特許第6203740号(P6203740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203740アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体の投与
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203740
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体の投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20170914BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   A61K39/395 NZNA
   A61P1/00
   A61P29/00
【請求項の数】24
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2014-543572(P2014-543572)
(86)(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公表番号】特表2015-505822(P2015-505822A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】US2012066345
(87)【国際公開番号】WO2013078375
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年11月24日
(31)【優先権主張番号】61/563,430
(32)【優先日】2011年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/599,221
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ボリー,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ハイリング
(72)【発明者】
【氏名】パン,ウェイ−チアン
(72)【発明者】
【氏名】リース,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】サリヴァン,バーバラ
【審査官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/107752(WO,A1)
【文献】 CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY,2008年,Vol.6,p.1370-1377
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態に罹患した対象を治療するための医薬組成物であって、状態は炎症性腸疾患と関連し:
(a)7から21日間毎に5から14mg;
(b)14から56日間毎に15から54mg;
(c)43から126日間毎に55から149mg;
(d)112から147日間毎に150から299mg;および
(e)126から224日間毎に300から1000mg
からなる群から選択される量および間隔で投与されるアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を含み、
ここにおいて、前記アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体が18A11である、
前記医薬組成物。
【請求項2】
前記量および間隔が:
(a)11から17日間毎に5から10mg;
(b)30から50日間毎に15から30mg;
(c)75から95日間毎に55から85mg;
(d)120から132日間毎に160から260mg;および
(e)165から185日間毎に300から700mg
からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記量および間隔が:
(a)2週間毎に7mg;
(b)6週間毎に21mg;
(c)12週間毎に70mg;
(d)18週間毎に210mg;および
(e)6ヶ月毎に420mg
からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
状態に罹患した対象を治療するための医薬組成物であって、状態は炎症性腸疾患と関連し、少なくとも約75%の受容体占有の達成および/または維持に十分な量および間隔で投与されるアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を含み、ここにおいて、前記アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体が18A11である、前記医薬組成物。
【請求項5】
達成された前記受容体占有が少なくとも約80%である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
達成された前記受容体占有が少なくとも約85%である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
達成された前記受容体占有が少なくとも約90%である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
達成された前記受容体占有が少なくとも約95%である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
達成された前記受容体占有が少なくとも約99%である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項10】
状態に罹患した対象を治療するための医薬組成物であって、状態は炎症性腸疾患と関連し、血清の体積あたり10ng/mlから1000ng/mlの間のヘテロ二量体特異抗体の量を達成および/または維持するために十分な量および間隔で投与される、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を含み、ここにおいて、前記アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体が18A11である、前記医薬組成物。
【請求項11】
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が少なくとも10ng/mlである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が:少なくとも25ng/ml;少なくとも50ng/ml;少なくとも60ng/ml;少なくとも70ng/ml;少なくとも75ng/ml;および少なくとも80ng/mlからなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が85ng/mlから100ng/mlの間である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が70ng/mlから150ng/mlの間である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が50ng/mlから250ng/mlの間である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項16】
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が40ng/mlから500ng/mlの間である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項17】
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が25ng/mlから750ng/mlの間である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項18】
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が10ng/mlから1,000ng/mlの間である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項19】
18A11が単離され、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質が配列番号5からCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号2からCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、請求項1−18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
18A11が単離され、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質が、前記重鎖可変領域が配列番号5と少なくとも90%同一であり、前記軽鎖可変領域がCDR1、CDR2およびCDR3から配列番号2と少なくとも90%同一である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
18A11が軽鎖定常領域(配列番号7)および重鎖定常領域(配列番号8)をさらに含む、請求項19または20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
18A11が18A11可変領域における1から10個のアミノ酸の置換、挿入または欠失により配列番号2および5のアミノ酸配列とアミノ酸配列の点で異なり、そして、さらに、18A11は、配列番号5からCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号2からCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
18A11が18A11定常領域の18A11における1から10個のアミノ酸の置換、挿入または欠失により配列番号7および8のアミノ酸配列とアミノ酸配列が異なる、請求項21または22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記18A11がいくつかの、ほとんどのまたは実質的に全てのN末端アミノ酸のピログルタミン酸への変換;ならびに1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのN末端および/またはC末端アミノ酸の除去(翻訳後または組換え技術によってのいずれか)からなる群から選択される、1つ以上の修飾を含む、請求項19から23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にアルファ4ベータ7およびMAdCAMならびにその相互作用の阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(IBD)は2種類の慢性腸疾患:クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)を含む。活動性IBDの特徴は、自然免疫細胞(好中球、マクロファージ、樹状細胞、およびナチュラルキラーT細胞)および適応免疫細胞(B細胞およびT細胞)の、固有層への顕著な浸潤である。ナイーブおよびエフェクター/メモリーT細胞は、異なる解剖学的区画における特定の微小血管と相互作用する能力を限定する、輸送リガンドおよび受容体の特徴的レパートリーを有する。従って、これらは遊走の特徴的パターンを有する。
【0003】
腸間膜リンパ節およびバイエル腺叢において活性化するT細胞は、インテグリンアルファ4ベータ7を発現し始めると「腸向性」細胞となる。アルファ4ベータ7は発現するが、種々のレベルにおいて、末梢血中のナイーブT細胞上でと同様に末梢性T細胞上で、B細胞上で、ナチュラルキラー細胞上で、および好酸球上で、アルファ4ベータ7はCD4+CD45RA−メモリーT細胞の亜集団上において最も高度に発現し、IBDの病因として重要な役割を果たしていると考えられる(Abraham and Cho, N Engl J Med. 2009;61:2066)。
【0004】
アルファ4ベータ7に対するリガンドはアドレシン粘膜アドレシン細胞接着分子(MAdCAM−1)であって、免疫グロブリンスーパーファミリーの1つである。このアドレシンは腸管内固有層の後毛細管小静脈上で、腸間膜リンパ節上で、およびバイエル腺叢中で最初に発現し;発現は潰瘍性大腸炎およびクローン病に罹患した対象の慢性炎症性小腸および大腸内で上方制御される(Briskin et al, Am J Pathol. 1997;151:97; Arihiro et al, Pathol Int. 2002;52:367)。
【0005】
腸へのメモリーリンパ球ホーミングに対するアルファ4ベータ7とMadCAM−1の相互作用の重要性はヒトと同様に前臨床モデルで示されている。アルファ4ベータ1およびアルファ4ベータ7ヘテロ二量体受容体のアルファ4構成要素を標的にする単クローン抗体であるTysabri(登録商標)は、活動性クローン病対象の集団において大幅に症状を改善した(Sandborn et al, N Engl J Med 2005;353:1912; Targan et al, Gastroenterology 2007;132:1672)。特にアルファ4ベータ7を標的にするヒト化単クローン抗体であるMLN0002は、潰瘍性大腸炎およびクローン病に罹患した対象の両方において、疾患の寛解を誘導することが示された(Feagan et al, Clin Gastroenterol Hepatol. 2008;6:1370; Feagan et al, N Engl J Med. 2005;352:2499)。
