【文献】
Thomas Laurell et al.,Chip integrated strategies for acoustic separation and manipulation of cells and particles.,Chem.Soc.Rev.,米国,2007年,Vol.36,492-506
【文献】
O Manneberg et al.,Wedge transducer design for two-dimensional ultrasonic manipulation in a microfluideic chip,J. Micromech.Microeng. ,2008年,Vol.18,1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
文字、(x)、(y)および(z)は、それぞれ、マイクロチャネルの長さ(l)、幅(w)、および高さ(h)に沿った空間位置を指す。文字(Qi)、(v)、および(pi)は、それぞれ、体積流量、流速および圧力を指す。ただし、添え字(i)は、特性の複数の例を示す。用語、懸濁液は、沈殿するために十分な大きさの固体の粒子または細胞を含む流体を指す。
【0017】
方法およびシステム
本発明は、細胞および/または粒子などの物体のサブグループを懸濁液から分離するための方法およびシステムに関する。
【0018】
方法I
1つの態様において、本発明は、以下のステップを含む方法に関する:
a)懸濁液(51)の容器中の静水圧p
1を高めてチャネル入口(11)における圧力をその他の流体接続部(12、13、および14)のいずれにおけるよりも高くすることにより懸濁液(51)を管(55)経由で少なくとも1つの事前整列チャネル(15)に押しやるステップ。前記圧力差により、チャネル中に層流が生ずる。この流れは、1μL/分〜2mL/分まで変化し得る。高い圧力は、注射器ポンプ、蠕動ポンプを使用することにより、または流体の容器が置かれている密閉チャンバ内のガス圧を調節することにより生成することができる。
b)前記懸濁液中の懸濁された物体(
図1、差し込み図c)に、事前整列チャネル(15)に垂直な方向に向けられた二次元音響力ポテンシャル(
図1のa−a’および
図2のf−f’)を加えて細胞および/または粒子のすべてが流れの横断面中の1つまたは複数の点に局在させるステップ。二次元音響力ポテンシャルは、音響的に柔らかい水と音響的に硬いチャネルの壁の間の界面における反射により引き起こされる水で満たされたチャネル内部の超音波の共振モードから生ずる。超音波振動の周波数を調節することにより、懸濁された細胞および/または粒子をチャネルの壁、床および天井から最寄りの振動圧力ノードに押しやるモードを発生させることができる。(11)における懸濁液の恒常的流入が二次元音響力ポテンシャルとの組み合わせと相まって、懸濁液の細胞および/または粒子が事前チャネルを出る直前に狭い帯状に整列させる(
図1の差し込み図dおよび
図2の差し込み図h)。
【0019】
事前整列チャネルの幅および/または高さは、75μm〜800μm(たとえば75μm〜200μm)、または200μm〜375μm、または300μm〜400μm、または400μm〜700μmまたは700μm〜800μm、または150μm、300μm、188μm、375μmまたは750μmとすることができる。
【0020】
事前整列チャネルの幅および高さは、幅wを整数nで除した値が高さhを整数mで除した値に等しくなるように関係づけることができる。この場合、高さおよび幅のサイズと同時に共振条件を満たす単一の振動周波数を次のように選択することができる。
ここでcは、懸濁流体中の音速である。
【0021】
チャネルの幅と高さが関係づけられない場合、共振条件は、高さおよび幅について、それぞれ、別々の振動周波数を個別に/選択的に使用して制御することができる。振動周波数は、1MHz〜10MHzとすることができ、かつ、上述のチャネルの寸法の選択およびn=1、m=2、c=1500m/sなどの選択により黙示的に決定される。その他の例は、1〜5MHz、たとえば2〜5MHzまたは2MHzもしくは5MHzである。
【0022】
この二次元音響力ポテンシャルの1つの例は、振動周波数f
15=5MHzに対して幅w
15=300μmおよび高さh=150μmの水の満たされた事前整列チャネル(15)の場合である。1500m/sの懸濁液中の規定音速cの場合、音響波長λ
15=c/f
15=300μmである。チャネルが半波長の倍数のみをサポートできるならば、振動がチャネル中にy軸(
図1のa−a’)とz軸(
図2のf−f’)の両方に沿って共振を含み得ることは明らかである。組み合わされたyzモードは、(y
