【実施例】
【0060】
実施例1
本実施例は、18A11のPK/PD特性の試験に用いた種々のアッセイについて述べる。
【0061】
薬剤の定量
本実施例は、対象由来の血清における18A11の量の測定に用いたアッセイについて述べる。簡単に述べると、捕捉抗体(例えば、マウス抗18A11 1.30.1mAb)は、Multi−Array(登録商標)96ウェルHighBindマイクロプレートウェル(Meso Scale Discovery)に受動的に吸着される。マイクロプレートウェルは過剰な捕捉抗体を除去した後に、Blocker(商標)BLOTTO/ツイーン緩衝剤でブロックされる。既知の含量の18A11を100%の正常ヒト血清プールにスパイクすることにより調製した標準および品質管理試料は、Blocker(商標)BLOTTO/ツイーン緩衝剤中で50倍に希釈する前処理後に、検査される試料およびマトリックスブランクとしてマイクロプレートウェルに入れられる。試料中のあらゆる18A11は、固定化捕捉抗体により捕捉される。非結合物質はマイクロプレートウェルの洗浄により除去される。洗浄後に、SULFO−TAG(商標)結合検出抗体(例えば、抗18A11 1.2.1mAb)をマイクロプレートウェルに加えて、捕捉された18A11と結合させる。非結合SULFO−TAG(商標)結合捕捉抗体を、マイクロプレートウェルの洗浄で除去する。
【0062】
この洗浄後に、結合SULFO−TAG(商標)結合検出抗体の検出を補助するために、Read Buffer T(Meso Scale Discovery)を加える。マイクロプレートが電気的に刺激された場合、リードバッファ中のトリプロピルアミン共反応物(TPA)の存在下におけるSULFO−TAG(商標)標識は、620nmで発光する。放射された光の量は、第1工程で捕捉抗体により結合された18A11の量に比例する。発光は適切なプレート読み取り装置;例えばDiscovery Workbenchソフトウェアを備えるSector Imager 6000、を用いて検出される。データは例えば、1/Y2の重み係数を有する5PL(自動測定)(5−パラメータロジスティック)回帰モデルを用いる、Watson Laboratory Information Management Systemデータ縮約パッケージを使用して、縮小される。所与の血清試料中の18A11の量は、標準および品質管理試料により作成された検量線と比較して決定される。
【0063】
抗18A11結合抗体イムノアッセイ
本実施例は、対象由来の血清において18A11を結合する抗体の存在を検出するために用いたアッセイについて述べる。このアッセイにおいて18A11との結合抗体の検出は、電気化学発光(ECL)MSD(Meso Scale Discovery)技術基盤を利用し、抗体結合の多価特性に基づく。試験戦略は、スクリーニングアッセイおよび特異性アッセイからなる段階的な2つのアッセイアプローチを含む。スクリーニングアッセイにおけるアッセイカットポイントより大きな信号雑音比(S/N)を有する試料は、特異性アッセイにおいて試験前に過剰な18A11で試料をインキュベートすることにより、さらに検査される。
【0064】
抗体複合体の解離を可能にするため、試料の酸処理が解析に先立って実施される。酸処理した血清試料および対照を、pH9.5で1MのTris中の等量のビオチン化18A11(B−18A11)およびルテニル化18A11(Ru−18A11)からなる溶液に加え、外気温でインキュベートして抗18A11抗体をビオチン化18A11分子およびルテニル化18A11分子の両方と結合させ、それにより複合体を形成する。
【0065】
インキュベーション後に、全ての試料および対照を、ウシ血清アルブミンでブロックされた洗浄済ストレプトアビジン被覆標準結合MSDプレートに移動し、外気温でインキュベートしてビオチン化18A11を捕捉させ、ストレプトアビジン表面上に複合体を形成した。プレートウェルを洗浄し、トリプロピルアミンを含有するMSDリードバッファの溶液を加える。プレートはMSD Sector Imager 6000プレート読み取り装置で読み取られる。装置内において、ルテニウムは電圧が印加された場合に誘発される電気化学発光反応に関与する。プレートのウェル上に捕捉されるルテニル化18A11を含有する複合体は、試料中の抗18A11抗体の濃度に比例する電気化学発光信号をもたらす。
【0066】
抗18A11中和抗体バイオアッセイ
本実施例は、対象由来の血清において18A11を中和する抗体の存在を検出するために用いたアッセイについて述べる。抗18A11中和抗体(NAb)試験戦略は、スクリーニングアッセイおよび特異性アッセイからなる段階的な2つのアッセイアプローチを含む。スクリーニングアッセイの目的は、試験血清試料中における18A11活性に対するあらゆる抑制を検出することである。特異性アッセイは試料を過剰な18A11でインキュベートすることにより実施され、その後解析を行い、スクリーニングアッセイにおいて観察された18A11活性の抑制が、中和抗18A11抗体の存在に対して特異的であったことを確認する。スクリーニングおよび特異性アッセイの統合成績を用いて、抗18A11中和抗体に対して試料が陽性または陰性であるかどうかを決定する。