【0006】
しかしながら、これらの薬剤のどちらにも、ある欠点が存在する。Tysabri(登録商標)で治療された対象における進行性多巣性白質脳症(PML)の発生は、おそらく脳への白血球輸送の抑制のためである。その上、MLN0002は、効力を低下させた抗体の早期排除の一因となった強い免疫応答を引き起こした。これにより、外科手術の重大な機能的影響の可能性およびIBD治療で用いられるその他の薬剤の欠点と共に、IBDにおける新しい治療法の開発が求められる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、健常対象(HS)における18A11の漸増単回投与試験のPK解析の結果を示す。結果を平均(+/−SD)血清18A11濃度時間特性として図示する。
図2図2は、健常対象(HS)における18A11の漸増複数回投与試験のPK解析の結果を示す。結果を平均(+/−SD)血清18A11濃度時間特性として図示する。
図3図3は、実施例4で説明するように、CD4+ナイーブT細胞(プラセボまたは18A11)上におけるアルファ4ベータ7受容体のベースライン正規化自由率を示す。
図4図4は、実施例4で説明するように、複数回投与試験におけるコホート1から3および8(健常対象)に関して要約したアルファ4ベータ7受容体占有データを示す。
図5-1】図5は、実施例5で説明するように、4週間ごとに計3用量(図5B)を投与した、210mg単一用量の18A11またはプラセボ(図5A)または21mgの18A11またはプラセボで治療された患者に見られた、盲検個体メイヨーおよび部分的メイヨースコア特性を示す。
図5-2】図5は、実施例5で説明するように、4週間ごとに計3用量(図5B)を投与した、210mg単一用量の18A11またはプラセボ(図5A)または21mgの18A11またはプラセボで治療された患者に見られた、盲検個体メイヨーおよび部分的メイヨースコア特性を示す。
図6図6は、健常日本人対象(HJS)および健常非日本人対象(HNJS)における、18A11の予備的薬物動態(PK)特性を示す。PK特性は70mgの皮下投与計画下において健常日本人対象および健常非日本人対象間で、実質的に重ねることができた。
図7図7は、健常非日本人対象(HNJS、白色人種14人、黒色人種7人、およびアジア人種3人;試験20090107より年齢20から42歳、体重65から106kg)ならびに健常日本人対象およびHCS対象(試験20110259)における、18A11のオーバーレイPK特性を示す。
図8図8は、健常非日本人対象(HNJS、白色人種14人、黒色人種7人、およびアジア人種3人;試験20090107より年齢20から42歳、体重65から106kg)ならびに健常日本人対象およびHCS対象(試験20110259)における、18A11のオーバーレイ薬物動力(遊離アルファ4ベータ7受容体率)特性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連した状態に罹患した対象を治療する方法であって、量および間隔が:7〜21日間毎に5〜14mg;14〜56日間毎に15〜54mg;43〜126日間毎に55〜149mg;112〜147日間毎に150〜299mg;および126〜224日間毎に300〜1000mg、からなる群から選択された、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体の量を対象に投与することを含む、方法を提供する。本発明の別の様態において、量および間隔は:11〜17日間毎に5〜10mg;30〜50日間毎に15〜30mg;75〜95日間毎に55〜85mg;120〜132日間毎に160〜260mg;および165〜185日間毎に300〜700mg、からなる群から選択される。本発明のさらなる実施形態において、量および間隔は:2週間毎に7mg;6週間毎に21mg;12週間毎に70mg;18週間毎に210mg;および6ヶ月毎に420mgからなる群から選択される。1つの実施形態において、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体は18A11である。
【0009】
本発明はまた、消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連した状態に罹患した対象を治療する方法であって、少なくとも約75%;少なくとも約80%;少なくとも約85%;少なくとも約90%;少なくとも約95%;または少なくとも約99%の受容体占有を達成および/または維持するために十分な量および間隔で、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体の量を対象に投与することを含む、方法を提供する。1つの実施形態において、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体は18A11である。
【0010】
さらに本発明は、消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連した状態に罹患した対象を治療する方法であって、血清の体積あたり10ng/mlから1000ng/mlの間のヘテロ二量体特異抗体の量を達成および/または維持するために十分な量および間隔でアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体の量を対象に投与することを含む、方法を提供する。本発明の1つの様態において、血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の量は、少なくとも10ng/ml;少なくとも25ng/ml;少なくとも50ng/ml;少なくとも60ng/ml;少なくとも70ng/ml;少なくとも75ng/ml;少なくとも80ng/ml;少なくとも85ng/ml;少なくとも90ng/ml;少なくとも95ng/ml;少なくとも100ng/ml;少なくとも150ng/ml;少なくとも200ng/ml;少なくとも500ng/mlまたは少なくとも990ng/mlである。1つの実施形態において、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体は18A11である。
【0011】
本発明はまた、消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連した状態に罹患した対象を治療する方法であって、血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の量を達成/維持するために十分な量および間隔でアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体の用量を対象に投与することを含み、血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の量が:少なくとも25ng/ml;少なくとも50ng/ml;少なくとも60ng/ml;少なくとも70ng/ml;少なくとも75ng/ml;および少なくとも80ng/mlからなる群から選択される、方法を提供する。あるいは、血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の量は、85ng/mlから100ng/mlの間;70ng/mlから150ng/mlの間;50ng/mlから250ng/mlの間;40ng/mlから500ng/mlの間;25ng/mlから750ng/mlの間;または10ng/mlから1,000ng/mlの間である。
【0012】
さらに本発明は、消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連した状態に罹患した対象を治療する方法であって、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体の用量を対象に投与することを含み、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体が18A11である、方法を提供する。さらなる実施形態において、18A11は単離され、配列番号5からCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号2からCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質である。あるいは、18A11は単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質であり、重鎖可変領域が配列番号5と少なくとも90%同一であり、軽鎖可変領域がCDR1、CDR2およびCDR3から配列番号2と少なくとも90%同一である。さらに方法は、18A11を投与することを含み、18A11が軽鎖定常領域(配列番号7)および重鎖定常領域(配列番号8)をさらに含み;加えて(または代替的に)、18A11が18A11可変領域における1から10個のアミノ酸の置換、挿入または欠失により配列番号2および5のアミノ酸配列とアミノ酸配列が異なり;加えて(または代替的に)、18A11が18A11の18A11定常領域における1から10個のアミノ酸の置換、挿入または欠失により配列番号7および8のアミノ酸配列とアミノ酸配列が異なり、加えて(または代替的に)、18A11がいくつかの、ほとんどのまたは実質的に全てのN末端アミノ酸のピログルタミン酸への変換;ならびに1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのN末端および/またはC末端アミノ酸の除去(翻訳後または組換え技術によってのいずれか)からなる群から選択された、1つ以上の修飾を含む。
【0013】
本発明ではまた、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体で治療されているヒト対象におけるアルファ4ベータ7受容体占有を評価する方法を提供し、方法は:対象に対して6本1組の試薬管を用意し、管には1から6の番号を付けられており、各管がアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体(管2;「スパイク」(spiked)と称する)またはプラセボ対照(管1、3、4、5および6)を含み、そしてアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体で治療された対象から全血試料を得、全血試料の一部を6本の管それぞれの中に入れて試料混合物を形成し、得られた試料混合物をインキュベートし;1:1の割合の抗体カクテルとフィコエリスリン試薬を試料混合物に加え、実質的に示したようなスキームにおいて、抗体カクテル/試料混合物を形成し、(管1に、抗CD8+CD103;FITC、抗アルファ4ベータ7競合抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CCR7:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;管2に、抗CD8+CD103:FITC、抗アルファ4ベータ7競合抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CCR7:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;管3に、抗CD+CD103:FITC、非競合抗β抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CCR7:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;管4に、抗CD7+CD103:FITC、非競合抗β抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;管5に、抗CLA:FITC、非競合抗β7抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CD4:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;管6に、抗CD19:FITC、抗CD4:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CD16+CD56:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD8 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え);抗体カクテル/試料混合物をインキュベートし;抗体カクテル/試料混合物を処理してあらゆる赤血球を溶解して残りの細胞の混合物を形成し;残りの細胞の混合物を洗浄し、蛍光活性化セルソーターを用いてそれらを解析して、残りの細胞に存在する、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体により占有されたアルファ4ベータ7受容体の割合を決定することを、含む。
【0014】