1,z
1)=(w
15/4,h/2)および(y
2,z
2)=(3W
15/4,h/2)において2つの振動圧力最小値をもつ。
c)前記の音響的に事前収束された懸濁液および中央入口(12)経由の注入無粒子液体を同時に第2分離チャネル(16)の中に押しやるステップ。この場合、細胞および/または粒子の前記混合物は、前記第2チャネルの1つまたは複数の壁の付近に導かれる。したがって懸濁液は、音響泳動マイクロチャネルの片側または両側に沿って層状となる一方、無粒子流体は、チャネルの残りの部分を占める。無粒子液体と懸濁液の相対的体積流量Q
2およびQ
1は、それぞれ、第2チャネル(16)に入ったときの細胞および/または粒子の横方向位置(y=w
1)を決定する。Q
2の増大は、w
1の減少をもたらす。それを行う原動力は、項(dおよびe)において明らかにする。
d)細胞および/または粒子の前記混合物に、主として前記分離チャネルのy軸沿いの方向に向けられる一次元音響力ポテンシャルを加え、それにより対象物のすべてをチャネルの垂直中央平面の方向に移動させるステップ。この一次元音響力ポテンシャルは、音響的に柔らかい水と音響的に硬いチャネルの壁の間の界面における反射により引き起こされる水の満たされたチャネル内の超音波の共振モードから生ずる。超音波振動の周波数を調節することにより、懸濁されている物体をチャネルの壁からチャネル中央の振動圧力ノードの方向に押しやる半波長共振モードを発生させることができる。これまでに二次元事前整列チャネルより整列させられており、壁の近傍に存在するこれらの物体は、チャネルの中央に存在する中央振動圧力最小地点の方向へ移動する。
【0023】
分離チャネルの幅は、75μm〜800μm(たとえば75μm〜200μm)、または200μm〜375μm、または300μm〜400μm、または400μm〜700μmまたは700μm〜800μm、または150μm、300μm、188μm、375μmまたは750μmとすることができる。
【0024】
幅は、振動周波数fが次式のようになるように選ぶことができる:
ここで、cは、懸濁流体中の音速である。
【0025】
振動周波数は、1MHz〜10MHzの範囲で変化することができ、かつ、上述のチャネルの特定の寸法ならびにn=1、およびc=1500m/sなどの選択により黙示的に決定される。
【0026】
この一次元音響力ポテンシャルの一例は、振動周波数f
16=2MHzに対して幅w
15=375μmおよび高さh=150μmの、水の満たされた分離チャネル(16)とすることができる。1500m/sの懸濁液中の規定音速に対して、音響波長λ
16=c/f
16=750μm。このチャネルが半波長の倍数のみサポートできるものとすると、この振動がチャネルにおいてy軸(
図1のb−b’)に沿ってのみ共振を誘起し得ることは明らかである。このモードは、y=w
16/2において1つの振動圧力最小をもつ。
【0027】
各細胞および/または粒子は、流れに駆動されてチャネルに沿ってx方向に移動しつつ、y方向に中央振動ノードに向かって懸濁媒体および細胞および/または粒子それぞれの音響機械的特性、質量密度および圧縮性により決定される速度で流される。この速度は、細胞および/または粒子のサイズおよび音響共振の強度によっても決定される。第2チャネル中の音響共振の振幅を調節することにより、細胞および/または粒子の経路を偏向させ、類似していない音響運動性をもつ細胞および/または粒子をy軸沿いの種々の位置でチャネルから離脱させることができる。
【0028】
すべての細胞および/または粒子は、分離チャネルに入るとき、yz平面において事前整列されているので、それらの個別軌道は、それらの音響物理的特性およびサイズを高度に反映している。事前整列がない場合、個々の細胞および/または粒子の軌道は、分離チャネルに入るときのそれらの初期位置により強く影響され、それは、実際には細胞および/または粒子の本質的特性ではない。
e)入口(
図6のQ
1およびQ
2)および出口Q
3およびQ
4における体積流量を調節し、処理時間を犠牲にして移動距離(w
2)を最大にすること。細胞および/または粒子が中央出口(13)に到達するためにより長い移動距離を強いることにより、その出口において誤識別される細胞および/または粒子の個数が減少する。Q
4に対比してQ
3を低減することにより、中央出口の流体力学的開口部(w
3)が狭くなり、かつ(w
2)の増大をもたらす。同様に、Q
2に対比してQ
1を低減することは、(w1)を低減する。選択度の向上は、ある有限の体積の試料の処理時間(それはQ
1に関係する)および十分に安定した流れを作成する外部流体工学装置の能力(この能力はQ
3に関連するQ
