(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1相あたりN組の前記8の字状の連結コイルの組のうちの複数組は、連結する2つのコイルのうち、片方のコイルの巻数が他方のコイルの巻数と異なる、請求項1に記載の3相交流電動機。
1相あたりN組の前記8の字状の連結コイルのうち複数組は、1組の連結コイルが跨る3つのスロット内のコイルの3辺のうち、1つのコイルが跨る2辺を、他の8の字状の連結コイルの3辺のうち、1つのコイルが跨る2辺と、電流が流れる向きを合わせて重ね、2つのスロットを共有して2つの8の字状の連結コイルを連結し、直列接続されている、請求項1に記載の3相交流電動機。
巻線を放出しながら旋回するノズル部を備え、巻線を巻きつけてコイルを生成する巻枠部を並列させて2つ以上有するインサータ方式の自動巻線機を用いて、8の字状の連結コイルを含む3相交流電動機を製造する方法であって、
前記2つの巻枠部の高さを調節して、前記ノズル部が1つの巻枠部の周りを所定の巻数だけ回転して1つ目のコイルを生成する第1ステップと、
前記2つの巻枠部の高さを調節して、他方の巻枠部にノズルが前記の回転方向とは逆向きに所定の巻数だけ回転して前記1つ目のコイルとは逆方向の電流の向きとなる2つ目のコイルを生成する第2ステップと、
前記の2つのコイルのうち、1辺を重ねた状態で1つのスロットに挿入されるようにインサータに前記2つのコイルを挿入する第3ステップと、
前記第1ステップ乃至第3ステップを繰り返して、他の8の字状の連結コイルを生成し、前記インサータに挿入する第4ステップと、
前記インサータを固定子に挿入して、全ての巻線を固定子に挿入する第5ステップと、
を有することを特徴とする3相交流電動機の製造方法。
巻線を放出しながら旋回するノズル部を備え、巻線を巻きつけてコイルを生成する巻枠部を並列させて3つ有するインサータ方式の自動巻線機を用いて、連結された8の字状の連結コイルを含む3相交流電動機を製造する方法であって、
前記3つの巻枠部の高さを調節して、前記ノズル部が1つの巻枠部の周りを所定の巻数だけ回転して1つ目のコイルを生成する第1ステップと、
前記3つの巻枠部の高さを調節して、2つ目の巻枠部にノズルが前記の回転方向とは逆向きに所定の巻数だけ回転して前記1つ目のコイルとは逆方向の電流の向きとなる2つ目のコイルを生成する第2ステップと、
前記3つの巻枠部の高さを調節して、3つ目の巻枠部にノズルが前記の2つ目のコイルの回転方向とは逆向きに回転して前記2つ目のコイルとは逆方向の電流の向きとなる3つ目のコイルを生成する第3ステップと、
前記3つのコイルのうち、前記1つ目のコイルと前記2つ目のコイルの1辺を重ね、前記2つ目のコイルの他方の1辺を前記3つ目のコイルの1辺と重ねた状態で、前記巻線を重ねた部分が各々1つのスロットに挿入されるようにインサータに前記3つのコイルを同時に挿入する第4ステップと、
前記第1ステップ乃至第4ステップを繰り返して、他の8の字状の連結コイルを、巻枠部を2つ、あるいは3つ使用して生成し、前記インサータに挿入する第5ステップと、
前記インサータを固定子に挿入して、全ての巻線を挿入する第6ステップと、
を有することを特徴とする3相交流電動機の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、コギングトルクとトルクリップルを低減させることができる極とスロットの組み合わせとして、スロット数を極数で割った値が既約分数となる分数スロットを有する電動機が知られている。
【0003】
分数スロットの電動機では、極数とスロット数の最小公倍数を大きくするように、極数とスロット数を選定でき、また、高次の分布巻係数の値を小さくできることから、コギングトルクとトルクリップルを減少させることができる(例えば、特許文献1)。
【0004】
スロット数6Nが、極対数Pの1.5倍より大きくかつ3倍未満となる電動機(1.5P<6N<3P)の場合、スロットピッチが1の集中巻電動機となる。この場合、隣接スロットにコイルを巻くことができるため、巻線機のノズルで固定子のティース部に直接巻きつけることができ(直巻)、製造に非常に優位である。しかし、スロット数が比較的少なくなることから、回転子と固定子に発生する磁束線が、固定子のティース形状や、コアの外形形状の影響を受けやすく、コギングトルクとトルクリップルを悪化させ、分数スロットであったとしてもその効果は限定的になる。