【0067】
このアッセイにおいて、細胞表面に発現したヒトアルファ4ベータ7インテグリンに安定して導入されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(CHO−アルファ4ベータ7)を、MadCAM−1(Bi−MadCAM−1FC)および18A11のヒトビチオン標識可溶型の決まった濃度の存在下において、インキュベートする。18A11は、CHO−アルファ4ベータ7細胞の表面に発現したアルファ4ベータ7と結合し、Bi−MadCAM−1FCとアルファ4ベータ7の結合をブロックする。抗18A11中和抗体が試料中に存在する場合、関連する蛍光単位(RFU)として96ウェルプレート蛍光読み取り装置を用いて測定された、フィコエリスリン結合ストレプトアビジン(SA−PE)の蛍光信号の増加によって検出される際に、アルファ4ベータ7と結合した18A11が損なわれる。
【0068】
免疫表現型検査および受容体占有
本実施例は、ヒト対象において受容体占有を評価するための、およびCD4 T細胞サブセットを列挙するための、6色6管のフローサイトメトリーアッセイIPRO(免疫表現型検査および受容体占有)アッセイについて述べる。アルファ4ベータ7受容体の遊離および全体レベルの両方が、下記の表3に示す管の型式を用いて、別々の管の中で測定される。アルファ4ベータ7の遊離および全体レベルの両方を同定する能力は、2つの試薬、アルファ4ベータ7との結合に関して18A11と競合する抗体(下記の表3において「競合a4b7」と称される)、およびアルファ4ベータ7のβ7サブユニットと結合するが、18A11と競合しない抗体(下記の表3において「非競合b7」と称される)を用いて達成され、それぞれがフィコエリスリンと結合する。試薬は、解析からαEβ7(非競合b7抗体を結合するであろう)を発現する細胞を排除するために用いられる、抗CD103(αE)もまた含む。約500マイクログラム/mlの18A11 ex vivoでの薬剤スパイク状態の追加は、完全飽和対照として働く。高品質な専用フローサイトメトリー試薬として、1:1の抗体と蛍光体の複合物、抗体カクテルならびに凍結乾燥した薬剤およびプラセボ緩衝剤(下記の表3における、溶解緩衝剤)が挙げられる。
【0069】
【表7】
FITC:フルオレセインイソチオシアネート
PE:フィコエリスリン
PerCP:ペリジニンクロロフィルタンパク質
AlexaFluor(登録商標)647:約647nmの最大励起を有する合成蛍光色素
APC−H7:ラン藻類)−シアニン直列型蛍光色素において、付属の光合成色素が発見されたアロフィコシアニン
V450:青紫色レーザーにより励起されるクマリン色素
【0070】
6本で1組の管を、解析される各対象(または対照)に対して準備する。薬剤またはプラセボ緩衝剤は、個々のキットとして凍結乾燥および調製されてもよい。各アッセイに関して、キットにおける6本の管のそれぞれ(表3に示されるように)は、20マイクロリットルの水で再水和され、約5分間インキュベートされる。あるいは、薬剤またはプラセボは6本の管のそれぞれに設置される。各管に対して、その後解析される対象由来の末梢血100マイクロリットルを加えた。続いて管を室温で約30分間インキュベートし、その後、20マイクロリットルの抗体カクテルと60マイクロリットルの抗体:フィコエリスリンが1:1の試薬を各管に加えた。室温で約20分間のさらなるインキュベーションの後、赤血球を溶解し、残りの細胞を洗浄し、再懸濁し、蛍光活性化セルソーターを用いて解析する。リンパ球を分化させるゲーティング戦略およびそのサブタイプの比較は、CD4エフェクターメモリーT細胞、CD4セントラルメモリーT細胞およびCD4ナイーブT細胞の同定ならびに分化を促進する。二重プラットホームアプローチを使用して、CD4 T細胞サブセットを列挙する。例えば、各集団に対して集められたCD4ナイーブT細胞イベントの数をリンパ球イベントによって除算し、その後マイクロリットルあたりのリンパ球の血液学的結果によって乗算する。式:
【0071】
【数2】
に続く実施例を使用し、ナイーブCD4 T細胞をCCR7+CD45RA+CD3+CD8−CD103−CD45+リンパ球として規定する。
【0072】
競合抗アルファ4ベータ7−フィコエリスリンは遊離(非占有)アルファ4ベータ7標的受容体と全ての解析T細胞サブセット上で結合するが、非競合抗体(非競合b7)は遊離(非占有)および占有アルファ4ベータ7の両方と結合する。完全目標飽和度と対応する信号は、各対象/時点で、飽和濃度の18A11を有する「ex vivoスパイク」試料を含めることにより得られる。スパイクおよび非スパイク状態に対する蛍光強度中央値を、蛍光ビーズ検量線を用いる細胞あたりの結合分子(MBPC)に変換し、その後受容体占有の算出に利用する。目標飽和度の計算は、対象の投与前値の平均に関する所与の対象/時点に対するスパイクと非スパイク試料間の競合抗アルファ4ベータ7フィコエリスリン信号において異なる。例えば、対象に関して利用可能な2つの投与前値がある場合、算出される目標飽和度は以下の式:
【0073】
【数3】
を用いる。
【0074】
用語「管」は本発明において便宜的に用いられ;マイクロウェルプレート、キュベットおよび同類のものを含む、あらゆる適当な容器が使用されてもよいことは、当業者によって理解されたい。試料が加えられる直前に発生する再水和で、試料を得る前、および脱水する前に試薬管が調製されてもよいこともまた、理解されたい。あるいは、試薬管は試料が得られた後、または試料が得られるのと同時に調製されてもよい。
【0075】
実施例2
本実施例は、健常対象(HS)および軽度から中等度の潰瘍性大腸炎(UC;ClinicalTrials.gov、識別子:NCT01164904)に罹患した対象における18A11の安全性、耐用性、薬物動態(PK)および薬物動力(PD)を評価する、第1相、無作為抽出、二重盲検、プラセボ対照、漸増単回投与試験について述べる。次の用量を評価する:
【0076】
【表8】
【0077】
コホート1から9の健常対象由来の予備PKデータを解析し、PK特性を
図1に示す。連続した血液試料は、予定した時点の85日目に、コホート1、2、3、および4(それぞれ0.7、2.1、7、および21mgの18A11を皮下投与)に対して;予定した時点の127、197、127、197および225日目に、コホート5、6、7、8および9(それぞれ70および210mgの18A11を皮下投与;70、210、および420mgの18A11の静脈内投与)に対して、利用可能であった。PKおよび抗18A11結合抗体試料を、それぞれ10ng/mLの定量化下限値(LLOQ)および20ng/mLの高信頼検出下限値(LLRD)で、有効な電気化学発光イムノアッセイ(ECL)法を用いて定量した。名目時間をこの予備的解析に関してPKパラメータの計算に用いて、結果を表4に示した。
【0078】
単回皮下投与の後、18A11はすぐに吸収され、平均C
max値に投与の2から10日以内に到達し、個別対象t
max値は2から14日の範囲であった。70および210mgの18A11の静脈内投与と比較して、70および210mgの皮下投与はそれぞれ78%と92%の平均絶対生物学的利用能を示した。18A11のPKは、0.7から21mgの低用量皮下投与に非線形動態を示したが、C
max値は21から210mgの皮下投与用量範囲に渡り用量に比例した。70から420mgの静脈内投与用量範囲に渡り、C
maxおよび薬物濃度時間曲線下面積の両方が用量に比例した。
【0079】
標的被覆の期間もまた、210mgの皮下または静脈内への18A11の単回投与後の、皮下での≧21mgおよび>128日の18A11の単回投与後に>28日に到達した、循環CD4+T細胞上におけるα
4β
7受容体の飽和(>99%)で、投与の皮下および静脈内経路の両方に関して用量に比例した。結果を表4に示す。
【0080】
【表9】
略語:AUC
inf=0時間から無限までの濃度時間曲線下面積;AUC
last=0時間から投与後最後の観測点までの濃度時間曲線下面積;C
max=最高観測濃度;IV=静脈内(静脈内に);SC=皮下(皮下に);t
max=最高観測濃度までの時間;「−」=該当なし。注:t
maxは中央値(範囲)を表す。
【0081】
中央区画からの一次吸収ならびに平行線形および非線形排出による2区画モデルは、健常対象由来の血清18A11濃度時間統合データを適切に記載することが分かった。利用可能な全てのPKデータを用いる同時PKモデリングは、39日の18A11線形排出半減期を評価したモデルを産生した。血清中の18A11の濃度が1000ng/mLを下回る際に、最終排出相で18A11曝露の外挿のために39日の半減期を用いる場合、1000ng/mLは18A11PKが非線形標的媒介配置相を示し始め得るレベルであって、従って排出がより速く、注意が必要である。結果を
図1に示す。
【0082】
20ng/mLの高信頼検出(LLRD)の下限値を有する有効な電気化学発光イムノアッセイ法を用いて、対象試料において抗18A11結合抗体の存在を検査した。試験20090107のコホート1から9(試験終了まで)に登録の健常対象由来の試料、およびコホート10(15、85および127日目まで)における3人の潰瘍性大腸炎対象由来の試料を検査し、抗18A11結合抗体は検出されなかった。
【0083】
実施例3
本実施例は、健常対象および軽度から中等度の潰瘍性大腸炎(UC;ClinicalTrials.gov、識別子:NCT01290042)に罹患した対象(HS)における18A11の安全性、耐用性、薬物動態学および薬物動力を評価する、第1相、無作為抽出、二重盲検、プラセボ対照、漸増複数回投与試験について述べる。予備PKデータは、コホート1、2、3および8(7、21、70、および210mgの18A11の皮下投与)について、それぞれ予定した時点の141、141、197、および85日までに、3回投与後の健常対象について利用可能であった。PK特性を