アルファ4ベータ7受容体占有を評価する1つのそのような方法において、試料混合物は室温で約30分間インキュベートされ、抗体カクテル/試料は室温で約20分間インキュベートされる。代替的にまたは加えて、各管に加えられる全血試料の一部は100マイクロリットルであり、抗体カクテルの体積は20マイクロリットルであり、抗体:フィコエリスリン試薬の体積は60マイクロリットルである。代替的にまたは加えて、各集団に対して集められたCD4ナイーブT細胞のイベントの数はリンパ球イベントによって除算され、その後マイクロリットルあたりのリンパ球の血液学的結果によって乗算され、ナイーブCD4 T細胞はCCR7+CD45RA+CD3+CD8−CD103−CD45+リンパ球として規定され、代替的にまたは加えて、スパイクおよび非スパイク状態に対する蛍光強度中央値は蛍光ビーズ検量線を用いて細胞あたりの結合分子(MBPC)に変換され、受容体占有を算出するために利用される。代替的にまたは加えて、対象が使用可能な2つの投与前試料があり、目標飽和度は以下の式:
【0015】
【数1】
を用いて算出される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で規定されない限り、本発明に関して用いられる科学および専門用語は当業者によって一般に理解される意味を有する。さらに、文脈によって必要とされない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含む。一般的に、本明細書で記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関して用いられる命名法、およびその技術はよく知られ、当該技術分野で一般に用いられるものである。臨床試験の分野で一般的に用いられる用語の短縮形の一覧を、以下の表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
用語「効力」が本発明で投与計画の文脈に即して用いられる場合、特定の治療計画の有効性を指す。効力は、本発明の薬剤への応答における疾患の経過の変化に基づいて測定され得る。1つの実施形態において、抗原結合タンパク質(例えば、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体)は改善の誘導に十分な量および時間で対象に投与され、好適には改善は、治療されている障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標における持続的改善である。対象の疾病、疾患または状態の程度を反映する種々の指標は、治療の量および時間が十分かどうかの決定に対して評価され得る。そのような指標として、例えば、対象の疾患重症度、症状、または障害の症状の臨床的に認められた指標が挙げられる。
【0019】
1つの実施形態において、対象が2から4週間の間隔をおいた少なくとも2度の改善を示す場合、改善は持続性であると考えられる。別の実施形態において、対象が2から4ヶ月の間隔をおいた少なくとも2度の改善を示す場合、改善は持続性であると考えられる;さらなる実施形態において、対象が6から12ヶ月の間隔をおいた少なくとも2度の改善を示す場合、改善は持続性であると考えられる。改善の程度は一般的に、医師によって決定され、医師はこの決定を徴候、症状、生検、またはその他の検査結果に基づいて作成してもよく、医師はまた所与の疾患に関して作成された生活の質アンケートなどの、対象に実施されるアンケートを使用してもよい。
【0020】
用語「治療すること」、および「治療」ならびに同類のものは本発明において、一般的に所望の薬理学的または生理学的効果を得ることを意味するために用いられる。効果は疾患、症状もしくはその状態を妨げることまたは部分的に妨げることという点で予防的であり得、および/または疾患、状態、症状または疾患が原因である有害作用の部分的な治癒または根治という点で治療的であり得る。用語「治療」が本発明で用いられる場合、ほ乳類、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療を網羅し、(a)疾患に罹患し易いが、まだ罹患しているとは診断されていない対象に発生する疾患を予防すること;(b)疾患を抑制すること、すなわち、疾患の発達を阻止すること;または(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患および/または疾患の症状もしくは状態の退行を引き起こすこと、を含む。本発明の目的は、病的炎症に関する疾患に罹患する患者を治療することである。本発明は、長期に渡る病的炎症が原因である有害作用を妨げること、抑制すること、もしくは軽減することおよび/または長期に渡り生命システムに存在する不適当な炎症への生理学的反応により引き起こされるそのような有害作用に関する。
【0021】
値の範囲が記載されている場合、範囲の上限と下限の間の各中間的な値(文脈によりそうでないことが明らかな場合を除き下限の1/10の単位)及びその記載された範囲内の他のあらゆる記載された若しくは中間的な値又はより狭い範囲が、本発明の範囲内に含まれると理解される。記載された範囲内に、あらゆる特に除外される限定がないという条件で、より狭い範囲の上限値および下限値は独立して狭い範囲に含まれてもよい。規定の範囲が限界の内の1つまたは両方を含む場合、限界を含むこれら両方のいずれかを排除する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0022】
本発明の方法および技術は一般的に、他に示されない限り、当該分野でよく知られた従来の方法に従って、および本明細書を通して引用され、考察される種々の概要およびより特定の参照において記載する通り、実施される。例として、参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992)、およびHarlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990)を参照のこと。酵素反応および精製法は、当該技術分野で一般に達成されるように、または本発明に記載するように、製造者の仕様書に従って実施される。本発明で記載される分析化学、有機合成化学、ならびに医薬品化学および薬化学に関して用いられる専門用語、ならびにそれらの検査法および技術は、当該技術分野でよく知られ一般的に用いられるものである。標準的な方法を化学合成、化学分析、医薬品、製剤、および送達、ならびに患者の治療に用いてもよい。
【0023】
用語「アルファ4ベータ7阻害剤」および「アルファ4ベータ7拮抗剤」は、互換的に用いられる。それぞれは、少なくとも1つのアルファ4ベータ7の作用を検出可能に抑制する分子である。アルファ4ベータ7阻害剤によって引き起こされる抑制は、例えばアッセイを用いることで、抑制が検出可能である限り完全である必要はない。アルファ4ベータ7の作用のあらゆるアッセイを用いてもよく、アッセイのいくつかは当該技術分野においてよく知られている。アルファ4ベータ7阻害剤により抑制され得るアルファ4ベータ7の作用の例として、リガンド結合(すなわち、MAdCAM−1への結合)、リガンド発現細胞への接着、腸などの特定の区画への輸送、サイトカイン、ケモカインおよび他の介在物の放出、炎症反応および組織障害の亢進または悪化などが挙げられる。アルファ4ベータ7阻害剤およびアルファ4ベータ7作動薬の種類の例として、これらに限定されないが、抗原結合タンパク質(例えば、アルファ4ベータ7抗原結合タンパク質)、抗体、抗体断片、および抗体誘導体などのアルファ4ベータ7結合ポリペプチドが挙げられる。さらなる例として、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体およびその変異体が挙げられる。
【0024】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」はそれぞれ、ペプチド結合により互いに結合した2つ以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。これらの用語は、例えば、天然のまたは人工のタンパク質、タンパク質断片およびタンパク質配列のポリペプチド類似体(変異タンパク質、変異体、および融合タンパク質など)ならびに翻訳後、または別の共有結合性もしくは非共有結合性、修飾タンパク質を含有する。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、単量体または重合体であり得る。
【0025】
ポリペプチドの「変異体」(例えば、抗体)はアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸残基が、別のポリペプチド配列に対するアミノ酸配列に挿入され、該アミノ酸配列から除去され、および/または該アミノ酸配列と置換される。本発明の変異体は、融合タンパク質および生物学的に活性のある断片(例えば、抗原に結合する能力を保持する抗体の断片)を含む。ポリペプチドの「誘導体」は、例えば、別の化学的部分(例えばポリエチレングリコールまたは、例えばヒト血清アルブミンなどのアルブミン)との結合、リン酸化反応、および/または糖鎖付加などを介し、化学的に修飾されたポリペプチド(例えば、抗体)である。他に示されない限り、用語「抗体」は、2本の完全長の重鎖および2本の完全長の軽鎖を含む抗体に加えて、誘導体、変異体、断片、およびその変異タンパク質を含み、これらの例は以下に記載する。
【0026】
本発明において有用なポリペプチドは、あらゆる手段であらゆる理由のために修飾されたポリペプチド(変異体を含む)を含み、例えば:(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させるため、(2)酸化に対する感受性を減少させるため、(3)タンパク質複合体の形成に関する結合親和性を変更するため、(4)結合親和性を変更するため、および(4)他の物理化学的または機能的特性を与えるまたは変更するために修飾される。類似体はポリペプチドの変異タンパク質を含む。例えば、単一または多重のアミノ酸置換(例えば、保存アミノ酸置換)は、自然発生の配列(例えば、分子間接触を形成するドメイン外のポリペプチドの一部において)で作られ得る。コンセンサス配列が置換のためのアミノ酸残基を選択するために用いられてもよく、当業者はさらなるアミノ酸残基が置換され得ることを認識するであろう。
【0027】
修飾は、保存アミノ酸置換もまた含む。「保存アミノ酸置換」は、元の配列の構造特性を実質的に変化させないものの1つである(例えば、置換アミノ酸は元の配列に発生するらせん体を切断する、または元の配列を特徴付けるもしくはその機能性にとって必要不可欠な二次構造の別種を破壊する傾向にあるべきではない)。当該技術分野において承認されているポリペプチド二次および三次構造の例は、参照により本明細書にそれぞれ組み込まれる、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton, Ed., W. H. Freeman and Company, New York (1984)); Introduction to Protein Structure (C. Branden and J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, N.Y. (1991));および、Thornton et at. Nature 354:105 (1991)に、記載されている。
【0028】
1つの実施形態において、有用なポリペプチドは、本発明で開示されるポリペプチドと85%、90%、92%、95%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を有する。別の実施形態において、有用なポリペプチドは、本発明で開示されるポリペプチドと85%から100%同一である。2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の「同一率」は、その初期パラメータを用いたGAPコンピュータプログラム(GCG Wisconsin Packageのバージョン10.3(Accelrys、カリフォルニア州サンディエゴ)の一機能)を使用する配列を、比較することによって決定される。別の実施形態において、有用なポリペプチドは、1つから5つのアミノ酸の置換、欠失または挿入により本発明で開示されるポリペプチドと異なる。そのような置換、欠失または挿入は、開示されるポリペプチドの終端のいずれかで起こり得る(例えば、N末端メチオニンの追加、C末端リシンの欠失、内部アミノ酸の追加もしくは欠失、および/またはアミノ酸の異なるアミノ酸との置換)。有用なポリペプチドが1つ超のポリペプチド(例えば、2本の重鎖および2本の軽鎖を含む抗体)を含む場合、各ポリペプチドは1つから5つのアミノ酸の欠失、挿入または置換によって修飾され得る。さらなる実施形態において、10個以下のアミノ酸は置換、除去または挿入され得る。有用なポリペプチドは、本発明に記載のアルファ4ベータ7拮抗剤の少なくとも1つの活性、例えば、1つ以上のリガンド結合の抑制、リガンド発現細胞との接着、腸などの特定の区画への輸送、サイトカイン、ケモカインおよびその他の介在物の放出、ならびに炎症反応または組織障害の追加のまたは代替的な寛解、などの活性を示すであろう。
【0029】
「抗体」は、他に述べられない限り、無傷の免疫グロブリンまたは特異的結合について無傷の抗体と競合するその抗原結合部分を指す。抗原結合部分は、組換えDNA技術によってまたは無傷の抗体の酵素的もしくは化学的切断によって作製されてもよい。抗原結合部分は、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体(dAbs)、ならびに相補性決定領域(CDR)断片、可変領域断片、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、およびポリペプチドを含み、ポリペプチドに特異抗原結合を与えるために十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有する。
