特許第6203701号(P6203701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203701
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】電動機械およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20170914BHJP
【FI】
   H02P29/00
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-230686(P2014-230686)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-96632(P2016-96632A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】伊 東 隆 充
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−022419(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/014249(WO,A1)
【文献】 特開平10−295092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00− 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータに電流を供給する電流制御部と、
前記モータの軸の位置、速度または加速度を検出する検出部と、
前記モータへの供給電流を決める電流指令に基づいて前記モータのトルクを示すトルクパラメータを算出し、前記検出部からの検出結果に基づいて前記モータの軸の回転速度を示す速度パラメータを算出する制御部と、
前記トルクパラメータと前記速度パラメータとの関係を示すグラフを表示する表示部とを備え
前記トルクパラメータは、上限値を有し、
前記表示部は、前記モータを連続的に駆動しても問題がなくかつ前記上限値以下の前記トルクパラメータを示す第1領域と、前記上限値以下かつ前記第1領域以上の前記トルクパラメータを示す第2領域とを表示し、
前記表示部は、前記モータが第1トルクパラメータおよび第1速度パラメータで動作している時間に基づいて前記第1トルクパラメータおよび前記第1速度パラメータの軌跡の太さを変えて前記グラフを表示する電動機械。
【請求項2】
前記トルクパラメータは、前記モータへ供給される電流値、前記モータの軸の回転トルク、前記モータによって動作する制御対象の加速度または圧力のいずれかであり、あるいは、それらのいずれかから算出され、
前記速度パラメータは、前記モータの軸の回転速度であり、あるいは、前記モータの軸の位置または加速度のいずれかから算出される、請求項1に記載の電動機械。
【請求項3】
前記制御部は、前記トルクパラメータが上限値を超えないように前記電流制御部および前記モータを制御する、請求項1または請求項2に記載の電動機械。
【請求項4】
前記制御部は、前記トルクパラメータが上限値を超えた場合に、警告を発する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電動機械。
【請求項5】
前記表示部は、前記トルクパラメータおよび前記速度パラメータを、前記モータの駆動に伴いほぼリアルタイムに表示する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動機械。
【請求項6】
前記表示部は、前記トルクパラメータおよび前記速度パラメータの変化速度を、前記グラフの線の幅または太さで表現する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電動機械。
【請求項7】
前記表示部は、前記モータの温度変化、前記モータの軸の回転方向、前記モータによって動作する制御対象の位置、あるいは、作業の工程のいずれかを前記グラフの線の色で表現する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電動機械。
【請求項8】
モータと、前記モータに電流を供給する電流制御部と、前記モータの軸の位置、速度または加速度を検出する検出部と、前記モータへの供給電流を決める電流指令を前記電流制御部へ送る制御部と、表示部とを備えた電動機械において実行されるプログラムであって、
