(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のグリッドは、前記イオンが、前記第1のイオンリフレクタから前記第2のイオンリフレクタに、前記第2の経路に沿って伝搬するにつれて、前記第1のグリッドを交差するように構成される、請求項4に記載の質量分析計。
前記グリッドと前記第1のリフレクタとの間の前記電圧差は、前記第2の経路に沿って、前記第1のリフレクタから前記グリッドに伝搬するにつれて、前記第1のイオンリフレクタによって反射されたイオンを加速させる、請求項5に記載の質量分析計。
前記第2のイオンリフレクタは、前記グリッドに向かって、前記第3の経路に沿って、前記イオンを再指向させるように構成され、前記第2のフィールドフリードリフト領域は、前記グリッドから前記検出器に延在する、請求項7に記載の質量分析計。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願人の教示のいくつかの側面によると、イオンを受容するための入力オリフィスと、第1の経路に沿って、イオンを加速させるための第1のイオン加速段階と、加速されたイオンを受容し、第1の経路と異なる第2の経路に沿って、イオンを再指向させるための少なくとも1つのイオンリフレクタ(本明細書では、「イオンミラー」または「リフレクトロン」とも称される)と、イオンリフレクタによって再指向されるイオンの少なくとも一部を検出するための検出器とを備えることができる、飛行時間(「TOF」)質量分析計が、開示される。TOF質量分析計はさらに、第1の加速段階と検出器との間に配置される、少なくとも第1および第2のフィールドフリードリフト領域を備えることができ、第2のフィールドフリー領域は、検出器に近接して配置される。
【0005】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのイオンリフレクタは、第1および第2のイオンリフレクタを備えることができ、第1のイオンリフレクタは、第1の経路に沿って伝搬するイオンを第2の経路上に反射させるように構成され、第2のイオンリフレクタは、第2の経路に沿って伝搬するイオンを第3の経路上に反射させるように構成される。いくつかのそのような実施形態では、検出器が、第3の経路に沿って伝搬するイオンを受容するように位置付けられる。
【0006】
いくつかの実施形態では、第2のフィールドフリードリフト領域は、第1のフィールドフリー領域を上回る長さを有する。さらに、いくつかの実施形態では、第1の加速段階は、選択された距離だけ分離される、第1および第2の電極を備えることができ、2つの電極間への電圧差の印加は、イオンを加速させるための電場を発生させる。第2の電極は、イオンを通過させるためのグリッドであろう。いくつかの実施形態では、同様に、グリッドである、第3の電極が、第2の電極に対してある距離に配置されることができ、第2および第3の電極は、同相電圧に保持され、その間に該第1のフィールドフリードリフト領域を発生させる。
【0007】
いくつかの実施形態では、第3のグリッドは、第3の電極/第2のグリッドと第1のイオンリフレクタとの間に配置されることができ、第3の電極/第2のグリッドおよび第3のグリッドは、ある電圧差に保持され、第1の経路に沿って進行するイオンのための第2の加速段階を提供する。さらに、第1のイオンリフレクタへの入口グリッドでもある、第3のグリッドは、第3のグリッドからイオンリフレクタ内に伝搬するにつれて、イオンを減速させ、第2の経路に沿って、第1のイオンリフレクタを通して第3のグリッドに逆伝搬するにつれて、逆方向に加速させるように構成される、電圧差に保持されることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、第3のグリッドは、イオンが、第1のイオンリフレクタから第2のイオンリフレクタに、第2の経路に沿って伝搬するにつれて、グリッドを交差するように構成されることができる。この場合、同一のグリッドはまた、第2のリフレクタへの入口グリッドでもある。
【0009】
いくつかの実施形態では、第3のグリッドおよび第2のイオンリフレクタは、グリッドから第2のイオンリフレクタ内に、第2の経路に沿って伝搬するにつれて、イオンを減速させるように構成される、電圧差に保持され、第2のイオンリフレクタは、グリッドに戻るように、第3の経路に沿って、イオンを再指向させるように構成される。第2のイオンリフレクタとグリッドとの間の電圧差は、第3の経路に沿って、第2のイオンリフレクタからグリッドに移動するにつれて、イオンを加速させることができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2のフィールドフリードリフト領域は、グリッドから検出器に延在することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1のフィールドフリードリフト領域の長さ(d2)は、以下にさらに提示される式(4)によって提供され、第2のフィールドフリードリフト領域の長さ(d6)は、以下にさらに提示される式(5)によって提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、第2のグリッドは、第1のグリッドから距離(dff)において、第1のグリッドと第1のイオンリフレクタとの間に配置され、第1および第2のグリッドは、同相電圧に保持され、その間に第3のフィールドフリードリフト領域を発生させる。いくつかのそのような実施形態では、第1のフィールドフリードリフト領域の長さ(d2)は、以下の式(11)によって提供され、第2のフィールドフリードリフト領域の長さ(d6)は、第3のフィールドフリードリフト領域の長さ(dff)の選択肢に基づいて、以下の式(12)によって提供される。
【0013】
本出願人の教示のさらなる側面によると、入力開口(オリフィス)を通して受容されたイオンを加速させるための第1のイオン加速段階と、加速されたイオンを第1の加速段階から受容するための第1のフィールドフリードリフト領域と、該第1のフィールドフリードリフト領域から出射するイオンを加速させるための第2のイオン加速段階と、加速されたイオンを第2の加速段階から受容するための第2のフィールドフリードリフト領域と、第2のフィールドフリードリフト領域を通したその通過後、イオンを受容するための検出器とを備えることができ、フィールドフリードリフト領域は、イオンの開始位置に対して、分光計を通るイオンの飛行時間の一次および二次微分が、ゼロになることを確実するように構成される、飛行時間質量分析計が、開示される。
【0014】
前述の飛行時間質量分析計のいくつかの実施形態では、入力開口は、分光計の縦軸に直交する方向において、イオンを受容するように構成されることができる。さらに、いくつかの実施形態では、第1の電極は、開口に近接して配置されることができ、電圧(例えば、電圧パルス)を入射イオンに印加し、縦軸上にその偏向を生じさせるように構成されることができる。いくつかの実施形態では、第2の電極は、第1の電極に対して、距離(d1)に配置されることができ、第1および第2の電極間の電圧差は、第1のイオン加速段階を提供する。第2の電極は、イオンを通過させるためのグリッドであろう。いくつかの実施形態では、同様に、グリッドであり得る、第3の電極は、第2の電極/グリッドに対して、距離(d2)に配置され、第2および第3の電極/グリッドは、同相電圧に保持され、該第1のフィールドフリードリフト領域をその間の空間に発生させる。いくつかの実施形態では、第4の電極(同様に、グリッドであり得る)は、第3の電極に対して、距離(d3)に配置されることができ、第3および第4の電極(グリッド)間の電圧差は、該第2のイオン加速段階を発生させる。いくつかの実施形態では、第2のフィールドフリードリフト領域は、長さ(d4)を有し、第3の電極から検出器に延在する。いくつかの実施形態では、第1のフィールドフリードリフト領域の長さ(d2)は、以下の式(13)によって提供され、第2のフィールドフリードリフト領域の長さ(d4)は、以下の式(14)によって提供される。
【0015】