【0005】
一方、スロット数6Nが、極対数Pの3倍より大となる分数スロットの電動機(6N>3P)においては、集中巻の分数スロット電動機よりもコギングとトルクリップルがさらに小さくなる傾向があり、性能としては魅力的である。しかし、スロットに挿入する巻線のコイルピッチが1スロットより大きくなり、分布巻でしか巻くことができない。特に、スロット数を極対数で割った値が規約分数となる電動機においては、巻線の配置が複雑になることから、スロットに挿入する巻線のコイル数が多くなり、製造における巻線の自動化には不向きである。
【0006】
さらに、コイル数が多いことでコイル間を結ぶ渡り線が多くなり、巻線同士が複雑に絡み合う要因になる。
【0007】
例として、インサータ方式による自動巻線機は、1つ1つコイルを巻線機のノズル、あるいは、フライヤーが巻枠周りに旋回してコイルを作成し、作成したコイルをインサータに挿入し、インサータを固定子に徐々に挿し入れることで固定子にコイルが巻装される。この工程で、作成するコイルの数が多くなるとインサータに挿入する回数が多くなり、工数が非常に多くなる。また、インサータには、多数のコイルを挿入するため、コイル間の渡り線が多い場合、巻線が複雑に絡み合い、製造不良を起こす原因になる。
【0008】
このように、複雑な巻線配置を持つ分数スロットの電動機において、自動巻線可能な同心巻で巻こうとするとき、以下の点が問題になる。
(1)コイル数が多くなり、結果として工数が多くなる。
(2)各コイル間を結ぶ渡り線が多く、複雑に絡み合いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】10極36スロットの電動機の断面図である。
【
図2】10極36スロットの電動機のうちの第1〜第18スロットの巻線配置の展開断面図、及び10極36スロットの電動機のうちの第19〜第36スロットの巻線配置の展開断面図である。
【
図3】インサータ方式巻線機による単コイルの製造方法を説明する図である。
【
図4】インサータ方式巻線機による多重コイルの製造方法を説明する図である。
【
図5】コイルを挿入した状態のインサータをインサータの上方から俯瞰した図である。
【
図6】コイルを挿入した状態のインサータの斜視図である。
【
図7】固定子内に挿入したインサータの斜視図である。
【
図8】10極36スロットの電動機にU相のコイルを同心巻で巻回した場合の第1〜第18スロットの巻線配置を示す展開断面図、及び10極36スロットの電動機にU相のコイルを同心巻で巻回した場合の第19〜第36スロットの巻線配置を示す展開断面図である。
【
図9】10極36スロットの電動機の巻線配置を示す展開断面図、及び8の字状の連結コイルの断面図である。
【
図10】8の字状の連結コイルの断面概念図、及び8の字状の連結コイルとスロットの位置関係を表す図である。
【
図11】10極36スロット3層巻の巻線配置を示す展開断面図、及び3つの連結コイルの断面図である。
【
図12】3つの連結コイルの形態の一例を示す断面図及び平面図である。
【
図13】3つの連結コイルの形態の他の一例を示す断面図及び平面図である。
【
図14】インサータ方式自動巻線機による8の字状の連結コイルの製造方法の第1ステップを表す図である。
【
図15】インサータ方式自動巻線機による8の字状の連結コイルの製造方法の第2ステップを表す図である。
【
図16】インサータ方式自動巻線機による8の字状の連結コイルの製造方法の第3及び第4ステップを表す図である。
【
図17】インサータ方式自動巻線機による3つの連結コイルの製造方法の第1ステップを表す図である。
【
図18】インサータ方式自動巻線機による3つの連結コイルの製造方法の第2ステップを表す図である。
【
図19】インサータ方式自動巻線機による3つの連結コイルの製造方法の第3ステップを表す図である。
【
図20】インサータ方式自動巻線機による3つの連結コイルの製造方法の第4及び第5ステップを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る電動機とその製造方法について説明する。
【0016】
[実施例1]
まず、本発明の実施例1に係る3相交流電動機について説明する。
図1に10極36スロットの電動機の断面図を示す。
