特許第6203721号(P6203721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203721抽出サンプルの希釈を伴うマイクロ流体システムにおける乾燥血液スポットサンプルの分析
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203721
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】抽出サンプルの希釈を伴うマイクロ流体システムにおける乾燥血液スポットサンプルの分析
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/06 20060101AFI20170914BHJP
   G01N 30/60 20060101ALI20170914BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G01N30/06 Z
   G01N30/60 D
   G01N30/88 E
   G01N30/06 C
   G01N30/60 K
【請求項の数】25
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-527268(P2014-527268)
(86)(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公表番号】特表2014-524587(P2014-524587A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012051892
(87)【国際公開番号】WO2013028774
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年8月17日
(31)【優先権主張番号】61/525,963
(32)【優先日】2011年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/525,970
(32)【優先日】2011年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131764
【氏名又は名称】ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ジェイムズ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】トマニー,マイケル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェンジー,ジョーゼフ・ディー
(72)【発明者】
【氏名】レインビル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】プラム,ロバート・エス
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト,ジェフ・シー
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ムン・チョル
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0210008(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0133077(US,A1)
【文献】 特表2002−524755(JP,A)
【文献】 特表2011−506922(JP,A)
【文献】 特表2010−511154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 − 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析クロマトグラフィカラムとして構成された流体チャネルと、第一マイクロ流体基板の片側の流体ポートとを有する第一マイクロ流体基板であって、流体ポートは分析クロマトグラフィカラムのヘッド端で開口している、第一マイクロ流体基板と、
サンプル調製カラムとして構成された第二流体チャネルと、サンプル調製カラムの一方の末端の内部に向って開口している第二マイクロ流体基板の第一面側の第一流体ポートと、第二マイクロ流体基板の第二面側の第二流体ポートと、を有する第二マイクロ流体基板と、
1つ以上の乾燥生体サンプルを保持する乾燥血液スポット(DBS)捕集装置であって、DBS捕集装置は、第二マイクロ流体基板の第一流体ポートがDBS捕集装置から抽出生体サンプルを受け取って、抽出生体サンプルをサンプル調製カラムに渡すように、第二マイクロ流体基板に直接結合されている、DBS捕集装置と、
第一マイクロ流体基板の第一流体ポートと流体的に結合され希釈剤源であって、希釈剤源は、生体サンプルが分析クロマトグラフィカラムに流入する前に、抽出生体サンプルを希釈するために、分析カラムのヘッド端に溶媒を供給する、希釈剤源と、を含む、クロマトグラフィ装置。
【請求項2】
サンプル調製カラムが固相抽出(SPE)向けに構成されている、請求項1に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項3】
第二マイクロ流体基板がサンプル調製カラムとして構成された複数の流体チャネルを有し、第二マイクロ流体基板上に直接結合されたDBS捕集装置は、第二マイクロ流体基板の異なる流体チャネルと流体連通している異なる乾燥生体サンプルを有し、DBS捕集装置および第二マイクロ流体基板は、分析クロマトグラフィチャネルを備える第一マイクロ流体基板と移動可能に結合されている、請求項1に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項4】