前記モータへの供給電流を決める電流指令に基づいて、前記モータのトルクを示すトルクパラメータを前記制御部に算出させ、
前記検出部からの検出結果に基づいて、前記モータの軸の回転速度を示す速度パラメータを前記制御部に算出させ、
前記トルクパラメータは、上限値を有し、前記モータを連続的に駆動しても問題がなくかつ前記上限値以下の前記トルクパラメータを示す第1領域と、前記上限値以下かつ前記第1領域以上の前記トルクパラメータを示す第2領域と、前記モータが第1トルクパラメータおよび第1速度パラメータで動作している時間に基づいて前記第1トルクパラメータおよび前記第1速度パラメータの軌跡の太さを変えて前記トルクパラメータと前記速度パラメータとの関係を示すグラフと、を前記表示部に表示させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、電動機械およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機や工作機械等の電動機械はモータによって駆動される。電動機械のモータのトルクは、通常、電流の上限値によって制限される。モータに流す電流をその上限値以下とするために、電流指令または電流検出値に閾値(リミット値)が設けられている。電流指令または電流検出値がリミット値を超えた場合には、電動機械は、電流指令をリミット値でクランプする。
【0003】
このような電流の上限値は、モータの回転速度が比較的低いときには高い値で維持される。従って、モータのトルクを比較的大きく上昇させることができる。しかし、モータの回転速度が比較的高くなると、モータからの誘起電圧がモータへの印加電圧に近づき電圧飽和の状態となり、電流の上限値は低下する。このため、モータの回転速度が比較的高い場合、モータのトルクはあまり大きく上昇させることができない。従って、モータは、モータのトルクと回転速度との関係(以下、T−N特性)において或る好適な範囲を有し、そのT−N特性の範囲を超えないように制御されることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4221470号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、モータのトルクや回転数がT−N特性の好適な範囲を超えた場合、電動装置は、電流が上限値を超えたことを示す警告をユーザに提示する場合がある。例えば、射出成型機の射出動作の場合、射出動作中に電流が上限値を超え、あるいは、電圧飽和になると、モータを適切に制御することができなくなる可能性がある。この場合、モータは、異常に振動したり、機械や金型を壊してしまうことがある。そこで、電動装置は、電流が上限値を超えたことを示す警告をユーザに提示する。
【0006】
しかし、ユーザは、警告に応じてモータの動作条件を緩和することができるが、その動作条件の緩和によってどの程度電流の上限値まで余裕ができたのかを把握することはできない。また、或るモータの動作条件において、ユーザがモータに対する負荷状況を把握することも困難である。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、モータかかる負荷を容易に把握することができる電動機械およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態による電動機械は、電動機械モータと、モータに電流を供給する電流制御部と、モータの軸の位置、速度または加速度を検出する検出部と、モータへの供給電流を決める電流指令に基づいてモータのトルクを示すトルクパラメータを算出し、検出部からの検出結果に基づいてモータの軸の回転速度を示す速度パラメータを算出する制御部と、トルクパラメータと速度パラメータとの関係を示すグラフを表示する表示部とを備え、トルクパラメータは、上限値を有し、表示部は、モータを連続的に駆動しても問題がなくかつ上限値以下のトルクパラメータを示す第1領域と、上限値以下かつ第1領域以上のトルクパラメータを示す第2領域とを表示し、表示部は、モータが第1トルクパラメータおよび第1速度パラメータで動作している時間に基づいて第1トルクパラメータおよび第1速度パラメータの軌跡の太さを変えてグラフを表示する
【0009】
トルクパラメータは、モータへ供給される電流値、モータの軸の回転トルク、モータによって動作する制御対象の加速度または圧力のいずれかであり、あるいは、それらのいずれかから算出され、速度パラメータは、モータの軸の回転速度であり、あるいは、モータの軸の位置または加速度のいずれかから算出されてもよい。
