【文献】
A BRUYNCK ET AL.,Characterisation of a humanised bispecific monoclonal antibody for cancer therapy,BRITISH JOURNAL OF CANCER,1993年 3月 1日,vol. 67, no. 3,pages 436 - 440
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
サンプル中の多特異性抗体の抗原の存在および/または量の決定のためのインビトロ方法であって、検出される抗原が、多特異性抗体の第1の結合特異性によって特異的に結合され得るものであり、
- 多特異性抗体、多特異性抗体に結合した抗原および遊離抗原を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートする工程;
- 遊離抗原の存在および/または量の決定前に、抗イディタイプ抗体―多特異性抗体複合体をサンプルから除去する工程;及び、
- 多特異性抗体除去サンプル中の抗原の量を決定する工程
を含み、検出される抗原が、複合体化していない抗原または遊離抗原である点を特徴とする、前記方法。
- 多特異性抗体、多特異性抗体に結合した抗原および遊離抗原を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートして、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体を形成させる工程、ならびに
- 抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体をサンプルから取り除く工程
を含む点を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
- 抗原および多特異性抗体を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートして、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体を形成させる工程、
- 抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体をサンプルから取り除く工程、ならびに
- 多特異性抗体除去サンプル中の抗原の量を決定する工程
を含む点を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体が、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体および抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体・抗原複合体の混合物である点を特徴とする、請求項4または5記載の方法。
【発明の概要】
【0006】
発明の要旨
本明細書には、多特異性結合体の少なくとも1つの結合特異性によって特異的に結合され得る、遊離の、すなわち複合体化されていない結合パートナーの存在の検出および/または量の決定のための方法が報告されている。遊離結合パートナーの存在または量の決定前に、多特異性結合体によって特異的に結合された結合パートナーを、すなわち結合パートナー・多特異性結合体複合体を、サンプルから除去することが有利であることが見出された。本明細書に報告される方法にしたがい、多特異性結合体の除去は、多特異性結合体の1つの結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体と共にサンプルをインキュベートすることによって達成され、ここで、単特異性結合体は、決定対象の結合パートナーに結合しない多特異性結合体の結合特異性に特異的に結合する(
図2を参照のこと)。
【0007】
本明細書に報告される1つの局面は、多特異性結合体の第1の結合特異性によって特異的に結合され得る結合パートナー(抗原、標的、分析物)の存在および/または量のインビトロ決定方法であって、多特異性結合体に結合された結合パートナーが、多特異性結合体の第2の結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体と共にサンプルをインキュベートすることによって、結合パートナーの検出前に除去される、方法、である。
【0008】
1つの態様において、検出される結合パートナーは、複合体化されていない結合パートナーまたは遊離結合パートナーである。
【0009】
したがって、本明細書に報告される1つの局面は、多特異性結合体の結合パートナーの存在および/または量の決定のためのインビトロ方法であって、結合パートナーが、多特異性結合体の第1の結合特異性によって特異的に結合され得るものであり、
- 結合パートナーおよび多特異性結合体を含むサンプルを、多特異性結合体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体と共にインキュベートする工程、
を含む、方法、である。
【0010】
1つの態様において、この方法は、
- 結合パートナーおよび多特異性結合体を含むサンプルを、多特異性結合体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体と共にインキュベートする工程、ならびに
- 多特異性結合体除去サンプル中の結合パートナーの量を決定する工程、
を含む。
【0011】
1つの態様において、この方法は、
- 結合パートナーおよび多特異性結合体を含むサンプルを、多特異性結合体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体と共にインキュベートする工程、
- 遊離結合パートナーの存在または量の決定前に、単特異性結合体・多特異性結合体複合体をサンプルから除去する工程、ならびに
- 多特異性結合体除去サンプル中の結合パートナーの量を決定する工程、
を含む。
【0012】
多特異性結合体の第2の結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体とのインキュベートにより、多特異性結合体がサンプルから取り除かれる。それに伴い、結合パートナー・多特異性結合体複合体もサンプルから取り除かれる。
【0013】
1つの態様において、多特異性結合体は、抗体、抗体もしくは抗体フラグメントおよび非抗体ポリペプチドを含む融合ポリペプチド、抗体もしくは抗体フラグメントおよび可溶性受容体を含む融合ポリペプチド、または抗体もしくは抗体フラグメントおよびペプチド性結合分子を含む融合ポリペプチドから選択される。
【0014】
1つの態様において、多特異性結合体は、抗体である。1つの態様において、抗体は、2特異性抗体または3特異性抗体または4特異性抗体または5特異性抗体または6特異性抗体である。1つの態様において、抗体は、2特異性抗体である。
【0015】
1つの態様において、単特異性結合体は、抗イディオタイプ抗体である。
【0016】
1つの態様において、結合特異性は、結合部位または抗体重鎖可変ドメインと抗体軽鎖可変ドメインとの対である。
【0017】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、固相に結合される。
【0018】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体はビオチニル化され、そして固相はストレプトアビジンコーティングされる。1つの態様において、固相は、ストレプトアビジンコーティングされた常磁性ビーズまたはストレプトアビジンコーティングされたセファロースビーズである。
【0019】
本明細書に報告される1つの局面は、免疫アッセイを用いる、サンプル中の多特異性結合体の結合パートナーの存在および/または量の免疫学的決定方法であって、多特異性結合体が、結合パートナーの決定前にサンプルから除去される、方法、である。
【0020】
本明細書に報告されるすべての局面の1つの態様において、結合パートナーは、遊離結合パートナー、すなわち、多特異性結合体によって結合または複合体化されていない結合パートナーである。
【0021】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、多特異性結合体に対するビオチニル化抗イディオタイプ抗体であり、ストレプトアビジンを介して固相にコンジュゲートされる。
【0022】
本明細書に報告される方法の1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、固相にコンジュゲートされる抗体部位に関して異なる少なくとも2つの抗イディオタイプ抗体を含む混合物である。
【0023】
1つの態様において、抗体とそのコンジュゲートパートナーとのコンジュゲートは、薬物抗体のアミノ酸骨格のN末端および/もしくはε-アミノ基(リシン)、異なるリシンのε-アミノ基、カルボキシ官能基、スルフヒドリル官能基、ヒドロキシル官能基および/もしくはフェノール官能基、ならびに/または薬物抗体の炭水化物構造の糖アルコール基を介した化学結合によって行われる。
【0024】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体混合物は、少なくとも2つの異なるアミノ基を介して固相にコンジュゲートされた抗イディオタイプ抗体を含む。そのような異なるアミノ基を介したカップリングは、第1工程における、化学保護剤によるε-アミノ基の一部のアシル化によって、例えばシトラコニル化(citraconylation)によって、行われ得る。第2工程において、残りのアミノ基を介してコンジュゲートが行われる。その後にシトラコニル化が取り除かれ、そして抗体が残りの遊離アミノ基を介して固相にコンジュゲートされる、すなわち、得られた抗体が、シトラコニル化によって保護されなくなったアミノ基を介して固相にコンジュゲートされる。適当な化学保護剤は、保護されていない側鎖アミンにおいて結合を形成し、それはN末端におけるそれらの結合よりも安定性が低く、かつN末端におけるそれらの結合と異なる。多くのそのような化学保護剤が公知である(例えば、EP 0 651 761を参照のこと)。1つの態様において、化学保護剤は、マレイン酸無水物またはシトラコニル酸(citraconylic acid)無水物等の環状ジカルボン酸無水物を含む。