本出願人の教示のさらなる側面によると、1つ以上のイオン加速段階をイオン入口開口とイオン検出器との間に提供するステップと、2つ以上のフィールドフリードリフト領域を入口開口と検出器との間に提供するステップであって、該フィールドフリードリフト領域のうちの少なくとも1つは、加速段階のうちの1つと検出器との間に配置される、ステップと、該初期位置に対する、初期イオン位置から該検出器に進行するイオンの飛行時間の一次および二次微分が、ゼロになるように、該フィールドフリードリフト領域の長さを選択するステップとを含むことができる、飛行時間(TOF)を行なう方法が、開示される。
【0016】
いくつかの実施形態では、前述の方法では、フィールドフリードリフト領域のうちの1つの長さは、式(18)に従って選択されることができ、他のフィールドフリードリフト領域の長さは、式(19)に従って選択される。
【0017】
さらなる側面では、複数のイオンを受容するための開口と、第1の経路に沿って、受容されたイオンを加速させるための少なくとも1つのイオン加速段階と、加速されたイオンの空間集束を選択された場所に提供するように構成される、2つ以上のフィールドフリードリフト領域とを備えることができる、飛行時間(TOF)質量分析計が、開示される。質量分析計はさらに、イオンを空間集束場所から受容し、第1の経路と異なる第2の経路に沿って、イオンを再指向させるための少なくとも1つのイオンリフレクタを備えることができる。イオンリフレクタは、イオンの運動エネルギー発散を低減させるように構成されることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、前述のTOF質量分析計において、2つ以上のフィールドフリードリフト領域は、イオンの該空間集束を提供するように、初期イオン位置に対して、イオン飛行時間の二次補正を提供するように構成されることができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、イオンリフレクタは、該空間集束場所における、イオンの運動エネルギーの変化量の二次補正を提供するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、イオンリフレクタは、多段階、例えば、2段階、イオンリフレクタを備えることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、初期イオン位置の変化量を補正するために利用される、2つのフィールドフリードリフト領域の長さ(d2およびd4)は、以下に提供される式(36)および(37)を採用することによって求められることができる。いくつかのそのような実施形態では、2段階イオンリフレクタが、イオンの運動エネルギーの変化量を補正するために採用されることができ、イオンリフレクタのパラメータは、以下に提供される式(57)および(58)を採用することによって、選択されることができる。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
飛行時間質量分析計であって、
イオンを受容するための入力オリフィスと、
第1の経路に沿って、前記イオンを加速させるための第1のイオン加速段階と、
前記加速されたイオンを受容し、前記第1の経路と異なる第2の経路に沿って、前記イオンを再指向するための第1のイオンリフレクタと、
前記第2の経路に沿って伝搬する前記イオンを第3の経路上に再指向するように構成される、第2のイオンリフレクタと、
前記第2のイオンリフレクタによって再指向される、前記イオンの少なくとも一部を検出するための検出器と、
前記第1の加速段階と前記検出器との間に配置される、少なくとも第1および第2のフィールドフリードリフト領域であって、前記第2のフィールドフリー領域は、前記検出器に近接して配置される、フィールドフリードリフト領域と
前記第1および第2のフィールドフリードリフト領域間に配置される、第2の加速段階と、
を備える、質量分析計。
(項目2)
前記第1および第2のフィールドフリードリフト領域は、基準位置に対して、前記分析計に入射するイオンの初期位置における発散を補正するように構成される、項目1に記載の質量分析計。
(項目3)
前記検出器は、前記第3の経路に沿って伝搬する前記イオンを受容するように位置付けられる、項目2に記載の質量分析計。
(項目4)
前記第2のフィールドフリードリフト領域は、前記第1のフィールドフリー領域を上回る長さを有する、項目3に記載の質量分析計。
(項目5)
前記第1の加速段階は、選択された距離だけ分離される、第1および第2の電極を備え、前記2つの電極間への電圧差の印加は、前記イオンを加速させるための電場を発生させる、項目4に記載の質量分析計。
(項目6)
前記第2の電極に対してある距離に配置される、第3の電極をさらに備え、前記第2および第3の電極は、同相電圧に保持され、その間に前記第1のフィールドフリードリフト領域を発生させる、項目5に記載の質量分析計。
(項目7)
前記第3の電極と前記第1のイオンリフレクタとの間に配置される、第1のグリッドをさらに備え、前記第3の電極および前記グリッドは、ある電圧差に保持され、イオンが前記第1の経路に沿って進行するための前記第2の加速段階を提供する、項目6に記載の質量分析計。
(項目8)
前記第1のグリッドおよび前記第1のイオンリフレクタは、前記第1のグリッドから前記第1のイオンリフレクタに伝搬するにつれて、前記イオンを減速させるように構成される、電圧差に保持される、項目7に記載の質量分析計。
(項目9)
前記第1のグリッドは、前記イオンが、前記第1のイオンリフレクタから前記第2のイオンリフレクタに、前記第2の経路に沿って伝搬するにつれて、前記第1のグリッドを交差するように構成される、項目8に記載の質量分析計。
(項目10)
前記グリッドと前記第1のリフレクタとの間の前記電圧差は、前記第2の経路に沿って、前記第1のリフレクタから前記グリッドに伝搬するにつれて、前記第1のイオンリフレクタによって反射されたイオンを加速させる、項目9に記載の質量分析計。
(項目11)
前記第1のグリッドおよび前記第2のイオンリフレクタは、前記グリッドから前記第2のリフレクタに、前記第2の経路に沿って伝搬するにつれて、前記イオンを減速させるように構成される、電圧差に保持される、項目10に記載の質量分析計。
(項目12)
前記第2のイオンリフレクタは、前記グリッドに向かって、前記第3の経路に沿って、前記イオンを再指向させるように構成され、前記第2のフィールドフリードリフト領域は、前記グリッドから前記検出器に延在する、項目11に記載の質量分析計。
(項目13)
前記第1のフィールドフリードリフト領域の長さ(d2)は、以下の関係:
によって提供される、項目12に記載の質量分析計。
(項目14)
前記第2のフィールドフリー領域の長さ(d6)は、以下の関係:
によって提供される、項目13に記載の質量分析計。
(項目15)
前記第1のグリッドから距離(dff)において、前記第1のグリッドと前記第1のイオンリフレクタとの間に配置される、第2のグリッドをさらに備え、前記第1および第2のグリッドは、同相電圧に保持され、その間に第3のフィールドフリードリフト領域を発生させる、項目9に記載の質量分析計。
(項目16)
前記第1のフィールドフリードリフト領域の長さ(d2)は、以下の関係:
によって提供される、項目15に記載の質量分析計。
(項目17)
前記第2のフィールドフリードリフト領域の長さ(d6)は、以下の関係:
によって提供される、項目16に記載の質量分析計。
(項目18)
飛行時間質量分析を行なう方法であって、
1つ以上のイオン加速段階をイオン入口開口とイオン検出器との間に提供するステップと、
2つ以上のフィールドフリードリフト領域を前記入口開口と前記検出器との間に提供するステップであって、前記フィールドフリードリフト領域のうちの少なくとも1つは、前記加速段階のうちの1つと前記検出器との間に配置される、ステップと、
前記初期位置に対する初期イオン位置から前記検出器に進行する前記イオンの飛行時間の一次および二次微分が、ゼロになるように、前記フィールドフリードリフト領域の長さを選択するステップと、
を含む、方法。
(項目19)
飛行時間(TOF)質量分析計であって、
複数のイオンを受容するための開口と、
第1の経路に沿って、前記受容されたイオンを加速させるための少なくとも1つの加速段階と、
