特許第6203734号(P6203734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203734
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】変形性関節疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/495 20060101AFI20170914BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 31/23 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   A61K31/495
   A61P19/02
   A61P43/00 121
   A61K31/405
   A61K31/20
   A61K45/00
   A61K9/08
   A61K31/23
   A61P29/00
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-534831(P2014-534831)
(86)(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公表番号】特表2014-531471(P2014-531471A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】US2012059455
(87)【国際公開番号】WO2013055734
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年10月5日
(31)【優先権主張番号】61/561,221
(32)【優先日】2011年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/545,474
(32)【優先日】2011年10月10日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514022280
【氏名又は名称】アンピオ ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】バー−オー、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクラー、ジェームス ブイ.
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−500747(JP,A)
【文献】 特表2004−518614(JP,A)
【文献】 Crit Care Med,2006年,Vol.34, No.6,p.1707-1712
【文献】 Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology,1998年,Vol.5, No.4,p.430-437
【文献】 Journal of Leukocyte Biology,1994年,Vol.56,p.559-564
【文献】 医薬のあゆみ,2004年,Vol.211, No.4,p.303-306
【文献】 メルクマニュアル第17版,1999年,第452−456頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
A61K9/08
A61K45/00
A61P1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形性関節疾患を治療するための医薬組成物において、前記医薬組成物は動物に投与するための有効量のDA−DKPを含有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記変形性関節疾患が変形性関節炎である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物が、6ヶ月毎に1回以下、5ヶ月毎に1回以下、4ヶ月毎に1回以下、3ヶ月毎に1回以下、又は2ヶ月毎に1回以下の頻度で投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物は、局所投与、局部投与、及び注射からなる群から選択される投与経路によって投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
注射による投与が関節内注射によるものである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記関節内注射により投与される組成物は約50μM〜約350μMのDA−DKPの濃度を有する組成物である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物はN−アセチル−トリプトファン(NAT)、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを含有する組成物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物は、NAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを約4mM〜約20mMの間の一定の濃度にて含有する組成物である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
変形性関節疾患を治療するための医薬組成物の製造方法において、前記医薬組成物は動物に投与するための有効量のDA−DKPを含有し、前記DA−DKPは、ヒト血清アルブミン組成物の溶液からアルブミンを除去する工程によって調製された組成物中にある、医薬組成物の製造方法。
【請求項10】
前記アルブミンを除去する工程は、限外濾過、ショ糖勾配遠心分離、クロマトグラフィー、塩析沈殿、及び超音波処理からなる群から選択される分離法によって、前記ヒト血清アルブミン組成物を処理することを含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルブミンを除去する工程は、前記アルブミンを保持する分子量カットオフ値を有する限外濾過膜上で前記ヒト血清アルブミン組成物を通過させることを含んでなり、得られた濾液がDA−DKPを含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記限外濾過膜が、50kDa未満、40kDa未満、30kDa未満、20kDa未満、10kDa未満、5kDa未満又は3kDa未満の分子量カットオフ値を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物は、NAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを更に含有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、NAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを約4mM〜約20mMの間の一定の濃度にて含有する組成物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬組成物が、鎮痛剤、抗炎症薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2の薬剤を更に含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形性関節疾患を治療する方法に関する。本発明の方法は、アスパラギン酸及びアラニンのアミノ酸側鎖を有するジケトピペラジン(DA−DKP)を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。本発明はまた、DA−DKPを含む医薬製品も提供する。
【背景技術】
【0002】
変形性関節炎は、アメリカ合衆国の2,500万人から3,500万人の人々を冒す、関節炎のもっとも一般的な形態である。変形性関節炎の慢性疼痛及び機能障害は、最初は関節軟骨及び骨における炎症性反応によって起こり、これが時間とともに徐々に悪化する。膝の症候性変形性関節炎は、60歳以上の年齢の人々の10〜13%で発症する。変形性膝関節炎は、それだけで、65歳以上の人々のいずれのその他の病状を超えて、補助を必要とする歩行又は階段昇降などの運動機能喪失のリスクを増加させる。
【0003】