図2に示し、PKパラメータを表5に示す。
【0084】
【表10】
略語:AR=3用量から1用量蓄積比;AUC
tau=参照用量後の各投与間隔以内の濃度時間曲線下面積;C
max=最高観測濃度;Q4W=4週間毎に1回(月々);SC=皮下(皮下に);t
max=最高観測濃度までの時間;「−」=該当なし。注:t
maxは中央値(範囲)を表す。
【0085】
3ヶ月間で月々7mgの皮下投与後、18A11のC
maxの約1.22倍の蓄積および1用量から3用量の18A11の薬物濃度時間曲線下面積の1.41倍の蓄積を観測した。対応する蓄積比は21mgの皮下投薬に対して1.74および1.83、70mgの皮下投薬に対して1.94および1.81、ならびに210mgの皮下投薬に対して2.00および2.03であった。21から210mgの初回皮下投与後の18A11の28日間平均PK特性は、試験20090107のものと同程度であった。
【0086】
末梢血CD4+T細胞上におけるα
4β
7受容体の標的占有率を、21mgの皮下投与、70mgの皮下投与、または210mgの皮下投与で、18A11の月々の投薬(×3)に応じて、>90%で>98日間維持し;標的占有率を、7mg(コホート1)で18A11の月々の投薬(×3)に応じて、70%から90%で84日間維持した。
【0087】
20ng/mLの高信頼検出下限値を有する有効な電気化学発光イムノアッセイ法を用いて、対象試料における抗18A11結合抗体の存在を検査した。2011年12月13日時点で、試験20101261(コホート1および2に対して141日まで、コホート3に対して85日まで、およびコホート8に対して57日まで)に登録の健常対象由来の試料を検査し、抗18A11結合抗体は検出されなかった。
【0088】
実施例4
本実施例は、前述の試験に関する薬力学的分析について述べる。単回投与試験について、暫定的な18A11のα
4β
7受容体占有データが健常対象:コホート1から4に対して85日まで(0.7、2.1、7、および21mgの皮下投与)、コホート5および6に対して127日まで(70および210mgの皮下投与)、コホート7および8に対して197日まで(70および210mgの静脈内投与)、ならびにコホート9に対して225日まで(420mgの静脈内投与)、に利用可能であった。
【0089】
単回投与試験におけるコホート1から9(健常対象)に関するα
4β
7受容体占有データを
図3に要約した。データは、循環ナイーブCD4+T細胞上におけるα
4β
7の用量との比例および可逆性の被覆を示す。同様の用量応答特性が、メモリーCD4+T細胞サブセットに関して観測された。α
4β
7全体レベルは、18A11の飽和用量への曝露において〜50%可逆的に低下することが分かった。これらの対象におけるCD4+総、ナイーブ、またはメモリーT細胞の絶対値において、著しい変化は今日まで観測されていない。
【0090】
図4は、複数回投与試験におけるコホート1から3および8(健常対象)について要約された、α
4β
7受容体占有データを示す。漸増単回投与試験に関して、データは循環ナイーブCD4+T細胞上におけるα
4β
7の可逆性および用量に比例した被覆を示す。同様の用量応答特性がメモリーCD4+T細胞サブセットに関して観測され、CD4+総、ナイーブ、またはメモリーT細胞の絶対値において著しい変化は今日まで観測されていない。
【0091】
実施例5
本実施例は、患者における臨床観察について述べ、潰瘍性大腸炎(UC)対象における2つの18A11の第1相、無作為抽出、二重盲検、プラセボ対照試験において得られたさらなる結果を要約する。潰瘍性大腸炎(UC)に罹患した対象(患者)を、210mgを単回(試験20090107)または21mgを月々3回(20101261)の皮下投与(SC)用量の18A11で治療した/治療する(NIH臨床試験ウェブサイト、URL「clinicaltrials.gov;」、それぞれ試験20090107および20101261に対して試験識別子NCT01164904(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01164904)およびNCT01290042(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01290042))。
【0092】
4から10(包括的)のメイヨースコアおよび1の直腸S状結腸鏡検査最小スコアを有する、活動性、軽度から中等度の疾患に罹患していると診断された潰瘍性大腸炎対象を登録した。1つのコホート(NCT01164904)において、現在投薬されている4人の白色人種対象(男性:女性が2:2;32〜43歳、57〜77kg)と共に、8人の潰瘍性大腸炎対象が210mgの18A11の単回投与またはプラセボの皮下投与(割合6:2)を受けなくてはならなかった。別のコホート(NCT01290042)において、4人の白色人種潰瘍性大腸炎対象(男性:女性は3:1;26〜51歳、73〜92kg)が、3ヶ月間月々21mgの18A11またはプラセボの皮下投与(割合3:1)を受けた。18A11のPK線形排出相半減期、予測α