第一マイクロ流体基板の分析カラムと位置合わせするように第二マイクロ流体基板のサンプル調製カラムの異なる1つを割り出しするために、DBS捕集装置および第二マイクロ流体基板と機械的に結合する自動サンプラ装置をさらに含む、請求項3に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項5】
そこからアナライトを抽出するため、乾燥生体サンプルに溶媒を送り込むためにDBS捕集装置の一方の面と流体的に結合されたポンプをさらに含む、請求項1に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項6】
送り込まれた溶媒が超臨界流体である、請求項5に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項7】
送り込まれた溶媒が有機溶媒である、請求項5に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項8】
送り込まれた溶媒が、アナライトを抽出するために生体サンプル中を流れる、請求項5に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項9】
送り込まれた溶媒が、アナライトを抽出するために生体サンプルの上を流れる、請求項5に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項10】
分析クロマトグラフィカラムが300μmの内径を有する、請求項1に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項11】
DBS捕集装置が複数の乾燥生体サンプルを含有するDBSカードである、請求項1に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項12】
生体サンプルの抽出および分析がオンラインで行われる、請求項1に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項13】
第一および第二マイクロ流体基板およびDBS捕集装置を収容するマイクロ流体カートリッジアセンブリをさらに含む、請求項1に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項14】
生体サンプルを構成成分に分離する方法であって、
少なくとも1つの乾燥生体サンプルを保持する乾燥血液スポット(DBS)捕集装置を、第一マイクロ流体基板に直接結合するステップと、
乾燥生体サンプルからアナライトを抽出して、抽出生体サンプルを第一マイクロ流体基板の流体チャネル内に渡すステップと、
抽出生体サンプルが分析クロマトグラフィカラムに到達する前に第一マイクロ流体基板の流体チャネル内で抽出生体サンプルを希釈することで希釈された生体サンプルを生成するステップと、
希釈された生体サンプルをそこから受け取るために、分析クロマトグラフィカラムとして構成された流体チャネルを有する第二マイクロ流体基板を第一マイクロ流体基板に結合させるステップと、
希釈された生体サンプルを分析クロマトグラフィカラムによって構成成分に分離するステップと、を含む方法。
【請求項15】
流体チャネルがサンプル調製カラムとして構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
サンプル調製カラムが固相抽出(SPE)向けに構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第一マイクロ流体基板がサンプル調製カラムとして構成された複数の流体チャネルを有し、DBS捕集装置は、第一マイクロ流体基板の異なる流体チャネルと流体連通している異なる乾燥生体サンプルを有し、DBS捕集装置および第一マイクロ流体基板は、分析クロマトグラフィチャネルを備える別のマイクロ流体基板と移動可能に結合されており、第一マイクロ流体基板のサンプル調製カラムの異なる1つを第二マイクロ流体基板の分析クロマトグラフィカラムと流体連通するように割り出しするステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
そこからアナライトを抽出するために乾燥生体サンプルに溶媒を送り込むステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
送り込まれた溶媒が超臨界流体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
送り込まれた溶媒が有機溶媒である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
アナライトを抽出するために、送り込まれた溶媒を乾燥生体サンプルの中に通すステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アナライトを抽出するために、送り込まれた溶媒を乾燥生体サンプルの上に通すステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
分析クロマトグラフィカラムは300μmの内径を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
DBS捕集装置が複数の乾燥生体サンプルを含有するDBSカードである、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