膝の変形性関節炎についての現行の薬剤治療は、鎮痛剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)及び関節内ステロイド注射に限定され、これら全てはその副作用のために重要な制限条件を有する。これら医学的治療に関わらず、慢性変形性膝関節炎は、関節全置換術を必要とする進行性機能障害を頻繁に起こす。高齢者及び肥満の集合に起因する膝の変形性関節炎の有症率の増加は、より広範囲にわたる外科治療を遅延させかつ潜在的に排除する安全かつ有効な局所的膝治療への増大する臨床的必要性を示唆している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、治療を必要とする動物に、DA−DKPを含む医薬組成物の有効量を投与することによる、変形性関節疾患を治療する方法に関する。一態様では、変形性関節疾患は、変形性関節炎である。
【0005】
別の態様では、組成物は、6ヶ月毎に1回以下、5ヶ月毎に1回以下、4ヶ月毎に1回以下、3ヶ月毎に1回以下、又は2ヶ月毎に1回以下の頻度で投与される。
更に別の態様では、組成物は、様々な投与経路によって投与され得る。例えば、投与経路は、局所投与、局部投与、又は注射によるものであり得る。一態様では、注射による投与は、関節内注射によるものである。更に別の態様では、関節内注射によって投与される組成物は、約50μM〜約350μMのDA−DKPの濃度を有する組成物である。
【0006】
更に別の態様では、組成物は、N−アセチル−トリプトファン(NAT)、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを更に含有する。更に別の態様では、組成物中のNAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせの濃度は、約4mM〜約20mMであってもよい。
【0007】
方法の更に他の態様では、DA−DKPは、ヒト血清アルブミン組成物の溶液からアルブミンを除去することによって調製された組成物中にある。例えば、除去の工程は、ヒト血清アルブミン組成物を分離法によって処理することによるものであり得る。このような分離法としては、限外濾過、ショ糖勾配遠心分離、クロマトグラフィー、塩析沈殿、及び超音波処理を挙げることができる。これに加えて、除去の工程は、ヒト血清アルブミン組成物を、アルブミンを保持する分子量カットオフ値を有する限外濾過膜を通過させ、得られた濾過液がDA−DKPを含有することによるものであり得る。一態様では、限外濾過膜は、50kDa未満の分子量カットオフ値を有する。更に別の態様では、限外濾過膜は
、40kDa未満、30kDa未満、20kDa未満、10kDa未満、5kDa未満又は3kDa未満の分子量カットオフ値を有する。更に別の態様では、この組成物は、NAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを更に含む。更に別の態様では、組成物中のNAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせの濃度は、約4mM〜約20mMであってもよい。
【0008】
別の態様では、本発明の方法は、第2の薬剤を投与することを更に含むことができる。例えば、第2の薬剤は、鎮痛剤、抗炎症薬、又はこれらの組み合わせであり得る。
本発明の別の実施形態は、注射による投与用に製剤化されたDA−DKP含有組成物を含む医薬製品である。一態様では、この製品は、関節内注射による投与用に製剤化されている。別の態様では、DA−DKPは、ヒト血清アルブミン組成物の溶液からアルブミンを除去することによって調製される。一態様では、アルブミンを除去する工程は、ヒト血清アルブミン組成物を分離法によって処理することによるものであり得る。例えば、分離法は、限外濾過、ショ糖勾配遠心分離、クロマトグラフィー、塩析沈殿、及び超音波処理であり得る。これに加えて、除去の工程は、ヒト血清アルブミン組成物を、アルブミンを保持する分子量カットオフ値を有する限外濾過膜を通過させ、得られた濾過液がDA−DKPを含有することによるものであり得る。一態様では、限外濾過膜は、50kDa未満の分子量カットオフ値を有する。更に別の態様では、限外濾過膜は、40kDa未満、30kDa未満、20kDa未満、10kDa未満、5kDa未満又は3kDa未満の分子量カットオフ値を有する。
【0009】
更に別の態様では、関節内注射によって投与される医薬製品のDA−DKPは、約50μM〜約350μMのDA−DKPの濃度を有する組成物である。
更に別の態様では、製品は、NAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを更に含有するDA−DKP組成物を含有する。更に別の態様では、製品中のNAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせの濃度は、約4mM〜約20mMであってもよい。
【0010】
更に別の態様では、医薬製品は、薬学的に許容し得る担体を更に含有する。
本発明の別の実施形態は、医薬製品を含むキットに関する。一態様では、製品は、注射による投与用に製剤化されたDA−DKP含有組成物を含む。更に別の態様では、キット内のDA−DKPは、ヒト血清アルブミン組成物の溶液からアルブミンを除去することによって調製される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ステロイド(ベタメタゾン)/リドカイン懸濁液と組み合されたアンピオン(Ampion(商標))(<5000MWのフラクション)の、片方の膝における単回10ml注射で処置された被験者、又は、ステロイド(ベタメタゾン)/リドカイン懸濁液と組み合された生理食塩水プラセボで注射された被験者についての痛みの数値評価スケール(NRS)における平均変化を示すグラフ(スコア化は、1日目の投与後6時間で、2日目の投与後24時間で、4日目の投与後72時間で実行した)。
図2図1に記載されるような痛みのNRSにおける平均変化を示し、反復測定分散分析(ANOVA)を含むグラフ。
図3A-1】図1に記載される治療に関する24時間でのWOMAC(ウェスタンオンタリオ・マクマスター大学変形性関節症指数3.1)痛みサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図3A-2】図1に記載される治療に関する24時間でのWOMAC(ウェスタンオンタリオ・マクマスター大学変形性関節症指数3.1)痛みサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図3B-1】図1に記載される治療に関する72時間でのWOMACの痛みのサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図3B-2】図1に記載される治療に関する72時間でのWOMACの痛みのサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図4A-1】図1に記載される治療に関する24時間でのWOMACの硬直のサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図4A-2】図1に記載される治療に関する24時間でのWOMACの硬直のサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図4B-1】図1に記載される治療に関する72時間でのWOMACの硬直のサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図4B-2】図1に記載される治療に関する72時間でのWOMACの硬直のサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図5A-1】図1に記載される治療に関する24時間でのWOMACの機能のサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図5A-2】図1に記載される治療に関する24時間でのWOMACの機能のサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図5B-1】図1に記載される治療に関する72時間でのWOMACの機能のサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図5B-2】図1に記載される治療に関する72時間でのWOMACの機能のサブスコアにおける絶対差を示すグラフ。
図6】潜在的ステロイド経時変化を示すグラフ。
