特許第6203729号(P6203729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203729流体を充填可能なバットレスを有する外科用器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203729
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】流体を充填可能なバットレスを有する外科用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A61B17/072
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-530717(P2014-530717)
(86)(22)【出願日】2012年9月10日
(65)【公表番号】特表2014-531240(P2014-531240A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】US2012054401
(87)【国際公開番号】WO2013039820
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年9月10日
(31)【優先権主張番号】13/232,401
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595057890
【氏名又は名称】エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ブードロー・チャド・ピー
(72)【発明者】
【氏名】バレク・ステファン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホルコーム・マシュー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ラド・エドワード・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン・ドナルド・エフ・ジュニア
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0120994(US,A1)
【文献】 特開平06−327684(JP,A)
【文献】 特表2008−516678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
(a)遠位端及び近位端を備える、外科用カッターであって、前記近位端がハンドルを備え、前記遠位端がアンビル及び下部つかみ具を備え、前記アンビル及び前記下部つかみ具が組織をクランプするように構成され、前記外科用カッターが前記アンビル及び前記下部つかみ具によってクランプされた組織を切断するように構成されている、外科用カッターと、
(b)液体で充填されたバットレスであって、前記バットレスが弾性材料を含み、前記バットレスが、前記アンビルと前記下部つかみ具との間に定置されるように構成され、前記バットレスが第1の構成および第2の構成間で変化するように構成され、前記第1の構成において、前記バットレスの高さは、前記バットレスの幅に沿って略一定であり、前記アンビル及び前記下部つかみ具が前記バットレスをクランプすることによって、前記バットレスは前記第2の構成に変化し、前記第2の構成において、前記バットレスが圧縮性部分及び圧力部分を備え、前記圧力部分は、前記圧縮性部分よりも大きい高さを有し、前記圧縮性部分は、前記アンビルおよび前記下部つかみ具により圧迫されている部分を含み、前記圧力部分が、前記圧縮性部分に対するクランプに反応して前記液体で加圧されるように構成され、前記圧力部分は、前記液体で加圧されることにより、拡張するように構成され、前記バットレスが、前記外科用カッターが組織を切断するのとほぼ同時に、前記外科用カッターによって切断されかつステープル留めされるように構成され、前記圧力部分が、一旦前記バットレスが切断されると、前記圧縮性部分を通じて前記液体を押し出すように構成される、バットレスと、を備え
前記バットレスは、第1の流体充填可能部材および第2の流体充填可能部材を備え、前記第1の流体充填可能部材および前記第2の流体充填可能部材は、上下に並んで一緒に接着された状態で、前記アンビルまたは前記下部つかみ具の何れか一方に取り付けられており、前記第1の流体充填可能部材は第1の液体を収容し、前記第2の流体充填可能部材は、前記第1の液体とは異なる第2の液体を収容し、前記第1の流体充填可能部材および前記第2の流体充填可能部材の双方が、前記第2の構成において、前記圧縮性部分及び前記圧力部分を備えており、前記第1の流体充填可能部材および前記第2の流体充填可能部材の双方が、前記外科用カッターが組織を切断するのとほぼ同時に、前記外科用カッターによって切断されると、前記第1の流体充填可能部材の前記圧縮性部分を通じて前記第1の液体が押し出され、前記第2の流体充填可能部材の前記圧縮性部分を通じて前記第2の液体が押し出され、前記第1の液体および前記第2の液体が混合されて、接着剤が形成されるようになっている、装置。
【請求項2】
前記アンビルが、アンビル幅を画定し、前記バットレスが前記アンビル幅より広いバットレス幅を画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記バットレスが、略長方形の形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記バットレスが、前記下部つかみ具から外側に延在するように、前記下部つかみ具にまたがる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記バットレスが、前記下部つかみ具に連結されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記外科用カッターと連通する外科用ステープラーを更に備え、前記外科用ステープラーが、1つ又は2つ以上のステープルを備え、前記外科用ステープラーが、組織の一部分をステープル留めするように構成され、前記1つ又は2つ以上のステープルが、前記バットレスを破裂させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記バットレスが、可溶性材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の液体がフィブリンを含み、前記第2の液体がトロンビンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記バットレスが、前記バットレスを前記外科用カッターの一部分に接着するように動作可能な接着剤を前記バットレスの外側に含む、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一部の状況では、内視鏡外科用器具は、より小さい切開が、手術後の回復時間及び合併症を低減し得るために、従来の開腹外科装置よりも好ましい場合がある。したがって、いくつかの内視鏡外科用器具は、トロカールのカニューレを介して所望の手術部位に遠位エンドエフェクタを配置するのに適していることがある。これらの遠位エンドエフェクタは、多くの方法で組織に係合して診断又は治療効果を達成し得る(例えば、エンドカッター、把持具、カッター、ステープラー、クリップ適用器具、アクセス装置、薬物/遺伝子治療送達装置、及び超音波、RF、レーザなどを使用するエネルギー送達装置)。内視鏡外科用器具は、エンドエフェクタとハンドル部分との間に、臨床医によって操作されるシャフトを有することがある。かかるシャフトは、所望の深さへの挿入とシャフトの縦軸のまわりの回転を可能にし、それにより患者内のエンドエフェクタの位置決めが容易になる。エンドエフェクタの位置決めは、シャフトの長手方向軸に対してエンドエフェクタを選択的に関節動作するか又は他の方法で偏向することを可能にする1つ又は2つ以上の関節動作ジョイント若しくは特徴部を含めることによって、更に促進することができる。
