特許第6203707号(P6203707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203707アポリポタンパク質CIII(APOCIII)発現の調節
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203707
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】アポリポタンパク質CIII(APOCIII)発現の調節
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20170914BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20170914BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   A61K48/00ZNA
   A61K31/7125
   A61P1/18
   !C12N15/00 A
【請求項の数】36
【全頁数】90
(21)【出願番号】特願2014-508166(P2014-508166)
(86)(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公表番号】特表2014-516516(P2014-516516A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012035694
(87)【国際公開番号】WO2012149495
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2014年11月10日
【審判番号】不服2016-10586(P2016-10586/J1)
【審判請求日】2016年7月13日
(31)【優先権主張番号】61/479,817
(32)【優先日】2011年4月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/595,009
(32)【優先日】2012年2月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595104323
【氏名又は名称】アイオーニス ファーマシューティカルズ, インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Ionis Pharmaceuticals,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100128750
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】ムリック,アダム
(72)【発明者】
【氏名】クルック,ロザンヌ・エム
(72)【発明者】
【氏名】グラハム,マーク・ジェィ
(72)【発明者】
【氏名】ドビー,ケネス・ダブリュ―
(72)【発明者】
【氏名】ベル,トーマス・エイ
(72)【発明者】
【氏名】リー,リチャード
【合議体】
【審判長】 關 政立
【審判官】 大久保 元浩
【審判官】 清野 千秋
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0264395(US,A1)
【文献】 特開平2−242158(JP,A)
【文献】 CMAJ,2007年,Vol.176,No.8,p.1113−1120
【文献】 日本臨床,2001年,Vol.59,増刊号 高脂血症(上),p.698−701
【文献】 Clinical Science,2008年,Vol.114,p.611−624
【文献】 The Journal of Biological Chemistry,1994年,Vol.269,No.38,p.23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-48/00
CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ApoCIIIを標的とする化合物を含む医薬組成物であって、ここで当該化合物は配列番号3の配列を含むまたは当該配列からなる修飾オリゴヌクレオチドを含み、そして動物における膵炎の治療、予防、遅延化、または改善のためのものである、前記医薬組成物。
【請求項2】
動物におけるCETPレベルを減少させるための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
動物におけるApoA1および/またはPON1を増加させるための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記動物が高トリグリセリド血症を有する、または高トリグリセリド血症のリスクにある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記動物が100〜200 mg/dL、100〜300 mg/dL、100〜400 mg/dL、100〜500 mg/dL、200〜500 mg/dL、300〜500 mg/dL、400〜500 mg/dL、500〜1000 mg/dL、600〜1000 mg/dL、700〜1000 mg/dL、800〜1000 mg/dL、900〜1000 mg/dL、500〜1500 mg/dL、1000〜1500 mg/dL、100〜2000 mg/dL、150〜2000 mg/dL、200〜2000 mg/dL、300〜2000 mg/dL、400〜2000 mg/dL、500〜2000 mg/dL、600〜2000 mg/dL、700〜2000 mg/dL、800〜2000 mg/dL、900〜2000 mg/dL、1000〜2000 mg/dL、1100〜2000 mg/dL、1200〜2000 mg/dL、1300〜2000 mg/dL、1400〜2000 mg/dL、または1500〜2000 mg/dLの間のトリグリセリドレベルを有する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記高トリグリセリド血症がフレデリクソンII型、IV型またはV型である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記動物が高トリグリセリド血症を引き起こす遺伝的欠陥を有し、前記遺伝的欠陥がヘテロ接合性LPL欠損またはApoCIII多型である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記動物が500 mg/dL以上のトリグリセリドレベルおよび/またはヘテロ接合性LPL欠損を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
食後トリグリセリドのクリアランスを増強するための、および/または食後トリグリセリドを減少させるための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
ApoCIIIが配列番号1または配列番号2に示される核酸配列を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記修飾型オリゴヌクレオチドが一本鎖修飾型オリゴヌクレオチドからなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記修飾型オリゴヌクレオチドが30個までの連結したヌクレオシドからなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記修飾型オリゴヌクレオチドが20個の連結したヌクレオシドからなる、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記修飾型オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシド間結合が修飾型ヌクレオシド間結合であり、ここで、修飾型オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシドが修飾型糖を含み、および/または修飾型オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシドが修飾型核酸塩基を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記修飾型オリゴヌクレオチドの各修飾型ヌクレオシド間結合がホスホロチオエートヌクレオシド間結合である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの修飾型糖が二環式糖である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの修飾型糖が2’−O−メトキシエチルを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記修飾型核酸塩基が5−メチルシトシンである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記修飾型オリゴヌクレオチドが、
(a)連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
(b)連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;
(c)連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント;
を含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、そして、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが修飾型糖を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記修飾型オリゴヌクレオチドが、
(a)8〜12個の連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
(b)1〜5個の連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;
(c)1〜5個の連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント;
を含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが2’−O−メトキシエチル糖を含み、各シトシンが5−メチルシトシンであり、そして、各ヌクレオシド間結合が.ホスホロチオエート結合である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記修飾型オリゴヌクレオチドが、
(a)10個の連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
(b)5個の連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;
(c)5個の連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント;
を含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、そして、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが2’−O−メトキシエチル糖を含み、各シトシンが5−メチルシトシンであり、そして、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記動物が、狭心症;胸部痛;息切れ;心悸亢進;虚弱;めまい;吐き気;発汗;頻脈;徐脈;不整脈;心房細動;下肢のむくみ;チアノーゼ;疲労;失神;顔面麻痺;四肢の麻痺;筋肉の跛行もしくは痙攣;腹部膨満;または発熱;のいずれか1つを含む症状を有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
ApoCIIIを標的とする修飾型オリゴヌクレオチドを含む医薬組成物であって、ここで当該修飾型オリゴヌクレオチドは配列番号3の配列を含むまたは当該配列からなり、ここで当該修飾型オリゴヌクレオチドはApoCIIIに対するアンチセンスであり、そして
(a)10個の連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
(b)5個の連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;
(c)5個の連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント;
を含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが2’−O−メトキシエチル糖を含み、各シトシンが5−メチルシトシンであり、そして、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合である、前記修飾型オリゴヌクレオチドを含み、そして
膵炎の治療、予防、遅延化、または改善のための、
前記医薬組成物。
【請求項24】
a) CETPレベルを減少させるための、および/または
b) ApoA1および/またはPON1を増加させるための、
請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記動物がヒトである、請求項1〜24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
後トリグリセリドのクリアランスを増強するための、または食後トリグリセリドを減少させるための、請求項23または24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記化合物またはオリゴヌクレオチドが非経口的に投与される、請求項1〜26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記非経口投与が皮下投与である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
第2薬剤と組み合わせて使用するための、請求項1〜28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記第2薬剤がApoCIII低下薬剤、コレステロール低下薬剤、非HDL脂質低下薬剤、LDL低下薬剤、TG低下薬剤、HDL上昇薬剤、魚油、ナイアシン、フィブラート、スタチン、DCCR(ジアゾキシドの塩)、グルコース低下薬剤または抗糖尿病剤から選択される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記動物が前記第2薬剤の最大忍容用量に応答することができない、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記第2薬剤が前記化合物またはオリゴヌクレオチドと同時または逐次的に投与される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記化合物またはオリゴヌクレオチドが塩の形態である、請求項1〜32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
化合物またはオリゴヌクレオチドが薬学的に許容可能な担体または希釈剤と組み合わされる、請求項1〜33のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記化合物またはオリゴヌクレオチドが複合体化アンチセンス化合物である、請求項1〜34のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記化合物またはオリゴヌクレオチドには、炭水化物複合体基が結合している、請求項35に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本願は電子形式の配列表と共に出願される。その配列表は、2012年4月27日に作製されたBIOL0130WOSEQ.TXTという表題の、サイズが8kbであるファイルとして提供される。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
動物においてアポリポタンパク質CIII(ApoCIII)のmRNAとタンパク質の発現を低下させるための方法、化合物および組成物、ならびにHDLまたはHDL活性を上昇させるための方法、化合物および組成物が本明細書において提供される。また、動物においてApoCIIIに関係する疾患または健康状態を軽減するためのApoCIII阻害剤についての方法、化合物および組成物も本明細書において提供される。
【背景技術】
【0003】
リポタンパク質は、タンパク質、リン脂質およびコレステロールからなる両親媒性被覆ならびにアシルグリセロールおよびコレステリルエステルからなる非極性コアから構成される球状のミセル様の粒子であり、前記非極性コアは前記両親媒性被覆によって覆われている。リポタンパク質はそれらの機能上の特性および物性に基づいて大きく5つの種類:カイロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、および高密度リポタンパク質(HDL)に分類されている。カイロミクロンは小腸から組織まで食餌性脂質を輸送する。VLDL、IDLおよびLDLは全て肝臓から組織までトリアシルグリセロールとコレステロールを輸送する。HDLは組織から肝臓まで内因性コレステロールを輸送する。
【0004】
リポタンパク質粒子は絶え間なく代謝処理を受け、様々な特性および組成を有する。リポタンパク質の外被の密度は内部コアの密度よりも低いので、リポタンパク質の密度は、粒子の直径を増大することなく増加する。リポタンパク質のタンパク質成分はアポリポタンパク質として知られる。様々なヒトリポタンパク質の中で少なくとも9種のアポリポタンパク質が大量に分布している。
【0005】
アポリポタンパク質C‐III(ApoCIII)はHDLと高トリグリセリド(TG)リポタンパク質の構成成分である。ApoCIIIの上昇は高トリグリセリド血症と関連する。したがって、ApoCIIIは冠動脈疾患のリスクファクターである高トリグリセリド血症に関与する(Davidsson et al., J. Lipid Res. 2005. 46: 1999-2006)。ApoCIIIは、リポタンパク質リパーゼの阻害とリポタンパク質の細胞表面グリコサミノグリカンマトリックスへの結合の干渉の両方を介して脂質分解を阻害することにより、高トリグリセリドリポタンパク質のクリアランスの速度を低下させる(Shachter, Curr. Opin. Lipidol., 2001, 12, 297-304)。
【0006】
3つの研究グループが1984年にヒトアポリポタンパク質C‐III(APOC3、APOC‐III、ApoCIII、およびAPOC‐IIIとも呼ばれる)をコードする遺伝子をクローニングした (Levy-Wilson et al., DNA, 1984, 3, 359-364; Protter et al., DNA, 1984, 3, 449-456; Sharpe et al., Nucleic Acid s Res., 1984, 12, 3917-3932)。そのコード 配列は3つのイントロンによって分断されている(Protter et al., DNA, 1984, 3, 449-456)。ヒトApoCIII遺伝子はアポリポタンパク質A‐1遺伝子の3’方向に対して約2.6kb離れて位置し、これらの2つの遺伝子は一点に収束するように転写される (Karathanasis, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 1985, 82, 6374-6378) 。通常の状態で高レベルの血清アポリポタンパク質C‐IIIを有する患者から、Thr74からAla74への変異を有するヒトアポリポタンパク質C‐IIIの異型体もクローニングされた。Thr74はO‐グリコシル化されるので、Ala74変異体では、したがって、炭水化物部分を欠くApoCIIIの血清中レベルが上昇することになる (Maeda et al., J. Lipid Res., 1987, 28, 1405-1409) 。ApoCIII発現を調節する他の異型または多型がその後特定された。その多形のいくつかはApoCIIIを増加させた。上昇したApoCIIIレベルには上昇したトリグリセリド(TG)レベル、ならびに心血管系疾患、メタボリックシンドローム、肥満および糖尿病などの疾患が伴った (Chan et al., Int J Clin Pract, 2008, 62:799-809; Onat et at., Atherosclerosis, 2003, 168:81-89; Mendivil et al., Circulation, 2011, 124:2065-2072)。
【0007】
前記遺伝子のプロモーター領域に5つの多型が特定されている:(前記遺伝子の位置−641の)CからAへの塩基転移、(前記遺伝子の位置−630の)GからAへの塩基転移、(前記遺伝子の位置−625の)Tの欠失、(前記遺伝子の位置−482の)CからTへの塩基転移および(前記遺伝子の位置−455の)TからCへの塩基転移。これらの多型の全てが3’非翻訳領域内のSstI多型と連鎖不平衡の関係にある。そのSstI多型部位がS1対立遺伝子およびS2対立遺伝子の区別となる。そして、S2対立遺伝子が血漿トリグリセリドレベルの上昇と関連付けられている (Dammerman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 1993, 90, 4562-4566) 。ApoCIIIプロモーターはインスリンによる下方制御を受けるが、この多型部位によってそのインスリン制御が消失する。したがって、インスリン制御の消失の結果として生じるApoCIIIの過剰発現の可能性が、S2対立遺伝子に関連付けられている高トリグリセリド血症の発生の原因因子であり得る (Li et al., J. Clin. Invest., 1995, 96, 2601-2605) 。TからCへの多型(前記遺伝子の位置−455)は冠動脈疾患のリスクの上昇と関連付けられている (Olivieri et al., J. Lipid Res., 2002, 43, 1450-1457) 。ApoCIIIおよび/またはトリグリセリドの発現上昇と関連付けられているヒトApoCIII遺伝子の他の多型には(位置1100の)CからTへの塩基転移、(位置3175の)CからGへの塩基転移、(位置3206の)TからGへの塩基転移、(位置3238の)CからGへの塩基転移、などが含まれる (Tilly et al., J. Lipid Res., 2003, 44:430-436; Waterworth et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol, 2000, 20:2663-2669; Petersen et al., N Engl J Med, 2010, 362:1082-1089) 。
【0008】
ApoCIII遺伝子発現の他の調節因子がインスリンに加えて特定されている。核内オーファン受容体rev−erbαの応答エレメントが前記遺伝子の位置−23〜−18、すなわち、ApoCIIIプロモーター領域内に位置している。Rev−erbαはApoCIIIプロモーター活性を低下させる (Raspe et al., J. Lipid Res., 2002, 43, 2172-2179) 。2つの核内因子CIIIb1およびCIIIB2によって前記遺伝子の位置−86から−74までのApoCIIIプロモーター領域が認識される (Ogami et al., J. Biol. Chem., 1991, 266, 9640-9646) 。ApoCIII発現はまたレチノイドX受容体を介して作用するレチノイドによって上方制御されており、そして、レチノイドX受容体の存在量の変化がApoCIII転写に影響を及ぼす (Vu-Dac et al., J. Clin. Invest., 1998, 102, 625-632) 。特異性タンパク質1(Sp1)および肝細胞核内因子‐4(HNF‐4)が相乗的に作用し、HNF‐4結合部位を介してアポリポタンパク質C‐IIIプロモーターをトランス活性化することが示されている (Kardassis et al., Biochemistry, 2002, 41, 1217-1228) 。HNF‐4はまたSMAD3‐SMAD4と併せて作用してApoCIIIプロモーターをトランス活性化する (Kardassis et al., J. Biol. Chem., 2000, 275, 41405-41414)。
【0009】
遺伝子導入マウスおよびノックアウトマウスにより脂質分解におけるApoCIIIの役割がさらに明らかにされている。遺伝子導入マウスでのApoCIIIの過剰発現により高トリグリセリド血症およびVLDL‐トリグリセリドのクリアランスの減損が引き起こされる (de Silva et al., J. Biol. Chem., 1994, 269, 2324-2335; Ito et al., Science, 1990, 249, 790-793) 。ApoCIIIタンパク質が全く存在しないノックアウトマウスは野生型マウスと比較して著しく低下した血漿中のコレステロールレベルおよびトリグリセリドレベルを示し、食後高トリグリセリド血から防護された (Maeda et al., J. Biol. Chem., 1994, 269, 23610-23616) 。
【0010】
全血漿ApoCIIIレベルは血清中トリグリセリドの主要な決定因子として特定されており、ApoCIIIとApoCIIIを構成成分として有するApoBリポタンパク質が独立して冠動脈性心疾患を予知することが疫学的な研究により示されている (Sacks et al., Circulation. 2000. 102: 1886-1892; Lee et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2003. 23: 853- 858) 。ApoCIIIは高トリグリセリドリポタンパク質のクリアランスにおける重要な決定因子であり、内臓肥満、インスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームを含む高グリセリド血状態におけるそのレムナントであることも研究により示されている (Mauger et al., J. Lipid Res. 2006. 47: 1212-1218; Chan et al., Clin. Chem. 2002. 278-283; Ooi et al., Clin. Sci. 2008. 114: 611-624) 。
【0011】
高トリグリセリド血症は心血管代謝疾患 (Hegele et al. 2009, Hum Mol Genet, 18: 4189-4194; Hegele and Pollex 2009, Mol Cell Biochem, 326: 35-43) ならびに最も重症の状態では急性膵炎の発生 (Toskes 1990, Gastroenterol Clin North Am, 19: 783-791; Gaudet et al. 2010, Atherosclerosis Supplements, 11: 55-60; Catapano et al. 2011, Atherosclerosis, 217S: S1-S44; Tremblay et al. 2011, J Clin Lipidol, 5: 37-44) のリスクの上昇と関連付けられている一般的な臨床的形質である。心血管代謝疾患の例には糖尿病、メタボリックシンドローム/インスリン抵抗性、ならびに家族性カイロミクロン血症、家族性複合型高脂血症および家族性高トリグリセリド血症などの遺伝的障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
高トリグリセリド血症は、高トリグリセリド(TG)リポタンパク質であるVLDLと、程度が低いが、カイロミクロン(CM)の生産の上昇および/またはその代謝の低下もしくは遅延の結果である。ボーダーラインの高TG(150〜199mg/dL)は一般集団に通常見いだされ、そして、それはメタボリックシンドローム/インスリン抵抗性状態の一般的な要素である。血漿TGレベルが上昇するつれ、背景にある遺伝的要因が益々重要な疫学的役割を果たすことを除いて、同じことが高TG(200〜499mg/dL)についても当てはまる。非常に高いTG(500mg/dL以上)は、ほとんどの場合CMレベルの上昇とも関連付けられており、それには急性膵炎のリスク上昇が伴う。TGが880mg/dL(10mmol超)を超える場合、膵炎のリスクは臨床的に重大であると考えられており、欧州アテローム性硬化症学会/欧州心臓病学会(EAS/ESC)2011年大会に出されたガイドラインは急性膵炎を予防する行動が必須であると述べている (Catapano et al. 2011, Atherosclerosis, 217S: S1-S44) 。EAS/ESC2011のガイドラインによると、高トリグリセリド血症は膵炎の全ての症例の約10%の原因であり、膵炎の発生は440〜880mg/dLの間のTGレベルで起こり得る。TGレベルの上昇はアテローム硬化性CVDの独立したリスクファクターであることを示す臨床試験の証拠に基づき、米国国立コレステロール教育プログラムの成人治療パネルIIIのガイドライン(NCEP 2002, Circulation, 106: 3143-421)もアメリカ糖尿病協会のガイドライン(ADA 2008, Diabetes Care, 31: S12-S54.) も心血管系のリスクを低下させるために150mg/dL未満の目標TGレベルを推奨している。
【0013】
ApoCIIIノックアウトマウスでは腸での脂質吸収と肝臓でのVLDLトリアシルグリセロール分泌は正常であったが、血漿からのVLDLトリアシルグリセロールとVLDLコレステリルエステルのクリアランスが急速であり、そのことが観察された低脂血を説明し得る (Gerritsen et al., J. Lipid Res. 2005. 46: 1466-1473; Jong et al., J. Lipid Res. 2001. 42: 1578-1585) 。高トリグリセリド血症での冠動脈性心疾患の高いリスクの特定にApoCIIIを有するVLDL粒子が主要な役割を果たすことが引証されている (Campos et al., J. Lipid Res. 2001. 42: 1239-1249) 。ゲノムワイド関連研究は、ランカスターのアーミッシュの人々にみられる自然発生のApoCIIIヌル変異は、明白な有害な作用がなく、良好な脂質プロファイルと明らかな心臓保護を示したことを見出した(Pollin et al., Science. 2008. 322: 1702-1705) 。その変異の保持者はより低いレベルの空腹時および食後の血清中トリグリセリドとLDL‐コレステロール、ならびにより高いレベルのHDL‐コレステロールを有することが観察される。
【0014】
HDLクラスのリポタンパク質は、密度が最も高く、サイズが最も小さい粒子の不均一で多分散系の集団を含む (Havel and Kane. In, The Metabolic & Molecular Bases of Inherited Disease. 8th Edition. McGraw-Hill, New York, 2001:2705-16) 。HDLは脂質(コレステロール、トリグリセリドおよびリン脂質)とタンパク質(アポリポタンパク質(apo)および酵素)からなる巨大分子複合体である。HDLの表面は主にアポリポタンパク質A、CおよびEを含有する。これらのアポタンパク質のうちのいくつかの機能は末梢組織から肝臓までHDLを方向付けることである。血清HDLレベルは背景となる遺伝的原因により影響され得る (Weissglas-Volkov and Pajukanta, J Lipid Res, 2010, 51:2032-2057)。
【0015】
HDLレベルの上昇が心血管系疾患または冠動脈性心疾患からの防護となることが疫学的研究により示されている (Gordon et al., Am. J. Med. 1977. 62: 707-714) 。HDLコレステロールのこれらの効果はトリグリセリドとLDLコレステロールの濃度から独立している。臨床診療では、低血漿HDLコレステロールはより一般的に、血漿トリグリセリドを増加させる他の障害、例えば、中心性肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病および腎臓病(慢性腎不全またはネフローゼ性タンパク尿症)と関連付けられている (Kashyap. Am. J. Cardiol. 1998. 82: 42U-48U) 。
【0016】
現在、ApoCIIIの機能に影響する公知の直接的な治療薬剤は存在しない。フィブラート系の薬品の低脂血性効果は、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)がアポリポタンパク質C‐IIIプロモーターからのHNF‐4の転置を仲介し、アポリポタンパク質C‐IIIの転写が抑制されることになる機序を介して起こると仮定されている(Hertz et al., J. Biol. Chem., 1995, 270, 13470-13475) 。スタチン類の低脂血症用薬品も、未知の機序を介してトリグリセリドレベルを低下させ、その未知の機序はリポタンパク質リパーゼmRNAの増加とアポリポタンパク質C‐IIIの血漿中レベルの低下をもたらす (Schoonjans et al., FEBS Lett., 1999, 452, 160-164) 。したがって、アポリポタンパク質C‐III機能を効果的に阻害することができるその他の薬剤について長らく感じられている必要性が残されている。
【0017】
アンチセンス技術は特定の遺伝子産物の発現を減少させる有効な手段として現れつつあり、したがって、それは、ApoCIIIの調節について多数の治療上、診断上および研究上の応用で独特の有用性を証明し得る。
【0018】
我々は、以前、米国特許出願公開第20040208856号(米国特許第7,598,227号)、米国特許出願公開第US20060264395号(米国特許第7,750,141号)および国際公開第2004/093783号中でアンチセンス化合物によりApoCIIIを阻害するための組成物および方法を開示している。本願では、我々は、ApoCIIIのアンチセンス阻害がHDLレベルの上昇と食後トリグリセリドレベルの低下をもたらしたという予期しなかった結果を開示する。この結果は、例えば、心血管系疾患(例えば、冠動脈性心疾患またはアテローム生成的疾患)など、任意の1つ以上の疾患を治療、予防、遅延化、軽減、または改善するのに有用となるであろう。例えば、食後(非空腹時)トリグリセリドレベルの上昇が心血管系疾患の重要なリスクファクターとして特定されている (Bansal et al., JAMA, 2007, 298:309-16; Nordestgaard et al., JAMA, 2007, 298:299-308) 。また、本願では、ApoCIII発現の阻害が、予期せぬことに、カイロミクロンクリアランスを上昇させることになり、したがって、それは、カイロミクロントリグリセリドの不適切なクリアランスを原因とする脂質異常状態であるカイロミクロン血症の予防にとって重要である (Chait et al., 1992, Adv Intern Med. 1992, 37:249-73) 。重症のカイロミクロン血症は生命にかかわる健康状態である膵炎を引き起こし得る。腸のApoCIIIを阻害すれば、リポタンパク質リパーゼの阻害が低下し、カイロミクロントリグリセリドクリアランスが増強され、それによって膵炎が予防されることとなるだろう。