【0030】
「免疫グロブリン」は多量体の分子である。自然発生の免疫グロブリンにおいて、各多量体はポリペプチド鎖の2対の相同対からなり、各対は1本の「軽」鎖(約25kDa)および1本の「重」鎖(約50から70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部は、抗原認識に関して最も重要な約100から110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部は、エフェクター機能に関して最も重要な定常領域を規定する。ヒト軽鎖はκまたはλ軽鎖として分類される。重鎖はμ、δ、γ、α、またはεとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEと規定する。軽鎖および重鎖内において、可変領域および定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域により、約10個以上のアミノ酸の「D」領域をまた含む重鎖と連結される。一般的には、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))(全ての目的のためにその全てが参照により組み込まれる)を参照のこと。各軽/重鎖対の可変領域は、無傷の免疫グロブリンが2つの結合部を有するような抗体結合部を形成する。
【0031】
自然発生の免疫グロブリン鎖の可変領域は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域と連結した相対的保存フレームワーク領域(FR)と同様の全体構造を示す。N末端からC末端までは、軽鎖および重鎖はどちらも、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインに対するアミノ酸の割当は、Kabat et al. in Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., US Dept. of Health and Human Services, PHS, NIH, NIH Publication no. 91−3242, 1991の定義に基づく。免疫グロブリン鎖におけるアミノ酸に対するその他の付番方式は、IMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics information system; Lefranc et al, Dev. Comp. Immunol. 29:185−203; 2005)およびAHo (Honegger and Pluckthun, J. Mol. Biol. 309(3):657−670; 2001)を含む。
【0032】
1ナノモル以下の解離定数で抗体が抗原と結合する場合、抗体は抗原(例えば、ヒトアルファ4ベータ7)と「特異的に結合する」。本発明で用いられる場合、抗体は第1ヘテロ二量体インテグリンと結合するが、1本の鎖を第1インテグリンと共有するその他のインテグリンとは結合しない場合に、抗体は「ヘテロ二量体特異的」である。例えば、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異的である抗体はアルファ4ベータ7と結合するが、アルファ4ベータ1またはアルファEベータ7とは結合しないであろう。1つの実施形態において、抗体は単クローン抗体であり;別の実施形態において、抗体は表2a(軽鎖可変領域)および2b(重鎖可変領域)に示されるようなアミノ酸配列または本発明で説明される変異体を含む、選択単クローン抗体(MAB)である。別の実施形態において単クローン抗体はさらに、軽鎖定常領域(配列番号7)および重鎖定常領域(配列番号8)を含む。以下の表における各ドメインに対するアミノ酸の割当は、Kabat et al. in Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., US Dept. of Health and Human Services, PHS, NIH, NIH Publication no. 91−3242, 1991の定義に基づく。免疫グロブリン鎖におけるアミノ酸に対する他の付番方式はIMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics information system; Lefranc et al, Dev. Comp. Immunol. 29:185−203; 2005)およびAHo (Honegger and Pluckthun, J. Mol. Biol. 309(3):657−670; 2001)を含む。相補性決定領域とフレームワーク領域の間の境界は示された1から5個のアミノ酸と異なってもよいことを、当業者は理解する。
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
これら、およびその他のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質は、本発明に参照によりその開示が組み込まれる、米国特許出願第12/725,031号(US20100254975として出願)において開示されている。表2で開示された抗体は、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体と特に理解されるヒト抗体であるが、α4β1またはαEβ7のいずれとも結合しない。18A11はアルファ4ベータ7と高親和性に結合し、粘膜アドレシン細胞接着分子とのアルファ4ベータ7の相互作用を遮断する。18A11は粘膜アドレシン細胞接着分子媒介T細胞接着を強く抑制するが、VCAM−1媒介T細胞接着は抑制しない。18A11製剤はまた、皮下投与を可能にする。
【0039】
本発明で用いられる場合、ペプチド、免疫グロブリン、抗体および同類のものの従来の定義に基づき、「アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質」は他に述べられない限り、無傷の免疫グロブリンまたはその抗原結合部分を指し、抗原結合部分は特異的結合について無傷の抗体と競合する。「18A11」はまた、アミノ酸配列、特に可変領域またはその相補性決定領域(しかしながら、定常領域における変異体もまたよく考慮される)における18A11と、同一または同様の抗体(またはその断片)を、包含する。例えば、有用な18A11ポリペプチドは、本発明で開示される18A11ポリペプチド(例えば、表2aおよび2bに記載のようなもの)と85%、90%、92%、95%、98%、99%または100%同一のアミノ酸配列を有する。別の実施形態において、有用なポリペプチドは、18A11と85%から100%同一である。1つの実施形態において、18A11は単離され、配列番号5からCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域を有し、配列番号2からCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質である。別の実施形態において、18A11は単離されたアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質であり、重鎖可変領域は配列番号5と少なくとも90%同一であり、軽鎖可変領域はCDR1、CDR2およびCDR3から配列番号2と少なくとも90%同一である。
【0040】
さらなる様態において、18A11は18A11可変領域における1から10個のアミノ酸の置換、挿入または欠失により、本発明で開示されるアミノ酸配列が異なり得る。本発明の1つの様態において、1から10個のアミノ酸が18A11の定常領域において除去、置換または挿入され得る。その上、前述の置換、挿入または欠失は併用されてもよい(すなわち、いずれかまたは両方の可変および定常領域で作成されてもよい)。さらなる実施形態は、いくつかの、ほとんどまたは実質的に全てのN末端アミノ酸のピログルタミン酸への変換、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのN末端および/またはC末端アミノ酸の除去(翻訳後または組換え技術によってのいずれか)を含む、1つ以上の翻訳後修飾を組み込むポリペプチドを含む。
【0041】
別の様態において、本発明は、緩衝剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量ポリペプチド(10個未満のアミノ酸を有するものなど)、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロースまたはデキストリンなどの炭水化物、EDTAなどのキレート剤、グルタチオン、安定剤、および賦形剤からなる群から選択された抗体ならびに1つ以上の物質を含む、医薬組成物を提供する。中性緩衝食塩水または同種の血清アルブミンと混合された食塩水は、適切な希釈剤の例である。適切な業界標準に基づき、ベンジルアルコールなどの保存剤をまた加えてもよい。さらに医薬組成物の製剤は、適当な構成要素が、使用される用量および濃度で受容者に対して非毒性な投与経路に応じ得る。従って、組成物は適切な賦形剤溶液(例えば、スクロース)を用いた凍結乾燥物として、希釈剤として、または体温で溶けるが、室温では凝固する、カカオバター、カーボワックスおよびポリエチレングリコールなどの溶媒を含み得る座剤として、処方されてもよい。さらに、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体は、固体、半固体、液体またはガス状の形態(錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、懸濁剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、細粒剤、およびエアロゾルを含む)で処方されてもよい。製剤処方において使用してもよい構成要素のさらなる例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th Ed. (1980) and 20th Ed. (2000), Mack Publishing Company, Easton, PAに示されている。
【0042】
医薬組成物は、限定されないが、非経口的、局所的、または吸入によるものを含むあらゆる適当な技術によって投与され得る。注射の場合、例えば、間接内、静脈内、筋肉内、病巣内、腹腔内または皮膚経路(皮内、経皮または真皮下、および皮下を含む)を介して、ボーラス注入、または継続注入により、医薬組成物は投与されてもよい。さらなる実施形態において、組成物は経口、口腔内、直腸内、気管内、胃内、または頭蓋内経路によって投与される。例えば疾患または傷害の部位での局所的投与は、例として、消化管に関する状態に対して浣腸または座剤による投与が考慮される。植込剤からの経皮的送達および叙放もまた、考慮される。吸入による送達として、例えば、経鼻または経口吸入、噴霧器の使用、エアロゾル形態による拮抗剤の吸入、および同類のものが挙げられる。その他の代替案として、点眼剤;丸剤、シロップ剤、トローチまたはチューイングガムを含む経口剤;ならびにローション剤、ゲル剤、噴霧剤、および軟膏剤などの局所製剤、が挙げられる。
【0043】
1つの様態において、本発明は対象を治療する方法を提供する。方法は例えば、一般的に健康によい効果を対象に有してもよく、例として、方法は対象の予想される寿命を延ばし得る。あるいは、方法は例えば、疾患、障害、状態、または疾病(「状態」)を治療、予防、治癒、軽減、または改善(「治療」)し得る。1つの実施形態において、本発明は、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における状態を治療する方法を提供し、状態は対象におけるアルファ4ベータ7の活性を(部分的にまたは完全に)減少させることで、治療することができる。治療は、治療的投与(すなわち、疾患または状態の徴候および症状が明らかである場合の投与)ならびに予防的治療の両方、または寛解および/または寛解の維持を誘導する治療と同様の維持療法(すなわち、疾患または状態が静止状態である場合の投与)を含有する。従って、疾患または状態の重症度は(部分的に、大幅にまたは完全に)減少させられ得る、または徴候および症状は妨げられもしくは遅延させられ(発生の遅延、長期の寛解、または静止状態)得る。
【0044】
本発明に基づく治療される状態において、状態はアルファ4ベータ7の不適当な発現または活性により特徴付けられる。そのような状態は細胞の不適当な輸送、例えば、消化管または(白血球と粘膜アドレシン細胞接着分子を発現する細胞の結合の結果として)粘膜アドレシン細胞接着分子を発現するその他の組織細胞への白血球(リンパ球または単球など)の輸送と、関連した状態を含む。治療され得る疾患は従って、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)、セリアック病(非熱帯性スプルー)、血清反応陰性関節症と関連した腸疾患、顕微鏡的または膠原性大腸炎、好酸球性胃腸炎、などの炎症性腸疾患(IBD)、または直腸結腸切除および回腸肛門吻合により生じる嚢炎を含む。本発明に基づき治療され得るさらなる状態は、膵臓炎、インスリン依存性糖尿病、乳腺炎、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、喘息および移植片対宿主病を含む。
【0045】
