルキル, アルケニル, アルキニル, アリール, ヘテロアリール, アラルキル, ヘテロアラアルキル, シクロアルキル, ヘテロ複素環式、 シクロアルキルアルキル, ヘテロ複素環式アルキル, アシル, グアニジノ、で任意に置換され、または窒素は置換基が前記から選択されるアンモニウム基を形成するために四級化されてもよい。
本発明の代表的な態様
1.アポトーシスを誘引するために細胞のERにおいてストレスを誘導または悪化する方法
第一の側面において、本発明は、アポトーシスを引き起こす細胞の小胞体(ER)におけるストレスを誘導または悪化する方法を提供する。
【0041】
前述の通り、本発明の側面に従う方法は、十分な強度および持続時間についてERを誘導または悪化することにより、CHOPの上昇された発現のプロアポトーシス効果がGRP78の保護効果に打ち勝ち、カスパーゼ、例えば、カスパーゼ4および/またはカスパーゼ7などの活性化を導き、それにより細胞をアポトーシスに至らしめることを発見したことに基づく。それはまた、他の非標的細胞における副作用の併発を引き起こすことなく、選択された細胞において特異的にERストレスを誘導または悪化できる薬剤が存在することを発見したことに基づく。
【0042】
特に、本発明の側面に従う好ましい態様は、一般的に、1)COX-2活性を阻害することなく、細胞において選択的にSERCAを阻害すること;および2)前記細胞においてCHOPの発現を増加することの工程を含み、前記SERCA活性の阻害とCHOP発現の増加の組み合わせが、結果として当該細胞におけるアポトーシスの開始のために適好な条件を生じる。
【0043】
SERCAの阻害を介するERストレスの悪化が、当該分野において公知の何れかの適切な薬剤、またはSERCAを阻害し且つアポトーシスを誘導するために開発される将来同定される薬剤で達成されることが構想される。
【0044】
好ましくは、当該薬剤の特異性は、COX-2活性を阻害せず、またはヒスタミンの放出を引き起こさない薬剤である。
【0045】
好ましい態様において、選択的なSERCA活性の阻害は、細胞質カルシウム濃度を上昇するために十分な持続期間に亘り、直接的または間接的にSERCAを選択的に阻害することが可能なERストレス悪化剤の薬学的に有効な量を投与することにより達成される。子の態様において、CHOP発現の発現の増加は、悪化されたERストレスの結果として共作用であってもよく、CHOP発現エンハンサー/インデューサーにより特異的に誘導されてもよい。
【0046】
典型的なCHOP発現エンハンサー/インデューサーは、プラスミドに基づく構造物のトランスフェクションまたはウイルス性の発現構造物での感染を含んでもよいが、これらに限定するものではない。
【0047】
1.1 ERストレス悪化剤が化合物または薬学的組成物である態様
幾つかの好ましい態様において、ERストレス悪化剤が化合物または当該化合物を含む薬学的組成物であり、当該化合物は一般式;
【化2】
【0048】
ここにおいて、
R
1 はメチル, フルオロメチル, ジフルオロメチル, トリフルオロメチル, アルキル, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルであり;
R
2は水素, フルオロ, クロロ, ブロモ; フルオロメチル, ジフルオロメチル, トリフルオロメチル, アルキル, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルであり;
R
3 - R
7 はare independently selected from a group consisting of: 水素, フルオロ, クロロ, ブロモ, アロキシ, アルキル, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキル, or カルボキシアルキル, アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立して選択され;
R
8 - R
11 are independently selected from a group consisting of: 水素, フルオロ, クロロ, ブロモ; フルオロメチル, ジフルオロメチル, トリフルオロメチル, アルキル, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキル, カルボキシアルキル, アルケニル, アルキニル, シクロアルキル, 複素環式, アリール, or ヘテロアリール; および
R
12は水素, アセチル, アシル, アルキル, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキル, カルボキシアルキル; アミノアシル, アミノアルキル, シクロアルキル, 複素環式, アリールまたはヘテロアリールである;
を有するものである。
【0049】
幾つかの好ましい態様において、R
1 はトリフルオロメチルである。
【0050】
他の好ましい態様において、R
2, R
8-R
12 は 水素または R
4, R
5および R
7は水素である。1つの態様において、R
1 はトリフルオロメチルであり、およびR
2, R
4, R
5, R
7-R
12は全て水素である。
【0051】
他の好ましい態様において、悪化剤は4-[5-(2,5-ジメチルフェニル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミド, 4-[5-(2,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミド, 4-[5-(2,5-ジブロモフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル] ベンゼンスルホンアミド, またはその類似体である。
【0052】
CF3基などの少なくとも1つのフッ素含有官能基を含む化合物については、適用される化合物は、磁気共鳴(magnetic resonance)を使用することにより、それらのインビボ作動のモニタリングおよび画像化が可能である。これは、脳癌などの治療が困難であり、且つモニターすることが困難な疾患のために非常に価値のある特徴である。
【0053】
1.2 悪化剤がプロドラッグである態様
上述の通り、本発明はまた、直接的または間接的の何れかでSERCAを阻害し、それによりERストレスを悪化するそれらの態様を含む。1つの典型的な態様において、悪化剤は、代謝または他の変換手段を介してSERCAを阻害できる活性な化合物に変換され得るプロドラッグである。例えば、悪化剤が組換え分子であるこれらの態様において、トランスロケーションペプチドが付着して、薬物を膜を横切って転位置することが可能である。他の態様において、提供される化合物は、代謝性の酸化、蛋白質分解性の切断または加水分解において、提供された化合物をER悪化剤に変換する官能基を含む。当業者は、そのような官能基が、これに限定するものではないが、メチル基またはアルキル基、エステル基、カルボネート基、アミド基、ペプチドまたはそれらの環式または高分子誘導体を含む。
【0054】
1.3 悪化剤の組み合わせを使用する態様
本発明の幾つかの態様に従う方法は、更なる1または1以上のERストレス悪化剤を適用する工程を更に含んでもよい。好ましくは、この更なる1または1以上のERストレス悪化剤は、異なるストレス誘導機序を介して作用する。
【0055】
本発明のもう一つの予期しない発見は、ERストレスを悪化する異なる戦略が組み合わせにおいて使用される場合に、相乗効果が達成されることである。
【0056】
例えば、1つの態様において、薬物ボルテゾミブ(bortezomib、これはプロテアソーム26Sの阻害を介してアポトーシスを阻害する)をセレコキシブと共に使用する場合、ERストレスのレベルは上昇し、アポトーシスの速度は顕著に増加する(例2を参照されたい)。従って、表1に列記された何れかのアポトーシス誘導戦略は本発明の戦略(即ち、ERストレスの悪化を介してアポトーシスを誘導する)と有利に組み合わせることが可能であることが構想される。
【0057】
幾つかの好ましい態様において、COX-2を阻害することなく、またはヒスタミン放出を引き起こすことなく、SERCAを選択的に阻害することが可能な第一のERストレス悪化剤は、ERにおける誤って折り畳まれたまたは障害された蛋白質の濃度を増加することが可能な第二のERストレス悪化剤と組み合わせてよい。第二のERストレス悪化剤として使用するために適切な典型的な薬剤は、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(bortezomib)またはその類似体など)、またはプロテアーゼ阻害剤(例えば、ネルフィナビル(nelfinavir)、アタザナビル(atazanavir)、ホサムプレナビル(fosamprenavir)、リトナビル(ritonavir)、インジナビル(indinavir)またはその類似体)を含んでよい。
【0058】
1.4 アポトーシスエンハンサーを使用する態様
本発明の幾つかの更なる態様において、ERストレス悪化剤は、更に細胞に対してアポトーシスエンハンサーを適用することにより補助されてもよい。本発明と関連して、アポトーシスエンハンサーはアポトーシスの誘導に対する関連においてERストレスの効果を増幅するものである。好ましい、アポトーシスエンハンサーはCHOPの発現を上方制御すること、GRP78の保護効果を克服すること、およびカスパーゼ4および/またはカスパーゼ7などのカスパーゼを活性することが可能な化学的または物理的薬剤(物理的作用因子)である。典型的なアポトーシスエンハンサーは、GRP78のためのsiRNAまたはGRP78機能の阻害剤を含んでよいが、これらに限定するものではない。加えて、アポトーシスエンハンサーはまた、合成化合物または天然化合物であってもよく、これらに限定するものではないが、Bcl-2ファミリー、例えば、ABT-737などの抗アポトーシス蛋白質の活性化を阻害するBH3-ミメティックを含む。
【0059】
2.ERストレス悪化剤として有用な化合物をスクリーニング、選択または設計するための方法