【発明の概要】
【0019】
ApoCIIIを標的とする化合物を動物に投与することによりHDLレベルを上昇させる方法が本明細書において提供される。
【0020】
ある特定の実施形態は、ApoCIIIを標的とする化合物を動物に投与することを含む、前記動物において心血管系の疾患、障害または病気を予防する、治療する、改善する、その発症を遅らせる、またはそのリスクを軽減する方法を提供する。前記動物に投与された前記化合物は前記動物のHDLレベルを上昇させることにより心血管系の疾患、障害または病気を予防する、治療する、改善する、その発症を遅らせる、またはそのリスクを軽減する。
【0021】
ある特定の実施形態は、動物において心血管系疾患のリスクを軽減する方法であって、ApoCIII核酸に対して相補的である、12〜30個の連結したヌクレオシドからなる修飾型オリゴヌクレオチドを含む化合物の治療上有効量を前記動物に投与することを含む前記方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記ApoCIII核酸は配列番号1または配列番号2に示されるとおりである。ある特定の実施形態では、前記化合物は、12〜30個の連結したヌクレオシドからなり、ISIS304801(配列番号3)の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する修飾型オリゴヌクレオチドを含む。さらなる実施形態では、前記動物に投与される前記化合物はHDLレベルを上昇させることにより心血管系疾患のリスクを軽減する。
【0022】
ある特定の実施形態は、動物において心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減する方法であって、ApoCIII核酸に対して相補的である、12〜30個の連結したヌクレオシドからなる修飾型オリゴヌクレオチドを含む化合物の治療上有効量を前記動物に投与することを含む前記方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記ApoCIII核酸は配列番号1または配列番号2に示されるとおりである。ある特定の実施形態では、前記化合物は、12〜30個の連結したヌクレオシドからなり、ISIS304801(配列番号3)の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する修飾型オリゴヌクレオチドを含む。さらなる実施形態では、前記動物に投与される前記化合物は前記動物のHDLレベルを上昇させることにより前記動物で前記心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善または軽減する。
【0023】
ある特定の実施形態は、動物のHDLレベルを上昇させるためにISIS304801(配列番号3)からなる化合物を前記動物に投与することにより前記動物においてHDLレベルを上昇させる方法を提供する。
【0024】
ある特定の実施形態は、動物のHDLレベルを上昇させることにより前記動物において心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減するためにISIS304801(配列番号3)からなる化合物を前記動物に投与することによって前記動物における前記心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減する方法を提供する。
【0025】
ある特定の実施形態は、配列番号3(ISIS304801)の配列を有する修飾型オリゴヌクレオチドを動物に投与することにより前記動物のHDLレベルを上昇させる方法であって、前記修飾型オリゴヌクレオチドが10個の連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;5個の連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;5個の連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントを含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、そして、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが2’‐O‐メチオキシエチル糖を含み、各シトシンが5’‐メチルシトシンであり、そして、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合であり、前記修飾型オリゴヌクレオチドが前記動物のHDLレベルを上昇させる、前記方法を提供する。
【0026】
ある特定の実施形態は、ISIS304801(配列番号3)の配列を有する修飾型オリゴヌクレオチドを動物に投与することにより前記動物における心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減する方法であって、前記修飾型オリゴヌクレオチドが10個の連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;5個の連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;5個の連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントを含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、そして、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが2’‐O‐メチオキシエチル糖を含み、各シトシンが5’‐メチルシトシンであり、そして、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合であり、前記修飾型オリゴヌクレオチドが前記動物のHDLレベルを上昇させることにより前記心血管系疾患の前記動物における少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減する、前記方法を提供する。
【0027】
ある特定の実施形態は、動物のHDLレベルを上昇させるために配列番号1または配列番号2に示されるようなApoCIII核酸に対して相補的である、12〜30個の連結したヌクレオシドからなる修飾型オリゴヌクレオチドを含む化合物を前記動物に投与することにより前記動物のHDLレベルを上昇させる方法を提供する。
【0028】
ある特定の実施形態は、動物のHDLレベルを上昇させることにより前記動物における心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減するために配列番号1または配列番号2に示されるようなApoCIII核酸に対して相補的である、12〜30個の連結したヌクレオシドからなる修飾型オリゴヌクレオチドを含む化合物を前記動物に投与することによって前記動物における前記心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減する方法を提供する。
【0029】
ある特定の実施形態は、動物にApoCIIIを標的とする化合物を投与することによりCETPレベルを低下させる方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記化合物は、12〜30個の連結したヌクレオシドからなり、ApoCIII核酸に対して相補的である核酸塩基配列を有する修飾型オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、前記核酸塩基配列はISIS304801(配列番号3)の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む。ある特定の実施形態では、前記化合物はISIS304801(配列番号3)の前記核酸塩基からなる。
【0030】
ある特定の実施形態は、ApoCIIIを標的とする化合物を動物に投与することによりApoA1、PON1、脂肪クリアランス、カイロミクロントリグリセリドクリアランス、食後トリグリセリドクリアランスまたはHDLを上昇させる方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記化合物は、12〜30個の連結したヌクレオシドからなり、ApoCIII核酸に対して相補的な核酸塩基配列を有する修飾型オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、前記核酸塩基配列はISIS304801(配列番号3)の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む。ある特定の実施形態では、前記化合物はISIS304801(配列番号3)の前記核酸塩基からなる。
【0031】
ある特定の実施形態は、膵炎を予防、遅延化、または改善する方法であって、(a)膵炎の動物、または膵炎のリスクがある動物を選択すること、および(b)ApoCIIIを標的とする化合物を前記動物に投与することを含み、そこで前記膵炎が予防、遅延化、または改善される前記方法を提供する。
【0032】
ある特定の実施形態は、膵炎を予防、遅延化、または改善する方法であって、(a)膵炎の動物、または膵炎のリスクがある動物を選択すること、および(b)ApoCIIIを標的とする化合物を前記動物に投与し、それによりカイロミクロンクリアランスを上昇させることを含み、そこで前記膵炎が予防、遅延化、または改善される前記方法を提供する。
【0033】
ある特定の実施形態では、前記動物は高トリグリセリド血症である、または高トリグリセリド血症のリスクがある。ある特定の実施形態では、前記高トリグリセリド血症はフレデリクソンII型、IV型またはV型である。ある特定の実施形態では、前記動物は高トリグリセリド血症を引き起こす遺伝的欠陥を有する。ある特定の実施形態では、前記遺伝的欠陥はヘテロ接合性LPL欠損またはApoCIII多型である。ある特定の実施形態では、前記動物は500mg/dL以上のトリグリセリドレベルおよびヘテロ接合性LPL欠損を有する。
【0034】
ある特定の実施形態では、前記動物は100〜200mg/dL、100〜300mg/dL、100〜400mg/dL、100〜500mg/dL、200〜500mg/dL、300〜500mg/dL、400〜500mg/dL、500〜1000mg/dL、600〜1000mg/dL、700〜1000mg/dL、800〜1000mg/dL、900〜1000mg/dL、500〜1500mg/dL、1000〜1500mg/dL、100〜2000mg/dL、150〜2000mg/dL、200〜2000mg/dL、300〜2000mg/dL、400〜2000mg/dL、500〜2000mg/dL、600〜2000mg/dL、700〜2000mg/dL、800〜2000mg/dL、900〜2000mg/dL、1000〜2000mg/dL、1100〜2000mg/dL、1200〜2000mg/dL、1300〜2000mg/dL、1400〜2000mg/dL、または1500〜2000mg/dLの間のトリグリセリドレベルを有する。
【0035】
ある特定の実施形態では、カイロミクロンクリアランスの上昇が食後トリグリセリドのクリアランスを増強する、および/または食後トリグリセリドを減少させる。
【0036】
ある特定の実施形態は、HDLレベルを上昇させることにより心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減するためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。
【0037】
ある特定の実施形態は、動物においてHDLレベルを上昇させるための ApoCIIIを標的とした化合物の使用法 を提供する。
【0038】
ある特定の実施形態は、動物においてHDLレベルを上昇させるための医薬の調製のためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。
【0039】
ある特定の実施形態は、TGのHDLに対する比率を改善するための医薬の調製のためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
特許請求の範囲で請求されるように、前述の概要および下記の詳細な説明の両方が例示および説明のみを目的とし、本発明を限定するものではないことが理解されるものとする。本明細書において、単数形の使用は、別途特に明言されない限り、複数形を包含する。本明細書で使用される場合、「または(or)」の使用は、別途明言されない限り、「および/または(and/or)」を意味する。さらに、「含んでいる(including)」という用語ならびに「含む(includes)」および「含んだ(included)」などの他の語形の使用は非限定的である。また、「要素(element)」または「成分(component)」などの用語は、別途特に明言されない限り、1つの単位を含む複数の要素および成分ならびに1つより多い副単位を含む複数の要素および成分の両方を包含する。
【0041】
本明細書で使用されている表題部は文書の構成のみを目的としており、記載内容を限定するものと解釈されてはならない。本願で引用される、特許、特許出願、記事、書籍および学術論文を含むが、これらに限定されないあらゆる文書、または文書の一部が、本明細書で考察される文書の一部ならびにそれらの全体についての参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0042】
定義
特定の定義が提供されない限り、本明細書に記載される、分析化学、合成有機化学および医化学および薬化学に関連して使用される命名法、およびそれらの方法および技術は周知であり、当技術分野において一般に使用される。化学合成および化学分析に標準的な技法を使用することができる。許される場合、あらゆる特許、特許出願、特許出願公開、および他の論文発表、GENBANK受託番号、および国立生物工学情報センター(NCBI)などのデータベースから得ることができる関連の配列情報、および本開示を通して参照される他のデータが、本明細書で考察される文書の一部ならびにそれらの全体について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
別途指示されない限り、以下の用語は次の意味を有する。
【0044】
「2’‐O‐メトキシエチル」(2’−MOE、2’−O(CH−OCHおよび2’−O−(2−メトキシエチル)とも)はフロシル環の2’位のO−メトキシ‐エチル修飾を指す。2’‐O‐メトキシエチル修飾型糖は修飾型糖である。
【0045】
「2’‐O‐メトキシエチルヌクレオチド」は2’‐O‐メトキシエチル修飾型糖部分を含むヌクレオチドを意味する。
【0046】
「3’標的部位」は、特定のアンチセンス化合物の最も3’側にあるヌクレオチドに相補的である標的核酸のヌクレオチドを指す。
【0047】
「5’標的部位」は、特定のアンチセンス化合物の最も5’側にあるヌクレオチドに相補的である標的核酸のヌクレオチドを指す。
【0048】
「5‐メチルシトシン」は、5’位に結合したメチル基で修飾されたシトシンを意味する。5‐メチルシトシンは修飾型核酸塩基である。
【0049】
「約」はある値の±10%以内を意味する。例えば、「マーカーが約50%増加し得る」と述べられる場合、それは、そのマーカーが45%から55%の間の値だけ増加し得ることを暗に意味する。
【0050】
「活性薬剤」は、個体に投与されると治療上の利益をもたらす医薬組成物中の単数の物質または複数の物質を意味する。例えば、ある特定の実施形態では、ApoCIIIを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドが活性薬剤である。
【0051】
「活性標的領域」または「標的領域」は1つ以上の活性アンチセンス化合物が標的とする領域を意味する。「活性アンチセンス化合物」は、標的核酸レベルまたはタンパク質レベルを低減させるアンチセンス化合物を意味する。
【0052】
「同時に投与される」は、2つの薬剤の両方の薬理学的効果が同時に患者で現れるあらゆる方法でのそれらの薬剤の共投与を指す。同時投与は、両方の薬剤が単一の医薬組成物、同一の剤形または同一の投与経路で投与されることを必要としない。両方の薬剤の効果が同時に発現することを必要としない。ある期間効果が重なっているだけでよく、同一の期間に効果が存在する必要は無い。
【0053】
「投与」は個体に医用薬剤を提供することを意味し、そして、医療従事者による投与および自己投与を含むがこれらに限定されない。
【0054】
「薬剤」は、動物に投与されると治療上の利益を提供し得る活性物質を意味する。「第1薬剤」は、本発明の治療用化合物を意味する。例えば、第1薬剤はApoCIIIを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。「第2薬剤」は本発明の第2治療用化合物(例えば、ApoCIIIを標的とする第2アンチセンスオリゴヌクレオチド)および/または非ApoCIII治療用化合物を意味する。
【0055】
「改善」は、関連の疾患、障害または健康状態の少なくとも1つの指標、徴候または症状の減少を指す。指標の重症度は当業者に知られている主観的測定方法または客観的測定方法により決定され得る。
【0056】
「動物」はヒトまたは非ヒト動物を指し、非ヒト動物はマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタおよび非ヒト霊長類を含むが、これらに限定されず、非ヒト霊長類はサルおよびチンパンジーを含むが、これらに限定されない。
【0057】
「アンチセンス活性」は、アンチセンス化合物のその標的核酸へのハイブリダイゼーションに帰することができるあらゆる検出可能または測定可能な活性を意味する。ある特定の実施形態では、アンチセンス活性は、標的核酸またはそのような標的核酸によりコードされるタンパク質の量または発現の低下である。
【0058】
「アンチセンス化合物」は、水素結合を介して標的核酸にハイブリダイゼーションすることができるオリゴマー性化合物を意味する。本明細書で使用される場合、「アンチセンス化合物」という用語は、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容可能な誘導体を包含する。
【0059】
「アンチセンス阻害」は、標的核酸に相補的であるアンチセンス化合物の存在下で、そのアンチセンス化合物が存在しないときの標的核酸レベルまたは標的タンパク質レベルと比較した、標的核酸レベルまたは標的タンパク質レベルの低下を意味する。
【0060】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、標的核酸の対応する領域または区域へのハイブリダイゼーションを可能とする核酸塩基配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。本明細書で使用される場合、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容可能な誘導体を包含する。
【0061】
「ApoCIII」は、ApoCIIIをコードする任意の核酸またはタンパク質を意味する。例えば、ある特定の実施形態では、ApoCIIIは、ApoCIIIをコードするDNA配列、ApoCIIIをコードするDNAから転写されるRNA配列(イントロンおよびエクソンを含むゲノムDNAを包含する)、ApoCIIIをコードするmRNA配列、またはApoCIIIをコードするペプチド配列を包含する。
【0062】
「ApoCIII mRNA」はApoCIIIタンパク質をコードするmRNAを意味する。
【0063】
「ApoCIIIタンパク質」はApoCIIIをコードする任意のタンパク質配列を意味する。
【0064】
「アテローム性動脈硬化」は大動脈および中等動脈を冒す動脈の硬化を意味し、脂肪性沈着物の存在を特徴とする。その脂肪性沈着物は「アテローム」または「プラーク」と呼ばれ、主にコレステロールとその他の脂肪、カルシウムおよび瘢痕組織からなり、動脈の裏層を損傷する。
【0065】
「二環式糖」は、2個の非ジェミナル環原子の架橋により修飾されたフロシル環を意味する。二環式糖は修飾型糖である。
【0066】
「二環式核酸」または「BNA」は、ヌクレオシドまたはヌクレオチドのフラノース部分がフラノース環上の2個の炭素原子を連結する架橋を含み、それにより二環式系を形成しているヌクレオシドまたはヌクレオチドを指す。
【0067】
「キャップ構造」または「末端キャップ部分」は、アンチセンス化合物のどちらかの末端に組み込まれている化学修飾を意味する。
【0068】
「心血管系疾患」または「心血管系障害」は、心臓、血管、または循環に関連する一群の健康状態を指す。心血管系疾患の例には動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化、脳血管系疾患(脳卒中)、冠動脈性心疾患、高血圧、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症および高コレステロール血症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
「化学的に異なる領域」は、あるアンチセンス化合物の別の領域と何らかの点で化学的に異なる同一のアンチセンス化合物のある領域を指す。例えば、2’‐O‐メトキシエチルヌクレオチドを有する領域は2’‐O‐メトキシエチル修飾が無いヌクレオチドを有する領域と化学的に異なる。
【0070】
「キメラアンチセンス化合物」は、少なくとも2つの化学的に異なる領域を有するアンチセンス化合物を意味する。
【0071】
「コレステロール」はあらゆる動物組織の細胞膜に見出されるステロール分子である。コレステロールは、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)を含むリポタンパク質によって動物の血漿中に輸送されなければならない。「血漿コレステロール」は血漿または血清中に存在する全てのリポタンパク質(VDL、IDL、LDL、HDL)エステル化および/または非エステル化コレステロールの総計を指す。
【0072】
「コレステロール吸収阻害剤」は食事から得た外来性のコレステロールの吸収を阻害する薬剤を意味する。
【0073】
「共投与」は2つ以上の薬剤の個体への投与を意味する。その2つ以上の薬剤は単一の医薬組成物の形状であり得るし、別々の医薬組成物の形状でもあり得る。2つ以上の薬剤のそれぞれが同一の、または異なる投与経路を介して投与され得る。共投与は並行投与または順次投与を包含する。
【0074】
「相補性」は第1核酸と第2核酸の核酸塩基間で対合する能力を意味する。ある特定の実施形態では、第1核酸と第2核酸の間の相補性は2つのDNA鎖の間、2つのRNA鎖の間、またはDNA鎖とRNA鎖の間の相補性であり得る。ある特定の実施形態では、一方の鎖の核酸塩基のいくつかが他方の鎖の相補的で水素結合を行う塩基と合致する。ある特定の実施形態では、一方の鎖の核酸塩基の全てが他方の鎖の相補的で水素結合を行う塩基と合致する。ある特定の実施形態では、第1核酸がアンチセンス化合物であり、第2核酸が標的核酸である。ある特定のそのような実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドが第1核酸であり、標的核酸が第2核酸である。
【0075】
「連続核酸塩基」は互いに直ぐ隣接する核酸塩基を意味する。
【0076】
「拘束エチル」または「cEt」は、4’炭素原子および2’炭素原子の間にメチル(メチレンオキシ)(4’−CH(CH)−O−2’)架橋を含むフラノース糖を有する二環式ヌクレオシドを指す。
【0077】
「交差反応性」は、1つの核酸配列を標的とするオリゴマー性化合物が異なる核酸配列にハイブリダイズすることができることを意味する。例えば、いくつかの例では、ヒトApoCIIIを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドはマウスApoCIIIと交差反応することができる。オリゴマー性化合物がその指定された標的以外の核酸配列に交差反応するかどうかは、その化合物が非標的核酸配列と有する相補性の程度に依存する。オリゴマー性化合物と非標的核酸の間の相補性が高いほど、そのオリゴマー性化合物がその核酸と交差反応する可能性がより高い。
【0078】
「治癒」は、健康を回復する方法、または病気に処方された治療を意味する。
【0079】
「冠動脈性心疾患(CHD)」は、心臓に血液と酸素を供給する小血管の狭窄を意味し、それは多くの場合アテローム性動脈硬化の結果である。
【0080】
「デオキシリボヌクレオチド」は、ヌクレオチドの糖部分の2’位に水素を有するヌクレオチドを意味する。デオキシリボヌクレオチドは様々な置換基のうちのいずれかにより修飾され得る。
【0081】
「真性糖尿病」または「糖尿病」は、不十分なレベルのインスリンまたはインスリン感受性の低下に起因する代謝乱調および異常高血糖(高血糖症)を特徴とする症候群である。特徴的な症状は、高血糖レベルが原因の大量の尿の産生(多尿症)、排尿の増加を補償しようとする多渇と水分摂取の増加(多飲症)、眼の光学系への高血糖の影響が原因の霞視、原因不明の体重減少および気力、活力の欠如である。
【0082】
「糖尿病性脂質異常症」または「脂質異常症併発2型糖尿病」は、2型糖尿病、HDL‐C低下、トリグリセリド上昇および高密度小LDL粒子の増加を特徴とする健康状態を意味する。
【0083】
「希釈剤」は、薬理学的活性は無いが、薬学的に必要な、または望ましい組成物中の成分を意味する。例えば、注射組成物中の希釈剤は液体、例えば、生理食塩水であり得る。
【0084】
「脂質異常症」は、脂質および/またはリポタンパク質の過剰産生または欠乏を含む、脂質代謝および/またはリポタンパク質代謝の障害を指す。脂質異常症は、カイロミクロン、コレステロールおよびトリグリセリドなどの脂質ならびに低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールなどのリポタンパク質の増加が徴候として現れ得る。脂質異常症の例はカイロミクロン血症である。
【0085】
「投薬単位」は、医薬が提供される形状、例えば、丸剤、錠剤、または当技術分野において公知の他の投薬単位を意味する。ある特定の実施形態では、投薬単位は凍結乾燥アンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するバイアルである。ある特定の実施形態では、投薬単位は加水して再構成したアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するバイアルである。
【0086】
「用量」は、単回投与で、または特定の期間に提供される医薬の特定の量を意味する。ある特定の実施形態では、1、2、またはそれ以上の単位のボーラス、錠剤または注射で用量が投与され得る。例えば、皮下投与が望ましいある特定の実施形態では、所望の用量が単回注射では容易に処理されない体積を必要とし、それ故、所望の用量を達成するために2回以上の注射が用いられ得る。ある特定の実施形態では、医薬が長時間にわたる点滴によって、または持続的に投与される。用量は1時間、1日、1週間または1か月当たりの医薬の量と述べることができる。用量はmg/kgまたはg/kgとして記述することもできる。
【0087】
「有効量」または「治療上有効量」は、活性医薬の、その薬剤を必要とする個体において所望の生理的結果を生じさせるのに十分な量を意味する。有効量は、治療される個体の健康状態および生理状態、治療される個体の分類群、組成物の剤形、個体の医学的状態の評価、および他の妥当な要因に応じて個体間でまちまちであり得る。
【0088】
「フレデリクソン」系は、脂質異常症の主因(遺伝的原因)をいくつかの亜群または型に分類するために使用される。本明細書において開示される化合物を用いる治療法を受けることができる脂質異常症の型にはフレデリクソンII型、IV型およびV型が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
「フレデリクソンI型」はいくつかの形態で存在する。1a型はLPLの欠損または変異型apoC‐IIに起因する欠損である。Ib型は家族性アポプロテインCII欠損であり、リポタンパク質リパーゼ活性化因子の欠如に起因する健康状態である。そして、Ic型はリポタンパク質リパーゼの循環阻害剤に起因するカイロミクロン血症である。I型は通常小児期に存在するまれな障害である。それは、腹痛、再発性急性膵炎、発疹状皮膚黄色腫および肝脾腫というエピソードと共に非常に高いカイロミクロンレベルと非常に高いTGレベル(常に、1000mg/dLを優に超え、10,000mg/dL以上まで上昇することも少なくない)を特徴とする。おそらく、患者の血漿リポタンパク質粒子が動脈内皮に入り込むには大きすぎるので、患者がアテローム性動脈硬化を発生することはまれである(Nordestgaard et al., J Lipid Res, 1988, 29:1491-1500; Nordestgaard et al., Arteriosclerosis, 1988, 8:421-428)。I型は通常LPL遺伝子かその遺伝子の補因子であるapoC‐IIのどちらかの変異を原因とし、それに冒された個体は機能的に活性型のLPLを産生することができなくなる。患者はそのような変異についてホモ接合型であるか、複合ヘテロ接合型である。有病率は、一般集団について1,000,000人につき約1人であり、南アフリカとケベック東部では創始者効果のため有病率はそれよりずっと高い。患者はTG低下薬へ軽微な程度で反応するか、全く反応せず (Tremblay et al., J Clin Lipidol, 2011, 5:37-44; Brisson et al., Pharmacogenet Genom, 2010, 20:742-747) 、したがって、このまれな障害を管理するために1日20グラム以下の食餌性脂肪の制限が用いられる。
【0090】
「フレデリクソンII型」は原発性高脂血症の最も一般的な形態である。それは主に、LDLコレステロール(LDL‐C)に加えてVLDLの上昇が存在するかどうかに応じて、IIa型とIIb型にさらに分類される。IIa型(家族性高コレステロール血症)は(食餌性要因のため)孤発性、多因子性、または19番染色体状のLDL受容体遺伝子の変異(集団の0.2%)かアポリポタンパク質B(apoB)遺伝子の変異(0.2%)のどちらかの結果として真に家族性であり得る。家族性型は腱黄色腫、黄色板症および早発性心血管系疾患を特徴とする。この疾患の発生率は、ヘテロ接合体については500人につき約1人であり、ホモ接合体については1,000,000人につき約1人である。IIb型(家族性複合型高リポタンパク質血症としても知られる)は、LDL‐CとVLDLの上昇を原因とする複合型の高脂血症(高コレステロールレベルおよび高TGレベル)である。高VLDLレベルはTG、アセチルCoAを含む基質の過剰生産とB‐100合成の増大を原因とする。それらはLDLのクリアランスの低下によっても引き起こされ得る。集団内の有病率は約10%である。
【0091】
「フレデリクソンIII型」(異常βリポタンパク質血症としても知られる)はレムナント除去病(remnant removal disease)またはブロードβ病(broad−beta disease)である (Fern et al., J Clin Pathol, 2008, 61:1174-118)。それは高コレステロールVLDL(β‐VLDL)を原因とする。通常、この健康状態を有する患者は、カイロミクロンとVLDLレムナント(例えば、IDL)のクリアランスの減損のため上昇した血漿コレステロールレベルおよびTGレベルを有する。その減損したクリアランスはアポリポタンパク質E(apoE)の欠陥に起因する。レムナントに含まれる正常に機能するapoEならLDL受容体への結合と循環からの除去が可能だろう。それに冒されている個体はレムナントの蓄積の結果として、黄色腫症と早発性冠状血管系疾患および/または末梢血管系疾患になり得る。III型の最も一般的な原因はapoE E2/E2遺伝子型の存在である。その有病率は10,000人につき約1人であると推定されている。
【0092】
「フレデリクソンIV型」(家族性高トリグリセリド血症としても知られる)は集団中に約1%の頻度で生じる常染色体優性健康状態である。肝臓によるVLDLの過剰生産またはヘテロ接合性LPL欠損の結果としてTGレベルが上昇するが、それはほとんど常に1000mg/dL未満である。血清中コレステロールレベルは通常正常な限度内にある。その障害はヘテロ接合性であり、その表現型は環境要因、特に、炭水化物とエタノールの消費に大いに影響される。
【0093】
「フレデリクソンV型」は高VLDLと高カイロミクロンを有する。それは、少なくとも20%のLPL活性(すなわち、フレデリクソンI型と対照的な部分的LPL欠損症)と関連付けられている機能欠失型LPL遺伝子異型の保因者を特徴とする。これらの患者は、カイロミクロンとVLDLが原因で、乳状の血漿と重症の高トリグリセリド血症を示す。TGレベルは常に1000mg/dLを越え、総コレステロールレベルは常に高い。LDL‐Cレベルは通常低い。それは急性膵炎、耐糖能障害および高尿酸血症のリスク上昇とも関連がある。症状は一般に成人(35歳よりも上)に現れ、有病率は比較的に低いが、それはホモ接合性LPL欠損患者または複合ヘテロ接合性LPL欠損患者よりもずっと一般的である。
【0094】
「完全に相補的な」または「100%相補的な」は、第1核酸の核酸塩基配列の各核酸塩基が第2核酸の第2核酸塩基配列中に相補的な核酸塩基を有することを意味する。ある特定の実施形態では、第1核酸はアンチセンス化合物であり、そして、第2核酸が標的核酸である。
【0095】
「ギャップマー」は、1つ以上のヌクレオシドを有する外部領域の間にRNase H切断を助ける複数のヌクレオシドを有する内部領域が位置し、内部領域を含むヌクレオシドが外部領域を含む単数のヌクレオシドまたは複数のヌクレオシドと化学的に明確に異なるキメラアンチセンス化合物を意味する。その内部領域を「ギャップ」または「ギャップセグメント」と呼称することができ、そして、その外部領域を「ウイング」または「ウイングセグメント」と呼称することができる。
【0096】
「ギャップが拡張した」は、1個から6個までのヌクレオシドを有する5’および3’ウイングセグメントの間に、およびそれらに直ぐに隣接して位置する12個以上の連続する2’−デオキシリボヌクレオシドのギャップセグメントを有するキメラアンチセンス化合物を意味する。
【0097】
「グルコース」はエネルギー源および炎症性中間物として細胞によって使用される単糖である。「血漿グルコース」は血漿中に存在するグルコースを指す。
【0098】