DBS捕集装置からの生体サンプルの抽出および抽出生体サンプルの構成成分の分離がオンラインで行われる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体が参照により本願に組み込まれる、「Microfluidic Device with DBS Card Interface(DBSカードインターフェースを備えるマイクロ流体装置)」と題して2011年8月22日に出願された米国特許仮出願第61/525,963号明細書、および「Analysis of Dried Blood Spot Samples in a Microfluidic System with Dilution of Extracted Samples(抽出サンプルの希釈を伴うマイクロ流体システムにおける乾燥血液スポットサンプルの分析)」と題して2011年8月22日に出願された米国特許仮出願第61/525,970号明細書の、優先権および出願日の恩典を主張する。
【0002】
本発明は、主にクロマトグラフィに関する。より具体的には、本発明は、乾燥血液スポットサンプルを抽出、希釈、および分析するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クロマトグラフィは、混合物をその成分に分離するための、一連の技術である。確立した分離技術は、HPLC(高性能液体クロマトグラフィ)、UPLC(超高性能液体クロマトグラフィ)、およびSFC(超臨界流体クロマトグラフィ)を含む。HPLCシステムは、充填済みカラム内で液体クロマトグラフィに必要とされる流れを発生させるために、従来1,000psi(ポンド毎平方インチ)からおよそ6,000psiの範囲の、高圧を利用する。HPLCとは対照的に、UPLCシステムは、移動相を供給するために、より小さい粒状物質を備えるカラムと、20,000psiに近い高圧とを利用する。SFCシステムは高度に圧縮可能な移動相を使用するが、これは通常、主成分として二酸化炭素(CO)を採用している。
【0004】
一般的に、液体クロマトグラフィ(LC)用途において、溶媒送液システムは、液体溶媒の混合物を取り込んで自動サンプラ(注入システムまたはサンプルマネージャとも称される)まで送達し、注入されたサンプルはそこでこの移動相の到着を待つ。移動相は、分析カラム(分離カラムとも称される)を通じてサンプルを搬送する。カラムでは、サンプルと移動相との混合物は、カラム内の固定相との混合物の反応に応じて、バンドに分離される。たとえば検出器が、カラムを出るときにこれらのバンドを同定および定量化する。
【0005】
プロテオーム解析は、分析カラム内でのサンプルの分離に先立って、サンプル濃縮および洗浄のためにトラップカラムを利用することが多い。トラップおよび分析カラムには、異なる充填材の化学的性質がよく利用される。トラップカラムに捕捉されたサンプル成分は、勾配による移動相溶離プロセスの間、トラップから分析カラムに順次送り込まれてもよい。成分はまず、異なる化学的性質のため、勾配が分析カラムの化学的性質からサンプル成分を追い出すレベルに到達するまで、分析カラムのヘッドに集中することが可能である。加えて、いくつかのクロマトグラフィ機器はマイクロ流体基板を使用する。このような基板は、小さいサンプルの取り扱いを容易にすることができ、分散などの望ましくない効果を低減することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、分析クロマトグラフィカラムとして構成された流体チャネルと、マイクロ流体基板の片側の流体ポートとを有するマイクロ流体基板を含む、クロマトグラフィ装置を特徴とする。流体ポートは、分析クロマトグラフィカラムのヘッド端で開口している。乾燥血液スポット(DBS)捕集装置は、1つ以上の乾燥生体サンプルを保持する。DBS捕集装置はマイクロ流体基板に直接結合されており、これによって生体サンプルのうちの1つがマイクロ流体基板の流体チャネルと流体連通するように配置され、生体サンプルの抽出が分析クロマトグラフィカラムのヘッド端に向かって流れる。希釈剤源は、流体ポートと流体的に結合されている。希釈剤源は、生体サンプルが分析クロマトグラフィカラムに流入する前に、抽出生体サンプルを希釈するために、分析カラムのヘッド端に溶媒を供給する。
【0007】
別の態様において、本発明は、生体サンプルを構成成分に分離する方法を特徴とする。方法は、少なくとも1つの乾燥生体サンプルを保持する乾燥血液スポット(DBS)捕集装置を、マイクロ流体基板に直接結合するステップと、乾燥生体サンプルからアナライトを抽出して、抽出生体サンプルをマイクロ流体基板の流体チャネル内に渡すステップと、抽出生体サンプルが分析クロマトグラフィカラムに到達する前に流体チャネル内で抽出生体サンプルを希釈するステップと、希釈された生体サンプルを分析クロマトグラフィカラムによって構成成分に分離するステップと、を含む。
【0008】
本発明の上記およびさらなる利点は、様々な図面において類似番号が類似の構造的要素および特徴を示す、添付図面と併せて以下の説明を参照することによって、より良く理解されるだろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、むしろ本発明の原理を図解するために強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】チャネル間の回転式割り出しに適合するように配置された複数のチャネルが内部に形成された、円盤形マイクロ流体基板の実施形態の図である。
図2】チャネル間の直線式割り出しに適合するように配置された複数のチャネルが内部に形成された、カード形マイクロ流体基板の実施形態の図である。
図3】複数のトラッピング/拡張カラムを有し、第二マイクロ流体基板とインラインに配置され、分析カラムを有する、第一マイクロ流体基板の実施形態の図である。
図4】その間に流路を設けるために第二マイクロ流体基板に当接している第一マイクロ流体基板の、図3の線AAにほぼ沿った断面図である。
図5】複数のトラッピング/拡張カラムを有する第一マイクロ流体基板と結合するように位置合わせされた、DBS(乾燥血液スポット)カードと称される、捕集装置の実施形態の図である。