【0025】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、受動的吸着によって固相にコンジュゲートされる。受動的吸着は、例えば、"Solid Phases in Immunoassay" (1996) 205-225においてButler, J.E.,により、ならびに"Immunoassays" (1996) Academic Press (San Diego)においてDiamandis, E.P.,およびChristopoulos, T.K.(編者)により、記載されている。
【0026】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、特異的な結合対を介してコンジュゲート(固定化)される。そのような結合対(第1の要素/第2の要素)は、1つの態様において、ストレプトアビジンまたはアビジン/ビオチン、抗体/抗原(例えば、Hermanson, G.T., et al., Bioconjugate Techniques, Academic Press (1996)を参照のこと)、レクチン/多糖類、ステロイド/ステロイド結合タンパク質、ホルモン/ホルモン受容体、酵素/基質、IgG/プロテインAおよび/またはG等から選択される。1つの態様において、抗イディオタイプ抗体はビオチンにコンジュゲートされ、そして固定化は固定化されたアビジンまたはストレプトアビジンを介して行われる。
【0027】
本明細書に報告される1つの局面は、サンプル中の多特異性抗体の抗原の存在および/または量の決定のためのインビトロ方法であって、検出される抗原が、多特異性抗体の第1の結合特異性によって特異的に結合され得るものであり、
- 多特異性抗体、多特異性抗体に結合した抗原および遊離抗原を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートする工程、
を含む、方法、である。
【0028】
1つの態様において、この方法は、
- 抗原および多特異性抗体を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートする工程、ならびに
- 多特異性抗体除去サンプル中の抗原の量を決定する工程、
を含む。
【0029】
1つの態様において、この方法は、
- 抗原および多特異性抗体を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートする工程、
- 遊離抗原の存在または量の決定前に、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体をサンプルから除去する工程、ならびに
- 多特異性抗体除去サンプル中の抗原の量を決定する工程、
を含む。
【0030】
多特異性抗体の第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体とのインキュベートにより、多特異性抗体がサンプルから取り除かれる。それに伴い、抗原・多特異性抗体複合体もサンプルから取り除かれる。
【0031】
1つの態様において、サンプルは、多特異性抗体、遊離抗原および多特異性抗体・抗原複合体を含み、検出は多特異性抗体の遊離抗原の検出である。
【0032】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、常磁性ビーズにコンジュゲートされる。
【0033】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、固相にコンジュゲートされる。
【0034】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体はビオチニル化され、そして固相はストレプトアビジンコーティングされる。1つの態様において、固相は、ストレプトアビジンコーティングされた常磁性ビーズまたはストレプトアビジンコーティングされたセファロースビーズである。
【0035】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、多特異性抗体の第2の結合特異性に対して10
5 l/mol
*sまたはそれ以上の会合定数k
aを有する。
【0036】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、多特異性抗体の第2の結合特異性に対する結合に関して5
*10
-8 mol/lまたはそれ以下のK
D値を有する。
【0037】
1つの態様において、結合特異性は、結合部位である。1つの態様において、結合部位は、抗体重鎖可変ドメインと抗体軽鎖可変ドメインとの対である。
【0038】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体とインキュベートすることは、約10分間〜約36時間である。
【0039】
1つの態様において、サンプルは、約2μg/ml〜約15μg/mlの多特異性抗体濃度に調節される。
【0040】
1つの態様において、サンプルは、約1ng/ml〜約250ng/mlの総抗原濃度に調節される。
【0041】
1つの態様において、この方法は、以下の工程、
- 多特異性抗体、多特異性抗体に結合した抗原および遊離抗原を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートし、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体を形成させる工程、ならびに
- 抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体をサンプルから取り除く工程、
を含む。
【0042】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体は、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体および抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体・抗原複合体の混合物である。
【0043】
1つの態様において、この方法は、以下の工程、
- 抗原および多特異性抗体を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートし、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体を形成させる工程、
- 抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体をサンプルから取り除く工程、ならびに
- 多特異性抗体除去サンプル中の抗原の量を決定する工程、
を含む。
【0044】
1つの態様において、抗原の量の決定は、以下の工程、
- 多特異性抗体除去サンプルを、抗原に特異的に結合する捕捉抗体と共にインキュベートし、捕捉抗体・抗原複合体を形成させる工程、および
- 形成された捕捉抗体・抗原複合体をサンプル中の抗原の量と相関させる工程、
を含む。
【0045】
1つの態様において、抗原の量の決定は、以下の工程、
- 多特異性抗体除去サンプルを、抗原に特異的に結合する捕捉抗体と共にインキュベートし、捕捉抗体・抗原複合体を形成させる工程、
- 捕捉抗体・抗原複合体をトレーサー抗体と共にインキュベートする工程であって、それによって、捕捉抗体およびトレーサー抗体が抗原上の重複しないエピトープに結合する、工程、および
- 形成された捕捉抗体・抗原・トレーサー抗体複合体をサンプル中の抗原の量と相関させる工程、
を含む。
【0046】
1つの態様において、抗原の量の決定は、以下の工程、
- 多特異性抗体除去サンプルを、抗原に特異的に結合する捕捉抗体と共にインキュベートし、捕捉抗体・抗原複合体を形成させる工程、
- 捕捉抗体・抗原複合体をトレーサー抗体と共にインキュベートする工程であって、それによって、捕捉抗体およびトレーサー抗体が抗原上の重複しないエピトープに結合する、工程、
- 捕捉抗体・抗原・トレーサー抗体複合体を、検出可能な標識を含む検出抗体と共にインキュベートする工程であって、それによって、検出抗体がトレーサー抗体の可変ドメインの外側のエピトープにおいてトレーサー抗体に特異的に結合する、工程、および
- 形成された捕捉抗体・抗原・トレーサー抗体複合体をサンプル中の抗原の量と相関させる工程、
を含む。
【0047】
1つの態様において、多特異性抗体は、第1の抗原または抗原上の第1のエピトープに特異的に結合する第1の結合特異性を有し、かつ第2の抗原または抗原上の第2のエピトープに特異的に結合する第2の結合特異性を有する2特異性抗体である。
【0048】
本明細書に報告される1つの局面は、多特異性抗体の第2の結合特異性に結合した抗原をサンプルから除去するための、多特異性抗体の第1の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体の使用、である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
発明の詳細な説明
本明細書には、前臨床および臨床サンプル中の多特異性結合体、例えば2特異性抗体/薬物の「遊離結合パートナー」を検出するための、サンプルの前処理のインビトロ方法が報告されている。
【0050】
遊離結合パートナーの検出前に多特異性結合体がサンプルから除去されなければならないことが見出された。
【0051】
本明細書には、治療用多特異性抗体の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体の、該治療用多特異性抗体の第2の異なる結合特異性によって結合され得るが結合されていない抗原のレベルの決定における使用、が報告されている。多特異性抗体および多特異性抗体・検出対象抗原の複合体をサンプルから除去するために、抗イディオタイプ抗体が使用される。
【0052】
したがって、本明細書には、多特異性結合体の第1の結合特異性によって特異的に結合され得る多特異性結合体の遊離結合パートナー(抗原、標的、分析物)の決定のためのインビトロ方法であって、多特異性結合体が、多特異性結合体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体と共にサンプルをインキュベートすることによって、遊離結合パートナーの決定前にサンプルから除去され、それと共に、多特異性結合体および多特異性結合体・結合パートナー複合体がサンプルから除去される、方法、が報告されている。
【0053】
総抗原、2特異性抗体に結合した抗原および遊離抗原の決定は、治療用抗体を用いる治療のモニタリングに役立つ。総抗原は、遊離抗原および2特異性抗体に結合した抗原の和である。
【0054】