「高密度リポタンパク質‐C(HDL‐C)」は高密度リポタンパク質粒子と結合したコレステロールを意味する。血清(または血漿)中のHDL‐Cの濃度は通常mg/dLまたはnmol/L単位で定量される。「HDL‐C」および「血漿HDL‐C」は、それぞれ、血清中および血漿中のHDL‐Cを意味する。
【0099】
「HMG‐CoAレダクターゼ阻害剤」は、酵素HMG‐CoAレダクターゼの阻害により作用する、アトルバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチンなどの薬剤を意味する。
【0100】
「ハイブリダイゼーション」は相補的な核酸分子のアニーリングを意味する。ある特定の実施形態では、相補的な核酸分子にはアンチセンス化合物と標的核酸が含まれる。
【0101】
「高コレステロール血症」は、成人での高コレステロールの検出、治療の評価についての米国国立コレステロール教育プログラム(NCEP)の専門化パネル報告のガイドライン(Arch. Int. Med. (1988) 148, 36-39を参照のこと)によれば、コレステロール、すなわち、循環(血漿)コレステロール、LDL−コレステロールおよびVLDL−コレステロールの上昇を特徴とする健康状態を意味する。
【0102】
「高脂質血症」または「高脂肪血症」は、血清中脂質または循環(血漿中)脂質の上昇を特徴とする健康状態である。この健康状態は異常に高濃度の脂肪を示す。循環血液中の脂質画分はコレステロール、低密度リポタンパク質、超低密度リポタンパク質、カイロミクロン、およびトリグリセリドである。高脂血症のフレデリクソン分類は、電気泳動または超遠心分離により測定されるようなTGと高コレステロールリポタンパク質粒子のパターンに基づき、高トリグリセリド血症などの高脂血症の主因を特徴づけるために通常使用される (Fredrickson and Lee, Circulation, 1965, 31:321-327; Fredrickson et al., New Eng J Med, 1967, 276 (1): 34-42) 。
【0103】
「高トリグリセリド血症」はトリグリセリドレベルの上昇を特徴とする健康状態を意味する。その病因には一次的要因(すなわち、遺伝的原因)および二次的要因(糖尿病、メタボリックシンドローム/インスリン抵抗性、肥満、運動不足、喫煙、過剰なアルコールおよび炭水化物が非常に多い食事などの他の遠因)、または、最も頻度が高いが、両方の組合せが含まれる(Yuan et al. CMAJ, 2007, 176:1113-1120)。
【0104】
代謝性疾患または心血管系疾患を有する動物を「特定すること」または「選択すること」は、代謝性疾患、心血管系疾患もしくはメタボリックシンドロームになりやすい対象、もしくは代謝性疾患、心血管系疾患もしくはメタボリックシンドロームと診断されている対象を特定もしくは選択すること、または、高コレステロール血症、高血糖症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高血圧、インスリン抵抗性の上昇、インスリン感受性の低下、正常値を超える体重、および/もしくは正常値を超える体脂肪、もしくはこれらのあらゆる組合せを含むが、これらに限定されない代謝性疾患、心血管系疾患もしくはメタボリックシンドロームの任意の症状を有する対象を特定もしくは選択することを意味する。そのような特定は、血清または循環(血漿)コレステロールの測定、血清または循環(血漿)血糖の測定、血清または循環(血漿)トリグリセリドの測定、血圧の測定、体脂肪量の測定、体重測定などのような標準的な臨床試験または臨床評価を含むが、これらに限定されない任意の方法により達成され得る。
【0105】
「心血管系の転帰の改善」は有害な心血管系事象の発生、またはそのリスクの低下を意味する。有害な心血管系事象の例には死、再梗塞、脳卒中、心原性ショック、肺浮腫、心停止、および心房律動異常が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
「直ぐ隣接する」は、直ぐ隣接する要素の間、例えば、領域、セグメント、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシドの間に介在性要素が存在しないことを意味する。
【0107】
「HDLの増加」または「HDLの上昇」は、いずれの化合物も投与していない動物におけるHDLレベルと比較した、本発明の少なくとも1つの化合物の投与後の動物におけるHDLレベルの上昇を意味する。
【0108】
「個体」または「対象」または「動物」は処置または治療に選択されたヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0109】
「誘導する」、「阻害する」、「増強する」、「上昇させる」、「増加させる」、「減少させる」、「低下させる」などは、2つの状態の間の定量的な差異を表す。例えば、「ApoCIIIの活性または発現を阻害するのに有効な量」は、処理試料でのApoCIIIの活性または発現のレベルが未処理試料でのApoCIIIの活性または発現のレベルと異なることを意味する。そのような用語は、例えば、発現レベルおよび活性レベルに応用される。
【0110】
「発現または活性の阻害」は、RNAまたはタンパク質の発現または活性の低下または妨害を指し、発現または活性の完全な排除を必ずしも表さない。
【0111】
「インスリン抵抗性」は、正常量のインスリンが脂肪細胞、筋肉細胞および肝細胞から正常なインスリン応答を引き出すのに不十分である健康状態と定義される。脂肪細胞におけるインスリン抵抗性は貯蔵トリグリセリドの加水分解を引き起こし、それが血漿中の遊離脂肪酸を上昇させる。筋肉でのインスリン抵抗性はグルコース取込を低下させ、一方、肝臓でのインスリン抵抗性はグルコース貯蔵を低下させ、両方の効果が血糖を上昇させるように働く。インスリン抵抗性が原因のインスリンとグルコースの高い血漿中レベルが、多くの場合、メタボリックシンドロームと2型糖尿病を引き起こす。
【0112】
「インスリン感受性」は、個体がどれくらい効果的にグルコースを処理するかということの尺度である。高インスリン感受性を有する個体は効果的にグルコースを処理し、一方、低インスリン感受性を有する個体は効果的にグルコースを処理することがない。
【0113】
「ヌクレオシド間結合」はヌクレオシド間の化学結合を指す。
【0114】
「静脈内投与」は静脈への投与を意味する。
【0115】
「連結ヌクレオシド」は共に結合している隣接ヌクレオシドを意味する。
【0116】
「脂質低下」は、対象での1種以上の脂質の低下を意味する。「脂質上昇」は対照での脂質(例えば、HDL)の上昇を意味する。脂質低下または脂質上昇はある期間の1回以上の投薬により起こり得る。
【0117】
「脂質低下治療」または「脂質低下薬剤」は、対象において1つ以上の脂質を低下させるために対象に提供される治療計画を意味する。ある特定の実施形態では、CETP、ApoB、総コレステロール、LDL‐C、VLDL‐C、IDL‐C、非HDL‐C、トリグリセリド、高密度小LDL粒子およびLp(a)のうちの1つ以上を対象で低下させるために、脂質低下治療が提供される。脂質低下治療の例にはスタチン類、フィブラート類、MTP阻害剤が挙げられる。
【0118】
VLDL、LDLおよびHDLなどの「リポタンパク質」は、血清、血漿およびリンパ液中に見出される一群のタンパク質を指し、それらは脂質輸送に重要である。各リポタンパク質の化学組成は、HDLでは脂質に対するタンパク質の割合がより高い一方、VLDLでは脂質に対するタンパク質の割合がより低いという点で異なる。
【0119】
「低密度リポタンパク質‐コレステロール(LDL‐C)」は低密度リポタンパク質粒子に担持されるコレステロールを意味する。血清(または血漿)中のLDL‐Cの濃度は通常mg/dLまたはnmol/L単位で定量される。「血清LDL‐C」および「血漿LDL‐C」は、それぞれ、血清中および血漿中のLDL‐Cを意味する。
【0120】
「主要リスクファクター」は、特定の疾患または健康状態の高いリスクに寄与する要因を指す。ある特定の実施形態では、冠動脈性心疾患の主要リスクファクターには、喫煙、高血圧、低HDL‐C、冠動脈性心疾患の家族歴、年齢、および本明細書で開示される他の要因が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
「代謝性障害」または「代謝性疾患」は、代謝機能の異常または障害を特徴とする健康状態を指す。「代謝性」および「代謝」は当技術分野において周知の用語であり、そして、生物内で起こる生化学的処理の全範囲を一般に包含する。代謝性障害は高血糖症、前糖尿病、糖尿病(1型および2型)、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、および2型糖尿病性脂質異常症を包含するが、これらに限定されない。
【0122】
「メタボリックシンドローム」は、代謝起源の脂質性および非脂質性心血管系リスクファクターの集積を特徴とする健康状態を意味する。ある特定の実施形態では、メタボリックシンドロームは、次の要因のうちのいずれか3つにより特定される:男性では102cm、または女性では88cmを超える腹囲;少なくとも150mg/dLの血清中トリグリセリド;男性では40mg/dL未満、または女性では50mg/dL未満のHDL‐C;少なくとも130/85mmHgの血圧;および少なくとも110mg/dLの空腹時グルコース。これらの決定要素は臨床診療で容易に測定され得る (JAMA, 2001, 285: 2486-2497)。
【0123】
「ミスマッチ」または「非相補的核酸塩基」は、第1核酸の核酸塩基が第2核酸または標的核酸の対応する核酸塩基と対合することができない場合を指す。
【0124】
「混合型脂質異常症」はコレステロールの上昇とトリグリセリドの上昇を特徴とする健康状態を意味する。
【0125】
「修飾型ヌクレオシド間結合」は天然のヌクレオシド間結合からの置換またはあらゆる変化を指す。例えば、ホスホロチオエート結合は修飾型ヌクレオシド間結合である。
【0126】
「修飾型核酸塩基」はアデニン、シトシン、グアニン、チミジンまたはウラシル以外のあらゆる核酸塩基を指す。例えば、5‐メチルシトシンは修飾型核酸塩基である。「非修飾型核酸塩基」はプリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を意味する。
【0127】
「修飾型ヌクレオシド」は、少なくとも1つの修飾型糖部分および/または修飾型核酸塩基を有するヌクレオシドを意味する。
【0128】
「修飾型ヌクレオチド」は少なくとも1つの修飾型糖部分、修飾型ヌクレオシド間結合および/または修飾型核酸塩基を有するヌクレオチドを意味する。
【0129】
「修飾型オリゴヌクレオチド」は少なくとも1つの修飾型ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0130】
「修飾型糖」は天然糖からの置換または変化を指す。例えば、2’‐O‐メトキシエチル修飾型糖は修飾型糖である。
【0131】
「モチーフ」はアンチセンス化合物内の化学的に異なる領域のパターンを意味する。
【0132】
「天然ヌクレオシド間結合」は3’‐5’ホスホジエステル結合を意味する。
【0133】
「天然糖部分」はDNA(2’−H)またはRNA(2’−OH)に見出される糖を意味する。
【0134】
「核酸」は単量体のヌクレオチドから構成される分子を指す。核酸にはリボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、一本鎖核酸(ssDNA)、二本鎖核酸(dsDNA)、低分子干渉リボ核酸(siRNA)、およびマイクロRNA(miRNA)が含まれる。核酸はまた一つの分子にこれらの要素の組み合わせを含むこともできる。
【0135】
「核酸塩基」は別の核酸の塩基と対合することができる複素環部分を意味する。
【0136】
「核酸塩基相補性」は別の核酸塩基と塩基対合することができる核酸塩基を指す。例えば、DNAでは、アデニン(A)はチミン(T)に相補的である。例えば、RNAでは、アデニン(A)はウラシル(U)に相補的である。ある特定の実施形態では、相補的な核酸塩基は、その標的核酸の核酸塩基と塩基対合することができるアンチセンス化合物の核酸塩基を指す。例えば、アンチセンス化合物のある特定の位置の核酸塩基が標的核酸のある特定の位置の核酸塩基と水素結合することができる場合、そのオリゴヌクレオチドとその標的核酸はその核酸塩基対で相補的であると見なされる。
【0137】
「核酸塩基配列」はあらゆる糖、結合または核酸塩基修飾から独立した連続する核酸塩基の順序を意味する。
【0138】
「ヌクレオシド」は糖に結合した核酸塩基を意味する。
【0139】
「ヌクレオシド模倣物」は、例えば、モルホリノ糖模倣物、シクロヘキシニル糖模倣物、シクロヘキシル糖模倣物、テトラヒドロピラニル糖模倣物、ビシクロまたはトリシクロ糖模倣物、例えば、非フラノース糖単位を有するヌクレオシド模倣物など、糖、または糖と塩基を置換するために使用され、必ずしもオリゴマー性化合物の1つ以上の位置の結合を置換するために使用されるわけではない構造を包含する。
【0140】
「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基を有するヌクレオシドを意味する。
【0141】
「ヌクレオチド模倣物」は、例えば、ペプチド核酸またはモルホリノ類(−N(H)−C(=O)−O−または他の非ホスホジエステル結合によって連結したモルホリノ類)など、オリゴマー性化合物の1つ以上の位置のヌクレオシドと結合を置換するために使用される構造を包含する。
【0142】
「オリゴマー性化合物」または「オリゴマー」は、核酸分子のある領域にハイブリダイズすることができる連結した単量体性サブユニットの重合体を意味する。ある特定の実施形態では、オリゴマー性化合物はオリゴヌクレオシドである。ある特定の実施形態では、オリゴマー性化合物はオリゴヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、オリゴマー性化合物はアンチセンス化合物である。ある特定の実施形態では、オリゴマー性化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、オリゴマー性化合物はキメラオリゴヌクレオチドである。
【0143】
「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオシドのそれぞれが互いに独立して修飾型または非修飾型であり得る、連結したヌクレオシドからなる重合体を意味する。
【0144】
「非経口投与」は注射または点滴による投与を意味する。非経口投与には皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、腹腔内投与または頭蓋内投与、例えば、髄腔内投与もしくは脳室内投与が含まれる。投与は順次投与、長期投与、短期投与、または断続的投与であり得る。
【0145】
「ペプチド」は、アミド結合により少なくとも2つのアミノ酸を結合して形成された分子を意味する。ペプチドはポリペプチドおよびタンパク質を指す。
【0146】
「医薬」は、個体に投与されると治療上の利益を提供する物質を意味する。例えば、ある特定の実施形態では、ApoCIIIを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは医薬である。
【0147】
「医薬組成物」または「組成物」は個体への投与に適切な物質の混合物を意味する。例えば、医薬組成物は1つ以上の活性薬剤および無菌水溶液などの医薬担体を含み得る。
【0148】
「薬学的に許容可能な担体」は、化合物の構造に干渉しない媒体または希釈剤を意味する。そのような担体のある特定のものによって、医薬組成物は、例えば、対象による経口摂取用の錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤およびトローチ剤として製剤され得る。そのような担体のある特定のものによって、医薬組成物は注射用、点滴用、または局所投与用に製剤され得る。例えば、薬学的に許容可能な担体は無菌水溶液であり得る。
【0149】
「薬学的に許容可能な誘導体」または「塩」は、溶媒和化合物、水和物、エステル、プロドラッグ、多形体、異性体、同位体で標識された異型体、薬学的に許容可能な塩、および当技術分野において公知の他の誘導体など、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容可能な誘導体を包含する。
【0150】
「薬学的に許容可能な塩」はアンチセンス化合物の生理学的および薬学的に許容可能な塩、すなわち、親化合物の所望の生物活性を保持し、望ましくない毒性をそれに加えない塩を意味する。「薬学的に許容可能な塩」または「塩」という用語には、無機または有機の酸および塩基を包含する薬学的に許容可能な毒性が無い酸または塩基から調製された塩が含まれる。当技術分野において周知の方法によって本明細書に記載される化合物の「薬学的に許容可能な塩」を調製することができる。薬学的に許容可能な塩の概説については、 Stahl and Wermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)を参照のこと。アンチセンスオリゴヌクレオチドのナトリウム塩はヒトへの治療用投与に有用であり、十分に許容される。したがって、1つの実施形態では、本明細書に記載される化合物はナトリウム塩の形態である。
【0151】
「ホスホロチオエート結合」は、非架橋酸素原子のうちの1つをイオウ原子で置換することによりホスホジエステル結合が修飾されているヌクレオシド間の結合を意味する。ホスホロチオエート結合は修飾型ヌクレオシド間結合である。
【0152】
「部分」は、核酸の限定した数の連続する(すなわち、連結した)核酸塩基を意味する。ある特定の実施形態では、部分は、標的核酸の限定した数の連続する核酸塩基である。ある特定の実施形態では、部分は、アンチセンス化合物の限定した数の連続する核酸塩基である。
【0153】
「予防する」は、数分から無限までの期間、疾患、障害または病気の発症または発生を遅らせること、または未然に防ぐことを指す。「予防する」は疾患、障害または病気の発生のリスクを低減することも意味する。
【0154】
「プロドラッグ」は、不活性型で調製され、内在性の酵素または他の化学物質または条件によって体内または細胞内でその活性型(すなわち、薬品)に変換される治療薬を意味する。
【0155】
「上昇させる」は量の増加を意味する。例えば、血漿HDLレベルを上昇させることは血漿中のHDL量の増加させることを意味する。
【0156】
「TGのHDLに対する比率」はHDLレベルに対するTGレベルを意味する。高TGおよび/または低HDLの発生率は心血管系疾患の発生率、転帰および死亡率に関連している。「TGのHDLに対する比率の改善」はTGレベルの低下および/またはHDLレベルの上昇を意味する。
【0157】
「低下させる」はより小さい程度、サイズ、量または数に下げることを意味する。例えば、血漿トリグリセリドレベルを低下させることは血漿中のトリグリセリドの量を下げることを意味する。
【0158】
「領域」または「標的領域」は、少なくとも1つの特定可能な構造、機能または特徴を有する標的核酸の部分として定義される。例えば、標的領域は3’UTR、5’UTR、エクソン、イントロン、エクソン/イントロンジャンクション、コード領域、翻訳開始領域、翻訳終止領域、または他の限定的な核酸領域を包含し得る。ApoCIIIの構造的に限定された領域を、NCBIなどの配列データベースから受託番号によって入手することができ、そして、そのような情報は参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、標的領域は標的領域内の1つの標的セグメントの5’末端部位から標的領域内の別の標的セグメントの3’標的部位までの配列を包含することができる。
【0159】
「リボヌクレオチド」はヌクレオチドの糖部分の2’位にヒドロキシを有するヌクレオチドを意味する。リボヌクレオチドは様々な置換基のいずれかにより修飾され得る。
【0160】
「第2薬剤」または「第2治療薬」は「第1薬剤」と併用され得る薬剤を意味する。第2治療薬には、ApoCIIIを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれ得るが、これらに限定されない。第2薬剤は抗ApoCIII抗体、ApoCIIIペプチド阻害剤、コレステロール低下薬剤、脂質低下薬剤、グルコース低下薬剤および抗炎症剤も含み得る。
【0161】
「セグメント」は核酸内の領域のより小さい、副部分として定義される。例えば、「標的セグメント」は、1つ以上のアンチセンス化合物が標的とする標的核酸のヌクレオチド配列を意味する。「5’標的部位」は標的セグメントの最も5’側のヌクレオチドを指す。「3’標的部位」は標的セグメントの最も3’側のヌクレオチドを指す。
【0162】
本明細書において教示されるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは標的核酸の「短縮型」または「切断型」は1、2またはそれ以上のヌクレオシドが欠失されている。
【0163】
「副作用」は、ある処置に帰することができる、所望の効果以外の生理的反応を意味する。ある特定の実施形態では、副作用には注射部位反応、肝機能検査異常、腎機能異常、肝毒性、腎毒性、中枢神経系異常、筋障害および倦怠感が含まれる。例えば、血清中のアミノトランスフェラーゼレベルの上昇は肝毒性または肝機能異常を示し得る。例えば、ビリルビンの増加は肝毒性または肝機能異常を示し得る。
【0164】
「一本鎖オリゴヌクレオチド」は、相補鎖にハイブリダイズされていないオリゴヌクレオチドを意味する。
【0165】
「特異的にハイブリダイズ可能な」は、インビボ測定および治療の場合に、所望の効果を誘導するのに十分な程度の相補性を標的核酸に対して有しているが、特異的な結合が望ましい条件、すなわち、生理的条件では、非標的核酸に対して最小の効果を示す、または全く効果を示さないアンチセンス化合物を指す。
【0166】
「スタチン」はHMG−CoAレダクターゼの活性を阻害する薬剤を意味する。
【0167】
「皮下投与」は皮膚のすぐ下への投与を意味する。
【0168】
「対象」は処置または治療に選択されたヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0169】
「心血管系疾患または障害の症状」は、心血管系疾患または障害から生じ、そして、心血管系疾患または障害に付随し、そして、その指標として役に立つ現象を意味する。例えば、狭心症;胸部痛;息切れ;心悸亢進;虚弱;めまい;吐き気;発汗;頻脈;徐脈;不整脈;心房細動;下肢のむくみ;チアノーゼ;疲労;失神;顔面麻痺;四肢の麻痺;筋肉の跛行もしくは痙攣;腹部膨満;または発熱が心血管系疾患または障害の症状である。
【0170】
「標的とする」または「標的とした」は、標的核酸に特異的にハイブリダイズし、そして、所望の効果を誘導するアンチセンス化合物の設計および選択の過程を意味する。
【0171】
「標的核酸」、「標的RNA」および「標的RNA転写物」は全てアンチセンス化合物によって標的とされ得る核酸を指す。
【0172】
「治療のための生活習慣の変更(therapeutic lifestyle change)」は、脂肪/脂肪組織質量および/またはコレステロールの低減を目的とした食事および生活習慣の変更を意味する。そのような変更は心臓疾患の発生のリスクを低下させることができ、そして、1日の総カロリー、総脂肪、飽和脂肪、多価不飽和脂肪、一価不飽和脂肪、炭水化物、タンパク質、コレステロール、不溶性繊維の食事による摂取に対する勧告ならびに身体活動に対する勧告を包含する。
【0173】
「治療する」は、疾患、障害または健康状態の変化または改善をもたらすために動物に本発明の化合物を投与することを指す。
【0174】
「トリグリセリド」または「TG」は、3つの脂肪酸分子と組み合わさったグリセロールからなる脂質または中性脂肪を意味する。
【0175】
「2型糖尿病」(「2型真性糖尿病」または「真性糖尿病、2型」、「非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)」、「肥満関連糖尿病」または「成人発症性糖尿病」としても知られている)は、インスリン抵抗性、相対的インスリン欠乏および高血糖症を主な特徴とする代謝性障害である。
【0176】
「非修飾型ヌクレオチド」は天然の核酸塩基、糖部分およびヌクレオシド間結合から構成されるヌクレオチドを意味する。ある特定の実施形態では、非修飾型ヌクレオチドはRNAヌクレオチド(すなわち、β−D−リボヌクレオシド)またはDNAヌクレオチド(すなわち、β−D−デオキシリボヌクレオシド)である。
【0177】
「ウイングセグメント」は、増強された阻害活性、標的核酸への結合親和性の向上、またはインビボ核酸分解酵素による分解への耐性などの特性をオリゴヌクレオチドに付与するために修飾された1つの、または複数のヌクレオシドを意味する。
【0178】
特定の実施形態
ある特定の実施形態は、ApoCIIIを標的とする化合物を動物に投与し、それによりApoCIIIレベルを低下させることによって前記動物におけるApoCIIIレベルを低下させる方法を提供する。ある特定の実施形態では、肝臓または小腸でApoCIIIレベルが低下する。
【0179】
ある特定の実施形態は、ApoCIIIを標的とし、HDLレベルを上昇させる、および/またはTGのHDLに対する比率を改善する化合物を動物に投与することにより前記動物においてHDLレベルを上昇させる、および/またはTGのHDLに対する比率を改善する方法を提供する。
【0180】
ある特定の実施形態は、動物において心血管系の疾患、障害、病気、またはその症状を予防する、遅らせる、または改善する方法であって、ApoCIIIを標的とする化合物を前記動物に投与することを含み、前記動物に投与された前記化合物が前記動物のHDLレベルを上昇させることにより、および/または TGのHDLに対する比率を改善することにより前記動物において心血管系の疾患、障害、病気、または症状を予防、治療、または改善する、前記方法を提供する。
【0181】
ある特定の実施形態は、動物において膵炎を予防する、遅らせる、または改善する方法であって、ApoCIIIを標的とする化合物を前記動物に投与することを含み、前記動物に投与された前記化合物が前記動物のHDLレベルを上昇させることにより、および/または TGのHDLに対する比率を改善することにより前記動物において膵炎を予防、治療、または改善する、前記方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記膵炎は急性膵炎である。
【0182】
ある特定の実施形態は、動物において心血管系の疾患、障害または病気を予防する、治療する、改善する、その発症を遅らせる、またはそのリスクを軽減する方法であって、ApoCIIIを標的とする化合物を前記動物に投与することを含み、前記化合物が前記動物のHDLレベルを上昇させることにより、および/または TGのHDLに対する比率を改善することにより前記動物において心血管系の疾患、障害または病気を予防する、治療する、改善する、その発症を遅らせる、またはそのリスクを軽減する、前記方法を提供する。
【0183】
ある特定の実施形態は、動物にApoCIIIを標的とする化合物を投与することによりCETPレベルを低下させる方法を提供する。
【0184】
ある特定の実施形態は、動物にApoCIIIを標的とする化合物を投与することによりApoA1、PON1、脂肪クリアランス、カイロミクロントリグリセリドクリアランスおよび/またはHDLを上昇させる方法を提供する。ある特定の実施形態は TGのHDLに対する比率を改善するための方法を提供する。
【0185】
ある特定の実施形態では、前記ApoCIII核酸は、GENBANK受託番号NM_000040.1(配列番号1として本明細書に組み込まれる)、およびGENBANK受託番号NT_033899.8から切り出されたヌクレオチド20262640から20266603まで(配列番号2として本明細書に組み込まれる)に示される配列のうちのいずれか1つである。
【0186】
ある特定の実施形態では、ApoCIIIを標的とする前記化合物は修飾型オリゴヌクレオチドである。さらなる実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは、ISIS304801(配列番号3)の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは配列番号1または配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも100%相補的である。
【0187】
ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは一本鎖修飾型オリゴヌクレオチドからなる。
【0188】
ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは12〜30個の連結したヌクレオシドからなる。
【0189】
ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは20個の連結したヌクレオシドからなる。
【0190】
ある特定の実施形態では、前記化合物は少なくとも1つの修飾型ヌクレオシド間結合を含む。ある特定の実施形態では、前記ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
【0191】
ある特定の実施形態では、前記化合物は修飾型糖を含む少なくとも1個のヌクレオシドを含む。ある特定の実施形態では、前記の少なくとも1つの修飾型糖は二環式糖である。ある特定の実施形態では、前記の少なくとも1つの修飾型糖は2’‐O‐メトキシエチルを含む。
【0192】
ある特定の実施形態では、前記化合物は修飾型核酸塩基を含む少なくとも1個のヌクレオシドを含む。ある特定の実施形態では、前記修飾型核酸塩基は5‐メチルシトシンである。
【0193】
ある特定の実施形態では、修飾型オリゴヌクレオチドを含む前記化合物は:
(i)連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;(ii)連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;(iii)連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントを含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、そして、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが修飾型糖を含む。
【0194】
ある特定の実施形態では、修飾型オリゴヌクレオチドを含む前記化合物は:
(i)8〜12個の連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;(ii)1〜5個の連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;(iii)1〜5個の連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントを含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが2’‐O‐メトキシエチル糖を含み、各シトシンが5’‐メチルシトシンであり、そして、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合である。
【0195】
ある特定の実施形態では、修飾型オリゴヌクレオチドを含む前記化合物は:
(i)10個の連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;(ii)5個の連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;(iii)5個の連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントを含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが2’‐O‐メトキシエチル糖を含み、各シトシンが5’‐メチルシトシンであり、そして、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合である。
【0196】
ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは、ISIS304801(配列番号3)の核酸塩基配列の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。
【0197】
ある特定の実施形態は、12〜30個の連結したヌクレオシドからなる修飾型オリゴヌクレオチドを含む化合物の治療上有効量を動物に投与することにより前記動物における心血管系疾患のリスクを軽減する方法であって、前記修飾型オリゴヌクレオチドがApoCIII核酸に対して相補的であり、前記修飾型オリゴヌクレオチドがHDLレベルを上昇させる、および/または TGのHDLに対する比率を改善する、前記方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記ApoCIII核酸は配列番号1または配列番号2のどちらかである。ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは配列番号1または配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも100%相補的である。さらなる実施形態では、前記修飾型ヌクレオチドはISIS304801(配列番号3)の核酸塩基配列の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む。
【0198】
ある特定の実施形態は、動物において心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減する方法であって、12〜30個の連結したヌクレオシドからなり、そして、ApoCIII核酸に対して相補的である修飾型オリゴヌクレオチドを含む化合物の治療上有効量を前記動物に投与することを含む前記方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記ApoCIII核酸は配列番号1または配列番号2のどちらかである。ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは配列番号1または配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも100%相補的である。さらなる実施形態では、前記動物に投与された前記化合物がHDLレベルを上昇させることにより、および/または TGのHDLに対する比率を改善することにより前記心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減する。さらなる実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドはISIS304801(配列番号3)の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む。