【0010】
制御部は、トルクパラメータが上限値を超えないように電流制御部およびモータを制御してもよい。
【0011】
制御部は、トルクパラメータが上限値を超えた場合に、警告を発してもよい。
【0012】
表示部は、トルクパラメータおよび速度パラメータを、モータの駆動に伴いほぼリアルタイムに表示してもよい。
【0013】
表示部は、トルクパラメータおよび速度パラメータの変化速度を、グラフの線の幅または太さで表現してもよい。
【0014】
表示部は、モータの温度変化、モータの軸の回転方向、モータによって動作する制御対象の位置、あるいは、作業の工程のいずれかをグラフの線の色で表現してもよい。
【0015】
本実施形態によるプログラムは、モータと、モータに電流を供給する電流制御部と、前記モータの軸の位置、速度または加速度を検出する検出部と、モータへの供給電流を決める電流指令を電流制御部へ送る制御部と、表示部とを備えた電動機械において実行されるプログラムであって、
プログラムは、モータへの供給電流を決める電流指令に基づいて、モータのトルクを示すトルクパラメータを制御部に算出させ、検出部からの検出結果に基づいて、モータの軸の回転速度を示す速度パラメータを制御部に算出させ、トルクパラメータは、上限値を有し、モータを連続的に駆動しても問題がなくかつ上限値以下のトルクパラメータを示す第1領域と、上限値以下かつ第1領域以上のトルクパラメータを示す第2領域と、モータが第1トルクパラメータおよび第1速度パラメータで動作している時間に基づいて第1トルクパラメータおよび第1速度パラメータの軌跡の太さを変えてトルクパラメータと速度パラメータとの関係を示すグラフと、を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に従った電動機械100の構成例を示すブロック図。
図2】表示操作部20に表示されるトルクパラメータと速度パラメータとの関係の一例を示すグラフ。
図3】メイン制御部10においてトルクパラメータと速度パラメータとの関係を表示する動作を示すフロー図。
図4】第2の実施形態による、トルクパラメータと速度パラメータとの関係の一例を示すグラフ。
図5】第3の実施形態による、トルクパラメータと速度パラメータとの関係の一例を示すグラフ。
図6】連続領域A1および加減速領域A2を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に従った電動機械100の構成例を示すブロック図である。電動機械100は、例えば、工作機械、射出成形機、ダイカストマシン、押出成形機等である。電動機械100は、メイン制御部10と、表示操作部20と、サーボ制御部30と、電流制御部40と、モータ50と、エンコーダ60とを備えている。
【0019】
メイン制御部10は、設定された作業条件に基づいて、制御対象としてのモータ50の目標位置を示す位置指令を作成し、この位置指令を出力する。また、メイン制御部10は、電流指令、速度測定値、位置測定値等のフィードバックを受けてそれらを演算し、表示操作部20に様々な情報を表示させる。
【0020】
サーボ制御部30は、減算器31と、位置制御部33と、減算器35と、速度制御部37と、速度演算部39とを備えている。減算器31は、メイン制御部10からの位置指令と実際に検出された位置測定値との差を算出し、その差を位置誤差として出力する。位置制御部33は、減算器31からの位置誤差に基づいてモータ50の目標速度を示す速度指令を出力する。減算器35は、速度指令と速度演算部39からの速度測定値との差を算出し、その差を速度誤差として出力する。速度制御部37は、減算器35からの速度誤差に基づいて、モータ50への供給電流を決める電流指令を出力する。速度演算部39は、複数の位置測定値の変化率に基づいて速度測定値を演算する。あるいは、速度演算部39は、位置測定値を時間微分することにより、位置測定値から速度測定値へと変換してもよい。
【0021】
電流制御部40は、サーボ制御部30から電流指令を受け取ると、その電流指令に従った電流をモータ50へ供給する。これにより、モータ50は、上記位置指令で示された位置まで上記速度指令で示された速度で動作(回転)する。
【0022】