4の擾乱に関係する)に関する要求との釣り合いを維持しなければならない。
【0029】
方法II
本発明は、第2の態様において、以下のステップを含む方法に関する:
a)懸濁液(51)の容器中の静水圧p
1を高めてチャネル入口(11)における圧力をその他の流体接続部(12、13、14、および71)より高くすることにより、懸濁液(51)を管(55)経由で少なくとも1つの事前整列チャネル(15)の中に押しやるステップ。前記圧力差により、チャネル中に層流が生ずる。この流れは、1μL/分から2mL/分まで変化し得る。高い圧力は、注射器ポンプ、蠕動ポンプを使用することにより、または流体の容器が置かれている密閉チャンバ内のガス圧を調節することにより生成することができる。
b)細胞および/または粒子の懸濁液を事前整列チャネル(11)の中に押しやり、前記懸濁液中の懸濁された細胞および/または粒子に、前記事前整列チャネルに垂直な方向に向けた二次元音響力ポテンシャルを加えるステップ(
図7の差し込み図d)。これにより粒子のすべてが1点に事前整列され、同時に流れのxy平面および横断面のz平面において中央に集められる(
図7の差し込み図e)。前述の流速およびチャネルのサイズのときに支配的な層状の流れプロフィールは、事前整列後に前記点において収束された細胞および/または粒子を含んでいる。
【0030】
懸濁液中の細胞および/または粒子の音響力駆動分離を改善するこの二次元力ポテンシャルの実装形態の一例として、f=5MHzの共振周波数で設計された幅w
2=150μmおよび高さh=150μmの、水の満たされたチャネル・セグメント(15)を挙げることができる。1500m/sの懸濁液中の規定音速cに対して、音響波長λ=c/f=300μmであり、したがって正方チャネル横断面は、高さ(z)方向と幅(xy)方向の両方における半波長定在波をサポートすることができる。
c)懸濁液中の事前整列された前記細胞および/または粒子をチャネルの中に押しやり(このチャネルは、幅w
3=375μm、高さh
2=150μmとすることができる)、(12)から層状主緩衝流を注入しつつ、全流量(事前整列流量+主緩衝流量)を十分に低く保ってチャネル中の層状流れ形態を維持し、それにより事前整列された細胞および/または粒子の流れを前記第2チャネルの側壁に沿って層流化するステップ(
図7の差し込み図e)。前記のチャネルは、f=2MHzの共振周波数で設計することができる。1500m/sの規定懸濁液中音速に対して、音響波長λ=c/f=750μmとなり、したがって矩形チャネル断面(c−c’)は、幅(y)方向の半波長定在波のみサポートすることができる。
(d)細胞および/または粒子の前記の事前整列された流れに、前記第2チャネル(c−c’)に垂直な方向に向けられた一次元音響力ポテンシャルを加えることより、これらの物体のすべてをy平面に沿って流れの横断面中の一点に向かって移動させるステップ(
図7の差し込み図f)。二次元事前整列により前もって整列され、現在側壁近傍に存在する細胞および/または粒子の向かう先の点は、前述したチャネル幅w
3および規定音速における音響共振周波数により決定されるチャネルの中央における中央振動圧力最小点である。第2チャネルの中央に向かう粒子相互間の移動速度の差は、粒子の材料的特性、すなわち、サイズ、密度および音速の差異により決定される。したがって、一定の音響振幅および緩衝条件の下で、チャネル中の細胞および/または粒子の横方向位置(
図7の差し込み図fおよびi)は、細胞および/または粒子がシステムを出て行く出口を(13)、(14)、(71)のいずれかに決定する。よって出口の個数、流速および音響的効果を調節することにより、層流の一部を特定の出口に向かわせることが可能になる。これは、前述した音響的特性およびサイズなどによって一定の細胞および/または粒子の抽出を区別することを可能にする。
e)流れを2つ以上のチャネルに分割することにより前記第2チャネルから、同一のサイズおよび/または質量密度および/または圧縮性をもつ細胞および/または粒子を収集するステップ。
【0031】
システム
別の態様において、本発明は、懸濁液中に存在する異なる種類の細胞および/または粒子の混合物から細胞および/または粒子のサブグループを分離するシステムに関し、このシステムは、以下を含む:
i)2つの入口(11、12)および少なくとも2つの出口(13,14)ならびに少なくとも1つの第1チャネルをもつマイクロチップ。
ii)圧力を加える手段であって、前記圧力は、前記懸濁液を入口(11)の中および少なくとも1つの事前整列チャネル(15)の中に押しやる手段、
iii)二次元音響力(15)を与える手段、
iv)前記チャネル(12)に無粒子溶液を注入する手段