【0199】
さらなる実施形態では、心血管系疾患の症状には狭心症;胸部痛;息切れ;心悸亢進;虚弱;めまい;吐き気;発汗;頻脈;徐脈;不整脈;心房細動;下肢のむくみ;チアノーゼ;疲労;失神;顔面麻痺;四肢の麻痺;筋肉の跛行もしくは痙攣;腹部膨満;または発熱が含まれるが、これらに限定されない。
【0200】
ある特定の実施形態は、ISIS304801(配列番号3)の核酸塩基配列からなる化合物を動物に投与することにより前記動物においてHDLレベルを上昇させる、および/または TGのHDLに対する比率を改善する方法を提供する。さらなる実施形態は、ISIS304801(配列番号3)の核酸塩基配列からなる化合物を動物に投与し、それにより前記動物においてHDLレベルを上昇させることによって、および/または TGのHDLに対する比率を改善することによって前記動物において心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減する方法を提供する。
【0201】
ある特定の実施形態は、ISIS304801の配列を有する修飾型オリゴヌクレオチドであって、(i)10個の連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;(ii)5個の連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;(iii)5個の連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントを含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが2’‐O‐メトキシエチル糖を含み、各シトシンが5’‐メチルシトシンであり、そして、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合である前記修飾型オリゴヌクレオチドを動物に投与することによって前記動物においてHDLレベルを上昇させる、および/または TGのHDLに対する比率を改善する方法を提供する。
【0202】
ある特定の実施形態は、ISIS304801(配列番号3)の配列を有する修飾型オリゴヌクレオチドであって、(i)10個の連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;(ii)5個の連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;(iii)5個の連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントを含み、前記ギャップセグメントが前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントに直ぐに隣接して、および、それらの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが2’‐O‐メトキシエチル糖を含み、各シトシンが5’‐メチルシトシンであり、そして、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合である前記化合物の前記修飾型オリゴヌクレオチドを動物に投与することによって前記動物において心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減する方法を提供する。
【0203】
ある特定の実施形態は、12〜30個の連結したヌクレオシドからなる修飾型オリゴヌクレオチドであって、ApoCIII核酸に対して相補的である前記修飾型オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物に投与することにより前記動物においてHDLレベルを上昇させる、および/または TGのHDLに対する比率を改善する方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記ApoCIII核酸は配列番号1または配列番号2のどちらかである。ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは配列番号1または配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも100%相補的である。
【0204】
ある特定の実施形態は、12〜30個の連結したヌクレオシドからなる修飾型オリゴヌクレオチドであって、ApoCIII核酸に対して相補的であり、動物においてHDLレベルを上昇させる前記修飾型オリゴヌクレオチドを含む化合物を前記動物に投与することにより前記動物において心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減する方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記ApoCIII核酸は配列番号1または配列番号2のどちらかである。ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは配列番号1または配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも100%相補的である。
【0205】
ある特定の実施形態は、動物にApoCIIIを標的とする化合物を投与することによりCETPレベルを低下させる方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記化合物は、12〜30個の連結したヌクレオシドからなり、ApoCIII核酸に対して相補的である修飾型オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、前記ApoCIII核酸は配列番号1または配列番号2のどちらかである。ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは配列番号1または配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも100%相補的である。ある特定の実施形態では、前記化合物は12〜30個の連結したヌクレオシドからなる修飾型オリゴヌクレオチドを含み、そして、ISIS304801(配列番号3)の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。ある特定の実施形態では、前記化合物はISIS304801(配列番号3)の核酸塩基からなる。
【0206】
ある特定の実施形態は、動物にApoCIIIを標的とする化合物を投与することによりApoA1、PON1、脂肪クリアランス、カイロミクロントリグリセリドクリアランスおよび/またはHDLを上昇させる方法を提供する。ある特定の実施形態では、前記化合物は、12〜30個の連結したヌクレオシドからなり、ApoCIII核酸に対して相補的である修飾型オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、前記ApoCIII核酸は配列番号1または配列番号2のどちらかである。ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは配列番号1または配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも100%相補的である。ある特定の実施形態では、前記化合物は12〜30個の連結したヌクレオシドからなる修飾型オリゴヌクレオチドを含み、そして、ISIS304801(配列番号3)の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。ある特定の実施形態では、前記化合物はISIS304801(配列番号3)の核酸塩基からなる。
【0207】
ある特定の実施形態では、前記動物はヒトである。
【0208】
ある特定の実施形態では、前記心血管系疾患は動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化、脳血管系疾患、冠動脈性心疾患、高血圧、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症または高コレステロール血症である。ある特定の実施形態では、前記脂質異常症はカイロミクロン血症である。
【0209】
ある特定の実施形態では、前記動物は膵炎のリスクがある。ある特定の実施形態では、肝臓および/または小腸でのApoCIIIレベルの低下が膵炎を予防する。ある特定の実施形態では、HDLレベルの上昇、および/またはTGのHDLに対する比率の改善が膵炎を予防する。
【0210】
ある特定の実施形態では、肝臓および/または小腸でのApoCIIIレベルの低下が食後トリグリセリドのクリアランスを増強する。ある特定の実施形態では、HDLレベルの上昇、および/またはTGのHDLに対する比率の改善が食後トリグリセリドのクリアランスを増強する。ある特定の実施形態では、肝臓および/または小腸でのApoCIIIレベルの低下が食後トリグリセリドを減少させる。ある特定の実施形態では、HDLレベルの上昇、および/またはTGのHDLに対する比率の改善が食後トリグリセリドを減少させる。
【0211】
ある特定の実施形態では、肝臓および/または小腸でのApoCIIIレベルの低下がHDLのTGに対する比率を高める。
【0212】
ある特定の実施形態では、前記化合物は非経口的に投与される。さらなる実施形態では、前記非経口投与は皮下投与である。
【0213】
ある特定の実施形態では、前記化合物は第2薬剤と共投与される。ある特定の実施形態では、前記第2薬剤はグルコース低下薬剤である。ある特定の実施形態では、前記第2薬剤はLDL低下薬剤、TG低下薬剤またはコレステロール低下薬剤である。
【0214】
ある特定の実施形態では、前記化合物と前記第2薬剤が同時に、または逐次的に投与される。
【0215】
ある特定の実施形態では、前記化合物は塩の形態である。さらなる実施形態では、前記化合物は薬学的に許容可能な担体または希釈剤をさらに含む。
【0216】
ある特定の実施形態は、動物においてApoCIIIレベルを低下させるための医薬の調製におけるApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、動物においてApoCIIIレベルを低下させるためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態では、ApoCIIIレベルは肝臓または小腸で低下する。ある特定の実施形態は、HDLレベルを上昇させることにより、および/または TGのHDLに対する比率を改善することにより心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減するための医薬の調製におけるApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、HDLレベルを上昇させることにより、および/または TGのHDLに対する比率を改善することにより心血管系疾患の少なくとも1つの症状を予防、治療、改善、または軽減するためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、動物においてHDLレベルを上昇させるための、および/または TGのHDLに対する比率を改善するためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、動物においてHDLレベルを上昇させるための、および/または TGのHDLに対する比率を改善するための医薬の調製のためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態では、前記化合物はApoCIII核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも100%相補的である。ある特定の実施形態では、前記ApoCIII核酸は配列番号1または配列番号2のどちらかである。ある特定の実施形態では、前記化合物は修飾型オリゴヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドは、ISIS304801(配列番号3)の少なくとも8核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。ある特定の実施形態では、前記修飾型オリゴヌクレオチドはISIS304801(配列番号3)の核酸塩基配列を有する。ある特定の実施形態は、膵炎の動物、または膵炎のリスクがある動物を治療するための医薬の調製におけるApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、膵炎の動物、または膵炎のリスクがある動物を治療するためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、肝臓および/または小腸でApoCIIIレベルを低下させるための医薬の調製におけるApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、肝臓および/または小腸でApoCIIIレベルを低下させるためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、膵炎を予防するための医薬の調製におけるApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、膵炎を予防するためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。
【0217】
ある特定の実施形態は、高トリグリセリド血症の動物の肝臓および/または小腸でApoCIIIレベルを低下させるための医薬の調製におけるApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、高トリグリセリド血症の動物の肝臓および/または小腸でApoCIIIレベルを低下させるためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、食後トリグリセリドのクリアランスを増強するための医薬の調製におけるApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、食後トリグリセリドのクリアランスを増強するためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、食後トリグリセリドを減少させるための医薬の調製におけるApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。ある特定の実施形態は、食後トリグリセリドを減少させるためのApoCIIIを標的とした化合物の使用法を提供する。
【0218】
アンチセンス化合物
オリゴマー性化合物にはオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、オリゴヌクレオチド類似体、オリゴヌクレオチド模倣物、アンチセンス化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNAが含まれるが、これらに限定されない。オリゴマー性化合物は標的核酸に対して「アンチセンス」であり得るが、それは、水素結合を介した標的核酸へのハイブリダイゼーションを行うことができることを意味する。
【0219】
ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物は、5’‐3’方向で記述されると、それが標的とする標的核酸の標的セグメントの逆相補的配列を含む核酸塩基配列を有する。特定のそのような実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’‐3’方向で記述されると、それが標的とする標的核酸の標的セグメントの逆相補的配列を含む核酸塩基配列を有する。
【0220】
ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物は長さが12〜30ヌクレオチドである。言い換えれば、アンチセンス化合物は12個から30個までの連結した核酸塩基である。他の実施形態では、前記アンチセンス化合物は、8〜80個、10〜80個、12〜50個、15〜30個、18〜24個、19〜22個、または20個の連結した核酸塩基からなる修飾型オリゴヌクレオチドを含む。特定のそのような実施形態では、前記アンチセンス化合物は、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、もしくは80個の長さの、または上記の値のいずれか2つにより限定される範囲の連結した核酸塩基からなる修飾型オリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、前記アンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0221】
ある特定の実施形態では、前記アンチセンス化合物は短縮化または切断化修飾型オリゴヌクレオチドを含む。短縮化または切断化修飾型オリゴヌクレオチドは、5’末端から1個以上のヌクレオシドを欠失させることができ(5’切断)、3’末端から1個以上のヌクレオシドを欠失させることができ(3’切断)、または中央部分から1個以上のヌクレオシドを欠失させることができる。あるいは、例えば、5’末端から1個のヌクレオシドが欠失し、3’末端から1個のヌクレオシドが欠失したアンチセンス化合物において、欠質したヌクレオシドは前記修飾型オリゴヌクレオチド中に散在し得る。
【0222】
延長型オリゴヌクレオチドに1個の追加のヌクレオシドが存在するとき、その追加のヌクレオシドは前記オリゴヌクレオチドの中央部分、5’末端または3’末端に位置することができる。2個以上の追加のヌクレオシドが存在するとき、例えば、オリゴヌクレオチドの中央部分、5’末端(5’付加)、または代わりに3’末端(3’付加)に2個のヌクレオシドが付加されているオリゴヌクレオチドでは、その付加されたヌクレオシドは互いに隣接することができる。あるいは、例えば、1個のヌクレオシドが5’末端に付加され、および1つのサブユニットが3’末端に付加されているオリゴヌクレオチドでは、その付加されたヌクレオシドをそのアンチセンス化合物中に散在させることができる。
【0223】
活性を損なうことなく、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのアンチセンス化合物の長さを増加もしくは減少することができ、および/または、ミスマッチ塩基を導入することができる。例えば、Woolfら (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7305-7309, 1992) では、卵母細胞注入モデルで標的RNAの切断を誘導する能力について13〜25核酸塩基長の一連のアンチセンスオリゴヌクレオチドが試験された。アンチセンスオリゴヌクレオチドの末端付近に8または11箇所のミスマッチ塩基を有する25核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドが、ミスマッチを含まないアンチセンスオリゴヌクレオチドよりも程度が低いものの標的mRNAの特異的な切断を行うことができた。同様に、1または3箇所のミスマッチを有するものを含む、13核酸塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して標的特異的切断が達成された。
【0224】
Gautschiら (J. Natl. Cancer Inst. 93:463-471, March 2001) は、bcl−2 mRNAに対して100%の相補性を有し、および、bcl−xL mRNAに対して3か所のミスマッチを有するオリゴヌクレオチドがbcl−2とbcl−xLの両方の発現をインビトロとインビボで低下させる能力を示した。さらに、このオリゴヌクレオチドは強力な抗腫瘍活性をインビボで示した。
【0225】
MaherおよびDolnick (Nuc. Acid. Res. 16:3341-3358,1988) は、ウサギ網状赤血球アッセイでヒトDHFRの翻訳を停止させる能力について一連の14核酸塩基のタンデムアンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびに、それぞれ、2つまたは3つのそのタンデムアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列から構成される28核酸塩基および42核酸塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドを試験した。28核酸塩基または42核酸塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドよりも控えめなレベルではあったが、前記の3つの14核酸塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドのそれぞれだけでも翻訳を阻害することができた。
【0226】
アンチセンス化合物モチーフ
ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物は、強化された阻害活性、標的核酸への上昇した結合親和性、または生体内核酸分解酵素による分解に対する抵抗性などの特性を前記アンチセンス化合物に付与するための、パターンまたはモチーフとして配列されている化学的に修飾されたサブユニットを有する。
【0227】
キメラアンチセンス化合物は通常、上昇した核酸分解酵素による分解に対する抵抗性、増加した細胞内取込、上昇した標的核酸への結合親和性、および/または上昇した阻害活性を付与するように修飾された少なくとも1つの領域を含有する。キメラアンチセンス化合物の第2領域は、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞性エンドヌクレアーゼRNase Hの基質として働いても働かなくてもよい。
【0228】
ギャップマーモチーフを有するアンチセンス化合物はキメラアンチセンス化合物とみなされる。ギャップマーでは、RNase H切断を助ける複数のヌクレオチドを有する内部領域はその内部領域のヌクレオシドと化学的に異なる複数のヌクレオチドを有する外部領域の間に位置する。ギャップマーモチーフを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、ギャップセグメントは一般にエンドヌクレアーゼ切断の基質として働くが、ウイングセグメントは修飾型ヌクレオシドを含む。ある特定の実施形態では、ギャップマーの領域は、それぞれの別個の領域を含む糖部分の種類が様々である。ギャップマーの領域に差異を生じさせるために使用される糖部分の種類には、いくつかの実施形態では、β−D−リボヌクレオシド、β−D−デオキシリボヌクレオシド、2’−修飾型ヌクレオシド(そのような2’−修飾型ヌクレオシドは、中でも2’−MOEおよび2’−O−CHを含み得る)、および二環式糖修飾型ヌクレオシド(そのような二環式糖修飾型ヌクレオシドには、n=1またはn=2である、4’−(CH2)n−O−2’架橋を有するヌクレオシドが含まれ得る)が含まれ得る。好ましくは、それぞれの別個の領域は均一な糖部分を含む。ウイング−ギャップ−ウイングモチーフはしばしば「X−Y−Z」と記述され、それでは「X」は5’ウイング領域の長さを表し、「Y」はギャップ領域の長さを表し、そして「Z」は3’ウイング領域の長さを表す。本明細書で使用される場合、「X−Y−Z」と記述されるギャップマーは、ギャップセグメントが5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントのそれぞれに直ぐに隣接して位置するような配置を有する。したがって、5’ウイングセグメントとギャップセグメントの間、またはギャップセグメントと3’ウイングセグメントの間に介在性ヌクレオチドが存在しない。本明細書に記載されるアンチセンス化合物のいずれもギャップマーモチーフを有し得る。いくつかの実施形態では、XとZが同一であり、他の実施形態では、それらは異なる。好ましい実施形態では、Yは8ヌクレオチドと15ヌクレオチドの間である。X、YまたはZは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上のヌクレオチドのいずれかであり得る。したがって、ギャップマーには、例えば、5−10−5、4−8−4、4−12−3、4−12−4、3−14−3、2−13−5、2−16−2、1−18−1、3−10−3、2−10−2、1−10−1、2−8−2、6−8−6、5−8−5、1−8−1、2−6−2、2−13−2、1−8−2、2−8−3、3−10−2、1−18−2または2−18−2が含まれるが、これらに限定されない。
【0229】
ある特定の実施形態では、「ウイングマー」モチーフとしての前記アンチセンス化合物はウイング‐ギャップ配置またはギャップ‐ウイング配置、すなわち、ギャップマー配置について上で説明したようなX−Y配置またはY−Z配置を有する。したがって、ウイングマー配置には、例えば、5−10、8−4、4−12、12−4、3−14、16−2、18−1、10−3、2−10、1−10、8−2、2−13または5−13が含まれるが、これらに限定されない。
【0230】
ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物は5−10−5ギャップマーモチーフを有する。
【0231】
ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物はギャップ拡張モチーフを有する。
【0232】
標的核酸、標的領域およびヌクレオチド配列
ApoCIIIをコードするヌクレオチド配列には以下のもの:GENBANK受託番号NM_000040.1(配列番号1として本明細書に組み込まれる)、およびGENBANK受託番号NT_033899.8から切り出されたヌクレオチド20262640から20266603まで(配列番号2として本明細書に組み込まれる)が含まれるが、これらに限定されない。
【0233】
本明細書に含まれる実施例中の各配列番号で示される配列は糖部分、ヌクレオシド間結合、または核酸塩基に対する任意の修飾と無関係であることが理解される。したがって、配列番号によって限定されるアンチセンス化合物は糖部分、ヌクレオシド間結合または核酸塩基に対して1つ以上の修飾を独立して含み得る。Isis番号(Isis番号)で記述されるアンチセンス化合物は核酸塩基配列とモチーフの組合せを示す。
【0234】
ある特定の実施形態では、標的領域は標的核酸の構造的に限定された領域である。例えば、標的領域は3’UTR、5’UTR、エクソン、イントロン、エクソン/イントロンジャンクション、コード領域、翻訳開始領域、翻訳終止領域、または他の限定的な核酸領域を包含し得る。ApoCIIIの構造的に限定された領域は、NCBIなどの配列データベースから受託番号によって入手することができ、そして、そのような情報が参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、標的領域は標的領域内の1つの標的セグメントの5’末端部位から標的領域内の別の標的セグメントの3’標的部位までの配列を包含することができる。
【0235】
ある特定の実施形態では、「標的セグメント」は核酸内の標的領域のより小さい副部分である。例えば、標的セグメントは、1つ以上のアンチセンス化合物が標的とする標的核酸のヌクレオチド配列であり得る。「5’標的部位」は標的セグメントの最も5’側のヌクレオチドを指す。「3’標的部位」は標的セグメントの最も3’側のヌクレオチドを指す。
【0236】
標的領域は1つ以上の標的セグメントを含み得る。標的領域内の複数の標的セグメントが重なり合っていてよい。あるいは、それらは重なり合っていなくてよい。ある特定の実施形態では、標的領域内の標的セグメントは約300を超えないヌクレオチドによって分断されている。ある特定の実施形態では、標的領域内の標的セグメントは標的核酸上の250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、もしくは10ヌクレオチドの、約250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、もしくは10ヌクレオチドの、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、もしくは10ヌクレオチドを超えない、約250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、もしくは10ヌクレオチドを超えない数のヌクレオチドによって分断されている、または前述の値のうちのいずれか2つによって限定される範囲にあるヌクレオチドによって分断されている。ある特定の実施形態では、標的領域内の標的セグメントは標的核酸上の5ヌクレオチドを超えないまたは約5ヌクレオチドを超えないヌクレオチドによって分断されている。ある特定の実施形態では、標的セグメントは連続している。本明細書に記載される5’標的部位または3’標的部位のいずれかである出発核酸を有する範囲によって限定される標的範囲が企図されている。
【0237】
標的化には、所望の効果が生じるように、アンチセンス化合物がハイブリダイズする少なくとも1つの標的セグメントの決定が含まれる。ある特定の実施形態では、所望の効果はmRNA標的核酸レベルの低下である。ある特定の実施形態では、所望の効果は、標的核酸によってコードされるタンパク質のレベルの低下または標的核酸と関連する表現型の変化である。
【0238】
適切な標的セグメントを、5’UTR、コード領域、3’UTR、イントロン、エクソン、またはエクソン/イントロンジャンクション内に見つけることができる。開始コドンまたは終止コドンを含む標的セグメントも適切な標的セグメントである。適切な標的セグメントは、開始コドンまたは終止コドンなどの特定の構造的に限定された領域を特異的に排除することができる。
【0239】
適切な標的セグメントの決定には、標的核酸の配列のゲノム中の他の配列に対する比較が含まれ得る。例えば、様々な核酸の間で似ている領域を特定するためにBLASTアルゴリズムを使用することができる。この比較によって、選択された標的核酸以外の配列(すなわち、非標的配列または標的外配列)に非特異的にハイブリダイズし得るアンチセンス化合物配列の選択を防ぐことができる。
【0240】
活性標的領域内におけるアンチセンス化合物の(例えば、標的核酸レベルのパーセント減少で定義されるような)活性は様々であり得る。ある特定の実施形態では、ApoCIII mRNAレベルの低下はApoCIII発現の阻害を示す。ApoCIIIタンパク質レベルの低下は標的とするmRNAの発現の阻害を示し得る。さらに、表現型の変化がApoCIII発現の阻害を示し得る。例えば、HDLレベルの上昇、LDLレベルの低下、またはトリグリセリドレベルの低下は、ApoCIII発現について測定することができる表現型の変化の中に入る。他の表現型の表出、例えば、心血管系疾患に関連する症状、例えば、狭心症;胸部痛;息切れ;心悸亢進;虚弱;めまい;吐き気;発汗;頻脈;徐脈;不整脈;心房細動;下肢のむくみ;チアノーゼ;疲労;失神;顔面麻痺;四肢の麻痺;筋肉の跛行もしくは痙攣;腹部膨満;または発熱を評価することもできる。
【0241】
ハイブリダイゼーション
いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーションが本明細書で開示されるアンチセンス化合物とApoCIII核酸の間で起こる。ハイブリダイゼーションの最も一般的な機序には核酸分子の相補的な核酸塩基の間の水素結合(例えば、ワトソン‐クリック型水素結合、フーグスティーン型水素結合または逆フーグスティーン型水素結合)が関わる。
【0242】
ハイブリダイゼーションは様々な条件下で起こり得る。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、ハイブリダイズされる核酸分子の性質と組成によって決定される。
【0243】
配列が標的核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能であるかどうか判定する方法は当技術分野で周知である (Sambrooke and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rdEd., 2001) 。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるアンチセンス化合物はApoCIII核酸に特異的にハイブリダイズすることが可能である。
【0244】
相補性
アンチセンス化合物の十分な数の核酸塩基が標的核酸の対応する核酸塩基と水素結合することができるとき、前記のアンチセンス化合物と標的核酸は互いに相補的であり、所望の効果(例えば、ApoCIII核酸などの標的核酸のアンチセンス阻害)が生じる。
【0245】
アンチセンス化合物がApoCIII核酸の1つ以上のセグメントに、介在性セグメントまたは隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象に関わらないように、ハイブリダイズすることができる(例えば、ループ構造、ミスマッチ構造またはヘアピン構造)。
【0246】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるアンチセンス化合物、またはそれらの特定の部分はApoCIII核酸、その標的領域、標的セグメントまたは特定の部分に対して70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%相補的である、または少なくとも、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%相補的である。日常的方法を用いてアンチセンス化合物の標的核酸とのパーセント相補性を決定することができる。
【0247】
例えば、アンチセンス化合物の20核酸塩基のうちの18核酸塩基が標的領域に相補的であり、それ故、特異的にハイブリダイズするだろうアンチセンス化合物なら90パーセントの相補性を表すだろう。この例では、残りの非相補的核酸塩基はクラスターを形成していても相補的な核酸塩基がそれらの間に点在していてもよく、互いに対して、または相補的な核酸塩基に対して連続していなくてよい。したがって、標的核酸と完全に相補的な2つの領域が隣接する4個の非相補的核酸塩基を有する18核酸塩基長のアンチセンス化合物なら標的核酸と全体で77.8%の相補性を有し、したがって、本発明の範囲内に収まるだろう。当技術分野において公知のBLAST(基本的局所アラインメント検索ツール(basic local alignment search tools))プログラムとPowerBLASTプログラムを使用して標的核酸の領域を有するアンチセンス化合物のパーセント相補性を日常的に決定することができる (Altschul et al., J. Mol. Biol., 1990, 215, 403 410; Zhang and Madden, Genome Res., 1997, 7, 649 656) 。例えば、初期設定を用いる、SmithとWatermanのアルゴリズム (Adv. Appl. Math., 1981, 2, 482 489)を使用するGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, Madison Wis.)によりパーセント相同性、配列同一性または相補性を決定することができる。