4β
7受容体占有(RO)、および安全性監視要件に基づき、それぞれ21および210mgの投与計画下において、対象を5および7ヶ月間追跡調査しなければならなかった/しなければならない。
【0093】
PK、抗薬剤抗体(ADA)、安全性、受容体占有を含むPD、CD4+中央メモリーT細胞数(Tcm)、血清高感度C反応性タンパク質(hsCRP;Maharshak et al J Dig Dis 9: 140; 2008に記載の通りに、高感度C反応性タンパク質(hs−CRP)法を用いておおむね決定された)および糞便カルプロテクチン(FC;Vieira et al BMC Research Notes 2:221; 2009に記載の通りにおおむね決定される)バイオマーカー、ならびに部分的メイヨースコアを測定した。直腸S状結腸鏡検査の総メイヨースコアを、スクリーニング中、ならびに6、12、および28週間(210mgのみ)の来診中に評価した。この解析の目的について、「寛解」を、1ポイント超の個々のサブスコアを有さない、2未満または2と同等のメイヨースコアとして規定する。「応答」を、3超または3と同等および30%超または30%と同等のベースラインからのメイヨースコアの減少と、少なくとも1ポイントの直腸出血スコアまたは0または1の絶対リーディングにおける減少として規定する。「粘膜治癒」を、0または1の直腸S状結腸鏡検査スコアとして規定する。それぞれ210mgおよび21mgのコホートについて、結果を
図5Aおよび5Bに示す。
【0094】
8人の潰瘍性大腸炎対象のデータ(スクリーニングメイヨースコア中央値=7;少なくとも1人はプラセボ)の初期評価は、18A11のPK特性が、検出可能な抗薬物抗体を有さない同様の投与計画下において一般的に健常対象由来のものに含まれたことを示した。PKおよび受容体占有特性は、幾人かの対象において〜200%増加したTcmと直接相関していた。C反応性タンパク質および糞便カルプロテクチンは幾人かの来診/対象において減少したが、小さな試料のサイズおよび可変性が決定的な評価を妨げていた。今日まで、3および4人の対象がそれぞれ6および12週間で寛解し;5、5、および1人の対象がそれぞれ6、12、および28週間で応答を見せ;そして5人の対象が6および12週間の両方で粘膜治癒をした。今日までの盲検安全性データは、大腸炎紅斑による1件の早期治療中止を除き、18A11関連重篤有害事象または死亡を示していないが、大腸炎紅斑は研究者により治療と関係していないと見なされた。ECGまたは神経学的検査における異常性は観測されなかった。
【0095】
実施例6
本実施例は、健常日本人対象(HJS;試験識別子20110259)における18A11の安全性、耐用性、薬物動態(PK)および薬物動力(PD)を評価する、無作為抽出、二重盲検、プラセボ対照、単回漸増投与試験について述べる。健常白色人種対象(HCS)のコホートを、日本人の対応対象と体重に従い±20%で対に対応し、比較対象として含んだ。各健常日本人対象コホートは、少なくとも4人の第1世代日本人対象(すなわち、日本で生まれた4人の祖父母、実父母および対象)からなり、残りの健常日本人対象は第1世代、第2世代(日本で生まれた4人の祖父母および実父母)または第3世代(日本で生まれた4人の祖父母)のいずれかとなる。以下の用量を評価した:
【0096】
【表11】
【0097】
24人の男性健常日本人対象(HJS;22〜45歳、50〜81kg)および8人の男性健常白色人種対象(HCS;20〜45歳、60〜92kg)を無作為抽出し、18A11の単一皮下投与用量またはプラセボ(割合6:2)を21(健常日本人対象)、70(健常日本人対象および健常白色人種対象)、または210mg(健常日本人対象)(コホート1から4)で投与した。今日まで、連続した血液試料は予定した時点の85、43、43、および14日にコホート1、2、3、および4に対して利用可能であった(それぞれ21、70、70、および210mgの18A11の皮下投与またはプラセボ)。PKおよび抗18A11結合抗体試料を、それぞれ10ng/mLの定量化下限値(LLOQ)および20ng/mL高信頼検出下限値(LLRD)で、有効な電気化学発光(ECL)イムノアッセイ法を用いて定量した。名目時間を、この予備的解析に関するPKパラメータの計算のために用いて、結果を表6に示した。血液を収集し、α
4β
7受容体占有およびCD4+T細胞数を、有効な全血6色フローサイトメトリーアッセイを用いて評価した。
【0098】
予備PKデータを解析してPK特性を
図6に示し、70mgの皮下投薬下において健常日本人対象と健常白色人種対象間で実質的に重ねることができる18A11のPK特性を示す。