エンコーダ60は、モータ50の軸が所定の角度だけ回転するごとにパルスを出力する。あるいは、エンコーダ60は、そのパルスをサンプリング周期ごとに計数することによって、各サンプリング周期におけるモータ50の軸の回転位置(角度)を出力する。パルスまたはモータ50の軸の回転位置は、減算器31、速度演算部39またはメイン制御部10へフィードバックされる。これにより、減算器31、速度演算部39またはメイン制御部10は、モータ50の軸の回転位置を得ることができる。モータ50の回転速度は、サンプリング周期およびモータ50の回転位置から算出され得る。この演算は、エンコーダ60、速度演算部39またはメイン制御部10のいずれで実行してもよい。
【0023】
エンコーダ60は、モータ50の回転速度(角速度)または回転加速度(角加速度)を検出してもよい。メイン制御部10は、モータ50の加速度を時間積分することによってもモータ50の回転速度を得ることができる。このように、メイン制御部10は、エンコーダ60からの検出結果に基づいてモータ50の軸の回転速度を算出することができる。モータ50の軸の回転速度を示すパラメータを以下、速度パラメータと呼ぶ。速度パラメータは、モータ50の回転速度だけでなく、サンプリング周期ごとのエンコーダ60からのパルス数であってもよい。
【0024】
また、速度制御部37からの電流指令は、メイン制御部10へフィードバックされ、メイン制御部10は、電流指令に基づいてモータ50の回転トルクを算出する。モータ50の回転トルクは、電流指令の電流値にトルク係数を乗算することによって算出される。モータ50の軸の回転トルクを示すパラメータを以下、トルクパラメータと呼ぶ。
【0025】
トルクパラメータは、上述のように、モータ50の軸の回転トルクであってもよく、電流指令であってもよく、モータ50へ供給される電流測定値であってもよい。さらに、トルクパラメータは、モータ50の軸の回転トルクに対応するパラメータであればよく、例えば、モータによって動作する制御対象の加速度または圧力であってもよい。制御対象の加速度または圧力は、モータ50の軸の回転トルクに対応する(比例する)場合があるからである。メイン制御部10は、モータ50へ供給される電流値、制御対象の加速度または圧力のいずれかからモータ50の軸の回転トルクを算出してもよい。この場合、トルクパラメータは、メイン制御部10において算出された回転トルクとなる。
【0026】
表示操作部20は、メイン制御部10に接続されており、作業の条件、作業の進捗、消費電力等の様々な情報を表示する。また、表示操作部20は、メイン制御部10からトルクパラメータおよび速度パラメータを受けて、トルクパラメータと速度パラメータとの関係を示すグラフを表示する。オペレータは、表示操作部20を参照して作業の条件を選択あるいは変更するために表示操作部20を操作する。表示操作部20は、電動機械内に組み込んでもよく、あるいは、電動機械の外部のPC(Personal Computer)のディスプレイを用いてもよい。表示操作部20は、タッチパネル式ディスプレイとして操作部と一体に構成されたマンマシンインタフェースでもよい。勿論、操作部は、表示部と別体に設けられていてもよい。
【0027】
図2は、表示操作部20に表示されるトルクパラメータと速度パラメータとの関係の一例を示すグラフである。図3は、メイン制御部10においてトルクパラメータと速度パラメータとの関係を表示する動作を示すフロー図である。
【0028】
図2のグラフは、例えば、射出成形機のトルクパラメータと速度パラメータとの関係を示している。横軸は、モータ50の回転速度(min−1またはrpm)を示し、縦軸は、モータ50のトルク(kgf・cm)を示す。モータ50がリニアモータの場合、縦軸は推力を示す。即ち、このグラフは、モータ50のT−N特性を示している。モータ50のトルクは、速度制御部37からの電流指令にトルク係数を乗算することによって算出される。
【0029】
尚、横軸は、モータ50の回転速度に代えて、制御対象の速度あるいはエンコーダ60からのサンプリング周期ごとのパルス数等でもよい。即ち、横軸は、モータ50の回転速度を示すことができる速度パラメータであればよい。また、縦軸は、モータ50のトルクに代えて、電流指令で示される電流値あるいは電流制御部40から出力される実測電流値等でもよい。即ち、縦軸は、モータ50のトルクを示すことができるトルクパラメータであればよい。このように、図2に示すグラフは、オペレータが表示部20を参照したときに、モータ50のT−N特性を把握することができるグラフである。
【0030】
メイン制御部10は、エンコーダ60からのパルスまたはモータ50の回転位置をサンプリング周期ごとに得る(S10)。これにより、メイン制御部10は、モータ50の回転速度を算出することができる(S20)。代替的に、メイン制御部10は、速度演算部39からの速度測定値を受けて、速度測定値をそのままモータ50の回転速度として用いてもよい。