【0248】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるアンチセンス化合物またはそれらの特定の部分は標的核酸またはその特定の部分に対して完全に相補的である(すなわち、100%相補的である)。例えば、アンチセンス化合物はApoCIII核酸、または標的領域、またはその標的セグメントもしくは標的配列に対して完全に相補的であり得る。本明細書で使用される場合、「完全に相補的な」は、アンチセンス化合物の各核酸塩基が標的核酸の対応する核酸塩基と正確に塩基対合することができることを意味する。例えば、20核酸塩基のアンチセンス化合物は、そのアンチセンス化合物に対して完全に相補的である対応する20核酸塩基部分が標的核酸に存在する限り、400核酸塩基長の標的配列に対して完全に相補的である。第1核酸および/または第2核酸の特定の部分への言及において「完全に相補的な」を使用することもできる。例えば、30核酸塩基のアンチセンス化合物の20核酸塩基部分が400核酸塩基長の標的配列に対して「完全に相補的」であり得る。前記標的配列が対応する20核酸塩基部分を有し、その各核酸塩基が前記のアンチセンス化合物の20核酸塩基部分に相補的である場合、前記の30核酸塩基のオリゴヌクレオチドの前記20核酸塩基部分は前記標的配列に対して完全に相補的である。同時に、前記アンチセンス化合物の残りの10核酸塩基も前記標的配列に相補的であるかどうかによって、前記の30核酸塩基のアンチセンス化合物の全体が前記標的配列に対して完全に相補的である場合もあれば、完全には相補的ではない場合もある。
【0249】
非相補的核酸塩基の位置はアンチセンス化合物の5’末端または3’末端であり得る。あるいは、非相補的核酸塩基はアンチセンス化合物の内部にあり得る。2つ以上の非相補的核酸塩基が存在するとき、それらは連続していても(すなわち、連結されている)、連続していなくてもよい。1つの実施形態では、ギャップマーアンチセンスオリゴヌクレオチドのウイングセグメントに非相補的核酸塩基が位置する。
【0250】
ある特定の実施形態では、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20核酸塩基長の、または最大で12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20核酸塩基長のアンチセンス化合物は、ApoCIII核酸などの標的核酸またはその特定の部分に対して4個を超えない、3個を超えない、2個を超えない、または1個を超えない非相補的核酸塩基を含む。
【0251】
ある特定の実施形態では、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30核酸塩基長の、または最大で12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30核酸塩基長のアンチセンス化合物は、ApoCIII核酸などの標的核酸またはその特定の部分に対して6個を超えない、5個を超えない、4個を超えない、3個を超えない、2個を超えない、または1個を超えないの非相補的核酸塩基を含む。
【0252】
本明細書で提供されるアンチセンス化合物は、標的核酸のある部分に相補的であるものも包含する。本明細書で使用される場合、「部分」は、標的核酸の領域またはセグメント内にある限定された数の連続する(すなわち、連結した)核酸塩基を指す。「部分」はアンチセンス化合物の限定された数の連続する核酸塩基も指すことができる。ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物は標的セグメントの少なくとも8核酸塩基からなる部分に相補的である。ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物は標的セグメントの少なくとも10核酸塩基からなる部分に相補的である。ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物は標的セグメントの少なくとも12核酸塩基からなる部分に相補的である。ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物は標的セグメントの少なくとも15核酸塩基からなる部分に相補的である。標的セグメントの少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくはそれ以上の核酸塩基からなる部分、またはこれらの値のうちのいずれか2つによって限定される範囲の核酸塩基からなる部分に相補的であるアンチセンス化合物も企図されている。
【0253】
同一性
本明細書で提供されるアンチセンス化合物は、特定のヌクレオチド配列、配列番号、または特定のIsis番号で表される化合物、またはそれらの部分の配列に対する限定されたパーセント同一性を有することもできる。本明細書で使用される場合、アンチセンス化合物は、それが同一の核酸塩基対合能力を有する場合、本明細書で開示される配列に対して同一である。例えば、開示されるDNA配列中にチミジンの代わりにウラシルを含有するRNAは、ウラシルとチミジンの両方がアデニンと対合するので、そのDNA配列に対して同一であるとみなされるだろう。本明細書に記載されるアンチセンス化合物の短縮型および延長型ならびに本明細書で提供されるアンチセンス化合物に対して同一ではない塩基を有する化合物もまた企図されている。同一ではない塩基は互いに隣接していてもアンチセンス化合物中に散在していてもよい。アンチセンス化合物のパーセント同一性は、それが比較される配列に対する同一の塩基対合を有する塩基の数にしたがって計算される。
【0254】
ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物またはその部分は、本明細書で開示されるアンチセンス化合物または配列番号またはそれらの部分のうちの1つ以上に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。
【0255】
修飾
ヌクレオシドは塩基と糖の組合せである。ヌクレオシドの核酸塩基(塩基としても知られる)部分は通常は複素環塩基部分である。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドでは、リン酸基は糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分に結合し得る。オリゴヌクレオチドは互いに隣接するヌクレオシドの、直鎖重合性オリゴヌクレオチドを形成するための共有結合により形成される。オリゴヌクレオチド構造内で、リン酸基がオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間結合を形成すると一般に称される。
【0256】
アンチセンス化合物に対する修飾はヌクレオシド間結合、糖部分または核酸塩基への置換または変更を包含する。修飾型アンチセンス化合物は、多くの場合、例えば、強化された細胞内取込、強化された核酸標的への親和性、核酸分解酵素存在下での上昇した安定性、または上昇した阻害活性などの望ましい特性のため、天然型よりも好まれる。
【0257】
短縮化または切断化アンチセンスオリゴヌクレオチドのその標的核酸への結合親和性を上昇させるために化学的に修飾されたヌクレオシドを使用することもできる。その結果、そのような化学的に修飾されたヌクレオシドを有するより短いアンチセンス化合物を使用して、多くの場合、同等の結果を得ることができる。
【0258】
修飾型ヌクレオシド間結合
RNAおよびDNAの天然のヌクレオシド間結合は3’‐5’ホスホジエステル結合である。1つ以上の修飾型の、すなわち、非天然型のヌクレオシド間結合を有するアンチセンス化合物が、強化された細胞内取込、強化された核酸標的への親和性、および核酸分解酵素存在下での上昇した安定性などの望ましい特性のため、天然のヌクレオシド間結合を有するアンチセンス化合物よりも頻繁に選択される。
【0259】
修飾型ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドは、リン原子を保持するヌクレオシド間結合ならびにリン原子を持たないヌクレオシド間結合を包含する。代表的なリン含有ヌクレオシド間結合にはホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホナート、ホスホラミデートおよびホスホロチオエートが含まれるが、これらに限定されない。リン含有結合およびリン非含有結合の調製方法は周知である。
【0260】
ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物は1つ以上の修飾型ヌクレオシド間結合を含む。ある特定の実施形態では、修飾型ヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合である。ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物の各ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
【0261】
修飾型糖部分
本発明のアンチセンス化合物は、糖基が修飾されている1つ以上のヌクレオシドを任意に含有することができる。そのような糖修飾型ヌクレオシドは強化された核酸分解酵素安定性、上昇した結合親和性、または他のいくつかの有益な生物学的特性をアンチセンス化合物に付与することができる。ある特定の実施形態では、ヌクレオシドは化学的に修飾されたリボフラノース環部分を含む。化学的に修飾されたリボフラノース環の例には置換基の付加(5’ 置換基および2’置換基を含む)、二環式核酸(BNA)を形成するための非ジェミナル環原子の架橋、リボシル環酸素原子のS、N(R)、またはC(R)(R)(R、RおよびRはそれぞれ独立してH、C〜C12アルキルまたは保護基である)による置換、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。化学的に修飾された糖の例には2’−F−5’−メチル置換ヌクレオシド(他の開示された5’,2’−ビス置換ヌクレオシドについては2008年8月21日に公開されたPCT国際特許出願公開第2008/101157号を参照のこと)、または2’位にさらなる置換を有するリボシル環酸素原子のSによる置換(2005年6月16日に公開された米国特許出願公開第2005−0130923号を参照のこと)、または代わりに、BNAの5’置換(2007年11月22日に公開されたPCT国際特許出願公開第2007/134181号を参照のこと。そこでは、例えば、5’−メチル基または5’−ビニル基でLNAが置換されている)が挙げられる。
【0262】
修飾型糖部分を有するヌクレオシドの例には、5’−ビニル置換基、5’−メチル置換基(RまたはS)、4’−S置換基、2’−F置換基、2’−OCH置換基、2’−OCHCH置換基、2’−OCHCHF置換基および2’−O(CHOCH置換基を含むヌクレオシドが挙げられるが、これらに限定されない。2’位の置換基もアリル、アミノ、アジド、チオ、O‐アリル、O−C〜C10アルキル、OCF、OCHF、O(CHSCH、O(CH−O−N(R)(R)、O−CH−C(=O)−N(R)(R)、およびO−CH−C(=O)−N(R)−(CH−N(R)(R)から選択され得るが、式中、R、RおよびRはそれぞれ独立してHまたは置換型もしくは非置換型のC〜C10アルキルである。
【0263】
本明細書で使用される場合、「二環式ヌクレオシド」は二環式糖部分を含む修飾型ヌクレオシドを指す。二環式ヌクレオシドの例には、4’位と2’位のリボシル環原子間の架橋を含むヌクレオシドが挙げられるが、これに限定されない。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるアンチセンス化合物は4’‐2’架橋を含む1個以上の二環式ヌクレオシドを包含する。そのような4’‐2’架橋二環式ヌクレオシドの例には、式:4’−(CH)−O−2’(LNA);4’−(CH)−S−2’;4’−(CH−O−2’(ENA);4’−CH(CH)-−O−2’および4’−C-H(CHOCH)-−O−2’(およびその類似体、2008年7月15日に発行された米国特許第7,399,845号を参照のこと);4’−C(CH)(CH)-−O−2’(およびその類似体、2009年1月8日に公開されたPCT国際特許出願公開第2009/006478号を参照のこと);4’−CH−N(OCH)−2’(およびその類似体、2008年12月11日に公開されたPCT国際特許出願公開第2008/150729号を参照のこと);4’−CH−O−N(CH)−2’(2004年9月2日に公開された米国特許出願公開第2004−0171570号を参照のこと);RがH、C〜C12アルキルまたは保護基である4’−CH−N(R)−O−2’(2008年9月23日に発行された米国特許第7,427,672号を参照のこと);4’−CH−C-(H)(CH)−2’ (Chattopadhyaya et al., J. Org. Chem., 2009, 74, 118-134を参照のこと);ならびに4’−CH−C-(=CH)−2’(およびその類似体、2008年12月8日に公開されたPCT国際特許出願公開第2008/154401号を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0264】
二環式ヌクレオシドに関連するさらなる報告を公開された文献中にも見出すことができる(例えば、Singh et al., Chem. Commun., 1998, 4, 455-456; Koshkin et al., Tetrahedron, 1998, 54, 3607-3630; Wahlestedt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 2000, 97, 5633-5638; Kumar et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8, 2219-2222; Singh et al., J. Org. Chem., 1998, 63, 10035-10039; Srivastava et al., J. Am. Chem. Soc., 2007, 129(26) 8362-8379; Elayadi et al., Curr. Opinion Invest. Drugs, 2001, 2, 558-561; Braasch et al., Chem. Biol., 2001, 8, 1-7; and Orum et al., Curr. Opinion Mol. Ther., 2001, 3, 239-243; 米国特許第6,268,490号、同第6,525,191号、同第6,670,461号、同第6,770,748号、同第6,794,499号、同第7,034,133号、同第7,053,207号、同第7,399,845号、同第7,547,684号、および同第7,696,345号、米国特許出願公開第2008−0039618号、同第2009−0012281号、米国特許仮出願番号第60/989,574号、同第61/026,995号、同第61/026,998号、同第61/056,564号、同第61/086,231号、同第61/097,787号、および同第61/099,844号、PCT国際出願国際公開第1994/014226号、同第2004/106356号、同第2005/021570号、同第2007/134181号、同第2008/150729号、同第2008/154401号、および同第2009/006478号を参照のこと。前述の二環式ヌクレオシドのそれぞれは、例えば、α−L−リボフラノースおよびβ−D−リボフラノースを含む1つ以上の立体化学的糖配置を有するように調製され得る(国際公開第99/14226号として1999年3月25日に公開されたPCT国際特許出願第PCT/DK98/00393号を参照のこと))。
【0265】
ある特定の実施形態では、BNAヌクレオシドの二環式糖部分には、ペントフラノシル糖部分の4’位と2’位の間に少なくとも1つの架橋を有し、そのような架橋が−[C(R)(R)]−、−C(R)=C(R)−、−C(R)=N−、−C(=O)−、−C(=NR)−、−C(=S)−、−O−、−Si(R−、−S(=O)−、および−N(R)−から独立して選択される1つの、または2つから4つまでの結合した基を独立して含む化合物であって;式中、
xが0、1または2であり;
nが1、2、3または4であり;
とRがそれぞれ独立してH、保護基、ヒドロキシル、C〜C12アルキル、置換型C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、置換型C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、置換型C〜C12アルキニル、C〜C20アリール、置換型C〜C20アリール、複素環ラジカル、置換型複素環ラジカル、ヘテロアリール、置換型ヘテロアリール、C〜C脂環式ラジカル、置換型C〜C脂環式ラジカル、ハロゲン、OJ、NJ、SJ、N、COOJ、アシル(C(=O)−H)、置換型アシル、CN、スルホニル(S(=O)−J)、またはスルフオキシル(S(=O)−J)であり;そして
とJがそれぞれ独立してH、C〜C12アルキル、置換型C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、置換型C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、置換型C〜C12アルキニル、C〜C20アリール、置換型C〜C20アリール、アシル(C(=O)−H)、置換型アシル、複素環ラジカル、置換型複素環ラジカル、C〜C12アミノアルキル、置換型C〜C12アミノアルキル、または保護基である、
前記化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0266】
ある特定の実施形態では、二環式糖部分の架橋は-[C(R)(R)]−、-[C(R)(R)]−O−、-C(R)−N(R)−O−または-C(R)−O−N(R)−である。ある特定の実施形態では、前記架橋は4’−CH−2’、4’−(CH−2’、4’−(CH−2’、4’−CH−O−2’、4’−(CH−O−2’、4’−CH−O−N(R)−2’および4’−CH−N(R)−O−2’−であり、式中、各Rは独立してH、保護基またはC〜C12アルキルである。
【0267】
ある特定の実施形態では、異性体配置によって二環式ヌクレオシドをさらに限定する。例えば、4’−2’メチレンオキシ架橋を含むヌクレオシドはα‐L‐配置またはβ‐D‐配置であり得る。これまでに、α−L−メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNAがアンチセンスオリゴヌクレオチドに組み込まれ、アンチセンス活性を示している (Frieden et al., 核酸s Research, 2003, 21, 6365-6372) 。
【0268】
ある特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドには、以下に図示されるような(A)α−L−メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNA、(B)β−D−メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNA、(C)エチレンオキシ(4’−(CH−O−2’)BNA、(D)アミノオキシ(4’−CH−O−N(R)−2’)BNA、(E)オキシアミノ(4’−CH−N(R)−O−2’)BNA、(F)メチル(メチレンオキシ)(4’−CH(CH)−O−2’)BNA、(G)メチレン‐チオ(4’−CH−S−2’)BNA、(H)メチレン‐アミノ(4’−CH−N(R)−2’)BNA、(I)メチル炭素環式(4’−CH−CH(CH)−2’)BNA、および(J)プロピレン炭素環式(4’−(CH−2’)BNA
【化1】
が含まれるが、これらに限定されず、式中、Bxは塩基部分であり、Rは独立してH、保護基またはC〜C12アルキルである。
【0269】
ある特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドは、式I:
【化2】
を有して提供され、式中、
Bxは複素環式塩基部分であり;
−Q−Q−Q−は−CH−N(R)−CH−、−C(=O)−N(R)−CH−、−CH−O−N(R)−、−CH−N(R)−O−または−N(R)−O−CHであり;
はC〜C12アルキルまたはアミノ保護基であり;そして
とTはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、複合体基、反応性リン基、リン部分、または支持媒体への共有結合である。
【0270】
ある特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドは式II:
【化3】
を有して提供され、式中、
Bxは複素環式塩基部分であり;
とTはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、複合体基、反応性リン基、リン部分、または支持媒体への共有結合であり;
はC〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、置換型C〜Cアルキル、置換型C〜Cアルケニル、置換型C〜Cアルキニル、アシル、置換型アシル、置換型アミド、チオール、または置換型チオである。
【0271】
1つの実施形態では、置換された基のそれぞれは、ハロゲン、オキソ、ヒドロキシル、OJ、NJ、SJ、N、OC(=X)JおよびNJC(=X)NJから独立して選択される置換基で独立して単一置換または多重置換されており、式中、J、JおよびJはそれぞれ独立してH、C〜Cアルキル、または置換型C〜Cアルキルであり、XはOまたはNJである。
【0272】
ある特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドは式III:
【化4】
を有して提供され、式中、
Bxは複素環式塩基部分であり;
とTはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、複合体基、反応性リン基、リン部分、または支持媒体への共有結合であり;
はC〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、置換型C〜Cアルキル、置換型C〜Cアルケニル、置換型C〜Cアルキニル、または置換型アシル(C(=O)−)である。
【0273】
ある特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドは式IV:
【化5】
を有して提供され、式中、
Bxは複素環式塩基部分であり;
とTはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、複合体基、反応性リン基、リン部分、または支持媒体への共有結合であり;
はC〜Cアルキル、置換型C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、置換型C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニルまたは置換型C〜Cアルキニルであり;
、q、qおよびqはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C〜Cアルキル、置換型C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、置換型C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、または置換型C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシル、置換型C〜Cアルコキシル、アシル、置換型アシル、C〜Cアミノアルキル、または置換型C〜Cアミノアルキルである。
【0274】
ある特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドは式V:
【化6】
を有して提供され、式中、
Bxは複素環式塩基部分であり;
とTはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、複合体基、反応性リン基、リン部分、または支持媒体への共有結合であり;
、qb、およびqはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C〜C12アルキル、置換型C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、置換型C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、置換型C〜C12アルキニル、C〜C12アルコキシ、置換型C〜C12アルコキシ、OJ、SJ、SOJ、SO、NJ、N、CN、C(=O)OJ、C(=O)NJ、C(=O)J、O−C(=O)-NJ、N(H)C(=NH)NJ、N(H)C(=O)-NJまたはN(H)C(=S)NJであり;または
とqは一緒になって=C(q)(q)であり;
とqはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C〜C12アルキル、または置換型C〜C12アルキルである。
【0275】
メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNA単量体アデニン、シトシン、グアニン、5−メチル−シトシン、チミン、およびウラシルの合成および調製と共にそれらのオリゴマー化および核酸認識特性について記述されている(Koshkin et al., Tetrahedron, 1998, 54, 3607-3630を参照のこと)。BNAとその調製も国際公開第98/39352号および同第99/14226号に記載されている。
【0276】
メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNAおよび2’−チオ−BNAの類似体も調製されている (Kumar et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8, 2219-2222) 。核酸ポリメラーゼの基質としてのオリゴデオキシリボヌクレオチド二重鎖を含むロックドヌクレオシド類似体の調製も記述されている (Wengel et al., WO 99/14226 ) 。さらに、新規の立体構造的に限定された高親和性オリゴヌクレオチド類似体である2’−アミノ−BNAの合成が当技術分野において記述されている (Singh et al., J. Org. Chem., 1998, 63, 10035-10039)。さらに、2’−アミノ−BNAおよび2’−メチルアミノ−BNAが調製されており、相補的なRNA鎖およびDNA鎖とのそれらの二重鎖の熱安定性がこれまでに報告されている。
【0277】
ある特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドは式VI:
【化7】
を有して提供され、式中、
Bxは複素環式塩基部分であり;
とTはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、複合体基、反応性リン基、リン部分、または支持媒体への共有結合であり;
、q、qおよびqはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C〜C12アルキル、置換型C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、置換型C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、置換型C〜C12アルキニル、C〜C12アルコキシル、置換型C〜C12アルコキシル、OJ、SJ、SOJ、SO、NJ、N、CN、C(=O)OJ、C(=O)NJ、C(=O)J、O−C(=O)-NJ、N(H)C(=NH)NJ、N(H)C(=O)-NJ、またはN(H)C(=S)NJであり;そして
とq、またはqとqは一緒になって=C(q)(q)であり、式中、qとqはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C〜C12アルキル、または置換型C〜C12アルキルである。
【0278】
4’−(CH−2’架橋を有する1つの炭素環二環式ヌクレオチドとアルケニル類似体である架橋4’−CH=CH−CH−2’について記述されている (Freier et al., 核酸s Research, 1997, 25(22), 4429-4443 and Albaek et al., J. Org. Chem., 2006, 71, 7731-7740) 。炭素環二環式ヌクレオシドの合成および調製と共にそれらのオリゴマー化および生化学的試験についても記述されている (Srivastava et al., J. Am. Chem. Soc., 2007, 129(26), 8362-8379)。
【0279】
本明細書で使用される場合、「4’‐2’二環式ヌクレオシド」または「4’‐2’二環式ヌクレオシド」は、フラノース環の2’炭素原子と4’炭素原子を連結する、前記糖環の2つの炭素原子を連結する架橋を含むフラノース環を含む二環式ヌクレオシドを指す。
【0280】
本明細書で使用される場合、「単環式ヌクレオシド」は、二環式糖部分ではない修飾型糖部分を含むヌクレオシドを指す。ある特定の実施形態では、ヌクレオシドの糖部分または糖部分類似体は任意の位置で修飾または置換されていてよい。
【0281】
本明細書で使用される場合、「2’−修飾型糖」は2’位で修飾されたフラノシル糖を意味する。ある特定の実施形態では、そのような修飾は、ハライド、置換型および非置換型アルコキシ、置換型および非置換型チオアルキル、置換型および非置換型アミノアルキル、置換型および非置換型アルキル、置換型および非置換型アリル、ならびに置換型および非置換型アルキニルを含むが、これらに限定されない置換基から選択される置換基を包含する。 ある特定の実施形態では、2’修飾は、nとmが1から約10である、O[(CHO]CH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHF、O(CHONH、OCHC(=O)N(H)CH3、およびO(CHON[(CHCH、を含むが、これらに限定されない置換基から選択される。他の2’−置換基もC〜C12アルキル、置換型アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、複素環アルキル、複素環アルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリ-アルキルアミノ、置換型シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、アンチセンス化合物の薬物動態特性を改善する基、またはアンチセンス化合物の薬力学特性を改善する基、および類似の特性を有する他の置換基から選択され得る。ある特定の実施形態では、修飾型ヌクレオシドは2’−MOE側鎖を含む(Baker et al., J. Biol. Chem., 1997, 272, 11944-12000)。そのような2’−MOE置換が、非修飾型ヌクレオシドならびに2’−O−メチル、O−プロピルおよびO−アミノプロピルなどの他の修飾型ヌクレオシドと比較して結合親和性を向上させたと記載されている。2’−MOE置換基を有するオリゴヌクレオチドはインビボでの使用に有望な特徴を有する、遺伝子発現のアンチセンス阻害剤であることが示されてもいる (Martin, Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504; Altmann et al., Chimia, 1996, 50, 168-176; Altmann et al., Biochem. Soc. Trans., 1996, 24, 630-637; and Altmann et al., Nucleosides ヌクレオチドs, 1997, 16, 917-926) 。
【0282】
本明細書で使用される場合、「修飾型テトラヒドロピランヌクレオシド」または「修飾型THPヌクレオシド」は、通常のヌクレオシドのペントフラノシル残基が置換された6員のテトラヒドロピラン「糖」(糖代用物)を有するヌクレオシドを意味する。修飾型THPヌクレオシドには当技術分野においてヘキシトール核酸(HNA)、アニトール核酸(ANA)、マニトール核酸(MNA) (Leumann, Bioorg. Med. Chem., 2002, 10, 841-854を参照のこと) 、フルオロHNA(F‐HNA)と称されるもの、または式VII:
【化8】
を有する化合物が含まれるが、これらに限定されず、
式中、式VIIを有する前記の少なくとも1つのテトラヒドロピランヌクレオシド類似体のそれぞれについて独立して、
Bxは複素環式塩基部分であり;
とTはそれぞれ独立して、テトラヒドロピランヌクレオシド類似体をアンチセンス化合物に結合するヌクレオシド間結合基であり、または、TとTのうちの一方がテトラヒドロピランヌクレオシド類似体をアンチセンス化合物に結合するヌクレオシド間結合基であり、TとTのうちの他方がH、ヒドロキシル保護基、連結した複合体基、または5’末端基もしくは3’末端基であり;
、q、q、q、q、qおよびqはそれぞれ独立してH、C〜Cアルキル、置換型C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、置換型C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、または置換型C〜Cアルキニルであり;そして RとRのそれぞれが、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換型または非置換型アルコキシ、NJ、SJ、N、OC(=X)J、OC(=X)NJ、NJC(=X)NJおよびCNから選択され、式中、XはO、SまたはNJであり、そして、J、JおよびJがそれぞれ独立してHまたはC〜Cアルキルである。
【0283】
ある特定の実施形態では、q、q、q、q、q、qおよびqがそれぞれHである式VIIの修飾型THPヌクレオシドが提供される。ある特定の実施形態では、q、q、q、q、q、qおよびqのうちの少なくとも1つがH以外である。ある特定の実施形態では、q、q、q、q、q、qおよびqのうちの少なくとも1つがメチルである。ある特定の実施形態では、RとRの一方がフルオロである式VIIのTHPヌクレオシドが提供される。ある特定の実施形態では、RはフルオロでRはHであり、RはメトキシでRはHであり、RはメトキシエトキシでRはHである。
【0284】