【0002】
内視鏡外科用器具の例としては外科用ステープラーが挙げられる。かかるステープラーのいくつかは、組織層をクランプし、クランプした組織層を切断し、組織層を通してステープルを打ち込むことによって組織層の切断された端の近くで組織層をともに実質的に封着するように動作可能である。あくまで例としての外科用ステープラーは、米国特許第4,805,823号(1989年2月21日発行の「Pocket Configuration for Internal Organ Staplers」)、米国特許第5,415,334号(1995年5月16日発行の「Surgical Stapler and Staple Cartridge」)、米国特許第5,465,895号(1995年11月14日発行の「Surgical Stapler Instrument」)、米国特許第5,597,107号(1997年1月28日発行の「Surgical Stapler Instrument」)、米国特許第5,632,432号(1997年5月27日発行の「Surgical Instrument」)、米国特許第5,673,840号(1997年10月7日発行の「Surgical Instrument」)、米国特許第5,704,534号(1998年1月6日発行の「Articulation Assembly for Surgical Instruments」)、米国特許第5,814,055号(1998年9月29日発行の「Surgical Clamping Mechanism」)、米国特許第6,978,921号(2005年12月27日発行の「Surgical Stapling Instrument Incorporating an E−Beam Firing Mechanism」)、米国特許第7,000,818号(2006年2月21日発行の「Surgical Stapling Instrument Having Separate Distinct Closing and Firing Systems」)、米国特許第7,143,923号(2006年12月5日発行の「Surgical Stapling Instrument Having a Firing Lockout for an Unclosed Anvil」)、米国特許第7,303,108号(2007年12月4日発行の「Surgical Stapling Instrument Incorporating a Multi−Stroke Firing Mechanism with a Flexible Rack」)、米国特許第7,367,485号(2008年5月6日発行の「Surgical Stapling Instrument Incorporating a Multistroke Firing Mechanism Having a Rotary Transmission」)、米国特許第7,380,695号(2008年6月3日発行の「Surgical Stapling Instrument Having a Single Lockout Mechanism for Prevention of Firing」)、米国特許第7,380,696号(2008年6月3日発行の「Articulating Surgical Stapling Instrument Incorporating a Two−Piece E−Beam Firing Mechanism」)、米国特許第7,404,508号(2008年7月29日発行の「Surgical Stapling and Cutting Device」)、米国特許第7,434,715号(2008年10月14日発行の「Surgical Stapling Instrument Having Multistroke Firing with Opening Lockout」)、米国特許第7,721,930号(2010年5月25日発行の「Disposable Cartridge with Adhesive for Use with a Stapling Device」)に開示されている。これらの米国特許のそれぞれの開示内容を本明細書に参照により組み込まれている。参考として上述した外科用ステープラーは、内視鏡手技において使用されるものとして記載されているが、かかる外科用ステープラーは、開口手技及び/又は他の非内視鏡手技でも使用することができることを理解されたい。
【0003】
様々な種類の外科用ステープル器具及び関連構成要素が作製され使用されてきたが、本発明者ら以前には、付属の請求項に記載されている本発明を誰も作製又は使用したことがないものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本明細書に組み込まれると共に本明細書の一部をなす添付の図面は、本発明の実施形態を示すものであり、上記の本発明の一般的説明、及び以下の実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つものである。
図1A】関節動作位置にあるエンドエフェクタを有する関節動作外科器具の斜視図を示す。
図1B】関節動作していない位置にあるエンドエフェクタを有する図1Aの手術器具の斜視図を示す。
図2図1A図1Bの手術器具の開いたエンドエフェクタの斜視図を示す。
図3A】発射バーが近位位置にある、図2の線3−3に沿って得られた図2のエンドエフェクタの側断面図を示す。
図3B図2の線3−3に沿って得られた図2のエンドエフェクタの側断面図であるが、発射バーが遠位位置にある状態を示している。
図4図2の線4−4に沿って得られた図2のエンドエフェクタの末端断面図を示す。
図5図2のエンドエフェクタの分解斜視図を示す。
図6】組織に位置付けられ、かつ組織内で1回起動された後の、図2のエンドエフェクタの斜視図を示す。
図7図2のエンドエフェクタを備える保持具キャップの斜視図を示す。
図8図7の保持具キャップの斜視下面図を示す。
図9図7のエンドエフェクタを備える保持具キャップの側面図を示す。
図10】バットレスを備える例示のエンドエフェクタの側面図を示す。
図11A】非圧迫状態の図10のバットレスの正面図を示す。
図11B】アンビル及び下部つかみ具がバットレスの周りにクランプされている、図10のバットレスの正面図を示す。
図11C】液体がバットレスから押し出されている切断された後の図10のバットレスの側面図を示す。
図12A】圧迫されている図10のバットレスの正面断面図を示す。
図12B】切断された後の図10のバットレスの正面断面図を示す。
図13】液体がバットレスから押し出されている、図10のバットレスを備える外科用器具の斜視図を示す。
図14】例示の代替バージョンのバットレスを備える例示のエンドエフェクタの斜視図を示す。
図15】一対のバットレスで組織をクランプしている図14の例示のエンドエフェクタの断面図を示す。
図16】切断エッジによってスライスされた後の図14の一対のバットレスの断面図を示す。
図17】複数の接着剤領域を有する例示の代替バットレスの断面図を示す。
図18】複数の接着カプセルを有する例示の代替バットレスの断面図を示す。
図19図18の複数の接着カプセルを形成するための例示のカプセル形成チャンバの断面図を示す。
【0005】