前記加速されたイオンの空間集束を選択された場所に提供するように構成される、2つ以上のフィールドフリードリフト領域と、
前記イオンを前記選択された場所から受容し、前記第1の経路と異なる第2の経路に沿って、前記イオンを再指向させるための少なくとも1つのイオンリフレクタと、
を備え、前記イオンリフレクタは、前記空間集束場所における前記イオンの運動エネルギー発散を低減させるように構成される、質量分析計。
(項目20)
前記イオンリフレクタは、2段階イオンリフレクタを備える、項目19に記載のTOF質量分析計。
【図面の簡単な説明】
【0021】
当業者は、以下に説明される図面が、例証目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、本出願人の教示の範囲をいかようにも限定することを意図しない。
【
図1】
図1は、本出願人の教示のある実施形態による、飛行時間質量分析計の略図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1に描写されるTOF実施形態に基づいてシミュレートされたTOFにおいて、829amuイオンに対するイオン初期位置の関数として、理論的に計算された飛行時間(TOF)を示す。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、初期イオン位置に対するTOFの理論的に計算された第1の微分を示す。
【
図2C】
図2Cは、
図2Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、初期イオン位置に対するTOFの理論的に計算された第2の微分を示す。
【
図3】
図3は、
図2Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、シミュレートされたイオン軌道を示す。
【
図4】
図4は、
図2Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、イオンのシミュレートされた空間集束を示す。
【
図5】
図5は、
図2Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、その軌道に沿った複数のイオンのシミュレートされた電位エネルギーを示す。
【
図6】
図6は、本出願人の教示による、TOF分光計の別の実施形態の略図である。
【
図7】
図7は、本出願人の教示による、TOF分光計の別の実施形態の略図である。
【
図8A】
図8Aは、
図7に示される実施形態に基づく、シミュレートされたTOFにおける、イオン位置の関数として、理論的に計算されたTOFを示す。
【
図8B】
図8Bは、
図8Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、TOF軸に沿ったイオン位置に対するTOFの理論的に計算された第1の微分を示す。
【
図8C】
図8Cは、
図8Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、TOF軸に沿った初期イオン位置に対するTOFの理論的に計算された第2の微分を示す。
【
図9】
図9は、
図8Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、複数のイオンに対する理論的に計算された軌道を示す。
【
図10】
図10は、
図8Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、その軌道に沿った複数のイオンのシミュレートされた電位エネルギーを示す。
【
図11】
図11は、本出願人の教示による、TOF質量分析計の別の実施形態の略図である。
【
図12】
図12は、本出願人の教示による、TOF質量分析計の別の実施形態の略図である。
【
図13】
図13は、本出願人の教示による、TOF質量分析計の別の実施形態の略図である。
【
図14】
図14は、本出願人の教示による、TOF質量分析計の別の実施形態の略図である。
【
図15】
図15は、
図14に示される実施形態に基づく、シミュレートされたTOFにおける、初期イオン位置の関数として、理論的に計算されたTOFを示す。
【
図16】
図16は、本出願人の教示による、TOF質量分析計の別の実施形態の略図である。
【
図17A】
図17Aは、質量829amuを有するイオンに関して、速度相関イオン位置に対するTOFの一次および二次補正を伴うが、二次エネルギー補正を伴わない、
図16に示される実施形態に基づいて、シミュレートされたTOFにおける、イオン速度と相関されたイオン位置の関数として、仮想集束場所における理論的に計算されたTOFを示す。
【
図17B】
図17Bは、速度相関イオン位置に対するTOFの一次および二次補正を伴うが、二次エネルギー補正を伴わない、質量829amuを有するイオンに関して、
図17Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、イオン速度と相関されたイオン位置の関数として、仮想集束場所におけるTOFの理論的に計算された第1の微分を示す。
【
図17C】
図17Cは、相関イオン位置に対するTOFの一次および二次補正を伴うが、二次エネルギー補正を伴わない、質量829amuを有するイオンに関して、
図17Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、シミュレートされたTOF軸でのイオン速度と相関されたイオン位置の関数として、仮想集束場所におけるTOFの理論的に計算された第2の微分を示す。
【
図18A】
図18Aは、運動エネルギーの変化量に対するTOFの二次補正を伴う、
図16に示される実施形態に基づいて、シミュレートされたTOFにおける、仮想集束場所でのイオン運動エネルギーの関数として、理論的に計算されたTOFを示し、速度相関イオン位置の一次および二次集束から生じる運動エネルギー分布全体が、示される。
【
図18B】
図18Bは、運動エネルギーの変化量に対するTOFの二次補正を伴う、
図18Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、仮想集束場所でのイオン運動エネルギーに対するTOFの理論的に計算された第1の微分を示し、速度相関イオン位置の一次および二次集束から生じる運動エネルギー分布全体が、示される。
【
図18C】
図18Cは、運動エネルギーの変化量に対するTOFの二次補正を伴う、
図18Aに関連して前述されたシミュレートされたTOFにおける、仮想集束場所でのイオン運動エネルギーに対するTOFの理論的に計算された第2の微分を示し、速度相関イオン位置の一次および二次集束から生じる運動エネルギー分布全体が、示される。
【
図19】
図19は、初期イオン位置の変化量ならびに運動エネルギーの変化量の両方に関して、二次補正を伴う、
図16に示される実施形態に基づく、シミュレートされたTOFにおける、速度相関イオン位置の速度の関数として、理論的に計算された大局的TOFを示す。
【
図20】
図20は、
図16に説明される実施形態を使用するTOF分析器を使用して記録された質量スペクトルを示す。
【
図21】
図21は、
図12に表される実施形態を使用するTOF分析器を使用して記録された質量スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
いくつかの実施形態では、2つ以上のフィールドフリードリフト領域を採用し、イオン初期位置の変化量に関して、イオン飛行時間の少なくとも一次および二次補正を提供することができる、飛行時間(「TOF」)質量分析器が、開示される。いくつかの実施形態では、フィールドフリードリフト領域の長さは、以下に提供される数学的関係に基づいて、計算されることができる。さらに、いくつかの実施形態では、イオンリフレクタから選択された距離にイオンの位置的集束を提供するための2つ以上のフィールドフリードリフト領域を採用し、イオンリフレクタが、検出器に到達する前に、イオンの運動エネルギー発散によって生じる飛行時間分布に及ぼす影響を低減させるために採用され得る、TOF質量分析計が、開示される。本出願人の教示による、例示的実施形態を説明するために、本明細書で採用される種々の用語および語句は、当技術分野におけるその通常の意味と一致して使用される。特に、用語「フィールドフリードリフト領域」は、本明細書で使用されるように、イオンの運動方向に沿った電場成分が、所与の閾値2000V/mを下回る大きさを有する、領域を指し、多くの実施形態では、イオンの移動方向に沿ったフィールドフリードリフト領域内の電場成分は、ゼロになる。さらに、用語「イオンリフレクタ」、「イオンミラー」、および「リフレクトロン」は、当技術分野におけるその一般的意味に従って、同義的に使用され、質量分析計内のイオンの進行方向を逆にするように構成される、デバイスを指す。