図1において、6は固定子、10は回転子を表す。回転子10は、10個の磁石11と、回転子コア12と、回転子のシャフト13とを備え、回転子10は回転子の回転軸Cを中心として回転する。磁極の数Pは磁石の数と同数の10である。固定子6は、固定子のコア3と、回転子の回転軸Cの方向に形成され、周方向に配列された36個のスロット2とを備え、スロット2に後述する巻線が配置される。本発明は電動機の固定子コア3に巻かれた巻線の配置に関するものであるので、以下の説明では回転子の記載を省略する。
【0017】
図2は極数10、スロット数36、ずらし数3の分数スロット電動機のスロットにおける各相のコイルの配置を表す図である。2は固定子のコアのスロット、3は固定子のコア、4は巻線(コイル)、6は固定子である。また、各スロット2の上側の符号Bはスロット識別番号である。U、V、Wは3相交流の各相を表し、各々±120度の位相差を有している。また、「+」と「−」は電流の向きを示しており、その位相差は180度である。
図2は2層巻の例を示し、各スロットには、+U、−U、+V、−V、+W、−W相の合計6相帯のいずれかが2つずつ配置される。各配置領域には、銅線などの電流が流れる線材が、同じ数だけ挿入されている。固定子6は一般には円筒状であるが、ここでは説明を分かり易くするために、円筒状である固定子6を直線的に展開した展開断面図として示す。以下の説明において、固定子6における巻線4の配置の説明においては、この展開断面図を使用して固定子6と巻線4の配置について説明する。なお、
図2(a)は、展開した固定子6のスロット識別番号1〜18の部分の断面を示し、
図2(b)は、スロット識別番号19〜36の部分の断面を示している。
【0018】
以後、電流が流れる銅線などの線材、あるいは、線材の束のことを「巻線」と呼び、線材を使用して、閉じた輪の形状をつくり、同一形状で連結して束で重なっているものを「コイル」と呼ぶ。
【0019】
次に、インサータ方式巻線機を用いた単コイルの製造方法について
図3を用いて説明する。
図3に示すように、ノズル21が矢印25の範囲で回転して巻枠部22に巻線23を巻きつけることにより、単コイル24を生成する。
【0020】
次に、インサータ方式巻線機を用いた多重コイルの製造方法について
図4を用いて説明する。最初に、ノズル21が矢印28の範囲で回転して第1巻枠部26に巻線23を巻きつけることにより多重コイル31の外側のコイル29を生成する。次に、ノズル21が矢印28の範囲で回転して第2巻枠部27に巻線23を巻きつけることにより多重コイル31の内側のコイル30を生成する。
【0021】
次に、生成した多重コイル31を
図5の平面図及び
図6の斜視図に示すようにインサータ32に挿入する。
図5及び
図6は8極36スロットの電動機の例であって、2重同心巻のコイル31を単相分だけインサータ32に挿入する例を示している。
【0022】
次に、
図7に示すようにインサータ32を固定子6内に挿入し、コイル31を固定子6内に押し込む。ただし、実際にはインサータ32の内側にコイル31を押し込むガイドの冶具(図示せず)が配置される。
【0023】
図8(a)に10極36スロットの電動機にU相のコイルを同心巻で巻回した場合の第1〜第18スロットの巻線配置を表す展開断面図を示し、
図8(b)に10極36スロットの電動機にU相のコイルを同心巻で巻回した場合の第19〜第36スロットの巻線配置を表す展開断面図を示す。
【0024】
また、
図8(a)及び
図8(b)の各図の上段は回転子の軸と垂直な断面で切断した断面図を示し、下段は回転子の回転軸から見たコイルとスロットの位置関係を示す。
図8(a)及び
図8(b)においてはU相のコイルの配置のみ示している。また
図8(a)及び
図8(b)のそれぞれの上段の図において、各スロット内の「+u」または「−u」と記された領域のうち、上部が1層目のコイルを示し、下部が2層目のコイルを示している。
【0025】
10極36スロットの巻線配置を通常の同心巻で巻こうとすると、
図8(a)及び
図8(b)の矢印の1相当たり12個のコイルを必要とし、インサータに挿入する回数は10回必要となる。この場合、二重同心巻となる部分は2ヶ所であり、二重同心巻ができる部分が限られているため、製造工数が多くなる。
図8(a)及び
図8(b)の矢印は、「+u」と「−u」で作られる1つ分のコイルを示す。このように、スロット数を極数で除した値が既約分数となる分数スロットの電動機においては、巻線が複雑化し、製造工数が多くなる。