以下では、本明細書に報告される方法が、多特異性結合体の態様として複数の抗原または同一抗原上の複数のエピトープに特異的に結合する多特異性抗体を、そして結合パートナーの態様として多特異性抗体の1つの結合特異性によって特異的に結合される抗原を用いて例証されている。
【0055】
「抗体」という用語は、本明細書において最も広義の意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、2特異性抗体)および抗体フラグメントを含むがこれらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0056】
特定の態様において、抗体は、多特異性抗体、例えば2特異性抗体である。多特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の態様において、結合特異性の1つは、第1の抗原に対するものであり、他は、異なる第2の抗原に対するものである。特定の態様において、2特異性抗体は、同一抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。2特異性抗体は、全長抗体または抗体フラグメントとして調製され得る。1つの態様において、抗体は、第1および第2の抗原に特異的に結合する2特異性抗体である。1つの態様において、2特異性抗体は、i)第1の抗原または抗原上の第1のエピトープに特異的に結合する第1の結合特異性、およびii)第2の抗原または同一抗原上の第2のエピトープに特異的に結合する第2の結合特異性、を有する。1つの態様において、同一抗原上の第2のエピトープは、重複しないエピトープである。
【0057】
多特異性抗体は、WO 2009/080251、WO 2009/080252、WO 2009/080253、WO 2009/080254、WO 2010/112193、WO 2010/115589、WO 2010/136172、WO 2012/145792またはWO 2010/145793に記載されている。
【0058】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含むインタクトな抗体ではない分子を表す。抗体フラグメントの例は、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')
2;ダイアボディ;リニア抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を含むがこれらに限定されない。
【0059】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを表す。抗体にはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという5つの大クラスがあり、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1およびIgA
2にさらに分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。
【0060】
「遊離抗原」という用語は、抗体の結合特異性によって特異的に結合され得るが、その時点ではこの結合特異性に結合されていない抗原を意味する。1つの態様において、遊離抗原は、抗体に結合していない抗原または抗体と複合体化していない抗原である。
【0061】
「Fc領域」という用語は、本明細書において、その定常領域の少なくとも一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、ネイティブ配列のFc領域および変種のFc領域を含む。1つの態様において、ヒトIgG重鎖のFc領域は、Cys226からまたはPro230から重鎖のカルボキシル末端まで延びている。しかし、Fc領域のC末端リシン(Lys447)は、存在する場合と存在しない場合がある。それ以外のことが本明細書に示されていない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号は、Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242に記載される、EUインデックスとも呼ばれる、EU番号体系にしたがうものである。
【0062】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)の残基以外の可変ドメインの残基を表す。可変ドメインのFRは、通常、FR1、FR2、FR3およびFR4という4つのFRドメインからなっている。したがって、HVRおよびFRの配列は、通常、VH(またはVL)において以下の順で見られる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0063】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生されるまたはヒト抗体レパートリーもしくはその他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源から得られる抗体のそれに対応するアミノ酸配列を保有するものである。このヒト抗体の定義は、特に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0064】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基およびヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を表す。特定の態様において、ヒト化抗体は、HVR(例えば、CDR)のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のそれらに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト抗体のそれらに対応する、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むであろう。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部分を含み得る。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化処理が行われた抗体を表す。
【0065】
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、配列に関して超可変性がありおよび/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの各領域を表す。通常、ネイティブの4鎖抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)およびVLに3つ(L1、L2、L3)の6つのHVRを含む。HVRは通常、超可変ループ由来および/または「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は最も高い配列可変性を有するおよび/または抗原認識に関与するものである。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)で見られる(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917)。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24〜34、L2の50〜56、L3の89〜97、H1の31〜35B、H2の50〜65およびH3の95〜102で見られる(Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242)。VHのCDR1を除いて、CDRは通常、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRはまた、抗原に接触する残基である「特異性決定残基」または「SDR」を含む。SDRは、簡易CDR(abbreviated CDR)またはa-CDRと呼ばれるCDRの領域に含まれる。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2およびa-CDR-H3)は、L1のアミノ酸残基31〜34、L2の50〜55、L3の89〜96、H1の31〜35B、H2の50〜58およびH3の95〜102で見られる(Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633)。それ以外のことが示されていない限り、HVR残基および可変ドメインのその他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、Kabat et al.,前記にしたがい番号付けされる。
【0066】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を表す、すなわち、その集団を形成する個々の抗体は、例えば自然発生する変異を含むまたはモノクローナル抗体調製物の製造時に生じる起こり得る変種抗体、例えば通常微量で存在する変種、を除いて、同一であるおよび/または同一エピトープに結合する。典型的に異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示しており、何らかの特定の方法による抗体の製造を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがい使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法およびヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部分を含むトランスジェニック動物を用いる方法を含むがこれらに限定されない様々な技術によって作製され得、そのような方法およびその他の例示的なモノクローナル抗体作製法は本明細書に記載されている。