【0031】
ステップS10と同時にあるいはその前後において、メイン制御部10は、速度制御部37からの電流指令をサンプリング周期ごとに得る(S10)。これにより、メイン制御部10は、モータ50のトルクを算出することができる(S20)。代替的に、メイン制御部10は、電流制御部40からモータ50への電流測定値を入力し、その電流測定値からモータ50のトルクを演算してもよい。この場合、電流制御部40とモータ50との間に電流検出器(図示せず)を設ける。
【0032】
このように、メイン制御部10は、速度パラメータとしてモータ50の回転速度を算出し、トルクパラメータとしてモータ50のトルクを算出することができる。メイン制御部10は、モータの駆動に伴い、サンプリング周期ごとにほぼリアルタイムでモータ50の回転速度およびトルクを表示部20に表示する(S30)。これにより、図2に示すT−N特性の軌跡TRQが得られる。
【0033】
ここで、図2のリミット線LMTは、モータ50へ供給される電流の上限値に対応するトルクの上限値である。上述の通り、電流の上限値は、モータ50の回転速度が比較的低いときには高い値で維持されるが、モータ50の回転速度が比較的高くなると、電圧飽和の状態となり、電流の上限値は低下する。モータ50のトルクは、電流に比例して同様の傾向を有する。従って、リミット線LMTも、モータ50の回転速度が比較的低いときには高い値で維持されるが、モータ50の回転速度が比較的高くなると低下する。例えば、図2のグラフでは、リミット線LMTは、モータ50の回転速度が約1150rpm以上になると低下し始め、約1950rpm以上になるとほぼゼロとなる。
【0034】
トルクがリミット線LMTを超えると、モータ50を適切に制御することができなくなる可能性がある。この場合、モータ50は、異常に振動したり、機械や金型を壊してしまうことがある。従って、メイン制御部10およびサーボ制御部30は、トルクがリミット線LMTを超えないように、モータ50を制御する必要がある。
【0035】
尚、モータ50のT−N特性がリミット線LMTに接近し、警告領域Aalmに入った場合、メイン制御部10は、警告を発する。警告は、表示部20に警告情報を表示させることによって実行されてもよく、他の警告灯や警報器(図示せず)で実行してもよい。モータ50のT−N特性がリミット線LMTに接近し、警告領域Aalmに入った場合、メイン制御部10は、警告を発するとともに、モータ50または制御対象を保護するためにモータ50への供給電流を自動で低下させてもよい。
【0036】
例えば、モータ50が射出成形機の加熱バレル内の成形材料を押し出すスクリューを動作させる場合、軌跡TRQは、図2のグラフのように表示される。成形材料を金型内に射出するときに、モータ50の回転速度は速くなる。成形材料が金型内に充填されると、モータ50の回転速度は遅くなり、トルクが上昇する。また、成形材料を金型内に充填した後、保圧するときには、モータ50の回転速度はほぼゼロとなる。そして、次の射出のために成形材料を計量する場合、モータ50を逆回転させるために、モータ50のトルクおよび回転速度はともに負となる。
【0037】
尚、図2において、表示操作部20は、モータ50の回転速度およびトルクのそれぞれの絶対値を示している。従って、モータ50の回転速度が負値の場合、あるいは、モータ50のトルクが負値の場合であっても、表示操作部20は、回転速度およびトルクを第1象限に重ねて表示している。これは、電流またはトルクおよび回転速度がそれらの上限値に対してどの程度余裕があるかを把握するためには、モータ50の回転速度およびトルクの絶対値を第1象限のみに表示すれば足りるからである。このようにT−N特性を第1象限のみに表示することによって、オペレータは、電流またはトルクおよび回転速度の余裕度をより容易に把握することができる。
【0038】
一連の射出動作は、グラフの原点から開始され、原点で終了する。また、射出動作におけるモータ50のT−N特性は、上述のように各段階において特徴があるため、オペレータは、軌跡TRQを参照することによって、各段階における軌跡TRQを把握することができる。
【0039】
