(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワーク固定装置(1)は、前記ワーク(W)の外面が接触する着座面(5a)を有するワーク固定部(5)と、前記ワーク(W)を前記着座面に押付ける押付面(6a)を有するワーク押付部(6)と、を備える、請求項1に記載のロボットシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術において、クランプ装置におけるワークの着座面はワークの外面と密着するように形成されている。しかし、ワークが複雑な形状を有し、且つ、当該ワークが比較的広い寸法許容差に基づいて作製されている場合、そのようなワークの外面と着座面とを確実に密着させることは困難である。したがって、ワークの寸法許容差に起因して、着座面とワークの外面との間に隙間が生じることがある。
【0008】
前述のワークがクランプにより着座面に正確に位置決めされているかを確認する手段として、特許文献1に開示された密着確認装置を使用した場合を考えると、次のような問題が発生する。すなわち、密着確認装置は、着座面からエアが流出する場合にワークが着座面に密着していないと判定するものである。つまり、ワークの外面と着座面との間に僅かでも隙間が生じたとき、着座面からエアが流出するので、ワークの着座状態に異常が発生したと判定される。そのため、クランプ装置によって固定されたワークの位置が許容範囲内に収まっていても、エアの流出状態が検出されれば、そのワークは正しく位置決めされていないと判定されてしまう。
【0009】
以上の問題に対して、クランプ装置により固定されたワークの位置をセンサにより検出する方法が検討された。しかし、センサには電気配線が必要になり、クランプ装置が複雑かつ高価なものとなる。また、ワークの加工や部品の組付けを行うときにクランプ装置を一方向に継続的に回転させたい場合には、電気配線が必要なセンサを使用することができない。電気配線の破断の問題が発生するからである。
【0010】
そこで本発明は、上述したような問題点に鑑み、安価に構成でき、かつ、生産機械におけるワーク固定装置により固定されたワークの異常を正確に判定することができるロボットシステムおよび異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一態様は、ワークを位置決めおよび固定するクランプ装置と、ワークを把持するハンドが取付けられたロボットと、ワーク固定装置およびロボットを制御する制御装置と、を備えたロボットシステムを提供する。
さらに、第一態様のロボットシステムにおいて、制御装置は、
ハンドによりワークを把持し、その把持されたワークをワーク固定装置の所定の位置に配置するようにロボットを動作させるロボット動作制御部と、
ロボット動作制御部の動作指令に応じてロボットの軸を回転駆動するモータの外乱トルクを監視する外乱トルク監視部と、
ハンドにより把持されたワークがワーク固定装置により固定されたとき、外乱トルクと所定の第1閾値とを比較して、外乱トルクが第1閾値を超えた場合には、ワーク固定装置により固定されたワークの位置に異常が発生したと判定する異常判定部と、を有している、ロボットシステムが提供される。
この第一態様により上述の課題が解決される。しかし、本発明は、第一態様に限られず、以下の第二態様ないし第三態様のいずれかのロボットシステムを提供することもできる。
【0012】
本発明の第二態様によれば、第一態様のロボットシステムにおいて、制御装置は、
外乱トルク監視部により監視しているモータの外乱トルクの履歴を複数の周波数成分に分解し、該複数の周波数成分の中から特定の周波数成分を抽出する周波数分析部をさらに有する、ロボットシステムが提供される。
さらに、第二態様のロボットシステムにおいて、異常判定部は、
ハンドにより把持されたワークがワーク固定装置により固定されたとき、特定の周波数成分と所定の第2閾値とを比較して、特定の周波数成分が第2閾値を超えた場合には、ワーク固定装置により固定されたワークに傷が発生したと判定することを含む、ロボットシステムが提供される。
【0013】