図7図1に記載される治療に関する対象外来患者全体にわたるベースラインからの平均変化を示す(「LS」は最小二乗を表す)グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、変形性関節疾患を治療する方法を提供する。治療は、アスパルチル−アラニルジケトピペラジン(DA−DKP)を含む医薬組成物の有効量をその必要性を有する個体に投与することを含む。DA−DKPは、多くの炎症誘発性サイトカイン、ケモカインとシグナル伝達分子の転写レベルにおける阻害、T−細胞及び単球の移動及び接着の阻害、G結合タンパク質受容体レベルにおける活性並びに血小板活性化因子によって誘発される炎症の阻害を含める多くの抗炎症性及び免疫調整効果を有する。以下により詳細に記載されるように、変形性関節疾患に及ぼすDA−DKPの効果は、予想外に長期持続性であることが見出され、いくつかの研究では、ステロイドの使用に匹敵する時間で増加することを見出した。
【0013】
本発明はまた、DA−DKP組成物を含む医薬製品も提供する。製品のDA−DKPは、ヒト血清アルブミンの溶液からアルブミンを除去することによって調製され得る。
本発明はまた、注射による投与用に製剤化されたDA−DKP組成物を含むキットも提供する。
【0014】
変形性関節疾患は、関節を覆う関節軟骨の漸進的変質である。変形性関節疾患(変形性関節炎)は、荷重関節の悲感染性進行性障害である。正常な関節軟骨は、滑らかで、白色で、かつ半透明である。これは、コラーゲン、タンパク質多糖類、及び水から形成されるスポンジ様マトリクス内に埋め込まれた軟骨の細胞(軟骨細胞)から構成される。初期の原発性関節炎では、軟骨は、表面の軟化かつ粗化した局在化領域を伴い、黄色く不透明になる。変質が進行するとともに、軟領域は亀裂を生じ摩耗するようになり、軟骨の下の骨を露出させる。次いで、いずれかの残りの軟骨がすり減り始めると同時に、骨は再構築し始め、密度を増加させる。最終的に、軟骨に覆われた骨棘(新しい骨の棘)が関節のエッジにおいて形成する。機械的摩耗が増加するにつれて、軟骨は修復が必要となる。軟骨細胞は、スポンジ様マトリクスを十分に形成することができず、したがって、損傷した軟骨はそれ自体を修復することができない。軟骨は治癒を促進するための血液供給を有さない
。変形性関節疾患の大部分は、関節内の機械的不安定性又は老化変化の結果である。これは、高齢者変形性関節炎を含み、若年層では、損傷、打撲、異常関節配置(すなわち、股関節形成不全)、若しくは、例えば、前膝十字靱帯断裂、膝蓋骨脱臼、又は離断性軟骨炎からの機械的摩耗の結果であり得る。変形性関節疾患は、限定されないが、膝、股関節、肩、手及び脊椎を含める身体内のいかなる関節においても発生する可能性がある。
【0015】
変形性関節疾患のための通常の薬物療法としては、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、麻酔薬、及びコルチコステロイドが挙げられる。
本明細書で使用するとき、「治療する」とは、疾患の症状、持続時間又は重症度を低減すること(完全に又は部分的に)を意味する。
【0016】
本発明のDA−DKPを含む医薬組成物は、治療を必要としている動物に投与される。好ましくは、動物は、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウマ又はヒトなどの哺乳動物である。有効な投与量は、疾患又は状態の重症度、投与の経路(複数可)、治療の持続時間、動物に投与される任意のその他の薬剤の独自性、動物の年齢、寸法及び種、並びに医療分野及び獣医学分野で既知の類似因子で異なってもよい。
【0017】
本発明の治療は、変形性関節疾患の症状に及ぼす長期にわたる効果を提供するために、本発明の一態様は、DA−DKPを含む組成物が、従来の療法で予測されるものよりも長い時間間隔で動物に投与され得ることである。例えば、本発明の組成物は、6ヶ月毎に1回以下、5ヶ月毎に1回以下、4ヶ月毎に1回以下、3ヶ月毎に1回以下、又は2ヶ月毎に1回以下、毎月1回以下、4週間毎に1回以下、3週間毎に1回以下、2週間毎に1回以下、又は毎週1回以下の頻度で投与される。
【0018】
DA−DKPを含む本発明の組成物は、局所的、非経口的(例えば、注射、関節内注射、静脈内、骨髄内、腹腔内、皮下、又は筋肉内)、経皮的、及び局部的を含める投与の適切な経路によって、治療用に動物被験体に投与され得る。投与の好ましい経路は、関節内注射である。
【0019】
本発明の組成物は、約10μM、約20μM、約30μM、約40μM、約50μM、約60μM、約70μM、約80μM、約90μM、約100μM、約110μM、約120μM、約130μM、約140μM、約150μM、約160μM、約170μM、約180μM、約190μM、約200μM、約210μM、約220μM、約230μM、約240μM、約250μM、約260μM、約270μM、約280μM、約290μM、約300μM、約310μM、約320μM、約330μM、約340μM、約350μM、約360μM、約370μM、約380μM、約390μM、又は約400μMの下位エンドポイントの範囲のDA−DKP濃度を有する薬剤液であり得る。本発明の組成物は、約600μM、約580μM、約570μM、約560μM、約550μM、約540μM、約530μM、約520μM、約510μM、約500μM、約490μM、約480μM、約470μM、約460μM、約450μM、約440μM、約430μM、約420μM、約410μM、約400μM、約390μM、約380μM、約370μM、約360μM、約350μM、約340μM、約330μM、約320μM、約310μM、約300μM、約290μM、約280μM、約270μM、約260μM、約250μM、約240μM、約230μM、約220μM、約210μM、又は約200μMの上位エンドポイントの範囲のDA−DKP濃度を有する薬剤液であり得る。
【0020】
変形性関節疾患又は状態を治療するための本発明の組成物中のDA−DKPの有効量は、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約
75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、約100μg、約110μg、約120μg、約130μg、約140μg、約150μg、約160μg、約170μg、約180μg、約190μg、約200μg、約210μg、約220μg、約230μg、約240μg、約250μg、約260μg、約270μg、約280μg、約290μg、約300μg、約310μg、約320μg、約330μg、約340μg、約350μg、約360μg、約370μg、約380μg、約390μg、約400μg、約425μg、約450μg、約475μg、又は約500μgの下位エンドポイントの範囲であり得る。これに加えて、変形性関節疾患又は状態を治療するための本発明の組成物中のDA−DKPの有効量は、約500μg、約490μg、約480μg、約470μg、約460μg、約450μg、約440μg、約430μg、約420μg、約410μg、約400μg、約390μg、約380μg、約370μg、約360μg、約350μg、約340μg、約330μg、約320μg、約310μg、約300μg、約290μg、約280μg、約270μg、約260μg、約250μg、約240μg、約230μg、約220μg、約210μg、約200μg、約190μg、約180μg、約170μg、約160μg、約150μg、約140μg、約130μg、約120μg、約110μg、約100μg、約90μg、約80μg、約70μg、約60μg、約50μg、約40μg、約30μg、又は約20μgの上位エンドポイントの範囲であり得る。
【0021】
本発明の組成物の局部又は経皮投与のための投与形態としては、粉剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ剤、及び滴剤が挙げられる。活性成分は、無菌条件下で、薬学的に許容し得る担体と、及び任意の緩衝液と、又は必要とされ得る推進剤と混合され得る。
【0022】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤及びゲル剤は、活性成分に加えて、動物性及び植物性油脂、オイル、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカントゴム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、珪酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物などの賦形剤を含有してもよい。