クローン病における疾患活動性はクローン病活性指数(CDAI)を用いて評価される。クローン病活性指数は8項目(排便回数、腹痛の重症度、一般的な健康状態の程度、腸管外発現またはフィステルの存在または非存在、止痢薬の使用または不使用、腹部腫瘤の存在または非存在、ヘマトクリット、および体重)の加重総合指数であり、約0から600の範囲のスコアを有し、より高いスコアはより重度の疾患活動性を示す。典型的に、スコア<150を有する患者は寛解にあると考えられる。そうでなければ疾患は、151から219、220から449、および450以上のスコアで、それぞれ軽度、中等度、または重度であると段階付けられる。軽度から中等度クローン病に罹患した患者に対する導入療法は、典型的に5−アミノサリチル酸またはスルファサラジンまたは抗菌剤を使用する。潰瘍性大腸炎における疾患活動性は、メイヨースコア(Schroeder et al., N Eng J Med. 317:1625; 1987により最初に記述された)などのスコアを用いて評価され、メイヨースコアとは、各項目が最大総スコア12に対し0から3のスコアで半定量的に段階付けられる、4項目(排便回数、直腸出血、内視鏡所見、および医師総合評価)の総合指数である。潰瘍性大腸炎における治療の目標は、前述のクローン病に対するものと同様であり、すなわち導入および維持療法である。利用可能な治療はクローン病に対するものと同様である。
【0046】
アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体は、対象の状態において改善を達成するために投与され得る。改善は、臨床症状の寛解によるまたは疾患活動性のあらゆるその他の測定による、クローン病活性指数またはメイヨースコアなどの疾患活動性の指標の減少により示され得る。1つの実施形態において、2から4週間の間隔をおいた少なくとも2度の改善を対象が示す場合、改善は持続性であると考えられる。別の実施形態において、2から4ヶ月の間隔をおいた少なくとも2度の改善を対象が示す場合、改善は持続性であると考えられ;さらなる実施形態において、6から12ヶ月の間隔をおいた少なくとも2度の改善を対象が示す場合、改善は持続性であると考えられる。改善の程度は一般的に、医師によって決定され、医師はこの決定を徴候、症状、生検、またはその他の検査結果に基づいて作成してもよく、医師はまた所与の疾患に対して作成された生活の質アンケートなどの対象に実施されるアンケートを使用してもよい。
【0047】
別の実施形態において、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を用いた対象の治療は、受容体占有(RO)の一定のレベルを達成および/または維持するための量および/または十分な間隔で、例えば、本発明に記載のアッセイを用いて実施され得る。例えば、ヘテロ二量体特異抗体は少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の受容体占有を達成するために実施される。
【0048】
さらなる実施形態において、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を用いた対象の治療は、血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の一定の量の達成および/または維持するための量および/または十分な間隔で、例えば、本発明に記載のアッセイを用いて、実施され得る。例えば、ヘテロ二量体特異抗体は少なくとも10ng/ml、25ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、75ng/ml、80ng/ml、85ng/ml、90ng/ml、95ng/ml、100ng/ml、150ng/ml、200ng/ml、500ng/ml、または990ng/mlを達成するために使用される。さらなる実施形態において、ヘテロ二量体特異抗体は10ng/mlから1000ng/mlを達成するために使用される。当業者は、本明細書に示される量が完全長抗体または免疫グロブリン分子に適用されること;その抗原結合断片が用いられる場合、絶対量は断片の分子量に基づいて算出され得る様式において示されるものとは異なるであろうことを、理解するであろう。
【0049】
1つの実施形態において、18A11を7mgの用量で2週間毎に投与する。さらなる実施例において、18A11を7〜21日毎、11〜17日毎、13〜15日毎、または14日毎に投与する。そのような実施形態の1つの例において、18A11の用量は5〜10mgの範囲、または5〜14mgの範囲である。本発明で提供するさらなる例は、21mgの18A11の6週間毎、または14〜56日毎、または30〜50日毎;または40〜44日毎の投与である。そのような実施形態の例としてまた、15〜30mg、または15〜54mgの範囲の用量での投与も提供される。
【0050】
さらなる実施形態において、18A11を3ヶ月毎または12週間毎に70mgの用量で投与する。例えば、18A11を43〜126日毎、または75〜95日毎、または80〜88日毎に投与する。そのような実施形態の別の様態において、18A11の用量は、55〜85mgの範囲、または55〜99mgの範囲である。本発明で提供するさらなる様態は、210mgの18A11の18週間(または4.5ヶ月)毎、または112〜147日毎、または120〜132日毎;または125〜129日毎の投与である。そのような実施形態の例として、160〜260mg、または160〜300mgの範囲の用量の投与が提供される。
【0051】
よりさらなる実施形態において、18A11を420mgの用量で6ヶ月毎に投与する。しかし別の実施形態において、18A11を126〜224日毎、または165〜185日毎、または160〜174日毎に投与する。そのような実施形態の1つの例において、18A11の用量は300〜700mgの範囲、または300〜1000mgの範囲である。18A11のその他の用量の投与、およびさらなる投与間隔での投与もまた、企図される。
【0052】
IBDの治療は生活習慣の変化、内科的管理、および外科的処置を含む。従って、別の様態において、本発明はアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体および1つ以上のその他の治療で対象を治療する方法を提供する。1つの実施形態において、そのような併用療法は、例えば、複数の部位もしくは分子標的の攻撃、または複数の経路の抑制による相乗または相加作用を達成する。本発明に関して用いられ得る併用療法の種類として、単一の疾患に関連する経路、標的細胞における複数の経路、および標的組織内の複数の細胞型における、複数の結節の(必要に応じた)抑制または活性化が挙げられる。
【0053】
1つの実施形態において、併用療法は2つ以上のアルファ4ベータ7拮抗剤(例えば、直接的または間接的にアルファ4ベータ7媒介活性を共に抑制する2つ以上の治療)を対象に投与することを含む。そのような方法の例として、2つ以上のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体の併用、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体とアルファ4ベータ7もしくはそのサブユニットを結合する別の抗体(例えば、アルファ4を結合する抗体またはベータ7を結合する抗体)の併用、またはアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体と抗体などの拮抗剤の併用、アルファ4ベータ7の結合パートナー(例えば、粘膜アドレシン細胞接着分子)の併用が挙げられる。アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体とその他の生物製剤の組み合わせもまた、企図される。そのような生物製剤の例は、拮抗剤、または適切なサイトカイン(例えば、アンタゴニスト抗体、受容体の一部、および/またはその作動薬の変異体)としての作動薬であり、サイトカインの例は、インターロイキンIL−1からIL−35、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、βおよびγ、腫瘍成長因子β(TGF−β)、コロニー刺激因子(CSF)ならびに顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)など、ならびにMCP−1、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、エキソタキシンおよびIL−8などのケモカインのその他の拮抗剤などが挙げられる。本発明の薬剤は例えば、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール、ナタリズマブおよびベトリズマブなどを含む。そのような薬剤は非経口的にまたは別の適当な経路により、当該技術分野において既知であり処方情報に記載されている用量および間隔で投与されてもよい。
【0054】
さらなる組み合わせの種類として、本発明に記載のアルファ4ベータ7拮抗剤を使用してもよい。例として、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体と抗炎症性を有する1つ以上のその他の治療成分(例えば、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド類、および/または免疫調節薬)の併用、またはアルファ4ベータ7抑制抗原結合タンパク質と1つ以上のその他の治療(例えば、炎症を抑える効果のある外科手術、超音波、または治療)の併用が挙げられる。アルファ4ベータ7阻害剤と併用し得る有用な薬剤として、例えばクローン病または潰瘍性大腸炎の治療に用いられる薬剤が挙げられ、例としては、アミノサリチル酸(例えば、メサラミンまたはメサラミンへと代謝される、Asacol(登録商標)、サロフォーク、Pentasa(登録商標)、Dipentum(登録商標)、コラザイド(colazide)、Lialda(登録商標)およびRowasa(登録商標)などを含む物質)、コルチコステロイド類/糖質コルチコイド(プレドニゾロンメタスルホ安息香酸、チキソコルトールピバレート、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、およびブデソニドを含む)、メトロニダゾールまたはシプロフロキサシンなどの抗生物質(または例えば、フィステルに罹患した患者の治療に有用なその他の抗生物質)、ならびにアザチオプリン(例えば、Imuran(登録商標)およびAzasan(登録商標))、6−メルカプトプリン(例えば、Purinethol(登録商標))、メトトレキセート(例えば、Trexall(登録商標)、Rheumatrex(登録商標))、タクロリムス(例えば、Prograf(登録商標))ならびにシクロスポリン(例えば、Gengraf(登録商標)、Neoral(登録商標)、およびSandimmune(登録商標))などの免疫抑制剤が挙げられる。そのような薬剤の併用もまた、進歩性のあるアルファ4ベータ7阻害剤と一緒に使用されることが企図される。そのような薬剤は、経口または別の経路によって、例えば座剤または浣腸を介して、当該技術分野において既知であり処方情報に記載されている用量および間隔で投与されてもよい。
【0055】
その上、抗アルファ4ベータ7抗体または抗体誘導体、もしくは前述の組み合わせは1つ以上の分子またはその他の治療と併用されてもよく、その他の分子および/または治療はアルファ4ベータ7と直接的に結合または影響しないが、この併用は治療されている状態の治療または予防に効果的である。例えば、アルファ4ベータ7阻害剤はプロバイオティック治療、または腸管内菌叢移植を含む、正常な腸管内菌叢の回復または維持に用いられるその他の治療と併用されてもよい。1つの実施形態において、1つ以上の分子および/または治療は、治療の経過において1つ以上のその他の分子または治療により引き起こされる状態を治療または予防し、状態は例えば、嘔気、疲労、脱毛症、悪液質、不眠症などである。そのような薬剤または治療は当該技術分野において既知であり処方情報に記載されている経路、用量および間隔で投与されてもよい。
【0056】
さらなる支持療法は、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体抗体を用いた利用可能な併用療法を含み;そのような支持療法として(これらに限定されないが)、鎮痛剤、および抗コリンおよび止痢薬が挙げられる。そのような支持療法の組み合わせは治療計画の初期において、患者の症状の減退および患者の生活の質改善に有用であり得る。支持療法は経口鉄、葉酸、およびビタミンB12の投与を含む。止痢薬は、これらに限定されないが、ジフェノキシラート、コデイン、ロペラミド、および抗コリン剤(またはその薬理学的等価物)を含み、これらは軽度疾患の患者に、便通の頻度を減少させて便意逼迫を再度経験させるために投与される。コレスチラミンは、すでに限定的な回結腸切除を受けた患者における胆汁酸塩誘発性結腸分泌を妨げるために、患者に対して用いられてもよい。抗コリン剤として、これらに限定されないが、臭化クリジニウム、塩酸ジサイクロミン、ベラドンナのチンキおよび同類のものが挙げられ、抗コリン剤は腹部痙攣、疼痛および便意逼迫を減少させるのに有用である。支持療法または治療は、当該技術分野において既知であり処方情報に記載されている経路、用量および間隔で投与されてもよい。
【0057】