【0023】
図1は、イオンを上流ユニット104から受容するためのオリフィス(開口)102を含む、本出願人の教示による、飛行時間(TOF)質量分析計100の実施形態を図式的に描写する。ある場合には、TOF分光計100は、直接、イオン源、例えば、とりわけ、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)源、脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)源、またはソニックスプレーイオン化(「SSI」)源から、イオンを受容することができる。他の場合には、TOF分光計100は、フィルタリング、断片化、および/または捕捉の種々の段階を受けたイオンを受容することができる。一例として、いくつかの実装では、上流ユニットは、イオン源104を備えることができる。イオン源104によって発生されたイオンは、質量分析のために、TOF分光計100に入射する。
【0024】
再び、
図1を参照すると、イオンは、以下に論じられるように、分光計の軸方向(また、本明細書では、「縦方向」とも称される)と実質的に直交し得る(本明細書では、AD方向として示される)、方向106に沿って、質量分析計に入射する。特に、質量分析計100は、例えば、電圧(例えば、パルス電圧)が印加され、分光計に入射するイオンの伝搬方向に90度の変化を生じさせ得る、プレートの形態において、電極108を備えることができる。分光計は、距離d2だけ相互から分離され、同相DC電圧V2に保持される、2つの付加的電極110および112を備えることができる。電極110および112は、種々の方法で実装されることができる。例えば、イオンが通過し得る中心開口部を有する、プレートの形態であることができる。以下の説明では、基準点(例えば、電極108)に対する分光計内のイオンの場所は、xによって示される。
【0025】
対の電極108および110は、イオンのための第1のイオン加速段階Z1を提供する。特に、電極108と110との間の電圧差(V2−V1)は、電極110に向かって、電極110と112との間の空間内へとイオンの加速を生じさせる。電極110および112は、グリッドであろう、またはイオンを通過させるための細隙を有するであろう。電極110および112は、同相電圧に保持されるため、これらの2つの電極間の空間は、フィールドフリードリフト領域Z2である。言い換えると、電極110と112との間の領域内に軸方向電場が存在せず、したがって、加速または減速力に曝されることなく、本領域内でイオンをドリフトさせることが可能である。電極108および112の開口部の近傍では、軸方向成分を有するであろう、漏れ電場が存在し得ることを理解されたい。しかしながら、多くの実施形態では、電極110と112との間の間隔d2は、いかなる漏れ電場も、存在する場合、本第1のフィールドフリードリフト領域内のイオンの伝搬にほとんど影響を及ぼさないであろうように、電極内の開口部をはるかに上回ることができる。以下により詳細に論じられるように、本フィールドフリードリフト領域は、本例示的TOF分光計100内に提供される、2つのフィールドフリードリフト領域の第1のものである。
【0026】
図1を継続して参照すると、グリッド114は、電極112とイオンミラー116との間に配置されることができる。本実施形態では、グリッド114は、例えば、電極112内の開口部を介して、フィールドフリードリフト領域Z2から出射するイオンを加速させるように、V2と異なるDC電圧V3に保持されることができる。言い換えると、グリッド114と電極112との間の電圧差は、第2のイオン加速段階を提供する。一方、イオンがグリッド114を通過するにつれて、イオンミラー116とグリッドとの間に存在する減速電場は、イオンを減速させ、停止させ、イオンミラー116によって、グリッド114に向かって反射される。
【0027】
イオンミラー116は、種々の方法で実装されることができる。本例示的実施形態では、イオンミラー116は、電圧(例えば、DC電圧)V4に保持され得る、単一段階イオンミラーとして実装されることができる。ミラー116は、イオンに、その初期経路120から異なる経路122へのその伝搬経路を変化させる。
【0028】
本例証的実施形態では、グリッド114は、フィールドフリードリフト領域Z2から出射し、経路120に沿って伝搬するにつれてだけではなく、また、イオンミラー116によるその反射に続いて、経路122に沿って伝搬するにつれて、イオンを交差するように構成されることができる。より具体的には、イオンは、イオンミラー116によるその反射に続いて、グリッド114に向かって加速される。言い換えると、グリッド114とイオンミラー116との間に確立された電場は、イオンミラー116に向かって移動するにつれて、イオンの減速を生じさせるが、イオンミラー116からグリッド114に向かって移動するにつれて、イオンの加速を生じさせる。
【0029】
本例証的実施形態では、分光計100はさらに、経路122に沿って伝搬するにつれて、グリッド114を通したその通過後、第1のイオンミラーによって反射されたイオンを受容する、別のイオンミラー124を備えることができる。本実施形態では、第1のイオンミラー116と同様に、第2のイオンミラー124は、単一段階イオンミラーであることができる。第2のイオンミラー124は、第1のイオンミラー116が保持される得る電圧V4と同一または異なり得る、電圧V5に保持されることができる。第2のイオンミラー124とグリッド114との間の電圧差は、グリッド114から第2のイオンミラー124への経路122に沿って移動するにつれて、イオンの減速を生じさせる。第2のイオンミラー124は、これらのイオンを第3の経路126上に反射させる。反射されたイオンは、経路126に沿って移動するため、グリッド114と第2のミラー124との間の電場は、その加速を生じさせる。グリッド114の通過に応じて、第2のイオンミラー124によって反射されるイオンは、長さd6を有する第2のフィールドフリードリフト領域Z6に入射する。検出器130は、イオンを検出するために、第2のフィールドフリードリフト領域Z6の端部に配置されることができる。
【0030】
2つのフィールドフリードリフト領域の長さ(d2、d6)は、以下に論じられるように、初期イオン位置に関するイオン飛行時間の一次補正および二次補正を提供するために判定されることができる。言い換えると、2つのフィールドフリー領域は、イオンの位置集束を提供するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、以下の数学的関係は、長さd2およびd6のための値を導出するために採用される。
【0031】
本明細書に概略される式では、省略記号(…)の使用は、式が以下の行に続くことを示す。省略記号の使用は、式の一部が意図的に省略されたことの指示ではない。加えて、いくつかの事例では、字下げした式の行は、直前の行の継続である。
式1
式2
式3
式4
式5
前述の式(1)および式(2)では、
xは、基準に対する(例えば、電極108に対する)イオン経路(例えば、TOF軸)に沿った初期イオン位置を示し、
massは、イオン質量を示し、
qは、電子の電荷を示し、
v1は、TOF軸に沿った初期イオン速度を示し、
E1は、
式6
によって定義されるように、第1の加速段階における電場を示し、
E3は、
式7
によって定義されるように、第2のイオン加速器段階における電場を示し、
E4は、第1の単一段階イオンミラーにおける電場を示し、前述の式1−5の場合、E4=E5であって、
E5は、
E5=,V3−V4-d4.