図6】DBSカードから抽出された生体液サンプルのための流路を提供するために第一マイクロ流体基板に当接しているDBSカードの、図5の線BBにほぼ沿った断面図である。
図7】DBSカードから抽出された生体液サンプルのための流路を提供する、介在漏れ防止シールを備える第一マイクロ流体基板に結合されたDBSカードの、図5の線BBにほぼ沿った別の断面図である。
図8】複数のトラッピングカラムを有し、たとえば分析カラムを有する第二マイクロ流体基板とインラインに配置された、第一マイクロ流体基板と結合するように位置合わせされた、DBSカードの実施形態の図である。
図9】第一マイクロ流体基板に当接したDBSカードであって、第一マイクロ流体基板は第二マイクロ流体基板に当接している、図8の線CCにほぼ沿った、DBSカードの断面図である。
図10】オンライン処理のために配置された複数のマイクロ流体基板を保持するためのマイクロ流体カートリッジアセンブリの実施形態の図である。
図11】内部に収容されたマイクロ流体基板の概略位置を示すためにその筐体が一部省略された、マイクロ流体カートリッジアセンブリの図である。
図12】マイクロ流体カートリッジアセンブリの内部でDBSカード、乾燥血液スポット、および別のマイクロ流体基板に接続することが可能な、マイクロ流体基板の別の実施形態の図である。
図13】マイクロ流体カートリッジアセンブリの内部でDBSカードまたは乾燥血液スポットに接続することが可能な分析カラムを備えるマイクロ流体基板の別の実施形態の図である。
図14図8のマイクロ流体基板(すなわちトラッピング/拡張タイル)に当接している図8のDBSカードの、および図12のマイクロ流体基板(すなわち分析タイル)に当接しているマイクロ流体基板の、図12の線DDにほぼ沿った断面図である。
図15】乾燥血液スポット上に載置された生体サンプルのクロマトグラフ分析を実行するためのプロセスの実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
HPLC、UPLC、およびSFCシステムなど、本明細書に記載される液体クロマトグラフィ(LC)システムは、逆相クロマトグラフィを用いて、乾燥血液スポット(DBS)と称される乾燥生体サンプルから抽出されたアナライトを、直接分析するように構成されている。逆相分離において、サンプルは好ましくは水性溶媒を備えて構成される。これにより、サンプルはカラムのヘッド部に適切に集中させられる。しかしながら、サンプルは様々な量の有機溶媒からなってもよい。たとえば抽出された血液スポットサンプルは、90%もの有機溶媒からなってもよい。有機溶媒の組成が高すぎると、アナライトは逆相カラム上に適切に保持されない場合がある。DBS分析のためのカラムヘッド部希釈は、逆相カラムのヘッド部にアナライトを集中されるのに役立つ。
【0011】
オンラインでDBSからアナライトを抽出するために、このようなLCシステムは、乾燥血液スポットをマイクロ流体基板上に直接結合させるようになっている装置を採用する。マイクロ流体基板は、分析カラムとして構成された流体チャネルを有する。流体ポートは、分析カラムのヘッド端の内部に向かって開口している。マイクロ流体基板の流体チャネルと流体的に結合された乾燥血液スポット(DBS)捕集装置は、1つ以上の乾燥生体サンプルを保持する。乾燥血液スポットから抽出されて再構成された生体サンプルは、分析クロマトグラフィカラムのヘッド端に向かって流れる。生体サンプルが分析カラムに流入する前に、抽出生体サンプルを希釈するため、希釈剤ポンプはマイクロ流体基板の流体ポートを通じて分析カラムのヘッド端に溶媒を供給する。分析カラムと同じマイクロ流体基板上に組み込まれて、または別のマイクロ流体基板内に形成されて、トラッピング/拡張カラムは、乾燥血液スポットと分析カラムとの間の流路に位置し、分析のために抽出生体サンプルを調製するように作用する。
【0012】
カートリッジアセンブリは、たとえばACQUITY(R)またはTRIZAIC(R)LC/MSシステム(マサチューセッツ州ミルフォード、ウォーターズコーポレーション:Waters Corporationより入手可能)など、分析装置または質量分析(MS)ユニットにマイクロ流体装置とのインターフェースを提供するために、本明細書に記載されるマルチタイルマイクロ流体装置の様々な実施形態のいずれかを収容することができる。
【0013】
図1は、コンパスの4つの基本方位のように、中心開口部14を中心に放射状に配置された、複数の同一のハンドルバー形マイクロ流体チャネル12−1、12−2、12−3、および12−4(全体として12)を有する円盤形マイクロ流体基板10の実施形態を示す。中心孔14の隣には、特定のチャネル(たとえばここではチャネル12−1)を表示するために使用される、小さい孔16がある。表示されたチャネルは、チャネル12の現在の割り出し位置の追跡を可能にする(すなわち、孔16の現在位置は、どのチャネルがすでに使用されているかを特定するための基準点として使用されることが可能である)。各チャネル12の一方の末端は、タイル10の片側に設けられた進入流体ポート18−1を有し、各チャネル12の反対の末端は、タイル10の異なる(反対)側に設けられた排出流体ポート18−2を有する。排出流体ポート18−2は、以下により詳細に記載されるように、廃棄物除去およびヘッド部カラム希釈を容易にするために、マイクロ流体基板10の両側に開口している、貫通孔であってもよい。一実施形態において、マイクロ流体基板10の厚みはおよそ750μmから1mm超までの範囲であってもよく、その直径はおよそ1から3インチの範囲であってもよい。チャネルの長さはおよそ5cmから20cmの長さであってもよく、その内径(ID)はおよそ150μmから300μmの範囲であってもよい(好ましくは300μm)。
【0014】