分子および/またはその他の治療が併用される全ての場合において、個別の分子および/または治療はあらゆる順序で、あらゆる時間の長さに渡り投与されてもよく、例えば、同時に、継続的に、または交互に有効である。1つの実施形態において、治療の方法は、1つの分子を用いた治療の第1過程または治療の第2過程を開始する前のその他の治療を、完了させることを含む。治療の第1過程の終了から治療の第2過程の開始までの時間の長さは、治療の全過程が有効である限りあらゆる時間の長さであってもよく、例えば、数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月、または数年であってもよい。
【0058】
別の実施形態において、方法は本発明に記載の1つ以上のアルファ4ベータ7拮抗剤の投与および1つ以上のその他の治療(例えば、治療的または対症的療法)を含む。方法が対象への1つ超の治療の投与を含む場合、投与の順序、タイミング、数、濃度、および量は治療の医学的要求および制限によってのみ限定され、換言すれば、2つの治療が例えば同時に、継続的に、交互に、またはその他のあらゆる計画に従って対象に投与されてもよいということを理解されたい。
【0059】
下記の実施例は、実例および机上の例の両方において、本発明の具体的な実施形態または特徴を説明する目的で提供されるものであって、その範囲に限定されない。
【実施例】
【0060】
実施例1
本実施例は、18A11のPK/PD特性の試験に用いた種々のアッセイについて述べる。
【0061】
薬剤の定量
本実施例は、対象由来の血清における18A11の量の測定に用いたアッセイについて述べる。簡単に述べると、捕捉抗体(例えば、マウス抗18A11 1.30.1mAb)は、Multi−Array(登録商標)96ウェルHighBindマイクロプレートウェル(Meso Scale Discovery)に受動的に吸着される。マイクロプレートウェルは過剰な捕捉抗体を除去した後に、Blocker(商標)BLOTTO/ツイーン緩衝剤でブロックされる。既知の含量の18A11を100%の正常ヒト血清プールにスパイクすることにより調製した標準および品質管理試料は、Blocker(商標)BLOTTO/ツイーン緩衝剤中で50倍に希釈する前処理後に、検査される試料およびマトリックスブランクとしてマイクロプレートウェルに入れられる。試料中のあらゆる18A11は、固定化捕捉抗体により捕捉される。非結合物質はマイクロプレートウェルの洗浄により除去される。洗浄後に、SULFO−TAG(商標)結合検出抗体(例えば、抗18A11 1.2.1mAb)をマイクロプレートウェルに加えて、捕捉された18A11と結合させる。非結合SULFO−TAG(商標)結合捕捉抗体を、マイクロプレートウェルの洗浄で除去する。
【0062】
この洗浄後に、結合SULFO−TAG(商標)結合検出抗体の検出を補助するために、Read Buffer T(Meso Scale Discovery)を加える。マイクロプレートが電気的に刺激された場合、リードバッファ中のトリプロピルアミン共反応物(TPA)の存在下におけるSULFO−TAG(商標)標識は、620nmで発光する。放射された光の量は、第1工程で捕捉抗体により結合された18A11の量に比例する。発光は適切なプレート読み取り装置;例えばDiscovery Workbenchソフトウェアを備えるSector Imager 6000、を用いて検出される。データは例えば、1/Y2の重み係数を有する5PL(自動測定)(5−パラメータロジスティック)回帰モデルを用いる、Watson Laboratory Information Management Systemデータ縮約パッケージを使用して、縮小される。所与の血清試料中の18A11の量は、標準および品質管理試料により作成された検量線と比較して決定される。
【0063】
抗18A11結合抗体イムノアッセイ
本実施例は、対象由来の血清において18A11を結合する抗体の存在を検出するために用いたアッセイについて述べる。このアッセイにおいて18A11との結合抗体の検出は、電気化学発光(ECL)MSD(Meso Scale Discovery)技術基盤を利用し、抗体結合の多価特性に基づく。試験戦略は、スクリーニングアッセイおよび特異性アッセイからなる段階的な2つのアッセイアプローチを含む。スクリーニングアッセイにおけるアッセイカットポイントより大きな信号雑音比(S/N)を有する試料は、特異性アッセイにおいて試験前に過剰な18A11で試料をインキュベートすることにより、さらに検査される。
【0064】
抗体複合体の解離を可能にするため、試料の酸処理が解析に先立って実施される。酸処理した血清試料および対照を、pH9.5で1MのTris中の等量のビオチン化18A11(B−18A11)およびルテニル化18A11(Ru−18A11)からなる溶液に加え、外気温でインキュベートして抗18A11抗体をビオチン化18A11分子およびルテニル化18A11分子の両方と結合させ、それにより複合体を形成する。
【0065】
インキュベーション後に、全ての試料および対照を、ウシ血清アルブミンでブロックされた洗浄済ストレプトアビジン被覆標準結合MSDプレートに移動し、外気温でインキュベートしてビオチン化18A11を捕捉させ、ストレプトアビジン表面上に複合体を形成した。プレートウェルを洗浄し、トリプロピルアミンを含有するMSDリードバッファの溶液を加える。プレートはMSD Sector Imager 6000プレート読み取り装置で読み取られる。装置内において、ルテニウムは電圧が印加された場合に誘発される電気化学発光反応に関与する。プレートのウェル上に捕捉されるルテニル化18A11を含有する複合体は、試料中の抗18A11抗体の濃度に比例する電気化学発光信号をもたらす。
【0066】
抗18A11中和抗体バイオアッセイ
本実施例は、対象由来の血清において18A11を中和する抗体の存在を検出するために用いたアッセイについて述べる。抗18A11中和抗体(NAb)試験戦略は、スクリーニングアッセイおよび特異性アッセイからなる段階的な2つのアッセイアプローチを含む。スクリーニングアッセイの目的は、試験血清試料中における18A11活性に対するあらゆる抑制を検出することである。特異性アッセイは試料を過剰な18A11でインキュベートすることにより実施され、その後解析を行い、スクリーニングアッセイにおいて観察された18A11活性の抑制が、中和抗18A11抗体の存在に対して特異的であったことを確認する。スクリーニングおよび特異性アッセイの統合成績を用いて、抗18A11中和抗体に対して試料が陽性または陰性であるかどうかを決定する。
【0067】
このアッセイにおいて、細胞表面に発現したヒトアルファ4ベータ7インテグリンに安定して導入されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(CHO−アルファ4ベータ7)を、MadCAM−1(Bi−MadCAM−1FC)および18A11のヒトビチオン標識可溶型の決まった濃度の存在下において、インキュベートする。18A11は、CHO−アルファ4ベータ7細胞の表面に発現したアルファ4ベータ7と結合し、Bi−MadCAM−1FCとアルファ4ベータ7の結合をブロックする。抗18A11中和抗体が試料中に存在する場合、関連する蛍光単位(RFU)として96ウェルプレート蛍光読み取り装置を用いて測定された、フィコエリスリン結合ストレプトアビジン(SA−PE)の蛍光信号の増加によって検出される際に、アルファ4ベータ7と結合した18A11が損なわれる。
【0068】
免疫表現型検査および受容体占有
本実施例は、ヒト対象において受容体占有を評価するための、およびCD4 T細胞サブセットを列挙するための、6色6管のフローサイトメトリーアッセイIPRO(免疫表現型検査および受容体占有)アッセイについて述べる。アルファ4ベータ7受容体の遊離および全体レベルの両方が、下記の表3に示す管の型式を用いて、別々の管の中で測定される。アルファ4ベータ7の遊離および全体レベルの両方を同定する能力は、2つの試薬、アルファ4ベータ7との結合に関して18A11と競合する抗体(下記の表3において「競合a4b7」と称される)、およびアルファ4ベータ7のβ7サブユニットと結合するが、18A11と競合しない抗体(下記の表3において「非競合b7」と称される)を用いて達成され、それぞれがフィコエリスリンと結合する。試薬は、解析からαEβ7(非競合b7抗体を結合するであろう)を発現する細胞を排除するために用いられる、抗CD103(αE)もまた含む。約500マイクログラム/mlの18A11 ex vivoでの薬剤スパイク状態の追加は、完全飽和対照として働く。高品質な専用フローサイトメトリー試薬として、1:1の抗体と蛍光体の複合物、抗体カクテルならびに凍結乾燥した薬剤およびプラセボ緩衝剤(下記の表3における、溶解緩衝剤)が挙げられる。
【0069】
【表7】
FITC:フルオレセインイソチオシアネート
PE:フィコエリスリン
PerCP:ペリジニンクロロフィルタンパク質
AlexaFluor(登録商標)647:約647nmの最大励起を有する合成蛍光色素
APC−H7:ラン藻類)−シアニン直列型蛍光色素において、付属の光合成色素が発見されたアロフィコシアニン
V450:青紫色レーザーにより励起されるクマリン色素
【0070】
6本で1組の管を、解析される各対象(または対照)に対して準備する。薬剤またはプラセボ緩衝剤は、個々のキットとして凍結乾燥および調製されてもよい。各アッセイに関して、キットにおける6本の管のそれぞれ(表3に示されるように)は、20マイクロリットルの水で再水和され、約5分間インキュベートされる。あるいは、薬剤またはプラセボは6本の管のそれぞれに設置される。各管に対して、その後解析される対象由来の末梢血100マイクロリットルを加えた。続いて管を室温で約30分間インキュベートし、その後、20マイクロリットルの抗体カクテルと60マイクロリットルの抗体:フィコエリスリンが1:1の試薬を各管に加えた。室温で約20分間のさらなるインキュベーションの後、赤血球を溶解し、残りの細胞を洗浄し、再懸濁し、蛍光活性化セルソーターを用いて解析する。リンパ球を分化させるゲーティング戦略およびそのサブタイプの比較は、CD4エフェクターメモリーT細胞、CD4セントラルメモリーT細胞およびCD4ナイーブT細胞の同定ならびに分化を促進する。二重プラットホームアプローチを使用して、CD4 T細胞サブセットを列挙する。例えば、各集団に対して集められたCD4ナイーブT細胞イベントの数をリンパ球イベントによって除算し、その後マイクロリットルあたりのリンパ球の血液学的結果によって乗算する。式:
【0071】
【数2】
に続く実施例を使用し、ナイーブCD4 T細胞をCCR7+CD45RA+CD3+CD8−CD103−CD45+リンパ球として規定する。
【0072】
競合抗アルファ4ベータ7−フィコエリスリンは遊離(非占有)アルファ4ベータ7標的受容体と全ての解析T細胞サブセット上で結合するが、非競合抗体(非競合b7)は遊離(非占有)および占有アルファ4ベータ7の両方と結合する。完全目標飽和度と対応する信号は、各対象/時点で、飽和濃度の18A11を有する「ex vivoスパイク」試料を含めることにより得られる。スパイクおよび非スパイク状態に対する蛍光強度中央値を、蛍光ビーズ検量線を用いる細胞あたりの結合分子(MBPC)に変換し、その後受容体占有の算出に利用する。目標飽和度の計算は、対象の投与前値の平均に関する所与の対象/時点に対するスパイクと非スパイク試料間の競合抗アルファ4ベータ7フィコエリスリン信号において異なる。例えば、対象に関して利用可能な2つの投与前値がある場合、算出される目標飽和度は以下の式:
【0073】
【数3】
を用いる。
【0074】
用語「管」は本発明において便宜的に用いられ;マイクロウェルプレート、キュベットおよび同類のものを含む、あらゆる適当な容器が使用されてもよいことは、当業者によって理解されたい。試料が加えられる直前に発生する再水和で、試料を得る前、および脱水する前に試薬管が調製されてもよいこともまた、理解されたい。あるいは、試薬管は試料が得られた後、または試料が得られるのと同時に調製されてもよい。
【0075】
実施例2
本実施例は、健常対象(HS)および軽度から中等度の潰瘍性大腸炎(UC;ClinicalTrials.gov、識別子:NCT01164904)に罹患した対象における18A11の安全性、耐用性、薬物動態(PK)および薬物動力(PD)を評価する、第1相、無作為抽出、二重盲検、プラセボ対照、漸増単回投与試験について述べる。次の用量を評価する:
【0076】
【表8】
【0077】
コホート1から9の健常対象由来の予備PKデータを解析し、PK特性を図1に示す。連続した血液試料は、予定した時点の85日目に、コホート1、2、3、および4(それぞれ0.7、2.1、7、および21mgの18A11を皮下投与)に対して;予定した時点の127、197、127、197および225日目に、コホート5、6、7、8および9(それぞれ70および210mgの18A11を皮下投与;70、210、および420mgの18A11の静脈内投与)に対して、利用可能であった。PKおよび抗18A11結合抗体試料を、それぞれ10ng/mLの定量化下限値(LLOQ)および20ng/mLの高信頼検出下限値(LLRD)で、有効な電気化学発光イムノアッセイ(ECL)法を用いて定量した。名目時間をこの予備的解析に関してPKパラメータの計算に用いて、結果を表4に示した。
【0078】
単回皮下投与の後、18A11はすぐに吸収され、平均Cmax値に投与の2から10日以内に到達し、個別対象tmax値は2から14日の範囲であった。70および210mgの18A11の静脈内投与と比較して、70および210mgの皮下投与はそれぞれ78%と92%の平均絶対生物学的利用能を示した。18A11のPKは、0.7から21mgの低用量皮下投与に非線形動態を示したが、Cmax値は21から210mgの皮下投与用量範囲に渡り用量に比例した。70から420mgの静脈内投与用量範囲に渡り、Cmaxおよび薬物濃度時間曲線下面積の両方が用量に比例した。