によって定義されるように、第2の単一段階イオンミラーにおける電場を示し、
d2は、第1のフィールドフリードリフト領域の長さを示し、
d3は、第2のイオン加速器段階の長さを示し、
d6は、第2のフィールドフリードリフト領域の長さを示す。
【0032】
種々の実施形態では、2つのイオンミラーは、前述の式に反映されるように、同じである。代替実施形態では、2つのイオンミラーは、異なることができる。言い換えると、2つのイオンミラーによって発生される寸法および場は、異なることができる。いくつかの実施形態では、そのような差異は、高次補正または付加的エネルギー補正を提供するために採用されることができる。
【0033】
一次補正および二次補正を提供する際の前述の数学的関係の使用を図示するために、
図2Aは、d2=6.74mmおよびd6=1.752mmを伴う前述のTOF100における829amuイオンに関して、イオン初期位置(電極108に対して21mm〜29mmの範囲であるように選択された)の関数として計算された飛行時間(TOF)を示し、イオンミラー長は、100mmであるように選定され、総イオン飛行距離は、2.23mであった。
図2Bおよび2Cは、それぞれ、イオン経路(dTOF/dx)に沿ったイオン位置に対するTOFの第1の微分と、イオン経路(d
2TOF/dx
2)に沿ったイオン位置に対するTOFの第2の微分とを示す。ビーム幅は、8mm(w=8mm)と仮定された。他のパラメータの値は、
図2A−2Cに示され、d1=50mm、d3=50mm、d4=100mm、d5=100mm、V1=2000V、V3=−8100V、V4=1100V、V5=1100V、E1=40V/mm、E3=162V/mm、E4=−92V/mm、E5=−92V/mm、res=1413897.84、delta t=21.49ps、L(全体的距離)=1.86mを含む。
【0034】
図2A−2Cは、イオン飛行時間が、ビーム幅(本実施例では、8mm)にわたって、x範囲の値として四次関数をトレースすることを示す。これは、一次および二次だけではなく、また、三次補正も達成されたことを示すが、d2およびd6は、三次補正を提供するように明示的に選択されなかった。多くの場合、三次補正は、検出器、HV(高電圧)安定性、および信号取得技術の制限を前提として、必要ではない。しかしながら、必要とされる場合、三次補正は、前述の数学的形式に照らして、考慮されることができる。
【0035】
図2Aおよび2Bに示されるように、一次補正および二次補正は、初期イオン場所(例えば、この場合、電極108に対して24〜26mm)に対して幅広かつ平坦な領域を提供し、イオン位置に対するTOFの一次および二次微分は、ゼロになる。イオン位置を除くいかなる場所にも変化量はなく、TOF縦軸に沿って初期運動エネルギーがない、理想化された条件を前提として、本TOFは、8mm幅のイオンビームを21ps幅のイオン飛行時間分布(全て含む、FWHMではない)に理論的に集束し、それによって、140万の分解能(質量/Δ質量、Δ質量=max−min、FWHMではない)を提供することができる。
【0036】
図3は、イオン加速およびイオンミラー区画内の本例証的TOF分光計におけるシミュレートされたイオン軌道を示し、
図4は、集束点のイオン軌道を示す(長いフィールドフリー軌道が、分光計の縦軸に対して10.5度の角度に存在した)。
図5は、TOF100を通過するにつれてのその軌道に沿ったイオンのシミュレートされた電位エネルギーを示す。シミュレーションは、イオンが分光計に入射するにつれて、200eVのイオン直交運動エネルギーを用いて行なわれた。TOF軸に沿ったイオンの初期位置が、異なる場所にあるようにシミュレートされたが、イオンは、検出器に強く集束されていた。
【0037】
図6は、付加的フィールドフリー領域を含むという点において、
図1の実施形態と異なる、本発明の別の実施形態による、TOF分光計600を図式的に描写する。より具体的には、種々の実施形態では、2つのグリッド602および604が、2つのイオンミラー606と608との間に配置される。グリッド602および604は、フィールドフリードリフト領域Zffをグリッド間に発生させるように、同相電圧V3に保持される。前述の実施形態と同様に、電極612に印加される電圧V1(例えば、パルス電圧)は、電極616と618との間に印加された電圧差(V2−V1)によって加速されている間、分光計に入射するイオンを第1のフィールドフリードリフト領域Z2に向かって再指向させる。フィールドフリー領域Z2から出射後、イオンは、グリッド602と電極618との間に印加される電圧差(V3−V2)を介して、グリッド602に向かって加速される。イオンは、次いで、第2のフィールドフリードリフト領域Zffを通過し、イオンミラー606に向かって伝搬し続ける。イオンミラー606とグリッド604(V4−V3)との間の電圧差は、イオンミラー606に向かって伝搬するにつれて、イオンを減速させ、グリッド604に向かってイオンの反射を生じさせる。反射されたイオンは、イオンミラー606からグリッド604に移動するにつれて、加速される。反射されたイオンは、2つのグリッド602と604との間に確立されたフィールドフリードリフト領域Zffを通過し、第2のイオンミラー608に向かって伝搬する。イオンは、第2のイオンミラー608に向かって移動するにつれて、減速され、そのイオンミラーによって、2つのグリッド602と604との間のフィールドフリードリフト領域Zffに向かって反射される。フィールドフリー領域Zffを通過後、検出器622まで延在する長さd6を有する、長いフィールドフリードリフト領域Z6に入射する。種々の実施形態では、ここに示されるように、両イオンミラーは、単一段階ミラーであることができるが、他の実施形態では、イオンミラーの一方または両方は、多段階(例えば、2段階)イオンミラーであることができる。本実施形態のいくつかの実装では、最終フィールドフリードリフト領域の長さ(d6)は、他の実施形態のTOF100内の個別のフィールドフリードリフト領域の対応する長さより短くあることができる。一例として、いくつかの実施形態では、付加的フィールドフリー領域Zffのmm長毎に、最終フィールドフリー領域Z6は、3mmずつ短縮されることができる。
【0038】
フィールドフリー領域Z2およびZ6の長さ(d2およびd6)は、dffがパラメータである、以下の数学的関係を採用することによって、判定されることができる。dffの値を選定することによって、数式(11)および(12)は、長さd2およびd6に対する値を求めるために使用されることができる。ある場合には、dffに対する初期選択肢は、d2およびd6に対して、合理的値をもたらさない場合がある(例えば、正値ではない場合がある)。そのような場合、dffに対する他の値が、d2およびd6に対する合理的値が求められるまで、反復的に選択されることができる。前述の実施形態におけるように、イオン位置(x)に対するTOFの第1の微分は、d6の値を求めるために採用されることができ、イオン位置(x)に対するTOFの第2の微分は、d2に対する値を求めるために採用されることができる。d2の値は、d6およびdffから独立することができる一方、d6の値は、d2およびdffに依存する。