各図面は、いかなる意味においても限定的なものではなく、図に必ずしも示されていないものを含め、本発明の異なる実施形態を様々な他の方法で実施し得ることも考えられる。本明細書に組み込まれその一部をなす添付の図面は、本発明の幾つかの態様を示すものであり、説明文とともに本発明の原理を説明する役割を果たすものである。しかしながら、本発明は図に示される正確な構成に限定されない点が理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の特定の実施例の以下の説明は、本発明の範囲を限定するために用いられるべきではない。本発明の他の実施例、特徴、態様、実施形態、及び利点が以下の説明から当業者には明らかとなろう。以下の説明は、実例として、本発明を実施するために企図される最良の形態の1つである。明らかなように、本発明は、本発明から逸脱することなく、他の様々な明白な態様が可能である。したがって、図面及び説明文は、例示的な性質のものであって限定的なものと見なすべきではない。
【0007】
I.例示の外科用ステープラー
図1図6は、外科手術を行うために、図1Aに示すような非関節動作状態でトロカールカニューレ通路を通って患者の体内の手術部位まで挿入するように寸法決めされている、例示的な外科ステープル留め及び切断の器具(10)を図示している。外科手術及びステープル留め及び切断器具(10)は、実施部分(22)に接続されたハンドル部分(20)を含み、実施部分は、関節動作機構(11)において遠位に終端するシャフト(23)と、遠位に取り付けられたエンドエフェクタ(12)と、を更に備える。関節動作機構(11)及び遠位のエンドエフェクタ(12)がトロカールのカニューレ通路を通じて挿入された後、図1Bに図示されているように、関節動作制御部(13)によって関節動作機構(11)を遠隔的に関節動作操作することができる。そのようにして、エンドエフェクタ(12)は、所望の角度から又は他の理由のために、臓器の背後に到達する若しくは組織に近づくことができる。本明細書では、「近位」及び「遠位」といった用語は、器具(10)のハンドル部分(20)を握っている臨床医を基準として使用されていることを理解されたい。したがって、エンドエフェクタ(12)は、より近位のハンドル部分(20)に対して遠位である。便宜上、また説明を明確にするため、本願では「垂直」及び「水平」といった空間的な用語を図面に対して使用する点も更に認識されるであろう。しかしながら、手術器具は、多くの配向及び配置において使用され、これらの用語は、制限的及び絶対的であることが意図されない。
【0008】
この例のエンドエフェクタ(12)は下部つかみ具(16)及び枢動可能なアンビル(18)を含む。ハンドル(20)はピストル把持部(24)を含み、臨床医がピストル把持部(24)に向かって閉鎖トリガー(26)を枢動して引くことにより、エンドエフェクタ(12)の下部つかみ具(16)に向かってアンビル(18)のクランプすなわち閉鎖が引き起こされる。かかるアンビル(18)の閉鎖は、ピストル把持部(24)に対する閉鎖トリガー(26)の枢動に応答してハンドル部分(20)に対して長手方向に移動する最も外側の閉鎖スリーブ(32)を通じてもたらされる。閉鎖スリーブ(32)の遠位の閉鎖リング(33)は、実施部分(22)のフレーム(34)によって間接的に支持される。関節動作機構(11)にて、閉鎖スリープ(32)の近位側の閉鎖管(35)は遠位部分(閉鎖リング)(33)と連通している。フレーム(34)は、関節動作機構(11)を介して下部つかみ具(16)に偏向可能に取り付けられて、単一の平面での関節動作を可能にする。フレーム(34)はまた、発射トリガー(28)からの発射運動を発射バー(14)に伝えるためにシャフト(23)を通じて延在する発射駆動部材(図示せず)を長手方向に摺動可能に支持する。発射トリガー(28)は、閉鎖トリガー(26)より更に外側寄りにあり、以下に詳細に説明するように、これが臨床医によって枢動式に引かれると、エンドエフェクタ(12)にクランプされている組織にステープルが打ち込まれ、組織が切断される。その後、開放ボタン(30)を押してエンドエフェクタ(12)から組織を解放する。
【0009】
図2図5は、数多くの機能を実行するために光線発射バー(14)を取り入れているエンドエフェクタ(12)を図示している。図3A〜3Bに最もわかりやすく図示されているように、発射バー(14)は横断方向に配向された上部ピン(38)と、発射バーキャップ(44)と、横断方向に配向された中間ピン(46)と、遠位側に提供された切断エッジ(48)と、を含む。上部ピン(38)は、アンビル(18)のアンビルポケット(40)の内部に位置付けられており、移動可能である。発射バーキャップ(44)は、下部つかみ具(16)を通じて形成されたチャネルスロット(45)(図3Bに図示)を通じて延在する発射バー(14)を有することによって、下部つかみ具(16)の下側表面と摺動可能に係合する。中間ピン(46)は、発射バーキャップ(44)と協力動作する下部つかみ具(16)の上面と摺動可能に係合する。そのようにして、発射バー(14)は、発射中にエンドエフェクタ(12)の間隔を確実に維持して、クランプされる組織の最少量の状態でのアンビル(18)と下部つかみ具(16)の間に生じる場合のあるピンチングを克服し、クランプされた組織の過剰量の状態でのステープルの不良形成を克服する。
【0010】
図2は、近接して配置されている発射バー(14)、及び未使用のステープルカートリッジ(37)を下部つかみ具(16)のチャネルの中に着脱可能に実装できるように、開放位置まで旋回しているアンビル(18)を示す。図4〜5に最もわかりやすく示されているように、この例のステープルカートリッジ(37)はカートリッジ本体(70)を含み、カートリッジ本体は上部デッキ(72)を提供し、下部カートリッジトレー(74)と連結されている。図2に最もわかりやすく示されているように、ステープルカートリッジ(37)の部分を通じて垂直スロット(49)が形成されている。また、図2には、垂直スロット(49)の一方の側に上部デッキ(70)を通じて形成された3列のステープルアパーチャ(51)及び、垂直スロット(49)の他方の側に上部デッキ(70)を通じて形成された3列のステープルアパーチャ(51)が図示されている。再び図3〜5を参照すると、楔形スレッド(41)及び複数のステープルドライバ(43)がカートリッジ本体(70)とトレー(74)の間に捉えられており、ステープルドライバ(43)に対して近位に楔形スレッド(41)が位置付けられている。楔形スレッド(41)はステープルカートリッジ(37)の内部で長手方向に移動可能であり、一方、ステープルドライバ(43)はステープルカートリッジ(37)の内部で垂直方向に移動可能である。ステープル(47)もまたカートリッジ本体(70)の内部に、対応するステープルドライバ(43)の上に位置付けられる。具体的には、それぞれのステープル(47)はステープルドライバ(43)によってカートリッジ本体(70)の内部で垂直方向に駆動されて、関連付けられたステープルアパーチャ(51)を通してステープル(47)を外へと駆動する。図3A〜3B及び図5に最もよく図示されているように、楔形スレッド(41)は、楔形スレッド(41)がステープルカートリッジ(37)を通じて遠位方向に駆動されるにつれてステープルドライバ(43)を上方に付勢する傾斜カム表面を与える。
【0011】
図3Aのようにエンドエフェクタ(12)が閉じられている状態で、上方のピン(38)を長手方向のアンビルスロット(42)に入れることによって、発射バー(14)がアンビル(18)と係合して前進する。押しブロック(80)は、発射バー(14)の遠位端に配置され、発射バー(14)がステープルカートリッジ(37)を通じて遠位側に前進するにつれて押しブロック(80)が楔形スレッド(41)を遠位側に押すように、楔形スレッド(41)と係合するように構成される。かかる発射中に、発射バー(14)の切断エッジ(48)がステープルカートリッジ(37)の垂直スロット(49)に入り、ステープルカートリッジ(37)とアンビル(18)の間にクランプされている組織を切断する。図3A、3Bに示すように、中間ピン(46)及び押しブロック(80)は共に、ステープルカートリッジ(37)内の発射スロットへ進入することによって、ステープルカートリッジ(37)を起動させ、楔形スレッド(41)を駆動してステープルドライバ(43)と上向きカム接触(camming contact)させて、その結果としてステープルアパーチャ(51)を通してステープル(47)を外へ駆動してかつアンビル(18)の内側表面上でステープル形成ポケット(53)と接触を形成する。図3Bは、組織を完全に切断及びステープルした後に遠位方向に完全に移動された発射バー(14)を図示する。