【0023】
粉剤及びスプレー剤は、活性成分に加えて、乳糖、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム及びポリアミド粉末又はこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる。スプレー剤は更に、クロロフルオロ炭化水素のような一般的な推進剤、又は、ブタン及びプロパンなどの揮発性の置換されていない炭化水素を含むことができる。
【0024】
経皮パッチ剤は、本発明の化合物の身体への制御送達を提供する付加的な利点を有する。このような投与形態は、本発明の1つ以上の化合物を、エラストマーマトリクス材料などの適切な媒体中に溶解させ、分散させ又は別の方法で組み込むことによって作製され得る。吸収増強剤もまた、皮膚を横切る化合物の流れを増加させるよう使用され得る。このような流れの速度は、速度制御膜を提供するか、又は化合物をポリマーマトリクス又はゲル内に分散させることのいずれかによって制御され得る。
【0025】
非経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、酸化防止剤、緩衝液、医薬組成物を意図されている受容者の血液と等張とする溶質を含むことができる水性及び非水性無菌注射液、並びに懸濁剤及び増粘剤を含むことができる、使用の直前に無菌の注射可能な溶液又は分散液に再構成され得る、1つ以上の薬学的許容可能な無菌で等張の水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョンを含む。
【0026】
本発明の医薬組成物中で使用され得る好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等など)、及びこれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物性油、並びにオレイン酸エ
チルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の管理によって、並びに界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。
【0027】
これら組成物はまた、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含有してもよい。糖、塩化ナトリウム等などの等張剤を組成物中に含有することも望ましい。これに加えて、注射可能な薬剤形態の長期の吸収が、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の封入によってもたらされ得る。
【0028】
場合によっては、薬剤の効果を延長させるために、皮下又は筋肉内注射からの薬剤の吸収の速度を落とすことが望ましい。これは、難水溶性を有する結晶又はアモルファス材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。薬剤の吸収の速度は、この時、その溶解の速度に依存し、溶解の速度は、今度は結晶サイズ及び結晶形に依存することができる。あるいは、非経口投与された薬剤の遅延された吸収は、薬剤を油性ビヒクル中に溶解又は懸濁させることによって達成される。
【0029】
注射可能なデポ剤の形態は、ポリアクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で薬剤のマイクロエンカプセルマトリクスを形成することによって得られる。薬剤とポリマーの比率、使用される特定のポリマーの性質に依存して、薬剤放出の速度が調節され得る。生分解性ポリマーのその他の例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。体組織に適合性のリポソーム又はマイクロエマルジョンに薬剤を封入することによって注入可能なデポ剤を調製することも可能である。注射可能な材料はまた、例えば、細菌保持フィルターを通しての濾過によって、滅菌され得る。
【0030】
この製剤は、単位用量又は複数用量を密封する容器、例えばアンプル及びバイアルに入れて供給することができ、また、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保管することもできる。即席注射用溶液及び懸濁液を、上記記載の種類の無菌の粉剤、顆粒剤及び錠剤から調製することができる。
【0031】
本発明の医薬製品を含むキットも提供される。このキットは、注射による投与用に製剤化されたDA−DKP組成物を含むことができる。DA−DKPは、ヒトアルブミン組成物の溶液からアルブミンを除去することによるなど、本明細書に記載される通りに調製され得る。キットは、単位用量又は複数用量を密封する容器、例えばアンプル及びバイアルを含んでもよく、使用の直前に無菌液体担体、例えば注射用水の添加のみが必要とされる凍結乾燥条件で保管されてもよい。キットはまた、内容物が直接的使用又は注射用に準備ができているような条件下で保管されてもよい。
【0032】
本発明の化合物は、単独で投与されることが可能であるが、医薬品製剤(組成物)として化合物を投与することが好ましい。本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容し得る担体との混合物で、必要に応じて1つ以上のその他の化合物、薬剤又はその他の材料との混合物で、活性成分として本発明の一つ又は複数の化合物を含む。各担体は、製剤のその他の成分と適合性及び動物に対して有害ではないという意味において、「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体は、当該技術分野で周知である。選択される投与の経路に無関係に、本発明の化合物は、当業者に既知の従来の方法によって薬学的に許容可能な投与形態に製剤化される。例えば、レミントンの薬剤科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)を参照されたい。
【0033】
本発明の組成物は、N−アセチル−トリプトファン(NAT)、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを更に含んでもよい。好ましくは、組成物は、NATを含む。NAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを有する本発明の組成物は
、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、又は約20mMの下位エンドポイントの濃度範囲のNAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを有する医薬組成物であり得る。これに加えて、NAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを有する本発明の組成物は、約40mM、約39mM、約38mM、約37mM、約36mM、約35mM、約34mM、約33mM、約32mM、約31mM、約30mM、約29mM、約28mM、約27mM、約26mM、約25mM、約24mM、約23mM、約22mM、又は約21mMの上位エンドポイントの濃度範囲のNAT、カプリル酸、カプリレート又はこれらの組み合わせを有する医薬組成物であり得る。好ましくは、この濃度範囲は、約4mM〜約20mMである。
【0034】
更に、本発明の組成物はまた、鎮痛剤(リドカイン又はパラセタモール等)、抗炎症薬(ベタメタゾン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン)、及び/又は他の好適な薬剤などの第2の薬剤を含んでもよい。
【0035】
DA−DKPなどのジケトピペラジンの製造法は、当該技術分野で周知であり、これら方法は、本発明のジケトピペラジンを合成するために使用され得る。例えば、米国特許第4,694,081号明細書、同第5,817,751号明細書、同第5,990,112号明細書、同第5,932,579号明細書及び同第6,555,543号明細書、米国特許出願公開第2004/0024180号明細書、PCT出願第WO96/00391号明細書及び同第WO97/48685号明細書、並びにスミス(Smith)ら著、バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorg.Med.Chem.Letters)、第8巻、2369〜2374頁(これらの全開示は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0036】