【0026】
次に、本発明の実施例1に係る3相交流電動機について説明する。
図1に本発明の実施例1に係る3相交流電動機の断面図を示し、
図9(a)及び
図9(b)に本発明の実施例1に係る10極36スロットの3相交流電動機の適用例を示す。
図9(a)及び
図9(b)においては、36スロットのうちの25スロット分、U相のみを表示している。本発明の実施例1に係る3相交流電動機は、複数対の磁極を有する回転子10と、回転子10の回転軸方向に形成され、周方向に配列された複数のスロット2を有し、回転子10と径方向に対向配置された固定子6と、スロット2に挿入されて固定子6に巻装された複数の巻線4と、を備えている。
【0027】
本発明の実施例1に係る3相交流電動機の固定子6は、回転子10の極数を2P、固定子6の巻線を挿入するスロット数を6Nとし、スロット数6Nを極対数Pで除した値が既約分数となり、かつ、2N>Pの関係を有する。例えば、極数2Pが10、スロット数6Nが36の場合、Pは5、Nは6となる。ただし、これは一例であって、このような例には限定されない。
【0028】
スロット数6Nを極数2Pで除した商をXとするとき、固定子6には、所定の巻数で巻回されたコイル(例えば、411、412)が1相あたり2N個スロット内に配置されている。例えば、極数2Pが10、スロット数6Nが36の場合、Xは3となる。
【0029】
各1つのコイル(例えば、411)は直列接続している別の1つのコイル(例えば、412)と、電流の向きを合わせて1辺を共有して1つの中央スロット(例えば、スロット番号4)に重ねて配置されている。
【0030】
2つのコイル411、412のスロットを共有していない各々の反対側の1辺は、各々スロットが中央スロットからX(例えば、Xは3)だけ離れている別のスロット(例えば、スロット番号1及び7)に配置されて、2つのコイル411、412は3つのスロット(例えば、スロット番号1、4、7)に渡って8の字状に連結して配置されている。
【0031】
8の字状の連結コイルの組41〜44が、固定子のスロットに1相あたりN組各々完全には重ならない位置に配置され、各々直列接続されている。
【0032】
本発明の実施例1に係る3相交流電動機においては、
図9(b)に示すように、10極36スロットの単相の配置を、全て3スロットピッチのコイルで展開する。
図10(a)に8の字状の連結コイル411及び412の断面の概念図を示し、
図10(b)に8の字状の連結コイル411及び412とスロットの位置関係を示す。
図10(a)に示すように、1つのコイル411は、1番目のスロットS1と、4番目のスロットの2層目(S42)に跨って巻回され、他のコイル412は、4番目のスロットの1層目(S41)と、7番目のスロットS7に跨って巻回されている。ただし、スロットS41とS42は同じ4番目のスロット(S4)に位置している。
【0033】
図10(b)に示すように、1つのコイル411は、4つの辺411a,411b,411c,411dから構成される。同様に、他の1つのコイル412は、4つの辺412a,412b,412c,412dから構成される。
【0034】
このとき、
図10(b)に示すように、2つのコイル411及び412が3つのスロットS1,S4,S7に跨って配置され、コイル辺411c及び412aが共に1つのスロットS4に配置される。そのため、8の字状の連結コイルを構成する2つのコイル411、412の渡り線41eを緩み無く直列接続することで、8の字状の連結コイル41を形成することができる。なお、渡り線41eは短くすることができ、コイル411または412と同化できる。また、50は固定子のティースであり、41fは他の8の字状の連結コイルと直列接続するための巻線である。
【0035】
また、
図9(a)及び
図9(b)に示した10極36スロットの配置(36スロット中25スロット分、U相のみ表示)では、全てのコイルが、3スロットピッチの8の字状の連結コイルを形成可能である。例えば、コイル421及び422が8の字状の連結コイル42を構成し、コイル431及び432が8の字状の連結コイル43を構成し、コイル441及び442が8の字状の連結コイル44を構成する。
図9(b)の両端矢印で1つ分のコイルを示す。単相あたり、8の字状の連結コイルは6組であり(