マイクロ流体基板10は好ましくは多層セラミックベース構造を有する。各マイクロ流体チャネル12は、1つ以上の層を通ることができる(すなわち、任意のチャネル12の深さは複数の層にわたって延在することができる)。加えて、マイクロ流体基板10の異なる層に(ブランク層を介在させて)異なるチャネル12が形成されることが可能であり、こうしてチャネルの三次元(3D)不干渉重複を可能にする。このチャネルの3D積層は、マイクロ流体基板10の緻密さに貢献することができる。
【0015】
マイクロ流体基板10は、中心孔14の中心を通る中心軸(図の平面に対して垂直)を中心に回転するようになっている。隣り合う各対のチャネル12の間の角度は同じである。たとえば、4つの同じチャネル12を有するマイクロ流体基板10では、隣り合う各対のチャネルの間の角度は90度である。たとえば5つの同じチャネルを備えるマイクロ流体基板の角度は、72度である。
【0016】
マイクロ流体チャネル12は好ましくは、トラッピング/拡張カラムとして使用されることが可能である。現在使用されているチャネル12の性能が十分なレベルを下回るまで落ち込むと、たとえばマイクロ流体基板10は、現在使用されているチャネル12を切り離して隣接するチャネル12を使用するように、割り出しされる(すなわち、1位置だけ回転させられる)ことが可能である。このような回転は、手動または自動のいずれでもよい。
【0017】
図2は、一列に配置された、複数の同一のマイクロ流体チャネル22−1、22−2、22−3、および22−4(全体として22)を備えるマイクロ流体基板20の別の実施形態を示す。一実施形態において、マイクロ流体基板20は、厚みがおよそ750μmから1mm超、長さがおよそ3インチ、幅がおよそ1インチ以上であり、チャネル22はおよそ150μmから300μmの範囲(好ましくは300μm)の直径、およびおよそ5cmから20cmの範囲の長さを有する。
【0018】
図1の実施形態と同様に、マイクロ流体チャネル22は好ましくはトラッピング/拡張カラムとして使用されることが可能である。この実施形態では、1つのチャネル22の使用を列内の隣接するチャネル22に変更するというマイクロ流体基板20への割り出しは、矢印24によって示される方向に沿って直線方向に行われる。このような線形割り出しは、手動または自動のいずれでもよい。
【0019】
図3は、たとえば分析カラム32を有する、第二の実質的に剛性で平坦なマイクロ流体基板30とインラインに配置された、複数のトラッピング/拡張カラム22を有する、図2に記載されたタイプの第一の実質的に剛性で平坦なマイクロ流体基板20を含む、マイクロ流体装置を示す。この配置において、トラッピング/拡張カラム22および分析カラム32は、2つの個別のマイクロ流体基板上にある。トラッピング/拡張および分析カラム用の個別の基板は、たとえばサンプルの熱的分離および/または先行搭載に、使用されることが可能である。あるいは、第二マイクロ流体基板30上のカラム32は、浸出カラムであってもよい。
【0020】
分析カラム32は、基板30の内向面36−1上の流体ポート34−1と、外向面36−2上に開口している別の流体ポート(隠れている)とを有する。この例では、分析カラム32は、流体ポート34−1、34−2で開始および終端している、開ループである。分析カラム32のこの形状は、一例に過ぎない。分析カラム32のその他の実施形態は、反対側36−2に開口する代わりに、基板30の縁で開口する流体ポートを有することができる。一実施形態において、分析カラム32は好ましくは150μmの内径(ID)を有する。カラム32の直径は好ましくは75μmから300μmの範囲であり(従来の大径形態と比較して、300μmの直径は、小分子および生物薬剤学分析においてより向上した感度を提供するだろう)、カラム32の長さは好ましくは5cmから20cmの範囲である。
【0021】
好ましくは、基板20、30は互いに背面同士で、第一マイクロ流体基板20の排出(内向)ポート18−2を第二マイクロ流体基板30の内向面36−1上の流体ポート34−1に位置合わせして、当接している。一実施形態において、流体ノズル38は、組み合わせられたマイクロ流体装置アセンブリの両側、具体的には第一マイクロ流体基板20の進入流体ポート18−1、および第二マイクロ流体基板30の背面ポート34−2に、接続している。配管(たとえば、溶融シリカ、ステンレス鋼)は、流体の送達または抽出のために、これらの流体ノズル38に接続している。
【0022】
図4は、第二マイクロ流体基板30に当接している第一マイクロ流体基板20の(図3のAAのような線にほぼ沿った)断面図を示す。断面は、基板20、30のポート18−1、18−2、34−1、34−2を通る。第一マイクロ流体基板20の排出流体ポート18−2は、第二マイクロ流体基板30の内向流体ポート34−1に位置合わせして、これと流体連通している。
【0023】
マイクロ流体装置が展開されるいくつかのクロマトグラフィシステムの高い流体圧を、漏れを伴わずに可能にするために、様々な機能が実装されることが可能である。基板20、30を結びつけるために、結合部品を備える機械的取付具(図示せず)が使用可能である。流体カプラは、2つのマイクロ流体基板の位置合わせされた流体ポートを接合することができる。このようなカプラは、トラップタイル20から分析タイル30への流体の通過のための、内腔またはチャネルを有することができる。アライメントマーカ、ガイド、またはその他のこのような機能は、ポート18−2、34−1の間の正確なアライメントを達成するために、基板20、30の間のアライメントを容易にすることができる。ポリイミドガスケットは、流体ポート18、34を包囲して、これらポートの間を密接にさせる封止を容易にすることができる。加えて、マイクロ流体装置を収容(および装置を分析装置に接続させる)ために使用されるマイクロ流体カートリッジアセンブリは、アライメントを案内して基板20、30を動かす特徴を、有することができる。さらに、クランピング機構は、マイクロ流体装置を収容しているマイクロ流体カートリッジアセンブリの片側に機械力を印加して、基板を一緒に「ハードストップ」に対して動かすことができる。