本発明の第三態様によれば、第一態様または第二態様のロボットシステムにおいて、
ワーク固定装置は、ワークの外面が接触する着座面を有するワーク固定部と、ワークを着座面に押付ける押付面を有するワーク押付部と、を備えることを特徴とする、ロボットシステムが提供される。
【0014】
また、本発明の第四態様は、ロボットによりワーク固定装置に搬入され、該ワーク固定装置に固定されたワークの異常を判定する異常判定方法を提供する。
さらに、本発明の第四態様によれば、
ロボットに対する動作指令に応じてロボットの軸を回転駆動するモータの外乱トルクを監視し、
ロボットのハンドによりワークを把持してワーク固定装置の所定の位置に配置し、その把持されたワークをワーク固定装置により固定したときに、外乱トルクと所定の第1閾値とを比較して、外乱トルクが第1閾値を超えた場合には、ワーク固定装置により固定されたワークの位置に異常が発生したと判定する、異常判定方法が提供される。
【0015】
本発明の第五態様によれば、ロボットのハンドによりワークを把持してワーク固定装置の所定の位置に配置し、その把持されたワークをワーク固定装置により固定したときに、
監視しているモータの外乱トルクの履歴を複数の周波数成分に分解し、複数の周波数成分の中から特定の周波数成分を抽出し、特定の周波数成分と所定の第2閾値とを比較して、特定の周波数成分が前記第2閾値を超えた場合には、ワーク固定装置により固定されたワークに傷が発生したと判定することをさらに含む、異常判定方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第一態様によれば、ロボットのハンドにより把持され、ワーク固定装置の所定の位置に位置決めされたワークをワーク固定装置により固定したとき、ロボットの軸を駆動するモータの外乱トルクを検出している。そして、検出された外乱トルクが所定の第1閾値を超える場合に、ワーク固定装置に固定されたワークの位置に異常が発生したと判定される。
このため、ワーク固定装置におけるワークの着座面とワークの外面との密着状態に関係なく、そのワーク固定装置に固定されたワークの位置に異常が生じたか否かを判定することができる。言い換えれば、ワーク形状に左右されることなく、固定されたワーク位置の異常の有無を判定できる。また、第1閾値を調整することにより、ワーク固定装置によって固定されたワークの位置が許容範囲内に収まっている状態をワーク位置の異常として判定されないようにすることが可能である。その結果、ワークから作製される製品の歩留まりを向上させることができる。
さらに、異常を検出するためにセンサをワーク固定装置に付加する必要がない。その結果、安価な構成によりワークの異常を判定するロボットシステムを提供することができる。
【0017】
本発明の第二態様によれば、ロボットのハンドにより把持されたワークをワーク固定装置により固定したとき、その固定時の衝撃によってワークが損傷したか否かを判定することができる。それにより、ワークから作製される製品の歩留まりを向上させることができる。
【0018】
本発明の第三態様によれば、ワークの外面が接触する着座面を有するワーク固定部と、ワークを着座面に押付ける押付面を有するワーク押付部とを備えるため、ワークの固定時にワークがワーク固定部の着座面に倣って配置される。これにより、ワーク固定装置においてワークを精度よく固定することができる。
【0019】
本発明の第四態様および第五態様は、それぞれ本発明の第一態様および第二態様と同様の効果を奏する。
【0020】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示されるロボットシステムの態様は一例であり、本発明のロボットシステムは図示した態様に限られるものではない。
【0023】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態によるロボットシステムの斜視図である。
第1実施形態のロボットシステム20は、