v)一次元音響力(16)を与える手段、および
vi)少なくとも2つの出口(13、14)から同一のサイズおよび/または質量密度および/または圧縮性をもつ物体を収集する手段。
【0032】
システムの一例は、
図1〜5に示されている。
図1および2は、細胞のサブセットたり得る粒子を含む懸濁液をシステム(11)に押しやる方法を示している。次に、粒子を含む懸濁液(
図1の差し込み図c)を事前整列チャネル(15)に導き、そして主としてyz平面において働く第1の二次元音響力ポテンシャル(それぞれ、
図1のa−a’および
図2のf−f’)に曝して、細胞を2つの細胞のサブグループに収束する。これらのサブグループを2つの別々のチャネル中に分離し、次に無細胞溶液をシステムスルー(12)に導く。無細胞溶液は、事前整列粒子の2つのサブグループをチャネルの壁に近い位置に押しやる(
図1の差し込み図d)。次に細胞のサブグループを一次元音響力(
図1のb−b’)(16)に曝す。これは、相異なるサイズおよび/または質量密度および/または圧縮性をもつ細胞を相互に分離して相異なる細胞の新しいサブグループ(
図1の差し込み図e)とする。次に、同一のサイズおよび/または質量密度および/または圧縮性をもつ細胞を(13)および(14)において収集する。これは、
図5に示されている。これは、使用時にシステムにおいて生じていることを簡略化した図である。別の例を
図7に示す。
【0033】
1つの実施形態では、マイクロチップは、
図3および4に示すように取り付けることができる。これらの図は、同一のマイクロチップを2つの角度から見た図である。
【0034】
図3には、懸濁液中の細胞および/または粒子がマイクロチップに入る入口(11)がある。無粒子緩衝溶液(12)のための入口がある。この溶液は任意の適切な緩衝液でよく、当該分離レベルで分離されるべきもの、すなわち粒子/細胞が相互に類似する程度に依存する。緩衝液の例は、水、0.9%のNaClのような食塩水または細胞媒体または血液、血清、尿、乳またはその他の生物流体などの哺乳類から得られる液体である。その他の例は、油、湖沼からの水、飲料、水に懸濁させた沈殿物などの環境から得られる液体である。少なくとも2つの出口、すなわち、中央出口(13)および側面出口(14)があり、ここで細胞および/または粒子を収集する。
【0035】
チャネルをもつマイクロチップの上に、マイクロチャネル(31)を密閉するガラス製のカバー/シーリングがある。シリコン基板(32)も備えられており、この中にチャネル・セグメントがエッチングされている。分離チャンバ中に超音波作動のためのトランスデューサ(33)が設けられている。二次元事前整列用の超音波作動のための第2トランスデューサ(34)も設けられている。この実施形態では、装置中の温度の制御を可能にするペルチェ素子(35)も設けられる。また、アルミ製の顕微鏡搭載台/放熱板(36)も設けられており、ペルチェ素子から余分の熱を吸収する。PT−100熱抵抗温度センサ(37)を使用してフィードバック制御ループの温度を監視する。
【0036】
図4では、アルミニウム板(41)が装置内の熱の一様な分布のために使用されている。入口接続部(42)、シリコン管部品がある。その他の関連部品は
図3に示すとおりであり、また、前述したとおりである。
【0037】
図5は、動作中のシステムの簡略化概要である。入力粒子/細胞懸濁液の圧力チャンバ(51)が設けられている。ここで細胞および/または粒子は、マイクロチップの中に押しやられる。細胞および/または粒子を含まない緩衝溶液のための1つの圧力チャンバ(52)が設けられている。これは、この溶液をマイクロチップの中に押しやる。中央出口(53)および側面出口(54)のための2つの圧力チャンバも設けられている。チャンバ中に4つの容器も用意されている。1つは細胞および本発明者らの粒子懸濁液のためであり(51)、1つは粒子/細胞を含まない緩衝溶液(52)(上述したような任意の溶液でよい)のためであり、1つの容器は中央出口(53)のためであり、1つは側面出口(54)のためである。チャンバ(51)および(52)ならびに2つのチャンバ(53)および(54)からの液体の転送を可能にする多数の管(55、56、57および58)も設けられている。
【0038】
本発明の1つの実施形態では、音響分離システムは、等温状態で作動する。一部の実施形態では、温度変動は、マイクロチャネル音響共振子の音響特性、ひいては分離結果に厳しい影響を及ぼすからである。これは、分離チップ近傍の温度センサからのフィードバックによりコンピュータ制御されるペルチェ素子上に微小流体音響分離チップを実装することにより達成できる。これによりマイクロチップ全体の上の温度が同じレベルに維持される。温度が高すぎる場合、それは、細胞および/または粒子に影響を及ぼすであろう。人体のような哺乳類に後刻送り込まれる細胞が分離される場合に、1つの例がある。細胞が高すぎる温度に曝されると、それらはストレスを受け、死滅することがあり、これらの細胞を必要とする対象者に戻すことが不可能となる。