第二の側面において、本発明は、細胞においてアポトーシスを引き起こすために細胞におけるERストレスを誘導または悪化するために有用な化合物をスクリーニング、選択および設計する方法を提供する。
【0060】
本発明のこの側面に従う態様は、一般的な工程の1)試験化合物について情報を得ること;2)試験化合物がSERCAの阻害剤であり、且つCOX-2の阻害剤ではない場合に、その試験化合物を潜在的なERストレス剤として同定すること;を有する。好ましくは、本発明の化合物はまた、ヒスタミンの放出を引き起こさない。当該得ることの工程において、得られるべき試験化合物についての情報は、当該化合物のSERCA阻害活性、当該化合物のCOX-2阻害活性、および当該化合物のヒスタミン放出活性を含んでよい。
【0061】
細胞におけるERストレスの証明は、正常組織におけるGRP78レベルよりも2倍高いレベルで生じるGRP78の高いレベルの存在により測定される。GRP78のレベルは、当業者によって、一般的な技術、例えば、例において記載される技術などを使用して測定され得る。
【0062】
試験化合物の供給源は、当該分野で公知の何れかの一般的な供給源に由来してよく、商業的な化学メーカー、組み合わせ化学により作成された化学的ライブラリー、または公知のSERCAの修飾された類似体を含むが、これに限定されるものではない。
【0063】
試験化合物についての所望の情報が既に公知ではない、または別な方法で入手不可能である場合、情報を得ることの工程は、試験化合物を特徴づけるためのアッセイを行うことを含んでもよい。そのような場合、当該技術分野において公知の何れかの一般的なアッセイが使用されてもよく、化学的アッセイおよび細胞に基づくアッセイを含むが、これらに限定するものではない。好ましくは、選択されるアッセイは、他の試験化合物に対して容易に比較可能な定量化可能な結果を生ずるべきである。
【0064】
新規化合物のスクリーニングは試行錯誤を必要とするため、試験化合物から情報を得ること、試験化合物から見込みのある候補化合物を同定することの工程が各試験化合物について繰り返される。
【0065】
幾つかの好ましい態様において、多くの試験化合物が使用され、得ること、同定すること、および繰り返すことの工程がハイスループット形態において実行される。ハイスループット薬物スクリーニグの一般的な原理は当該技術分野において周知である(最近の概説として、Walters et al., Nat Rev Drug Discov. 2003 Apr;2(4):259-66を参照されたく、参照することによりその内容はここに組み込まれる)。
【0066】
存在する化学供給源をスクリーニングすることに加えて、一旦十分な数の化合物が試験されて同定された場合、コンピュータによる解析が、ERストレス悪化剤として使用するために適切な新たな候補化合物を更に最適化する、または生成するために使用されてもよい。何れかの一般的な公知のコンピューター薬物発見方法は、有利にこの課題のために適合されてよい。好ましくは、リガンドに基づく方法論が使用される。(リガンドに基づく薬物設計における最近の概要は、Bacilieri et al., Current Drug Discovery Technologies, Volume 3, Number 3, September 2006 , pp. 155-165(11)を参照されたい。その内容は参照することによりここに組み込まれる)。
【0067】
好ましい態様において、定量的な構造活性相関(QSAR)分析が実行される(ハイスループットスクリーニグを用いるコンピュータ方法論の適応および取り込みにおける概要は、 Davies et al., Curr Opin Chem Biol. 2006 Aug;10(4):343-51. Epub 2006 Jul 5を参照されたい。その内容は参照によりここに組み込まれる)。
【0068】
3.ERストレス悪化剤として有用な化合物
第3側面において、本発明は一般式;
【化3】
【0069】
ここで、
R
1 はメチル, フルオロメチル, ジフルオロメチル, トリフルオロメチル, アルキル, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキル, またはカルボキシアルキルである;
R
2は水素, フルオロ, クロロ, ブロモ; フルオロメチル, ジフルオロメチル, トリフルオロメチル, アルキル, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキル, または カルボキシアルキルである;
R
3 - R
7 は水素, フルオロ, クロロ, ブロモ, アロキシ, アルキル, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキル,または カルボキシアルキル, アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立して選択される;
R
8 - R
11 は、水素, フルオロ, クロロ, ブロモ; フルオロメチル, ジフルオロメチル, トリフルオロメチル, アルキル, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキル, カルボキシアルキル, アルケニル, アルキニル, シクロアルキル, 複素環式, アリールまたはヘテロアリールからなる群より独立して選択され; および
R
12は水素, アセチル, アシル, アルキル, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキル, カルボキシアルキル; アミノアシル, アミノアルキル, シクロアルキル, 複素環式, アリールまたはヘテロアリールである;
を有する、ERストレス悪化剤として有用な化合物をまた提供する。
【0070】
好ましい態様は、化合物、ここでR
1 は トリフルオロメチルである化合物であり、一方他の好ましい態様は、化合物、ここでR
2, R
8 および R
9は水素である化合物であり、または、化合物、ここでR
4, R
5, および R
7 は水素である化合物、同様に化合物、ここでR
1 はトリフルオロメチル, および R
2, R
4, R
5, R
7, R
8 およびR
9 は 水素である化合物である。
【0071】
他の好ましい態様は、化合物、ここでR
3 およびR
6 は水素, フルオロ, クロロ, ブロモ; フルオロメチル, ジフルオロメチル, トリフルオロメチル, アルキル, アリール, ヘテロアリール, フルオロアルキル, ジフルオロアルキル, トリフルオロアルキル, ポリフルオロアルキル, ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルからなる群から選択される化合物である。好ましい態様の例は、4-[5-(2,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル] ベンゼンスルホンアミドおよび 4-[5-(2,5-ジブロモフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル] ベンゼンスルホンアミドのような4-[5-(2,5-ジメチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミドの構造類似体である化合物である。
【0072】
図19に示す通り、本発明に係る2つの典型的な化合物はDMC に比べて驚くべき強力な細胞死滅効果を示している。図において、DMCは4-[5-(2,5-ジメチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル] ベンゼンスルホンアミドを表し; DBrCは 4-[5-(2,5-ジブロモフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル] ベンゼンスルホンアミドを表し;および DTF3Cは 4-[5-(2,5-ジトリフルオロメチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル] ベンゼンスルホンアミドを表す。
【0073】
別の好ましい態様において、化合物はSERCA阻害剤として振る舞うことができるERストレス悪化剤にインビボで転換できるプロドラッグ化合物である。当業者は、一般構造:
【化4】
【0074】
を有する前記化合物を理解できるであろう。
【0075】
ここで、R
1-R
12の少なくとも1つの基は、上述で示したリンカー基から選択される側鎖を有する。
【0076】
4.ERストレス悪化剤として有用な薬学的組成物
前述の通り、本発明はまた、細胞においてアポトーシスを引き起こすために細胞におけるERストレスを誘導または悪化するために有用な薬学的組成物を提供する。本発明の態様は、一般的にERストレス悪化剤と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0077】
上述した何れかの化学を基礎とするERストレス悪化剤は、活性成分の投与を容易にするために適切に製剤化されてよい。好ましい態様において、ERストレス悪化剤は、第一の側面においても記載された一般式を有する化合物またはその薬学的に安定な塩である。
【0078】
担体として、選択された活性成分に適合性の何れの一般的に公知の担体が適切に使用されてよい。好ましくは、担体は経口用製剤のために適切なものである。
【0079】
5.治療方法
第5の側面において、本発明はまた、選択された病的な細胞においてERストレスを誘導または悪化して当該細胞においてアポトーシスを引き起こすことにより患者における病的な状態を治療する方法を提供する。
【0080】
本発明のこの側面に従う態様は、一般的に、上記の本発明の第4の側面に従う薬学的組成物の薬学的に有効な量を投与する工程を含む。本発明の第1の側面に記載される態様に従うEFストレスを誘導または悪化する何れかの方法のが本発明の治療方法に適切に適応されてよい。
【0081】
好ましい態様において、病的な細胞は薬学的組成物の投与に先駆けてERストレスの状態にある。
【0082】