式8
式9
式10
式11
式12
式13
式14
前述の式8−14では、
xは、基準に対する(例えば、電極612に対する)イオン経路(例えば、TOF軸)に沿った初期イオン位置を示し、
massは、イオン質量を示し、
qは、電子の電荷を示し、
v1は、TOF軸に沿った初期イオン速度を示し、
E1は、式6に定義されるように、第1の加速段階における電場を示し、
E3は、式7に定義されるように、第2のイオン加速器段階における電場を示し、
E4は、第1の単一段階イオンミラーにおける電場を示し、
E5は、第2の単一段階イオンミラーにおける電場を示し、
d2は、第1のフィールドフリードリフト領域の長さを示し、
d3は、第2のイオン加速器段階の長さを示し、
d6は、第2のフィールドフリードリフト領域の長さを示す。
【0039】
図7は、前述の実施形態と同様に、2つのグリッド702および704を含み、その間に、フィールドフリードリフト領域Zffが確立され得る、本出願人の教示による、さらに別の実施形態による、TOF700を図式的に描写する。加えて、前述の2つの実施形態と同様に、フィールドフリードリフト領域Z2は、2つの電極710と712との間に確立されることができる。前述の2つの実施形態と異なり、TOF700は、グリッドのうちの1つから検出器まで延在するであろう、長いフィールドフリー領域を欠いている。むしろ、本実施形態では、検出器714は、検出器の衝突表面が、グリッド704と平面を共有する(すなわち、検出器の衝突表面が、グリッド704と同一平面にあることができる)ように配置されることができる。故に、第2のイオンミラー716によって反射されるイオンは、グリッド702と704との間のフィールドフリードリフト領域Zffを通したその通路の端部において、検出器714に遭遇する。イオンは、開口を通してTOF700に入射し、電圧V1に保持される電極718によって反射される。いくつかの実施形態では、長さd3、d4、およびd5は、同じであることができる一方、他の実施形態では、それらの長さのうちの少なくとも2つは、異なることができる。
【0040】
前述のTOF700に対するd2およびdffの値を求めるために、d6は、前述の実施形態に関連して提示された前述の式10では、ゼロに設定されることができ、dffが、d6の代わりに、解法されることができる。
【0041】
TOF700のいくつかの実装では、イオンミラー長(すなわち、d4およびd5)は、第2のイオン加速器段階の長さ(すなわち、d3)に等しくなるように選択されることができる。
【0042】
前述の数学的関係が、以下のパラメータ:d1=50mm、d2=6.38mm、d3=45mm、d4=45mm、d5=45mm、V1=1500volts(V)、V2=0、V3=−5000V、V4=900V、V5=900V、およびdff=364.6mmを有する前述のTOF700の仮定実装を通して、829amuを有するイオンの飛行時間および軌道をシミュレートするために利用され、イオンビームは、8mm幅と仮定された。イオン飛行経路は、高性能(8mmビームは、25psに集束され、最大分解能904,454)を実現するために十分に長い、1.35mであって、分析器の全体長は、約500mmであった。さらに、E1=30V/mm、E3=111.11V/mm、E4=−131.11V/mm、およびE5=−131.11V/mmである。
【0043】
図8Aは、TOF軸ADに沿ったイオン位置の関数として、イオンTOFを示し、
図8Bは、TOF軸ADに沿ったイオン位置に対するTOFの第1の微分を示し、
図8Cは、TOF軸ADに沿ったイオン位置に対する第2の微分を示す。
図8Bおよび8Cに示されるように、一次補正および二次補正は、初期イオン場所(例えば、この場合、718に対して24mm〜26mmのイオン位置)に対して幅広かつ平坦な領域を提供し、一次および二次微分は、ゼロになる。
【0044】
図9は、本出願人の教示のいくつかの実施形態による、TOF700ならびに初期(開始)位置の範囲に基づいて、前述のシミュレートされたTOF分光計に入射するにつれての30eV直交エネルギーを伴う複数のイオンの計算された起動を示す。
図10は、電位エネルギー図上に重畳された計算されたイオン軌道を示す。イオンは、検出器の衝突表面が第1のイオンミラーへの入口グリッドと共有する、平面において強く集束する。
【0045】
本出願人の教示による、TOF分光計の他の実施形態は、付加的フィールドフリードリフト領域を含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、イオンミラーのうちの1つ以上は、2段階ミラーであることができる。そのような実施形態のうちのいくつかは、高次補正を提供し、および/または空間およびエネルギー集束を組み合わせることを可能にすることができる。
【0046】
一例として、
図11は、2つのフィールドフリー領域Z2およびZ4と、2つのイオンミラー1108と1110との間に配置されるグリッド1106とを備えるという点において、
図1の実施形態に類似する、そのような実施形態の1つによる、TOF分光計1100を図式的に描写する。しかしながら、イオンミラーが単一段階イオンミラーである、
図1の実施形態と異なり、本実施形態では、イオンミラーは、2段階イオンミラーである。
【0047】
別の実施例として、
図12は、2つのグリッド1202および1204を有し、その間に、フィールドフリードリフト領域Zffが、フィールドフリードリフト領域Z2およびZ6に加え、確立され得る、前述の
図6に示される実施形態に類似する、別のTOF分光計1200を図式的に描写する。しかしながら、イオンミラーが単一段階イオンミラーである、
図6の前述の実施形態と異なり、TOF1200は、2つのイオンミラー1212および1214を含み、両方とも、2段階イオンミラーである。
【0048】
図13は、2つの2段階イオンミラー1302および1304と、4つのフィールドフリードリフト領域Z2、Zff、Zm1、およびZm2とを含む、別の実施形態による、TOF分光計1300を図式的に描写する。2つの付加的フィールドフリードリフト領域Zm1およびZm2はそれぞれ、2段階イオンミラーのうちの1つとグリッド1314および1316のうちの1つとの間に配置されることができ、その間に、フィールドフリードリフト領域Zm1およびZm2が、配置されることができる。