図7および8は、健常非日本人(HNJS、白色人種14人、黒色人種7人およびアジア人種3人;年齢20〜42歳、体重65〜106kg、試験20090107)ならびに健常日本人対象およびHCS対象(試験20110259)における、18A11のオーバーレイPKおよびPD(遊離α
4β
7受容体比率)特性を示す。18A11のPK/PD特性は、健常日本人対象および健常非日本人対象間で比較可能なPK/PD特性もまた示す21および210mgの皮下投与計画で、70mgの皮下投薬下において健常非日本人対象、健常日本人対象および健常白色人種対象間で実質的に重ねることができる。この試験において、18A11のC
maxは7(範囲:4から14)日以内の皮下投薬を達成した。18A11のC
maxおよび推定AUC
(0−4週間)値の両方は、検査をした21から210mgの範囲に渡り用量に比例した。加えて、70mgの皮下投与を下回ると推定する18A11のC
maxおよびAUC
(0−4週間)は、健常日本人対象および健常白色人種対象間で同様であった。CD4+ナイーブT細胞上におけるα
4β
7の受容体占有を、>90%で4、8、および4週間(今日までデータは利用可能である)、それぞれ21mg、70mg、および210mgの皮下投与で維持した。今日まで、投薬後1および3ヶ月で陽性抗薬物抗体を検査した対象はいない。今日までの盲検安全性データは、18A11関連重篤有害事象または死亡、用量制限毒性、または有害事象による早期治療中止を示していない。ECGまたは神経学的検査における異常性は観測されなかった。
【0099】
【表12】
略語:AUC
(0−4週間)=投与後0時間から29日(4週間)の濃度時間曲線下面積;C
max=最高観測濃度;SC=皮下(皮下に);t
max=最高観測濃度までの時間;注:t
maxは中央値(範囲)を表す。
【0100】
単回固定皮下投与計画下における18A11の安全性、免疫原性、およびPK/PD性は、日本人、白色人種、および非日本人対象の間で差異はない。中等度から重度のクローン病または潰瘍性大腸炎に罹患した日本人対象は、修飾されない18A11の進行中の第2相試験において実行された投与計画で、適宜検査され得る(www.clinicaltrials.gov.に記載される、試験識別子:NCT01696396およびNCT01694485、現在進行中の第2相試験はAmgen Inc.による提供である)。
【0101】
免疫原性に関して、全ての現在の試料を試験に登録した健常対象(白色人種および日本人の両方)由来および8人の潰瘍性大腸炎対象由来の全ての現在の試料を検査して、抗18A11結合抗体(ADA)は検出されなかった。
【0102】
これらの結果は、炎症性腸ホーミング細胞の不適当な輸送と関連する状態に罹患した個体への18A11の投与について、いくつかの投与計画を支持し、状態は例えば、消化管または粘膜アドレシン細胞接着分子を発現する細胞を含むその他の組織への白血球(リンパ球または単球など)の輸送(すなわち、白血球と粘膜アドレシン細胞接着分子を発現する細胞の結合の結果としての、腸への輸送)である。適切な投与計画は、下記の表7に示される投与計画から選択してもよい。
【0103】
【表13】
【0104】
その他の投与計画は企図され、本発明に示されるデータに基づき決定され得る。
非限定的に本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
状態に罹患した対象を治療する方法であって、状態は消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連し:
(a)7から21日間毎に5から14mg;
(b)14から56日間毎に15から54mg;
(c)43から126日間毎に55から149mg;
(d)112から147日間毎に150から299mg;および
(e)126から224日間毎に300から1000mg
からなる群から選択される量および間隔でアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を前記対象に投与することを含む、方法。
[態様2]
前記量および間隔が:
(a)11から17日間毎に5から10mg;
(b)30から50日間毎に15から30mg;
(c)75から95日間毎に55から85mg;
(d)120から132日間毎に160から260mg;および
(e)165から185日間毎に300から700mg
からなる群から選択される、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記量および間隔が:
(a)2週間毎に7mg;
(b)6週間毎に21mg;
(c)12週間毎に70mg;
(d)18週間毎に210mg;および
(e)6ヶ月毎に420mg
からなる群から選択される、態様1に記載の方法。
[態様4]
状態に罹患した対象を治療する方法であって、状態は消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連し、少なくとも約75%の受容体占有の達成および/または維持に十分な量および間隔で、その量のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を前記対象に投与することを含む、方法。