例えば、DA−DKPなどのジケトピペラジンは、まず初めにジペプチドを合成することにより調製され得る。ジペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸又はD−及びL−アミノ酸の組み合わせを用いる当該技術分野で周知の方法によって合成され得る。好ましい方法は、固相ペプチド合成法である。当然ながら、ジペプチドはまた、DMIシンセシス・リミテッド(DMI Synthesis Ltd.、英国カーディフ)(特注合成)、シグマアルドリッチコーポレーション、米国ミズーリ州セントルイス(主として特注合成)、フェニックス・ファーマシューティカルス社(Phonix Pharmaceuticals,Inc.、米国カリフォルニア州ベルモント)(特注合成)、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)(特注合成)、及びアドバンスト・ケムテック(Advanced ChemTech、米国ケンタッキー州ルイスビル)を含める多くの供給元から購入可能である。
【0037】
一旦ジペプチドが合成又は購入されると、これは環化され、ジケトピペラジンを形成する。これは、様々な技術によって達成され得る。例えば、米国特許出願公開第2004/0024180号明細書は、ジペプチドの環化の方法を記載している。簡単に言うと、蒸留によって水を除去すると同時に、ジペプチドを有機溶媒中で加熱する。好ましくは、有機溶媒は、アセトニトリル、アリルアルコール、ベンゼン、ベンジルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、酢酸ブチルエステル、四塩化炭素、クロロベンゼンクロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルアセタール、ジメチルアセタール、酢酸エチルエステル、ヘプタン、メチルイソブチルケトン、3−ペンタノール、トルエン及びキシレンなどの水との低沸点の共沸混合物である。温度は、環化が起こる反応速度及び使用される共沸剤のタイプに応じる。反応は、好適には50〜200℃、より好適には80〜150℃で実行される。そこで環化が起こるpH範囲は当
業者によって容易に決定され得る。pH範囲は、有利には2〜9、好適には3〜7であろう。
【0038】
ジペプチドのアミノ酸の一方又は双方がその側鎖上にカルボキシル基(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)を有する場合、又はカルボキシル基を有するよう誘導される場合、ジペプチドは、米国特許第6,555,543号明細書に記載されるように環化されることが好ましい。簡単に言うと、ジペプチドを、側鎖カルボキシルが保護されたままの状態で、中性条件下で加熱する。典型的には、ジペプチドを、約80℃〜約180℃で、好ましくは約120℃で加熱するであろう。溶媒は、中性溶媒であるだろう。例えば、溶媒は、アルコール(ブタノール、メタノール、エタノール、及び高級アルコールなどであるが、フェノールではない)及び共沸共溶媒(トルエン、ベンゼン、又はキシレンなど)を含んでもよい。好ましくは、アルコールは、ブタン−2−オールであり、共沸共溶媒は、トルエンである。加熱は、反応が完了するまで持続され、このような時間は経験的に決定され得る。典型的には、ジペプチドは、約8〜24時間、好ましくは約18時間にわたってこれを還流することによって環化されるであろう。最終的に、保護基がジケトピペラジンから除去される。そうする際には、最終化合物のキラリティーを維持するために、強酸(硫酸又は塩酸などの鉱酸)、強塩基(水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムなどのアルカリ性塩基)、及び強還元剤(例えば、水素化アルミニウムリチウム)の使用が回避されるべきである。
【0039】
固相樹脂上で製造されたジペプチドは、一工程で環化され、樹脂から放出され得る。例えば、米国特許第5,817,751号明細書を参照されたい。例えば、付着されたN−アルキル化ジペプチドを有する樹脂は、酢酸(例えば1%)又はトリエチルアミン(例えば、4%)の存在下で、トルエン又はトルエン/エタノール中に懸濁される。典型的には、塩基性環化条件が、それらのより迅速な環化時間のために好ましい。
【0040】
ジペプチドを環化するその他の方法並びにジケトピペラジンを製造するその他の方法は、当該技術分野で既知であり、本発明の実施で有用なジケトピペラジンの調製で使用され得る。例えば、上記で列挙したそれら参考文献を参照されたい。これに加えて、本発明において使用するために好適な多くのジケトピペラジンが、タンパク質及びペプチドから以下に記載の通りに製造され得る。更に、本発明の実施において使用するためのジケトピペラジンは、DMIシンセシス・リミテッド(DMI Synthesis Ltd.)、カーディフ、英国(特注合成)からの市販物から得ることができる。
【0041】
本発明のDA−DKP組成物及び/又は医薬製品は、限界濾過、クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、セントリコン(Centricon)濾過)、親和性クロマトグラフィー(例えば、所望のジケトピペラジン(複数可)に向けられる一つ又は複数の抗体、若しくは切頭タンパク質又はペプチドに向けられる一つ又は複数の抗体がそれに付着されたビーズを有するカラムを使用するもの)、陰イオン交換又は陽イオン交換)、ショ糖勾配遠心分離、クロマトグラフィー、塩析沈殿、又は超音波処理(これらは、溶液中の一部又は全てのアルブミンを除去するであろう)などの周知の方法によって、ヒト血清アルブミンなどのアルブミンを含む市販の医薬組成物からの溶液を含める、DA−DKPを含有する溶液から調製され得る。得られたDA−DKP含有組成物及び/又は医薬製品は、上記記載のような医薬組成物で使用されかつこれらに組み込まれ得る。
【0042】
限外濾過分離法を使用して、ヒト血清アルブミン組成物は、DA−DKPが得られる濾液又はフラクションに移ると同時にアルブミンを保持する分子量カットオフ値を有する限外濾過膜上を通り過ぎることができる。この濾液は、約50kDa未満、約40kDa未満、約30kDa未満、約20kDa未満、約10kDa未満、約5kDa未満、約3kDa未満の分子量を有する成分を含むことができる。好ましくは、濾液は、約5Da未満
の分子量(「<5000MW」とも示される)を有する成分を含む。この<5000MWのフラクション又は濾液は、ジペプチドのアスパラギン酸塩−アラニンがアルブミンから切断され、その後、ジケトピペラジンへと環化された後に形成されるDA−DKPを含有する。
【0043】
本発明のDA−DKPの生理学的に許容し得る塩もまた、本発明の実施において使用されてもよい。生理学的に許容し得る塩としては、無機酸(塩酸、臭素酸、硫酸、リン酸、硝酸等など)、有機酸(酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、アスコルビン酸等など)若しくは塩基(N,N−ジベンジルエチレンジアミン、D−グルコサミン、又はエチレンジアミンから誘導された、薬学的に許容し得る金属カチオン又は有機カチオンの水酸化物、炭酸塩又は重炭酸塩など)から誘導された塩などの通常の非毒性塩が挙げられる。この塩は、例えば、化合物の遊離塩基形態を酸で中和することによって、通常の様式で調製される。
【0044】
本発明の追加的目的、利点及び新規な特徴は、以下の非限定的実施例を考慮することによって、当業者に明らかになるであろう。以下の実施例の結果は、例示の目的で提供され、本発明の範囲を限定するよう意図していない。
【0045】
(実施例)
(実施例1)
膝の関節機能を改善し、変形性関節炎の痛みを低減するための、ヒト血清アルブミンの<5000MWフラクション(本明細書では「Ampion(商標)」とも呼ばれる)の膝関節内注射の効果を検討するために、治験を実施した。60人の評価可能な被験者を伴う無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群試験を、<5000MWフラクションが試験膝関節に注射される場合の、<5000MWフラクションの治療効果及び安全性を推定するために適切なデザインとして選択した。
【0046】
(第1の目的)
ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクションと比較され、又はリドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた生理食塩水プラセボと比較された、リドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクションを含有する単回10mL関節内注射の変形性膝関節炎を有する被験者における痛みの低減を検討するためのものである。