図1に示すように、ワークWを位置決めおよび固定するクランプ装置1を備えた生産機械2と、ロボット先端部にハンド3が取付けられたロボット4と、を備える。ロボット4は垂直多関節型マニュピレータである。生産機械2としては、ワークを加工する加工機や、ワークに部品を組付ける組立機などが使用される。そして、そのような生産機械2の作業テーブルにクランプ装置1が設置されている。なお、
図1においては、生産機械2の一部が示されている。
【0024】
さらに、ロボット4は、ハンド3によりワークWを把持して、生産機械2に設置されたクランプ装置1に移動させるように制御される。
図1に示される例においては、ワークWはT字形管状部材からなる。このため、ロボット4のハンド3は2本の指部を備えており、T字形管状部材の管内において2本の指部の間隔を広げることによりT字形管状部材を把持するようになっている。
【0025】
さらに、クランプ装置1は、ワークWを位置決めするワーク固定部5と、ワークWをワーク固定部5に押付けるワーク押付部6と、を備える。ワーク固定部5およびワーク押付部6の各々における、ワークWの外面と接触する面は、ワークWがT字形管状部材であるため、T字形管状部材の外面に合わせて湾曲している。
【0026】
ロボット4は、ハンド3により把持されたワークWをクランプ装置におけるワーク固定部5およびワーク押付部6の間に位置決めする。それから、ハンド3によりワークWが把持された状態において、クランプ装置1が作動し、ワーク押付部6がワークWをワーク固定部5に押付けるようにされている。そして、クランプ装置1によってワークWが位置決めおよび固定された後、ロボット4のハンド3はワークWを解放するようにしている。
なお、ワークWをワーク固定部5とワーク押付部6との間の所定の位置に配置するためのロボット4の動作は、ティーチングまたはオフラインプログラミングによって予め教示されている。
【0027】
ここで、
図2Aは、
図1に示されるクランプ装置1によりワークWが正常に固定された様子を模式的に示した正面図である。
図2Bは、
図2Aに示されるワークWおよびクランプ装置1を上から見た図である。
図2Bに示されるように、クランプ装置1のワーク固定部5は、ワークWとしての管状部材の湾曲した外面が接触する着座面5aを有する。一方、クランプ装置1のワーク押付部6は、ワークWとしての管状部材の湾曲した外面をワーク固定部5の着座面5aに押付ける押付面6aを有する。
【0028】
そして、
図2Aに白抜き矢印によって示されるように、ロボットのハンド3により把持されたワークWは、ワーク押付部6の押付面6aによってワーク固定部5の着座面5aに押付けられている。このとき、
図2Bに示すように、ワークWの外面がワーク固定部5の着座面5aに当接することにより、ワークWがワーク固定部5の着座面5aに倣って配置される。これにより、ワークWが所定の位置に位置決めされる。
なお、本願において「ワークWの外面がワーク固定部5の着座面5aに当接する」状態は、ワークWの外面が着座面5aに密着する状態に限られない。つまり、着座面5aとワークWとの間に隙間が発生する状態であっても、ワークWの位置誤差が所定の許容範囲内に収まるようにワークWの外面がワーク固定部5の着座面5aに当接されていればよい。
【0029】
しかし、前述したようにクランプ装置1によってワークWの位置を所定の位置に位置決めするときに、ワーク固定部5の着座面5aに異物、例えば加工屑が付着している場合、ワークWを所定の位置に位置決めすることが困難となる。この点について、
図3Aおよび
図3Bを参照して説明する。
【0030】
図3Aは、
図1に示されるクランプ装置1により固定されたワークWの位置が異常である様子を模式的に示した正面図である。
図3Bは、
図3Aに示されるワークWおよびクランプ装置1を上から見た図である。
図3Aおよび
図3Bにおいては、ハンド3により把持されたワークWをワーク押付部6によって着座面5aに押付けるときに、ワーク固定部5の着座面5aに加工屑7が存在している。このような場合には、ワークWを着座面5aに倣って配置することができない。ワークWの位置は、
図3Aに示されるように、
図2Aに示した正常なワーク位置に対して大きくずれる。この状態においてワークWを加工すると、目的の形状とは異なる加工品が生成されてしまう。