本明細書で使用される場合、「2’−修飾型」または「2’−置換型」は、2’位にHまたはOH以外の置換基を含む糖を含むヌクレオシドを指す。2’−修飾型ヌクレオシドには、糖環の2つの炭素原子を連結する架橋が、アリル、アミノ、アジド、チオ、O‐アリル、O−C〜C10アルキル、−OCF、O−(CH−O−CH、2’−O(CHSCH、式中のRとRがそれぞれ独立してH、または置換型もしくは非置換型のC〜C10アルキルであるO−(CH−O−N(R)(R)またはO−CH−C(=O)−N(R)(R)などの非架橋2’置換基を有するヌクレオシドおよび糖環の2’炭素および別の炭素を連結している二環式ヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。2’−修飾型ヌクレオシドは、例えば、糖の他の位置に、および/または核酸塩基に他の修飾をさらに含むことができる。
【0285】
本明細書で使用される場合、「2’−F」は2’位にフルオロ基を含む糖を含むヌクレオシドを指す。
【0286】
本明細書で使用される場合、「2’−OMe」または「2’−OCH」または「2’−O−メチル」はそれぞれ糖環の2’位に−OCH基を含む糖を含むヌクレオシドを指す。
【0287】
本明細書で使用される場合、「MOE」または「2’−MOE」または「2’−OCHCHOCH」または「2’‐O‐メトキシエチル」はそれぞれ、糖環の2’位に−OCHCHOCH基を含む糖を含むヌクレオシドを指す。
【0288】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は複数の連結したヌクレオシドを含む化合物を指す。ある特定の実施形態では、複数のヌクレオシドのうちの1個以上が修飾されている。ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは1個以上のリボヌクレオシド(RNA)および/またはデオキシリボヌクレオシド(DNA)を含む。
【0289】
アンチセンス化合物への組み込み用にヌクレオシドを修飾するために使用され得る他の多くの二環式および三環式の糖環代用物系もまた当技術分野において公知である (例えば、総説: Leumann, Bioorg. Med. Chem., 2002, 10, 841-854を参照のこと) 。そのような環系は様々な追加の置換を受けて活性を増強させることができる。
【0290】
修飾型糖の調製方法は当業者に周知である。
【0291】
修飾型糖部分を有するヌクレオチドでは、適切な核酸標的とのハイブリダイゼーションのために核酸塩基部分(天然型、修飾型、またはそれらの組合せ)が維持される。
【0292】
ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物は、修飾型糖部分を有する1個以上のヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、その修飾型糖部分は2’−MOEである。ある特定の実施形態では、その2’−MOE修飾型ヌクレオチドはギャップマーモチーフ内に配置される。ある特定の実施形態では、その修飾型糖部分は、(4’−CH(CH)−O−2’)架橋基を有する二環式ヌクレオシドである。ある特定の実施形態では、その(4’−CH(CH)−O−2’)修飾型ヌクレオシドはギャップマーモチーフのウイング中に配置される。ある特定の実施形態では、その修飾型糖部分はcEtである。ある特定の実施形態では、そのcEt修飾型ヌクレオチドはギャップマーモチーフのウイング中に配置される。
【0293】
修飾型核酸塩基
核酸塩基(または塩基)修飾または置換は天然または合成の非修飾型核酸塩基と構造的に区別可能であるが、機能的には互換性がある。天然型核酸塩基と修飾型核酸塩基の両方が水素結合に関与することができる。そのような核酸塩基修飾はアンチセンス化合物に核酸分解酵素への安定性、結合親和性または他のいくつかの有益な生物学的特性を付与することができる。修飾型核酸塩基には、例えば、5‐メチルシトシン(5−me−C)などの合成核酸塩基および天然核酸塩基が含まれる。5‐メチルシトシン置換を含む特定の核酸塩基置換はアンチセンス化合物の標的核酸への結合親和性の向上に特に有用である。例えば、5‐メチルシトシン置換は0.6〜1.2℃まで核酸二重鎖の安定性を上昇させることが示されている(Sanghvi, Y.S., Crooke, S.T. and Lebleu, B., eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)。
【0294】
さらなる修飾型核酸塩基には5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチル誘導体および他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピル誘導体および他のアルキル誘導体、2‐チオウラシル、2−チオチミンおよび2‐チオシトシン、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニル(−CoC−CH)ウラシルおよび5−プロピニルシトシンならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、6−アゾシトシンおよび6−アゾチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4‐チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換型アデニンおよびグアニン、5−ハロ特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換型ウラシルおよびシトシン、7‐メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが含まれる。
【0295】
複素環塩基部分は、プリン塩基またはピリミジン塩基が他の複素環、例えば、7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジンおよび2−ピリドンで置換されているものを包含することができる。アンチセンス化合物の結合親和性の増強に特に有用な核酸塩基は5−置換型ピリミジン、6−アザピリミジンならびに2アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含むN−2、N−6およびO−6置換型プリンを包含する。
【0296】
ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物は1個以上の修飾型核酸塩基を含む。ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするギャップ拡張型アンチセンスオリゴヌクレオチドは1個以上の修飾型核酸塩基を含む。ある特定の実施形態では、前記修飾型核酸塩基は5‐メチルシトシンである。ある特定の実施形態では、各シトシンは5‐メチルシトシンである。
【0297】
組成物および医薬組成物の製剤方法
医薬組成物の調製または製剤のためにアンチセンスオリゴヌクレオチドを薬学的に許容可能な活性物質または不活性物質と混合することができる。組成物および医薬組成物の製剤方法は、投与経路、疾患の程度または投与される用量を含むが、これらに限定されない多数の基準に依存する。
【0298】
ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物は、そのアンチセンス化合物を適切な薬学的に許容可能な希釈剤または担体と組み合わせることにより医薬組成物として利用され得る。
【0299】
ある特定の実施形態では、「医薬担体」または「添加剤」は薬学的に許容可能な溶媒、懸濁剤または1つ以上の核酸を動物に送達するための他の任意の薬理学的に不活性なベヒクルである。添加剤は液体または固体であり得るし、所与の医薬組成物の核酸およびその他の成分と混合されると、所望の大きさ、硬度などを提供するように、念頭にある計画した投与方法に応じて選択され得る。典型的な医薬担体には結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);充填剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、マイクロクリスタリンセルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウムなど);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、水素付加植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えば、デンプン、グリコール酸デンプンナトリウムなど);および湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0300】
非経口投与または経口投与に適切な、核酸と有害に反応することが無い薬学的に許容可能な有機添加剤または無機添加剤も、本発明の組成物を製剤するためにも使用され得る。適切な薬学的に許容可能な担体には、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0301】
薬学的に許容可能な希釈剤にはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。PBSは非経口的に送達される組成物での使用に適切な希釈剤である。したがって、1つの実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物と薬学的に許容可能な希釈剤を含む医薬組成物が本明細書に記載される方法に使用される。ある特定の実施形態では、薬学的に許容可能な希釈剤はPBSである。ある特定の実施形態では、前記アンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0302】
アンチセンス化合物を含む医薬組成物は任意の薬学的に許容可能な塩、エステル、またはそのようなエステルの塩、またはヒトを含む動物に投与されると、生物学的に活性がある代謝物もしくはその残基を(直接的または間接的に)提供することができるオリゴヌクレオチドを包含する。したがって、例えば、本開示はまたアンチセンス化合物の薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、そのようなプロドラッグの薬学的に許容可能な塩、および他の生物学的等価物を対象とする。適切な薬学的に許容可能な塩にはナトリウム塩およびカリウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0303】
プロドラッグは、身体内の内在性核酸分解酵素によって切断されて活性型アンチセンス化合物を形成する、前記アンチセンス化合物の一端または両端での追加のヌクレオシドの組み込みを包含し得る。
【0304】
複合体化アンチセンス化合物
アンチセンス化合物は、結果生じるアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布または細胞取込を増強する1つ以上の部分または複合体に共有結合することができる。典型的な複合体基にはコレステロール部分および脂質部分が含まれる。その他の複合体基には炭水化物、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および色素が含まれる。
【0305】
アンチセンス化合物は、例えば、核酸分解酵素への安定性などの特性を強化するために一般にアンチセンス化合物の一端または両端に結合する1つ以上の安定化基を有するように修飾されることもできる。安定化基に含まれるものはキャップ構造である。これらの末端修飾はアンチセンス化合物をエクソヌクレアーゼによる分解から保護し、細胞内への送達および/または局在化を助けることができる。キャップは5’−末端(5’−キャップ)もしくは3’−末端(3’−キャップ)に存在し得る、または、両端に存在し得る。キャップ構造は当技術分野において周知であり、そして、例えば、逆方向デオキシ脱塩基キャップを包含する。核酸分解酵素への安定性を付与するためにアンチセンス化合物の一端または両端をキャップするために使用され得るさらなる3’安定化基および5’安定化基には、2003年1月16日に公開された国際公開第03/004602号に開示されるものが含まれる。
【0306】
細胞培養およびアンチセンス化合物処理
様々な細胞種でApoCIII核酸またはタンパク質のレベル、活性または発現へのアンチセンス化合物の効果をインビトロで試験することができる。そのような分析に使用される細胞種は供給業者から入手可能であり(例えば、American Type Culture Collection、マナッサス、バージニア州;Zen−Bio、Inc.、リサーチトライアングルパーク、ノースカロライナ州;Clonetics Corporation、ウォーカーズビル、メリーランド州)、供給業者の使用説明書に従って市販の試薬(例えば、Invitrogen Life Technologies、カールスバード、カリフォルニア州)を使用して細胞を培養する。例示的な細胞種にはHepG2細胞、Hep3B細胞、Huh7(肝細胞癌)細胞、初代培養肝細胞、A549細胞、GM04281線維芽細胞およびLLC−MK2細胞含まれるが、これらに限定されない。
【0307】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのインビトロ試験
アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する細胞の処理方法が本明細書に記載されるが、それは、他のアンチセンス化合物を用いる処理のために適切に改変され得る。
【0308】
一般に、培養中に細胞がおよそ60〜80%の集密に至ったときにアンチセンスオリゴヌクレオチドでその細胞が処理される。
【0309】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために一般的に使用される1つの試薬にはカチオン性脂質形質移入試薬リポフェクチン(登録商標)(Invitrogen、カールスバード、カリフォルニア州)が含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドはOPTI−MEM(登録商標)1(Invitrogen、カールスバード、カリフォルニア州)中のリポフェクチン(登録商標)と混合されて所望の最終濃度のアンチセンスオリゴヌクレオチドと通常100nMのアンチセンスオリゴヌクレオチド当たり2〜12μg/mLの範囲の濃度のリポフェクチン(登録商標)になる。
【0310】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために使用される別の試薬にはリポフェクタミン2000(登録商標)(Invitrogen、カールスバード、カリフォルニア州)が含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは血清培地(Invitrogen、カールスバード、カリフォルニア州)で希釈されたOPTI−MEM(登録商標)1中のリポフェクタミン2000(登録商標)と混合されて所望の濃度のアンチセンスオリゴヌクレオチドと通常100nMのアンチセンスオリゴヌクレオチド当たり2〜12μg/mLの範囲の濃度のリポフェクタミン(登録商標)になる。
【0311】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために使用される別の試薬にはサイトフェクチン(登録商標)(Invitrogen、カールスバード、カリフォルニア州)が含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは血清培地(Invitrogen、カールスバード、カリフォルニア州)で希釈されたOPTI−MEM(登録商標)1中のサイトフェクチン(登録商標)と混合されて所望の濃度のアンチセンスオリゴヌクレオチドと通常100nMのアンチセンスオリゴヌクレオチド当たり2〜12μg/mLの範囲の濃度のサイトフェクチン(登録商標)になる。
【0312】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために使用される別の試薬にはオリゴフェクタミン(商標)(Invitrogen Life Technologies、カールスバード、カリフォルニア州)が含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは血清培地(Invitrogen Life Technologies、カールスバード、カリフォルニア州)で希釈されたOpti−MEM(商標)−1中のオリゴフェクタミン(商標)と混合されて所望の濃度のオリゴヌクレオチドと100nMのオリゴヌクレオチドに対して約0.2〜0.8μLのオリゴフェクタミン(商標)の比率になる。
【0313】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために使用される別の試薬にはFuGENE6(Roche Diagnostics Corp.、インディアナポリス、インディアナ州)が含まれる。アンチセンスオリゴマー性化合物は1mLの無血清RPMI中のFuGENE6と混合されて所望の濃度のオリゴヌクレオチドと100nMのオリゴマー性化合物に対して1〜4μLのFuGENE6の比率になった。
【0314】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために使用される別の技術には電気穿孔法が含まれる (Sambrooke and Russell in Molecular Cloning. A Laboratory Manual. Third Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. 2001)。
【0315】
日常的方法によりアンチセンスオリゴヌクレオチドで細胞を処理する。通常、細胞はアンチセンスオリゴヌクレオチド処理後16〜24時間で回収され、その時点で標的核酸のRNAまたはタンパク質のレベルを当技術分野において公知の方法および本明細書に記載される方法により測定する (Sambrooke and Russell in Molecular Cloning. A Laboratory Manual. Third Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. 2001)。一般に、複数回繰り返して処理を実施するときは、その繰り返した処理の平均としてデータが提示される。
【0316】
使用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度は細胞株毎に異なる。特定の細胞株に最適なアンチセンスオリゴヌクレオチド濃度を決定する方法は当技術分野において周知である(Sambrooke and Russell in Molecular Cloning. A Laboratory Manual. Third Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. 2001)。通常、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リポフェクタミン2000(登録商標)(Invitrogen、カールスバード、カリフォルニア州)、リポフェクチン(登録商標)(Invitrogen、カールスバード、カリフォルニア州)またはサイトフェクチン(商標)(Genlantis、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用して形質移入されるとき、1nM〜300nMの範囲の濃度で使用される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、電気穿孔法を使用して形質移入されるとき、625〜20,000nMの範囲にある、より高い濃度で使用される。
【0317】
RNAの単離
全細胞性RNAまたはポリ(A)+ mRNAに対してRNA分析を実行することができる。RNA単離の方法は当技術分野において周知である (Sambrooke and Russell in Molecular Cloning. A Laboratory Manual. Third Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. 2001)。当技術分野において周知の方法を使用して、例えば、製造業者が勧めるプロトコルに従ってTRIZOL(登録商標)試薬(Invitrogen、カールスバード、カリフォルニア州)を使用してRNAが調製される。
【0318】
標的のレベルまたは発現の阻害の分析
当技術分野において公知の様々な方法(Sambrooke and Russell in Molecular Cloning. A Laboratory Manual. Third Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. 2001)でApoCIII核酸のレベルまたは発現の阻害を測定することができる。例えば、ノーザンブロット分析、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または定量的リアルタイムPCRにより、例えば、標的核酸レベルを定量することができる。全細胞性RNAまたはポリ(A)+ mRNAに対してRNA分析を実施することができる。RNA単離の方法は当技術分野において周知である。ノーザンブロット分析も当技術分野においては日常的方法である。好都合なことに、カリフォルニア州、フォスターシティのPE−Applied Biosystems社から入手可能な市販のABI PRISM(登録商標)7600、7700、または7900配列検出システムを使用し、製造業者の使用説明書に従って使用して定量的リアルタイムPCRを行うことができる。
【0319】
標的RNAレベルの定量的リアルタイムPCR分析
製造業者の使用説明書に従ってABI PRISM(登録商標)7600、7700、または7900配列検出システム(PE−Applied Biosystems、フォスターシティ、カリフォルニア州)を使用して、定量的リアルタイムPCRによる標的RNAレベルの定量を達成することができる。定量的リアルタイムPCRの方法は当技術分野において周知である。
【0320】
リアルタイムPCRの前に、単離されたRNAに逆転写(RT)反応を行い、それが相補性DNA(cDNA)を作製し、その後、その相補性DNAがリアルタイムPCR増幅の基質として使用される。RTとリアルタイムPCR反応は同一の試料ウェル中で連続して実行される。RTとリアルタイムPCRの試薬はInvitrogen(カールスバード、カリフォルニア州)から得られる。RT反応およびリアルタイムPCR反応は当業者に周知の方法により実施される。
【0321】
リアルタイムPCRで得られた遺伝子(またはRNA)標的の量を、シクロフィリンAなどの、その発現が一定である遺伝子の発現レベルを使用するか、リボグリーン(登録商標)(Invitrogen Inc.、カールスバード、カリフォルニア州)を使用して全RNAを定量することにより、正規化することができる。標的と同時に、試料を多重化して、または別々にリアルタイムPCRを行うことによりシクロフィリンAの発現を定量する。リボグリーン(登録商標)RNA定量試薬(Invitrogen Inc.、カールスバード、カリフォルニア州)を使用して全RNAを定量する。リボグリーン(登録商標)によるRNA定量の方法はJones, L.J.らにおいて教示される (Analytical Biochemistry, 1998, 265, 368-374)。リボグリーン(登録商標)の蛍光を測定するためにCYTOFLUOR(登録商標)4000機器(PE Applied Biosystems、フォスターシティ、カリフォルニア州)が使用される。
【0322】
プローブとプライマーはApoCIII核酸にハイブリダイズするように設計される。リアルタイムPCRプローブとプライマーを設計する方法は当技術分野において周知であり、PRIMER EXPRESS(登録商標)ソフトウェア(Applied Biosystems、フォスターシティ、カリフォルニア州)などのソフトウェアの使用がそれに含まれ得る。
【0323】
RTリアルタイムPCRにより得られる遺伝子標的量は、その発現が一定の遺伝子であるGAPDHかシクロフィリンAのどちらかの発現レベルを使用することができるか、またはリボグリーン(商標)(Molecular Probes,Inc.、ユージーン、オレゴン州)を使用する全RNAの定量による。標的と同時に、試料を多重化して、または別々にRTリアルタイムPCRを行うことによりGAPDHまたはシクロフィリンAの発現を定量することができる。リボグリーン(商標)RNA定量試薬(Molecular Probes,Inc.、ユージーン、オレゴン州)を使用して全RNAを定量した。
【0324】
タンパク質レベルの分析
ApoCIIIのタンパク質レベルを測定することによりApoCIII核酸のアンチセンス阻害を検定することができる。ApoCIIIのタンパク質レベルを、免疫沈降、ウェスタンブロット分析(イムノブロッティング)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、定量的タンパク質アッセイ、タンパク質活性アッセイ(例えば、カスパーゼ活性アッセイ)、免疫組織化学、免疫細胞化学または蛍光活性化細胞選別(FACS)など、当技術分野において周知の様々な方法(Sambrooke and Russell in Molecular Cloning. A Laboratory Manual. Third Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. 2001)で評価または定量することができる。標的に対する抗体を、抗体のMSRSカタログ(Aerie Corporation、バーミンガム、ミシシッピ州)などの様々な供給源で特定し、そこから入手することができる、または、当技術分野において周知の従来のモノクローナル抗体作製方法またはポリクローナル抗体作製方法により調製することができる。ヒトとマウスのApoCIIIの検出に有用な抗体は市販されている。
【0325】
アンチセンス化合物のインビボ試験
アンチセンス化合物、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドを動物で試験して、それらのApoCIIIの発現を阻害する能力および表現型の変化をもたらす能力を評価する。正常な動物または実験用疾患モデルで試験を実行することができる。動物への投与のため、リン酸緩衝生理食塩水などの薬学的に許容可能な希釈剤にアンチセンスオリゴヌクレオチドを製剤する。投与には非経口投与経路が含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチド投与量と投与頻度の計算は、投与経路および動物の体重などの因子に依存する。アンチセンスオリゴヌクレオチドでの処置期間の後に組織からRNAを単離し、ApoCIII核酸の発現の変化を測定する。ApoCIIIのタンパク質レベルの変化も測定される。
【0326】
ある特定の適応症
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるような1つ以上の医薬組成物を投与することを含む、個体を治療する方法が本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、前記個体は心血管系疾患または代謝性障害を有する。
【0327】
ある特定の実施形態では、前記心血管系疾患は動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化、脳血管系疾患、冠動脈性心疾患、高血圧、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、脳卒中などである。ある特定の実施形態では、前記脂質異常症はカイロミクロン血症である。
【0328】
下記の実施例に示されるように、本明細書に記載されるようなApoCIIIを標的とした化合物が心血管系疾患の生理学的マーカーまたは表現型を調節することが示された。実験のいくつかでは、前記化合物が未処理の動物と比較してHDLレベルを上昇させ、LDLレベルおよびトリグリセリドレベルを低下させた。ある特定の実施形態では、HDLレベルの上昇ならびにLDLレベルおよびトリグリセリドレベルの低下が前記化合物によるApoCIIIの阻害と関連付けられた。
【0329】
ある特定の実施形態では、心血管系疾患の生理学的マーカーは定量可能であり得る。例えば、HDLレベルは、例えば、標準的な脂質検査によって測定および定量され得る。そのようなマーカーについて、ある特定の実施形態では、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは99%、またはこれらの値のいずれか2つによって限定される範囲だけ前記マーカーが増加し得る。
【0330】
また、それを必要とする対象において心血管系疾患と関連する症状を予防、治療、または改善する方法も本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、心血管系疾患に関連する症状の発症速度を低下させる方法が提供される。ある特定の実施形態では、心血管系疾患に関連する症状の重症度を軽減させる方法が提供される。そのような実施形態では、前記方法はApoCIII核酸を標的とした化合物の治療上有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む。
【0331】
心血管系疾患は多数の身体上の症状を特徴とする。心血管系疾患に関連すると当業者に知られている任意の症状を上で説明した方法において上で示したように予防、治療、改善、またはそうでない場合は、調節することができる。ある特定の実施形態では、前記症状は狭心症、胸部痛、息切れ、心悸亢進、虚弱、めまい、吐き気、発汗、頻脈、徐脈、不整脈、心房細動、下肢のむくみ、チアノーゼ、疲労、失神、顔面麻痺、四肢の麻痺、筋肉の跛行もしくは痙攣、腹部膨満、または発熱のうちのいずれかであり得るが、これらに限定されない。
【0332】
ある特定の実施形態では、前記症状は狭心症である。ある特定の実施形態では、前記症状は胸部痛である。ある特定の実施形態では、前記症状は息切れである。ある特定の実施形態では、前記症状は心悸亢進である。ある特定の実施形態では、前記症状は虚弱である。ある特定の実施形態では、前記症状はめまいである。ある特定の実施形態では、前記症状は吐き気である。ある特定の実施形態では、前記症状は発汗である。ある特定の実施形態では、前記症状は頻脈である。ある特定の実施形態では、前記症状は徐脈である。ある特定の実施形態では、前記症状は不整脈である。ある特定の実施形態では、前記症状は心房細動である。ある特定の実施形態では、前記症状は下肢のむくみである。ある特定の実施形態では、前記症状はチアノーゼである。ある特定の実施形態では、前記症状は疲労である。ある特定の実施形態では、前記症状は失神である。ある特定の実施形態では、前記症状は顔面麻痺である。ある特定の実施形態では、前記症状は四肢の麻痺である。ある特定の実施形態では、前記症状は筋肉の跛行または痙攣である。ある特定の実施形態では、前記症状は腹部膨満である。ある特定の実施形態では、前記症状は障害性の短期の発熱である。
【0333】
ある特定の実施形態では、前記代謝性障害には高血糖症、前糖尿病、糖尿病(I型およびII型)、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドロームおよび糖尿病性脂質異常症が含まれるが、これらに限定されない。
【0334】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるようなApoCIIIを標的とした化合物は代謝性障害の生理学的マーカーまたは表現型を調節する。ある特定の実施形態では、代謝性障害の生理学的マーカーは定量可能であり得る。例えば、当技術分野において公知の標準的な検査によりグルコースレベルまたはインスリン抵抗性を測定および定量することができる。そのようなマーカーについて、ある特定の実施形態では、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは99%、またはこれらの値のいずれか2つによって限定される範囲だけ前記マーカーが減少し得る。別の例では、当技術分野において公知の標準的な検査によりインスリン感受性またはHDLレベルを測定および定量することができる。そのようなマーカーについて、ある特定の実施形態では、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは99%、またはこれらの値のいずれか2つによって限定される範囲だけ前記マーカーが増加し得る。
【0335】
また、それを必要とする対象において代謝性障害に関連する症状を予防、治療、または改善する方法も本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、代謝性障害に関連する症状の発症速度を低下させる方法が提供される。ある特定の実施形態では、代謝性障害に関連する症状の重症度を軽減させる方法が提供される。そのような実施形態では、前記方法はApoCIII核酸を標的とした化合物の治療上有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む。
【0336】
代謝性障害は多数の身体上の症状を特徴とする。代謝性障害に関連すると当業者に知られているいかなる症状も、上で説明した方法において上で示したように予防、治療、改善、または別の様態で、調節することができる。ある特定の実施形態では、前記症状は大量の尿の産生(多尿症)、多渇と水分摂取の増加(多飲症)、霞視、原因不明の体重減少および活力の欠如のうちのいずれかであり得るが、これらに限定されない。
【0337】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるような1つ以上の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む、個体を治療する方法が提供される。ある特定の実施形態では、前記個体は心血管系疾患を有する。ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物の治療上有効量の投与には、前記アンチセンス化合物の投与に対する個体の反応を測定するために、ApoCIIIレベルまたは心血管系疾患、糖尿病、もしくはApoCIIIの発現と関連する他の疾病のマーカーのモニタリングが伴う。医師は、前記アンチセンス化合物の投与に対する個体の応答を用いて、治療介入の程度と期間を決定する。
【0338】
ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物の投与によりApoCIII発現が少なくとも約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは99%、またはこれらの値のいずれか2つによって限定される範囲だけ低下することになる。ある特定の実施形態では、ApoCIII発現が50mg/L以下、60mg/L以下、70mg/L以下、80mg/L以下、90mg/L以下、100mg/L以下、110mg/L以下、120mg/L以下、130mg/L以下、140mg/L以下、150mg/L以下、160mg/L以下、170mg/L以下、180mg/L以下、190mg/L以下、または200mg/L以下まで低下する。