【0012】
図6は、組織(90)を貫通する1回のストロークを介して作動されたエンドエフェクタ(12)を示す。図6に示すように、ステープルドライバ(43)が切断エッジ(48)が作り出した切断線の各面の上に組織(90)を通して交互の3列のステープル(47)を駆動した間に、切断エッジ(48)は組織(90)を切り開いた。この例では、全てのステープル(47)が切断線とほぼ平行に配向されているが、ステープル(47)は任意の好適な配向で位置付けられ得ることを理解されたい。この例では、最初のストロークが完了した後にエンドエフェクタ(12)をトロカールから後退し、使用済みのステープルカートリッジ(37)を新しいステープルカートリッジと交換し、その後に、エンドエフェクタ(12)を再びトロカールを通して挿入して、ステープル留めする部位に到達し、更なる切断及びステープルを行う。所望の量の切断及びステープル(47)が提供されるまでこのプロセスを繰り返すことができる。トロカールを通じた挿入及び後退を可能にするためにアンビル(18)を閉じる必要がある場合があり、ステープルカートリッジ(37)の交換を可能にするためにアンビル(18)を開く必要がある場合がある。
【0013】
それぞれの作動ストローク中に、ステープル(47)が組織を通じて駆動されるのとほぼ同時に切断エッジ(48)が組織を切断することができることを理解されたい。この例では、切断エッジ(48)はステープル(47)の駆動にごくわずかに遅れて進むので、ステープル(47)は、切断エッジ(48)が組織の同じ領域を通過する直前に組織を通じて打ち込まれるが、この順序を逆にすることができること、又は、切断エッジ(48)が隣接するステープルと直接同期されてもよいことを理解されたい。図6は、2層(92、94)の組織(90)で作動されているエンドエフェクタ(12)を示しているが、エンドエフェクタ(12)が単層の組織(90)を通じて又は2層(92、94)以上の組織を通じて作動されてもよいことを理解されたい。また、切断エッジ(48)が作り出した切断線に隣接するステープル(47)の形成及び位置付けが、切断線で組織を実質的に封着することができ、したがってその切断線での出血及び/又は他の体液の漏出を低減若しくは予防することができることも理解されたい。器具(10)が使用され得る他の好適な設定は、本明細書の教示を考慮して当業者には明らかとなろう。
【0014】
米国特許第4,805,823号、米国特許第5,415,334号、米国特許第5,465,895号、米国特許第5,597,107号、米国特許第5,632,432号、米国特許第5,673,840号、米国特許第5,704,534号、米国特許第5,814,055号、米国特許第6,978,921号、米国特許第7,000,818号、米国特許第7,143,923号、米国特許第7,303,108号、米国特許第7,367,485号、米国特許第7,380,695号、米国特許第7,380,696号、米国特許第7,404,508号、米国特許第7,434,715、及び/又は米国特許第7,721,930号の教示のいずれかに従って器具(10)が構成され、かつ動作可能であり得ることを理解されたい。上述のように、それらの特許のそれぞれの開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。器具(10)に提供することができる更に他の例示的な修正例は、後でより詳しく述べられる。以下の教示が器具(10)に採用される種々の適切な方法は、当業者に明らかであろう。同様に、以下の教示を本明細書で引用された特許の様々な教示と組み合わせることができる種々の適切な方法は、当業者に明らかであろう。また、以下の教示が、本明細書で引用された特許に教示された器具(10)又は装置に限定されないことを理解されたい。以下の教示は、外科用ステープラーとして分類されない器具を含む様々な他の種類の器具に容易に適用することができる。以下の教示を適用することができる種々の他の適切な装置及び環境は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかであろう。
【0015】
II.例示のカバー
図7〜9は、ステープルカートリッジ(37)に取り付けられ得る、例示のステープルカートリッジ(37)保持具キャップ(180)を示す。保持具キャップ(180)は、その開示全体が参照することにより本明細書に組み込まれる、2010年9月30日に出願された「Implantable Fastener Cartridge Comprising a Support Retainer」という表題の米国特許出願第12/894,369号の教示のいずれかにより構成され、かつ動作可能であり得ることを理解されたい。保持具キャップ(180)は、ステープルカートリッジ(37)がエンドエフェクタ(12)の下部つかみ具(16)に挿入されるとき、医師の親指が、例えば、ステープルカートリッジ(37)内に位置するステープル(47)の先端に接触することを防ぐか、又は少なくとも抑制するように操作可能である。追加又は代替として、ステープル(47)がカートリッジから不用意に落ちることを防ぎ得る。ここで図7及び8を参照すると、本実施例の保持具キャップ(180)は、下面(181)及び上面(182)を含み、例えば、医師がそこに下向きの力を印加する押し込み面を提供することができる。1つのあくまで例示の使用において、医師は、保持具キャップ(180)のハンドル部分(184)をつかみ、ステープルカートリッジ(37)の支持部分(110)をエンドエフェクタ(12)の下部つかみ具(16)と整列させて、ステープルカートリッジ(37)をエンドエフェクタ(12)の下部つかみ具(16)内に少なくとも部分的に挿入してよい。その後、医師は、保持具キャップ(180)の上面(182)に下向きの力を印加することによって、エンドエフェクタ(12)の下部つかみ具(16)内にステープルカートリッジ(37)を完全に着座させることができ、これが下向きの力を支持部分(110)に直接伝達し得る。本実施例において、保持具キャップ(180)は、下向きに延在し、支持部分のデッキ表面(111)と接触する、近位支持体(187)を備える。保持具キャップ(180)は更に、ノーズ(103)に隣接する、遠位支持部分(183)を備える。下向きの力が保持具キャップ(180)に印加されると、その下向きの力は、近位支持体(187)及び/又は遠位支持部分(183)を通じて伝送され得る。幾つかの例示のバージョンにおいて、支持体の少なくとも一部は、下向きの力が保持具キャップ(180)に印加される前に、支持部分(110)の上部と接触していなくてもよいが、幾つかのバージョンでは、保持具キャップ(180)は、保持具キャップ(180)が支持部分(110)の上部に触れるまで、下向きに屈曲するか、又は動くように動作可能であり得る。かかる点において、保持具キャップ(180)の下向きの屈曲又は動きは、更に屈曲しないよう、妨げるか、又は少なくとも実質的に妨げることができる。
【0016】