【0039】
マイクロチャネルのサイズは、分離される細胞および/または粒子のサイズの上限を規定する。分離される細胞および/または粒子は、形状およびサイズにおいて、1μm〜50μm(たとえば、1〜5μm、1〜25μm、5〜50μm、5〜40μm、5〜30μm、5〜25μm、8〜25μm)、または8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20μm、または10〜20μmもしくは10〜15μmとすることができる。細胞および/または粒子の体積は、0.0005〜70×10
−15m
3(たとえば、0.0005〜0.003×10
−15 0.0005〜0.07×10
−15m
3、0.0005〜8×10
−15m
3、0.05〜0.10×10
−15m
3、0.07〜70×10
−15m
3、0.07〜35×10
−15m
3、0.07〜14×10
−15m
3、0.07〜8×10
−15m
3、0.25〜6×10
−15m
3、0.3〜8×10
−15m
3、0.07〜35×10
−15m
3または0.5〜15×10
−15m
3)とすることができる。
【0040】
したがってバクテリア細胞を含む細胞および哺乳類に存在する細胞の大部分が含まれる。これらの細胞は、真核細胞から原核細胞までの任意の種類を含み、その例は、哺乳類細胞とバクテリア細胞の両方を含む。特殊な例は、ガン細胞、血小板、赤血球、白血球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、大食細胞など)、脂肪細胞および大腸菌を含む。
【0041】
前記粒子は、たとえば、相異なる生物学的部分を互いに分離するためにしばしば使用される任意の種類のビーズであり得る。たとえば、そのようなビーズに対して認識要素の抗体を結合し、それにより種々の生物学的部分の懸濁液から生物学的部分を分離することができる。高分子ビーズ、電磁ビーズ、シリカ・ビーズなどのビーズに抗体が結合される場合にその一例があるが、この場合、抗体は、生物学的試料のような試料から抗原を分離するために使用される。
【0042】
実施例3では、二次元事前整列を使用した場合に5および7マイクロメートルのポリスチレン粒子の分離が改善されることが
図8に示すように実証されている。
【0043】
前記チャネルの幅は、50μmから2000μmまで変化できる(たとえば、50〜1000、150〜750μm、300〜750μm)。幅は、システムに適した好ましい波長のサイズおよび種々の細胞および/または粒子を収束する方法により規定される。
【0044】
本発明が利用できる一例は、ガンの領域である。このシステムは、潜在性/遅発性ガンと疾病死亡率の高いリスクに関連する浸潤性ガンの区別に有用となり得る。それは、疾病再発、進行および治療介入に対する応答の検出にも有用となり得る。
【0045】
免疫親和性応用技術(すなわちVeridex−CellSearch(登録商標))を用いてCTCを分離する現在の臨床実務とは異なり、本発明は、血球からのCTCの無標識分離を可能にする。したがって、本発明は、現在発見できないCTCの亜母集団、すなわち、在来の免疫親和性抽出が成功するほど十分に高いレベルのEpCAMを示さない細胞の分離も将来的に可能にするであろう。
【0046】
ガンは、ますます早期段階において連続に診断されている。しかしながら、多くの患者が転移性疾病のために倒れ続けており、また、局部的または遠隔播種を抱える患者にとって、予後診断は、依然として貧弱である。腫瘍は、循環腫瘍細胞(CTC)の手段により新しい場所に広がると考えられている。CTCは、原発巣腫瘍またはその転移先から流れ出し、末梢血中を循環する腫瘍細胞として定義されている。CTCは、転移疾病をもつ上皮ガン患者の血液中で発見されている。また、CTCは、見掛け固形局所腫瘍の患者においても検出されているが、健康人では非常にまれであり、転移疾病の発病以前にさえCTCが血流に流れ出すことを示している。
【0047】
血液中のCTCの存在と臨床的関連の連関は、種々の形態の上皮ガンの患者において実証されている。CTCは、転移疾患の患者における無進行生存と全生存の両方の独立予測因子であることが見出されている。報告された食い違いは、いろいろな種類の上皮ガン相互間の差異に大いに起因するものであろうが、臨床試料における腫瘍細胞の検出に多大な困難をもたらしている末梢血液系におけるCTCの希少性にもよるであろう。10億の血液細胞に1個のCTCという少なさである。