ここに記載される治療方法は、寄与する機序としてアポトーシスの非調節を含む病態にある疾患であろうとなかろうと、疾患を形成する全てに対して適用可能である一般的な方法である。好ましい態様において、癌は、本発明の治療方法のための好ましい疾患である。適用可能であり得る典型的な癌は、多発性グリオブラストーマ、乳癌、膵臓癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、前立腺癌、直腸癌、転移性乳癌、再発性癌、および薬物耐性癌を含むが、これらに限定されるものではない。
【0083】
本発明のもう一つの態様は、浸潤、脈管形性および血管新生を阻害することによる化学療法耐性腫瘍の治療を含む。化学療法耐性腫瘍細胞において、癌脈管構造は、テモゾロミド(Temozolomide (TMZ))、これは多発性グリオブラストーマ(GBM)の治療のために非常に一般的に使用される薬剤であるが、これを含む多くの治療薬剤に対して反応性でない。腫瘍脈管は、栄養物、酸素、並びに腫瘍増殖のための環境を提供する。そのためにこれらの細胞を破壊する薬剤が残留または再発性の腫瘍の治療において非常に有用である。
【0084】
更なるもう一つの態様において、本発明は、壊死に近い癌の縁(the perinecrotic rim of cancers)を治療する方法であって、ERストレス反応の単独での調節を介してアポトーシスを誘導すること、または慣習的な化学療法との組み合わせにおいてアポトーシスを誘導することを含む。より好ましくは、本発明は、化学療法に対して良好に反応しない特定の難治性の癌、例えば、多発性グリオブラストーマ(GBM)などの治療のために使用できる。多くの癌は、それらの血液供給を成長させ、その成り行きは壊死性の癌の発生である。「壊死性の縁(necrotic rim)」で癌細胞は、通常、低酸素、低pHおよび低グルコースの有害な環境に晒された静止細胞である。このストレスの多い環境の結果として、これらの細胞は高レベルのESRを有する。これらの劣悪な環境において成長するために、高い抵抗レベルのGRP78が生存のために発現される。これらの壊死に近い癌細胞は、特に、典型的に迅速に増殖する細胞を標的とする化学療法または放射線療法による治療に対して抵抗性である。
【0085】
本発明は、慣習的な化学療法を受け入れられない脳腫瘍の治療のための独特な利益を提供する。血液脳関門は、血液腫瘍接触面では一般的にインタクトではないが、腫瘍に対する化学療法の自由な接近をなおも妨害する。更に、伝統的な細胞障害性の化学療法は、迅速に増殖する癌細胞を標的とする。しかしながら、GBMは、本質的に異質である。病理学的に、GBMは壊死性癌、壊死に近い癌の縁、および血管新生化された周辺部により特徴づけられる。この壊死に近い癌の縁は、グリオブラストーマにおける病理標本において見られる疑似柵状(pseudopalisades)として病理学的には記載されてきた(Brat DJ, etal, Cancer Res 2004, 64: 920-7)。化学療法および放射線療法は、正常な脳と腫瘍組織の接触面において良好に血管新生化されて増幅している腫瘍細胞を慣例では標的とする。対照的に、癌腫瘍の壊死に近い癌の縁における悪性細胞は、活性化されるべき可能性を伴っているより少ない増殖を生じ、および静止が維持される。一旦、増殖している腫瘍細胞が化学療法または放射線により死滅されると、壊死周辺の地域において停止状態のグリオブラストーマ細胞が再度成長且つ浸潤し、その工程を繰り返す。この休眠細胞の活性化の機序は、熱帯雨林の木々の成長の概念と非常によく似ている。熱帯雨林には非常に高い木々がある。仮により高い(良好に血管新生化された腫瘍領域に類似する)が切り倒されると、より低い木々が(コロニー周辺領域の細胞に類似する)が日光の大部分を新たに受けた場合に成長する。最終的には、正常な脳への多くの浸潤を伴うGBMが再発する結果となる。壊死周辺領域におけるグリオブラストーマ細胞は以前から特徴づけられている。それらは、壊死周辺領域に存在する低酸素の緊張に対する反応において高いレベルの蛋白質と血管新生因子を分泌する。良好に血管新生化された周辺において、壊死周辺細胞は、グリオブラストーマ細胞よりも顕著に少なく増殖し、且つより多くの細胞死を呈する。更に、これらの腫瘍細胞は、高い遊走と特定の酵素の高い分泌を示す(Brat DJ, et al., Cancer Res 2004, 64: 920-7, この全体の内容は参照することによりここに組み込まれる)。
【0086】
本発明の一般的に記載されるように、更なる理解は、ここで例示のみの目的で提供されるある特定の例を参照することにより得られるが、他に特記されない限り、これらに限定されることは意図されない。
【0087】
例
例1:2,5-ジメチル-セレコキシブ(ジメチル-セレコキシブ(DMC))、セレコキシブの非コキシブ類似体により誘導される腫瘍細胞死の主要な成分としてのカルシウム活性化ERストレス
[材料および方法]
[材料]
セレコキシブは4-[5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミドである(24)。DMCは、近い構造類似体であり、その5-アリール部分が moiety has been altered by replacing 4-メチルフェニルが2,5-ジメチルフェニルでの置換により変わり、結果として4-[5-(2,5-ジメチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミド(20, 19)を生じたものである。両化合物は以前発行された手順に従って我々の実験室で合成された(参考文献24をセレコキシブについて、および参考文献19をDMCについて参照されたい)。各薬物をDMSOに100 mmol/L (ストック溶液)に溶解した。ヴァルデコキシブ(valdecoxib (25))およびロフェコキシブ(rofecoxib (26))については、ベキストラ(Bextra (Pfizer, New York, NY))およびヴィオック((Merck, Whitehouse Station, NJ))の商業的なキャプレッツをそれぞれをH2Oに懸濁し、賦形剤を崩壊し、その活性成分を25mmol/LでDMSOに溶解した。加えて、われわれは、確立された手順に従って、我々の実験室において合成した純粋なロフェコキシブ末を使用した(27)。全ての伝統的なNSAIDをシグマから粉末化形態でシグマ(St. Louis, MO)から入手し、100mmol/LでDMSOに溶解した。タプシガルジンおよびBAPTA-AMをシグマから入手し、DMSOに溶解した。全ての薬物を、溶媒(DMSO)の最終濃度が<0.5%に維持される方法で細胞培養用培地に添加した。
【0088】
[細胞株および培養条件]
殆どの細胞株はthe American Type Culture Collection (Manassas, VA)から入手し、10% ウシ胎児血清, 100 units/mL ペニシリン, および 0.1 mg/mL ストレプトマイシンを補ったDMEMまたはRPMI 1640 (Life Technologies, Grand Island, NY)にで、37℃で5%CO
2雰囲気で加湿インキュベータ内で培養した。グリオブラストーマ細胞株U251およびLN229はFrank B. Furnari and Webster K. Cavenee (Ludwig Institute of Cancer Research, La Jolla, CA)から提供された。
【0089】
[イムノブロットおよび抗体]
総細胞溶解物をラジオ免疫沈澱アッセイ用緩衝液で細胞を溶解することにより調製し(28)、蛋白質濃度を二シンコニン酸蛋白質アッセイ試薬(Pierce, Rockford, IL)を使用して測定した。ウェスタンブロットアッセイについては、50 Agの各サンプルを記載される通りに処理した(29)。一次抗体はCell Signaling Technologies (Beverly, MA), Cayman Chemical (Ann Arbor, MI), またはSanta Cruz Biotechnology, Inc. (Santa Cruz, CA)から入手し、製造者の推奨に従って使用した。二次抗体は西洋ワサビペルオキシダーゼと組み合わせて、the SuperSignal West substrate from Pierce を用いた化学発光により検出した。全てのイムノブロットを結果を確認するために少なくとも1度繰り返した。
【0090】
[免疫組織化学]
腫瘍組織における蛋白質発現の免疫組織化学的な分析をベクタステインアビジン-ビオチン複合体法キット(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を使用して製造者の推奨に従って行った。この手順はビオチン標識した二次抗体と予備形成したアビジン:ビオチン化酵素複合体を使用した。アビジン-ビオチン複合体法技術と呼ばれる。一次抗体として、我々は抗CHOP抗体(Santa Cruz Biotechnology)を1:100で2%の正常ヤギブロッキング血清に希釈した。
【0091】
[アポトーシス測定]
腫瘍区画におけるアポトーシスを末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介dUTPニック末端標識アッセイ(terminal deoxynucleotidyl transferase-mediated dUTP nick end labeling assay、(30))の使用により定量的に測定した。この手順のための全ての成分は、the ApopTag In situ Apoptosis Detection kit (Chemicon, Temecula, CA)からのものであり、これを製造者の説明書に従い使用した。
【0092】
インビトロでの細胞培養物におけるアポトーシスは、細胞死検出ELISAキット(Cell Death Detection ELISA kit (Roche Diagnostics, Indianapolis, IN))を使用して製造者の説明書に従い測定した。このイムノアッセイはモノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソームのヒストン領域(H1, H2A, H2B, H3, および H4)を特異的に検出する。96穴プレートに1穴当たり1,000細胞で播種し、405nmでマイクロプレートオートリーダー(Model EL 311SX; Bio-Tek Instruments, Inc.,Winooski, VT)において判定した。