【0067】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを表す。ネイティブ抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は、通常、類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む(例えば、Kindt, T.J. et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007)の91ページを参照のこと)。抗原結合特異性を与えるのに単一のVHまたはVLドメインで十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体由来のVHまたはVLドメインをそれぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングするために用いて、単離され得る(例えば、Portolano, S. et al., J. Immunol. 150 (1993) 880-887; Clackson, T. et al., Nature 352 (1991) 624-628を参照のこと)。
【0068】
「抗イディオタイプ抗体」という用語は、結合特異性、例えば親抗体の結合部位、に特異的に結合する、すなわち、例えば親抗体の抗原結合部位に対する、抗体を表す。1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、親抗体のCDRの1つまたは複数に特異的に結合する。1つの態様において、親抗体は、治療用抗体である。1つの態様において、親抗体は、多特異性抗体である。1つの態様において、親抗体は、2特異性抗体である。
【0069】
2つのエピトープは、問題のエピトープを20〜50nMの濃度とし、エピトープ重複を検出したい抗体を100nMの濃度とする、固定化された抗体および可溶性の抗原、またはその逆、を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって50%またはそれ以上、1つの態様においては75%またはそれ以上のシグナル減少が検出される場合、重複している。あるいは、同一抗原に結合する2つの抗体のエピトープ重複を競合試験系の下で決定する方法を使用することができる。この目的で、例えば、組み換え抗原エピトープを発現する細胞を用いる細胞ベースの酵素免疫アッセイ(ELISA)の下で、固定化された抗原への結合に関してエピトープ重複を検出したい抗体が他の抗体と競合するかどうかが試験される。この目的で、固定化された抗原は、標識された形式の抗体および過剰なエピトープ重複を決定対象の抗体と共にインキュベートされる。結合した標識の検出によって、エピトープ重複を容易に確認することができる。同一濃度下での70%超、1つの態様においては80%超のシグナル減少、またはより高濃度、1つの例では10
5倍過剰の、既知抗体と称される、エピトープ重複を検出したい抗体の下での80%超、1つの態様においては90%超の置換が、決定され、次いで、エピトープの同一性または重複性が存在することおよび両方の抗体が同一抗原上の同一または重複するエピトープに結合することが決定される。
【0070】
異なる免疫アッセイの原理が、例えば、Hage, D.S.(Anal. Chem. 71 (1999) 294R-304R)によって記載されている。Lu, B.,ら(Analyst 121 (1996) 29R-32R)は、免疫アッセイにおいて使用する抗体の有向固定化(oriented immobilization)を報告している。アビジン・ビオチンを介した免疫アッセイが、例えば、Methods Enzymol. 184 (1990) 467-469において、Wilchek, M.,およびBayer, E.A.,によって報告されている。
【0071】
モノクローナル抗体およびそれらの定常ドメインは、タンパク質として、結合パートナー、例えば表面、タンパク質、ポリマー(例えば、PEG、セルロースもしくはポリスチロール)、酵素または多くの結合対、とカップリングする多くの反応性側鎖を含んでいる。抗体の化学反応基は、例えば、アミノ基(リシン、アルファ・アミノ基)、チオール基(シスチン、システインおよびメチオニン)、カルボン酸基(アスパラギン酸、グルタミン酸)および糖アルコール基である。そのような方法は、例えば、"Bioconjugation", MacMillan Ref. Ltd. 1999, pp.50-100において、Aslam M.,およびDent, A.,によって記載されている。
【0072】
タンパク質の最も一般的な反応基の1つは、アミノ酸リシンの脂肪族ε-アミンである。概ね、ほぼすべての抗体が、豊富にリシンを含んでいる。リシンのアミンは、pH 8.0より上でほど良い求核体であり(pK
a = 9.18)、したがって様々な試薬と容易かつ手際よく反応して安定な結合を形成する。アミン反応性試薬は、主としてリシンおよびタンパク質のα-アミノ基と反応する。反応性エステル、特にN-ヒドロキシ-スクシンイミド(NHS)エステルは、アミン基の修飾に最も広く利用されている試薬である。水性環境下での反応の至適pHは、pH 8.0〜9.0である。イソチオシアネートは、アミン修飾試薬であり、タンパク質とチオ尿素結合を形成する。それらは水溶液(pH 9.0〜9.5が最適)中でタンパク質アミンと反応する。アルデヒドは、穏やかな水性条件下で、脂肪族および芳香族アミン、ヒドラジンおよびヒドラジドと反応し、イミン中間体(シッフ塩基)を形成する。シッフ塩基は、穏やかまたは強い還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウムまたはシアノ水素化ホウ素ナトリウム)によって選択的に還元され、安定なアルキルアミン結合を生じ得る。アミンの修飾に使用されている他の試薬は、酸無水物である。例えば、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA)は、2つのアミン反応性無水物基を含む2官能性キレート化剤である。それはタンパク質のN末端およびε-アミン基と反応して、アミド連結を形成することができる。無水物の環は、配位錯体内で金属に緊密に結合することができる多価の金属キレート化アームを形成するよう開環する。
【0073】
抗体内の別の一般的な反応基は、硫黄含有アミノ酸シスチンおよびその還元産物システイン(またはハーフシスチン)のチオール残基である。システインは、アミンよりも求核性でありそして一般にタンパク質内で最も反応性の高い官能基である遊離チオール基を含んでいる。チオールは一般に、中性pHで反応性であり、したがってアミンの存在下で選択的に他の分子にカップリングさせることができる。遊離スルフヒドリル基は比較的反応性が高いので、これらの基を有するタンパク質は、しばしば、ジスルフィド基またはジスルフィド結合のようなそれらの酸化形態にあるそれらと共に存在する。そのようなタンパク質において、反応性の遊離チオールの生成には、試薬、例えばジチオトレイトール(DTT)によるジスルフィド結合の還元が必要とされる。チオール反応性試薬は、タンパク質上のチオール基とカップリングしてチオエーテルカップリング産物を形成し得るものである。これらの試薬は、弱酸性〜中性pHで迅速に反応し、したがって、アミン基の存在下で選択的に反応させることができる。文献は、反応性アミノ基を介した複数のスルフヒドリル基の効率的導入方法を提供するための、様々なチオール化架橋試薬、例えばトラウト試薬(2-イミノチオラン)、スクシンイミジル(アセチルチオ)アセテート(SATA)およびスルホスクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Sulfo-LC-SPDP)の使用を報告している。ハロアセチル誘導体、例えばヨードアセトアミドは、チオエーテル結合を形成し、これもチオール修飾試薬である。さらなる有用な試薬は、マレイミドである。マレイミドとチオール反応性試薬の反応は、本質的にヨードアセトアミドと同じである。マレイミドは、弱酸性〜中性pHで迅速に反応する。
【0074】
抗体内の別の一般的な反応性基は、カルボン酸である。タンパク質は、そのC末端の位置ならびにアスパラギン酸およびグルタミン酸の側鎖の中にカルボン酸基を含んでいる。カルボン酸は水中での反応性が比較的低いため、通常、タンパク質およびその他の生体分子の選択的な修飾のためにこれらの基を使用することは困難である。これを行う際、カルボン酸基は通常、水溶性のカルボジイミドを使用することによって反応性エステルに変換され、そして求核試薬、例えばアミン、ヒドラジドまたはヒドラジンと反応させられる。アミン含有試薬は、より塩基性の高いリシンのε-アミンの存在下で活性化されたカルボン酸と選択的に反応し、安定なアミド結合を形成するために、弱塩基性であるべきである。タンパク質の架橋は、pHが8.0より上のときに起こり得る。
【0075】
過ヨウ素酸ナトリウムは、抗体に付加された炭水化物部分の中の糖のアルコール部分をアルデヒドに酸化させるために使用され得る。各アルデヒド基は、カルボン酸に関して記載されるように、アミン、ヒドラジドまたはヒドラジンと反応させられ得る。炭水化物部分は主として抗体の結晶化フラグメント(Fc)領域で見出されるので、コンジュゲートは、抗原結合部位から離れた炭水化物の部位特異的修飾を通じて達成され得る。シッフ塩基中間体が形成され、これが、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(穏やかかつ選択的な)または水素化ホウ素ナトリウム(強い)水溶性還元剤を用いた中間体の還元を通じてアルキルアミンに還元され得る。
【0076】
「サンプル」という用語は、生物または以前に生物であったもの由来の任意の多くの物質を含むがこれらに限定されない。そのような生物は、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギおよびその他の動物を含むがこれらに限定されない。1つの態様において、サンプルは、サル、特にカニクイザル、またはウサギまたはマウスまたはラットから得られる。そのような物質は、1つの態様において、臨床実務において最も広く使用されているサンプル源である、個体由来の全血、血清または血漿を含むがこれらに限定されない。
【0077】