[態様5]
達成された前記受容体占有が少なくとも約80%である、態様4に記載の方法。
[態様6]
達成された前記受容体占有が少なくとも約85%である、態様4に記載の方法。
[態様7]
達成された前記受容体占有が少なくとも約90%である、態様4に記載の方法。
[態様8]
達成された前記受容体占有が少なくとも約95%である、態様4に記載の方法。
[態様9]
達成された前記受容体占有が少なくとも約99%である、態様4に記載の方法。
[態様10]
状態に罹患した対象を治療する方法であって、状態は消化管にアルファ4ベータ7を発現する細胞の不適当な輸送と関連し、血清の体積あたり10ng/mlから1000ng/mlの間のヘテロ二量体特異抗体の量を達成および/または維持するために十分な量および間隔で、その量のアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体を前記対象に投与することを含む、方法。
[態様11]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が少なくとも10ng/mlである、態様10に記載の方法。
[態様12]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が:少なくとも25ng/ml;少なくとも50ng/ml;少なくとも60ng/ml;少なくとも70ng/ml;少なくとも75ng/ml;および少なくとも80ng/mlからなる群から選択される、態様10に記載の方法。
[態様13]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が85ng/mlから100ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様14]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が70ng/mlから150ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様15]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が50ng/mlから250ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様16]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が40ng/mlから500ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様17]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が25ng/mlから750ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様18]
血清の体積あたりのヘテロ二量体特異抗体の前記量が10ng/mlから1,000ng/mlの間である、態様10に記載の方法。
[態様19]
前記アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体が18A11である、態様1から18のいずれか1項に記載の方法。
[態様20]
18A11が単離され、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質が配列番号5からCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号2からCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を有する、態様19に記載の方法。
[態様21]
18A11が単離され、アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗原結合タンパク質が、前記重鎖可変領域が配列番号5と少なくとも90%同一であり、前記軽鎖可変領域がCDR1、CDR2およびCDR3から配列番号2と少なくとも90%同一である、態様20に記載の方法。
[態様22]
18A11が軽鎖定常領域(配列番号7)および重鎖定常領域(配列番号8)をさらに含む、態様20または21に記載の方法。
[態様23]
18A11が18A11可変領域における1から10個のアミノ酸の置換、挿入または欠失により配列番号2および5のアミノ酸配列とアミノ酸配列の点で異なる、態様22に記載の方法。
[態様24]
18A11が18A11定常領域の18A11における1から10個のアミノ酸の置換、挿入または欠失により配列番号7および8のアミノ酸配列とアミノ酸配列が異なる、態様22または23に記載の方法。
[態様25]