【0093】
[コロニー形成アッセイ]
小型干渉RNA(siRNA)のトランスフェクションの24時間後、細胞を6穴プレートに1穴当たり200細胞で播種した。細胞の付着が完了した後、細胞を48時間の薬物処理に暴露した。その後、薬物を除去し、新鮮な増殖培地を添加し、細胞を12〜14日間に亘り妨害をせずに培養し、その間、生存細胞は増殖細胞のコロニーを形成した。コロニーは、4時間の1%メチレンブルー(メタノール中)で染色することにより可視化して、次にカウントした。
【0094】
[SiRNAでのトランスフェクション]
細胞を6穴プレートにおいてLipofectAMINE 2000 (Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて製造者の説明書に従ってトランスフェクションした。異なるsiRNAをサザンカリフォルニア大学のミクロケミカル・コア・ラボラトリー(the microchemical core laboratory of the University of Southern California/K. Norris Jr. Comprehensive Cancer Center)で合成し、それらの配列は以下の通りである;
緑色蛍光蛋白質を標的とするsiRNA (si-GFP);
5’-CAAGCUGACCCUGAAGUUCTT-3’ (センス)、および5’-GAACUUCAGGGUCAGCUUGTT-3’ (アンチセンス);
si-GRP78
5’-GGAGCGCAUUGAUACUAGATT-3’ (センス)、および
5’-UCUAGUAUCAAUGCGCUCCTT-3’ (アンチセンス);並びに
si-カスパーゼ-4;
5’-AAGUGGCCUCUUCACAGUCAUTT-3’ (センス)、および5’-AAAUGACUGUGAAGAGGCCACTT-3’ (アンチセンス)。
【0095】
[細胞質内のカルシウムイメージング]
細胞を4 Amol/L Fura-2/AM (Invitrogen)と共に30分間室温で138 mmol/L NaCl, 5.6 mmol/L KCl, 1.2 mmol/L MgCl
2, 2.6 mmol/L CaCl
2, 10 mmol/L HEPESおよび 4 mmol/L グルコース (pH 7.4)を含む外部溶液中でインキュベートすることによりロードした。ロード後、細胞を洗浄し、画像処理用の固定のために移した。細胞を個々の薬物で10秒間処理し、他方では、ポリクロメータV(Polychromator V (TILL Photonics GmbH, Grafelfing, Germany))を使用して350と380nmの間で交互の励起波長蛍光で励起し、ツァイス・フルア40
Γ オイル対物レンズ(Zeiss Fluar 40γ oil objective (Carl Zeiss, Jena, Germany))を有するツァイス・アクシオバート100顕微鏡(Zeiss Axiovert 100 microscope)を介して照明を提供した。画像は、メタフルオ・ソフトウェア(MetaFluor software (Molecular Devices, Sunnyvale, CA))で制御されたカスケード512B CCDカメラ(Cascade 512B CCD camera (Photometrics, Tucson, AZ))を使用して0.5Hzの入手頻度で捕捉した。350と380nmの励起で得られた画像の比を、Grynkiewicz et al. (31)により開発された原理に従って細胞質カルシウム濃度の変化を示すために使用した。
【0096】
[ヌードマウスの薬物処理]
4から6種齢の雄性無胸腺症 nu/nu マウスをHarlan (Indianapolis, IN)から入手し、皮下注射で5 × 10
5 U87グリオブラストーマ細胞を他の詳細な記載(32)の通りに移植した。数週間の間の持続的な薬物処理の間の腫瘍増殖を測定するために、DMCまたはロフェコキシブを毎日固形飼料(150 mg/kg のDMC; 40 mg/kg のロフェコキシブ)に混合し、記載(32)の通りに腫瘍増殖をモニタリングし、記録した。インビボでのCHOP発現と細胞死における薬物の短期間の影響を分析し、且つ血漿および腫瘍組織における薬物濃度を決定するために、腫瘍を有する動物を1日当たり30, 90, 150, or 180 mg/kgの薬物を50時間処理した;ステンレススチールのバルヘッド栄養管(a stainless steel ballhead feeding needle (Popper and Sons, Inc., New Hyde Park, NY))で胃内への直接投与を介して12時間毎にそれぞれの薬物の一日用量の半分を各動物に与えた。全ての動物を薬物の最終適用後2時間で屠蓄し、腫瘍および血液を分析のために回収した。全ての実験において、動物は体重、飼料消費および毒性の臨床サインを厳密にモニターした;薬物処理なしのコントロール動物と薬物処理動物の間に差は検出されなかった。
【0097】
[液体クロマトグラフィマススペクトルアッセイのための血漿の抽出]
血液は、ヌードマウスの心臓穿刺によりヘパリン処理シリンジに採取した。血液は30分間室温で放置し、続いて2,000rpmで5分間4℃で遠心した。血漿を細胞から分離し、新しい試験管に移した。標準参照を確立するために、25μLの1.0 μg/mL DMCまたはセレコキシブを未処理コントロール動物からの50μL血漿に対して添加した。試験サンプルについては、同量のDMCを、セレコキシブで処理した動物からの血漿に対して内部標準として添加し、他方で同量のセレコキシブを内部標準としてDMCで処理した動物からの血漿に対して添加した。徹底的なボルテックスの後、血漿蛋白質を425μLのアセトニトリルを使用して沈殿し、1分間ボルテックスした。全体の混合物を4,500rpmで5分間遠心し、蛋白沈殿物を分離し、400μLの上清を新しい試験管に移した。サンプルを空気の定常流を用いて蒸発し、乾燥させた残渣を、80:20 (v/v)のメタノール:10 mmol/L 酢酸アンモニウム (pH 4.5)からなる150μLの移動相を用いて再構成した。何れの未溶解の沈殿物を除去するために、サンプルを再度4,500rpmで5分間遠心し、上清を新しい試験管に移した。10ミリリットルの各サンプルを2つ組で液体クロマトグラフィ質量分析により分析した。
【0098】
各サンプルの薬物量を測定するために、アジレント1100高圧液体クロマトグラフィ系(Agilent 1100 high-pressure liquid chromatography system (Agilent Technologies, Santa Clara, CA))をサイエックスAPI3000トリプルク・アドラプル・タンデム・マス・スペクトロメーター(Sciex API 3000 triple quadruple tandem mass spectrometer (Applied Biosystems, Foster City, CA))と組み合わせて使用した。検体を分離するために、サーモ・ハイピュリティ18カラム(Thermo HyPURITY C18 column (50 × 4.6 mm, 3 micron; Thermo Fisher Scientific, Inc., Waltham, MA))を使用した。移動相は、80:20 (v/v)のメタノール:10 mmol/L 酢酸アンモニウム(pH 4.5)からなった。検体の分離のための流速は、350μL/分であり、保持時間はDMCおよびセレコキシブについてそれぞれ3.50と3.10分であった。検体を次にサイエックスAPI3000に導入し、これをネガティブイオンモードに設定した。DMCおよびセレコキシブのレベルは、それぞれトランジションイオン394.0 → 330.2 および 380.0 → 316.2を使用した。このアッセイの定量化のより低いレベルは5ng/mLで確立された。
【0099】
[結果]
DMCはセレコキシブの近い構造類似体であり、COX-2の阻害能を欠く。この化合物がESR誘導をできるか否かを試験するために、我々は種々の細胞株をDMCで、同時にセレコキシブで処理し、CHOP蛋白質の発現レベルを測定した。CHOPはESRのプロアポトーシス要素であり、ERストレス後の細胞死の開始に極めて関係する;そのため、我々はそれを良好に確立されたESRの指標として、実験系において使用した。
図3に示す通り、DMCおよびセレコキシブ共にグリオブラストーマ、乳癌、膵臓癌、バーキットリンパ腫、および多発性骨髄腫株において強力にCHOPを誘導できた。このように、両薬物はESRを刺激するようであり、それに対してセレコキシブは若干グリオブラストーマおよびバーキットリンパ腫細胞株においてDMCよりも弱い能力であるように見えた。
【0100】
DMC処理後のESRの程度を評価するために、我々は、ESRの更なる指標を分析し、筋形質/ER Ca
2-ATPアーゼの阻害剤であり、度々ESRの強力なモデルインデューサーとして使用されるタプシガルジンの使用で得られた結果をその効果を比較した。細胞をDMCまたはタプシガルジンの何れかで多様な時間に亘り並行して処理し、CHOP、GRP78およびカスパーゼ4、これはESR特異的カスパーゼである、の発現レベルを分析した。
図4は、DMCとタプシガルジンが3つの選択されたESR指標を同じ様式で刺激したことを示す。CHOPおよびGRP78の慮両方は実質的に上昇し、顕著な増加は6時間の時点とその後において記録された。カスパーゼ4の活性は、この酵素の切断された(活性化された)形態の出現により示され、薬物処理の24時間まで最初に記録され、更に遅い時点(36時間)まで持続した。従って、ESRの刺激はDMCおよびモデルインデューサーであるタプシガルジンの間で顕著に同等であり、これはDMCの効果がこの状況において極めて強力であることを示唆する。
【0101】