【0047】
(第2の目的)
ウェスタンオンタリオ・マクマスター大学変形性関節症(WOMAC)指数によって評価されるような(ベラミー(Bellamy)ら著、「WOMACの有効性研究:股関節又は膝の変形性関節炎を有する患者における抗リウマチ薬剤療法に対する臨床的に重要な患者関連の転帰を測定するための健康状態機器」、ジャーナル・オブ・リューマトロジー(J Rheumatology)、1988年、第15巻、1833−1840頁を参照)、ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクションと比較され、又はリドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた生理食塩水プラセボと比較された、リドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクションを含有する単回関節内注射の変形性膝関節炎を有する被験者における膝機能及び痛みを検討するためのものである。
【0048】
ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクションと比較され、又はリドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた生理食塩水プラセボと比較された、リドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクションを含有する単回関節
内注射後に、変形性膝関節炎を有する被験者におけるレスキュー投薬の必要性を検討するためのものである。
【0049】
ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクションと比較され、又はリドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた生理食塩水プラセボと比較された、リドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクションを含有する単回関節内注射後に、変形性膝関節炎を有する被験者における関節可動域並びに痛み及び炎症に起因する試験膝関節の制限された可動域に及ぼす効果を検討するためのものである。
【0050】
試験集合内で報告された有害事象によって評価されるような治療間の安全性及び忍容性を比較するためである。
(プロトコールの説明)
本治験は、スクリーニングの6ヶ月前にわたる、症候性原発性変形性膝関節炎を有する40歳以上の男性又は女性被験者における<5000MWフラクションの膝関節内注射の効果を評価するようデザインされた、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群試験であった。試験は、3週間のスクリーニング期間及び4日間の試験参加期間からなった。各被験者を、以下に示すものの1つの単回10mL膝注射を受けるよう無作為化した。
【0051】
リドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクション、
ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクション、
リドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた生理食塩水プラセボ。
【0052】
被験者は、治験担当者による満足し得る投与後審査にしたがって、病院を離れることが許された。フォローアップ評価を、注射後6時間、24時間(2日目)及び72時間(4日目)に実施した。これら評価は、治験担当者の自由選択で、病院又は外部で(例えば、往診)行った。
【0053】
(治験参加の持続期間)
スクリーニング:−21日目〜−1日目の間。
治療期間:1日目に投与し、2日目及び4日目に臨床経過観察検診を含める、72時間位渡臨床経過観察を伴う、試験膝関節における単回注射。
【0054】
治験参加の総持続期間は、最大で21日のスクリーニング間隔で、各被験者について約72時間であった。
(治験)
各被験者は、以下の投与のうちの1つの片膝における単回10mL注射を受けた。
【0055】
リドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクション、
ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた<5000MWフラクション、
リドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた生理食塩水プラセボ。
【0056】
(治験対象集合)
治験対象集合は、ケルグレン・ローレンスの分類II又はIIIによるスクリーニング前、6ヶ月を超えて症候性原発性変形性膝関節炎を有する、男性又は女性の、40〜85歳の年齢の完全歩行可能な60人の患者であった。
【0057】
(治験薬の説明)
ゴム製ストッパ付き保管用バイアル中の無菌の2mLの<5000MWフラクションをサイファルマ社(Sypharma Pty Ltd.オーストラリア ビクトリア州ダンデノン)によって調製した。<5000MWフラクションを、注射前に盲検的方法で、
リドカイン/ベタメタゾン懸濁液又はベタメタゾン懸濁液のいずれかと組み合わせた。リドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた生理食塩水プラセボを、第3の治療として投与した。表1を参照されたい。
【0058】
表1:調査製品の成分
【0059】
【表1】
リドカイン/ベタメタゾン懸濁液と組み合わせた又はベタメタゾン懸濁液と組み合わせた治験薬の単回10mL注射を、18〜21ゲージの針を用いて、無菌製剤条件下で膝関節空間に注射した。
【0060】
治験薬を、アクセスを制限された保護区域内で、室温(15℃〜25℃)で保管した。
(治験薬投与に対する無作為化及び割り付け)
投与前の適格性の確認後に、被験者を、無作為化のスケジュールに従って、順次番号が付けられた治療に割り付けた。各被験者を、3つの治療、すなわち活性<5000MWフラクション(リドカイン/ベタメタゾン又はベタメタゾン懸濁液のいずれかと組み合わせた)若しくはリドカイン/ベタメタゾンと組み合わせた生理食塩水プラセボのうちの1つに割り当てた。治療の割り付けを、ブロック無作為化アルゴリズムを用いて実行した。
【0061】
両膝が変形性関節炎である場合は、スクリーニング時に治験担当者が、治験についての要望を最適に満たす膝である、試験膝として片膝を選択した。用量投与時に、試験膝は、無作為化スケジュールに従って、治験薬を受けた。もう一方の膝は、通常の標準的治療を受けた。
【0062】
(有効性の評価)
試験の膝関節における運動の範囲を、投与前、投与後24時間及び72時間に、痛み及び炎症に起因する運動の制限された範囲を、治験担当者又は被験者の名義人が検査し、全般的痛みの評価(痛みの数値評価スケール)を投与前、投与後6時間、24時間及び72時間で実施し、ウェスタンオンタリオ・マクマスター大学変形性関節症(WOMAC)指数3.1を投与前、投与後24時間及び72時間で、被験者に行わせた。
【0063】
試験の膝関節における痛みの数値評価スケール(NRS)を、投与前、1日目の投与後6時間、2日目の投与後24時間及び4日目の投与後72時間に行った。痛みのスケール及びWOMACが同時に行う場合は、痛みの数値評価スケールを、WOMACに先立って行った。痛みのNRSは、0が痛み無しであり、5が中等度の痛みであり、10は最悪の痛みで、0〜10の数値評価採点である。
【0064】
試験の膝関節における運動の範囲(屈曲及び伸長の程度)を、ベースライン、2日目の投与後24時間及び4日目の投与後72時間で、骨棘の成長によるものではなく、痛み及
び炎症に起因する運動の制限された範囲で、治験担当者又は被験者の名義人が検査した。
【0065】
WOMAC指数3.1を、注射前1時間以内、2日目の投与後24時間及び4日目の投与後72時間で、被験者が行った。WOMAC指数は、股関節及び膝の変形性関節炎を有する被験者における関節機能及び痛みを評価する。これは、24のパラメータ(質問)を測定し、各パラメータ(質問)は、被験者によって1〜10のスケールで評価採点される。3つのサブスコア:痛み(5つの質問);硬直(2つの質問);及び機能(17個の質問)がある。
【0066】