【0031】
上記のようにワーク押付部6の動作によってワークWの位置ずれが発生したとき、ハンド3を支持する軸を回転駆動するサーボモータ16に対して、
図3Aに白抜き矢印で示されるような外乱トルクが作用する。したがって、サーボモータ16の外乱トルクを監視すれば、クランプ装置により固定されたワークWの位置異常の発生を検出することができる。このため、第1実施形態のロボットシステム20は、ハンド3を支持する軸を回転駆動するサーボモータ16の外乱トルクを監視する機能を有する制御装置8を備えている。
【0032】
つまり、サーボモータの外乱トルクはサーボモータの電流値によって管理し得る。そして、監視される外乱トルクとは、動作指令に応じてサーボモータに入力されるトルク(即ち、指令電流値)と、実際にサーボモータの動作に使われたトルク(即ち、消費電流値)との差を意味する。例えば、サーボモータの負荷が所定の範囲内であれば、消費電流値は指令電流値と同等となるため、外乱トルクは発生しない。これに対し、サーボモータに掛かる負荷が所定の範囲を超えた場合は、フィードバック制御を実施した結果、消費電流値が大きくなる、すなわち外乱トルクは大きくなる。
【0033】
次に、第1実施形態のロボットシステム20の制御装置8について説明する。
図4は第1実施形態のロボットシステム20の制御装置8を示すブロック図である。
図4を参照すると、ロボット4は制御装置8に接続されている。制御装置8はデジタルコンピュータである。
制御装置8は、ロボット動作制御部9と、サーボモータ制御部10と、外乱トルク監視部11と、クランプ装置制御部12と、異常判定部13とを備える。
【0034】
ロボット動作制御部9は、ハンド3によりワークWを把持させ、クランプ装置1の所定の位置にワークWを位置決めするようにロボット4を動作させる。
【0035】
サーボモータ制御部10は、ロボット動作制御部9からの動作指令に応じて、ロボット4の各関節部の軸を駆動するサーボモータ(不図示)を制御する。そして、目標位置に対するロボット4の動作は、該サーボモータの軸に連結されたフィードバック装置、例えばインクリメンタルエンコーダを用いて制御される。
【0036】
外乱トルク監視部11は、サーボモータ制御部10が制御するハンド3内のサーボモータの外乱トルクを監視する。ハンド3をピッチ方向、ヨー方向、およびロール方向に回転させるためにハンド3に3つの回転軸が在る場合は、少なくとも1つの回転軸のサーボモータの外乱トルクを監視すればよい。また、外乱トルク監視部11は、ハンド3を支持する軸を駆動するサーボモータの外乱トルクを監視するだけでなく、その他の各ロボット関節部の軸を駆動するサーボモータの外乱トルクを監視してもよい。
【0037】
クランプ装置制御部12は、ロボット4によってワークWがクランプ装置1におけるワーク固定部5とワーク押付部6との間の所定の位置に配置されたときに、クランプ装置1を作動させる。つまり、ハンド3により把持されたワークWが、クランプ装置1のワーク固定部5とワーク押付部6との間の所定の位置に位置決めされた状態において、クランプ装置1が作動して、当該ワークWがワーク固定部5の着座面5aに押付けられる。そして、このようなクランプ装置1の動作が完了すると、外乱トルク監視部11により監視されているサーボモータの外乱トルクが、異常判定部13に送信されるようになっている。
【0038】
異常判定部13は、外乱トルク監視部11から送信された外乱トルクを所定の第1閾値(電流値)と比較する。そして、異常判定部13は、当該外乱トルクが所定の第1閾値を超えた場合に、クランプ装置1のワーク固定位置に異常が発生したと判定する。
【0039】
さらに、異常判定部13によって、異常が発生していると判定された場合にアラームを出力する出力部14が、制御装置8に接続されている。アラームとしては、光、音、および音声などを単独で、あるいは任意に組合せて使用することができる。
【0040】
次に、上記した制御装置8を備えるロボットシステム20の動作について説明する。
図5は第1実施形態のロボットシステム20の動作手順を示すフローチャートである。