【0079】
標的被覆の期間もまた、210mgの皮下または静脈内への18A11の単回投与後の、皮下での≧21mgおよび>128日の18A11の単回投与後に>28日に到達した、循環CD4+T細胞上におけるαβ受容体の飽和(>99%)で、投与の皮下および静脈内経路の両方に関して用量に比例した。結果を表4に示す。
【0080】
【表9】
略語:AUCinf=0時間から無限までの濃度時間曲線下面積;AUClast=0時間から投与後最後の観測点までの濃度時間曲線下面積;Cmax=最高観測濃度;IV=静脈内(静脈内に);SC=皮下(皮下に);tmax=最高観測濃度までの時間;「−」=該当なし。注:tmaxは中央値(範囲)を表す。
【0081】
中央区画からの一次吸収ならびに平行線形および非線形排出による2区画モデルは、健常対象由来の血清18A11濃度時間統合データを適切に記載することが分かった。利用可能な全てのPKデータを用いる同時PKモデリングは、39日の18A11線形排出半減期を評価したモデルを産生した。血清中の18A11の濃度が1000ng/mLを下回る際に、最終排出相で18A11曝露の外挿のために39日の半減期を用いる場合、1000ng/mLは18A11PKが非線形標的媒介配置相を示し始め得るレベルであって、従って排出がより速く、注意が必要である。結果を図1に示す。
【0082】
20ng/mLの高信頼検出(LLRD)の下限値を有する有効な電気化学発光イムノアッセイ法を用いて、対象試料において抗18A11結合抗体の存在を検査した。試験20090107のコホート1から9(試験終了まで)に登録の健常対象由来の試料、およびコホート10(15、85および127日目まで)における3人の潰瘍性大腸炎対象由来の試料を検査し、抗18A11結合抗体は検出されなかった。
【0083】
実施例3
本実施例は、健常対象および軽度から中等度の潰瘍性大腸炎(UC;ClinicalTrials.gov、識別子:NCT01290042)に罹患した対象(HS)における18A11の安全性、耐用性、薬物動態学および薬物動力を評価する、第1相、無作為抽出、二重盲検、プラセボ対照、漸増複数回投与試験について述べる。予備PKデータは、コホート1、2、3および8(7、21、70、および210mgの18A11の皮下投与)について、それぞれ予定した時点の141、141、197、および85日までに、3回投与後の健常対象について利用可能であった。PK特性を図2に示し、PKパラメータを表5に示す。
【0084】
【表10】
略語:AR=3用量から1用量蓄積比;AUCtau=参照用量後の各投与間隔以内の濃度時間曲線下面積;Cmax=最高観測濃度;Q4W=4週間毎に1回(月々);SC=皮下(皮下に);tmax=最高観測濃度までの時間;「−」=該当なし。注:tmaxは中央値(範囲)を表す。
【0085】
3ヶ月間で月々7mgの皮下投与後、18A11のCmaxの約1.22倍の蓄積および1用量から3用量の18A11の薬物濃度時間曲線下面積の1.41倍の蓄積を観測した。対応する蓄積比は21mgの皮下投薬に対して1.74および1.83、70mgの皮下投薬に対して1.94および1.81、ならびに210mgの皮下投薬に対して2.00および2.03であった。21から210mgの初回皮下投与後の18A11の28日間平均PK特性は、試験20090107のものと同程度であった。
【0086】
末梢血CD4+T細胞上におけるαβ受容体の標的占有率を、21mgの皮下投与、70mgの皮下投与、または210mgの皮下投与で、18A11の月々の投薬(×3)に応じて、>90%で>98日間維持し;標的占有率を、7mg(コホート1)で18A11の月々の投薬(×3)に応じて、70%から90%で84日間維持した。
【0087】
20ng/mLの高信頼検出下限値を有する有効な電気化学発光イムノアッセイ法を用いて、対象試料における抗18A11結合抗体の存在を検査した。2011年12月13日時点で、試験20101261(コホート1および2に対して141日まで、コホート3に対して85日まで、およびコホート8に対して57日まで)に登録の健常対象由来の試料を検査し、抗18A11結合抗体は検出されなかった。
【0088】
実施例4
本実施例は、前述の試験に関する薬力学的分析について述べる。単回投与試験について、暫定的な18A11のαβ受容体占有データが健常対象:コホート1から4に対して85日まで(0.7、2.1、7、および21mgの皮下投与)、コホート5および6に対して127日まで(70および210mgの皮下投与)、コホート7および8に対して197日まで(70および210mgの静脈内投与)、ならびにコホート9に対して225日まで(420mgの静脈内投与)、に利用可能であった。
【0089】
単回投与試験におけるコホート1から9(健常対象)に関するαβ受容体占有データを図3に要約した。データは、循環ナイーブCD4+T細胞上におけるαβの用量との比例および可逆性の被覆を示す。同様の用量応答特性が、メモリーCD4+T細胞サブセットに関して観測された。αβ全体レベルは、18A11の飽和用量への曝露において〜50%可逆的に低下することが分かった。これらの対象におけるCD4+総、ナイーブ、またはメモリーT細胞の絶対値において、著しい変化は今日まで観測されていない。
【0090】
図4は、複数回投与試験におけるコホート1から3および8(健常対象)について要約された、αβ受容体占有データを示す。漸増単回投与試験に関して、データは循環ナイーブCD4+T細胞上におけるαβの可逆性および用量に比例した被覆を示す。同様の用量応答特性がメモリーCD4+T細胞サブセットに関して観測され、CD4+総、ナイーブ、またはメモリーT細胞の絶対値において著しい変化は今日まで観測されていない。
【0091】
実施例5
本実施例は、患者における臨床観察について述べ、潰瘍性大腸炎(UC)対象における2つの18A11の第1相、無作為抽出、二重盲検、プラセボ対照試験において得られたさらなる結果を要約する。潰瘍性大腸炎(UC)に罹患した対象(患者)を、210mgを単回(試験20090107)または21mgを月々3回(20101261)の皮下投与(SC)用量の18A11で治療した/治療する(NIH臨床試験ウェブサイト、URL「clinicaltrials.gov;」、それぞれ試験20090107および20101261に対して試験識別子NCT01164904(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01164904)およびNCT01290042(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01290042))。
【0092】
4から10(包括的)のメイヨースコアおよび1の直腸S状結腸鏡検査最小スコアを有する、活動性、軽度から中等度の疾患に罹患していると診断された潰瘍性大腸炎対象を登録した。1つのコホート(NCT01164904)において、現在投薬されている4人の白色人種対象(男性:女性が2:2;32〜43歳、57〜77kg)と共に、8人の潰瘍性大腸炎対象が210mgの18A11の単回投与またはプラセボの皮下投与(割合6:2)を受けなくてはならなかった。別のコホート(NCT01290042)において、4人の白色人種潰瘍性大腸炎対象(男性:女性は3:1;26〜51歳、73〜92kg)が、3ヶ月間月々21mgの18A11またはプラセボの皮下投与(割合3:1)を受けた。18A11のPK線形排出相半減期、予測αβ受容体占有(RO)、および安全性監視要件に基づき、それぞれ21および210mgの投与計画下において、対象を5および7ヶ月間追跡調査しなければならなかった/しなければならない。
【0093】
PK、抗薬剤抗体(ADA)、安全性、受容体占有を含むPD、CD4+中央メモリーT細胞数(Tcm)、血清高感度C反応性タンパク質(hsCRP;Maharshak et al J Dig Dis 9: 140; 2008に記載の通りに、高感度C反応性タンパク質(hs−CRP)法を用いておおむね決定された)および糞便カルプロテクチン(FC;Vieira et al BMC Research Notes 2:221; 2009に記載の通りにおおむね決定される)バイオマーカー、ならびに部分的メイヨースコアを測定した。直腸S状結腸鏡検査の総メイヨースコアを、スクリーニング中、ならびに6、12、および28週間(210mgのみ)の来診中に評価した。この解析の目的について、「寛解」を、1ポイント超の個々のサブスコアを有さない、2未満または2と同等のメイヨースコアとして規定する。「応答」を、3超または3と同等および30%超または30%と同等のベースラインからのメイヨースコアの減少と、少なくとも1ポイントの直腸出血スコアまたは0または1の絶対リーディングにおける減少として規定する。「粘膜治癒」を、0または1の直腸S状結腸鏡検査スコアとして規定する。それぞれ210mgおよび21mgのコホートについて、結果を図5Aおよび5Bに示す。
【0094】
8人の潰瘍性大腸炎対象のデータ(スクリーニングメイヨースコア中央値=7;少なくとも1人はプラセボ)の初期評価は、18A11のPK特性が、検出可能な抗薬物抗体を有さない同様の投与計画下において一般的に健常対象由来のものに含まれたことを示した。PKおよび受容体占有特性は、幾人かの対象において〜200%増加したTcmと直接相関していた。C反応性タンパク質および糞便カルプロテクチンは幾人かの来診/対象において減少したが、小さな試料のサイズおよび可変性が決定的な評価を妨げていた。今日まで、3および4人の対象がそれぞれ6および12週間で寛解し;5、5、および1人の対象がそれぞれ6、12、および28週間で応答を見せ;そして5人の対象が6および12週間の両方で粘膜治癒をした。今日までの盲検安全性データは、大腸炎紅斑による1件の早期治療中止を除き、18A11関連重篤有害事象または死亡を示していないが、大腸炎紅斑は研究者により治療と関係していないと見なされた。ECGまたは神経学的検査における異常性は観測されなかった。
【0095】
実施例6
本実施例は、健常日本人対象(HJS;試験識別子20110259)における18A11の安全性、耐用性、薬物動態(PK)および薬物動力(PD)を評価する、無作為抽出、二重盲検、プラセボ対照、単回漸増投与試験について述べる。健常白色人種対象(HCS)のコホートを、日本人の対応対象と体重に従い±20%で対に対応し、比較対象として含んだ。各健常日本人対象コホートは、少なくとも4人の第1世代日本人対象(すなわち、日本で生まれた4人の祖父母、実父母および対象)からなり、残りの健常日本人対象は第1世代、第2世代(日本で生まれた4人の祖父母および実父母)または第3世代(日本で生まれた4人の祖父母)のいずれかとなる。以下の用量を評価した:
【0096】
【表11】
【0097】
24人の男性健常日本人対象(HJS;22〜45歳、50〜81kg)および8人の男性健常白色人種対象(HCS;20〜45歳、60〜92kg)を無作為抽出し、18A11の単一皮下投与用量またはプラセボ(割合6:2)を21(健常日本人対象)、70(健常日本人対象および健常白色人種対象)、または210mg(健常日本人対象)(コホート1から4)で投与した。今日まで、連続した血液試料は予定した時点の85、43、43、および14日にコホート1、2、3、および4に対して利用可能であった(それぞれ21、70、70、および210mgの18A11の皮下投与またはプラセボ)。PKおよび抗18A11結合抗体試料を、それぞれ10ng/mLの定量化下限値(LLOQ)および20ng/mL高信頼検出下限値(LLRD)で、有効な電気化学発光(ECL)イムノアッセイ法を用いて定量した。名目時間を、この予備的解析に関するPKパラメータの計算のために用いて、結果を表6に示した。血液を収集し、αβ受容体占有およびCD4+T細胞数を、有効な全血6色フローサイトメトリーアッセイを用いて評価した。
【0098】
予備PKデータを解析してPK特性を図6に示し、70mgの皮下投薬下において健常日本人対象と健常白色人種対象間で実質的に重ねることができる18A11のPK特性を示す。図7および8は、健常非日本人(HNJS、白色人種14人、黒色人種7人およびアジア人種3人;年齢20〜42歳、体重65〜106kg、試験20090107)ならびに健常日本人対象およびHCS対象(試験20110259)における、18A11のオーバーレイPKおよびPD(遊離αβ受容体比率)特性を示す。18A11のPK/PD特性は、健常日本人対象および健常非日本人対象間で比較可能なPK/PD特性もまた示す21および210mgの皮下投与計画で、70mgの皮下投薬下において健常非日本人対象、健常日本人対象および健常白色人種対象間で実質的に重ねることができる。この試験において、18A11のCmaxは7(範囲:4から14)日以内の皮下投薬を達成した。18A11のCmaxおよび推定AUC(0−4週間)値の両方は、検査をした21から210mgの範囲に渡り用量に比例した。加えて、70mgの皮下投与を下回ると推定する18A11のCmaxおよびAUC(0−4週間)は、健常日本人対象および健常白色人種対象間で同様であった。CD4+ナイーブT細胞上におけるαβの受容体占有を、>90%で4、8、および4週間(今日までデータは利用可能である)、それぞれ21mg、70mg、および210mgの皮下投与で維持した。今日まで、投薬後1および3ヶ月で陽性抗薬物抗体を検査した対象はいない。今日までの盲検安全性データは、18A11関連重篤有害事象または死亡、用量制限毒性、または有害事象による早期治療中止を示していない。ECGまたは神経学的検査における異常性は観測されなかった。
【0099】
【表12】