【0024】
図5は、複数のトラッピング/拡張カラム22(そのうちカラム22−3および22−4が図示されている)を有する図2に示されるタイプの第一マイクロ流体基板20との結合のために位置合わせされた、平面捕集装置40の実施形態を示す。平面捕集装置40は、DBS(乾燥血液スポット)カード40が一緒に使用されてもよい生体液のタイプに対するいかなる暗黙の制限も伴わずに、DBSカード40と称されてもよい。DBSカード40は、濾紙または生体液(たとえば血液)を吸収することが可能なその他の材料を含む、捕集基板42を含む。
【0025】
インクまたはその他の印刷可能物質を用いて、捕集基板42にパターン44が印刷されてもよい。この実施形態において、パターン44は、4つの円形開口部46を備える長方形を有する。印刷可能物質は、濾紙の細孔を満たして、不透過性パターン44を備える領域において流体が吸収されるのを防止する。いくつかの実施形態において、水性生体液に対して不透過性のパターン44を作成するために、疎水性インクが使用される。インクまたは印刷可能物質の例は、ワックス、フォトレジスト、ゾル−ゲル前駆体、またはポリマー前駆体を含むが、これらに限定されるものではない。印刷されていない捕集基板42の部分(すなわち、パターン中の4つの円形開口部46)は、生体液サンプルを受け取るための捕集領域48−1、48−2、48−3、および48−4(全体として48)である。捕集領域48は、スポット48に載置された生体液のタイプに対するいかなる暗黙の制限も伴わずに、乾燥血液スポット48と称されてもよい。
【0026】
別の実施形態において、平面捕集装置40は、不透過性パターン44、および貯蔵井として機能する多数のサンプル捕集領域48を備える、紙ベース基板42を有する。不透過性パターン44は、基板42に形成されており、捕集容積、すなわちサンプル捕集領域48の流体容積容量を、正確に画定するように構成されることが可能である。その他の様々な実施形態において、パターンは、1つ以上の側流フィルタまたは装置のその他の領域まで流体サンプルを案内する、複数の流入領域または流路を含むことができる。さらに別の実施形態において、平面捕集基板42は、1つ以上の画定された空間領域内で加熱される、多孔性熱可塑性材料である。加熱された領域は、変形または溶融によって、無孔性で不透過性の領域に変換される。不透過性領域は、わずかな有孔性を維持してもよい。しかしながら、残された有孔性は、流体サンプルの著しい浸透を可能にするには不十分である。この実施形態は、不透過性インクを用いて印刷する必要性、または基板に無孔材料を適用する必要性を、排除する。
【0027】
DBSカード40は、乾燥血液スポット48のうちの少なくとも1つがトラッピング/拡張カラム22のうちの1つの進入ポート18と位置合わせするように、マイクロ流体基板20と位置合わせさせられる。たとえば、図5において、乾燥血液スポット48−4は、トラッピング/拡張カラム22−4の進入ポート18−1と位置合わせする。一つの実施形態において、各乾燥血液スポット48は、異なる1つのトラッピング/拡張カラム22の進入ポート18と位置合わせする。所望の用途に応じて、複数のトラッピング/拡張カラム22は、異なる樹脂を含有することができる。
【0028】
図6は、マイクロ流体基板20に当接しているDBSカード40の(図5のBBのような線にほぼ沿った)断面図を示す。断面は、マイクロ流体基板20の流体チャネル22−4のポート18−1、18−2、および乾燥血液スポット48−4を通る。完全なDBSカード40を使用する代わりに、乾燥血液スポット48が個別に打ち抜かれて、進入流体ポート18−1においてマイクロ流体基板20に直接結合されることも可能である。DBSカード40に適用されるような抽出原理は、個別乾燥血液スポットにも適用される。乾燥血液スポット48−4上に保持される生体液サンプルの抽出の間、流体サンプルは、乾燥サンプルスポット48−4を通る破線矢印50の方向に抽出流体または溶媒を通すことによって、再構成される。いくつかの実施形態において、抽出流体または溶媒は、有機溶媒または水性溶媒である。別の実施形態において、抽出溶媒は、たとえば超臨界二酸化炭素など、SFCシステム内で使用される超臨界溶媒である。
【0029】
抽出された生体サンプルは、乾燥サンプルスポット48−4の反対側を通じてマイクロ流体基板20の流体ポート18−1内へ、およびトラッピング/拡張カラム22−4内へ、流入する。DBSカード40の機能は、乾燥血液スポット48−4の周りに、全量の再構成サンプルがマイクロ流体基板20の進入流体ポート18−1に流入することを保証する漏れ防止シール(たとえば、図7の参照番号52)を提供することができる。本明細書に記載される原理から逸脱することなく乾燥血液スポットからアナライトを抽出するために、異なる機構が使用されることが可能である。たとえば、乾燥血液スポット内に抽出溶媒を通す代わりに、抽出装置が抽出溶媒を乾燥血液スポット上に通過させて、抽出された生体サンプルをマイクロ流体基板20の進入流体ポート18−1内に配向する前に乾燥血液スポット上からアナライトを回収させることが、可能である。
【0030】
このマイクロ流体装置を用いて実現される抽出は、オンラインまたはオフラインのいずれでも行われることが可能である。通常、「オフライン」は好ましくは、生体サンプルを抽出するためのマイクロ流体装置が、プロセスラインに対して物理的に近いものの接続はされていないことを意味する。個人は、DBSカードから生体サンプルを手動で抽出するためにマイクロ流体装置を使用し、その後トラッピングタイル上の抽出された生体サンプルをサンプル分析用の分析タイルまで搬送および導入する。「オンライン」は好ましくは、抽出および分析マイクロ流体タイルが、手作業を介在させることなくほぼリアルタイムでプロセスラインからサンプルを自動的に抽出および分析するための、プロセス(または製造)ラインの直接的な一部であることを、意味する。このためクロマトグラフ分析は、製造/プロセスラインの連続動作と平行して行われることが可能である。図8は、図2に記載されたタイプのトラッピングタイル20と結合するように位置合わせされ、「オンライン」サンプル抽出および分析のために分析タイル30とインラインに配置された、DBSカード40の実施形態を示す。