ESRの突出した特長は、GRP78などのERストレス蛋白質の選択的な増加した翻訳との組み合わせにおいて、全体の蛋白質合成の普遍的なで一過性の下方制御にある(33、34)。我々はそのため、DMCとセレコキシブが細胞翻訳の改善をするか否かを新たな翻訳蛋白質に35Sメチオニンの組み入れを測定することにより研究した。
図5に示す通り、両薬剤は、濃度依存性に選択的に翻訳率を減少し、DMCは注目すべきことにより強力であった。処理の時間で、60 μmol/L DMC と80 μmol/L セレコキシブは、タプシガルジンと同等に効果的であっり、強力な翻訳阻害剤であるシクロヘキシミドと殆ど同等に有効であり、進行中の翻訳の〜90%を減少した。阻害効果は一過性であり、DMCまたはセレコキシブの継続した存在にも拘わらず、細胞が制限されないまでに回復し、完全な活性蛋白合成は18時間までに回復した(
図5; セレコキシブについてはデータを示さず)。加えて、GRP78の大きな翻訳の増加がDMCおよびセレコキシブ処理細胞において検出された (
図5; セレコキシブについてはデータを示さず)。ひとまとめにして考えると、これらの結果は、DMCおよびセレコキシブが薬物処理細胞において典型的なESRの特徴を引き起こしたことを示す。
【0102】
DMC/セレコキシブと、ERからカルシウムを漏出し且つ細胞質におけるカルシウムを急増加することが知られるタプシガルジンとの効果の間の顕著な類似性のため、我々は次に、DMCと幾つかのコキシブとNSAIDを比較してそのような反応も誘導するのか否かを測定した。この目的のために、細胞にFura-2/AMをロードし、100 μmol/Lの各薬物に暴露し、細胞質カルシウム濃度の増加を測定した。
図6に示される通り、DMCおよびセレコキシブは著しいカルシウム急増加を引き起こし、各処理細胞の全てに見られた。これに対してコキシブ(ロフェコキシブおよびバルデコキシブ(valdecoxib))または伝統的なNSAID(フルロビプロフェン、インドメタシンおよびスリンダック(sulindac))は細胞質カルシウムレベルの上昇を引き出さなかった。従って、DMCおよびセレコキシブは、タプシガルジンのこの側面に独自に類似するようであり、これらの薬物による細胞質内カルシウムレベルの強力な上昇は、全体として、ESRの発生と一致するものであり、これは上記の
図3−5で実証された通りである。DMCにより引き起こされる平均最大カルシウムピーク(
図6B)は僅かにセレコキシブで測定されたよりも大きかったが、この相違は統計学的に有意ではない;しかしながら、全体のカルシウム放出(
図6A;曲線下面積)は一貫してDMCと比較して30%〜50%大きかった。
【0103】
更に、他のコキシブおよびNSAIDと比較してDMCおよびセレコキシブのユニークな点を実証するために、我々は、これらの2つの薬物の観察された効果が他のコキシブおよび伝統的なNSAIDの効果とどのようなものであるかを比較する実験を行った。第一に、我々は細胞をDMCと3つのコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブおよびバルデコキシブで処理し、ERストレス指標蛋白質CHOPの発現レベルを測定した。50 μmol/Lで, DMCは顕著なCHOP誘導を生じ、これは薬物処理開始の4時間後から検出され、24時間まで増加し続けた(
図6A)。50 μmol/L セレコキシブでの細胞の処理は、同様なCHOP誘導の動態を導いたが、全体のレベルはDMCと比較して顕著に低かった。これに対して、ロフェコキシブまたはバルデコキシブの何れも同濃度で何れの検出可能なCHOP発現も引き起こさなかった (
図7A)。
【0104】
ESR誘導がロフェコキシブおよびバルデコキシブのより高い濃度で達成される可能性があるか否かを試験するために、細胞を更に高い濃度の各薬物で処理した。しかしながら、
図7Bに示すように、75 または 100 μmol/Lの濃度でさえも、ロフェコキシブまたはバルデコキシブの何れもが何れの検出可能なCHOPまたはGRP78蛋白質の増加を刺激できなかった。比較すると、DMCおよびセレコキシブは強力にこれらの蛋白質の両方の発現を誘導し、繰り返しになるが特にDMCは強力であった。
【0105】
我々は、次にERストレス誘導と細胞死の関係を実験した。
図8Aは、30 および 50 μmol/LのDMCは、CHOP、GRP78およびカスパーゼ4切断/活性の顕著な誘導により示される通り、強力にESRを刺激することを示す。並行して、3つの可変性の細胞増殖および細胞死を試験した。最初にコロニー形成アッセイを行った;これは長期の生存の指標であり、生存し且つ新たな細胞増殖のコロニーを生ずることのできる個々の細胞のパーセンテージで表す。第二に伝統的な3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミドアッセイを使用して、短期間の成長および生存を測定し、これは全体の細胞集合の代謝活性により主に示される。第三に末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介dUTPニック末端標識アッセイを、アポトーシス下にある細胞のフラクションの定量化を行った。図 6Aに示すように、DMCによるESRの誘導はコロニー形成アッセイにおいて大きく生存を減少すること、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミドアッセイにおいて細胞活性の減少すること、および実質的にアポトーシスを増加することと密接に関連した。
【0106】
セレコキシブは同様に細胞死/アポトーシスを誘導し(
図8B)、細胞培養物の生存度を減少し(
図8C)たが、その強度はDMCの効果よりも明らかに低かった(より高い濃度の要求により示される通り)。しかしながら、他のコキシブ(ロフェコキシブおよびバルデコキシブ)または伝統的なNSAID(フルルビプロフェン、インドメタシンおよびスリンダック)の何れも検出可能な効果は細胞増殖および生存においても示されず、100 μmol/Lの濃度でさえもアポトーシスを誘導しながった (
図8B および C)。従って、総合して考えると、これらの結果は、セレコキシブがこれらのコキシブ/NSAIDの中ではユニークであることが示され、これはESRを刺激し、且つ腫瘍細胞死を開始する優れた効力のためである;加えて、DMC誘導体はより効果的であり、COX-2の阻害はこれらの効果を達成するために要求されないことが明白に主張される。
【0107】
我々は次に、DMCまたはセレコキシブでの治療に関する腫瘍細胞増殖の減少に対するESRの寄与を試験した。この目的のために、我々はGRP78(ESRの保護的ブランチを代表する)またはカスパーゼ4(プロアポトーシスブランチを代表する)を発現をノックダウンするために特異的なsiRNAを適用した。グリオブラストーマ細胞をこれらのsiRNAでトランスフェクトし、生存細胞のパーセンテージをコロニー形成アッセイにより測定した(
図9A)。コントロールとして、siGFPをこれらの実験に含め、更に、各特異的なsiRNAによる標的ノックダウンの効率をカスパーゼ4およびGRP78蛋白質のウェスタンブロット分析により確認した(
図9B)。GRP78-siRNAについて、細胞をより感受性となり、GRP78レベルが減少した場合、細胞生存はより低かった。カスパーゼ-siRNAについて、反対のことが観察された:我々は薬物処理した細胞の感受性は顕著に減少した(即ち、セレコキシブまたはDMCの薬物処理後の細胞生存は、カスパーゼ4発現がsiRNAにより減少した場合に増加した)。従って、これらの結果から、現在のESRモデルについて、GRP78は保護物質の代表であり、これに対してカスパーゼ4はプロアポトーシスであり、ERストレス後の細胞死の実行に必要であることと一致する;我々の結果は、DMCおよびセレコキシブはGRP78による保護効果を圧倒し、カスパーゼ4の活性の刺激を介して細胞死を誘導することを示す。
【0108】
ERストレスがインビボでのDMCの抗腫瘍活性の間に関連するか否かを測定するための検討において、我々はキセノグラフトヌードマウス腫瘍モデル(xenograft nude mouse tumor model)を使用し、DMCまたはロフェコキシブで処理した動物からの腫瘍組織におけるCHOPの発現を試験した。
図10に示すように、CHOP蛋白質はコントロール動物(即ち、何れの薬物治療もなし)からの腫瘍組織において僅かに検出可能であった。反対に、動物をDMCを含む飼料を50時間与えた場合、それらの腫瘍組織においてCHOP蛋白質の発現が大きく増加した。比較して、動物がロフェコキシブを与えられた場合、何れのそのような増加は観察されなかった(
図10)。加えて、DMC処理後のCHOP蛋白質の量の高い増加は、腫瘍組織における顕著に増加したアポトーシスと相関し、これに反してロフェコキシブ治療動物からの腫瘍はアポトーシスの上昇したレベルは示されなかった(
図10)。更に、腫瘍を有する動物の長期間のDMCまたはロフェコキシブの何れかにより処理において、DMCのみが顕著な腫瘍成長の低下を引き起こしたことが明白であり(
図11)、これは、DMCによるESRの誘導とアポトーシスが、実際に、このキセノグラフトモデルにおいて腫瘍成長を全体として減少することが説明されることを示す。
【0109】
最後に、DMCおよびセレコキシブのヌードマウスにおける初期の薬物動態学/薬力学的な測定の延長として(20)、我々は薬物(DMCおよびセレコキシブ)の実験動物からの血中および腫瘍組織における濃度を測定した。腫瘍を有する動物を2日間、一日投与量で30 から 180 mg/kg のDMC またはセレコキシブで処理し、各薬物の絶対的なレベル(C
max)を液体クロマトグラフィ質量分析により測定した。表2に示すように、血漿および腫瘍組織における最大薬物濃度は一日投与量の増加に伴って増加し、ピーク値は、最高用量である180mg/kgで治療された動物からの血漿において45 μmol/Lのレベルに到達した。興味をそそることには、しかしながら腫瘍組織における濃度が対応する血漿濃度よりも2桁の規模で低かった。最も高い1日投与量である180 mg/kgを投与された動物において、0.25μmol/Lとほぼ同等の腫瘍組織濃度は、000到達であった。それにもかかわらず、これらの全ての腫瘍組織において、CHOP発現の増加したレベルが観察され、他方では、薬物なし処理またはロフェコキシブ処理(30-180 mg/kg)の動物からの腫瘍組織は、このERストレス指標蛋白質について一貫して陰性であった(