「固相」という用語は、非流体物質を意味し、ポリマー、金属(常磁性、強磁性粒子)、ガラスおよびセラミック等の材料から作製される粒子(マイクロ粒子およびビーズを含む);シリカ、アルミナおよびポリマーゲル等のゲル物質;ポリマー、金属、ガラスおよび/またはセラミックから作製され得るキャピラリー;ゼオライトおよびその他の多孔質物質;電極;マイクロタイタープレート;固形ストリップ;ならびにキュベット、チューブまたはその他の分光測定サンプル容器を含む。固相という要素は、「固相」がその表面上にサンプル中の物質と相互作用することが意図されている少なくとも1つの部分を含む点で、不活性な固体表面とは区別される。固相は、不動要素、例えばチューブ、ストリップ、キュベットもしくはマイクロタイタープレートであり得、または非不動要素、例えばビーズおよびマイクロ粒子であり得る。タンパク質および他の物質の非共有結合的または共有結合的のいずれかの付加を実現する様々なマイクロ粒子が使用され得る。そのような粒子は、ポリマー粒子、例えばポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリレート);金粒子、例えば金ナノ粒子および金コロイド;ならびにセラミック粒子、例えばシリカ、ガラスおよび金属酸化物粒子を含む。例えば、Martin, C.R., et al., Analytical Chemistry-News & Features, 70 (1998) 322A-327AまたはButler, J.E., Methods 22 (2000) 4-23を参照のこと。
【0078】
1つの態様において、色素源(蛍光または発光基および色素)、酵素、NMR活性基、金属粒子またはハプテン、例えばジゴキシゲニンから、検出可能な標識が選択される。検出可能な標識はまた、光活性化可能な架橋基、例えば、アジドまたはアジリン基であり得る。電気化学発光によって検出できる金属キレートも、1つの態様において、シグナル発生基であり、ルテニウムキレート、例えばルテニウム(ビスピリジル)
32+キレートが特に好まれる。適当なルテニウム標識基は、例えば、EP 0 580 979、WO 90/05301、WO 90/11511およびWO 92/14138に記載されている。
【0079】
本明細書には、(遊離)抗原の量の決定前に複合体化された形態または複合体化されていない形態のいずれかの多特異性抗体をサンプルから除去するために、決定対象の(遊離)抗原に特異的に結合する多特異性抗体の結合特異性ではない多特異性抗体の1つの結合特異性に特異的に結合する固相に固定化された抗イディオタイプ抗体を含む、サンプル中の多特異性抗体の(遊離)抗原の存在および/または量の決定方法が報告されている。
【0080】
1つの態様において、多特異性抗体除去サンプル中の抗原の存在および/または量の決定は、抗原架橋免疫アッセイによる。1つの態様において、免疫アッセイは、捕捉抗体およびトレーサー抗体を含み、捕捉が固相にコンジュゲートされ、トレーサー抗体が検出可能な標識にコンジュゲートされる。
【0081】
1つの態様において、この方法は、遊離結合パートナーの存在または量の決定前の、サンプルからの単特異性結合体・多特異性結合体複合体の除去を含む。
【0082】
本明細書に報告される1つの局面は、サンプル中の多特異性抗体の抗原の存在および/または量の決定のためのインビトロ方法であって、検出される抗原が、多特異性抗体の第1の結合特異性によって特異的に結合され得るものであり、
- 抗原および多特異性抗体を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートし、それによって多特異性抗体をサンプルから取り除く工程、
を含む、方法、である。
【0083】
当業者は、抗原および抗原に特異的に結合することができる抗体を含むサンプルが、熱力学的平衡により、遊離抗原、抗体に結合した抗原および遊離抗体の混合物を含むことを、理解している。
【0084】
1つの態様において、この方法は、以下の工程、
- 抗原および多特異性抗体を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートし、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体を形成させる工程、ならびに
- 抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体をサンプルから取り除く工程、
を含む。
【0085】
1つの態様において、この方法は、以下の工程、
- 抗原および多特異性抗体を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートし、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体を形成させる工程、
- 抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体をサンプルから取り除く工程、ならびに
- 多特異性抗体除去サンプル中の抗原の量を決定する工程、
を含む。
【0086】
1つの態様において、この方法は、
- 遊離結合パートナーの存在または量の決定前に、単特異性結合体・多特異性結合体複合体をサンプルから除去する工程、
を含む。
【0087】
1つの態様において、この方法は、
- 結合パートナーおよび多特異性結合体を含むサンプルを、多特異性結合体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体と共にインキュベートする工程、
- 遊離結合パートナーの存在または量の決定前に、単特異性結合体・多特異性結合体複合体をサンプルから除去する工程、ならびに
- 多特異性結合体除去サンプル中の結合パートナーの量を決定する工程、
を含む。
【0088】
1つの態様において、抗原の存在および/または量の決定は、抗原架橋免疫アッセイによる。
【0089】
1つの態様において、抗原の存在および/または量の決定は、遊離抗原の量の決定である。
【0090】
1つの態様において、抗原の存在および/または量の決定は、以下の工程、
- 多特異性抗体除去サンプルを、抗原に特異的に結合する捕捉抗体と共にインキュベートし、捕捉抗体・抗原複合体を形成させる工程、および
- 形成された捕捉抗体・抗原複合体を、サンプル中の抗原の量と相関させる工程、
を含む。
【0091】
1つの態様において、抗原の存在および/または量の決定は、以下の工程、
- 多特異性抗体除去サンプルを、抗原に特異的に結合する捕捉抗体と共にインキュベートし、捕捉抗体・抗原複合体を形成させる工程、
- 捕捉抗体・抗原複合体をトレーサー抗体と共にインキュベートする工程であって、それによって、捕捉抗体およびトレーサー抗体が抗原上の重複しないエピトープに結合する、工程、および
- 形成された捕捉抗体・抗原・トレーサー抗体複合体をサンプル中の抗原の量と相関させる工程、
を含む。
【0092】
1つの態様において、トレーサー抗体は、検出可能な標識を含む。
【0093】
1つの態様において、抗原の存在および/または量の決定は、以下の工程、
- 多特異性抗体除去サンプルを、抗原に特異的に結合する捕捉抗体と共にインキュベートし、捕捉抗体・抗原複合体を形成させる工程、
- 捕捉抗体・抗原複合体をトレーサー抗体と共にインキュベートする工程であって、それによって、捕捉抗体およびトレーサー抗体が抗原上の重複しないエピトープに結合する、工程、
- 捕捉抗体・抗原・トレーサー抗体複合体を、検出可能な標識を含む検出抗体と共にインキュベートする工程であって、それによって、検出抗体がトレーサー抗体の可変ドメインの外側のエピトープにおいてトレーサー抗体に特異的に結合する、工程、および
- 形成された捕捉抗体・遊離抗原・トレーサー抗体複合体をサンプル中の抗原の量と相関させる工程、
を含む。
【0094】
1つの態様において、捕捉抗体およびトレーサー抗体は、抗原上の重複しないエピトープに結合する。
【0095】
1つの態様において、抗イディオタイプおよび/または捕捉抗体は、固相にコンジュゲートされる。
【0096】
本明細書に報告される方法において有用な抗イディオタイプ抗体および/または捕捉抗体は、固相にコンジュゲートされ得る。コンジュゲートは、1つの態様において、抗体のアミノ酸骨格のN末端および/もしくはε-アミノ基(リシン)、異なるリシンのε-アミノ基、カルボキシ官能基、スルフヒドリル官能基、ヒドロキシル官能基および/もしくはフェノール官能基、ならびに/または抗体の炭水化物構造の糖アルコール基を介した化学結合によって行われる。抗イディオタイプ抗体および/または捕捉抗体は、1つの態様において、固相にコンジュゲートされた少なくとも2つの抗体の混合物であり、固相にコンジュゲートされた少なくとも2つの抗体は、固相にコンジュゲートされる部位に関して異なる。例えば、固相にコンジュゲートされた少なくとも2つの抗体の混合物は、抗体のアミノ酸骨格のアミノ酸を介して固相にコンジュゲートされた抗体および抗体の炭水化物構造の糖アルコール基を介して固相にコンジュゲートされた抗体を含み得る。また、例えば、固相にコンジュゲートされた少なくとも2つの抗体の混合物は、それらのアミノ酸骨格の異なるアミノ酸残基を介して固相にコンジュゲートされた抗体を含み得る。「異なるアミノ酸残基」という表現は、2つの異なる種類のアミノ酸、例えばリシンとアスパラギン酸もしくはチロシンとグルタミン酸、または抗体のアミノ酸配列におけるそれらの位置が異なるアミノ酸骨格の2つのアミノ酸残基、のいずれかを意味する。後者の場合、アミノ酸は、同一の種または異なる種であり得る。「抗体部位に関して異なる」という表現は、部位の種類、例えばアミノ酸もしくは糖アルコール基、またはアミノ酸骨格のアミノ酸の数、例えば抗体が固相にコンジュゲートされる場となるアミノ酸骨格のアミノ酸の数、のいずれかの違いを意味する。同じことが、本明細書に報告される方法において有用なトレーサー抗体にも適用され、逆もまたしかりである。
【0097】
この方法の1つの態様において、免疫アッセイは、捕捉抗体、トレーサー抗体および検出抗体を含み、捕捉抗体はストレプトアビジンを介して固相にコンジュゲートされた抗原に対するビオチニル化抗体であり、トレーサー抗体はジゴキシゲニンにコンジュゲートされた抗原に対する抗体であり、そして検出抗体はセイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされたジゴキシゲニンに対する抗体である。
【0098】
抗原Xおよび/または抗原Yを含むサンプルから抗原Xおよび抗原Yに特異的に結合する2特異性抗体からなる複合体を、それぞれ、抗原Xまたは抗原Yの決定のために除去するための一般的方法は、以下の工程を含む。
【0099】
- 抗原Xおよび抗原Yに特異的に結合する2特異性抗体(抗X/Y抗体)間の複合体の構築:
一定濃度の抗原Xを、第1の結合特異性で抗原Xに特異的に結合し第2の結合特異性で抗原Yに特異的に結合する漸増量の2特異性モノクローナル抗体(抗X/Y抗体)と共に、室温で1時間インキュベートする。その後、このサンプルを、除去工程における陽性対照として使用する。
【0100】
- 除去工程:
抗X/Y抗体に結合した抗原Xの除去のために、抗原Yに特異的に結合する結合特異性に対するビオチニル化抗イディオタイプ抗体(抗id Y抗体-BI)を、ストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズ(SAビーズ)に約10μg/ml結合させる。各サンプルにつき600μlのSAビーズを、磁気分離装置を用いて洗浄しそして上清から分離する。600μlのビオチニル化抗id Y抗体含有溶液をSAビーズと混合し、そして室温で約1時間インキュベートする。過剰な未結合の抗イディオタイプ抗体を、磁気分離装置を用いた3回のビーズ洗浄によって取り除いた。その後、抗イディオタイプ抗体でコーティングされたビーズを、抗X/Y抗体および抗原Xの複合体を含む約250μlのサンプルと共にインキュベートした。この混合物を、室温で約1時間、振盪しながらインキュベートする。インキュベート後、ビーズを磁気分離装置によってサンプルから分離する。上清を、ELISAにおける「遊離」抗原Xの分析(例えば、実施例2を参照のこと)に利用する。残ったビーズをELECSYS容器に移し、そしてビーズに結合した抗原X(2特異性抗体に結合した抗原X)を、ELECSYS 2010分析装置をユーザーガイドの標準操作手順にしたがい用いて分析する(例えば、実施例3を参照のこと)。
抗X/Y抗体に結合した抗原Yの除去のために、抗原Xに特異的に結合する結合特異性に対するビオチニル化抗イディオタイプ抗体(抗id X抗体-BI)を、ストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズ(SAビーズ)に約10μg/ml結合させる。各サンプルにつき600μlのSAビーズを、磁気分離装置を用いて洗浄しそして上清から分離する。600μlのビオチニル化抗id X抗体含有溶液をSAビーズと混合し、そして室温で約1時間インキュベートする。過剰な未結合の抗イディオタイプ抗体を、磁気分離装置を用いた3回のビーズ洗浄によって取り除いた。その後、抗イディオタイプ抗体でコーティングされたビーズを、抗X/Y抗体および抗原Yの複合体を含む約250μlのサンプルと共にインキュベートした。この混合物を、室温で約1時間、振盪しながらインキュベートする。インキュベート後、ビーズを磁気分離装置によってサンプルから分離する。上清を、ELISAにおける「遊離」抗原Yの分析(例えば、実施例2を参照のこと)に利用する。残ったビーズをELECSYS容器に移し、そしてビーズに結合した抗原Y(2特異性抗体に結合した抗原Y)を、ELECSYS 2010分析装置をユーザーガイドの標準操作手順にしたがい用いて分析する(例えば、実施例3を参照のこと)。
【0101】
1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、10
5 l/mol
*sまたはそれ以上の会合定数k
aを有する。1つの態様において、抗イディオタイプ抗体は、1
*10
5 l/mol
*sまたはそれ以上の会合定数を有する。1つの態様において、抗イディオタイプ抗体さらに、5
*10
-8 mol/lまたはそれ以下のK
D値を有する。1つの態様において、抗イディオタイプ抗体はさらに、1
*10
-9 mol/lまたはそれ以下のK
D値を有する。
【0102】
1つの態様において、除去工程におけるインキュベートは、約5分間〜約36時間である。1つの態様において、除去工程におけるインキュベートは、約15分間〜約30時間である。
【0103】
1つの態様において、サンプルは、約2μg/ml〜約15μg/mlの多特異性抗体濃度に調節される。1つの態様において、サンプルは、約3μg/ml〜約12μg/mlの多特異性抗体濃度に調節される。
【0104】
1つの態様において、サンプルは、約1pg/ml〜約1μg/mlの総抗原濃度に調節される。1つの態様において、サンプルは、約10pg/ml〜約500ng/mlの総抗原濃度に調節される。1つの態様において、サンプルは、約100pg/ml〜約250ng/mlの総抗原濃度に調節される。1つの態様において、サンプルは、約1ng/ml〜約100ng/mlの総抗原濃度に調節される。
【0105】
ANG2およびVEGFに対する2特異性抗体の場合、作用メカニズムは、両抗原のそれらの対応する受容体への結合の妨害である。(受容体に結合することができる)遊離抗原の非存在下で、シグナル経路が阻害される。遊離抗原と抗体に結合した抗原との間の差別化が有益である。
【0106】
以下の実施例および図面は、本発明の理解を助けるために提供されるものであり、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に示されている。本発明の精神から逸脱することなく示されている手順に変更を加えることができることを理解されたい。
【0107】
特定の態様
1. 多特異性結合体の第1の結合特異性によって特異的に結合され得る結合パートナーの存在および/または量のインビトロ決定方法であって、多特異性結合体に結合された結合パートナーが、結合パートナーの検出前に、多特異性結合体の第2の結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体と共にサンプルをインキュベートすることによって、除去(deplete)される、方法。
2. 免疫アッセイを用いる、サンプル中の多特異性結合体の結合パートナーの存在および/または量の免疫学的決定方法であって、多特異性結合体が、結合パートナーの決定前にサンプルから除去される、方法。
3. 多特異性結合体の結合パートナーの存在および/または量の決定のためのインビトロ方法であって、結合パートナーが、多特異性結合体の第1の結合特異性によって特異的に結合され得るものであり、
- 結合パートナーおよび多特異性結合体を含むサンプルを、多特異性結合体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体と共にインキュベートする工程
を含む、方法。
4. サンプル中の多特異性抗体の抗原の存在および/または量の決定のためのインビトロ方法であって、検出される抗原が、多特異性抗体の第1の結合特異性によって特異的に結合され得るものであり、
- 多特異性抗体、多特異性抗体に結合した抗原および遊離抗原を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートする工程
を含む、方法。
5. 第2の工程として、
- 遊離結合パートナーの存在および/または量の決定前に、単特異性結合体・多特異性結合体複合体をサンプルから除去する工程、
をさらに含む点を特徴とする、項目3〜4のいずれかに記載の方法。
6. 最終工程として、
- 多特異性結合体除去サンプル中の結合パートナーの量を決定する工程
を含む点を特徴とする、項目3〜5のいずれか一項記載の方法。
7. - 結合パートナーおよび多特異性結合体を含むサンプルを、多特異性結合体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する単特異性結合体と共にインキュベートする工程、
- 遊離結合パートナーの存在または量の決定前に、単特異性結合体・多特異性結合体複合体をサンプルから除去する工程、ならびに
- 多特異性結合体除去サンプル中の結合パートナーの量を決定する工程
を含む点を特徴とする、項目2〜6のいずれか一項記載の方法。
8. 結合パートナーが、抗原、標的および分析物を含む群から選択される点を特徴とする、項目1〜7のいずれか一項記載の方法。
9. 結合パートナーが、複合体化していない結合パートナーまたは遊離結合パートナーである点を特徴とする、項目1〜8のいずれか一項記載の方法。
10. 結合特異性が、結合部位または抗体重鎖可変ドメインと抗体軽鎖可変ドメインとの対である点を特徴とする、項目1〜9のいずれか一項記載の方法。
11. 多特異性結合体が、抗体、抗体もしくは抗体フラグメントおよび非抗体ポリペプチドを含む融合ポリペプチド、抗体もしくは抗体フラグメントおよび可溶性受容体を含む融合ポリペプチド、または抗体もしくは抗体フラグメントおよびペプチド性結合分子を含む融合ポリペプチドから選択される点を特徴とする、項目1〜10のいずれか一項記載の方法。
12. 多特異性結合体が抗体である点を特徴とする、項目1〜11のいずれか一項記載の方法。
13. 抗原の存在および/または量の決定が、
- 多特異性抗体除去サンプルを、抗原に特異的に結合する捕捉抗体と共にインキュベートして、捕捉抗体・抗原複合体を形成させる工程、および
- 形成された捕捉抗体・抗原複合体を、サンプル中の抗原の量と相関させる工程
を含む点を特徴とする、項目8〜12のいずれか一項記載の方法。
14. 抗原の量の決定が、
- 多特異性抗体除去サンプルを、抗原に特異的に結合する捕捉抗体と共にインキュベートして、捕捉抗体・抗原複合体を形成させる工程、
- 捕捉抗体・抗原複合体をトレーサー抗体と共にインキュベートする工程であって、それによって、捕捉抗体およびトレーサー抗体が抗原上の重複しないエピトープに結合する、工程、および
- 形成された捕捉抗体・抗原・トレーサー抗体複合体をサンプル中の抗原の量と相関させる工程
を含む点を特徴とする、項目8〜13のいずれか一項記載の方法。
15. 抗原の量の決定が、
- 多特異性抗体除去サンプルを、抗原に特異的に結合する捕捉抗体と共にインキュベートして、捕捉抗体・抗原複合体を形成させる工程、
- 捕捉抗体・抗原複合体をトレーサー抗体と共にインキュベートする工程であって、それによって、捕捉抗体およびトレーサー抗体が抗原上の重複しないエピトープに結合する、工程、
- 捕捉抗体・抗原・トレーサー抗体複合体を、検出可能な標識を含む検出抗体と共にインキュベートする工程であって、それによって、検出抗体がトレーサー抗体の可変ドメインの外側のエピトープにおいてトレーサー抗体に特異的に結合する、工程、および
- 形成された捕捉抗体・抗原・トレーサー抗体複合体をサンプル中の抗原の量と相関させる工程
を含む点を特徴とする、項目8〜14のいずれか一項記載の方法。
16. 抗体が、2特異性抗体または3特異性抗体または4特異性抗体または5特異性抗体または6特異性抗体である点を特徴とする、項目11〜15のいずれか一項記載の方法。
17. 抗体が2特異性抗体である点を特徴とする、項目11〜16のいずれか一項記載の方法。
18. 抗体が、第1の抗原または抗原上の第1のエピトープに特異的に結合する第1の結合特異性を有し、かつ第2の抗原または抗原上の第2のエピトープに特異的に結合する第2の結合特異性を有する2特異性抗体である点を特徴とする、項目11〜17のいずれか一項記載の方法。
19. 単特異性結合体が抗イディオタイプ抗体である点を特徴とする、項目1〜18のいずれか一項記載の方法。