【0031】
図9は、トラッピングタイル20に当接しているDBSカード40、および分析タイル30に当接しているトラッピングタイル20の、(図8の線CCのような線に沿った)断面図を示す。断面は、血液スポット48−4、トラッピングタイル20のトラッピング/拡張カラム22−4のポート18−1、18−2、および分析タイル30の分析カラム32のポート34−1、34−2を通る。乾燥血液スポット48−4上の生体液サンプルの抽出の間、生体サンプルは、破線矢印50の方向で乾燥サンプルスポット48−4の中または上に抽出流体または溶媒を通すことによって、再構成される。
【0032】
抽出された再構成サンプルは、トラッピングタイル20の流体ポート18−1に流入し、トラッピング/拡張カラム22−4を通って、流体ポート18−2から流出する。抽出された生体サンプルはその後、分析カラム32を通じて分析タイル30の流体ポート34−1に流入し、流体ポート34−2から流出する。分析タイル30からの溶離液は、検出器または質量分析計システムを通る。ここでも、完全なDBSカード40を使用する代わりに、乾燥血液スポット48が個別に打ち抜かれて、(流体ポート18−1で、またはその付近で)トラッピングタイル20に直接結合されることが可能である。
【0033】
図10は、DBSカード40およびマイクロ流体基板20、30を検出器、質量分析計、または他のクロマトグラフィ装置に接続するために使用されることが可能な、マイクロ流体カートリッジアセンブリ60の実施形態を示す。要するに、マイクロ流体カートリッジアセンブリ60のこの実施形態は、エミッタ、複数のマイクロ流体基板、加熱器、および回路を収容し、マイクロ流体カートリッジアセンブリ60内に収容された様々な部品への電圧、電気信号、および流体(気体および液体)の送達のための電気機械インターフェースを動作させる。
【0034】
マイクロ流体カートリッジアセンブリ60のこの実施形態は、たとえば半分ずつをスナップ留めでまとめることによって、あるいは接着剤または機械的締め具を使用することによって、あるいはそれらのいずれかの組み合わせによって、2つのケーシング部分62−1、62−2を接合することで、形成される。マイクロ流体カートリッジアセンブリ60は、グリップ端64およびエミッタ端66を有する。グリップ端64内の湾曲領域68は、クロマトグラフィ装置に結合するときにユーザがマイクロ流体カートリッジアセンブリ60を握持できるようにする、指保持部を提供する。ケーシング部分のうちの1つ(ここではたとえば部分62−1)は、携帯電話に電池を挿抜するようなやり方で、DBSカード40または個別に打ち抜かれた乾燥血液スポット48を含むマイクロ流体装置および1つ以上のマイクロ流体基板20を技術者が挿抜できるようにする、アクセスパネル70を有することができる。生体サンプルおよびトラッピング/拡張カラムを備える基板は分析カラムを備えるマイクロ流体基板とは別なので、マイクロ流体装置の生体サンプル基板およびマイクロ流体基板は交換可能である。したがって、分析カラムは、DBSカード40、打ち抜き乾燥汚点スポット48、またはトラッピング/拡張タイル20が取り外されても、所定位置に残る。
【0035】
図11は、マイクロ流体基板20、30のスタック80を含む、アセンブリ60内に収容された様々な部品を示すためにケーシング部分62−2が省略された、マイクロ流体カートリッジアセンブリ60の実施形態を示す。マイクロ流体カートリッジアセンブリ60は、アセンブリ60内で自動的に多層カラムトラッピングタイル20およびDBSカード40を割り出しするように構成された、自動サンプラ装置(図示せず)と接続することができる。手動割り出しもまた実施可能である。
【0036】
上記の例などの、マイクロ流体カートリッジアセンブリの様々な実施形態は、いずれの適切な分析装置を用いても実施可能である。たとえば、いくつかの実施形態は、たとえばACQUITY(R)またはTRIZAIC(R)LC/MSシステム(マサチューセッツ州ミルフォード、ウォーターズコーポレーションより入手可能)など、修正液体クロマトグラフィおよび/または質量分析装置を必要とする。
【0037】
図12は、たとえばDBSカード40およびトラッピング/拡張タイル20などのその他の基板と併せてマイクロ流体カートリッジアセンブリ60内で使用されることが可能な、分析タイル30’の別の実施形態を示す。分析タイル30’は、進入流体ポート34’−1および排出流体ポート34’−2を備える分析カラム32’を含む。進入ポート34’−1は、別の当接するトラッピング/拡張タイル20の排出流体ポート18−2と流体連通するようになっている。進入流体ポート34’−1は、マイクロ流体基板30’の両側に開口している貫通孔ポートであり、(逆相クロマトグラフィプロセスにとって望ましいように)流入サンプルのカラムヘッド部希釈を可能にするために、流体ノズルおよび配管に結合されることが可能である。たとえば、逆相カラム上の保持を可能にするために、大量の有機溶媒を含む抽出された生体サンプルには、水による希釈が必要とされるだろう。流体ノズルおよび配管を通じて、希釈ポンプは溶媒(たとえば、水)を進入流体ポート34’−1内に送り込むことができる。流体ポート34’−1は分析カラム32’のヘッド部にあるので、溶媒は、生体サンプルが分析カラム32’に進入する前に、生体サンプルを希釈するように作用する。
【0038】