上述のように、保持具キャップ(180)は、ステープルカートリッジ(37)に取り付けることができ、ステープルカートリッジ(37)の位置を操作するために使用することができる。幾つかのバージョンにおいて、保持具キャップ(180)は、例えば、ステープルカートリッジ(37)の支持部分(110)に対して保持具キャップ(180)を解放可能に保持するように動作可能であり得る、任意の適した数の把持部材を備えることができる。例えば、本実施例において、保持具キャップ(180)は、ラッチアーム(188、189)を備える。ラッチアーム(189)は、ノーズ(103)の側面周囲に延在し、ノーズ(103)の下面(109)(図7)を係合する。同様に、ラッチアーム(188)は、支持部分(110)から延在するロック突起(108)の側面周囲に延在し、ロック突起(108)の下面と係合する。これらのラッチアーム(188)は、ステープル(47)が支持部分(110)内に格納されるゾーン又は領域上に保持具キャップ(180)を位置付けるように動作可能である。いかなる場合でも、一旦ステープルカートリッジ(37)が好適に位置付けられると、保持具キャップ(180)は、ステープルカートリッジ(37)から取り外すことができる。当然のことながら、任意の他の好適な構成要素又は機能を使用して、保持具キャップ(180)のステープルカートリッジ(37)への解放可能な連結を提供してもよい。幾つかのバージョンにおいて、医師は、保持具キャップ(180)の遠位端をステープルカートリッジ(37)の遠位端(102)から取り外すために、上向きの持ち上げ力をハンドル(184)に印加してもよい。少なくとも1つのかかる実施形態において、ラッチアーム(188、189)は、ハンドル(184)が上向きに持ち上げられると、ラッチアーム(188、189)が、それぞれロック突起(108)及びノーズ(103)の周囲で屈曲し得るように、外側に曲がり得る。その後、保持具キャップ(180)の近位端は、ステープルカートリッジ(37)の近位端(101)から離れて持ち上げられてよく、保持具キャップ(180)は、ステープルカートリッジ(37)から離れ得る。保持具キャップ(180)を取り除き、ステープルカートリッジ(37)をエンドエフェクタ(12)の下部つかみ具(16)内に適切に着座させた後、器具(10)は、外科手技に使用されてよい。
【0017】
III.例示の充填可能なバットレス
バットレス(200)は、図10〜13に示されるように、図1〜6に示される例示の外科用カッターのエンドエフェクタ部分とともに使用されてよい。以下に記載されるように、バットレス(200)の使用は、例えば、ステープル(47)が適用された領域を安定化させることによって、組織が切断及びステープル留めされた手術部位のより迅速な回復を促進し得ることが理解されるであろう。幾つかの例示のバージョンにおいて、バットレス(200)は、上記の保持具キャップ(180)とともに使用され得るか、又は代替として、バットレス(200)は、保持具キャップ(180)を使用せずに、上記の外科用切断及びステープル留め器具(10)とともに直接使用されてもよい。
【0018】
図10は、バットレス(200)が、第1の流体充填可能部材(202)又はブラダー、及び第2の流体充填可能部材(204)又はブラダーを備えることを示す。幾つかの例示のバージョンにおいて、第1の流体充填可能部材(202)は、接着剤によりアンビル(18)に取り付けられてよく、第2の流体充填可能部材(204)は、下部つかみ具(16)内に位置付けられたステープルカートリッジ(37)の上部デッキ(72)に取り付けられてよい。他の例示のバージョンにおいて、第1の流体充填可能部材(202)及び第2の流体充填可能部材(204)は、一緒に接着され、かつアンビル(18)に接着されてよい。他の例示のバージョンにおいて、第1の流体充填可能部材(202)及び第2の流体充填可能部材(204)は、一緒に接着され、かつステープルカートリッジ(37)の上部デッキ(72)に接着されてよい。幾つかの例示のバージョンにおいて、接着剤を使用して第1の流体充填可能部材(202)又は第2の流体充填可能部材(204)をアンビル(18)及び/又は下部つかみ具(16)に取り付けるのではなく、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるように、クリップ又は他の好適な機械的若しくは液体締結システムが使用されてもよい。図10の本実施例は、アンビル(18)と下部つかみ具(16)との間に位置付けられようとしているバットレス(200)を示す。
【0019】
第1の流体充填可能部材(202)及び第2の流体充填可能部材(204)は、2液(220)を収容し、その2液(220)が互いに接触すると、以下に記載されるように、それらが、図1〜6に示される外科用ステープル留め及び切断器具(10)によって作用される手術部位を支える凝固剤を形成するようにする。幾つかの例示のバージョンにおいて、第1の流体充填可能部材(202)は、フィブリンで充填される一方、第2の流体充填可能部材(204)は、トロンビンで充填されるが、任意の好適な材料が使用され得ることを理解されたい。幾つかのバージョンにおいて、第1の流体充填可能部材(202)及び第2の流体充填可能部材(204)はともに、必ずしも別の化合物と組み合わせる必要なく、手術部位を支えるように動作可能であり得る、液体(220)を含み得る。更に他の例示のバージョンにおいて、2つの流体充填可能部材ではなく、任意の好適な数の流体充填可能部材が、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるように使用されてもよい。例えば、3つ以上の流体充填可能部材が使用され得るか、又は単一の流体充填可能部材が使用されてもよい。更に、バットレス(200)は、液体(220)で予め充填され得るか、又は代替として、ユーザ若しくは医師は、外科用ステープリング及び切断器具(10)の使用前に、バットレス(200)を液体(220)で充填してもよい。幾つかの他の例示のバージョンにおいて、液体(220)は、止血剤、生物学的に安全なグルー、又は本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなる任意の他の好適な接着材料を含み得る。
【0020】
例示のバージョンにおいて、バットレス(200)は、アンビル(18)と下部つかみ具(16)との間に適合するように構成されたほぼ平坦な長方形の形状を有する。バットレス(200)は、アンビル(18)又は下部つかみ具(16)の幅より少なくともわずかに大きな寸法を有する。幾つかの例示のバージョンにおいて、バットレス(200)は、アンビル(18)又は下部つかみ具(16)より大幅に大きな寸法を有してもよい。しかしながら、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるように、バットレス(200)に対して任意の好適な形状又は寸法が使用されてもよい。更に、バットレス(200)が、以下に論じられるように圧迫されていないとき、バットレス(200)がそのほぼ平坦な形状を維持できるように、バットレス(200)は、半自己支持構造体を備える。
【0021】
図11A〜Cは、第1の流体充填部分(202)及び第2の流体充填部分(204)内に収容された液体(220)が、バットレス(200)から押し出され得る様子を示す、バットレス(200)の側面図を示す。例示のバージョンにおいて、バットレス(200)は、アンビル(18)と下部つかみ具(16)との間に配置されてよく、そこでバットレス(200)は、図11Aに示されるように、ほぼ平坦な状態のままである。また図11Aに見られるように、液体(220)は、実質的に圧迫されていない状態のままである。幾つかの例示のバージョンにおいて、バットレス(200)は、バットレス(200)が下部つかみ具(16)内に収容されたステープルカートリッジ(図示せず)に接着するように、アンビル(18)と下部つかみ具(16)との間に配置されるように予め装填されてよい。他の例示のバージョンにおいて、ユーザ又は医師は、外科的状況において使用する前に、アンビル(18)と下部つかみ具(16)との間にバットレス(200)を装填することができる。例えば、幾つかの例示のバージョンにおいて、ユーザは、手術部位の組織の周囲でアンビル(18)及び下部つかみ具(16)をクランプする前に、図7〜9で上述される保持キャップ(180)を取り除き、保持キャップ(180)をバットレス(200)と置き換えてもよい。他のあくまで例示のバージョンにおいて、バットレス(200)は、保持キャップ(180)に連結されてよく、保持キャップ(180)は、使用前に取り除かれ、アンビル(18)と下部つかみ具(16)との間にバットレス(200)のみを残す。バットレス(200)及び保持キャップ(180)の他の構成は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるように使用されてもよい。