20. - 多特異性抗体、多特異性抗体に結合した抗原および遊離抗原を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートして、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体を形成させる工程、ならびに
- 抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体をサンプルから取り除く工程
を含む点を特徴とする、項目19記載の方法。
21. - 抗原および多特異性抗体を含むサンプルを、多特異性抗体の第1の結合特異性とは異なる第2の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体と共にインキュベートして、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体を形成させる工程、
- 抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体をサンプルから取り除く工程、ならびに
- 多特異性抗体除去サンプル中の抗原の量を決定する工程
を含む点を特徴とする、項目19〜20のいずれかに記載の方法。
22. 抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体が、抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体複合体および抗イディオタイプ抗体・多特異性抗体・抗原複合体の混合物である点を特徴とする、項目20〜21のいずれかに記載の方法。
23. 抗イディオタイプ抗体が、多特異性抗体の第2の結合特異性に対して10
5 l/mol
*sまたはそれ以上の会合定数k
aを有する点を特徴とする、項目19〜22のいずれか一項記載の方法。
24. 抗イディオタイプ抗体が、多特異性抗体の第2の結合特異性に対する結合に関して5
*10
-8 mol/lまたはそれ以下のK
D値を有する点を特徴とする、項目19〜23のいずれか一項記載の方法。
25. 抗イディオタイプ抗体とインキュベートすることが、約10分間〜約36時間である点を特徴とする、項目19〜24のいずれか一項記載の方法。
26. サンプルが、約2μg/ml〜約15μg/mlの多特異性抗体濃度に調節される点を特徴とする、項目1〜25のいずれか一項記載の方法。
27. サンプルが、約1ng/ml〜約250ng/mlの総抗原濃度に調節される点を特徴とする、項目1〜26のいずれか一項記載の方法。
28. 抗イディオタイプ抗体が、固相に結合またはコンジュゲートされる点を特徴とする、項目19〜27のいずれか一項記載の方法。
29. 抗イディオタイプ抗体が、特異的結合対を介してコンジュゲート(固定化)される点を特徴とする、項目19〜28のいずれか一項記載の方法。
30. 結合対(第1の要素/第2の要素)が、ストレプトアビジンまたはアビジン/ビオチン、抗体/抗原、レクチン/多糖類、ステロイド/ステロイド結合タンパク質、ホルモン/ホルモン受容体、酵素/基質、IgG/プロテインAおよび/またはGから選択される点を特徴とする、項目29記載の方法。
31. 抗イディオタイプ抗体がビオチンにコンジュゲートされ、かつ固定化が、固定化されたアビジンまたはストレプトアビジンを介して行われる点を特徴とする、項目29〜30のいずれかに記載の方法。
32. 抗イディオタイプ抗体がビオチニル化され、かつ固相がストレプトアビジンコーティングされる点を特徴とする、項目19〜31のいずれか一項記載の方法。
33. 抗イディオタイプ抗体が、多特異性結合体に対するビオチニル化抗イディオタイプ抗体であり、かつストレプトアビジンを介して固相にコンジュゲートされる点を特徴とする、項目19〜31のいずれか一項記載の方法。
34. 固相が、ストレプトアビジンコーティングされた常磁性ビーズまたはストレプトアビジンコーティングされたセファロースビーズである点を特徴とする、項目28〜33のいずれか一項記載の方法。
35. 抗イディオタイプ抗体が、固相にコンジュゲートされる抗体部位が異なる少なくとも2つの抗イディオタイプ抗体を含む混合物である点を特徴とする、項目19〜34のいずれか一項記載の方法。
36. 抗イディオタイプ抗体混合物が、少なくとも2つの異なるアミノ基を介して固相にコンジュゲートされた抗イディオタイプ抗体を含む点を特徴とする、項目19〜35のいずれか一項記載の方法。
37. 抗イディオタイプ抗体とそのコンジュゲートパートナーとのコンジュゲートが、薬物抗体のアミノ酸骨格のN末端および/もしくはε-アミノ基(リシン)、および/もしくは異なるリシンのε-アミノ基、カルボキシ官能基、スルフヒドリル官能基、ヒドロキシル官能基および/もしくはフェノール官能基、ならびに/または薬物抗体の炭水化物構造の糖アルコール基を介した化学結合によって行われる点を特徴とする、項目28〜36のいずれか一項記載の方法。
38. 抗イディオタイプ抗体が、受動的吸着によって固相にコンジュゲートされる点を特徴とする、項目28〜37のいずれか一項記載の方法。
39. サンプルが多特異性抗体、遊離抗原および多特異性抗体・抗原複合体を含み、かつ検出が多特異性抗体の遊離抗原の検出である点を特徴とする、項目1〜38のいずれか一項記載の方法。
40. 多特異性抗体の第2の結合特異性に結合した抗原をサンプルから除去するための、多特異性抗体の第1の結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体の使用。
【実施例】
【0109】
実施例
実施例1
薬物に結合した標的(抗体に結合した抗原)の除去 - 2特異性薬物分子の場合
サンプルからの抗ANG2/VEGF抗体・VEGF複合体の除去
A)抗ANG2/VEGF抗体およびVEGFの複合体の構築
一定濃度のVEGFを、室温で1時間、第1の結合特異性でANG2に特異的に結合し第2の結合特異性でVEGFに特異的に結合する漸増量の2特異性抗体(抗ANG2/VEGF抗体)と共にインキュベートした。その後、これらのサンプルを、除去工程のための/における陽性対照として使用した。
【0110】
B)除去工程
抗ANG2/VEGF抗体に結合したVEGFの除去のために、ANG2に特異的に結合する結合特異性に対するビオチニル化抗イディオタイプ抗体(抗id ANG2抗体-BI)を、10μg/mlのストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズ(SAビーズ)に結合させた。各サンプルにつき600μlのSAビーズを、磁気分離装置を用いて洗浄しそして上清から分離した。約600μlの抗id ANG2抗体含有溶液をSAビーズと混合し、そして室温で1時間インキュベートした。過剰な未結合の抗体を、磁気分離装置を用いた3回のビーズ洗浄によって取り除いた。その後、抗体でコーティングされたビーズを、抗ANG2/VEGF抗体およびVEGFの複合体を含む250μlのサンプルと共にインキュベートした。サンプルを、室温で1時間、振盪しながらインキュベートした。インキュベート後、ビーズを磁気分離装置によってサンプルから分離した。上清を、ELISAを用いた「遊離」VEGFの分析に利用した(実施例2を参照のこと)。残ったビーズをELECSYS容器に移し、そしてビーズに結合したVEGF(抗ANG2/VEGF抗体に結合したVEGF)を、ELECSYS 2010分析装置を製造元の指示にしたがい用いて分析した(実施例3を参照のこと)。
【0111】
ANG2結合特異性に対する2つの異なる抗イディオタイプ抗体を、VEGFの除去のために使用した(実施例5も参照のこと):
i)ポリクローナル抗id ANG2抗体Rb-IgG-BI、
ii)モノクローナル抗id ANG2抗体M-2.3.55-BI。
【0112】
サンプルからの抗HER3/c-MET抗体・c-MET複合体の除去
A)抗HER3/c-MET抗体およびc-METの複合体の構築
一定濃度のc-METを、室温で1時間、第1の結合特異性でHER3に特異的に結合し第2の結合特異性でc-METに特異的に結合する漸増量の2特異性抗体(抗HER3/c-MET抗体)と共にインキュベートした。その後、このサンプルを、抗HER3/c-MET抗体・c-MET複合体の除去のためにビーズで処理した。
【0113】
B)除去工程
抗HER3/c-MET抗体に結合したc-METの除去のために、HER3に特異的に結合する結合特異性に対するビオチニル化抗イディオタイプ抗体(抗id HER3抗体-BI)を、約10μg/mlのストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズ(SAビーズ)に結合させた。各サンプルにつき600μlのSAビーズを、磁気分離装置を用いて洗浄しそして上清から分離した。約600μlの抗id HER3抗体M1.1.10-BIを含む溶液をSAビーズと混合し、そして室温で1時間インキュベートした。過剰な未結合の抗体を、磁気分離装置を用いた3回のビーズ洗浄によって取り除いた。その後、抗体でコーティングされたビーズを、抗HER3/c-MET抗体およびc-METの複合体を含む250μlのサンプルと共にインキュベートした。サンプルを、室温で1時間、振盪しながらインキュベートした。インキュベート後、ビーズを磁気分離装置によってサンプルから分離した。上清を、ELISAにおける「遊離」c-METの分析に利用した。
【0114】
HER3結合特異性に対する4つの抗イディオタイプ抗体を、抗HER3/c-MET抗体に結合したc-METの除去に関して評価した(実施例4も参照のこと):
i)モノクローナル抗id HER3抗体M-1.1.10-IgG、
ii)モノクローナル抗id HER3抗体M-2.11.123-IgG、
iii)モノクローナル抗id HER3抗体M-2.5.45-IgG、
iv)モノクローナル抗id HER3抗体M-2.9.55-IgG。
【0115】
実施例2
酵素連結免疫吸着アッセイ
VEGFの検出のためのELISA
市販のサンドイッチ免疫アッセイを、製造元の指示にしたがい使用した(R+D Systems Cat# DVE00)。
【0116】
除去工程(実施例1を参照のこと)からの上清サンプルを10倍希釈し、プレコートマイクロプレート(R+D Systems)のウェルに添加した。サンプル中に含まれる遊離VEGFを、マイクロプレートのウェルにコーティングされた抗VEGF抗体によって結合させた。室温での2時間のインキュベート時間の後、未結合サンプルを、3回のプレート洗浄によって取り除いた。その後、ポリクローナルHRP連結抗VEGF抗体(セイヨウワサビペルオキシダーゼ連結抗VEGF抗体)をウェルに添加し、室温でさらに2時間インキュベートした。さらなる洗浄工程の後、TMB基質溶液をウェルに添加した。測定前に、硫酸の添加によって発色反応を停止させた(実施例3を参照のこと)。