図9(b)では4組のみ表示)、3相分合計で18組存在する。
【0036】
本発明の実施例1に係る3相交流電動機によれば、
図8(a)、(b)のような複雑なコイルの配置とは異なり、
図9(a)、(b)のように同一形状のコイルユニットを複数個用意するだけで、全ての巻線配置が巻装できるため、電動機の製造が容易になるというメリットが得られる。
【0037】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係る3相交流電動機について説明する。
図11(a)及び
図11(b)に本発明の実施例2に係る3相交流電動機の10極36スロット3層巻(1スロットにつき3相分を配置)の巻線図を示す。本発明の実施例2に係る3相交流電動機が実施例1に係る3相交流電動機と異なっている点は、1相あたりN組の8の字状の連結コイルの組のうちの複数組は、連結する2つのコイルのうち、片方のコイルの巻数が他方のコイルの巻数と異なる点である。本発明の実施例2に係る3相交流電動機のその他の構成は、本発明の実施例1に係る3相交流電動機における構成と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0038】
図11(b)に示したコイルの展開図において、同一形状のコイルユニットで纏めると
図12と
図13の2種類に纏められる。
図12(a)は
図11(b)に示した複数のコイルを連結したコイルの組51〜56のうちの1つの組52の展開図である。
【0039】
図12(a)に示すように、コイル521は16番目のスロットの1層目(S161)と19番目のスロットの1層目(S191)に跨って配置されている。コイル522は16番目のスロットの2層目(S162)と19番目のスロットの2層目(S192)に跨って配置されている。コイル523は19番目のスロットの3層目(S193)と22番目のスロットの3層目(S223)に跨って配置されている。上記の例では、コイル521と522を1つのコイル524とみなすことができる。そうすると、連結する2つのコイル523及び524のうち、片方のコイル523の巻数が他方のコイル524の巻数と異なっていることとなる。
【0040】
図12(b)は
図12(a)のコイル521〜523のみを示す。コイル521は複数の辺521a〜521dから構成され、コイル522は複数の辺522a〜522dから構成され、コイル523は複数の辺523a〜523dから構成されている。辺521a及び522aは16番目のスロットに配置され、辺521c、522c、523aは19番目のスロットに配置され、辺523cは22番目のスロットに配置されている。
【0041】
図12(b)に示したように、巻数が異なる8の字状の連結コイルは、
図11(b)において、4か所(51、52、54、55)存在する。
【0042】
連結コイル51では、コイル511の巻数と、コイル512及び513の合計の巻き数が異なっている。連結コイル54では、コイル541の巻数と、コイル542及び543の合計の巻き数が異なっている。連結コイル55では、コイル553の巻数と、コイル551及び552の合計の巻き数が異なっている。
【0043】
その他のコイル53及び56では3つのコイルが連結している。
図13(a)は
図11(b)に示した複数のコイルを連結したコイルの組51〜56のうちの1つの組53の展開図である。
【0044】
図13(a)に示すように、コイル531は20番目のスロットの1層目(S201)と23番目のスロットの1層目(S231)に跨って配置されている。コイル532は23番目のスロットの2層目(S232)と26番目のスロットの2層目(S262)に跨って配置されている。コイル533は26番目のスロットの3層目(S263)と29番目のスロットの3層目(S293)に跨って配置されている。上記の例では、3つのコイル531、532、533のうち、中央の1つのコイル532の2辺532a及び532cが、他の2つのコイル531及び533の1辺531c及び533aと、それぞれ1つのスロット(23番目のスロット及び26番目のスロット)を共有している。
【0045】
上記のように3つのコイルが連結している個所は
図11(b)では2個所存在している。上記の連結コイル53以外では、連結コイル56で、3つのコイル561、562、563が連結している。
【0046】