排出流体ポート34’−2は、分析タイル30’の縁で開口している。この縁は、図11のマイクロ流体カートリッジアセンブリ60のエミッタ端66に面している。分析タイル30’は、分析タイル30’が2つの向きのうちの1つでカートリッジアセンブリ60内に実装され得るようにするため、場合により別の(鏡像)分析カラム32’を含むことができる(すなわち、分析タイル30’は水平軸63に対して対称的である)。
【0039】
図13は、DBSカード40または個別乾燥血液スポット48と併せてマイクロ流体カートリッジアセンブリ60内で使用されることが可能な、分析タイル30’’の別の実施形態を示す。分析タイル30’’は、分析カラム32’’を備える同じ基板上に組み込まれたトラッピング/拡張カラム22’を含む。
【0040】
分析カラム32’’は、進入流体ポート34’’−1および排出流体ポート34’’−2を有する。進入流体ポート34’’−1は、マイクロ流体基板30’’の一方(片方)または両方の面で開口しているポートであり、トラッピング/拡張カラム22’から到達するサンプルの(たとえば、逆相クロマトグラフィプロセスのための)カラムヘッド部希釈を可能にするために、流体ノズルおよび管に結合されることが可能である。希釈ポンプは溶媒を進入流体ポート34’’−1内に送り込み、これは生体サンプルが分析カラム32’’に進入する前に生体サンプルを希釈するように作用する。希釈された生体サンプルは分析カラム32’’を通過し、これは生体サンプルを構成成分に分離する。成分は、たとえばLC検出器または質量分析計システムに送達されるエレクトロスプレーの形態で、分析カラム32’’から出る。
【0041】
組み込まれたトラッピング/拡張カラム22’は進入流体ポート18’−1を含み、これは分析タイル30’’を用いるオンライン処理のため、乾燥血液スポットに結合されることが可能である。一実施形態において、トラッピング/拡張カラム22’は、当該技術分野において周知のように、分析の準備のために生体サンプルを洗浄するための固相抽出(SPE)向けに構成されることが可能である。トラッピング/拡張カラム22’は、進入流体ポート34’’−1から分析カラム32’’に溶け込む。
【0042】
図14は、トラッピング/拡張タイル20(図2)に当接しているDBSカード40(図8)および図12の分析タイル30’に当接しているトラッピング/拡張タイル20の、(図12の線DDのような線に沿った)断面図を示す。断面は、血液スポット48−4、トラッピング/拡張タイル20の流体チャネル22の流体ポート18−1、18−2、および分析タイル30’の流体チャネル32’のポート34’−1、34’−2を通る。
【0043】
乾燥血液スポット48−4上の生体液サンプルの抽出の間、乾燥生体サンプルは、破線矢印50の方向で乾燥サンプルスポット48−4の中に抽出流体または溶媒を通すことによって、再構成される。ここでも、完全なDBSカード40を使用する代わりに、乾燥血液スポット48が個別に打ち抜かれて、(流体ポート18−1で、またはその付近で)トラッピング/拡張タイル20に直接結合されることが可能である。
【0044】
抽出された再構成サンプルは、乾燥サンプルスポット48−4の内部または上を通ってトラッピング/拡張タイル20の流体ポート18−1に流入し、トラッピング/拡張カラム22−4を通って、流体ポート18−2から流出する。抽出された生体サンプルはその後、分析タイル30’の流体ポート34’−1に流入する。
【0045】
流体ポート34’−1は分析カラム32’のヘッド部にあり、一実施形態において、矢印58の方向で溶媒(たとえば、水)を流体ポート34’−1内に送り込む希釈ポンプに結合されている。溶媒は、サンプルが分析カラム32’に進入する前に、トラッピング/拡張カラム22を出る生体サンプルを希釈するように作用する。希釈された生体サンプルは分析カラム32’を通過し、これはサンプルを構成成分に分離する。成分は、たとえば検出器または質量分析計システムに向けられるエレクトロスプレーの形態で、分析カラム32’から出る。
【0046】
図15は、乾燥血液スポット(たとえば、48−4)のクロマトグラフ分析を実行するためのプロセス100の実施形態を示す。ステップ102において、乾燥血液スポット(たとえば、DBSカードから打ち抜かれたものかまたはその一部)が、トラッピング/拡張カラムを備えるマイクロ流体基板と接続させられる。アナライトを抽出するために、溶媒が乾燥血液スポットの上または内部を流れる(ステップ104)。抽出されたアナライトはトラッピング/拡張カラムを流れる。アナライトの抽出はオフラインで行われることが可能であり、その場合、抽出されたアナライトを保持するトラッピング/拡張タイルは、分析カラムを有するマイクロ流体基板まで搬送され、これとインラインに配置される。抽出されたアナライトは、分析カラムのヘッド部で希釈される。分析カラムは、希釈されたアナライトの構成成分を分離する。エレクトロスプレーエミッタは、エレクトロスプレーとして分離された構成要素をLC機器に送達するために、分析カラムの排出末端に流体的に結合されてもよい。
【0047】
本明細書において「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される事項、機能、構造、または特徴が、教示される少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書内の特定の実施形態への言及は、必ずしも全て同じ実施形態を指すものではない。
【0048】
本発明は特定の好適な実施形態を参照して図示および記載されてきたものの、添付請求項によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、明細書中にその形態および詳細において様々な変化がなされてもよいことは、当業者によって理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15