図10参照されたい)。通常は、低用量のDMCまたはセレコキシブで処理した動物からの腫瘍組織は、CHOP陽性であったが、非常に高い濃度まで暴露したそれらの動物からの腫瘍がこの蛋白質についてより高い強度で染色された。重要なことは、これらの結果が、インビトロで使用される薬物濃度とインビボで測定される薬物濃度の間に莫大な違いがあるにもかかわらず、両方の場合において、ERストレスおよび実質的な腫瘍細胞死が達成された。
【0110】
例2:ボルテゾミブとセレコキシブまたはその非コキシブアナログ2,5-ジメチル-セレコキシブとの併用による、グリオブラストーマ細胞死滅の増大の基礎としての小胞体ストレスの悪化
[材料および方法]
[材料]
ボルテゾミブは、3.5mlの生理食塩水に懸濁される3.5mgのヴェルケードとして薬局から入手した(Millennium Pharmaceuticals)。セレコキシブは、カプセルとして薬局から入手し、または、以前に記述された方法(24)に従って研究室にて合成した。DMCは、セレコキシブと構造的に近いアナログであり、5-アリール成分が、4-メチルフェニルを2,5-ジメチルフェニルに置換することで変更されている;この化合物は、以前に記述された方法(19)に従って研究室で合成した。セレコキシブおよびDMCを、100mmol/LとなるようにDMSOに溶解し(ストック溶液)、終濃度が0.1%未満となるように細胞培養液に添加した。合成した新鮮なセレコキシブのCOX-2阻害活性、およびDMCにおけるその欠如は、精製されたCOX-2タンパク質の使用により(例えば、参考文献42参照)、インビトロで確認された。
【0111】
[細胞株および培養条件]
全ての細胞は、10%ウシ胎児血清、100ユニット/Lのペニシリンおよび0.1mg/mLのストレプトマイシンが添加されたDMEM(Cellgro)にて、37℃および5%CO
2大気の加湿したインキュベーター中で増殖させた。4つのヒトグリオブラストーマ細胞株(LN229、U251、T98GおよびU87MG)および1つの多発性ミエローマ細胞株(RPMI/8226)を使用した。T98G、U87MGおよびRPMI/8226細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手した。LN229およびU251は、Frank B. Furnari (Ludwig Institute of Cancer Research, La Jolla, CA)から入手した。これらの細胞における、COX-2発現レベルおよびプロスタグランジン生産に対する薬剤の効果は、以前の文献に記述されている。
【0112】
[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミドアッセイ]
3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイは、以前に詳述されるとおりに(19)、1ウェル当たり3.0x10
3から8.0x10
3細胞を使用した96-ウェルプレートにて行った。
【0113】
[細胞死ELISA]
細胞は、96-ウェルプレート上で、1,000細胞/mL(100μL/ウェル)で4重に播種した。翌日、それらを薬剤で24時間処理し、市販のELISAキット(Roche Diagnostics)を説明書に従って使用して、ヒストン複合型DNA断片の存在を分析した。当該キットは、ネクローシスではなくアポトーシスを特異的に定量化する様式で使用した。
【0114】
[イムノブロットおよび免疫組織学的染色]
全細胞ライセートを作製し、以前に記述されるとおりに(19)、ウェスタンブロット分析によって分析した。腫瘍組織におけるタンパク質発現の免疫組織化学的分析を、以前に記述されるとおりに(32)、ベクタステインアビジン-ビオチン複合体法キット(Vector Laboratories)を使用して行った。一次抗体は、Cell Signaling TechnologyまたはSanta Cruz Biotechnology, Inc.から購入し、説明書に従って使用した。全ての免疫ブロットおよび染色は、少なくとも1回繰り返し、結果を確認した。
【0115】
[腫瘍組織の末端デオキシヌクレオチジル転移酵素媒介dUTPニック末端標識染色]
腫瘍切片におけるアポトーシスを、末端デオキシヌクレオチジル転移酵素媒介dUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイを使用して、定量的に測定した。この方法のための全ての構成成分は、ApopTagインサイチューアポトーシス検出キット(Chemicon)のものであり、これを説明書に従って使用した。それぞれの腫瘍切片についてのTUNEL陽性細胞のパーセンテージを、10枚のランダムな顕微鏡写真(200倍で取得)にて決定した。
【0116】
[トランスフェクションおよびコロニー形成アッセイ]
種々の低分子干渉RNA(siRNA)を、南カリフォルニア大学/Norris Comprehensive Cancer Centerのthe microchemical core laboratoryで合成した;それらの配列は、参考文献32に記述されている。これらのsiRNAの細胞への形質移入およびコロニー形成アッセイによる細胞生存の分析は、以前に記述されている(32)。
【0117】
[ヌードマウスの薬物処理]
4から6週齢のオスの無胸腺症nu/nuマウスをHarlanから入手し、5x10
5のU87グリオブラストーマ細胞を皮下注射で移植した。腫瘍が~300mm
3まで発達したら、動物に薬剤治療を施した。ヴェルケードを、単一用量で、尾静脈注射で投与した。DMCは、ステンレススチール製ボールヘッドフィーディング針(Popper and Sons, Inc.)を使用して、1日に2回(12時間ごとに一日量の半分)、胃に直接投与した。全50時間後、動物を犠牲にし、分析のために腫瘍を採取した。全ての実験において、体重、食糧消費および毒性の臨床的徴候に関して、動物を厳密にモニターした;非薬剤処理コントロール動物と薬剤処理動物との間で、差は検出されなかった。
【0118】
[結果]
グリオブラストーマ多形、不良な予後を示す癌の治療困難種を代表する。より効果的な治療が緊急に必要であるため、我々は、我々が選択した薬剤の併用された効果を調査するためのモデルとして、様々なヒトグリオブラストーマ細胞株を選択した。細胞成長の50%の阻害(IC
50)をもたらす、それぞれの薬剤の濃度を確立するために、我々は、まず、それぞれの細胞を、ボルテゾミブ、セレコキシブまたは非コキシブセレコキシブアナログDMCの何れかで処理した。ボルテゾミブによる処理の48時間後のIC
50の結果は、U251、U87MGおよびT98Gグリオブラストーマ細胞株について~10 nmol/Lであり、LN229グリオブラストーマ細胞株にて5 nmol/Lより僅かに低かった(
図12A)。ボルテゾミブは、多発性ミエローマ治療のために開発され、そのような腫瘍細胞株において高度に毒性であるため、我々は、さらに、比較の目的で、代表的多発性ミエローマ細胞株RPMI/8226におけるIC
50を決定した。
図12Aに示され、また、予想されたように、RPMI/8226細胞は、ボルテゾミブに対して高い感受性を示した;しかしながら、この細胞種は、グリオブラストーマ細胞株よりも感受性は高くなかった。この発見から、グリオブラストーマ細胞は、ボルテゾミブに対して感受性が高かったことが示され、このことは、潜在的なグリオブラストーマ療法としてこの薬剤を研究することの我々の理論的根拠を支持する。
【0119】
我々は、さらに、4種全てのグリオブラストーマ細胞株における、セレコキシブおよびDMCのIC
50を調査した(
図12AおよびB)。セレコキシブは、U251、U87MGおよびT98G細胞において、〜50 μmol/LのIC
50を示し、一方、DMCは、幾分より強力であり、40 μmol/Lより僅かに低いIC
50を示した。LN229細胞株(ボルテゾミブに対して最も高い感受性を示した;
図12A)は、セレコキシブまたはDMCの何れかに対して、全体的に僅かに感受性が低かった(
図12AおよびB)。
【0120】
ボルテゾミブ、セレコキシブおよびDMCの、グリオブラストーマ細胞においてESRを減少させる能力を決定するために、我々は、それぞれの薬剤の濃度を増加させてU251細胞を処理し、GRP78およびCHOPの発現が増大したことを確認し、その結果、ESRが引き起こされたことが示された。加えて、この薬剤にて、さらに、ERストレス関連プロカスパーゼ4の活性を刺激し、この酵素の切断型(すなわち活性化型)形体の存在を確認した。我々が使用した濃度で、ボルテゾミブが、確立された機能(すなわち、プロエアソームの阻害)を発揮することを立証するために、我々は、さらに、ポリユビキチン化タンパク質の蓄積を調べた。
図13Aに示されるように、ERストレスマーカーの誘導は、高度に濃度が上昇したポリユビキチン化タンパク質の出現と一致し、このことは、プロテアソームの阻害は、ERストレスの誘導と関連があることを示している。
【0121】
同様の標的を、セレコキシブまたはDMCの何れかで細胞を処理した後にも調査した。全ての我々の実験において、セレコキシブおよびDMCは、一貫して同一の結果をもたらしたが、例外として、DMCは、僅かにより強力であった[この理由のため、また、セレコキシブによるERストレスの誘導が以前にも報告されているため、我々は、主に、DMCで得られた結果に集中するだろう]。
図3Bに示されるように、DMC処理は、GRP78およびCHOPの強力な誘導およびカスパーゼ4の活性化をもたらし、このことは、この薬剤がERストレスを引き起こしたことを示す。しかしながら、この薬剤は、ポリユビキチン化タンパク質の実質的な蓄積をもたらさず、その作用機構はボルテゾミブのそれとは異なるという予想に一致した。
【0122】
我々は、次に、グリオブラストーマ細胞の増殖および生存に対する、併用される薬剤治療の効果を試験した。この目的のため、我々は、ボルテゾミブと、セレコキシブまたはDMCの何れかとを、おおよそのIC