本実施形態による電動機械100は、表示操作部20にトルクパラメータと速度パラメータとの関係を示すグラフを表示させる。これにより、オペレータは、表示操作部20を見ることによって、モータ50かかる負荷を容易に把握することができ、電流またはトルクおよび回転速度がそれらの上限値までどの程度余裕があるかを容易に把握することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、メイン制御部10は、トルクパラメータと速度パラメータとの関係をサンプリング周期ごとにほぼリアルタイムで表示操作部20に表示させる。従って、オペレータは、モータ50の動作中にリアルタイムで監視することができる。これにより、異常の発見を短時間かつ容易にすることができる。
【0041】
電動機械は、一連のシーケンス動作を繰り返し実行する場合がある。この場合、表示操作部20は、複数のシーケンス動作に対応するT−N特性の軌跡TRQを重複して表示してもよい。これにより、モータ50の経時変化を容易に確認することができる。
【0042】
また、表示操作部20は、様々な条件、様々な金型、あるいは、様々な材料等で実行した軌跡TRQを重複して表示してもよい。これにより、条件、金型、あるいは、材料等によるT−N特性の相違を容易に確認することができる。
【0043】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態による、トルクパラメータと速度パラメータとの関係の一例を示すグラフである。第2の実施形態では、表示操作部20は、モータ50の回転速度およびトルクを第1象限〜第4象限を用いて表示している。第2の実施形態のその他の構成および動作は、第1の実施形態の対応する構成および動作と同じでよい。従って、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
さらに、第2の実施形態のように、モータ50の回転速度およびトルクを4つの象限で示した場合、モータ50の回転速度およびトルクのそれぞれの符号(正値または負値)が明確になる。これにより、オペレータは、モータ50が正回転しているのか、あるいは、逆回転しているのかをその場で容易に把握することができる。また、オペレータは、モータ50に印加されているトルクが正方向であるのか、あるいは、逆方向であるのかをもその場で容易に把握することができる。その結果、オペレータは、一連の動作の各段階における軌跡TRQをより容易に把握することができる。
【0045】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態による、トルクパラメータと速度パラメータとの関係の一例を示すグラフである。第3の実施形態では、表示操作部20は、トルクパラメータおよび速度パラメータをともに縦軸に示し、時間を横軸に示している。第3の実施形態のその他の構成および動作は、第1の実施形態の対応する構成および動作と同じでよい。従って、第3の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
さらに、第3の実施形態のように時間軸を表示した場合、オペレータは、一連の動作の各段階をより正確に把握することができる。但し、第3の実施形態では、第1および第2の実施形態のようにリミット線LMTを描画することはできない。
【0047】
(第1または第2の実施形態の変形例1)
変形例1による電動機械100では、表示操作部20は、モータ50のトルクパラメータおよび速度パラメータの変化速度を、グラフの軌跡TRQの線幅(太さ)で表現する。これにより、オペレータは、或るトルクおよび回転速度におけるモータ50の滞留時間を把握することができる。
【0048】
通常、T−N特性は、リミット線LMTの範囲内において、連続領域および加減速領域を有する。図6は、連続領域A1および加減速領域A2を示す図である。連続領域A1は、モータ50を連続的に駆動しても問題のないT−N特性の領域であり、比較的低トルクの領域である。加減速領域A2は、モータ50を連続的に駆動すると発熱等の問題が生じ得るT−N特性の領域であり、比較的高トルクの領域である。加減速領域A2は、モータ50の回転速度を加速しあるいは減速するときに一時的に短時間だけ用いてもよい領域である。
【0049】
変形例1によれば、オペレータは、連続領域A1および加減速領域A2におけるモータ50の滞留時間を把握することができる。もし、連続領域A1における軌跡TRQが太い場合、オペレータは動作条件に問題は無いと判断できる。もし、加減速領域A2における軌跡TRQが太い場合、オペレータは、必要に応じて動作条件を変更する。このように、変形例1によれば、オペレータは、軌跡TRQの線幅(太さ)を参照して、動作条件を設定することができる。尚、変形例1は、第1または第2の実施形態に適用することができる。
【0050】
(第1〜第3の実施形態の変形例2)