上記の例では、3つのコイルが連結した例について説明したが、これは次のように、2組の8の字状の連結コイルの4つのコイルが2つのコイルの2辺を共有して連結していると考えてもよい。1相あたりN組の8の字状の連結コイルのうち複数組は、1組の連結コイルが跨る3つのスロット内のコイルの3辺のうち、1つのコイルが跨る2辺を、他の8の字状の連結コイルの1つのコイルが跨る2辺と、電流が流れる向きを合わせて重ね、2つのスロットを共有して2つの8の字状の連結コイルを連結し、直列接続している。また、このとき、2組の8の字状の連結コイルを構成する各2つのコイルのうち、片方のコイルの巻数が他方のコイルの巻数と異なる連結コイルを有するようにしてもよい。
図13の例では、8の字状の連結コイルの2つのコイルの巻数比が2:1のものと、1:2のものを、巻数の少ない1つのコイルの部分を重ねて、巻数比が同じ3つのコイルを形成している。
【0047】
本発明の実施例2に係る3相交流電動機によれば、2種類の形状のコイルユニットを複数個用意するだけで、全ての巻線配置が巻装できるため、電動機の製造工程を簡略化することができる。
【0048】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3に係る3相交流電動機の製造方法について説明する。本発明の実施例3に係る3相交流電動機の製造方法は、巻線を放出しながら旋回するノズル部を備え、巻線を巻きつけてコイルを生成する巻枠部を並列させて2つ以上有するインサータ方式の自動巻線機を用いて、8の字状の連結コイルを含む3相交流電動機を製造する方法であって、2つの巻枠部の高さを調節して、ノズル部が1つの巻枠部の周りを所定の巻数だけ回転して1つ目のコイルを生成する第1ステップと、2つの巻枠部の高さを調節して、他方の巻枠部にノズルが上記の回転方向とは逆向きに所定の巻数だけ回転して1つ目のコイルとは逆方向の電流の向きとなる2つ目のコイルを生成する第2ステップと、2つのコイルのうち、1辺を重ねた状態で1つのスロットに挿入されるようにインサータに2つのコイルを挿入する第3ステップと、第1ステップ乃至第3ステップを繰り返して、他の8の字状の連結コイルを生成し、インサータに挿入する第4ステップと、インサータを固定子に挿入して、全ての巻線を固定子に挿入する第5ステップと、を有することを特徴とする。
【0049】
本発明の実施例3に係る3相交流電動機の製造方法について詳細に説明する。
図14は、インサータ方式自動巻線機による8の字状の連結コイルの製造方法の第1ステップを表す図である。第1ステップにおいて、自動巻線機のノズル(あるいはフライヤー)21が第1巻枠部26の周りを所定の回転方向28に沿って旋回し、巻線23により1つ目のコイル29を生成する。
【0050】
図15は、インサータ方式自動巻線機による8の字状の連結コイルの製造方法の第2ステップを表す図である。第2ステップにおいて、第1巻枠部26の長さを縮めて、第2巻枠部27の長さを長くする。そして、1つ目のコイル29が緩まないまま、第2巻枠部27の周りをノズル21が、第1ステップにおける回転方向28とは逆方向34に沿って旋回して2つ目のコイル30を生成する。これで8の字状の連結コイルが完成する。
【0051】
図16(a)及び
図16(b)は、それぞれインサータ方式自動巻線機による8の字状の連結コイルの製造方法の第3及び第4ステップを表す図である。
図16(a)に示すように、第3ステップにおいて、コイル29及び30を第1巻枠部26及び第2巻枠部27から外す。その後、
図16(b)に示すように、第4ステップにおいて、8の字状の連結コイルのまま、インサータ32にコイル29、30を挿入する。このとき、インサータ32のブレード100はスロットと対応する位置に形成され、コイル29の1つの辺は、例えば、3番目のスロットS3に対応する位置に配置される。また、コイル29と30の重なる辺は、例えば、6番目のスロットS6に対応する位置に配置される。コイル30の1つの辺は、例えば、9番目のスロットS9に対応する位置に配置される。
【0052】
第1ステップ乃至第3ステップを繰り返して、他の8の字状の連結コイルを生成し、第4ステップにおいて、インサータ32に挿入する。さらに、
図7に示すように、第5ステップにおいて、インサータ32を固定子6に挿入して、全ての巻線を挿入する。
【0053】