【0049】
前述の数学的形式は、これらの付加的実施形態を分析する、例えば、フィールドフリードリフト領域の長さを判定するために採用されることができる。
【0050】
イオンビームの経路を折り畳むための前述のもの等の種々の実施形態におけるイオンミラーの使用は、コンパクトな構成において、複数のフィールドフリー領域の使用を含む、本教示を実装可能であり得る。例えば、イオンミラーの使用は、分光計の物理的寸法を所望の範囲内に維持しながら、複数のフィールドフリー領域を利用することを可能にすることができる。
【0051】
しかしながら、本出願人の教示は、前述の実施形態に制限されず、任意のTOF幾何学形状に適用されることができる。一例として、
図14は、イオンが分析器の軸(AD)に直交して分析器に入射する、入口開口1402を備えることができる、別の実施形態による、線形TOF分析器1400を図式的に描写する。電極1404に印加されるパルス状電圧は、イオンの90度偏向を生じさせ、イオンを分析器の軸ADに沿って伝搬させる。電極1404と電極1406との間に印加される電圧差は、イオンの加速(第1のイオン加速段階Z1)を生じさせる。加速されたイオンは、次いで、同相電圧に保持される、電極1406と別の電極1408との間に確立された第1のフィールドフリードリフト領域Z2に入射する。第1のフィールドフリードリフト領域Z2を通過後、イオンは、電極1408と電極1412との間に印加される電圧差によって発生され得る、第2のイオン加速段階Z3に曝される。イオンは、次いで、第1のフィールドフリードリフト領域Z2よりはるかに長くあり得、検出器1414まで延在する、第2のフィールドフリー領域Z4に入射する。
【0052】
前述の実施形態と異なり、TOF分光計1400は、分析器の入口から検出器に進行するにつれ、イオン起動の折り畳みを生じさせるために、いかなるイオンミラーも含まない。
【0053】
2つのフィールドフリー領域の長さ(すなわち、d2およびd4)は、以下に論じられるように、初期イオン位置に対するイオン飛行時間の一次補正および二次補正を提供するために判定されることができる。言い換えると、2つのフィールドフリー領域は、イオンの位置集束を提供するように構成されることができる。本実施形態では、以下の数学的関係が、長さd2およびd4の値を導出するために採用される。
式15
式16
式17
式18
式19
【0054】
図15は、前述の線形TOF分析器の理論的実装を通して進行するイオンに関して計算されたTOFを描写し、TOF1400に沿ったイオン位置に対するTOFの一次および二次補正は、前述の式15−19を使用することによって提供された。本TOFのパラメータは、以下のようなものであった:d1=20mm、d2=3.25mm、d3=25mm、d4=339.4mm、V1=1500V、V2=0V、V3=−6000V。
【0055】
いくつかの実施形態では、2つ以上のフィールドフリー領域が、初期イオン位置における発散に関するイオンのTOFの一次および二次補正を提供するために採用されることができ、1つ以上のイオンミラーは、イオンの運動エネルギーにおける発散に関して、一次(および、ある場合には、二次)補正を提供するために採用されることができる。例えば、1つ以上のイオン加速段階が、1つ以上のフィールドフリードリフト領域とともに、イオンミラーの入口における仮想集束場所でのイオン位置または速度相関イオン位置の補正を介して、時間的にイオンを集束させる(イオンを空間的に群生させる)ために採用されることができ、イオンミラーは、次いで、イオン運動エネルギーの変化量に対して、イオン飛行時間の二次補正を達成するように構成されることができる。
【0056】
一例として、
図16は、イオン位置およびイオンエネルギーの両方に対するが、分光計内の異なる場所において、TOFの一次および二次補正が、提供される、そのような実施形態による、TOF分光計1600を図式的に描写する。位置補正は、初期イオン位置に対するものであることができ、エネルギー補正は、本実施形態では、イオンミラーへの入口にあり得る、イオン位置の時間的集束におけるイオンエネルギー変化量に対するものであることができる。TOF分光計1600は、イオンが、分光計のTOF軸に直交する方向(イオンの速度ベクトルと平行な方向)に沿って、分光計に入射することができる、入口開口1602を含む。電圧、例えば、パルス状電圧が印加され得る、偏向電極1604は、TOF軸上に入射するイオンの偏向を生じさせる。偏向電極1604と別の電極1606との間に印加される電圧差は、第1の加速段階Z1を提供する。電極1606に対して距離d2に配置される、別の電極1608は、2つの電極間の空間が、第1のフィールドフリードリフト領域d2であるように、電極1606と同相電圧に保持されることができる。第2のイオン加速段階Z3は、電極1608に対して距離d3に配置される、電極1608と別の電極1610との間に印加される電圧差によって提供されることができる。分光計1600は、電極1610に対して距離d4+d5に配置される、別の電極1612を含み、電極と同相電圧に保持され、それによって、第2のフィールドフリードリフト領域Z4+Z5を発生させることができる。
【0057】
さらに以下に論じられるように、フィールドフリードリフト領域の長さd3および(d4+d5)は、他のパラメータ、例えば、加速領域内の電場に基づいて、初期イオン位置に対するTOFの第1および第2の補正を求め、それによって、第2のフィールドフリードリフト領域Z4+Z5の中央にイオンを一時的に集束するように構成されることができる。
【0058】
第2のフィールドフリードリフト領域Z4+Z5からの出射に応じて、イオンは、2段階イオンミラー1614に入射する。2段階イオンミラー1614は、電極1612から距離d6に配置される、電極1616Aと、電極1616Aから距離d7に配置される、別の電極1616Bとを含むことができる。イオンが停止し、方向を逆にするように、電極1612と1616Aとの間の電圧差は、イオンの第1の減速を提供し、1616Aと1616Bとの間の電圧差は、イオンの第2の減速を提供する。反射されたイオンは、次いで、電極1616Bと1616Aおよび電極1616Aと1612との間の領域を横断し、検出器1618まで延在するフィールドフリードリフト領域Z8に入射することによって、加速される。第1の集束点は、2つのグリッド要素1610と1612との間にあり得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、以下の数学的関係が、フィールドフリー領域の長さおよび仮想集束におけるイオンエネルギー発散等の種々のシステムパラメータを求めるために採用されることができる。数学的関係は、第1の加速段階から仮想集束場所(