【0117】
c-METの検出のためのELISA
市販のサンドイッチ免疫アッセイを使用した(R+D Systems Cat# DY358)。
【0118】
マウスモノクローナル抗c-MET抗体を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で約180μg/mlの使用濃度に希釈した。この溶液約100μlをNunc Maxisorbプレートの各ウェルにピペットし、そして室温で1時間インキュベートした。このプレートのウェルへの捕捉抗体のコーティング後、プレートを、0.05%(w/v) Tweenを補充したPBSで3回洗浄し、そして1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSを用いて室温で1時間ブロッキングした。サンプルの添加前に、プレートをPBSで3回洗浄した。
【0119】
c-METの除去工程(実施例1を参照のこと)からの上清を、10倍希釈した。各サンプル希釈物および一連の希釈された較正用標準約100μlを、コーティングおよびブロッキングされた各マイクロプレートの2つのウェルにピペットし、そして室温で1時間インキュベートした。
【0120】
インキュベート後、未結合サンプルを、3回のプレート洗浄によって取り除いた。その後、ポリクローナルビオチン連結抗c-MET抗体をウェルに添加し、室温でさらに2時間インキュベートした。さらなる洗浄工程の後、ストレプトアビジン・HRPコンジュゲート(R+D Systems)を200倍希釈し、そしてこの溶液100μlをマイクロプレートの各ウェルにピペットし、そして室温で1時間インキュベートした。さらなる洗浄工程の後、TMB基質溶液をウェルに添加し、そして測定の前に、硫酸の添加によって発色反応を停止させた(実施例4を参照のこと)。
【0121】
実施例3
抗原Xおよび抗X/Y抗体の結合複合体の検出のためのELECSYS
除去工程(実施例1を参照のこと)で使用したビーズを、未結合物質を取り除くために、磁気分離装置を用いてELECSYSアッセイ緩衝液中で3回洗浄および分離した。各サンプルからのビーズを、600μlのELECSYSアッセイ緩衝液に溶解させ、これを分析に利用した。
【0122】
簡潔に説明すると、170μlのビーズを、10μlの緩衝液および20μlの、抗原Xに対するルテニウム標識抗体(15μg/ml)と共に15分間インキュベートした。SAビーズ上に固定化された抗原X・抗X/Y抗体・抗イディオタイプ抗体の複合体に結合したルテニウム標識抗体を検出した(例えば、Stockmann, W., et al., Wien. Klin. Wochenschr. 110 (1998) Suppl. 3: 10-21; Forest, J.C., et al., Clin. Biochem. 31 (1998) 81-88を参照のこと)。
【0123】
実施例4
除去ツールとしての抗イディオタイプ抗体の評価
実施例1に記載された方法にしたがい、異なる速度定数を有する異なる抗イディオタイプ抗体を、抗HER3/c-MET抗体およびその複合体の除去のために使用した。
【0124】
表面プラズモン共鳴による抗HER3/c-MET抗体のHER3結合特異性に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体の速度定数の評価
すべての実験を、BIAcore(登録商標)T100機器においてCM5チップを用いて行った。チップのコーティングは、標準的なアミンカップリングにより行った。それ以外のことが示されていない限り、すべてのインキュベートを、HBS緩衝液(HEPES、NaCl、pH 7.4)中、25℃で行った。飽和量のポリクローナルヤギ抗マウスFcガンマ抗体を、アミンカップリングによりCM5チップの1つのフローセルに固定化した。その後、HER3に特異的に結合する、抗HER3/c-MET抗体の結合特異性に対する異なるモノクローナルマウス抗体を、30μl/分の流速で60秒間注入し、そして抗マウスFc抗体によって結合させた。すべての動物血清を、HBS緩衝液で希釈した。結合(会合)は、抗HER3/c-MET抗体を30μl/分の流速で60秒間注入することによって分析した。解離は、チップ表面をHBS緩衝液で180秒間洗浄することによって測定した。BIAcore(登録商標)のBIAevaluationソフトウェアを用いて、解離定数値(= k
a; kd; K
D)を1:1ラングミュアフィッティングモデルにより計算した。
【0125】
表:SPR分析によって決定された抗HER3/c-MET抗体のHER3結合特異性に対する様々な抗イディオタイプ抗体の結合に関する速度パラメータ
【0126】
結果は
図5にも示されている。
【0127】
図5から、モノクローナル抗id HER3抗体M-2.11.123-IgGによる抗HER3/c-MET抗体の除去が他の抗体ほど効率的でないことを見て取ることができる。
【0128】
薬物に結合したc-METの除去および遊離c-METの検出
抗HER3/c-MET抗体に結合したc-METを、実施例1に記載されるようにして抗イディオタイプ抗体を用いて除去した。上清を、実施例2に記載されるようにおいてc-MET ELISAにおいて測定した。
【0129】
実施例5
ヒト血清および緩衝液中の薬物に結合したVEGFの除去
実施例1にしたがい、抗ANG2/VEGF抗体を10/5/1/0.5/0.25および0μg/mlに希釈し、そして50 ng/mlの一定濃度のVEGFと共にインキュベートした。希釈物は、2つの異なるマトリックス:
・Low Cross緩衝液(Candor Bioscience GmbH、#100500)
・Human Pool Serum(Trina、NHS Baseマトリックス)
で生成した。
【0130】
サンプルを室温で1時間インキュベートした。その後、実施例1に記載されるようにしてサンプルを除去処理した。
【0131】
モノクローナル抗id ANG2抗体M-2.3.55-BIを使用し、VEGFと抗ANG2/VEGF抗体の複合体を捕捉した。
【0132】
除去後、上清を、実施例2に記載されるようにしてVEGF ELISAにおいて測定した。
【0133】
除去後の上清の残存VEGF量を、いかなる2特異性抗体も含めずにインキュベートされた対照サンプル(50 ng/ml)と関連づけた。結果が、%表示の相対回収率として以下の表に示されている。
【0134】
表:除去前のレベルに対する、免疫除去後の緩衝液および血清サンプルの上清中の相対VEGF量
【0135】
実施例6
抗HER3/c-MET抗体を用いて示される除去に対する遊離抗原濃度の影響の評価
実施例1にしたがい、抗HER3/c-MET抗体に結合したc-METの除去を、様々な濃度のc-METを含むサンプルにおいて行った。3つの異なる濃度のc-MET(5、10、50 ng/ml)を、漸増濃度の抗HER3/c-MET抗体と共に室温でインキュベートした。インキュベートは、1時間および一晩行った。その後、実施例1に記載されるようにして、これらのサンプルから抗HER3/c-MET抗体・c-MET複合体を除去した。
【0136】
結果が、以下の表aおよびbに、添加濃度からの各サンプルのc-MET濃度の回収率として示されている。
【0137】
(表a)1時間のインキュベート時間の除去後のc-METの回収率ならびに薬物(2特異性抗体)および標的(抗原)の濃度に対する依存性
【0138】
(表b)一晩のインキュベート時間の除去後のc-METの回収率ならびに薬物(2特異性抗体)および標的(抗原)の濃度に対する依存性
【0139】
実施例7
除去に対するVEGFの影響
2特異性抗ANG2/VEGF抗体を、100μg/mlとなるよう、500μlのカニクイザルプール血漿に添加した。この添加された血漿を各々100μlの5つのアリコートに分割した。各アリコートに、0 ng/ml〜100 ng/mlの範囲の異なる量のVEGFを添加した。
【0140】
サンプルを、抗id VEGF抗体M2.45.51-BIが結合されたストレプトアビジンコーティングされた磁気セファロースビーズで処理した。サンプルおよびビーズを周囲温度で一晩インキュベートした。
【0141】
インキュベート後、磁気分離装置を用いて磁気ビーズをサンプルから分離した。
【0142】
ビーズ処理/ビーズベースの除去後に上清中に残存する抗ANG2/VEGF抗体のレベルを、ELISAを用いて決定した。
【0143】
ELISAにおいて、第1工程でビオチニル化VEGFをストレプトアビジンコーティングされたマイクロタイタープレート(SA-MTP)に結合させた。過剰な未結合VEGFを洗浄によって取り除いた。サンプル/標準、例えばカニクイザル血漿に添加された抗ANG2/VEGF抗体を、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、ジゴキシゲニン化モノクローナル抗ヒトFcγ pan抗体R10Z8E9を検出のために使用し、1時間インキュベートした。洗浄後、結合したジゴキシゲニン化モノクローナル抗ヒトFcγ pan抗体R10Z8E9を、抗ジゴキシゲニン抗体セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートを用いて検出した検出した。この酵素コンジュゲートは、ABTS基質の発色反応を触媒する。シグナルは、ELISAリーダーによって、405nmの波長(参照波長:490nm)で測定した。各血清サンプルの吸光値を3連で決定した。結果が以下の表に示されている。
【0144】
表:
【0145】
上表に示されているように、2特異性モノクローナル抗体の除去は、サンプル中の第1の抗原(すなわち、この実施例ではVEGF)の量に非依存的である。したがって、第2の抗原(すなわち、この実施例では遊離のANG2)の量は遊離の第1の抗原の濃度決定に対する影響を有さないと結論付けることができる。
【0146】
この学説により制約されることを望まないが、第1の抗原による潜在的干渉に対する堅牢性は、例えば、i)2特異性抗体に対する第1の抗原の親和性よりも高い2特異性抗体に対する親和性を有する抗イディオタイプ抗体を使用することによって、またはii)抗原としてCDRの同一部分に結合しない非中和性の抗イディオタイプ抗体を使用することによって、達成され得る。