ロボットシステム20を起動すると、制御装置8は、予めプログラミングされた動作指令に従ってロボット4を動作させる。それにより、ロボット4は、
図1に示されるようにハンド3によりワークWを把持して、生産機械2に設置されたクランプ装置1に移動させる。ワークWの移動中、制御装置8の外乱トルク監視部11は、ロボット4のハンド3を支持する軸を回転駆動するサーボモータの外乱トルクを監視する(
図5のステップS1)。
【0041】
続いて、ロボット4は、ハンド3により把持されたワークWをクランプ装置1におけるワーク固定部5およびワーク押付部6の間に位置決めする(
図5のステップS2)。それから、ハンド3によりワークWが把持された状態において、制御装置8は、クランプ装置1のワーク押付部6を作動させる(
図5のステップS3)。それにより、ワーク押付部6がワークWをワーク固定部5の着座面5aに押付ける。
【0042】
このようなクランプ装置1の動作が完了すると、制御装置8の異常判定部13は、外乱トルク監視部11により監視されているサーボモータの外乱トルクと、所定の第1閾値とを比較する(
図5のステップS4)。そして、異常判定部13は、当該外乱トルクが所定の第1閾値と同じか、または所定の第1閾値を超えた場合に、クランプ装置1のワーク固定状態に異常が発生したと判定する。そのような異常とは、例えば加工屑7がワーク固定部5の着座面5aに存在している場合である。なお、所定の第1閾値は、制御装置8の外部から設定変更可能である。
【0043】
異常判定部13によって、異常が発生していると判定された場合、制御装置8は、出力部14によってアラームを出力して、ワーク位置異常を報知する(
図5のステップS5)。このとき、制御装置8は、クランプ装置1を備えた生産機械2を停止させてもよい。
【0044】
一方、外乱トルク監視部11により監視されているサーボモータの外乱トルクが、所定の第1閾値よりも小さい場合、ロボット4のハンド3はワークWを解放する(
図5のステップS6)。それにより、ワークWはクランプ装置1のみによって固定された状態となる。その後、生産機械2によりワークWの加工や部品の組付けなどが実施される。
【0045】
以上に説明したように第1実施形態は、ロボット4のハンド3により把持され、クランプ装置1の所定の位置に位置決めされたワークWをクランプ装置1により固定したとき、ハンド3の軸を駆動するサーボモータの外乱トルクを検出している。そして、検出された外乱トルクが所定の第1閾値を超える場合に、クランプ装置2に固定されたワークWの位置に異常が発生したと判定される。
このため、クランプ装置1におけるワーク固定部5の着座面5aとワークWの外面との密着状態に関係なく、そのクランプ装置2に固定されたワークWの位置に異常が生じたか否かを判定することができる。言い換えれば、本発明においては、ワーク形状に左右されることなく、固定されたワーク位置の異常の有無を判定できる。また、第1閾値を調整することにより、クランプ装置によって固定されたワークの位置が許容範囲内に収まっている状態をワーク位置の異常として判定されないようにすることが可能である。その結果、ワークWから作製される製品の歩留まりを向上させることができる。
さらに、本発明においては、異常を検出するためにセンサをクランプ装置2に付加する必要がない。その結果、安価な構成によりワークの異常を判定するロボットシステム20を提供することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。ここでは、上述した第1実施形態のロボットシステム20と同じ構成部分については同じ符号を付して、第1実施形態に対して異なる点のみを説明することとする。
図6は第2実施形態のロボットシステム20の制御装置8を示すブロック図である。
第2実施形態においては、
図6に示すように、
図4に示した制御装置8に対して周波数分析部15がさらに追加されている。
【0047】