【0022】
図11Bは、アンビル(18)及び下部つかみ具(16)によってクランプされ、圧縮された区域(206)及び加圧された区域(208)を生じるときに見られるようなバットレス(200)を示す。加圧された区域(208)において、液体(220)は圧力下に置かれる。図11Bに見られるように、アンビル(18)及び下部つかみ具(16)は、バットレス(200)が切断又はステープル留めされる前に、バットレス(200)の周囲に堅くクランプされている。
【0023】
図11Cに見られるように、仮想線(210)は、アンビル(18)及び下部つかみ具(16)がバットレス(200)を圧縮する前のバットレス(200)の輪郭を示す。アンビル(18)及び下部つかみ具(16)は、バットレス(200)を挟むようにクランプされてよい。バットレス(200)内に収容された液体(220)は、加圧された領域(208)内で加圧されたままである。図11B〜11Cは、圧縮された領域(206)の片側の加圧された領域(208)を示すが、反対の加圧された領域(208)は、圧縮された領域(206)の反対側に形成され得ることが理解されるであろう。バットレス(200)は、加圧された領域(208)が、加圧下で破損又は破裂することなく、バットレス(208)内の流体の大部分又は全部で充填され得るように、拡張するよう構成された一般的に弾性材料を含む。したがって、加圧された領域(208)は、加圧された領域(208)の圧力及び液体の増加に対応するために、仮想線(210)によって画定された領域を越えて拡張する。
【0024】
図1〜6を参照して上述される切断エッジ(48)は、組織(90)を切断し、切断エッジ(48)はバットレス(200)も切断して、図11Cに示されるように切断されたバットレス(200)を生じる。ほぼ同時に、バットレス(200)もステープル留めされ、したがってバットレス(200)はステープル(47)によって断裂され、それによってバットレス(200)が液体(220)を放出し始めることを可能にする。バットレス(200)の切断時に、液体(220)は、バットレス(200)の加圧された領域(208)から押し出され、手術領域の組織の中に入り、それによって組織(90)が一旦切断及びステープル留めされると、組織(90)の支持を援助する。更に、ステープル(47)は展開されて、上記のように、バットレス(200)を更に断裂し、それによって液体(220)が、ステープル(47)によって同様に断裂されたバットレス(200)の領域を通じて絞り出されることを可能にする。幾つかの例示のバージョンにおいて、バットレス(200)は、バットレス(200)が患者に害を及ぼすことなく組織(90)内に残され得るように、可溶性材料を含み得る。他の例示のバージョンにおいて、バットレス(200)は、液体(220)が一旦バットレス(200)から放出されると、手術部位から取り除かれてもよい。
【0025】
図12A〜Bは、組織(290)の2つの層の間で圧縮されている、バットレス(200)の正面断面図を示す。幾つかの例示のバージョンにおいて、バットレス(200)は、組織(290)の間に挟まれ得るか、又は幾つかの代替バージョンにおいて、バットレス(200)は、組織(290)の上面又は下面のいずれかに押し付けられてもよい。幾つかの例示のバージョンにおいて、バットレス(200)の外面は、液体(220)の放出前に、バットレス(200)が組織(290)に接着することを可能にするために、接着剤コーティングを備えてもよい。図12Bは、ステープル(247)によって切断及びステープル留めされた後のバットレス(200)を示し、液体(220)を収容する加圧された領域(208)が、液体(220)を圧縮された領域(206)を通じて周辺組織(290)の中に押し入れる。幾つかのバージョンにおいて、液体(220)は、ステープル(247)によって引き起こされた断裂を通じて押し出されてもよい。
【0026】
図13は、組織(90)を切断及びステープル留めするために使用されている、外科用切断及びステープル留め器具(10)を示す。本実施例に見られるように、バットレス(200)は、アンビル(18)と下部つかみ具(16)との間で切断された。更に、液体(220)は、バットレス(200)から周辺組織(90)の中に押し入れられた。液体(220)は、任意の好適な液体を含み得るが、本実施例において、液体(220)は、例えば、フィブリン及びトロンビン等の凝固剤を含む。液体(220)は、一旦バットレス(200)から押し出されると、ステープル(47)が組織(90)に挿入された組織(90)の部分の凝固を援助するように動作可能である。
【0027】
IV.充填可能な領域を持つ例示のバットレス
図14〜16は、図1〜6に示される器具(10)のエンドエフェクタ(12)とともに使用され得るバットレス(300)を示す。バットレス(300)は、境界部分(302)と、接着剤領域(304)とを備える。境界部分(302)は、接着剤領域(304)の外辺部の周りに延在し、それによってバットレス(300)の第1の半分(306)及び第2の半分(308)を画定する。第1の半分(306)及び第2の半分(308)は、垂直スロット(49)が概ね第1の半分(306)と第2の半分(308)との間に位置付けられるように位置付けられる。切断線(314)は、図15に示されるように、切断エッジ(48)が切断線(314)に沿って境界部分(302)を切断し得るように、第1の半分(306)と第2の半分(308)との間に延在する。当然のことながら、切断線(314)は省略されてもよい。例えば、バットレス(300)は、垂直スロット(49)のどちらの側でも別個の部品内に提供されてもよい。更に、バットレス(300)は、個別の半分(306、308)を使用することなく、単一の単位として構成されてもよいことが理解されるであろう。同様に、本実施例では単一のバットレス(300)が使用されているが、2つ以上のバットレス(300)が、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるように使用されてもよいことを理解されてよい。例えば、図15は、2つのバットレス(300)、1つはカートリッジ(37)のデッキ(72)上のバットレス(300)、1つはアンビル(18)の下側のバットレス(300)の間にクランプされている組織(90)の断面図を示す。
【0028】
本実施例のバットレス(300)は、発泡材料で構成されているが、任意の好適な材料が使用され得ることを理解されたい。単なる例として、バットレス(300)は、生体吸収性の布地を備えてもよい。接着剤領域(304)は、接着層膜(312)内に保持された接着剤(310)を含む。接着剤(310)は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるように、任意の好適な接着材料を含み得る。例えば、接着剤(310)は、シアノアクリレート、抗菌剤、及び/又は治療薬を含んでもよい。更に他の例示のバージョンにおいて、半分(306、308)の接着剤領域(304)は、半分(306、308)が穿刺された後、薬剤が混合されたときに限って接着特性が作動されるように、2つ以上の薬剤を含み得る。接着剤(310)に好適な他の材料は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるであろう。境界部分(302)に接続された膜(312)は、流体接着剤(310)を保持するように構成された発泡体を形成する。例えば、図15は、接着剤(310)を被包する膜(312)を示す。膜(312)は、生体吸収性プラスチック及び/又は生体吸収性材料で構成されてよい。膜(312)は更に、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるように、任意の好適な材料で構成されてもよい。