【0339】
ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物の投与によりHDLレベルが少なくとも約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは99%、またはこれらの値のいずれか2つによって限定される範囲だけ上昇することになる。
【0340】
ある特定の実施形態では、ApoCIII核酸を標的とするアンチセンス化合物の投与により、TG(食後または空腹時)レベルが少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは99%、またはこれらの値のいずれか2つによって限定される範囲だけ低下することになる。ある特定の実施形態では、TG(食後または空腹時)が100mg/dL以下、110mg/dL以下、120mg/dL以下、130mg/dL以下、140mg/dL以下、150mg/dL以下、160mg/dL以下、170mg/dL以下、180mg/dL以下、190mg/dL以下、200mg/dL以下、210mg/dL以下、220mg/dL以下、230mg/dL以下、240mg/dL以下、250mg/dL以下、260mg/dL以下、270mg/dL以下、280mg/dL以下、290mg/dL以下、300mg/dL以下、350mg/dL以下、400mg/dL以下、450mg/dL以下、500mg/dL以下、550mg/dL以下、600mg/dL以下、650mg/dL以下、700mg/dL以下、750mg/dL以下、800mg/dL以下、850mg/dL以下、900mg/dL以下、950mg/dL以下、1000mg/dL以下、1100mg/dL以下、1200mg/dL以下、1300mg/dL以下、1400mg/dL以下、1500mg/dL以下、1600mg/dL以下、1700mg/dL以下、1800mg/dL以下、または1900mg/dL以下まで低下する。
【0341】
ある特定の実施形態では、ApoCIIIを標的としたアンチセンス化合物を含む医薬組成物は、心血管系疾患を患う患者、または心血管系疾患に罹りやすい患者の治療用医薬の調製に使用される。
【0342】
投与
本発明の化合物または医薬組成物は、局所的治療が望ましいか、または全身的治療が望ましいかということ、および治療される領域に応じて多数の方法で投与され得る。投与は経口投与または非経口投与であり得る。
【0343】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるような化合物および組成物は非経口的に投与される。非経口投与には静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内の注射または点滴が含まれる。
【0344】
ある特定の実施形態では、非経口投与は点滴による。点滴は長期的、または逐次的、または短期的、または断続的であり得る。ある特定の実施形態では、点滴する医薬はポンプで送達される。ある特定の実施形態では、前記点滴は静脈内点滴である。
【0345】
ある特定の実施形態では、非経口投与は注射による。前記注射は注射筒またはポンプを用いて行われ得る。ある特定の実施形態では、前記注射はボーラス注射である。ある特定の実施形態では、前記注射は組織または器官に直接投与される。ある特定の実施形態では、非経口投与は皮下投与である。
【0346】
ある特定の実施形態では、非経口投与用の製剤は、緩衝剤、希釈剤ならびに浸透増強剤、担体化合物および他の薬学的に許容可能な担体または添加剤などの、しかし、これらに限定されない他の適切な添加物を含有することもできる無菌水溶液を含み得る。
【0347】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物の経口投与用製剤には医薬担体、添加剤、粉剤または顆粒剤、マイクロ粒子、ナノ粒子、水または非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル剤、ゲルカプセル剤、サシェ、錠剤またはミニ錠剤が含まれ得るが、これらに限定されない。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤または結合剤が望ましい場合がある。ある特定の実施形態では、経口用製剤は、本発明の化合物が1つ以上の浸透増強剤、界面活性剤、およびキレート剤と併せて加えられたものである。
【0348】
投薬
ある特定の実施形態では、所望の効果を達成するように選択することができる投与計画(例えば、用量、投薬頻度、および期間)に従って医薬組成物が投与される。所望の効果は、例えば、ApoCIIIの減少、またはApoCIIIと関連する疾患もしくは健康状態の予防、軽減、改善、もしくはその進行の遅延化であり得る。
【0349】
ある特定の実施形態では、対象中で医薬組成物を所望の濃度にするために投与計画の可変項目を調節する。投与計画に関して使用される場合、「医薬組成物の濃度」は化合物、オリゴヌクレオチド、または医薬組成物の有効成分を指し得る。例えば、ある特定の実施形態では、所望の効果を達成するために十分な量の医薬組成物の組織中濃度または血漿中濃度をもたらすために用量および投薬頻度を調節する。
【0350】
投薬は、治療される疾患状態の重症度および反応性に依存し、治療期間は数日から数か月、または治癒がもたらされるまで、または疾患状態の消失が達成されるまで続く。投薬は薬品の力価および代謝にも左右される。ある特定の実施形態では、投薬量は体重1kg当たり0.01μgから100mgまでであり、または0.001mg〜1000mgの投薬範囲内であり、そして、それは1日、1週間、1か月、または1年に1回以上の頻度で、または2〜20年に1回の頻度でも投与され得る。治療の成功後に疾患状態の再発を防ぐために、体重1kg当たり0.01μgから100mgまでの範囲または0.001mgから1000mgまでの投薬範囲の維持用量のオリゴヌクレオチドが1日に1回以上〜20年に1回投与される維持療法を患者に受けさせることが望ましい場合がある。
【0351】
特定の併用療法
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物を含む第1薬剤を1つ以上の第2薬剤と共投与する。ある特定の実施形態では、そのような第2薬剤は、本明細書に記載される第1薬剤が治療するものと同じ疾患、障害、または健康状態を治療するように企図されている。ある特定の実施形態では、そのような第2薬剤は、本明細書に記載される第1薬剤が治療するものと異なる疾患、障害、または健康状態を治療するように企図されている。ある特定の実施形態では、第1薬剤は、第2薬剤の望まれない副作用を治療するように企図されている。ある特定の実施形態では、第2薬剤は、第1薬剤の望まれない作用を治療するように第1薬剤と共投与される。ある特定の実施形態では、そのような第2薬剤は、本明細書に記載されるような1つ以上の医薬組成物の望まれない副作用を治療するように企図されている。ある特定の実施形態では、第2薬剤は、複合的効果をもたらすために第1薬剤と共投与される。ある特定の実施形態では、第2薬剤は、相乗的効果をもたらすために第1薬剤と共投与される。ある特定の実施形態では、第1薬剤と第2薬剤の共投与は、前記薬剤が独立した治療法として投与される場合に治療効果または予防効果を達成するために必要とされるであろう投薬量よりも少ない投薬量の使用を可能とする。
【0352】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の組成物と1つ以上の他の医薬が同時点で投与される。ある特定の実施形態では、本発明の1つ以上の組成物と1つ以上の他の医薬が異なる時点で投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の組成物と1つ以上の他の医薬が単一の製剤中に一緒に調製される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の組成物と1つ以上の他の医薬は別々に調製される。
【0353】
ある特定の実施形態では、第2薬剤にはApoCIII低下薬剤、コレステロール低下薬剤、非HDL脂質(例えば、LDL)低下薬剤、HDL上昇薬剤、魚油、ナイアシン、フィブラート、スタチン、DCCR(ジアゾキシドの塩)、グルコース低下薬剤および/または抗糖尿病薬が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、最大忍容用量の第2薬剤と組み合わせて第1薬剤が投与される。ある特定の実施形態では、最大忍容用量の第2薬剤へ反応することができない対象に第1薬剤が投与される。
【0354】
ApoCIII低下薬剤の例には第1薬剤と異なるApoCIIIアンチセンスオリゴヌクレオチド、ナイアシンまたはApoBアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0355】
グルコース低下薬剤および/または抗糖尿病薬の例には治療のための生活習慣の変更、PPARアゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼ(IV)阻害剤、GLP‐1類似体、インスリンまたはインスリン類似体、インスリン分泌促進物質、SGLT2阻害剤、ヒトアミリン類似体、ビグアニド、α‐グルコシダーゼ阻害剤、メトホルミン、スルホニル尿素、ロシグリタゾン、メグリチニド、チアゾリジンジオン、α‐グルコシダーゼ阻害剤などが挙げられるが、これらに限定されない。スルホニル尿素はアセトヘキサミド、クロルプロパミド、トルブタミド、トラザミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリドまたはグリクラジドであり得る。メグリチニドはナテグリニドまたはレパグリニドであり得る。チアゾリジンジオンはピオグリタゾンまたはロシグリタゾンであり得る。α‐グルコシダーゼはアカルボースまたはミグリトールであり得る。
【0356】
コレステロール低下治療または脂質低下治療には治療のための生活習慣の変更、スタチン、胆汁酸分泌促進物質、ニコチン酸およびフィブラートが含まれ得るが、これらに限定されない。スタチンはアトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンなどであり得る。胆汁酸分泌促進物質はコレセベラム、コレスチラミン、コレスチポールなどであり得る。フィブラートはゲムフィブロジル、フェノフィブラート、クロフィブラートなどであり得る。
【0357】
HDL上昇薬剤にはコレステリルエステル転移タンパク質(CETP)阻害薬(例えば、トルセトラピブ)、ペルオキシソーム増殖活性化受容体アゴニスト、Apo‐A1、ピオグリタゾンなどが含まれる。
【0358】
ある特定の治療集団
高TGレベルを有する特定の対象は心血管系疾患および代謝性疾患のリスクが高い。高TG(例えば、高トリグリセリド血症)を有する多くの対象では、現行の治療はそれらのTGレベルを安全なレベルまで低下させることができない。ApoCIIIはTG代謝に重要な役割を果たし、それは心血管系疾患の独立したリスクファクターである。ApoCIII阻害が、本明細書において示されるように、TGレベルを著しく低下させるが、それにより心血管系疾患もしくは代謝性疾患、またはそのリスクを改善することができる。
【0359】
ボーダーラインの高TGレベル(150〜199mg/dL)は一般集団に通常見出され、それはメタボリックシンドローム/インスリン抵抗性状態の一般的な要素である。200mg/dL以上の高血漿TGレベルは心血管系疾患のリスク上昇と関連する一般的な臨床上の形質である (Hegele et al., Hum Mol Genet 2009, 18:4189-4194; Hegele and Pollex, Mol Cell Biochem, 2009, 326:35-43) 。非常に高いTGレベル(500mg/dL以上2000mg/dL以下)はほとんどの場合カイロミクロンレベルの上昇とも関連付けられており、それには急性膵炎のリスク上昇が伴う。
【0360】
ある特定の実施形態では、100〜200mg/dL、100〜300mg/dL、100〜400mg/dL、100〜500mg/dL、200〜500mg/dL、300〜500mg/dL、400〜500mg/dL、500〜1000mg/dL、600〜1000mg/dL、700〜1000mg/dL、800〜1000mg/dL、900〜1000mg/dL、500〜1500mg/dL、1000〜1500mg/dL、100〜2000mg/dL、150〜2000mg/dL、200〜2000mg/dL、300〜2000mg/dL、400〜2000mg/dL、500〜2000mg/dL、600〜2000mg/dL、700〜2000mg/dL、800〜2000mg/dL、900〜2000mg/dL、1000〜2000mg/dL、1100〜2000mg/dL、1200〜2000mg/dL、1300〜2000mg/dL、1400〜2000mg/dL、または1500〜2000mg/dLの間にあるTGレベルを有する対象を治療するために、本明細書において開示される化合物、組成物および方法を使用する。ある特定の実施形態では、100mg/dL以上、110mg/dL以上、120mg/dL以上、130mg/dL以上、140mg/dL以上、150mg/dL以上、160mg/dL以上、170mg/dL以上、180mg/dL以上、190mg/dL以上、200mg/dL以上、300mg/dL以上、400mg/dL以上、500mg/dL以上、600mg/dL以上、700mg/dL以上、800mg/dL以上、900mg/dL以上、1000mg/dL以上、1100mg/dL以上、1200mg/dL以上、1300mg/dL以上、1400mg/dL以上、1500mg/dL以上、1600mg/dL以上、1700mg/dL以上、1800mg/dL以上、1900mg/dL以上、2000mg/dL以上、2100mg/dL以上、2200mg/dL以上、2300mg/dL以上、2400mg/dL以上、または2500mg/dL以上のTGレベルを有する対象に対して、本明細書において開示される化合物を使用する治療の必要性が示される。
【0361】
フレデリクソン分類システムまたはTremblayによって記載される分類システム (Tremblay et al., J Clin Lipidol, 2011, 5:37-44)によっていくつかの型の高トリグリセリド血症を特徴づけることができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物、組成物および方法はフレデリクソンII型、IV型もしくはV型の高トリグリセリド血症の患者、またはそのリスクがある患者の治療に有用である。
【0362】
フレデリクソンIIb型(家族性複合型高リポタンパク質血症としても知られる)は、LDL‐CとVLDLの上昇を原因とする複合型の高脂血症(高コレステロールレベルおよび高TGレベル)である。高VLDLレベルは、TG、アセチルCoAを含む基質の過剰生産とB‐100合成の増大を原因とする。それらはLDLのクリアランスの低下によっても引き起こされ得る。集団内の有病率は約10%である。
【0363】
フレデリクソンIV型(家族性高トリグリセリド血症としても知られる)は集団中に約1%の頻度で生じる常染色体優性健康状態である。肝臓によるVLDLの過剰生産またはヘテロ接合性LPL欠損の結果としてTGレベルが上昇するが、それはほとんど常に1000mg/dL未満である。血清中コレステロールレベルは通常正常な限度内にある。その障害はヘテロ接合性であり、その表現型は環境要因、特に、炭水化物とエタノールの消費に大いに影響される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物、組成物および方法は、200mg/dL以上のTGレベルおよびヘテロ接合性LPL欠損またはVLDLの過剰生産を有する対象の治療に有用である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物、組成物および方法は、500mg/dL以上のTGレベルおよびヘテロ接合性LPL欠損またはVLDLの過剰生産を有する対象の治療に有用である。
【0364】
「フレデリクソンV型」は高VLDLと高カイロミクロンを有する。それは、少なくとも20%のLPL活性(すなわち、部分的LPL欠損症)と関連付けられている機能欠失型LPL遺伝子異型の保因者を特徴とする。これらの対象は、カイロミクロンとVLDLが原因で、乳状の血漿と重症の高トリグリセリド血症を示す。TGレベルは常に1000mg/dLを越え、総コレステロールレベルは常に高い。LDL‐Cレベルは通常低い。それは急性膵炎、耐糖能障害および高尿酸血症のリスク上昇とも関連がある。症状は一般に成人(35歳よりも上)に現れ、有病率は比較的に低いが、それはホモ接合性LPL欠損患者または複合ヘテロ接合性LPL欠損患者よりもずっと一般的である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物、組成物および方法は、1000mg/dL以上のTGを有する対象の治療に有用である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物、組成物および方法は、対象の高TGレベルと関連する膵炎を有する対象、またはその膵炎のリスクがある対象の治療に有用である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物、組成物および方法は、対象の高TGレベルと関連する心血管系疾患もしくは代謝性疾患を有する対象、またはその心血管系疾患もしくは代謝性疾患のリスクがある対象の治療に有用である。ある特定の実施形態では、前記心血管系疾患は動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化、脳血管系疾患、冠動脈性心疾患、高血圧、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、脳卒中などである。ある特定の実施形態では、前記脂質異常症はカイロミクロン血症である。ある特定の実施形態では、前記の代謝性疾患または障害には高血糖症、前糖尿病、糖尿病(I型およびII型)、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドロームおよび糖尿病性脂質異常症が含まれるが、これらに限定されない。
【0365】
ある特定の実施形態では、本明細書において開示される化合物を使用する治療は、ApoCIIIレベルおよび/またはトリグリセリドレベルを上昇させる遺伝的欠陥を有するヒト動物に対して適応される。ある特定の実施形態では、前記遺伝的欠陥は、ApoCIII発現を上昇させる対立遺伝子の異型または多型である。ある特定の実施形態では、前記多型は(位置74の)TからAへの塩基転移、(位置−641の)CからAへの塩基転移、(位置−630の)GからAへの塩基転移、(位置−625の)Tの欠失、(位置−482の)CからTへの塩基転移、(位置−455の)TからCへの塩基転移、(位置1100の)CからTへの塩基転移、(位置3175の)CからGへの塩基転移、(位置3206の)TからGへの塩基転移、(位置3238の)CからGへの塩基転移などである。ある特定の実施形態では、前記遺伝的欠陥はヘテロ接合性LPL欠損である。
【0366】
ある特定の実施形態では、本明細書において開示される化合物を使用する治療は、上昇したApoCIIIレベルを有するヒト動物に対して適応される。ある特定の実施形態では、前記の上昇したApoCIIIレベルは50mg/L以上、60mg/L以上、70mg/L以上、80mg/L以上、90mg/L以上、100mg/L以上、110mg/L以上、120mg/L以上、130mg/L以上、140mg/L以上、150mg/L以上、160mg/L以上、170mg/L以上、180mg/L以上、190mg/L以上、200mg/L以上、300mg/L以上、400mg/L以上、または500mg/L以上である。
【実施例】
【0367】
非限定的な開示および参照による組み込み
本明細書に記載される特定の化合物、組成物および方法は特定の実施形態に従って特定的に記述されているが、以下の実施例は本明細書に記載される化合物の例示のみのために用いられ、それらがその化合物を限定することは意図されていない。本願で引用される参照文献の各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0368】
実施例1:huApoCIII遺伝子導入マウスでのヒトApoCIIIのインビボアンチセンス阻害の効果
本試験で利用されたヒトApoCIII導入遺伝子を有する遺伝子導入マウスはhuApoCIII遺伝子導入F1ハイブリッド(Jackson Laboratories、カリフォルニア州)の子孫とC57BL/6マウスであった。配列番号1(GENBANK受託番号NM_000040.1)の部位508に開始部位を有し、配列番号2(GENBANK受託番号NT_033899.8から切り出されたヌクレオチド20263040から20266203まで)の部位3139に開始部位を有し、配列5’−AGCTTCTTGTCCAGCTTTAT−3’(配列番号3)と5−10−5MOEギャップマーモチーフを有するISIS304801(以前に、米国特許第7,598,227号において開示された)を本検定に利用した。5−10−5MOEギャップマーモチーフを有し、配列番号1または配列番号2の別の領域を標的とする別のISISアンチセンスオリゴヌクレオチドである「化合物X」も本検定に含めた。5−10−5MOEギャップマーモチーフを有し、げっ歯類ApoCIII配列(GenBank受託番号NM_023114.3;配列番号5)を標的とする別のISISアンチセンスオリゴヌクレオチドである「化合物Y」も本検定に含めた。
【0369】
処置
ヒトApoCIII遺伝子導入マウスを12時間明暗周期で飼育し、Teklad実験用飼料を自由に食べさせた。実験開始前に実験施設で動物を少なくとも7日間順応させた。PBS中にアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を調製し、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過することにより滅菌した。注射のために、オリゴヌクレオチドを0.9%のPBSに溶解した。
【0370】
オスマウスとメスマウスを別々に検定した。5匹ずつのマウスからなる3つの処置群にオスマウスを分けた。2つのそのような群は37.5mg/kgの用量でISIS304801または化合物Xの皮下注射を週2回2週間受けた。1群のマウスはPBSの皮下注射を週2回2週間受けた。メスマウスを4〜5匹ずつのマウスからなる4つの処置群に分けた。3つのそのような群は37.5mg/kgの用量でISIS304801、化合物Xまたは化合物Yの皮下注射を週2回2週間受けた。1群のマウスはPBSの皮下注射を週2回2週間受けた。処置前と最後の投薬後にそれぞれのマウスから血液を採取し、そして、血漿試料を分析した。最後の投薬の2日後にマウスを安楽死させ、器官を採取し、そして、分析を行った。
【0371】
コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベル
BlighとDyerの方法 (Bligh, E.G. and Dyer, W.J. Can. J. Biochem. Physiol. 37: 911-917, 1959)により血漿トリグリセリドと血漿コレステロールを抽出し、市販のトリグリセリドキット(DCLトリグリセリド試薬;Diagnostic Chemicals Ltd.)を使用してそれらを測定した。
【0372】
オスとメスでのトリグリセリド分析の結果が表1および2に提示され、mg/dLで表される。観察されたように、全ての処置群でトリグリセリドレベルが対照群でのレベルと比較して著しく低かった。
【0373】
コレステロールの様々な画分(HDL、LDLおよびVLDL)の測定のため、メスの群に由来する血漿試料をHPLCにより分析したが、表3にそれらが提示される。観察されたように、ApoCIIIのアンチセンス阻害がVLDLを著しく減少させ、また、HDLレベルを著しく上昇させた。HDLの増加とVLDLレベルの低下はApoCIIIアンチセンス阻害の心血管系に有益な効果であり、脂質異常性疾患の動物、またはそのリスクがある動物にとって有益であり得る。
【0374】
【表1】
【0375】
【表2】
【0376】
【表3】
【0377】
実施例2:huApoCIII遺伝子導入マウスにおけるヒトApoCIIIの用量依存的アンチセンス阻害
ヒトApoCIII遺伝子導入マウスを使用する用量依存性試験でISIS304801と化合物Xをさらに試験した。
【0378】
処置
ヒトApoCIII遺伝子導入マウスを12時間明暗周期で飼育し、Teklad実験用飼料を自由に食べさせた。実験開始前に実験施設で動物を少なくとも7日間順応させた。PBS中にアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を調製し、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過することにより滅菌した。注射のために、オリゴヌクレオチドを0.9%のPBSに溶解した。
【0379】
3匹ずつのマウスからなる9つの処置群にメスマウスを分けた。8つのそのような群は1.5mg/kg/週、5mg/kg/週、15mg/kg/週、または50mg/kg/週の用量でISIS304801または化合物Xの皮下注射を2週間受けた。1群のマウスはPBSの皮下注射を2週間受けた。処置前と最後の投薬後にそれぞれのマウスから血液を採取し、そして、血漿試料を分析した。最後の投薬の2日後にマウスを安楽死させ、器官を採取し、そして、分析を行った。
【0380】
コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベル
BlighとDyerの方法 (Bligh, E.G. and Dyer, W.J. Can. J. Biochem. Physiol. 37: 911-917, 1959)により血漿トリグリセリドと血漿コレステロールを抽出し、市販のトリグリセリドキット(DCLトリグリセリド試薬、Diagnostic Chemicals Ltd.)を使用してそれらを測定した。
【0381】
前記マウスでのコレステロールとトリグリセリドの分析の結果が表4および5に提示され、mg/dLで表される。観察されたように、より高い用量のISIS304801で処置されたマウスでHDLレベルが著しく上昇したが、それは、前記オリゴヌクレオチドによるApoCIII阻害の有益な効果を表す。高用量処置群のLDLレベルとトリグリセリドレベルは対照群のレベルと比較して低かった。HDLの増加とLDLレベルおよびTGレベルの低下はApoCIIIアンチセンス阻害の心血管系に有益な効果であり、脂質異常性疾患の動物、またはそのリスクがある動物にとって有益であり得る。
【0382】
【表4】
【0383】
【表5】
【0384】
実施例3:CETP遺伝子導入LDL受容体ヌルマウスにおけるApoCIIIアンチセンス阻害の効果
高脂血症のマウスでの血漿脂質と血漿リポタンパク質の代謝に対するマウスApoCIIIアンチセンス阻害剤の効果を検討するため、ヒトCETP遺伝子導入LDLr−/−マウスモデルにおいて化合物Yをさらに試験した。
【0385】
処置
ヒトCETP遺伝子導入LDLr−/−遺伝子導入マウスを12時間明暗周期で飼育し、ウエスタン飼料(カロリーの42%が脂肪分から、0.2%のコレステロール)を自由に食べさせた。実験開始前に実験施設で動物をこの飼料に10日間順応させた。PBS中にアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を調製し、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過することにより滅菌した。注射のために、オリゴヌクレオチドを0.9%のPBSに溶解した。
【0386】
8週齢のオスマウスを3つの処置群に分けた。6匹のマウスからなる1つのそのような群は12.5mg/kg/週の用量で化合物Yの皮下注射を4週間受けた。4匹のマウスからなる1群は12.5mg/kg/週の用量で対照オリゴヌクレオチドISIS141923(配列番号4)の皮下注射を4週間受けた。5匹のマウスからなる1群はPBSの皮下注射を4週間受けた。投薬の開始前の時点と処置の2週間と4種間の時点で血漿試料を採取した。
【0387】
コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベル
BlighとDyerの方法 (Bligh, E.G. and Dyer, W.J. Can. J. Biochem. Physiol. 37: 911-917, 1959)により血漿トリグリセリドと血漿コレステロールを抽出し、市販のトリグリセリドキット(DCLトリグリセリド試薬;Diagnostic Chemicals Ltd.)を使用してそれらを測定した。
【0388】
前記マウスでのコレステロールとトリグリセリドの分析の結果が表6〜7に提示され、mg/dLで表される。処置群でのコレステロールレベルおよびトリグリセリドレベルは対照群でのレベルと比較して著しく低かった。コレステロールレベルとTGレベルの低下はApoCIIIアンチセンス阻害の心血管系に有益な効果であり、脂質異常性疾患の動物、またはそのリスクがある動物にとって有益であり得る。
【0389】
【表6】
【0390】
【表7】
【0391】
CETPタンパク質レベルと活性の阻害
血漿CETPタンパク質レベルを、市販のELISAキット(ALPCO、カタログ番号47−CETHU−E01)を使用して測定した。CETPタンパク質活性を、蛍光定量アッセイキット(Roar Biomedical,Inc.カタログ番号RB−CETP)を使用して測定した。表8に提示されるように、アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する処置によりCETPタンパク質の発現と活性が低下した。CETP(コレステリルエステル転移タンパク質)は高密度リポタンパク質(HDL)とapoB含有リポタンパク質、例えば、超低密度リポタンパク質(VLDL)、LDLおよびカイロミクロンとの間でトリグリセリドとコレステロールエステルの交換を促進する。CETPの低下はHDLレベルの上昇およびLDLレベルの低下と関連付けられている (Barter P.J. et al. Artherioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23: 160-167, 2003) 。したがって、CETPタンパク質レベルと活性の阻害はApoCIIIアンチセンス阻害の心血管系に有益な効果であり、脂質異常性疾患の動物、またはそのリスクがある動物にとって有益であり得る。対照オリゴヌクレオチドは、予想されたように、CETPに対していかなる有意な効果も持たなかった。
【0392】
【表8】
【0393】
apoA1タンパク質レベルとパラオキソナーゼ‐1(PON1)活性の上昇
血漿ApoA1タンパク質レベルをELISAにより測定した。PON1タンパク質活性を、EnzChek(登録商標)パラオキソナーゼ蛍光定量アッセイキット(Invitrogen、カタログ番号E33702)を使用して測定した。表9および10に提示されるように、アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する処置によりApoA1タンパク質の発現が増強され、PON1タンパク質の活性が上昇した。ApoA1とPON1は血漿中のHDLの主要なタンパク質成分である (Aviram, M and Rosenblat, M. Curr. Opin. Lipidol. 16: 393-399, 2005) 。したがって、これらの2つのタンパク質成分のタンパク質レベルと活性の向上はApoCIIIアンチセンス阻害の心血管系に有益な効果であり、脂質異常性疾患の動物、またはそのリスクがある動物にとって有益であり得る。対照オリゴヌクレオチドは、予想されたように、どちらのタンパク質に対してもいかなる有意な効果も持たなかった。
【0394】
【表9】
【0395】
【表10】
【0396】
実施例4:CETP遺伝子導入LDL受容体ヌルマウスにおけるApoCIIIアンチセンス阻害のHDLコレステロールクリアランスに対する効果
高脂血症のマウスでのHDLコレステロールのクリアランスと代謝に対するApoCIIIアンチセンス阻害剤の効果を検討するため、ヒトCETP遺伝子導入LDLr−/−マウスモデルにおいて化合物Yをさらに試験した。
【0397】
処置
ヒトCETP遺伝子導入LDLr−/−マウスを12時間明暗周期で飼育し、ウエスタン飼料(カロリーの42%が脂肪分から、0.2%のコレステロール)を自由に食べさせた。実験開始前に実験施設で動物をこの飼料に10日間順応させた。PBS中にアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を調製し、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過することにより滅菌した。注射のために、オリゴヌクレオチドを0.9%のPBSに溶解した。
【0398】
8週齢のオスマウスを3つの処置群に分けた。6匹のマウスからなる1群は15mg/kg/週の用量で化合物Yの皮下注射を6週間受けた。4匹のマウスからなる1群は15mg/kg/週の用量で対照オリゴヌクレオチドISIS141923の皮下注射を6週間受けた。5匹のマウスからなる1群はPBSの皮下注射を6週間受けた。
【0399】
コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベル
BlighとDyerの方法 (Bligh, E.G. and Dyer, W.J. Can. J. Biochem. Physiol. 37: 911-917, 1959)により血漿トリグリセリドと血漿コレステロールを抽出し、市販のトリグリセリドキット(DCLトリグリセリド試薬;Diagnostic Chemicals Ltd.)を使用してそれらを測定した。
【0400】
前記マウスでのコレステロールとトリグリセリドの分析の結果が表11に提示され、mg/dLで表される。処置群でのコレステロールレベルおよびトリグリセリドレベルは対照群でのレベルと比較して著しく低かった。コレステロールレベルとTGレベルの低下はApoCIIIアンチセンス阻害の心血管系に有益な効果であり、脂質異常性疾患の動物、またはそのリスクがある動物にとって有益であり得る。
【0401】
【表11】
【0402】
HDLクリアランス
尾部静脈を介して全ての群のマウスに1×10dpmのH−コレステリルエーテル(H−CEth)で標識したHDLを注射した。放射性標識化コレステリルエーテルはコレステロールに構造的に類似しているが、それを取り込む組織によって捕らえられる。したがって、コレステロールの逆輸送に対する効果の評価に血漿からの放射性標識化コレステリルエーテルのクリアランスとその肝臓中の蓄積を用いることができる。注射から5分、1.5時間、3時間、6時間および24時間の後に血漿試料を採取し、液体シンチレーションカウンターを使用して放射活性を計測した。24時間の時点で前記マウスを殺処理し、そして、肝臓を採取した。2:1のクロロホルム/メタノール混液中で前記肝臓試料を抽出し、抽出物に窒素ガスを吹き付け、それをシンチレーションカクテルに溶解し、同一の液体シンチレーションカウンターを使用してその放射活性を計測した。