略語:AUC(0−4週間)=投与後0時間から29日(4週間)の濃度時間曲線下面積;Cmax=最高観測濃度;SC=皮下(皮下に);tmax=最高観測濃度までの時間;注:tmaxは中央値(範囲)を表す。
【0100】
単回固定皮下投与計画下における18A11の安全性、免疫原性、およびPK/PD性は、日本人、白色人種、および非日本人対象の間で差異はない。中等度から重度のクローン病または潰瘍性大腸炎に罹患した日本人対象は、修飾されない18A11の進行中の第2相試験において実行された投与計画で、適宜検査され得る(www.clinicaltrials.gov.に記載される、試験識別子:NCT01696396およびNCT01694485、現在進行中の第2相試験はAmgen Inc.による提供である)。
【0101】
免疫原性に関して、全ての現在の試料を試験に登録した健常対象(白色人種および日本人の両方)由来および8人の潰瘍性大腸炎対象由来の全ての現在の試料を検査して、抗18A11結合抗体(ADA)は検出されなかった。
【0102】
これらの結果は、炎症性腸ホーミング細胞の不適当な輸送と関連する状態に罹患した個体への18A11の投与について、いくつかの投与計画を支持し、状態は例えば、消化管または粘膜アドレシン細胞接着分子を発現する細胞を含むその他の組織への白血球(リンパ球または単球など)の輸送(すなわち、白血球と粘膜アドレシン細胞接着分子を発現する細胞の結合の結果としての、腸への輸送)である。適切な投与計画は、下記の表7に示される投与計画から選択してもよい。
【0103】
【表13】
【0104】
その他の投与計画は企図され、本発明に示されるデータに基づき決定され得る。
非限定的に本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
状態に罹患した対象を治療する方法であって、状態は消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連し:
(a)7から21日間毎に5から14mg;
(b)14から56日間毎に15から54mg;
(c)43から126日間毎に55から149mg;
(d)112から147日間毎に150から299mg;および
(e)126から224日間毎に300から1000mg
からなる群から選択される量および間隔でアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を前記対象に投与することを含む、方法。
[態様2]
前記量および間隔が:
(a)11から17日間毎に5から10mg;
(b)30から50日間毎に15から30mg;
(c)75から95日間毎に55から85mg;
(d)120から132日間毎に160から260mg;および
(e)165から185日間毎に300から700mg
からなる群から選択される、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記量および間隔が:
(a)2週間毎に7mg;
(b)6週間毎に21mg;
(c)12週間毎に70mg;
(d)18週間毎に210mg;および
(e)6ヶ月毎に420mg
からなる群から選択される、態様1に記載の方法。
[態様4]
状態に罹患した対象を治療する方法であって、状態は消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連し、少なくとも約75%の受容体占有の達成および/または維持に十分な量および間隔で、その量のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を前記対象に投与することを含む、方法。
[態様5]
達成された前記受容体占有が少なくとも約80%である、態様4に記載の方法。
[態様6]
達成された前記受容体占有が少なくとも約85%である、態様4に記載の方法。
[態様7]
達成された前記受容体占有が少なくとも約90%である、態様4に記載の方法。
[態様8]
達成された前記受容体占有が少なくとも約95%である、態様4に記載の方法。
[態様9]
達成された前記受容体占有が少なくとも約99%である、態様4に記載の方法。
[態様10]
状態に罹患した対象を治療する方法であって、状態は消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連し、血清の体積あたり10ng/mlから1000ng/mlの間のヘテロ二量体特異抗体の量を達成および/または維持するために十分な量および間隔で、その量のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を前記対象に投与することを含む、方法。
[態様11]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が少なくとも10ng/mlである、態様10に記載の方法。
[態様12]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が:少なくとも25ng/ml;少なくとも50ng/ml;少なくとも60ng/ml;少なくとも70ng/ml;少なくとも75ng/ml;および少なくとも80ng/mlからなる群から選択される、態様10に記載の方法。
[態様13]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が85ng/mlから100ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様14]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が70ng/mlから150ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様15]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が50ng/mlから250ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様16]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が40ng/mlから500ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様17]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が25ng/mlから750ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様18]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が10ng/mlから1,000ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様19]
前記アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体が18A11である、態様1から18のいずれか1項に記載の方法。
[態様20]
18A11が単離され、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質が配列番号5からCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号2からCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、態様19に記載の方法。
[態様21]
18A11が単離され、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質が、前記重鎖可変領域が配列番号5と少なくとも90%同一であり、前記軽鎖可変領域がCDR1、CDR2およびCDR3から配列番号2と少なくとも90%同一である、態様20に記載の方法。
[態様22]
18A11が軽鎖定常領域(配列番号7)および重鎖定常領域(配列番号8)をさらに含む、態様20または21に記載の方法。
[態様23]
18A11が18A11可変領域における1から10個のアミノ酸の置換、挿入または欠失により配列番号2および5のアミノ酸配列とアミノ酸配列の点で異なる、態様22に記載の方法。
[態様24]
18A11が18A11定常領域の18A11における1から10個のアミノ酸の置換、挿入または欠失により配列番号7および8のアミノ酸配列とアミノ酸配列が異なる、態様22または23に記載の方法。
[態様25]
前記18A11がいくつかの、ほとんどのまたは実質的に全てのN末端アミノ酸のピログルタミン酸への変換;ならびに1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのN末端および/またはC末端アミノ酸の除去(翻訳後または組換え技術によってのいずれか)からなる群から選択される、1つ以上の修飾を含む、態様20から24のいずれか1項に記載の方法。
[態様26]
アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体で治療されているヒト対象におけるアルファ4ベータ7受容体占有を評価する方法であって:
a)前記対象に対して6本1組の試薬管を用意し、前記管には1から6の番号を付けられており、各管がアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体(管2;「スパイク」(spiked)と称する)またはプラセボ対照(管1、3、4、5および6)を含み、そしてアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体で治療された対象から全血試料を得、
b)前記全血試料の一部を前記6本の管それぞれの中に入れて試料混合物を形成し、前記得られた試料混合物をインキュベートし;
c)1:1の割合の抗体カクテルとフィコエリスリン試薬を、前記試料混合物に加え、実質的に示したようなスキームにおいて、抗体カクテル/試料混合物を形成し:
−管1に、抗CD8+CD103;FITC、抗アルファ4ベータ7競合抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CCR7:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
−管2に、抗CD8+CD103:FITC、抗アルファ4ベータ7競合抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CCR7:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
−管3に、抗CD+CD103:FITC、非競合抗β7抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CCR7:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
−管4に、抗CD7+CD103:FITC、非競合抗β7抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
−管5に、抗CLA:FITC、非競合抗β7抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CD4:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
−管6に、抗CD19:FITC、抗CD4:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CD16+CD56:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD8 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
d)前記抗体カクテル/試料混合物をインキュベートし、
e)前記抗体カクテル/試料混合物を処理してあらゆる赤血球を溶解して残りの細胞の混合物を形成し;
f)残りの細胞の前記混合物を洗浄し、蛍光活性化セルソーターを用いてそれらを解析して、前記残りの細胞に存在する、前記アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体により占有されたアルファ4ベータ7受容体の割合を決定することを含む、方法。
[態様27]
前記試料混合物が室温で約30分間インキュベートされ、前記抗体カクテル/試料が室温で約20分間インキュベートされる、態様26に記載の方法。
[態様28]
各管に加えられる、前記全血試料の一部が100マイクロリットルであり、前記抗体カクテルの体積が20マイクロリットルであり、前記抗体:フィコレリスリン試薬の体積が60マイクロリットルである、態様26または27に記載の方法。
[態様29]
各集団に対して集められた前記CD4ナイーブT細胞のイベントの数を前記リンパ球イベントによって除算し、その後マイクロリットルあたりのリンパ球の血液学的結果によって乗算し、ナイーブCD4 T細胞をCCR7+CD45RA+CD3+CD8−CD103−CD45+リンパ球として規定する、態様26から28のいずれか1項に記載の方法。
[態様30]
スパイクおよび非スパイク状態に対する蛍光強度中央値が蛍光ビーズ検量線を用いて細胞あたりの結合分子(MBPC)に変換され、受容体占有を算出するために利用される、態様26から29のいずれか1項に記載の方法。
[態様31]
前記対象が使用可能な2つの投与前試料があり、目標飽和度は以下の式:
【数1】
を用いて算出される、態様26から30のいずれか1項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]