本発明の実施例3に係る3相交流電動機の製造方法によれば、2つのコイルを8の字状に連結させた構成を備えたコイルを有する3相交流電動機を容易に製造することができる。
【0054】
[実施例4]
次に、本発明の実施例4に係る3相交流電動機の製造方法について説明する。本発明の実施例4に係る3相交流電動機の製造方法は、巻線を放出しながら旋回するノズル部を備え、巻線を巻きつけてコイルを生成する巻枠部を並列させて3つ有するインサータ方式の自動巻線機を用いて、連結された8の字状の連結コイルを含む3相交流電動機を製造する方法であって、3つの巻枠部の高さを調節して、ノズル部が1つの巻枠部の周りを所定の巻数だけ回転して1つ目のコイルを生成する第1ステップと、3つの巻枠部の高さを調節して、2つ目の巻枠部にノズルが上記の回転方向とは逆向きに所定の巻数だけ回転して1つ目のコイルとは逆方向の電流の向きとなる2つ目のコイルを生成する第2ステップと、3つの巻枠部の高さを調節して、3つ目の巻枠部にノズルが2つ目のコイルの回転方向とは逆向きに回転して2つ目のコイルとは逆方向の電流の向きとなる3つ目のコイルを生成する第3ステップと、3つのコイルのうち、1つ目のコイルと2つ目のコイルの1辺を重ね、2つ目のコイルの他方の1辺を3つ目のコイルの1辺と重ねた状態で、巻線を重ねた部分が各々1つのスロットに挿入されるようにインサータに3つのコイルを同時に挿入する第4ステップと、第1ステップ乃至第4ステップを繰り返して、他の8の字状の連結コイルを、巻枠部を2つ、あるいは3つ使用して生成し、インサータに挿入する第5ステップと、インサータを固定子に挿入して、全ての巻線を挿入する第6ステップと、を有することを特徴とする。
【0055】
本発明の実施例4に係る3相交流電動機の製造方法について詳細に説明する。
図17は、インサータ方式自動巻線機による3つの連結コイルの製造方法の第1ステップを表す図である。第1ステップにおいて、自動巻線機のノズル(あるいはフライヤー)21が第1巻枠部26の周りを所定の回転方向28に沿って旋回し、巻線23により1つ目のコイル29を生成する。
【0056】
図18は、インサータ方式自動巻線機による3つの連結コイルの製造方法の第2ステップを表す図である。第2ステップにおいて、第1巻枠部26の長さを縮めて、第2巻枠部27の長さを長くする。そして、1つ目のコイル29が緩まないまま、第2巻枠部27の周りをノズル21が、第1ステップにおける回転方向28とは逆方向34に沿って旋回して2つ目のコイル30を生成する。
【0057】
図19は、インサータ方式自動巻線機による3つの連結コイルの製造方法の第3ステップを表す図である。第3ステップにおいて、第3巻枠部27の長さを縮めて、第3巻枠部35の長さを長くする。そして、1つ目のコイル29及び2つ目のコイル30が緩まないまま、第3巻枠部35の周りをノズル21が、第2ステップにおける回転方向34とは逆方向28に沿って旋回して3つ目のコイル36を生成する。
【0058】
図20(a)及び
図20(b)は、それぞれインサータ方式自動巻線機による3つの連結コイルの製造方法の第4及び第5ステップを表す図である。
図20(a)に示すように、第4ステップにおいて、コイル29、30、36を第1巻枠部26、第2巻枠部27、及び第3巻枠部35から外す。その後、
図20(b)に示すように、第5ステップにおいて、インサータ32に連結コイルのまま、コイル29、30、36を挿入する。このとき、インサータ32のブレード100はスロットと対応する位置に形成され、コイル29の1つの辺は、例えば、1番目のスロットS1に対応する位置に配置される。また、コイル29と30の重なる辺は、例えば、4番目のスロットS4に対応する位置に配置される。また、コイル30と36の重なる辺は、例えば、7番目のスロットS7に対応する位置に配置される。コイル36の1つの辺は、例えば、10番目のスロットS10に対応する位置に配置される。
【0059】
第1ステップ乃至第4ステップを繰り返して、他の8の字状の連結コイルを、巻枠部を2つ、あるいは3つ使用して生成し、第5ステップにおいてインサータ32に挿入する。さらに、
図7に示すように、第6ステップにおいて、インサータ32を固定子6に挿入して、全ての巻線を挿入する。
【0060】
本発明の実施例4に係る3相交流電動機の製造方法によれば、3つのコイルを連結させた構成を備えたコイルを有する3相交流電動機を容易に製造することができる。