【0048】
細胞のカウントにより、または遺伝子発現プロフィール識別により、転移性ガン病期を監視し、かつ、種々の処置方法の治療効果を評価する末梢血液からのCTCの抽出および分析は、最近出現した。
【0049】
この方法およびシステムを利用できるいろいろな種類のガンの例は、前述した固形腫瘍、前立腺、結腸直腸、乳房、肺臓の腺ガン、NSCLC、卵巣、膵臓、GIST、腎臓のガン、膀胱または腎臓の尿路上皮がん、黒色腫、中皮腫および神経膠種を含む。
【0050】
以下の例は、説明を意図するものであり、本発明をいかなる方法、形態、形状においても、明示的にも暗示的にも限定するものではない。
【実施例】
【0051】
実験設定
マイクロチャネル構造および入口と出口の穴は、厚さ350μmの<100>シリコン・ウエハーにKOHエッチングされ、40mm×3mmのサイズに切断された(32)。ホウケイ酸塩ガラス片(31)(40mm×3mm×1mm)を陽極接合してチャネルを密閉した。入口および出口は、チップの裏側に接着されて外部流体装置の管に接続するシリコン製の管(42)部品を含んでいる。
【0052】
チップ・アセンブリのすべての部品は、相互に接着される。下から上へ相互にサンドイッチされる:放熱板の役目も果たすアルミニウム取付板、ペルチェ素子(35)(15mm×15mm)、シリコン入口/出口管の半径に合わせてドリルされた穴をもつアルミニウム棒(41)(40mm×3mm×2mm)、2つの圧電アクチュエータ、事前整列チャネルの下に配置される1つの約5MHzトランスデューサ(34)(5mm×5mm)、および分離チャネル下に配置される1つの約2MHzトランスデューサ(33)(15mm×5mm)、および音響泳動チップ、
図3および4参照。温度測定のためのPt100熱抵抗素子は、音響泳動チップに平行している2MHz圧電セラミック・アクチュエータに接着される、
図3参照。
【0053】
圧電セラミック・トランスデューサは、信号電力増幅器付きの2つの信号発生器により駆動される。音響共振は、周波数およびトランスデューサの電圧を調節することにより制御することができる。
【0054】
懸濁液中の細胞/微粒子は、50または70μL min
−1の流量で第1事前収束チャネル(15)に入る。yz平面における5MHzの共振により粒子は、2つの狭い帯状に収束される、
図1および2参照。清浄な緩衝媒体が450または490μL/minで入り込み(12)、事前整列粒子をさらに分割して粒子の流れを分離チャネル(16)の壁付近に押しやる。y座標沿いの1.94MHz共振のみ粒子をチャネル垂直中央平面の方向へ収束する。分離チャネルの末端において、流れは、三分流出口(13および14)において分かれる。中央出口(13)体積流量は、150または280μL/minに設定され、結合側面出口(14)の体積流量は250または280μL/minである。
【0055】
実施例1、5μmおよび7μmのポリスチレン・ビーズの分離
試料準備。5μmおよび7μmのポリスチレン・ビーズの混合物(約5mg mL
−1)をPBS中のトリトンX100の溶液(0.01%)に加えた。
【0056】
流れ系の設定。システム中の体積流量は、3つの10mLガラス注射器(1010 TLL,Hamilton Bonaduz AG,Bonaduz,Switzerland)により制御する。これらのうちの2つは、同じ注射器ポンプ(WPI sp260p,World Precision Instruments Inc.,Sarasota,FL,USA)上に実装する。これにより、中央出口と結合側面出口において、それぞれ、体積流量Q3=Q4=250μL min
−1を維持する(Qiの定義については、
図6参照)。これらの2つの注射器の流量が主チャネル中の全体積流量(Q
total=500μL min
−1)を決定する。別の注射器ポンプ(neMESYS,Cetoni GmbH,Germany)に実装される第3の注射器により、中央入口においてチャネルに無細胞緩衝溶液を全流量の90%に相当する体積流量(Q2=450μL min
−1)で注入する。粒子混合物は、大気圧の下で、テスト・チューブの底から側面入口に、3つの注射器により生成される正味流束により決定される全体積流量の10%の流量(Q1=50μL min
−1)で引き込まれる。6ポートと2路からなる2つの試料ループ(V−451,Upchurch Scientific,Oak Harbor,WA,USA)(それぞれ体積100μL)を直列に出口に接続してシステムの作動中に分離性能を調べた。