図16では、第1の集束と標識される)までの二次相関集束を達成し、次いで、仮想集束場所から検出器までの二次エネルギー集束を達成するように設計される。これを達成するために、ニュートンの運動方程式が、イオンが線形加速場およびフィールドフリー領域(d2、z4、z5、およびz8)に曝される、領域(z1、z3、z6、およびz7)を通して伝搬するにつれて、イオンに適用される。
【0060】
加速領域内の場強度は、ある電位差に保持される2つの平行導体間の静電場として判定される。
式20
式21
式22
式23
【0061】
これらの(または、任意の)電場内のイオンにかかる力は、以下によって与えられ得る。
式24
【0062】
したがって、イオンは、以下によって与えられる加速を受ける。
式25
ここでは、加速は、以下のように記述されることができる。
式26
【0063】
相関集束のために、以下の関係が、位置xに代入されることができる。
式27
新しい項mcは、相関の傾きである。mcに対する測定単位は、時間である。以下の関係が、次いで、種々の領域における飛行時間に対して求められることができる。
式28
式29
式30
式31
【0064】
したがって、初期イオン位置から仮想集束までの総飛行時間は、以下となる。
式32
【0065】
t1、t2、t3、およびt4に対する値を代入することによって、tofは、以下のように記述されることができる。
式33
【0066】
v1に関するtofの一次および二次微分が、次いで、計算され、ゼロに設定されることができる。
式34
式35
【0067】
式34および35をゼロに設定することによって、d2およびd4の値は、以下のように判定されることができる。
式36
式37
【0068】
いくつかの実施形態では、前述の式においてパラメータとして利用される種々の電圧および寸法は、d2およびd4の得られた値が、実数、正数であって、かつ第1の仮想集束場所において、二次まで、速度相関イオン位置の補正を求めるために合理的である限り、合理的値に設定されることができる。他の実施形態では、速度相関イオン位置ではなく、イオン位置が、前述の数学的関係において採用され得る。
【0069】
分析器の残りは、次いで、二次まで、イオンエネルギーの発散を補正するために利用されることができる。再び、ニュートンの運動方程式が、TOF分析器の残りの区画におけるイオン飛行時間を判定するために採用される。分析器の第2の部分に対する式は、エネルギー項に構築され、次いで、エネルギーに関して微分されることができる、または位置および速度の項に構築され、次いで、位置または速度に関して微分されることができる。両タイプの式が、以下に提供される。
式38
式39
式40
式41
式42
式43
式44
式45
式46
式47
式48
式49
【0070】
分析器の第2の部分を通したTOFに対する前述の式は、次いで、U5に関して微分され(一次および二次微分)、ゼロに設定され、以下のパラメータを求めることができる。
式50
式51
式52
式53
式54
式55
式56
式57
【0071】
実際には、場値を設定しないが、電圧を設定するため、電圧に対して解法することができる。
式58
【0072】
前述の式に従って、パラメータである、和およびミラーを設定することによって、仮想集束におけるイオンエネルギー発散は、二次まで補正されることができる。
全体的TOF式は、以下の関係によって与えられることができる。
式59
【0073】
初期イオン位置に対するTOFの一次および二次補正を伴うが、質量829amuを有するイオンに対する二次エネルギー補正を伴わない、以下のパラメータを用いた前述のTOF分光計の理論的実装に関して、
図17Aは、イオン速度相関初期位置(位置付けられた初期イオンが、偏向電極1604に対して参照され得る)の関数としてTOFを示し、
図17Bは、イオン速度相関初期位置に対するTOFの第1の微分を示し、
図17Cは、イオン速度相関初期位置に対するTOFの第2の微分を示す:d1=20mm、d2=3mm、d3=50mm、d4=500mm、d5=400mm、d6=100mm、d7=50mm、d8=678mm、V1=1184V、V2=0、V3=−7000V、V4=−1000V、V5=974V、イオン飛行の長さ=1.941m、分析器の長さ=1123mm、ビームウエスト=8mm、入射イオンの運動エネルギー:474eV。
【0074】
図18A、18B、および18Cは、質量829amuを有するイオンに関する、以下のパラメータを用いた前述のTOF分光計の理論的実装に対する初期速度相関イオン位置の変化量に関して、TOFの前述の二次補正の結果としての仮想集束場所における運動エネルギー発散の範囲を前提として、運動エネルギーの変化量に対するTOFの二次補正を伴う、仮想集束場所から検出器までのイオン運動エネルギーの関数としての個別のTOF、仮想集束場所におけるイオン運動エネルギーに対するTOFの第1の微分、および仮想集束場所におけるイオン運動エネルギーに対するTOFの第2の微分を示す:d1=20mm、d2=3mm、d3=50mm、d4=500mm、d5=400mm、d6=100mm、d7=50mm、d8=678mm、V1=1184V、V2=0、V3=−7000V、V4=−1000V、V5=974V、イオン飛行の長さ=1.941m、分析器の長さ=1123mm、ビームウエスト=8mm、入射イオンの運動エネルギー:474eV。また、
図19は、速度相関位置およびエネルギーに対する両方の二次補正が実装されるとき、速度相関イオン位置のある範囲を前提とする、大局的TOFを示し、性能向上を示唆する。本分析器は、検出器において、±20m/秒〜35pico秒の速度の範囲(715,000理論的分解能限界)を有する、速度相関ビームを集束させることができる。そのようなビームは、約3mmの寸法を有するであろう。
【0075】
図20は、
図16および式59によって説明される実施形態を使用する、質量829.5を有する、プロトン化ALILTLVSペプチドのTOF分析器を使用して記録された例示的質量スペクトルを示す。
【0076】
図21は、
図12によって説明される実施形態を使用する、質量609.3を有する、プロトン化レセルピンのTOF分析器を使用して記録された例示的質量スペクトルを示す。
【0077】
本明細書で使用される見出しは、編成目的にすぎず、説明される主題をいかようにも限定するものと解釈されない。本出願人の教示が、種々の実施形態と併せて説明されたが、本出願人の教示がそのような実施形態に限定されることを意図しない。対照的に、本出願人の教示は、当業者によって理解されるような種々の代替、修正、および均等物を包含する。