50値を示し、潜在的に効果の増大が観察されると考えられる濃度で組み合わせた。
図14Aは、細胞数および形態の視覚的表示を示し、
図14Bは、定量化した結果を示す。
図14Aから、個々の薬剤による処理では、細胞数の増加はより小く、有糸分裂の図はより少ないものの;対照的に、併用される薬剤の処理では、顕著な細胞消失および明らかな細胞死が生じたことがわかる。これらの視覚的印象は、薬剤処理全体を通して(8、24および48時間)、生存細胞の数を数えることで補完した。
図14Bに示されるように、単一の薬剤の処理は、初期の細胞増殖(すなわち、8時間から24時間の間の細胞数の増大)を可能とし、その後、細胞増殖抑制性と推定される効果(すなわち、24時間から48時間の間に、細胞の全体数は変化しなかった)を及ぼした。対照的に、薬剤を組み合わせて適用した場合、24時間の時点で細胞数の増大はなく、24時間から48時間の間の生存細胞の実質的な消失が示され、このことから、強力な細胞障害性効果が示された。
【0123】
さらに、薬剤誘導性の細胞死および生存の程度を、培養液全体の細胞死の量を定量化する細胞死ELISAによって、および、薬剤処理にて長期間生存し、クローンの子孫のコロニーをもたらし得る個々の細胞の数を決定するコロニー形成アッセイによって調査した。
図14Cは、グリオブラストーマ細胞を個々の薬剤で処理すると、アポトーシス性の細胞死の増大は小さく、一方、ボルテゾミブとセレコキシブまたはDMCとの併用治療は、細胞死が大きく増大することを示す。コロニー形成アッセイにおいて、5 nmol/Lのボルテゾミブは、コロニーの出現数を〜50%まで減少させた(
図14D)。選択された濃度のセレコキシブおよびDMCは、それ自体によって、マイナーな阻害効果しか発揮しなかった(約10-15%のコロニー数の減少)。対照的に、細胞を、ボルテゾミブとセレコキシブまたはDMCとの組み合わせで処理した場合、コロニー生存は、それぞれ>90%および97%に多く減少した。
【0124】
図14で使用されたそれぞれのアッセイを、幾つかの異なるグリオブラストーマ細胞株に適用し、薬剤の組み合わせの濃度の変更を使用した(データは示さず)。全ての場合において、非常に類似した結果が得られ、このことは明らかに、これらの薬剤の組み合わせは、細胞障害性を増大させ、各々の薬剤でそれぞれ治療する場合と比較して、細胞の生存性を実質的に減少させることを示している。さらに、従来のMTTアッセイから併用インデックス(CI)を算出し、それぞれの薬剤の濃度の増大を合算し(データ示さず)CI<1という結果を得たため、薬剤の併用は相乗的であったことが明らかとなった。
【0125】
我々は、次に、上記に挙げられた組み合わせ薬物の効果に対するESRの潜在的な寄与を試験した。U87MGおよびT98G細胞を上記と同じ薬物の組み合わせで処理し、ESR系の種々の要素と細胞死機序を分析した。
図15に示すように、個々の薬物処理はGRP78の増加した発現を引き起こし、組み合わせた薬物治療はこの蛋白質の更に発現を増加した。プロアポトーシスCHOP蛋白質のレベルは、単一薬物処理では弱い増加であったが、組み合わせ処理によりより強く上昇した。ESRの重大なプロアポトーシス要素であるc-Jun NH2-末端キナーゼ(JNK)の活性はこのキナーゼのリン酸化(即ち、活性)形態を特異的に認識する抗体を用いて試験した。我々は、組み合わせ薬物処理が、結果として大きなJNK活性の増大を導くが、個々の薬物処理では導かないことを見出した(
図15A)。総合すると、これらの結果は、ボルテゾミブが、セレコキシブまたはDMCの何れかとの組み合わされたとき、薬物単独よりも強いESR誘導を引き起こすことが示される。同様の結果を、LN229およびU251細胞を使用しても得た(データには示さず)。
【0126】
薬物誘導性のERストレスおよび細胞アポトーシスが相関するだけではなく、原因となって関連しているのか否かを確立するために、我々はESR要素であるGRP78の発現を特異的に減少した。仮に、薬物誘導細胞死がESRにより制御されているなら、我々は、ESRの主な保護要素として機能するGRP78の減少したレベルが、更なる細胞死の増加を引き起こすことを予期できるだろう。U251細胞をsiRNAアゴニストGRP78でトランスフェクトした;コントロールとして、細胞を哺乳類細胞には存在しない標的(即ち、緑色蛍光蛋白質(GFP))に対するsiRNAでトランスフェクトした。siGRP78トランスフェクト細胞およびsiGFPトランスフェクト細胞の両方をセレコキシブまたはDMCを伴うボルテゾミブで処理し、生存細胞の数をコロニー形成アッセイにより測定した。
図16Aに示すように、細胞生存は、顕著に(P < 0.002)GRP78の減少したレベルを有する細胞において減少した;薬物処理後の細胞生存は、siGFPでトランスフェクトした細胞においては63% 〜 68%であったが、siGRP78でトランスフェクトした細胞においては40%〜42%に減少した。siGRP78によるGRP78発現の下方制御は、ウェスタンブロット分析により確認した;しかしながら、他方、siGRP78の存在が、検出限界以下にGRP78の基本レベルを減少するが、siRNAは薬物処理によりGRP78の誘導を完全に遮断できなかったので、誘導されたGRP78のより低いレベルがまだ検出できた(
図16B)。それにもかかわらず、全ての条件下で、GRP78蛋白質の総量は、siGRP78トランスフェクト細胞の方が、siGFPトランスフェクト細胞に比べてより低かった。同時にsiGRP78トランスフェクト細胞は、顕著に高い化学受容性を示し、これはESRが、セレコキシブまたはDMCとの組み合わせにおけるボルテゾミブにより誘導される細胞死を引き起こす上で原因となる役割を担っていることを示している。
【0127】
最後に、我々は上記のインビトロ現象がインビボにおいても生じるか否かを測定した。U87MG細胞をヌードマウスに対して皮下で移植し、相当の大きさの腫瘍が形成された後に、動物を未処理のまま維持するか、または薬物により処理した。セレコキシブはこの実験において含まれなかったが、これは先の研究が既に、この薬物のインビボにおけるESRを強力に刺激することが明らかにしているからである;更に、DMCをセレコキシブに対して比較した全ての公知の実験が、DMCが一貫して僅かに強いアポトーシス誘導能力を示すこと以外は、両薬物はインビトロおよびインビボにおいて同様の腫瘍抑制的な結果を確実に達成することを示している。そのため、我々は、ボルテゾミブとのインビボ組み合わせ実験のために選択するより強力な薬物はDMCであると決めた。
【0128】
我々は、以前に、DMC単独で、インビボでの腫瘍組織において全く強力にERストレスを引き起こすことを示しており(39)、この効果は、≧10 mg/kgの用量で現れ始める。これらの初期の結果を検討することにより、我々は、この組み合わせ実験のための潜在的に有用な用量として7.5 mg/kgを選択した;我々は、最適以下の用量のDMCが組み合わせ効果を表すであろうことを塾こうした。腫瘍を有する動物をDMCまたはボルテゾミブ単独または組み合わせにおいて2日間処理した(相対的に短期処理期間を選択したのは、我々が、腫瘍細胞が死滅していくまたは既に死滅したときを支配する後期の状態よりも寧ろ、細胞死を開始する初期の機序に焦点を当てたかったからである)。腫瘍組織をCHOPの発現(ERストレスのマーカーとして)を分析し、TUNELにより染色した(アポトーシス細胞死の程度の可視化のため)。
【0129】
我々は、この非常に低い用量でのDMCが、大きなCHOP発現の上昇を引き起こさず、また実質的にTUNEL染色を増加しないことを発見した(
図17A)。単独でのボルテゾミブ処理は、CHOP陽性細胞のより大きなフラクションを結果として示し、TUNEL染色の増加も付随した。比較して、ボルテゾミブがDMCと共に与えられたとき、非常に強いCHOPの誘導があり、これは全ての単一細胞において、多くのTUNEL陽性細胞における非常に大きな増加が検出された(
図17A)。種々の腫瘍群におけるTUNEL陽性細胞を定量したとき、組み合わせ処理がより個々の薬物処理よりも有意に多くの細胞死を引き起こしたことが明白になった(図 17B);即ち、ブラテゾミブとDMCとの処理に対する反応における細胞死は、DMCまたはボルテゾミブ単独で処理した動物におけるよりも、それぞれ4.9 および 3.0倍高いものであった。従って、組み合わせ薬物処理は、個々の薬物処理の場合よりも、実質的により高いERストレスレベルとより多くの数の細胞死を引き起こし、悪化されたERストレスと増強されたグリオブラストーマ細胞死滅がインビボにおいても同様に達成できることが証明された。
【0130】
例3:非コキシブ・セレコキシブ類似体である2,5-ジメチルセレコキシブ(DMC)との組み合わせにおけるテモゾロミドによる腫瘍関連脳内皮細胞の細胞死滅の増加の基礎としての小胞体ストレスの悪化
[材料および方法]
腫瘍関連脳内皮細胞(Tumor-associated Brain Endothelial Cells (TuBEC))をTMZ(300uM)と20uMのDMCで48時間処理した。薬物を回収し、細胞を更なる12日間に亘りインキュベートし、そのときの細胞障害性をトリパンブルー排除技術を使用して評価した。結果は、1群当たりの生存細胞の数として示す。
【0131】
[結果]
グリオーマの治療の標準であるテモゾロミド(TMZ)は腫瘍細胞に対して非常に有効である。しかしながら、この薬物は、腫瘍関連脳内皮細胞(TuBEC)における細胞障害性が殆ど引き起こされない。
図18に概説される我々は実験は、ER悪化剤DMCがTMZに対して感受性のある腫瘍血管内皮細胞の感受性を増加することを示している。このようにDMCは、公知の治療薬に対してこれらの細胞を化学受容性化することにより抗血管形成剤として機能する。
【0132】
本発明は、特定の典型的な態様および例に関して記載してきたが、ここに開示された態様は説明するだけが目的であり、種々の変更および改変は、添付の特許請求の範囲に記載するような本発明の精神および範囲を逸脱することなく当該業者により行われることが認められるであろう。
【表1】
【表2】
本願の出願当初の請求項の記載を、実施の態様として以下に付記する。