【0029】
上記のように、境界部分(302)は、接着剤領域(304)内の任意の流体が、境界部分(302)によって画定された外辺部内に保持されるように、接着剤領域(304)の周りに縁部を形成する。例えば、図15〜16に示されるように、2つのバットレス(300)間にクランプされる組織(90)は、接着剤領域(304)が組織(90)に向かって面するように位置付けられる。アンビル(18)は、バットレス(300)が組織(90)を絞り、それによって境界部分(302)と組織(90)との間に密封を形成するように、下部つかみ具(16)に対してクランプされる。図15に見られるように、ステープル(47)は、接着剤領域(304)の膜(312)を穿通する。結果として、接着剤領域(304)が破裂し、接着剤(310)が流出する。境界部分(302)は、接着剤(310)が接着剤領域(304)を出た後に組織(90)に対して接着剤(310)を固持する一方で、接着剤(310)がバットレス(300)から周辺組織に流出するのを実質的に防ぐように構成されたカップ様形状を有する。図16は、接着剤領域(304)から流出して接着剤層(316)を形成した後の接着剤(310)を示す。また図16において、切断エッジ(48)は、組織(90)を切断する切断線(314)に沿ってスライスしている。ステープル(47)は、組織(90)に押し付けられたバットレス(300)を動作可能に保持することが理解されるであろう。
【0030】
図17は、境界部分(402)内で離間配置された複数の接着剤領域(404)を有する、バットレス(400)の例示の代替バージョンを示す。接着領域(404)は、穿刺されたとき及び/又は十分に圧縮されたときに破裂するように動作可能な可塑性モジュールを備える。各接着剤領域(404)は、その中に収容された接着剤(410)を有する。接着剤領域(404)の全てが必ずしも同一の接着剤(410)を収容する必要はないことが理解されるであろう。例えば、幾つかの接着剤領域(404)は、ある種類の接着剤(410)及び/又は治療材料を含み得るが、他の接着剤領域(404)は、異なる種類の接着剤(410)及び/又は治療材料を含んでもよい。当然のことながら、任意の他の好適な医療用流体は、接着剤に加えて、又は接着剤の代わりに領域(404)に含まれてもよい。
【0031】
図18は、発泡体領域(504)の中に埋め込まれた及び/又はシードされた接着剤カプセル(510)とともに、発泡体領域(504)を有するバットレス(500)の更に別の例示のバージョンを示す。発泡体領域(504)は、境界部分(502)内に収容される。発泡体領域(504)は、バットレス(500)が手術部位において展開される前に、接着剤カプセル(510)がバットレス(500)から不用意に離れることを実質的に防ぎ得る。発泡体領域(504)は、バットレス(500)が手術部位において展開された後に、カプセル(510)から放出された接着剤が手術部位から漏出することも実質的に防ぎ得る。更に、発泡体領域(504)は、バットレス(500)が手術部位において展開される前及び/又は後に、カプセル(510)の接着剤(510)がアンビル(18)及び/又はカートリッジ(18)に粘着することを実質的に防ぎ得る。
【0032】
接着剤カプセル(510)は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるように、任意の好適な方法から構成され得る。図19は、カプセル形成チャンバ(550)を使用して接着剤カプセル(510)を作製する1つの例示の方法を示す。チャンバ(550)は、ディスペンサ(552)と、コーティング媒質(556)とを備える。任意の非反応性気体がチャンバ(550)内に収容されてもよいことが理解されるであろう。ディスペンサ(552)は、コーティング媒質(556)に進入する前に接着剤液滴として落下する、接着剤材料(554)を分注する。コーティング媒質(556)は、プラスチックを含み得るが、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるように、任意の好適な材料が使用されてもよい。接着剤材料(554)は、コーティング媒質(556)と接触して、コーティングで被覆され、それによってコーティング媒質(556)の底部に接着剤カプセル(510)を形成する。その後、接着剤カプセル(510)は、図18に示されるように、チャンバ(550)から取り除かれ、発泡体領域(504)の中に配置されてもよい。当然のことながら、接着剤カプセル(510)は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかとなるように、任意の他の好適な方法から形成されてもよい。
【0033】
本明細書で述べる教示、表現、実施形態、例などのいずれの1つ又は複数も、本明細書で述べる他の教示、表現、実施形態、例などのいずれの1つ又は複数とも組み合わせることができることを理解されたい。したがって、下記に述べる教示、表現、実施形態、例などは、互いに独立であると考えられるべきでない。本明細書の教示を組み合わせることができる種々の適切な方法は、本明細書の教示を考慮して当業者には容易に明らかになるであろう。こうした修正及び変形は特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0034】
前述の装置のバージョンは、ロボット支援された医療及び処置での用途だけでなく、医療専門家によって行われる従来の医療及び処置での用途を有することができる。
【0035】
前述したバージョンは、1回の使用後に処分するように設計されることができ、又はそれらの形態は、複数回使用するように設計することができる。諸形態は、いずれの場合も、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整することができる。再調整することは、装置を分解すること、それに続いて特定の部品を洗浄及び交換すること、並びにその後の再組み立てすることの任意の組み合わせを含み得る。特に、装置の幾つかのバージョンは分解されてもよく、また、装置の任意の個数の特定の部片又は部品が、任意の組み合わせで選択的に交換されるか、あるいは取り外されてもよい。特定の部品の洗浄及び/又は交換の際、装置の幾つかのバージョンは、再調整用の施設で、又は外科的処置の直前にユーザによって、その後の使用のために再組み立てされてよい。デバイスの再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用できることが、当業者には理解されよう。このような技術の使用、及びその結果として得られる再調整された装置は、全て、本出願の範囲内にある。
【0036】
単に例として、本明細書で説明した形態は、手術の前及び/又は後に、滅菌してもよい。1つの滅菌技術では、装置は、プラスチック又はTYVEKバッグなど、閉められかつ密閉された容器に入れられる。次いで、容器及び装置は、γ放射線、X線、又は高エネルギー電子など、容器を透過し得る放射線場に置かれてもよい。放射線は、装置上及び容器内の細菌を死滅させることができる。次に、滅菌された装置は、後の使用のために、滅菌した容器内に保管してもよい。装置はまた、限定されるものではないが、ベータ若しくはガンマ放射線、エチレンオキシド、又は水蒸気を含めて、当該技術分野で既知の任意の他の技術を使用して滅菌されてもよい。