スチューデントのt検定:以下の項目についての治療群A及びCの間の平均値±標準偏差(SD)を用いて、データを分析した。
・6時間、24時間及び72時間にての痛みのNRSにおける平均変化(図1)、
・24時間及び72時間にてのWOMAC痛みサブスコアにおける平均変化(図3A及び3B)、
・24時間及び72時間にてのWOMAC機能サブスコアにおける平均変化(図5A及び5B)、及び
・24時間及び72時間にてのWOMAC硬直サブスコアにおける平均変化(図4A及び4B)。
【0067】
更に、反復測定ANOVA:経時的な痛みのNRSにおける平均変化についての治療群A及びCの間の平均標準偏差(SD)を算定した(図2)。
(結果)
結果を、図1〜6、表2及び3に提示し、ここで概説する。
【0068】
・<5000MWフラクション(Ampion(商標))による痛みのNRSにおける改善の傾向が観察された。この傾向は、ステロイドと対比して時間と共に増加し、<5000MWフラクションの効果が長時間持続することを裏付けている。
【0069】
・WOMACについては、分析された3つのサブスコアで差は観察されなかった。
・<5000MWフラクションは、有害事象を増加させない。
・レスキュー投薬及び運動の範囲に関するデータは、少数の患者で採集されたにすぎず、分析されなかった。
【0070】
・ステロイドの潜在的経時変化を図6に示す。ステロイド効力の開始は迅速(12〜24時間)であり、最大効果に1週間で到達し、これが4週間続く(アナルズ・オブ・ザ・リューマチック・ディジィージズ(Ann Rheum Dis)、2004年;第63巻:478−482頁)。短期の痛みは、ベースラインから3日目まで増加し、その後減少する(アメリカン・ジャーナル・オブ・オルソペディクス(Am J Orthop.)、2007年3月、第36巻(3):128−31頁)。
【0071】
表2 有効性の項目の基準値、平均(標準偏差)
【0072】
【表2】
Ampion+ステロイド+リドカイン:安全性評価対象集合n=20、有効性解析集合n=17
ステロイド+リドカイン:安全性評価対象集合n=20、有効性解析集合n=18
【0073】
表3 疼痛NRS値における平均的変化、平均(標準偏差)
【表3】
(実施例2)
症候性原発性変形性膝関節炎を有する成人において関節機能を改善し、膝の変形性関節炎の痛みを低減させるために、<5000MWフラクション(本明細書では、「Ampion(商標)」とも呼ばれる)の膝関節内注射の効果を検討するために治験を実施した。43人の評価可能な被験者を伴う、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群試験を、<5000MWフラクションが試験の膝に注射される場合の、<5000MWフラクションの治療効果及び安全性を推定するために適切なデザインとして選択した。
【0074】
(治験薬)
2群;各被験者は、Ampion(商標)又は生理食塩水のいずれかの1つで、片膝における単回4ml注射を受けた。
【0075】
(治験対象集合)
治験対象集合は、40〜83歳の男性又は女性(平均63.0歳、標準偏差(SD)9.6)の43人の患者であり、そのうち28人が男性で、15人が女性であった。全ての被験者は、白人であった。被験者の身長は、162〜192cm(平均175.3cm、SD 8.1)の範囲であり、スクリーニング時に56〜117kg(平均88.8kg、SD 13.89)の範囲の体重であった。被験者は、ケルグレン・ローレンスの分類II又はIII(Kellgren Lawrence Grade II or III)(軽度及び中等度変形性関節炎を示す)でのスクリーニング前、6ヶ月を超えて症候性原発性変形性膝関節炎を有し、完全歩行可能であった。6人の被験者が分類IIであり
、36人の被験者が分類IIIであった。1人の被験者は分類IVを有した。被験者の両膝が変形性関節炎である場合、片膝を試験用に選択し、他方の膝は標準的治療を受けた。
【0076】
(除外基準)
以下は試験した集合についての除外基準である。
1.医学的審査及びスクリーニング調査の結果として不適切
2.アルブミンに対するアレルギー反応の既往歴
3.5%のヒトアルブミン中の賦形剤に対するアレルギー反応の既往歴
4.任意の関節内注射又は局所的関節周囲の注射、指標の膝に対する注射又は手術(過去6ヶ月)
5.関節鏡視下手術法(過去3ヶ月)
6.関節鏡以外の指標膝関節に対する外科的処置(過去12ヶ月)
7.いずれかの膝関節治験薬(過去12ヶ月)
8.ケルグレン・ローレンスの分類I又はIV(Kellgren Lawrence Grade I or IV)の膝の変形性関節炎(疑わしい又は重度の)
9.炎症性又は結晶性関節症、急性破砕、骨密度の重度減少、骨壊死
10.特定された膝蓋骨−大腿骨症候群又は軟骨軟化症
11.指標膝関節の使用可能及び評価を妨害するいずれかのその他の疾患又は病状
12.指標膝関節への大外傷(過去12ヶ月)
13.指標膝関節と同側の重度股関節変形性関節炎
14.指標膝関節疼痛に評価を妨害する可能性があるいずれかの疼痛
15.開始された又は変更された薬物治療又は非薬物治療(過去4週間)
16.a.任意の局部治療(過去48時間)、b.パラセタモールを除外する全ての鎮痛剤及びNSAID(過去48時間)、c.血液凝固防止治療(過去48時間)、d.全身的ステロイド治療(過去14日間)、e.無作為化前の薬剤の半減期の5倍の期間内の全ての免疫抑制剤、f.一日当たりコルチコステロイドの>10mgのプレドニゾロン等価物(過去30日)、g.いずれかのアルブミン治療(過去3ヶ月)の使用
17.妊娠中又は授乳中の女性被験者
18.治療前1日目に妊娠反応陽性を有する妊娠の可能性がある女性被験者
(治験評価)
治験は、3週間のスクリーニング期間と84日間の治験参加期間からなった。フォローアップ評価を、注射後6時間、24時間及び72時間で実施した。全体的な痛み及び運動機能を評価し、有害事象を監視するために、8日目、30日目及び84日目に電話で被験者に連絡を取った。治験担当者による評価後に、必要であると考えられる場合、被験者は、8日後に、疼痛緩和のために検討する膝関節に任意の関節内ベタメタゾン注射を受けた。
【0077】
(主要な結果)
試験の膝関節における痛みの数値評価スケール(NRS)を投与前(注射前ベースライン)、1日目の投与後6時間、2日目の投与後24時間、4日目の投与後72時間、並びに投与後8日目、30日目及び84日目(EOS又は試験終了時)に行った。痛みのNRSは、0が無痛であり、5が中等度の痛みであり、10が最悪の痛みで、0〜10の数値評価採点である。
【0078】
(安全性のエンドポイント)
試験の安全性のエンドポイントは、有害事象の発症率、投与前及び試験4日目のバイタルサイン、スクリーニング時及び投与後24時間における12誘導心電図(ECG)、並びにスクリーニング時及び投与後24時間で評価された臨床的血液安全性試験(生化学的及び血液学的)であった。
【0079】
(副次的エンドポイント)
試験の副次的エンドポイントは、2ポイント以上の痛みのNRSにおける改善として定義される、30日目及び84日目における応答患者のパーセント、関節内注射後24時間及び72時間にての、WOMACの変形性関節炎指数3.1(全スケール、痛みサブスコア、硬直サブスコア及び機能サブスコア)における投与前のベースラインからの変化、関節内注射後24時間及び72時間までのレスキュー薬剤の投薬(パラセタモール)の必要性に関する、注射前ベースラインからの変化、並びに投与前及び投与直後と比較された投与後8日目、30日目及び84日目における運動機能での経時的な変化であった。
【0080】
(治療しようとした全数(ITT)及び安全性対象の集合)
無作為化されかつ治験投薬の少なくとも1つの用量を受けた治験参加者である。ITTとは、採択基準か除外基準のいずれか一方を満たした被験者を指す。
【0081】
(パープロトコール対象の数、すなわち治験実施計画書に適合した集合)
ITT集合のうち、治験参加者の投与前スコアが採択基準にある、又は除外基準に違反しなかった、治験参加者である。
【0082】
(有効性調査対象者の集合)
パープロトコール対象集合のうち、8〜30日目の間でレスキュー投薬を受けなかった治験参加者である。
【0083】
(統計的解析)
主要解析:ベースラインの痛みのNRSについて調整された、30日目及び84日目(EOS)での痛みにおける平均変化について治療群間の平均(SD)差を検討するための共分散分析(ANCOVA)モデルである。
【0084】
追加的解析:応答者パーセントにおける差についての×検定。臨床的に有意な改善における差についてのコクラン−アーミテージ(Cochran−Armitage)の傾向検定。スチューデントのt検定:30日での痛みのNRSにおける平均(SD)差。