前記18A11がいくつかの、ほとんどのまたは実質的に全てのN末端アミノ酸のピログルタミン酸への変換;ならびに1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのN末端および/またはC末端アミノ酸の除去(翻訳後または組換え技術によってのいずれか)からなる群から選択される、1つ以上の修飾を含む、態様20から24のいずれか1項に記載の方法。
[態様26]
アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体で治療されているヒト対象におけるアルファ4ベータ7受容体占有を評価する方法であって:
a)前記対象に対して6本1組の試薬管を用意し、前記管には1から6の番号を付けられており、各管がアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体(管2;「スパイク」(spiked)と称する)またはプラセボ対照(管1、3、4、5および6)を含み、そしてアルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体で治療された対象から全血試料を得、
b)前記全血試料の一部を前記6本の管それぞれの中に入れて試料混合物を形成し、前記得られた試料混合物をインキュベートし;
c)1:1の割合の抗体カクテルとフィコエリスリン試薬を、前記試料混合物に加え、実質的に示したようなスキームにおいて、抗体カクテル/試料混合物を形成し:
−管1に、抗CD8+CD103;FITC、抗アルファ4ベータ7競合抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CCR7:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
−管2に、抗CD8+CD103:FITC、抗アルファ4ベータ7競合抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CCR7:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
−管3に、抗CD+CD103:FITC、非競合抗β7抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CCR7:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
−管4に、抗CD7+CD103:FITC、非競合抗β7抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
−管5に、抗CLA:FITC、非競合抗β7抗体:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CD4:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD45 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
−管6に、抗CD19:FITC、抗CD4:フィコエリスリン、抗CD45:PerCP、抗CD16+CD56:AlexaFluor(登録商標)647、抗CD8 RA:APC−H7、および抗CD3:V450を加え;
d)前記抗体カクテル/試料混合物をインキュベートし、
e)前記抗体カクテル/試料混合物を処理してあらゆる赤血球を溶解して残りの細胞の混合物を形成し;
f)残りの細胞の前記混合物を洗浄し、蛍光活性化セルソーターを用いてそれらを解析して、前記残りの細胞に存在する、前記アルファ4ベータ7ヘテロ二量体特異抗体により占有されたアルファ4ベータ7受容体の割合を決定することを含む、方法。
[態様27]
前記試料混合物が室温で約30分間インキュベートされ、前記抗体カクテル/試料が室温で約20分間インキュベートされる、態様26に記載の方法。
[態様28]
各管に加えられる、前記全血試料の一部が100マイクロリットルであり、前記抗体カクテルの体積が20マイクロリットルであり、前記抗体:フィコレリスリン試薬の体積が60マイクロリットルである、態様26または27に記載の方法。
[態様29]
各集団に対して集められた前記CD4ナイーブT細胞のイベントの数を前記リンパ球イベントによって除算し、その後マイクロリットルあたりのリンパ球の血液学的結果によって乗算し、ナイーブCD4 T細胞をCCR7+CD45RA+CD3+CD8−CD103−CD45+リンパ球として規定する、態様26から28のいずれか1項に記載の方法。
[態様30]
スパイクおよび非スパイク状態に対する蛍光強度中央値が蛍光ビーズ検量線を用いて細胞あたりの結合分子(MBPC)に変換され、受容体占有を算出するために利用される、態様26から29のいずれか1項に記載の方法。
[態様31]
前記対象が使用可能な2つの投与前試料があり、目標飽和度は以下の式:
【数1】
を用いて算出される、態様26から30のいずれか1項に記載の方法。