【0037】
本開示の様々な形態について図示し説明したが、本明細書で説明した方法及びシステムの更なる改作が、当業者による適切な変更により、本発明の範囲を逸脱することなく達成され得る。そうした可能な改変例の幾つかについて述べたが、その他の改変も当業者には明らかであろう。例えば、上記に論じた実施例、形態、幾何学的図形、材料、寸法、比率、工程などは、例示的なものであり、必須ではない。したがって、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲において考慮されるべきであり、本明細書及び図面において示し、説明した構造及び動作の細部に限定されないものとして理解される。
【0038】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
(a)遠位端及び近位端を備える、外科用カッターであって、前記近位端がハンドルを備え、前記遠位端がアンビル及び下部つかみ具を備え、前記アンビル及び前記下部つかみ具が組織をクランプするように構成され、前記外科用カッターが前記アンビル及び前記下部つかみ具によってクランプされた組織を切断するように構成されている、外科用カッターと、
(b)液体で充填されたバットレスであって、前記バットレスが、前記アンビルと前記下部つかみ具との間に定置されるように構成され、前記バットレスが圧縮性部分及び圧力部分を備え、前記圧縮性部分が、前記アンビル及び前記下部つかみ具が該圧縮性部分をクランプすることによって前記外科用カッターの前記遠位端によって圧迫されるように構成され、前記圧力部分が、前記圧縮部分に対するクランプに反応して前記液体で加圧されるように構成され、前記バットレスが、前記外科用カッターが組織を切断するのとほぼ同時に、前記外科用カッターによって切断されかつステープル留めされるように構成され、前記圧力部分が、一旦前記バットレスが切断されると、前記圧縮性部分を通じて前記液体を押し出すように構成される、バットレスと、を備える、装置。
(2) 前記液体が2液型接着剤を含み、前記2液型接着剤が、前記2液型接着剤の2液が混合されたときに限って接着特性を有するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記バットレスが、弾性材料を含む、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記アンビルが、アンビル幅を画定し、前記バットレスが前記アンビル幅より広いバットレス幅を画定する、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記バットレスが、弾力性材料を含む、実施態様1に記載の装置。
【0039】
(6) 前記バットレスが、略長方形の形状を有する、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記バットレスが、前記外科用カッターの中に予め装填されるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記バットレスが、前記バットレスの実質的に等しい部分が前記下部つかみ具から外側に延在するように、前記下部つかみ具にまたがる、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記バットレスが、前記下部つかみ具に連結されるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記バットレスが、2つの実質的に同様の形状の流体充填部材を備え、前記2つの流体充填部材のそれぞれが液体接着剤を含む、実施態様1に記載の装置。
【0040】
(11) 前記2つの流体充填部材のそれぞれが、異なる液体成分を含む、実施態様10に記載の装置。
(12) 前記外科用カッターと連通する外科用ステープラーを更に備え、前記外科用ステープラーが、1つ又は2つ以上のステープルを備え、前記外科用ステープラーが、組織の一部分をステープル留めするように構成され、前記1つ又は2つ以上のステープルが、前記バットレスを破裂させるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(13) 前記バットレスが、可溶性材料を含む、実施態様1に記載の装置。
(14) 前記バットレスが、2液型流体凝固剤を含み、前記2液型流体の一方がフィブリンを含み、前記2液型流体の他方がトロンビンを含む、実施態様1に記載の装置。
(15) 前記バットレスが、前記バットレスを前記外科用カッターの一部分に接着するように動作可能な接着剤を前記バットレスの外側に含む、実施態様1に記載の装置。
【0041】
(16) 装置であって、
(a)カッター及びステープラーを備える外科用器具であって、前記外科用器具が、組織が切断されかつステープル留めされるときに前記組織を圧縮するように動作可能なアンビル及び下部つかみ具を更に備え、前記カッターが、前記組織の少なくとも一部分を切断するように構成され、前記ステープラーが前記組織の少なくとも一部分をステープル留めするように構成されている、外科用器具と、
(b)一対のブラダーであって、該一対のブラダーの少なくとも一部分が、前記アンビルと前記下部つかみ具との間に位置付けられ、前記一対のブラダーが、第1のブラダー及び第2のブラダーを含み、前記第1のブラダーが、第1の凝固剤成分を収容し、前記第2のブラダーが、第2の凝固剤成分を収容し、前記カッターが、前記第1のブラダー及び前記第2のブラダーの両方を同時に破裂させ、それによって前記第1の凝固剤成分の少なくとも一部分を前記第2の凝固剤成分の少なくとも一部分と混合するように動作可能である、一対のブラダーと、を備える、装置。
(17) 前記一対のブラダーのうちの少なくとも片方が、流体接着剤を更に収容する、実施態様16に記載の装置。
(18) 前記アンビル及び前記下部つかみ具が、前記一対のブラダーの少なくとも一部分を圧縮するように構成されている、実施態様16に記載の装置。
(19) 前記一対のブラダーのそれぞれが、弾性材料を含む、実施態様16に記載の装置。
(20) 外科用器具を使用して同時に切断された組織に流体を分配するように1つ又は2つ以上のブラダーを加圧及び切断するための方法であって、前記外科用器具が、アンビル及び下部つかみ具を備え、前記外科用器具が、前記アンビル及び前記下部つかみ具に関連して移動可能なナイフを更に備え、前記1つ又は2つ以上のブラダーが、前記アンビルと前記下部つかみ具との間に位置付け可能であり、前記1つ又は2つ以上のブラダーのうちの少なくとも一部分が、前記流体を収容し、前記方法が、
(a)前記アンビルと前記下部つかみ具との間に組織を整列させることと、
(b)前記アンビルと前記下部つかみ具との間で前記1つ又は2つ以上のブラダーの一部分を圧縮することと、
(c)前記外科用器具の一部分を作動させることであって、前記外科用器具の一部分を作動させる行為が、前記アンビル及び前記下部つかみ具に関連して前記ナイフを動かすように動作可能である、作動させることと、
(d)組織を前記ナイフで切断することと、
(e)前記1つ又は2つ以上のブラダーを前記ナイフで切断することと、
(f)前記切断された組織の近位にある領域に前記流体を分配することと、を含む、方法。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
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図16
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図19