(1)
アポトーシスを引き起こす細胞の小胞体(ER)におけるストレスを誘導または悪化する方法であって、
COX-2活性を阻害することなく選択的に前記細胞におけるSERCA活性を阻害すること;および
前記細胞におけるCHOPの発現を上昇することを含み、
ここにおいて、SERCA活性の阻害とCHOP発現の上昇の組み合わせが当該細胞におけるアポトーシスの阻害に適好な条件を結果として生じる方法。
(2)
(1)に記載の方法であって、SERCAの選択的阻害の工程が、直接的または間接的に、アポトーシスを引き起こすために有意に正常レベルを上回って細胞質カルシウム濃度を上昇するために十分な持続時間に亘って、SERCAの選択的阻害が可能なERストレス悪化剤の薬学的に有効な量を投与することにより成し遂げられる方法。
(3)
(2)に記載の方法であって、前記ERストレス悪化剤がCOX-2を阻害しない1である方法。
(4)
(2)に記載の方法であって、前記ERストレス悪化剤がヒスタミン放出を引き起こさない方法。
(5)
(3)に記載の方法であって、前記ERストレス悪化剤が一般式;
【化5】
ここにおいて
R1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、アルキル、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキル;
R2は、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、アルキル、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキル;
R3-R7 は、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、アロキシ、アルキル、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、ヒドロキシアルキル、またはカルボキシアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;
R8-R11 は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、アルキル、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリールまたは ヘテロアリールからなる群より独立して選択され;および
R12 は、水素、アセチル、アシル、アルキル、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、アミノアシル、アミノアルキル、シクロアルキル、複素環式、アリールまたはヘテロアリールである;
を有する化合物を含む方法。
(6)
(5)の方法であって、R1がトリフルオロメチルである方法。
(7)
(5)の方法であって、R2、R8-R12が水素である方法。
(8)
(5)の方法であって、R4、R5およびR7が水素である方法。
(9)
(5)の方法であって、R1がトリフルオロメチル、R2、R4、R5、R7− R12が水素である方法。
(10)
(5)の方法であって、R3およびR6 が水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、アルキル、アリール、ヘテロアリール、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルからなる群より選択される方法。
(11)
(2)の方法であって、前記ERストレス悪化剤が4-[5-(2,5-ジメチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホアミド、4-[5-(2,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミドおよび4-[5-(2,5-ジブロモフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミドまたはその類似体である方法。
(12)
(2)の方法であって、前記ERストレス悪化剤がSERCA阻害剤に代謝されるプロドラッグを含む方法。
(13)
(1)の方法であって、更に、ERにおける誤った折り畳まれたまたは障害された蛋白質の濃度を増加することが可能な第二のERストレス悪化剤を適用する工程を含む方法。
(14)
(13)の方法であって、前記ERストレス悪化剤がプロテアソーム阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤を含む方法。
(15)
(14)の方法であって、前記プロテアソーム阻害剤がボルテゾミブまたはその類似体である方法。
(16)
(14)の方法であって、前記プロテアーゼ阻害剤が、ニルフィナヴィル、アタザナビル、ホサムプレナビル、インジナビルまたはその類似体から選択されるHIVプロテアーゼ阻害剤である方法。
(17)
(1)の方法であって、更に、アポトーシスエンハンサーの適用する工程を含む方法。
(18)
(17)の方法であって、前記アポトーシスエンハンサーが、CHOPの発現を上方制御し、GRP78の保護機能に打ち勝ち、カスパーゼを活性化することが可能な1である方法。
(19)
(17)の方法であって、前記アポトーシスエンハンサーがGRP78のsiRNAまたはGRP78機能の阻害剤である方法。
(20)
細胞においてアポトーシスを引き起こすために細胞におけるERストレスを誘導または悪化するために有用な化合物をスクリーニング、選択または設計するための方法であって、
試験化合物についての情報を得ること;前記情報は、SERCA阻害活性、COX-2阻害活性およびヒスタミン放出活性を含む;および
前記化合物がSERCAの阻害剤であり、COX-2の阻害剤でない場合に、前記試験化合物を潜在的なERストレス悪化剤と同定すること;
を含む方法。
(21)
(20)の方法であって、前記得ることの工程が生化学的アッセイ、細胞に基づくアッセイまたはオンラインデータベース検索を含む方法。
(22)
(20)の方法であって、更に、複数の試験化合物について得ることおよび同定することを含む方法。
(23)
(22)の方法であって、前記得ること、同定することおよび繰り返すことの工程がハイスループットスクリーニング形式である方法。
(24)
(22)の方法であって、前記複数の試験化合物が化学的ライブラリーから得られる方法。
(25)
(22)の方法であって、更に、
定量的構造活性相関(QSAR)分析を、潜在的なERストレス悪化剤として同定された選択された化合物の組について行うこと;
当該QSAR分析の結果を使用して1または1以上の新規の試験化合物を設計すること;および
当該新規化合物について得ることおよび同定することを適用すること;
を含む方法。
(26)
細胞いおいてアポトーシスを引き起こす細胞におけるERストレスを誘導または悪化するために有用な薬学的組成物であって、
ERストレス悪化剤;および
薬学的に許容される担体
を含む組成物。
(27)
(26の薬学的組成物であって、前記ERストレス悪化剤が、(5)に従う化合物から選択される1である組成物。
(28)
(26)の薬学的組成物であって、前記ERストレス悪化剤がSERCA阻害剤に代謝され得るプロドラッグである組成物。
(29)
(26)の薬学的組成物であって、前記ERストレス悪化剤がERにおいて誤って折り畳まれたまたは障害された蛋白質の濃度を増加できる組成物。
(30)
(29)の薬学的組成物であって、前記第二のERストレスがプロテアソーム阻害またはプロテアソーム阻害である組成物。
(31)
(5)に従う第一のERストレス悪化剤と、ERにおいて誤って折り畳まれたまたは障害された蛋白質の濃度を上昇できる第二のERストレス悪化剤とを含む組成物。
(32)
細胞においてアポトーシスを引き起こす選択された病的な細胞においてERストレスを誘導または悪化することにより患者における病的な状態を治療する方法であって、
(26)に従う薬学的組成物の薬学的な有効量を投与すること;
を含む方法。
(33)
(32)の方法であって、前記病的な細胞が当該投与することの工程に先駆けてERストレスの状態にある方法。
(34)
(22)の方法であって、(18)に従うアポトーシスエンハンサーの薬学的な有効量を投与することを更に含む方法。
(35)
(32)の方法であって、ERにおける誤って折り畳まれたまたは障害された蛋白質の濃度を増加できる異なるERストレス悪化剤を含む第二の薬学的組成物の薬学的な有効量を投与することを更に含む方法。
(36)
(35)の方法であって、前記異なるERストレス悪化剤がプロテアソーム阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤である方法。
(37)
(32)の方法であって、前記病的状態がアポトーシス非調節により引き起こされる方法。
(38)
(7)の方法であって、前記状態が癌である方法。
(39)
(38)の方法であって、前記癌が多形性グリオブラストーマである方法。
(40)
(38)の方法であって、前記癌が、乳癌、膵臓癌、バーケットリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、前立腺癌、直腸癌、再発性癌、転移性乳癌、化学療法耐性腫瘍および薬物耐性癌から選択される方法。
(41)
正常細胞における通常のレベルよりも高いGRP78のレベルにより立証されるように細胞が低ERストレスの状態にある場合、アポトーシスを引き起こす細胞の小胞体(ER)においてストレスを悪化する方法であって、
前記細胞におけるSERCA活性を阻害し、結果としてCHOP発現が上昇される化合物を提供することを含み、
前記SERCA活性の阻害とCHOP発現の上昇との組み合わせが結果として前記細胞のアポトーシスの開始のために適好な条件になる方法。
(42)
(41)の方法であって、前記化合物がCOX-2阻害剤またはヒスタミン放出剤ではない方法。
(43)
(41)の方法であって、前記化合物が(5)に従って選択される方法。
【0133】
参考文献
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