【0085】
(安全性解析)
有害事象及び重篤な有害事象が被験者によって挙げられた。概要は、全体的な発症率についてのMedDRA(ザ・メディカル・ディクショナリー・フォー・レギュラトリー・アクティビティーズ・ターミノロジー)における器官別大分類の基本用語によって分類された有害事象の治療によって、並びに重度及び治験投薬への関係によって提示した。治療により発現する有害事象の発症率を、治療群間で比較した。全ての臨床安全性及び忍容性データを、各被験者について列挙し、治療によりまとめた。バイタルサイン及びECGパラメータを作表し、治療によりまとめた。臨床検査値を、臨床検査正常範囲を外れる値についての臨床的意義に関するコメントと共に列挙した。スクリーニングからの変化を臨床的意義について評価した。
【0086】
(結果)
表4:標本数
【0087】
【表4】
(レスキュー薬剤の使用)
ベタメタゾン注射:生理食塩水を受けた被験者(21人の被験者のうち6人、29%)と比較して、Ampion(商標)を受けた被験者(22人の被験者のうち5人、23%)間のベタメタゾン注射の使用間における明らかな差は認められなかった。
【0088】
レスキュー薬剤(パラセタモール):注射の24時間以内の試験膝関節における疼痛緩和のためのレスキュー投薬は、パラセタモールの類似の平均投与量が各々の治療群で使用されて、生理食塩水を受けた被験者(21人の被験者のうち6人)と比較して、同程度のAmpion(商標)を受けた被験者(22人の被験者のうち6人)で発生した。
【0089】
(有効性に関する結果)
表5 治療による疼痛NRS、パープロトコール集合の平均値の標準偏差(SD)
【0090】
【表5】
【0091】
表6 疼痛NRSの変化の平均値の最小二乗(LS):パープロトコール集合
【表6】
【0092】
表7 疼痛NRSの変化の平均値の最小二乗(LS):有効性評価対象集合
【表7】
(84日目(EOS)における応答者のパーセント:パープロトコール集合(表8を参照))
応答者:84日目において痛みのNRSが−2から−10ポイントまで低減した者(−10ポイントは痛みの可能な最大の改善)
非応答者:84日目で−1から10まで痛みが減少した者(10は、痛みの可能な最大の増加)
【0093】
表8 30日間での基準値からの疼痛の傾向、治療グループ
【表8】
84日目(EOS)における応答者のパーセント:有効性評価対象集合(表9を参照)
応答者:84日目において痛みのNRSが−2から−10ポイントまで低減した者(−10ポイントは痛みの可能な最大の改善)。
非応答者:84日目で−1から10まで痛みが減少した者(10は、痛みの可能な最大の増加)。
【0094】
表9 30日間での基準値からの疼痛の傾向、治療グループ
【0095】
【表9】
(所見の概要:有効性)
全体の痛み(痛みの数値評価スケールによって評価されるような)及びWOMACスコアは、プラセボを除いて、84日目において、治験の持続期間で各治療群では投与後に低減した(p<0.05)。これに加えて、生理食塩水のプラセボを受けた被験者と比較して、Ampion(商標)を受けた被験者では、30日目及び84日目でベースラインからの変化の間の有意差における傾向が認められた(30日目:p=0.12;84日目:p=0.07)。この傾向は、レスキュー投薬を受けなかった被験者で統計的に有意となった(p=0.04)。プラセボ群に対比して、Ampion(商標)を受容している被験者では、試験終了時(84日目)により高いパーセンテージの応答者に向かう傾向があった(p=0.06)。投与後最大で72時間のパラセタモールといったレスキュー薬剤の使用は、治療群E(生理食塩水)で最も高かった。図7を参照されたい。
【0096】
(有害事象(AE))
治療により発現する有害事象(AE)は、全体で27件のAEで、投与後に43人の被験者のうち20人(47%)で報告された。共通して発症したAEは、頭痛並びに膝関節における関節浮腫及び硬直であった。AEを報告した大部分の被験者を、軽度として分類されたに過ぎなかった(43人の被験者のうち16人、37%)。4人の被験者のみが中等度の重症度のAEを報告した。
−Ampion(商標)投与群:関節損傷及び高血圧症
−生理食塩水投与群:背中の痛み及び血管穿刺部位の血腫
生理食塩水を受けた被験者(2人の被験者、10%)と比較して、Ampion(商標)を受けた被験者(2人の被験者、9%)間の中等度AEの発症率では、明確な差はなかった。これらAEの全ては、恐らく、又は明確に治験薬に関連するものではないと考えられた。
【0097】
重症として分類されたAEは認められなかった。
試験薬剤投与に関連する(可能性として)と考えられるAEは、43人の被験者のうちの3人(7%)で報告された。生理食塩水を受けた被験者(2人の被験者、10%)と比較して、Ampion(商標)を受けた被験者(1人の被験者、5%)間で関連するAEの発症率において明確な差はなかった。
【0098】
a.治療投与後5分で始まり、1.8時間後に解消した軽度の重症度の頭痛(Ampion(商標))。
b.治療投与後5時間で始まり、0.5時間後に解消した軽度の重症度の頭痛(生理食塩水)。
【0099】
c.治療投与後2.4日で始まり、21時間後に解消した軽度の重症度の右膝(試験膝
関節)の関節浮腫(生理食塩水)。
全体として、治療により発現したAEのより高い比率は、Ampion(商標)を受けた被験者(8人の被験者、36%)と比較して、生理食塩水を受けた被験者(12人の被験者、57%)で報告された。治験薬投与に関連する(可能性として)と考えられるAEは、43人の被験者のうち3人(7%)で報告され、これらは頭痛及び膝の関節浮腫を含んだ。死亡又はその他の重篤なAEは認められなかった。生化学的臨床検査、バイタルサイン、及びECG評価により評価されるような安全性において、治療間で明確な差は認められなかった。
【0100】
(治験の結論)
疼痛(痛みの数値評価スケールによって評価されるような)及びWOMACスコアは、治療群間の有意差を伴わず、プラセボ群を除いて、84日目で、治験の持続期間中に各治療群について投与後に低減した。Ampion(商標)群と比較して生理食塩水群ではより高いベースラインの痛みのNRSであるにもかかわらず、生理食塩水群と比較して、Ampion(商標)群では、84日目でより高いパーセンテージの応答した被験者を伴い、治験薬の長期効果に向かう傾向が認められ、一方、生理食塩水を受けた被験者は、投与後84日目において痛みの低減を有さなかった。投与後最大で72時間のパラセタモールレスキュー薬の使用は、治療群E(生理食塩水)で最も高かった。Ampion(商標)は、治験で使用された投与量で安全かつ十分に忍容性を示すと考えられた。
【0101】
(実施例3)
本試験は、5%のHASの<5kDaフラクションのDA−DKP及びN−アセチルトリプトファン(NAT)がコラーゲンと結合することを立証する。特に、等モル濃度で、NATは、DA−DKPよりも酸化コラーゲンIVにより多く結合する。
【0102】
(方法)
コラーゲン供給源:0.25%の酢酸(Sigma(商標))中、ヒトの胎盤から得た1mg/mlのコラーゲンIV。コラーゲンを1×PBS中500μMのHで37℃にて1時間にわたって酸化させた。次いで、酸化コラーゲンIV(最終=0.2mg/ml)を、PBS中の2μMのDA−DKPで、又は2μMのNATと共に、37℃にて1時間にわたってインキュベートした。インキュベーションの終了時に、5,000の分子量カットオフ値を有するVivaspin 2微量遠心フィルターによって、<5kDaフラクションを単離した。<5kDaフラクションを、DA−DKP分析に関する高速液体クロマトグラフ−質量分析(LCMS)法を用いて、DA−DKP及び/又はNAT含量について分析した。
【0103】
分析の結果を、表10に示す。
表10 H処理をしたヒトコラーゲンへのNATとDA−DKPの可能な結合
【0104】
【表10】
表10に提供された結果は、DA−DKP及びNATは、コラーゲンの酸化型に結合し、これ故に、免疫細胞活性化を惹起することから酸化部位をブロックすることを裏付けている。
【0105】
本発明の様々な実施形態が詳細に説明されてきたが、当業者にはこれら実施形態の修正及び適応が想定されることは明白である。しかしながら、このような修正及び適応は、以下の例示の請求項に記載されるように、本発明の範囲内にあることが明確に理解されるべきである。
図1
図2
図3A-1】
図3A-2】
図3B-1】
図3B-2】
図4A-1】
図4A-2】
図4B-1】
図4B-2】
図5A-1】
図5A-2】
図5B-1】
図5B-2】
図6
図7