【0057】
この装置の入口管を約1mLの粒子混合物を含むテスト・チューブに浸す。テスト・チューブ中の沈殿効果を最小化するために、試料処理中に試料をピペットで静かに上下することにより混合する。流れをシステム中で数秒間安定化させてから2つの試料ループを収集モードに切り換えた。ループを各実験の過程において3回サンプルして、側面および中央の出口の粒子内容のそれぞれの分析を可能にした。
【0058】
得られた出口留分の分析。音響泳動の後、中央のそれぞれの側面出口留分中のマイクロビーズをフローサイトメトリ(FACS Canto IIフローサイトメータおよびFACSDivaソフトウェア、BD Biosciences)により数え上げた。2つのビーズ・サイズは、前方/側方散布図において明確に区別することができた。
【0059】
音響泳動粒子分離方法。超音波作動周波数は、第1二次元事前収束チャネルでは約4.79MHzに調節し、第2分離チャネルでは約1.94MHzの基本共振を使用した。第1の実験では、2MHz分離チャネル・トランスデューサ(33)の電圧振幅は、0から11Vppまで変化させたが、5MHz事前トランスデューサ(34)はオフとした。事前整列トランスデューサをオンにした後、分離トランスデューサへの電圧を再び0から11Vppまで変化させた。結果を
図8に示す。マイクロビーズの二次元事前整列が2つのビーズ・サイズ間の識別能力を改善したことは明らかである。
【0060】
実施例2。血液からの腫瘍細胞の抽出
細胞培養および正常血液提供者。ヒト前立腺ガン細胞株DU145をAmerican Type Tissue Collection(ATTC)から入手し、ATTCの推奨に従って培養した。血液は、Lund University Hospital,(Lund,Sweden)の血液バンクの健康なボランティアから入手した。
【0061】
細胞の免疫染色、準備およびスパイキング実験。1mLの試料の処理のために、100μLのアリコートの血液を蛍光色素共役した抗体CD45−APC(1:5に希釈)または対照IgG−APC(両方ともBD Bioscience,San Jose,CAから)とともに室温において20分間培養し、続いて等浸透圧RBC溶解を15分行った。500gの遠心分離5分の後に、溶解した赤血球を含む上澄みを廃棄し、次にFACS緩衝液(PBS、1% BSA、2mM EDTA)による洗浄措置を行った。応用に応じて、細胞沈殿物をFACS緩衝液中に再懸濁する前に、細胞を2%パラホルムアルデヒド(PFA)中において固定したか、または固定しなかった。前立腺ガン細胞をトリプシン/EDTAにより分離し、次にFACS緩衝液により繰り返し洗浄した。次に、蛍光色素共役した抗体EpCAM−PE(1:5に希釈)または対照IgG−PE抗体(両方ともBD Bioscienceから)を含むFACS緩衝液中に細胞を再懸濁し、氷の上で40分間培養した。ガン細胞は、FACS緩衝液中に再懸濁する前に、2% PFAにより固定したか、または固定しなかった。赤血球溶解血液(1:10に希釈)は、PBS中において、2.5×10
5mL
−1DU145細胞によりスパイクされた。
【0062】
流れ系の設定。システム中の体積流量は、3つの10mLガラス注射器(1010 TLL,Hamilton Bonaduz AG,Bonaduz,Switzerland)(そのうちの2つは、同じ注射器ポンプ(WPI sp260p,World Precision Instruments Inc.,Sarasota,FL,USA)上に実装される)により制御され、中央出口と結合側面出口の両方において、それぞれ、Q3=Q4=280μL min
−1の体積流量を維持する(Qiの定義については
図6参照)。これらの2つの注射器の流量により主チャネル中の全体積流量(Q
total=560μL min
−1)が決定される。別の注射器ポンプ(neMESYS,Cetoni GmbH,Germany)上に実装される第3の注射器により中央入口において無細胞緩衝溶液を全流量の7/8に相当する体積流量(Q2=490μL min
−1)でチャネルに注入する。粒子混合物は、大気圧の下で、テスト・チューブの底から側面の入口に3つの注射器により生成される正味流束により決定される全体積流量の1/8の流量(Q1=70μL min
−1)で引き込まれる。6ポートと2路からなる2つの試料ループ(V−451,Upchurch Scientific,Oak Harbor,WA,USA)(それぞれ体積100μL)を直列に出口に接続してシステムの作動中に分離性能を調べた。
【0063】