【0403】
表12に提示されるような放射性標識の減少は血漿からのHDL‐Cethのクリアランスと関連している。その結果は、化合物Yを使用する処置により血漿からのHDLコレステロールのクリアランス速度が向上することになることを示している。このことは、表13に提示されるように、化合物Yで処置されたマウスの肝臓での放射性標識化コレステリルエーテルの蓄積量の増加と関連している。したがって、そのデータは、これらの遺伝子導入マウスでのApoCIIIの阻害がコレステロールの逆輸送を向上し、したがって、それが脂質異常性疾患の患者のような心血管系疾患の患者に対して有益な効果を有することを示している。
【0404】
【表12】
【0405】
【表13】
【0406】
実施例5:ヒトApoCIIIアンチセンス阻害の効果のC57BL/6マウスとApoCIIIノックアウトマウスモデルでの比較
Jackson LaboratoriesからApoCIIIノックアウトマウス(ストック番号002057)を入手し、ApoCIIIアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置したC57BL/6マウスと比較した。5−10−5MOEギャップマーモチーフを有し、げっ歯類ApoCIII配列(GenBank受託番号NM_023114.3;配列番号5)を標的とする化合物Zを本試験で使用した。
【0407】
アンチセンスオリゴヌクレオチド処置
C57BL/6マウスを12時間明暗周期で飼育し、高脂肪飼料(Harland社の番号88137のTeklad実験用飼料)を1週間食べさせた。PBS中にアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を調製し、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過することにより滅菌した。注射のために、オリゴヌクレオチドを0.9%のPBSに溶解した。全血漿コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベルに基づきマウスを6〜8匹ずつのマウスからなる群に無作為に割り当てた。3群のC57BL/6マウスは毎週3.1mg/kg、6.3mg/kg、または12.5mg/kgの用量で化合物Zの腹腔内注射を6週間の期間受けた。1群のC57BL/6マウスは毎週PBSの腹腔内注射を6週間の期間受けた。PBS群は、オリゴヌクレオチド処置群およびApoCIIIノックアウトマウスと比較される対照として用いた。
【0408】
最後の投薬から2日後に前記マウスを殺処理し、そして、器官を採取した。マウス用通常飼料を食べさせたマウスからなる同様の群も試験した。
【0409】
肝臓トリグリセリド
オリンパス臨床分析機(Hitachi Olympus AU400e、メルビル、ニューヨーク州)を使用して肝臓トリグリセリドを測定した。表14にそのデータが提示され、それは、ApoCIIIアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置されたマウスがApoCIIIノックアウトマウスと異なる表現型を有することを示している。高用量のApoCIIIアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置されたマウスはPBS対照のレベルに類似した肝臓トリグリセリドレベルを有した。ApoCIIIノックアウトマウスでの肝臓トリグリセリドレベルはApoCIIIアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置されたC57BL/6マウスまたはPBS対照でのレベルよりも著しく高かった。したがって、ApoCIIIアンチセンス阻害はApoCIIIノックアウトマウスモデルと比較して脂肪肝のリスクを低下させる有益な効果を有した。
【0410】
【表14】
【0411】
実施例6:C57BL/6マウスにおけるApoCIIIのインビボアンチセンス阻害の効果
血漿脂質レベルと脂肪クリアランスに対するApoCIIIアンチセンス阻害の効果が評価された。
【0412】
処置
オスC57/BL6マウスを12時間明暗周期で飼育し、ウエスタン飼料(Harland社のTekland88137)を自由に食べさせた。実験開始前に実験施設で動物を少なくとも7日間順応させた。PBS中にアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を調製し、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過することにより滅菌した。注射のために、オリゴヌクレオチドを0.9%のPBSに溶解した。
【0413】
7〜8匹ずつのマウスからなる群は12.5mg/kg/週の用量で化合物Zの腹腔内注射を6週間受けた。別の群のマウスは12.5mg/kg/週の用量で対照オリゴヌクレオチドISIS141923の腹腔内注射を6週間受けた。第3の群のマウスはPBSの腹腔内注射を6週間受けた。最後の投薬から2日後に前記マウスを4時間絶食させ、殺処理し、そして、血漿と組織を採取した。
【0414】
ApoCIII mRNAの阻害
肝臓および小腸から全RNAを抽出し、ApoCIIIプライマープローブセットを使用するRT‐PCRによりApoCIII mRNAを定量し、そして、シクロフィリンに対して正規化した。結果が表15に提示され、PBS対照と比較したApoCIII mRNAの阻害(%)として表される。ISIS141923は、予想されたように、ApoCIII mRNAレベルのいかなる低下も引き起こさなかった。そのデータは、PBS対照と比較して、化合物Zによる肝臓および小腸におけるApoCIII mRNAの著しい阻害を示した。
【0415】
小腸でのApoCIII発現の阻害は、カイロミクロントリグリセリドの不適切なクリアランスが原因の脂質異常状態であるカイロミクロン血症の予防に重要であり得る (Chait et al., 1992, Adv Intern Med. 1992, 37:249-73) 。重症のカイロミクロン血症は生命を危うくする健康状態である膵炎を引き起こし得る。小腸のApoCIIIを阻害することによりリポタンパク質リパーゼの阻害が低減し、カイロミクロントリグリセリドクリアランスが増強され、それにより膵炎が予防される。さらに、小腸のApoCIIIの阻害が食後トリグリセリドのクリアランスを増強し、それにより、冠動脈性心疾患のリスクファクターとして知られる食後TGを低下させる。
【0416】
【表15】
【0417】
コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベル
BlighとDyerの方法 (Bligh, E.G. and Dyer, W.J. Can. J. Biochem. Physiol. 37: 911-917, 1959) により血漿コレステロールを抽出し、オリンパス臨床分析機(Hitachi Olympus AU400e、メルビル、ニューヨーク州)を使用して測定した。HPLCによりHDLコレステロールと非HDLコレステロールを個々に測定した。市販のトリグリセリドキット(DCLトリグリセリド試薬;Diagnostic Chemicals Ltd.、シャーロットタウン、カナダ)を使用してトリグリセリドレベルを測定した。結果が表16に提示され、mg/dLで表される。化合物Zを使用する処置によりPBS対照と比較して全コレステロールレベル、非HDLコレステロールレベルおよび血漿トリグリセリドレベルが著しく低下することになった。全コレステロールレベル、非HDLコレステロールレベルおよびTGレベルの低下はApoCIIIアンチセンス阻害の心血管系に有益な効果であり、脂質異常性疾患の動物、またはそのリスクがある動物にとって有益であり得る。
【0418】
【表16】
【0419】
脂肪クリアランス
注射から30分、1時間、2時間、3時間および4時間の後の時点で血漿試料を採取し、オリンパス臨床分析機(Hitachi Olympus AU400e、メルビル、ニューヨーク州)を使用して血漿全脂質含量を測定した。血漿中の脂質レベルは表17に提示されるとおりであるが、それは血漿からの脂質クリアランスの逆指標であった。その結果は、化合物Zを使用する処置により血漿からの脂肪クリアランスの速度が向上することになることを示している。
【0420】
したがって、前記のデータは、これらの遺伝子導入マウスでのApoCIIIの阻害がコレステロールの逆輸送を向上させ、心血管系疾患の患者に対して有益な効果を有することを示している。
【0421】
【表17】
【0422】
実施例7:C57BL/6マウスにおけるApoCIIIのインビボアンチセンス阻害の効果
ApoCIII発現レベルと脂肪クリアランスに対するApoCIIIのアンチセンス阻害の効果が評価された。
【0423】
処置
オスC57/BL6マウスを12時間明暗周期で飼育し、ウエスタン飼料(Harland社のTekland88137)を自由に食べさせた。実験開始前に実験施設で動物を少なくとも7日間順応させた。PBS中にアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を調製し、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過することにより滅菌した。注射のために、オリゴヌクレオチドを0.9%のPBSに溶解した。
【0424】
5匹ずつのマウスからなる群は12.5mg/kg/週の用量でApoCIIIを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドである化合物Zの腹腔内注射を6週間受けた。別の群のマウスは12.5mg/kg/週の用量で対照オリゴヌクレオチドISIS141923の腹腔内注射を6週間受けた。最後の投薬から2日後に前記マウスを一晩絶食させ、強制経口投与により200μLのオリーブ油をボーラス投与した。前記ボーラス投与後、4時間の一定の間隔で血漿トリグリセリドレベルを測定した。前記マウスを殺処理し、そして、血漿と組織を採取した。
【0425】
ApoCIII mRNAの阻害
肝臓および小腸から全RNAを抽出し、ApoCIIIプライマープローブセットを使用するRT‐PCRによりApoCIII mRNAを定量し、そして、シクロフィリンに対して正規化した。結果が表18に提示され、前記オリゴヌクレオチド対照と比較したApoCIII mRNAの阻害(%)として表される。そのデータは、前記オリゴヌクレオチド対照と比較して、化合物Zによる肝臓および小腸におけるApoCIII mRNAの著しい阻害を示した。
【0426】
本明細書の別の部分で記されているように、小腸でのApoCIII発現の阻害は、カイロミクロントリグリセリドの不適切なクリアランスが原因の脂質異常状態であるカイロミクロン血症の予防に重要であり得る (Chait et al., 1992, Adv Intern Med. 1992, 37:249-73) 。重症のカイロミクロン血症は生命を危うくする健康状態である膵炎を引き起こし得る。小腸のApoCIIIを阻害することによりリポタンパク質リパーゼの阻害が低減し、カイロミクロントリグリセリドクリアランスが増強されることとなり、それにより膵炎が予防されることとなるであろう。さらに、小腸のApoCIIIの阻害が食後トリグリセリドのクリアランスを増強することとなり、それにより、冠動脈性心疾患のリスクファクターとして知られる食後TGを低下させることとなるであろう。
【0427】
【表18】
【0428】
脂肪クリアランス
注射から0分後、30分後、60分後、120分後、180分後および240分後の時点で血漿試料を採取し、オリンパス臨床分析機(Hitachi Olympus AU400e、メルビル、ニューヨーク州)を使用して血漿トリグリセリド濃度を測定した。その結果は、化合物Zを使用する処置により血漿からのトリグリセリドクリアランスの速度が向上することになることを示している。
【0429】
この試験は、高apo‐CIIIレベルを発現する患者が食後TG濃度の上昇を示した脂肪ボーラス臨床試験 (Petersen K.F. et al., N Engl J Med 2010; 362: 1082-1089) に比肩し得る。
【0430】
【表19】
【0431】
実施例8:C57BL/6マウスにおけるApoCIIIのインビボアンチセンス阻害の効果
脂肪クリアランスに対するApoCIIIのアンチセンス阻害の効果を評価した。
【0432】
処置
オスC57/BL6マウスを12時間明暗周期で飼育し、ウエスタン飼料(Harland社のTekland88137)を自由に食べさせた。実験開始前に実験施設で動物を少なくとも7日間順応させた。PBS中にアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を調製し、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過することにより滅菌した。注射のために、オリゴヌクレオチドを0.9%のPBSに溶解した。
【0433】
6匹ずつのマウスからなる群は12.5mg/kg/週、6.3mg/kg/週または3.1mg/kg/週の用量でApoCIIIを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドである化合物Yまたは化合物Zの腹腔内注射を6週間受けた。別の群のマウスは12.5mg/kg/週の用量で対照オリゴヌクレオチドISIS141923の腹腔内注射を6週間受けた。別の群のマウスはPBSの腹腔内注射を6週間受けた。最後の投薬から2日後に前記マウスを一晩絶食させ、強制経口投与により200μLのオリーブ油をボーラス投与した。前記ボーラス投与後、4時間の一定の間隔で血漿トリグリセリドレベルを測定した。
【0434】
脂肪クリアランス
注射から0分後、30分後、60分後、120分後、180分後および240分後の時点で血漿試料を採取し、オリンパス臨床分析機(Hitachi Olympus AU400e、メルビル、ニューヨーク州)を使用して血漿トリグリセリド濃度を測定した。その結果は、化合物Yおよび化合物Zを使用する処置により血漿からの脂肪クリアランスの速度が向上することになることを示している。未決は計算されなかったデータセットを表す。
【0435】
この試験は、高apo‐CIIIレベルを発現する患者が食後TG濃度の上昇を示した脂肪ボーラス臨床試験 (Petersen K.F. et al., N Engl J Med 2010; 362: 1082-1089) に比肩し得る。
【0436】
【表20】
【0437】
実施例9:高トリグリセリド血症のサルモデルにおけるヒトApoCIIIを標的とするISISアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果
高果糖食で飼育したアカゲザルをISIS304801で処置した。アンチセンスオリゴヌクレオチドの効力および忍容性ならびに薬理的効果を評価した。
【0438】
処置
前記サルの年齢は2〜4歳であり、体重は2kgと5kgの間であった。前記サルを、無作為に割り当てられた5匹ずつのオスのアカゲザルからなる6群に割り当てた。第1群〜第4群のそれぞれのサルに約60gの飼料(認定済み霊長類用飼料 番号5048、PMI Nutrition International,Inc.)を1日に2回与えた。アンチセンスオリゴヌクレオチドの投薬前の16週間に、適切な果糖補助食品(すなわち、約15%のKool Aid(登録商標)ミックス)が午前中に与えられた。十分なトリグリセリドレベルの上昇を確認するために、投薬の1〜2週間前に血清化学用に血液試料を採取した。
【0439】
前記の群のサルに、適切なサイズのステンレス鋼の注射針と注射筒を前記のサルの背中の4か所の部位の1つに使用してISISオリゴヌクレオチドまたはPBSを皮下注射した。各部位は投与毎に時計回りで使用された。前記の群のいくつかには、負荷投与として第1週の間は週3回(第1日、第3日および第5日)、その後、第2週〜第12週の間は週2回5mg/kg、10mg/kgまたは20mg/kgのISIS304801が投薬された。5匹ずつのアカゲザルからなる2つの対照群にPBSを第1週の間は週3回(第1日、第3日および第5日)、その後、第2週〜第12週の間は週2回皮下注射した。投薬チャートが表21に示されている。第1群〜第4群のサルを第86日に殺処理した。
【0440】
ホイップクリームミルクセーキの形状でさらなる高脂肪曝露を第5群と第6群のサルに行った。体表面1m当たり782カロリーからなり、カロリーの77.6%が脂肪に由来し、19.2%が炭水化物に由来し、そして、3.1%がタンパク質に由来するように前記ミルクセーキを標準化した。第5群と第6群のサルを一晩絶食させ、そして、胃管を介して前記ミルクセーキを第84日に1回与えた。トリグリセリドの行程を評価するために、脂肪負荷の摂取の直前(時間=0時間)とその1時間後、2時間後、3時間後、4時間後および6時間後に血液を採取した。そうではない場合、前記のサルを休息させ、脂肪曝露後の6時間の間絶食させたままにした。この群のサルを第87日に殺処理した。
【0441】
【表21】
【0442】
肝臓標的の減少
RNA分析
殺処理時にApoCIII mRNA分析のために第1群〜第4群から約150mgの肝臓を採取した。肝臓を2分割し、1%のβ‐メルカプトエタノールを含有するRLT緩衝液を含む2本のチューブ内でそれらを浸漬した。前記組織をホモジェネートし、RT‐PCR分析によりApoCIIIの発現を定量した。表22に示されるように、ISIS304801を使用する処置により、PBS対照と比較して、ApoCIII mRNAが著しく減少することになった。
【0443】
【表22】
【0444】
タンパク質分析
第1群〜第4群の全ての実験動物から約1.5mLの血液を採取し、K‐EDTAを含むチューブに入れ、その後、血漿を分離するため遠心分離にかけた。商業的に入手可能な濁度測定アッセイ(Kamiya Biomedical Co.、シアトル、ワシントン州)を用いる臨床分析機でApoCIIIタンパク質レベルを定量した。表23に示されるように、ISIS304801を使用する処置により、PBS対照と比較して、ApoCIIIタンパク質レベルが著しく低下することになった。ApoCIIIタンパク質のレベル低下についての動態も分析されたが、それは表24に提示されている。
【0445】
【表23】
【0446】
【表24】
【0447】
リポタンパク質粒子の分析
血漿ApoCIII抑制の動態を確証するために、投薬開始7日前ならびに投薬期間の第16日、第30日および第86日に血漿試料を採取した。前記試料をNMRリポタンパク質粒子分析(Liposcience、ライリー、ノースカロライナ州)にかけた。処置群(第2群〜第4群)の間でApoCIIIの低下に著しい差異がなかったので、第2群(10mg/kg/週を受けた処置群)の分析結果のみが提示されている。表25および26にそのデータが提示されている。
【0448】
第30日の時点で、前記処置群の全血漿トリグリセリド(TG)とVLDLおよびカイロミクロンTGについて、統計的に有意なベースラインからの平均変化が観察された。同時に、前記対照のサルは同じパラメータの平均の増加を示した。これらの果糖を食べさせたサルでISIS304801を使用する持続的処置により約8μmol/L(表27)までHDLコレステロール粒子数が時間依存的に上昇することになったが、これらの試験ではLDLコレステロールの上昇は生じなかった(表28)。PBS対照と比較して、12週間の処置期間にわたってLDLコレステロール粒子量に重大な変化はなかった。
【0449】
殺処理の時点でBlighとDyerの抽出方法 (Bligh EG and Dyer WJ. Can J Biochem Physiol 1959; 37: 911-917) を用いて肝臓を抽出し、Wako社の比色定量TGアッセイを用いて定量を行った。PBS対照群と比較して、前記処置群のいずれにおいてもApoCIIIのアンチセンス阻害が肝臓のTG蓄積を増加させることはなかった(表29)。
【0450】
【表25】
【0451】
【表26】
【0452】
【表27】
【0453】
【表28】
【0454】
【表29】
【0455】
食後血漿TGクリアランス
第10週の時点で、サルに食事を与えてから0時間後、1時間後、2時間後、3時間後および4時間後の時点で10mg/kg/週の群(第2群)のサルの食後血漿TGレベルを測定した。表30および31に示されるように、前記の10mg/kg/週の群のサルでの食後TG曲線下面積(AUC)の38%減少によって示されるように、食後血漿TGのクリアランスが著しく上昇した。
【0456】
第12週の時点で、第5群と第6群(脂肪曝露後のPBS対照と40mg/kg/週の群)でも食後TGクリアランスを評価した。表32にそのデータが提示され、そして、それも、前記対照と比較した、その群のサルでの食後TG曲線下面積(AUC)の著しい減少を示す。
【0457】
【表30】
【0458】
【表31】
【0459】
【表32】
【0460】
第10週の時点で、10mg/kg/週の群のサルはPBS群よりも低い空腹時血漿TGレベルを有した。非ヒト霊長類での結果は、ApoCIIIのアンチセンス阻害は脂質異常症の個体での血漿TGとVLDLの減少にとり魅力的な治療戦略を表し、処置がHDL‐Cレベルを上昇させることができるが、同時にLDL‐Cに対して有害作用を持たないことを示している。
【0461】
実施例10:ISIS304801の第I相臨床試験
二重盲検の単回投与(SAD)第1相試験および反復投与漸増(MAD)第1相試験で、18歳〜55歳の年齢の健康な対象をISIS304801またはプラセボ(通常の生理食塩水)を受容するように3:1の比率で無作為に割り当てた。
【0462】
治験センターでSAD対象に50mg、100mg、200mgまたは400mgの単回皮下(SC)注射(n=4/コホート)を行った。前記対象は、血液の試料採取と臨床評価のために第4日と第8日(±24時間の枠)に通院して治験センターに戻ってきた。前記対象が電話インタビューによって評価される第15日まで、彼らの経過を追った。
【0463】
治験センターでMAD対象に50mg、100mg、200mgおよび400mgの反復SC注射を行った。前記対象は、第1週に3回の(第1日、第3日および第5日)負荷投薬とその後の3週間に週1回の(第8日、第15日および第22日)投薬を受けた。前記対象への試験薬品の最後の投薬から8週間の間、彼らの経過を追った。前記対象は、安全性評価および臨床評価のために、ならびにPK分析用の血液の試料採取のために第29日、第36日および第50日(±24時間の枠)に通院して治験センターに戻ってきた。前記対象が電話インタビューによって評価される第78日(±7日の枠)まで、彼らの経過を追った。
【0464】
前記MAD対象は第−1日から第6日まで、および第22日から第23日まで治験センターに滞在し、彼らには表33に示される食事が与えられた。第5、8、15、22、23、29、36、43および50日(±24時間の枠)の時点で血液試料を採取する前に、前記対象は少なくとも12時間絶食した。
【0465】
【表33-1】
【表33-2】
【表33-3】
【表33-4】
【0466】
結果
全体では、ISIS304801は良好な安全性プロファイルを示し、臨床的に意味があるトランスアミナーゼ酵素の増加と有意な有害事象が無く、全ての対象でよく忍容された。
【0467】
MADコホートのベースライン特性が表34に示されている。MAD対象は全apoC‐IIIレベルとTGレベルの用量依存的持続的低下を示したが、それらは表35〜36でベースラインからの変化(%)として表される。
【0468】
【表34】
【0469】
【表35】
【0470】
【表36】
【0471】
50mg、100mg、200mgおよび400mgの反復投与群でのベースラインからの変化(%)の中央値は最後の投薬から1週間後(第29日)に、それぞれ、全apoC‐IIIについて20%、17%、71%および78%の低下ならびにTGについて20%、25%、43%および44%の低下を示した。より高い用量の群では最後の投薬から少なくとも4週間低下状態が持続した。
【0472】
プラセボ群ではTGレベルが第5日と第23日に急激に上昇したが、これは前記対象の治験センターでの一泊の滞在と一致している。治験センターにより提供された食事が、治験センターに一泊滞在した対象のTGレベルを急激に上昇させることになったと考えられている。ISIS304801は用量依存的にTGの急激な上昇を低下させた。ISIS304801が食事によって誘発されるTGの急激な上昇を用量依存的に低下させたので、ある意味で、本明細書に示される結果は、(12時間の絶食の後にTGレベルが評価されたけれども)ISIS304801によるTGへの食後効果を表す。
【0473】
LDL‐C値は変化しなかった(データは示さず)が、HDL‐C値は表37に示されるように処置依存的に増加する傾向にあった。
【0474】
【表37】
【0475】
実施例11:ISIS304801の第II相臨床試験
空腹時のVLDL関連apoC‐IIIレベルへの用量/反応薬力学的効果をISIS304801とプラセボの間で評価するために、無作為抽出二重盲検プラセボ対照用量反応試験を計画する。追加の評価エンドポイントには、空腹時の全apoC‐III、TG、apoC−II(全apoC−IIおよびVLDL関連apoC−II)、アポリポタンパク質B−100(apoB−100)、アポリポタンパク質A−1(apoA−1)、アポリポタンパク質A−2(apoA−2)、アポリポタンパク質E(apoE)、全コレステロール(TC)、低密度リポタンパク質−コレステロール(LDL‐C)、LDL−TG、VLDL‐C、VLDL−TG、非高密度リポタンパク質−コレステロール(非HDL‐C)、非HDL−TG、HDL‐C、HDL−TG、カイロミクロン‐C(CM‐C)、CM−TG、遊離脂肪酸(FFA)、およびグリセロールのレベルへのプラセボに対するISIS304801の薬力学的効果;食後脂質、アポリポタンパク質およびリポタンパク質の特性と動態、ならびに治験における一部分集合の患者のグルコースレベルと別の部分集合の患者(食後評価を受けた患者と同一ではない)のより詳細なPKの評価;ならびにISIS304801の安全性、忍容性およびPKが含まれる。
【0476】
それぞれの患者について、参加期間は5週間以内のスクリーニング期間(4週間の厳格な食餌制限下の準備適格性評価期間を含む)、1週間の治験適格性評価/ベースライン評価期間、13週間の処置期間、および13週間の処置後評価期間の総計で32週間の治験参加期間からなる。付随する薬物投与および有害事象(AE)が治験期間の全てを通じて記録される。
【0477】
患者は少なくとも18歳であり、スクリーニング時に500mg/dL以上の空腹時TGおよび4週間の厳格な食餌制限下の準備時に300mg/dL以上で2000mg/dL以下の空腹時TGを有する。
【0478】
この治験に72人の患者を計画している。投薬コホート(100mg、200mg、300mg)当たり24人の患者が計画されており、コホート当たり18人のISIS304801(実薬)投与患者および6人のプラセボ投与患者が計画されている。適格な患者を非拡張PK/食後群(第1群)または拡張PK/食後群(第2群)に等しく(1:1)登録する。第2群の患者を拡張PK群(第2a群)または食後評価群(第2b群)に等しく(1:1)無作為に割り当てる。第2a群の患者を3つの投薬コホート(100mg、200mg、300mg)のうちの1つに等しく(1:1:1)に無作為に割り当て、各投薬コホート内では実薬またはプラセボを受容するように5:1に無作為に割り当てる。第2b群の患者を2つの投薬コホート(200mg、300mg)のうちの1つに等しく(1:1)無作為に割り当て、各投薬コホート内では実薬またはプラセボを受容するように2:1に無作に割り当てる。投薬コホート(100mg、200mg、300mg)に対して1:1:1の、および処置(実薬、プラセボ)に対して3:1の無作為割り当てを治験全体で達成するように第1群の患者を投薬コホートと処置に関して無作為に割り当てる。
【0479】
患者は、治験参加期間の間に(スクリーニング手順の実行後)厳格な食餌制限下に置かれる。食餌制限下の28日後、患者はベースライン測定を受け、治験の処置段階への登録の適格性評価を受ける。食餌準備期間後に登録基準に合う患者を等しく(1:1)非拡張PK/食後群(第1群)または拡張PK/食後群(第2群)に登録し、そして、それらの群の割り当ての内部で彼らを無作為に割り当てる。
【0480】
治験薬および処置
2mLの栓付きガラスバイアル瓶内に含まれるISIS304801の溶液(200mg/mL、1.0mL)を供給する。
【0481】
この治験のプラセボは0.9%の滅菌生理食塩水である。非盲検の薬剤師(または資格がある代表者)がISIS304801溶液とプラセボを調製する。バイアル瓶は使い捨てである。薬品の正体については知らない訓練を受けた専門家が治験薬を投与する。各投薬日に腹部、大腿、または上腕の外側の領域に治験薬をSC注射で投与する。単回SC注射で100mgおよび200mgの用量を投与する。2回の当量の非連続SC注射で300mgの用量を投与する。
【0482】
患者は週に1回13週間SC注射により投与される治験薬からなる13回の投薬を受ける(第1、8、15、22、29、36、43、50、57、64、71、78および85日)。
【0483】
患者は第1日(±0日)ならびに第8、15、22、29、36、43、50、57、64、71、78および85日(±1日以内)に処置通院する。拡張PK群の患者も24時間の採血のために第1日と第85日に対して第2日と第86日(±0日)に診療所に通院する。患者はスケジュールされた通院日のうちの第92日と第99日(±1日以内)、第127日(±3日以内)、第176日(±5日以内)に経過観察のために通院する。食後評価群の患者も24時間の採血のために第103日(±2日以内)と第103日の次の日に診療所に通院する。
【0484】
薬力学的測定用の採血が含まれるそれぞれの通院日(第8、15、29、43、57、71および85日)の前に、彼らの通院前の晩に患者には(患者および時点当たりに等しく低下した脂肪取込を確実にするために)標準化された調理済みの食事が夕食に与えられ、その後、彼らは絶食し続ける。これらの診療所への通院前48時間は、飲酒は禁止である。
【0485】
VLDL apoC‐IIIおよび他の薬力学マーカーの測定のために第8、15、29、43、57、71および85日(治験薬の投与前)に血液を採取する。
【0486】
食後評価群の患者は食後評価前の2日間に標準化された調理済みの食事((提供済みの)昼食と夕食および朝食とおやつについては指示)を消費する。それぞれの食後評価日では、患者は採血後に、1日のカロリー必要量の約3分の1に相当し、安定な放射性同位体トレーサーを含む標準化された流動食を消費し、その後に連続血液試料採取が続く。患者は流動食の消費から9時間後に標準化された調理済みの食事をとり、その後、彼らは翌日の24時間採血まで絶食する。
【0487】
トラフ試料採取に加えて、拡張PK評価群の患者は彼らの治験薬の最初の投薬(第1〜2日)および最後の投薬(第85〜86日)の後に24時間の連続血液試料採取を受ける。
【0488】
処置後評価期間
患者は治験第176日まで経過観察を受ける。この期間に、患者は、安全性評価および臨床評価(採血)、食餌カウンセリングおよびモニタリング、同時期の薬物使用の記録、ならびにAE事象の収集のために治験第92、99、127および176日(および食後評価群の患者は第103日)に通院して治験センターに戻ってくる。
【0489】
処置後評価期間を通してPKおよびPD分析のために血液試料を定期的に採取する。治験の様々な時点で血清化学、尿分析、凝血、補体、ヘマトロジー、免疫機能、甲状腺機能および全脂質パネルの臨床検査測定を実行する。
【0490】
以下に記載するように一部分集合の患者に食後評価を行う。
【0491】
食後の食事、試料採取スケジュールおよび評価
標識化トレーサーである3H‐パルミチン酸(300μCi、Perkin Elmer Inc.、ウッドリッジ、オンタリオ州、カナダ)を添加した放射性標識した食事を超音波処理して流動食にしたものを用いてリポタンパク質代謝の食後評価を実行する。パルミチン酸は脂肪酸であり、あらゆる食事の共通した構成成分である。3H‐パルミチン酸トレーサーはX線と同等の弱い放射活性を放出する。カイロミクロンが腸の腸細胞で形成されると、食餌性のパルミチン酸はカイロミクロンに取り込まれるので、このことが新規に形成されたカイロミクロンの循環系への出現とクリアランスをモニターすることを可能とする。カイロミクロンの出現とクリアランスの食後動態の検査に適用される方法論が確立している (Mittendorfer et al. 2003, Diabetes, 52: 1641-1648; Bickerton et al. 2007; Normand-Lauziere et al. 2010, PLoS. One, 5: e10956)。
【0492】
少量の(300μCi)放射標識脂肪酸(3H‐パルミチン酸)を含有する(ミルクセーキに類似した)流動食を提供する。その流動食は1日のカロリー必要量の約3分の1を提供する。その食事の摂取1時間前から9時間後まで、以前に記述されたように(Normand-Lauziere et al. 2010, PLoS. One, 5: e10956)、[U‐13C]標識パルミチン酸カリウムの持続静注(100mlの25%ヒト血清アルブミン中で0.01μmol/kg/分;Cambridge Isotopes Laboratories Inc.、アンドーバー、マサチューセッツ州)と[1,1,2,3,3‐2H]‐グリセロール(Cambridge Isotopes Laboratories Inc.)の初回刺激(1.6μmol/kg)持続静注(0.05μmol/kg/分)を行う。それぞれ、分布容積を90ml/kgおよび230ml/kg (Gastaldelli et al. 1999, J Appl. Physiol, 87: 1813-1822) と仮定し、Steeleの非定常状態方程式を用いて血漿中のパルミチン酸とグリセロールの出現速度を計算する。
【0493】
下の表で言及されるように、処置段階の前および後の日に放射標識された食事を摂取する前と後の間に血液試料を採取する。9時間の採血後に参加者に標準化された食事が与えられる。インビトロでのトリアシルグリセロール脂質分解を防ぐためにNa2‐EDTAとオルリスタット(30μg/ml、Roche、ミシサガ、カナダ)を含むチューブに血液を採取し、そして、血漿グルコース測定のためにNaF入りのチューブに分離試料を採取する。
【0494】
各時点で次のものが測定される。
・3H‐トレーサーの血漿レベルとCM画分レベル
・血漿[U‐13C]標識パルミチン酸カリウムと[1,1,2,3,3‐2H]‐グリセロールの出現速度
・TG、TCおよびapoBの血漿レベルとCM画分レベル
・apoCIII、apoCIIおよびapoEの血漿レベルおよびVLDL画分レベル
・グルコースの血漿レベル
【0495】
薬品結合タンパク質のプロファイリング、生体分析法バリデーションの目的、安定性および代謝物の評価のために、またはISIS304801の血漿成分との他の作用を評価するためにも血漿試料を使用することができる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]