変形例2による電動機械100では、表示操作部20は、モータ50の温度変化、モータ50の軸の回転方向、あるいは、モータ50によって動作する制御対象の位置、作業の工程のいずれかを、軌跡TRQの線の色で表現する。これにより、オペレータは、T−N特性のグラフにおいて、モータ50の温度変化、モータ50の軸の回転方向、あるいは、モータ50によって動作する制御対象の位置のいずれかを容易に把握することができる。
【0051】
モータ50の温度変化を軌跡TRQの線の色で表現する場合、図1に示すように、モータ50に温度センサ70をさらに設ける。温度センサ70は、サンプリング周期ごとにほぼリアルタイムモータ50の温度を測定し、その温度測定値をサンプリング周期ごとにメイン制御部10へ送信する。メイン制御部10は、温度測定値に基づいて軌跡TRQの色を変更する。例えば、モータ50の温度が第1閾値より低い場合には、メイン制御部10は、軌跡TRQの色を青色で表示し、モータ50の温度が第1閾値を超えた場合には、メイン制御部10は、軌跡TRQの色を緑色で表示する。さらに、モータ50の温度が第2閾値(第2閾値>第1閾値)を超えた場合には、メイン制御部10は、軌跡TRQの色を黄色で表示する。その後、モータ50の温度が上昇するに従って、メイン制御部10は、軌跡TRQの色を橙色、赤色へと変化させる。これにより、オペレータは、表示操作部20に表示された軌跡TRQを参照すれば、T−N特性だけでなく、モータ50の温度も直感的に容易に把握することができる。モータ50の温度は、モータ50に掛かる負荷を示している。従って、モータ50の温度を把握することによって、オペレータは、モータ50に掛かる負荷を把握することができる。オペレータは、モータ50に掛かる負荷に基づいて、電動機械100の作業条件の設定を変更してもよい。また、メイン制御部10は、モータ50の温度が高い場合には、自動的にモータ50への供給電流を低減させてもよい。これにより、モータ50または制御対象を保護することができる。
【0052】
モータ50の軸の回転方向を軌跡TRQの線の色で表現する場合、例えば、メイン制御部10は、モータ50の軸の回転速度の符号(正値または負値)によって軌跡TRQの線の色を変える。例えば、モータ50が第1回転方向(例えば、回転速度が正値)である場合、メイン制御部10は、軌跡TRQの線を青色にする。モータ50が第1回転方向とは逆の第2回転方向(例えば、回転速度が負値)である場合、メイン制御部10は、軌跡TRQの線を赤色にする。これにより、オペレータは、モータ50の回転方向を直感的に容易に把握することができる。例えば、第1の実施形態では、表示操作部20は、モータ50のT−N特性を絶対値として第1象限のみを用いて表現している。このようにモータ50の軸の回転方向を軌跡TRQの線の色で表現すれば、T−N特性を第1象限のみで表示しても、オペレータは、T−N特性とモータ50の回転方向との関係を直感的に容易に把握することができる。
【0053】
表示操作部20は、モータ50によって動作する制御対象の位置を軌跡TRQの線の色で表現してもよい。例えば、制御対象が金型である場合、メイン制御部10は、金型の位置によって軌跡TRQの線の色を変える。これにより、オペレータは、T−N特性と金型の位置との関係を直感的に容易に把握することができる。
【0054】
表示操作部20は、作業の工程を軌跡TRQの線の色で表現してもよい。例えば、メイン制御部10は、射出成形の各段階(例えば、型閉、昇圧、充填、保圧、計量、型開、押出等)によって軌跡TRQの線の色を変える。これにより、オペレータは、T−N特性と射出成形の各段階との関係を直感的に容易に把握することができる。
【0055】
上記実施形態によるメイン制御部10におけるデータ処理方法の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、データ処理方法の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、データ処理方法の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
100・・・電動機械、10・・・メイン制御部、20・・・表示操作部、30・・・サーボ制御部、40・・・電流制御部、50・・・モータ、60・・・エンコーダ、31・・・減算器、33・・・位置制御部、35・・・減算器、37・・・速度制御部、39・・・速度演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6