この装置の入口管を約1mLの粒子混合物を含むテスト・チューブの中に浸す。テスト・チューブ中の沈殿効果を最小化するために、試料処理中に試料をピペットで静かに上下することにより混合する。流れをシステム中で数秒間安定化させてから2つの試料ループを収集モードに切り換えた。ループを各実験の過程において3回サンプルして、側面および中央の出口の粒子内容のそれぞれの分析を可能にした。
【0064】
音響泳動細胞分離方法。超音波作動周波数は、第1の二次元事前収束チャネルにおいては約5.0MHzに調節し、第2の分離チャネルにおいては、約2MHzの基本共振を使用した。
【0065】
取得した出口留分の分析。音響泳動の後、中央のそれぞれの側面出口留分中の蛍光標識された細胞をフローサイトメトリにより数え上げた。WBCは、CD45陽性およびEpCAM陰性として特徴付けられる一方、腫瘍細胞は、EpCAM陽性およびCD45陰性として表記された。蛍光発光は、FACS Canto IIフローサイトメータおよびFACSDivaソフトウェア(BD Biosciences)により定量化された。
【0066】
音響事前整列対非事前整列。細胞の事前整列の効果は、DU145とWBCの細胞混合物について試験した。これらの細胞は、事前整列チャネル中に超音波の存在する状態と存在しない状態のマイクロチップ中で分離チャネル中の電圧の振幅を上昇させつつ処理された。フローサイトメトリを使用して中央出口および側面出口の留分の細胞組成を評価した。細胞の定在波圧力ノードへの事前整列により、細胞は同じ高さおよび速度で分離チャネルに入るようになり、その結果、ガン細胞のWBCからの分離が改善し、より安定化した。
図9参照。
【0067】
実験結果の分析。実験結果を分析するために、中央出口および側面出口におけるガン細胞およびWBCの個数をフローサイトメトリにより測定した。分離性能をプロットするために3つの尺度について計算した:腫瘍細胞捕捉効率 − 両方の出口における全検出ガン細胞個数に対する中央出口におけるガン細胞の個数。WBC枯渇効率 − 両方の出口における全検出WBC個数に対する側面出口におけるWBCの個数。腫瘍細胞捕捉純度 ― 中央出口における全検出細胞個数に対する中央出口におけるガン細胞個数。
【0068】
保持時間の変化。WBCから腫瘍細胞を区別する能力はチップ中の細胞保持時間に強く依存することが示された。保持時間は、一定の圧電アクチュエータ駆動電圧および周波数の下で入口および出口の相対流量比を一定に保ちつつ、チップ中の全流量を変えることにより評価した。
【0069】
所望の応用に応じて、完全なWBC枯渇または全面的なDU145細胞回復(しかし、WBC枯渇の低下という犠牲の下に)が達成できる、
図10。試料処理流量は全流量の1/8に保ったので、40μL min
−1〜100μL min
−1にわたった。
【0070】
上記の試料処理流量は、システムの能力の上限を規定しない。圧電アクチュエータ駆動電圧の振幅を増加することにより、試料スループットは、低い流量について示されたものと同様な分離挙動を維持しつつ、10mL h
−1よりかなり高いレベルまで高めることができる(データは示されていない)。
【0071】
出口流量比の効果。
図10において、試料入口の流量および中央緩衝液入口の流量の比率は、1:7であった。この構成は、2つの出口における細胞の希釈をもたらした。これらの出口において、2つの試料収集ループにおける等しい保持時間を確保するために、流量は1:1の一定比率に維持した。側面対中央出口流量比を7:1に調節することにより、中央出口留分において検出された細胞と入力試料組成間の直接比較を行うことができる。
【0072】
中央出口における水力学的開口部を調整するこの方策は、分離条件を最適化する手段を提供する。出口比を調整することにより、最適濃縮を達成することができる。出口流構成の変更により、WBCの程度を低く維持しつつ高い腫瘍細胞捕捉効率をもたらし、かつ、WBCから少なくとも800倍の腫瘍細胞の濃縮が達成された。中央出口および側面出口の流れの間の低減出口比は(水力学的開口部を縮減すること)、細胞が中央出口に行き着くまでに長い距離を進ませ、それによりWBC排除効率を高めることを意図している。
【0073】
例2は、音響泳動が独立技法またはその他の連続的に結合されるCTC分離技法に接続される技法として、CTCの効率的な分離のための実行可能な方法であることの第1の実験的証拠を記述している。
【0074】
提案するCTC分離方法の重要な特徴は、標識されていない、固定されているかまたは生きている細胞を対象とし得ることである。後者の場合、生細胞回復により、遺伝子のプロファイルおよび多様性の突っ込んだ分析のための分離後培養および抽出されたCTCの増殖への道を開き、ひいては診断および予後予測を改善することができる。