周波数分析部15は、外乱トルク監視部11により監視されているサーボモータの外乱トルクの履歴に対して周波数分析、例えばFFT(Fast Fourier Transform)分析を行う。そして、周波数分析部15は、FFT解析によってサーボモータの外乱トルクの履歴を複数の周波数成分に分解し、それから、複数の周波数成分の中から特定の周波数成分を抽出して異常判定部13に送信する。なお、抽出する特定の周波数成分は、クランプ装置1によってワークWを固定した時に当該ワークWが損傷した場合に発生する周波数である。
【0048】
異常判定部13は、周波数分析部15から送信された特定の周波数成分を所定の第2閾値と比較することを含む。そして、異常判定部13は、当該特定の周波数成分が所定の第2閾値(周波数)を超えた場合に、クランプ装置1により固定されたワークWに傷が発生したと判定する。
【0049】
次に、第2実施形態の制御装置8を備えるロボットシステム20の動作について説明する。
図7は第2実施形態のロボットシステム20の動作手順を示すフローチャートである。
ロボットシステム20を起動すると、制御装置8は、予めプログラミングされた動作指令に従ってロボット4を動作させる。それにより、ロボット4は、
図1に示されるようにハンド3によりワークWを把持して、生産機械2に設置されたクランプ装置1に移動させる。ワークWの移動中、制御装置8の外乱トルク監視部11は、ロボット4のハンド3を支持する軸を回転駆動するサーボモータの外乱トルクを監視する(
図7のステップS11)。
【0050】
続いて、ロボット4は、ハンド3により把持されたワークWをクランプ装置1におけるワーク固定部5およびワーク押付部6の間に位置決めする(
図7のステップS12)。それから、ハンド3によりワークWが把持された状態において、制御装置8は、クランプ装置1のワーク押付部6を作動させる(
図7のステップS13)。それにより、ワーク押付部6がワークWをワーク固定部5の着座面5aに押付ける。
【0051】
このようなクランプ装置1の動作が完了すると、周波数分析部15は、FFT解析によってサーボモータの外乱トルクの履歴を複数の周波数成分に分解し、それから、複数の周波数成分の中から特定の周波数成分を抽出する(
図7のステップS14)。
【0052】
続いて、制御装置8の異常判定部13は、周波数分析部15により抽出された特定の周波数成分と、所定の第2閾値とを比較する(
図7のステップS15)。そして、異常判定部13は、当該特定の周波数が所定の第2閾値と同じか、または所定の第2閾値を超えた場合に、クランプ装置1により固定されたワークWに傷が発生したと判定する。なお、所定の第2閾値は、制御装置8の外部から設定変更可能である。
【0053】
異常判定部13によって、傷が発生していると判定された場合には、制御装置8は、出力部14によってアラームを出力して、傷の発生を報知する(
図7のステップS16)。このとき、制御装置8は、クランプ装置1を備えた生産機械2を停止させてもよい。
【0054】
一方、周波数分析部15から送信された特定の周波数成分が所定の第2閾値よりも小さい場合、ロボット4のハンド3はワークWを解放する(
図7のステップS17)。それにより、ワークWはクランプ装置1のみによって固定された状態となる。その後、生産機械2によりワークWの加工や部品の組付けなどが実施される。
【0055】
以上に説明した第2実施形態によれば、ロボット4のハンド3により把持されたワークWをクランプ装置1により固定したとき、その固定時の衝撃によってワークWが損傷したか否かを判定することができる。それにより、ワークWから作製される製品の歩留まりを向上させることができる。
【0056】
なお、第2実施形態において、上述した第1実施形態の異常判定方法が追加的に実施されてもよい。つまり、第1実施形態のように、外乱トルク監視部11により監視されているサーボモータの外乱トルクと、所定の第1閾値とを比較して、クランプ装置1のワーク固定状態に異常が発生しているか否かを判定することが異常判定部13にて追加的に実施されてもよい。
【0057】
以上では典型的な実施形態を示したが、本発明は上述の各実施形態に限定されず、本発明の思想を逸脱しない範囲で上述の各実施形態を様々な形、構造や材料などに変更可能である。